説明

電子部品モジュール、及び電子部品モジュールの製造方法

【課題】部品の集積化を図りつつ、配線層と内蔵する電子部品との接合部における比抵抗が高くなることを抑制できる電子部品モジュール、及び電子部品モジュールの製造方法を提供すること。
【解決手段】部品内蔵基板10は、絶縁層11上に形成される厚銅パターン12と、絶縁層11の内部に配置されるとともに、銀ナノフィラーNf同士を焼結した金属焼結体からなる接合材16により厚銅パターン12と電気的に接合された電子部品15と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品モジュール、及び電子部品モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、配線パターンを付与した基板上に、半導体素子やコイルなどの電子部品を実装することが行われている。そして、電子部品を高密度実装するための基板の一種として、内部に半導体素子などの電子部品を内蔵した基板(電子部品モジュール)が提供されている(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1では、ベース配線層に電子部品を配置するとともに、このベース配線層の両面に対して、熱硬化シートを介在させた状態で配線層を配設して加熱することにより、電子部品及びベース配線層を内蔵した部品内蔵基板としている。特許文献1の部品内蔵基板では、基板表面に他の電子部品を実装可能であり、基板における部品の集積化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−200376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、熱硬化性樹脂と半田粒子を混合した接合材を加熱することにより半田粒子を溶融させ、電子部品とベース配線層を電気的に接合している。このため、特許文献1では、電子部品とベース配線層との接合部の内部において熱硬化性樹脂が残存することに伴って、前記接合部における比抵抗(電気抵抗率)が高くなり、発熱しやすくなる虞がある。
【0006】
本発明は、上記従来技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、部品の集積化を図りつつ、配線層と内蔵する電子部品との接合部における比抵抗が高くなることを抑制できる電子部品モジュール、及び電子部品モジュールの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、配線層と、前記配線層と電気的に接合された電子部品と、前記配線層の前記電子部品が接合された側に形成される絶縁層と、を備える電子部品モジュールにおいて、前記電子部品は前記絶縁層の内部に配置され、前記電子部品は、金属粒子同士が焼成された金属焼成体により前記配線層と接合されたことを要旨とする。
【0008】
これによれば、絶縁層の内部に電子部品が配設されることで部品の集積化を図ることができる。そして、金属粒子同士を焼成した金属焼成体により、配線層と内蔵される電子部品とが電気的に接合される。したがって、電子部品と配線層を接合する接合部の内部に熱硬化性樹脂が残存する従来の構成と比較して、比抵抗が高くなることを抑制できる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子部品モジュールにおいて、前記絶縁層は、熱硬化性樹脂からなり、前記電子部品及び前記金属焼成体は、前記熱硬化性樹脂に埋設されたことを要旨とする。
【0010】
これによれば、絶縁層が熱硬化性樹脂からなるため、電子部品モジュールの全体の強度を向上できる。さらに、電子部品や、電子部品と配線層を電気的に接合する金属焼成体が硬化した熱硬化性樹脂に埋設される。したがって、機械的な衝撃によって電子部品や、金属焼成体(接合部)が破損することを抑制できる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の電子部品モジュールにおいて、前記電子部品は第1の電子部品であり、スズを含む半田により第2の電子部品が前記配線層に実装され、前記金属焼成体の融点は、前記半田の融点より高いことを要旨とする。
【0012】
