説明

電子部品回路基板

【課題】複数の発熱部品を共通して放熱する放熱手段において、放熱手段の温度分布の所望の分布にする技術を提供する。
【解決手段】基板2の上には、第1のIC3と第2のIC4が実装されている。第2のIC4が第1のIC3より発熱量が大きい部品である。第1のIC3と第2のIC4の上には、それらを共通に放熱板5が取り付けられ、ビス8により基板2に固定されている。放熱板5には、発熱量の小さい第1のIC3を囲うように、略コの字状のスリット6が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品回路基板に係り、特に、基板上に取り付けられた複数の発熱部品と、それら発熱部品に共通に取り付けられた放熱板とを備える電子部品回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化及び薄型化の進展が大きく進んでおり、それに伴って発熱部品、例えばマイコン等のIC(集積回路)の密集化による温度上昇が大きな問題となっている。この問題に対し、図4に示すように、従来タイプの電子部品回路基板11では、基板12上に実装された第1と第2のIC13、14とを共通にビス18によって放熱板15が取り付けられている。この場合、第1と第2のIC13、14との互いの発熱が相互に影響し合い、より発熱量の小さい発熱部品、例えば、第1のIC13からの熱量が、より発熱量の大きい発熱部品である第2のIC14の放熱を阻害することになり、1つの発熱部品のみを1枚の放熱板で放熱する場合よりも放熱効果が低下するという課題があった。
【0003】
この様な熱分布の偏り等に起因する課題を解決する手段の一つに、熱膨張方向に対し直角方向に1又は複数本のスリットを設けることにより、セラミック基板と放熱板との間に歪を生ぜず、むらのない印刷を可能とする技術がある。この技術では、放熱板にスリットを追加することにより、熱膨張による放熱板の形状変化を小さくしている。
【0004】
当然、図5の電子部品回路基板21に示すように、第1と第2のIC13、14とを個々の放熱板15a、15bで放熱することもできるが、部品点数の低減、コスト低減等の観点から一つの放熱板による構成が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭59−94845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示の技術では、熱膨張による放熱板の形状変化を抑えて歪みが発生しないようにできているが、放熱構造については何ら対策が開示されていない。つまり、基板上に複数の発熱部品を備える製品について、どのように放熱を行うかの技術については開示がない。
【0007】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、複数の発熱部品を共通して放熱する放熱手段において、放熱手段の温度分布の所望の分布にする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る装置は、基板上に取り付けられた複数の発熱部品と、前記複数の発熱部品に共通に取り付けられた放熱板とを備える電子部品回路基板に関する。この電子部品回路基板では、前記放熱板には、前記複数の発熱部品の間の経路の伝熱を阻害するスリットが設けられている。
また、前記スリットは、前記複数の発熱部品のうち、相対的に発熱量の小さい発熱部品が取り付けられる領域に、前記相対的に発熱量の大きい発熱部品との間の経路の伝熱を阻害するように設けられてもよい。
本発明に係る別の装置は、基板上に取り付けられた第1及び第2の集積回路部品と、前記第1及び第2の集積回路部品に共通に取り付けられた放熱板とを備える集積回路部品であって、前記第1の集積回路部品は、前記第2の集積回路部品より発熱量が大きく、かつ、前記基板上に取り付けられたときに、平面視で略矩形を呈しており、前記放熱板は、前記第1の集積回路部品を囲うように形成されたスリットを有し、前記スリットは、前記第1の集積回路部品の前記略矩形の形状の4辺のうち前記第2の集積回路から最も遠い辺の近傍には形成されない形状である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の目的は、複数の発熱部品を共通して放熱する放熱手段において、放熱手段の温度分布の所望の分布にする技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係る、電子部品回路基板を模式的に示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る、電子部品回路基板の温度分布を従来例と比較して示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る、スリット形状の例を示した図である。
【図4】従来技術に係る、電子部品回路基板を模式的に示す図である。
【図5】従来技術に係る、電子部品回路基板を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を、図面を参照して具体的に説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る電子部品回路基板1を示した図であり、図1(a)は、平面図を示し、図1(b)は図1(a)のA−A断面図を示している。
