説明

電子部品パッケージ構造

【課題】機能素子上が中空状態で封止されてなる電子部品のパッケージ構造に関して、小型、薄型で、かつ、樹脂封止のトランスファーモールド法でも作製できるようにすること。
【解決手段】表面に機能領域と電極を有する素子が形成された基板と、前記基板の前記機能領域上に空間を設けて配置された樹脂層と、前記空間を覆う金属層と、前記金属層の前記樹脂層に対応する位置に設けられた絶縁樹脂層とからなる電子部品パッケージであって、前記樹脂層の弾性率が前記絶縁層の弾性率よりも大きいことを特徴とする電子部品パッケージ構造をもちいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波電子回路に使用される表面弾性波フィルタに代表される、機能素子上が中空状態で封止されてなる電子部品のパッケージ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
表面弾性波フィルタに代表される、単結晶ウエハー表面に電極パターンや微細構造を形成して特定の電気的機能を発揮する素子のパッケージは、機能部表面を樹脂等で覆うと特性が変化するため、素子表面の特に機能的に重要な部分に他の物体が接触しないように、中空構造とされる。
【0003】
一般的な表面弾性波フィルタ(以下SAWフィルタと記す)のパッケージ構造を図4に示す。
【0004】
パッケージ寸法の縮小を目的として、基板101に表面弾性波素子(以下SAW素子と記す)104を、機能面を基板側に向けて実装する、いわゆるフリップチップ実装が行われ、さらに樹脂等の材料107で封止された構造が一般的である。機能部表面を封止材が覆わない空間部108となっている。
【0005】
上記構造は、SAW素子をウエハーから個片に切り出して後、個片素子を基板に実装した構造であるが、さらなる小型化を目的として、ウエハーのまま中空封止構造を形成した後、ダイシングにより個片化してパッケージ完成となる構造が提案されており、その例を図5に示す。
【0006】
図5は、個片化された後の素子の断面図で、機能部111と電極112が表面に形成された単結晶材110上に、空間116を形成するための樹脂層113とその上に接着された回路基板114からなる構造であり、115は外部接続用端子である。
【0007】
このような構造のパッケージは図4に示すパッケージに比べ、SAW素子を囲む封止構造がないため、さらなる小型化が図れるものである。
【0008】
この出願の発明に関する先行技術文献としては、例えば特許文献1が知られている。
【特許文献1】特表2002−532934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図5に示す、先行文献が開示するパッケージ構造では、実使用上の信頼性において課題があった。
【0010】
SAWフィルタは、携帯電話に代表される小型通信機器に使用されることが多いが、最近は、予めSAWフィルタを含む電子部品が実装された機能モジュールを作成し、それを機器のマザー基板に実装する組み立て方式が使用される。
【0011】
機能モジュールは、小型の回路基板に高密度に電子部品を実装して、特定の機能を発揮するように形成された部品集合体であり、外部電極部を除いて、樹脂で封止されていることが一般的である。樹脂封止方法として、最もよく使用されるのがトランスファーモールド法であり、樹脂モールド工程において、150℃以上の高温と数MPa以上の高圧が電子部品に加わる。
【0012】
特許文献1に開示された実装構造は、空間部分の蓋をプリント基板と称する回路基板が成すものである。前記回路基板は、繊維強化樹脂シートの表面が銅箔で被覆されたもので、高温中での外力に対し十分な剛性および耐力を持たない。
【0013】
上記、トランスファーモールド工程において、高温高圧が加わると、空間部分の蓋を成す回路基板は容易に変形し、空間がつぶれ、SAWフィルタとしても特性が変化してしまうという課題があった。
【0014】
また、高温高圧に耐えうるような回路基板とするには、厚みを大きくする必要があり、パッケージ全体の厚みが大きくなってしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するために、本発明の電子部品パッケージ構造として、(請求項を記載する)、を用いる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電子部品パッケージ構造は、空間を設けた樹脂層と、金属層が積層された構造であり、金属層により機能領域を覆う蓋が形成されているため高い剛性を持ち、トランスファーモールド等の高温高圧にさらされる場合においても、空間部分の変形が少なく、高信頼性が得られるという効果を有し、さらに、十分薄い構造でも高温高圧に耐えうるため、パッケージ全体の厚みを薄くすることができるという効果を有す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(実施の形態)