これによれば、電子部品モジュールに対して第2の電子部品を実装する際に、スズを含む半田の種類を自由に選択することができる。したがって、実装における工程に自由度を与え、表面実装をし易くできる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子部品モジュールにおいて、前記配線層は複数あり、前記配線層は前記絶縁層の両面に配置されたことを要旨とする。これによれば、絶縁層の両面に配線層を配置することで、さらに部品の集積化を図ることができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、電子部品モジュールの製造方法において、有機溶媒に金属粒子を混合した混合体を介在させて電子部品を配線層に配設する配設工程と、加熱により前記混合体に含まれる有機溶媒を除去するとともに前記金属粒子同士を焼成して金属焼成体とし、前記電子部品と前記配線層を電気的に接合させる接合工程と、前記電子部品の周囲に絶縁層を形成する絶縁工程と、を含むことを要旨とする。
【0015】
これによれば、電子部品の周囲に絶縁層が形成されることに伴って絶縁層の内部に電子部品が配設されることにより、部品の集積化を図ることができる。そして、加熱により混合体に含まれる有機溶媒を除去するとともに、金属粒子同士を焼成して金属焼成体とし、電子部品と配線層を電気的に接合できる。このため、電子部品と配線層を接合する接合部の内部に熱硬化性樹脂が残存する従来の構成と比較して、比抵抗が高くなることを抑制できる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の電子部品モジュールの製造方法において、前記絶縁工程では、前記配線層の前記電子部品が配設される側に硬化前の熱硬化性樹脂を配設し、加熱により前記熱硬化性樹脂を熱硬化させて前記絶縁層を形成するようになっており、前記接合工程における加熱と、前記絶縁工程における加熱とは、同時に行われることを要旨とする。
【0017】
これによれば、金属粒子同士を焼成して金属焼成体とするのと同時に、熱硬化性樹脂による絶縁層を形成できる。したがって、より簡便に電子部品モジュールを製造できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、部品の集積化を図りつつ、配線層と内蔵する電子部品との接合部における比抵抗が高くなることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)は、部品内蔵基板の模式的な断面図、(b)は、接合材の表面の走査型電子顕微鏡写真。
【図2】部品内蔵基板の製造方法を示すフローチャート。
【図3】(a)〜(c)は、部品内蔵基板の製造方法を示す模式図。
【図4】別の実施形態における部品内蔵基板の模式的な断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した実施形態について、図1〜図3にしたがって説明する。
図1(a)に示すように、本実施形態の電子部品モジュール及び電子機器としての部品内蔵基板10は、絶縁性を有する絶縁材料からなる絶縁層11を備えている。本実施形態において、絶縁層11は、熱硬化性樹脂の一種であるエポキシ樹脂を熱硬化させて形成されているとともに、その全体が無垢の平板状をなしている。なお、熱硬化後のエポキシ樹脂の熱分解温度は、300℃以上とされている。
【0021】
絶縁層11の両面には、厚さが0.1〜0.5mmの厚銅箔を打ち抜き加工して形成した配線層(金属板)としての厚銅パターン12,13がそれぞれ形成(接合)されている。したがって、部品内蔵基板10は、厚銅パターン12,13が絶縁層11の両面に形成(配置)された両面基板とされている。換言すれば、部品内蔵基板10は、複数の配線層(厚銅パターン12,13)が絶縁層11を介して積層されていると把握することもできる。
【0022】
本実施形態において「積層」とは、部品内蔵基板10の厚さ方向(矢印xに示す)に層状をなす厚銅パターン12,13や、絶縁層11を積み重ねるように配置することを意味し、部品内蔵基板10の平面視において必ずしも全体が重複する場合のみならず、平面視で一部又は全部が重複していない状態をも含むものとする。また、以下の説明では、便宜上、各厚銅パターン12,13において、絶縁層11側の面を「裏面」と示し、その反対側の面を「表面」と示す。
【0023】
厚銅パターン12の裏面には、第1の電子部品としての電子部品15の端子部15aが接合材16によって電気的に接合されている。すなわち、電子部品15は、厚銅パターン12の裏面と接合材16によって電気的に接合されている。電子部品15には、例えば、半導体素子、コンデンサ、コイル、及び抵抗などが採用される。厚銅パターン12の裏面に接合された電子部品15は、絶縁層11の内部に配置されており、接合材16を含めその全体が絶縁層11の内部に埋設されている。換言すれば、絶縁層11は、厚銅パターン12において電子部品15が接合された側に形成されているといえる。