【0013】
図示のように、基板2の上には、第1のIC3と第2のIC4が実装されている。ここでは、第1のIC3が相対的に発熱量が小さい部品であり、第2のIC4が第1のIC3より発熱量が大きい部品である。なお、発熱量の大小比較は、最大発熱量を基準としてもよいし、想定される動作の平均発熱量を基準としてもよい。また、第1のIC3と第2のIC4は、上面視で長方形の形状を有している。
【0014】
第1のIC3と第2のIC4の上には、それらを共通に放熱板5が取り付けられ、ビス8により基板2に固定されている。なお、第1のIC3及び第2のIC4と、放熱板5との間には、それらを密着させるために必要に応じて、放熱シート(図示せず)が介装されてもよい。
【0015】
放熱板5には、第1のIC3と第2のIC4とを遮るようにスリット6が設けられている。具体的には、発熱量の小さい第1のIC3を囲うように、略コの字状のスリット6が形成されている。このとき、第1のIC3の形状の左側の辺の近傍領域にはスリット6が形成されていない。つまり、コの字状の開口部分が、第2のIC4の反対側にあり、遠くなるようになっている。
【0016】
このような構成のスリット6を放熱板5に設けることで、従来と比較して、発熱量の大きい発熱体である第2のIC4の温度を下げることができ、一方で、発熱量の小さい発熱体である第1のIC3の温度を上げることができる。その結果、放熱板5全体の温度分布のバラツキを低減でき、均一化する方向に改善することができる。
【0017】
図2に放熱効果のシミュレーション結果を示す。図2(a)は、図1の構造の電子部品回路基板1に関する温度分布例を示し、図2(b)は、スリットを設けていない、図4で示した構造の電子部品回路基板11に関する温度分布例を示している。ここでは、スリット6の有無の条件のみが異なる。
【0018】
図示のように、発熱量の小さい第1のIC3は、従来の構成と比較して、温度が若干上場する。しかし、第2のIC4では温度は若干低下する。さらに、第1のIC3と第2のIC4の間の領域(スリット6より第2のIC4よりの領域)では、温度がかなり低下しているのが確認できる。このように、スリット6を第1のIC3の近傍に設けることによって、放熱板5全体での温度分布のバラツキを低減できる。また、放熱効果を分離して操作することができる。つまり、放熱効果を、発熱部品毎にコントロールすることが容易となる。
【0019】
なお、スリット6の形状は、コの字状に限る趣旨ではなく、たとえ、穴を設け、熱伝導経路を変化させ、熱の分離、集中等を制御する形状とするこができる。また、部分的に厚くしたり、薄くしたり、凸凹加工等を施す等によって厚みに変化をもたせてもよい。さらに、部分的に熱伝導率の小さい材質に変えたり、気泡を含む材料を採用してもよい。また、部分的に曲げたり、折り返したり、複数の放熱材料を接着又はビス止めする等をしてもよい。さらに、部分的にフィンを設けたりする等によって放熱部分の表面積を変化させてもよい。さらに、上述の形状を組み合わせることができる。なお、図3に、適用可能なスリット6の形状例を示す。そして、どのような形態のスリット6を適用するかは、第1のIC3及び第2のIC4のそれぞれの発熱量や、どの程度まで温度分布のバラツキ低減を行いたいか、さらに製造工程やコストによって決定される。
【0020】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0021】
1 電子部品回路基板
2 基板
3 第1のIC
4 第2のIC
5 放熱板
6 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に取り付けられた複数の発熱部品と、前記複数の発熱部品に共通に取り付けられた放熱板とを備える電子部品回路基板であって、
前記放熱板には、前記複数の発熱部品の間の経路の伝熱を阻害するスリットが設けられていることを特徴とする電子部品回路基板。
【請求項2】
前記スリットは、前記複数の発熱部品のうち、相対的に発熱量の小さい発熱部品が取り付けられる領域に、前記相対的に発熱量の大きい発熱部品との間の経路の伝熱を阻害するように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電子部品回路基板。
【請求項3】
基板上に取り付けられた第1及び第2の集積回路部品と、前記第1及び第2の集積回路部品に共通に取り付けられた放熱板とを備える集積回路部品であって、
前記第1の集積回路部品は、前記第2の集積回路部品より発熱量が大きく、かつ、前記基板上に取り付けられたときに、平面視で略矩形を呈しており、
前記放熱板は、前記第1の集積回路部品を囲うように形成されたスリットを有し、
前記スリットは、前記第1の集積回路部品の前記略矩形の形状の4辺のうち前記第2の集積回路から最も遠い辺の近傍には形成されない形状である
ことを特徴とする電子部品回路基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−79733(P2012−79733A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220615(P2010−220615)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】