以下、本発明の実施の形態における電子部品パッケージについて図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は実施の形態における、SAWフィルタパッケージの断面図である。
【0019】
IDT部2(Interdigital Tranducer:櫛形電極)と電極3が形成された単結晶基板1の表面上に、空間5を有する樹脂層4が形成され、さらに樹脂層4の表面にたとえば銅からなる金属層6が積層されている。
【0020】
電極3から外部電極7への接続は、樹脂層4に設けられた接続孔8に銅などの金属が充填されて行われる。
【0021】
外部電極7は、空間5の蓋を形成する金属層6と同材の金属からなり、絶縁樹脂層9によって他の電極や蓋部分と分離されている。
【0022】
電極および中空部蓋を形成する金属層6に銅を用いたのは、めっき成膜が容易であり、有底孔への充填めっきと蓋部分のめっきが同時に行えることと、電気抵抗が低く電気的特性が良好なためである。しかし、同様の金属層6が形成できれば、銅に限定するものではない。
【0023】
このパッケージを回路基板に半田等で実装して使用する際に、絶縁樹脂層9の熱膨張等によって、外部電極7に熱変形が生じる。この熱変形が接続孔8と電極3を介して単結晶基板1に伝わる。
【0024】
樹脂層4の弾性率の平均値を絶縁樹脂層9の弾性率の平均値よりも大きくすることにより、外部電極7に発生する熱変形を極力抑えることができ、かつ、それによって引き起こされる接続孔8の変形も抑制できるため、単結晶基板1への影響を極力抑えることができ、特性が著しく変化したり、場合によっては、単結晶基板にクラックが発生するという問題を極力防止でき、高信頼性を有するパッケージを得ることができる。なお、弾性率は、ヤング率であり、弾性率の平均値とは、(25℃のヤング率+260℃のヤング率)/2である。以下同じ。
【0025】
さらに、十分薄い構造にできるので、絶縁樹脂層9の厚み方向の見かけの熱膨張が小さくなり、外部電極7の熱変形を小さくすることができる。
【0026】
また、金属層6が形成されることにより、絶縁樹脂層9の占める体積が減少するので、さらに外部電極7の熱変形を小さくすることができる。
【0027】
(実施例及び比較例)
本発明を実施例、比較例に基づいて説明する。
【0028】
単結晶基板1(材料:リチウムタンタレート、厚み:250μm)、樹脂層4(材料:ポリイミド、厚み:10μm)、絶縁樹脂層9(材料:エポキシ樹脂、厚み:30μm)からなる電子部品パッケージを用いて、260℃リフロー後に、単結晶基板1に発生する引張応力を、線形構造解析(FEMを利用)による計算によって求めた。パッケージの面内寸法は、850×650μmである。
【0029】
この結果を(表1)に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
この(表1)より、比較例1〜3では、絶縁樹脂層9の弾性率が大きいため、外部電極7に発生する熱変形を抑制することができず、単結晶基板1に発生する引張応力が大きくなる。
【0032】
また、樹脂層4の弾性率が小さいため、外部電極7の変形によって引き起こされる接続孔8の変形を抑制することができず、単結晶基板1に発生する引張応力が大きくなる。
【0033】
そこで、実施例1のように、樹脂層4の弾性率を3925MPa、絶縁樹脂層9の弾性率を1464MPaにすると、外部電極7に発生する熱変形を抑制することができ、かつ、外部電極7の熱変形によって引き起こされる接続孔8の変形も抑制することができるため、単結晶基板1に発生する引張応力を小さくすることができ、結果としてクラックが発生しない。
【0034】
実施例2、3も実施例1と同様である。ただし、樹脂層4と絶縁樹脂層9との弾性率の差は、2.5倍以上必要であることがわかる。
【0035】
次に、このようなパッケージ構造を実現するための製造方法を説明する。
【0036】
図2は、工程を追って説明するためのSAWフィルタパッケージの断面図である。
【0037】
図2(a)に示すように、IDT部2と電極3が複数個形成された単結晶基板1の表面上に、感光性の樹脂層4を均一な厚みに形成する。この樹脂層の厚みが空間部の高さに相当するので、完成後のパッケージ高さおよび必要な耐圧力性を考慮して決定する。
【0038】
本図では、IDT部と電極のセットが2組形成された単結晶基板を図示している。
【0039】
次に、図2(b)に示すように、樹脂層4の感光性を利用して、IDT部2上に空間5および電極3上に接続孔8を形成する。
【0040】
次に、図2(c)に示すように、膜材10を樹脂層4上全面に接着する。
【0041】
本実施例では膜材は厚み3μmの銅箔を用いる。銅箔の接着面に薄いシート状の熱硬化性接着剤を積層した後、樹脂層4に加圧積層し加熱することで、容易に接着することができる。また、樹脂層4に未硬化のエポキシ樹脂を用いると、銅箔10を樹脂層4に加圧した状態で樹脂層4を硬化させることにより、他の接着剤を用いることなく銅箔を接着できる。
【0042】
次に、図2(d)に示すように、銅箔10をフォトリソ法でエッチングし、接続孔8上の開口11と、他の電極と電気的に分離するためのパターン12を形成する。