【0024】
また、本実施形態の接合材16は、金属粒子同士が焼成された金属焼成体とされている。より具体的に言えば、本実施形態の接合材16は、金属粒子同士を焼結により金属接合(金属結合)させた金属焼結体からなる。図1(b)の走査型電子顕微鏡写真(加速電圧=10.0kV/倍率=5万倍)に示すように、接合材16は、粒子径(図1(b)における横方向の長さ)が10〜1000nmである微細な銀の微粒子からなる金属粒子としての銀ナノフィラーNfを焼結させた焼結体とされている。このため、接合材16の表面には、空孔kが形成されている。なお、本実施の形態において空孔kの径は0.5μm以下且つ0μmより大きい。
【0025】
また、接合材16は、その比抵抗が10〜30μΩ・cmであり、密度が5.3〜10.5g/cmとされている。また、接合材16は、その断面を走査型電子顕微鏡写真で観察した場合、断面積の全体に占める銀ナノフィラーNfの断面積の割合が50%以上であり、好ましくは80%以上とされている。
【0026】
次に、部品内蔵基板10の製造方法について図2及び図3にしたがって説明する。
最初に、図2に示すように、有機溶媒(本実施形態では、テルピネオール及びエタノール)と銀ナノフィラーNfを混合した混合体としての銀ペースト18(図3に示す)を得るペースト調製工程を行う(ステップS1)。ペースト調製工程では、増粘剤(バインダ)となるテルピネオールと、銀ナノフィラーNfを混合するとともに、さらに希釈剤(粘度調整剤)となるエタノールを加えつつ均一となるまで混合し、最終的に粘度を50〜100Pa・sに、より好ましくは80〜100Pa・sに調整する。
【0027】
本実施形態において、銀ペースト18は、80〜98重量%、より好ましくは90〜95重量%の銀ナノフィラーNfを含む。テルピネオールの沸点は、217〜220℃であるとともに、エタノールの沸点は、78.3℃であり、何れも室温(1〜30℃)よりも高い。
【0028】
また、本実施形態の銀ナノフィラーNfは、表面に酸化膜が形成されていないとともに、その表面の全体に有機分子(有機化合物)としてのカルボン酸(R−COOH、但しR=C2n+1,1≦n≦12)からなる有機皮膜が形成され、被覆されている。このため、銀ナノフィラーNfの表面は、有機皮膜により酸化が抑制されている。
【0029】
次に、銀ペースト18を介在させて電子部品15を厚銅パターン12の裏面に配設する配設工程を行う(ステップS2)。配設工程では、図3(a)に示すように、厚銅パターン12の裏面において、電子部品15を接合させる部分に銀ペースト18を塗布するとともに、塗布した銀ペースト18に対して端子部15aを整合させて電子部品15を仮固定(配設)する。前述のように、銀ペースト18は、その粘度を50〜100Pa・sに調製されているため、厚銅パターン12の裏面に仮固定された電子部品15は、容易に移動しない。
【0030】
次に、図2に示すように、厚銅パターン12のうち電子部品15の配設面(裏面)側に硬化前のエポキシ樹脂11aを積層(配設)するとともに、厚銅パターン13を積層する積層工程を行う(ステップS3)。積層工程では、図3(b)に示すように、厚銅パターン12の裏面(電子部品15の配設面)のうち、電子部品15の配設領域を除いた領域に対して、硬化前(熱硬化前)のエポキシ樹脂11aを塗布により積層する。
【0031】
続けて、厚銅パターン12とエポキシ樹脂11aの積層体に対し、さらにエポキシ樹脂11a側に厚銅パターン13を積層する。この際、厚銅パターン12の裏面に仮固定された電子部品15は、硬化前のエポキシ樹脂11aと厚銅パターン13とに囲まれる空間S内に配置される。このため、銀ペースト18を焼結して接合材16とする以前に、エポキシ樹脂11a及び厚銅パターン13が電子部品15に接触することで、電子部品15が当初の仮固定(配設)位置から移動してしまうことが抑制される。
【0032】
次に、図2に示すように、加熱(加熱処理)により銀ペースト18に含まれる有機溶媒(テルピネオール及びエタノール)を除去するとともに銀ナノフィラーNf同士を焼結(焼成)して金属焼結体(金属焼成体)とし、電子部品15と厚銅パターン12を電気的に接合させる接合工程を行う(ステップS4)。本実施形態の接合工程では、加熱(加熱処理)により硬化前のエポキシ樹脂11aを熱硬化させて絶縁層11を形成する工程を兼ねている。
【0033】
図3(b)に示すように、大気雰囲気(常圧)下で、厚銅パターン12,13及び硬化前のエポキシ樹脂11aの積層体に対し、厚銅パターン12,13の少なくとも一方側から冶具を用いて3〜8MPaで加圧しつつ、毎分3〜5℃で昇温、250℃で10分間、加熱する。ここで、250℃は、銀の融点である960℃より低く、且つ銀ペースト18に含まれる有機溶媒(テルピネオール、及びエタノール)の沸点より高い温度である。
【0034】
接合工程では、250℃の加熱により、銀ペースト18に含まれるテルピネオール、及びエタノールが蒸発(気化)されるとともに、銀ナノフィラーNfの表面から有機皮膜を構成するカルボン酸が離脱して蒸発(気化)する。そして、酸化皮膜が除去された銀ナノフィラーNfは、相互に金属接合され、図1(b)に示すような金属焼結体が形成され、接合材16となる。
【0035】
また、接合工程では、図3(b)の矢印Yに示すように、硬化前のエポキシ樹脂11aが加熱による温度上昇に伴って熱硬化しつつ、冶具による加圧によって空間Sを埋めるように移動する。そして、図3(c)に示すように、硬化前のエポキシ樹脂11aによって空間Sが隙間無く埋められることにより、電子部品15及び接合材16(銀ペースト18)とエポキシ樹脂11aとが密着される。
【0036】
なお、接合工程において、気化に伴って銀ペースト18から放出される有機溶媒や有機皮膜は、エポキシ樹脂11aの移動とともに厚銅パターン12の切れ目などから外部に放出される。また、接合工程では、加熱されたエポキシ樹脂11aによって焼結中の銀ペースト18が加圧されることで、気化した有機溶媒や有機皮膜が銀ペースト18から押し出され、より空孔kの少ない緻密な金属焼結体が形成される。一般に金属焼結体では、空孔kを完全になくすことが困難であるものの、本実施形態では、エポキシ樹脂11aによる加圧により空孔kの形成を極力、抑制している。
【0037】
その後、エポキシ樹脂11aの熱硬化が完了し、電子部品15が埋設された状態(内部に配設された状態)で絶縁層11が形成されるとともに、厚銅パターン12,13が絶縁層11に接合される。すなわち、電子部品15の周囲に絶縁層11が形成される。このように、本実施形態では、積層工程、及び接合工程により絶縁工程が構成されているとともに、絶縁層11を形成するための加熱は、接合工程において銀ナノフィラーNfを焼結するための加熱と同時に行われる。
【0038】
次に、上記のように構成した部品内蔵基板10に対し、電子部品15とは別の電子部品20を、半田20aを用いて表面実装する際の作用を中心に図1(a)を参照して説明する。
【0039】
本実施形態において、電子部品15と厚銅パターン12を接合する接合材16(金属焼結体)は、銀そのものの融点である960℃より低温において溶融することがなく、安定である。このため、図1(a)に示すように、本実施形態の部品内蔵基板10に対して、部品内蔵基板10の全体を加熱するリフロー方式により、電子部品20を表面実装する場合には、金属焼結体(銀)の融点、及びエポキシ樹脂の熱分解温度より低い温度の融点をもつ各種の半田を半田20aとして自由に選択し、利用することができる。
【0040】
一般に、例えば、スズ(錫)−鉛からなる半田の融点は、183℃であり、スズ−銀−銅からなる半田の融点は、218℃であり、スズ−ビスマス−銀からなる半田の融点は、138℃であり、スズ−亜鉛−アルミニウムからなる半田の融点は、199℃である。すなわち、本実施形態の接合材16を構成する金属焼結体の融点は、スズを含む半田の融点より高い。したがって、本実施形態の部品内蔵基板10では、これらスズを含む半田の何れを半田20aとして用いても、電子部品20を部品内蔵基板10に対して表面実装することが可能である。本実施形態では、電子部品20が第2の電子部品となる。
【0041】
したがって、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)絶縁層11の内部に電子部品15が配設されることにより、部品の集積化を図ることができる。そして、銀ナノフィラーNf同士が焼結(金属接合)された金属焼結体からなる接合材16により、厚銅パターン12と内蔵される電子部品15とが電気的に接合される。したがって、電子部品15と厚銅パターン12を接合する接合部の内部に熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂など)が残存する従来の構成と比較して、比抵抗(電気抵抗率)が高くなることを抑制できる。
【0042】
(2)絶縁層11は、熱硬化させたエポキシ樹脂11aからなるため、部品内蔵基板10の全体の強度を高めることができる。さらに、電子部品15、及び接合材16は、硬化したエポキシ樹脂11a(絶縁層11)に埋設される。したがって、機械的な衝撃によって電子部品15や、接合材16が破損することを抑制できる。