【0043】
このとき、銅箔10は厚み3μmと十分薄いため、パターン12は非常に細かいものも可能である。
【0044】
次に、図3(a)に示すように、パターン化された樹脂層13を設ける。
【0045】
樹脂層13は、めっき銅層を分割する境界になるもので、少なくとも接続用孔上の開口11、および空間5上の銅箔10は露出するように設ける。
【0046】
樹脂層13の厚みは、空間5上に必要な銅厚以上の値とする。
【0047】
空間5上に必要な銅厚は、完成後の電子部品パッケージに必要な耐圧力から決められる値とする。
【0048】
次に、図3(b)に示すように、次工程のめっき用電極となる金属薄膜14を成膜する。 本実施例では、スパッタ法により、チタン膜と銅膜を合計300nm成膜した。
【0049】
金属薄膜14は、接続孔8の内部および電極3の表面にも成膜されることが必要である。
【0050】
次に、図3(c)に示すように、前工程で成膜した金属薄膜14をめっき電極として、表面全体に銅層15をめっき形成する。このときの銅層厚みとしては、少なくとも接続用孔8内部に充填されるとともに、空間5上に最終必要な厚み以上の銅層が形成されることが必要である。
【0051】
次に、図3(d)に示すように、めっき形成された銅層15表面を切削し、樹脂層13上に堆積した銅を除去し、樹脂層13が露出するまで切削を行う。
【0052】
この結果、表面全体に形成されていためっき銅層は、樹脂層13によって、複数の部分に分断される。この分断された部分は、複数の外部接続用電極16と空間5上の蓋17に相当するように、樹脂層13はパターン設計されている。
【0053】
また、空間5上の蓋に相当する部分の銅層17は、外部接続用電極を兼ねるものとすることもできる。
【0054】
このように、めっき銅層15は、空間5を外圧から保護するための十分な厚みを持ちながら、微細なパターンに分断形成することが可能となる。
【0055】
次に、図3(e)に示すように、ダイシングを行い、個片化することにより、パッケージが完成する。
【0056】
なお、本実施の形態では、表面弾性波フィルタ(SAW)素子を用いたが、これに限らず、加速度センサ素子、角速度センサ素子等の、表面に機能的構造を有して他の物体が接することによって特性変化を来たすために、素子表面が中空状態に保たれたパッケージに適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上のように、本発明の電子部品パッケージ構造は、素子表面が中空状態に保たれたパッケージに適用することができ、小型かつ高信頼性が得られるものである。
【0058】
また、本発明の電子部品パッケージの製造方法は、外圧に耐えることができる十分な厚みの金属層6を形成し、かつ微細な部分に金属層6を分断して電極を形成することが可能で、高信頼かつ小型の電子部品パッケージを提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施の形態における電子部品パッケージの断面図
【図2】同実施の形態における電子部品パッケージの製造方法を示す図
【図3】同実施の形態における電子部品パッケージの製造方法を示す図
【図4】従来のパッケージの断面図
【図5】従来のパッケージの断面図
【符号の説明】
【0060】
1 単結晶基板
2 IDT部
3 電極
4 樹脂層
5 空間
6 金属層(蓋部分)
7 外部電極
8 接続孔
9 絶縁樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に機能領域と電極を有する素子が形成された基板と、
前記基板の前記機能領域上に空間を設けて配置された樹脂層と、
前記空間を覆う金属層と、
前記金属層の前記樹脂層に対応する位置に設けられた絶縁樹脂層
とからなる電子部品パッケージであって、
前記樹脂層の弾性率が前記絶縁層の弾性率よりも大きいことを特徴とする電子部品パッケージ構造。
【請求項2】
前記樹脂層に前記機能領域へ連結される通路と、
前記通路に連結される外部電極が、金属層に設けられている請求項1に記載の電子部品パッケージ構造。
【請求項3】
樹脂層の弾性率が、絶縁樹脂層の弾性率の2.5倍以上である請求項1ないし2に記載の電子部品パッケージ構造。
【請求項4】
基板が半導体単結晶である請求項1ないし3記載の電子部品パッケージ構造。
【請求項5】
空間が中空封止構造である請求項1ないし4記載の電子部品パッケージ構造。
【請求項6】
機能領域が表面弾性波フィルター、加速度センサ、角加速度センサーである請求項1ないし5記載の電子部品パッケージ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−65077(P2009−65077A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−233755(P2007−233755)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】