【0043】
(3)一般に、電子部品15の接合に何れかの半田を用いた場合には、その後に電子部品20を実装(接合)する際、既に使用済みの半田20aよりも融点が低い半田を使用する必要がある。このため、半田20aの選択に制約が生じ、表面実装がし難くなる虞がある。これに対して、本実施形態の部品内蔵基板10では、接合材16(金属焼結体)の融点がスズを含む半田の融点より高いため、部品内蔵基板10に電子部品15とは別の電子部品20を実装する際に、スズを含む半田の種類を自由に選択できる。したがって、表面実装における工程に自由度を与え、表面実装をし易くできる。
【0044】
(4)部品内蔵基板10は、絶縁層11の両面に厚銅パターン12,13を配置した構成とした。したがって、さらに部品の集積化を図ることができる。
(5)本実施形態では、ステップS2〜S4の工程を含む製造方法により部品内蔵基板10が製造される。したがって、電子部品15の周囲に絶縁層11が形成されることに伴って絶縁層11の内部に電子部品15が配設されることにより、部品の集積化を図ることができる。そして、加熱により銀ペースト18に含まれる有機溶媒を除去するとともに、銀ナノフィラーNf同士を焼結して金属焼結体とし、厚銅パターン12と電子部品15とを電気的に接合できる。したがって、電子部品15と厚銅パターン12を接合する接合部の内部に熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂など)が残存する従来の構成と比較して、比抵抗(電気抵抗率)が高くなることを抑制できる。
【0045】
(6)絶縁層11を形成するための加熱は、接合工程において銀ナノフィラーNfを焼結するための加熱と同時に行われる。したがって、銀ナノフィラーNf同士を焼結して金属焼結体とするのと同時に、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂11a)による絶縁層11を形成できる。したがって、より簡便に部品内蔵基板10を製造できる。
【0046】
(7)接合工程(ステップS4)では、加熱されたエポキシ樹脂11aによって焼結中の銀ペースト18を加圧することで、銀ペースト18内で気化した有機溶媒や有機皮膜を押し出すことができる。このため、空孔kが少ないより緻密な金属焼結体を形成できるとともに、接合材16の内部に有機溶媒や有機皮膜の残渣が残留することを効果的に抑制できる。したがって、比抵抗(電気抵抗率)が高くなることを抑制できる。
【0047】
(8)有機溶媒(テルピネオール、及びエタノール)の沸点は、接合工程における加熱温度より低温である。このため、銀ナノフィラーNfを焼結する際に有機溶媒を気化(蒸発)させ、接合材16内に有機溶媒が残留することを抑制できる。したがって、比抵抗が高くなることを抑制できる。
【0048】
(9)銀ペースト18の粘度を50〜100Pa・sに設定した。このため、銀ペースト18の取り扱いが容易になるとともに、厚銅パターン12の裏面に電子部品15を仮固定し易くできる。
【0049】
(10)銀ペースト18は、80重量%以上且つ98重量%以下の銀ナノフィラーNfを含む。このため、接合工程(有機溶媒の除去及び銀ナノフィラーNfの焼結)の際に、接合材16(銀ペースト18)の体積が減少することを抑制できる。したがって、容易に製造できる。
【0050】
なお、本実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 絶縁層11の内部において、厚銅パターン12,13とは別の厚銅パターン(配線層)をさらに配設(埋設)するとともに、この厚銅パターンに電子部品15を電気的に接合させた構成としてもよい。例えば、図4に示すように、絶縁層11の内部に厚銅パターン21を配置するとともに、接合材16により厚銅パターン21に電子部品15を電気的に接合させる。これによれば、さらに部品の集積化を図ることができる。この場合、積層工程(ステップS3)において、厚銅パターン12とエポキシ樹脂11aの積層体に対し、厚銅パターン13に代えて部品内蔵基板10を積層すればよい。また、ステップS3,S4の工程を繰り返すことで、絶縁層11の内部において、厚銅パターン(配線層)を2層以上、配置(埋設)した構成としてもよい。さらに、絶縁層11の内部に単層、又は複数層の厚銅パターン(配線層)を配置した構成とする場合には、厚銅パターン12,13を含め、部品内蔵基板10に含まれる全ての厚銅パターンのうち少なくとも1つの厚銅パターンに対して、電子部品15が絶縁層11の内部に配置されるように接合されておればよい。
【0051】
○ 部品内蔵基板10は、図1(a)に示すように、厚銅パターン12に対して前述したスズを含む半田20aを用いて、電子部品15とは別の電子部品20を実装(表面実装)した構成としてもよい。同様に、電子部品20は、スズを含む半田を用いて、厚銅パターン13に対して実装してもよく、また両厚銅パターン12,13に実装してもよい。
【0052】
○ 部品内蔵基板10において、電子部品15の一方の端子部15aを厚銅パターン12の裏面に接合し、他方の端子部15aを厚銅パターン13の裏面に接合した構成としてもよい。すなわち、絶縁層11の内部に配置される電子部品15は、複数の配線層に対して接合された構成としてもよい。
【0053】
○ エポキシ樹脂11aとは別の樹脂材料を用いて絶縁層11を形成してもよい。
○ 部品内蔵基板10において、電子部品15は、全体のうち少なくとも一部が絶縁層11の内部に配置(埋設)されておればよい。このように構成しても、部品の集積化を図ることができる。
【0054】
○ 部品内蔵基板10において、厚銅パターン13を省略した片面基板としてもよい。この場合、積層工程(ステップS3)から厚銅パターン13を積層する作業を省略すればよい。
【0055】
○ 部品内蔵基板10において、厚銅パターン13の裏面にも電子部品15を接合するとともに、この電子部品15を絶縁層11の内部に配置した構成としてもよい。この場合、積層工程(ステップS3)において、裏面に銀ペースト18で電子部品15を仮固定した厚銅パターン13を積層すればよい。
【0056】
○ 電子部品15は、絶縁層11との間に隙間がある状態で埋設されていてもよい。この場合、接合工程(ステップS4)において、エポキシ樹脂11aの硬化時に空間Sが残存するようにすればよい。ただし、接合材16をより緻密な金属焼結体とする観点から、上記実施形態のように構成することが好ましい。
【0057】
○ 絶縁層11には、充填材としてガラス繊維を含んでもよく、さらにガラス繊維シートをエポキシ樹脂で固めた絶縁層11としてもよい。この場合、積層工程(ステップS3)において、ガラス繊維を練りこんだエポキシ樹脂11aを積層したり、ガラス繊維シートの両面をエポキシ樹脂11aで覆ったシートを積層してもよい。
【0058】
○ 配設工程(ステップS2)において、電子部品15の端子部15aに銀ペースト18を塗布し、その銀ペースト18を塗布した電子部品15を厚銅パターン12の裏面に仮固定(配設)してもよい。
【0059】
○ 配設工程(ステップS2)において、電子部品15を厚銅パターン12に仮固定した状態で、例えば250℃で10分間加熱することにより、銀ナノフィラーNfを焼結させてから次の積層工程(ステップS3)を行ってもよい。但し、製造工程を簡略化する観点から、上記実施形態のように構成することが好ましい。
【0060】
○ 積層工程(ステップS3)において、軟質シート状に形成した硬化前のエポキシ樹脂(熱硬化性樹脂)11aを厚銅パターン12の裏面に対して積層することにより、エポキシ樹脂を配設してもよい。
【0061】
○ 積層工程(ステップS3)において、硬化前のエポキシ樹脂11aを厚銅パターン13に積層(塗布)した積層体を厚銅パターン12の裏面に対して積層してもよい。
○ 銀ペースト18に用いる希釈剤(粘度調整剤)は、エタノールに代えてメタノール、オクタノール、ヘキサン、又はトルエンなどを用いてもよい。すなわち、沸点が室温以上であり、且つ沸点が接合工程における加熱温度より低い有機溶媒であればよい。
【0062】
○ 銀ペースト18に用いる増粘剤(バインダ)は、テルピネオールに代えてグリコール酸などを用いてもよい。すなわち、沸点が室温以上であり、且つ沸点が接合工程における加熱温度より低い有機溶媒であればよい。
【0063】
○ 金属粒子(銀ナノフィラーNf)の表面に形成する有機皮膜(カルボン酸)としては、例えばステアリン酸、オレイン酸、リノール酸など、異なる有機分子により構成してもよい。
【0064】
○ 金属粒子として、銀ナノフィラーNfに代えて、微細な銅の微粒子からなる銅ナノフィラーを用いてもよい。なお、銅の融点は1083℃である。また、スズやニッケルの微粒子からなるナノフィラーを用いてもよい。
【0065】
○ 金属粒子(銀ナノフィラーNf)の粒子径は、適宜変更してもよい。また、異なる粒子径の金属粒子を組み合わせて用いてもよい。
○ 接合工程(ステップS4)の温度は、例えば260℃など、金属粒子同士が金属接合されて金属焼結体となり、且つエポキシ樹脂11aが熱硬化する温度であれば、適宜変更してもよい。
【0066】
○ 接合工程(ステップS4)における加熱時間は、例えば30分など、金属粒子同士が金属接合されて金属焼結体となり、且つエポキシ樹脂11aが熱硬化する時間であれば、適宜変更してもよい。
【0067】
○ 厚銅パターン12と、銀ナノフィラーNf同士を焼結(金属接合)した金属焼結体により厚銅パターン12と電気的に接合された電子部品15と、を備えた電子機器としての基板としてもよい。すなわち、電子部品15は、その全体が絶縁層11の内部に配置されていない構成や、厚銅パターン12の裏面に代えて厚銅パターン12の表面に接合された構成としてもよい。この場合には、絶縁層11上に形成された厚銅パターン12に対して、銀ペースト18を介在させた状態で電子部品15を配置するとともに、加熱によって有機溶媒を除去しつつ銀ナノフィラーNf同士を焼結(金属接合)して金属焼結体とし、電子部品15と厚銅パターン12とを電気的に接合させればよい。このように構成した場合には、接合材16の内部に熱硬化性樹脂が残存する従来の構成と比較して、厚銅パターン12と電子部品15の接合部における比抵抗が高くなることを抑制できる。そして、本別例によれば、電子部品15とは別の電子部品20を接合する際に、半田20aの選択に自由度を与えることができる。
【0068】
次に、上記実施形態及び別例(変形例)から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)配線層と、金属粒子同士を焼結した金属焼結体により前記配線層と電気的に接合された電子部品と、を備えた電子機器。
【0069】
(ロ)単層又は複数層の配線層と、絶縁層の内部に配置されるとともに、金属粒子同士を金属接合させた金属焼結体により前記配線層のうち少なくとも1つの配線層と電気的に接合された電子部品と、を備えた電子部品モジュール。
【符号の説明】
【0070】
10…部品内蔵基板(電子部品モジュール、電子機器)、11…絶縁層、11a…エポキシ樹脂(熱硬化性樹脂)、12…厚銅パターン(配線層)、15…電子部品(第1の電子部品)、16…接合材(金属焼成体)、20…電子部品(第2の電子部品)、20a…半田、S2…配設工程、S3…積層工程(絶縁工程)、S4…接合工程(絶縁工程)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線層と、
前記配線層と電気的に接合された電子部品と、
前記配線層の前記電子部品が接合された側に形成される絶縁層と、
を備える電子部品モジュールにおいて、
前記電子部品は前記絶縁層の内部に配置され、
前記電子部品は、金属粒子同士が焼成された金属焼成体により前記配線層と接合されたことを特徴とする電子部品モジュール。
【請求項2】
前記絶縁層は、熱硬化性樹脂からなり、
前記電子部品及び前記金属焼成体は、前記熱硬化性樹脂に埋設されたことを特徴とする請求項1に記載の電子部品モジュール。
【請求項3】
前記電子部品は第1の電子部品であり、スズを含む半田により第2の電子部品が前記配線層に実装され、
前記金属焼成体の融点は、前記半田の融点より高いことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子部品モジュール。
【請求項4】
前記配線層は複数あり、前記配線層は前記絶縁層の両面に配置されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子部品モジュール。
【請求項5】
有機溶媒に金属粒子を混合した混合体を介在させて電子部品を配線層に配設する配設工程と、
加熱により前記混合体に含まれる有機溶媒を除去するとともに前記金属粒子同士を焼成して金属焼成体とし、前記電子部品と前記配線層を電気的に接合させる接合工程と、
前記電子部品の周囲に絶縁層を形成する絶縁工程と、を含むことを特徴とする電子部品モジュールの製造方法。
【請求項6】
前記絶縁工程では、前記配線層の前記電子部品が配設される側に硬化前の熱硬化性樹脂を配設し、加熱により前記熱硬化性樹脂を熱硬化させて前記絶縁層を形成するようになっており、
前記接合工程における加熱と、前記絶縁工程における加熱とは、同時に行われることを特徴とする請求項5に記載の電子部品モジュールの製造方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−216612(P2012−216612A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79835(P2011−79835)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】