説明

電子部品実装装置及び電子部品実装方法

【課題】電子部品の角形状による判定が困難で、極性判定マークが無い場合であっても、正規の電子部品を正しい位置及び角度で基板に実装できる電子部品実装装置または電子部品実装方法を提供する。
【解決手段】電子部品の保持状態を撮像し、前記保持状態の撮像結果に基づいて基板に実装する電子部品実装装置または方法において、前記電子部品は極性判定マークがなく、Nを1以上の整数とし、(360/N)度で規定される回転認識処理角度の範囲内に実装部を含めた形状が同一となる状態が一つしかない非回転対称部品であって、電子部品の保持状態の撮像結果から前記電子部品の部品認識像を得、前記電子部品の前記形状のあるべき状態を示す基準像、前記部品認識像のうち少なくとも一方を回転させて、前記回転認識処理角度の範囲内に両者が一致する角度が存在するかの回転認識処理し、正規の電子部品かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品実装装置及び電子部品実装方法に係わり、特に正規の電子部品を正しく基板の実装できる電子部品実装装置及び電子部品実装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品実装装置は、例えば保持部材である吸着ノズルで電子部品を吸着(保持)し、その吸着(保持)状態を部品認識カメラで撮像し、電子部品を認識し、電子部品の電極やリードなどを含めた形状(像)が正しいかの検査を行う。電子部品認識は得られた撮像によって吸着ノズルにおける電子部品の位置及び角度を算出して行なう。検査において欠陥のない正規の電子部品と判定し、電子部品認識によって電子部品の得られた位置及び角度で、実装するための位置及び角度を補正し当該電子部品を実装基板上に実装する。
【0003】
しかし、電子部品認識実行時、電子部品が所定の状態から回転した状態で認識(撮像)される場合がある。テープフィーダやトレイフィーダなどの電子部品供給装置にセットミスなどにより電子部品が回転し、部品ライブラリデータから得られる形状(像)と認識によって得られる電子部品の形状(撮像)が一致しない場合は、正常なのに、電子部品認識にて異常と見做され、正常な正規の電子部品が廃棄されてしまう。
【0004】
電子部品には、基板に実装されるときに実装される向き、即ち極性を有するものがある。極性の把握には極性判定マークや電子部品の角形状を利用する。特許文献1に記載された従来技術は、この極性判定マークを認識することによって、回転させて向きを補正し電子部品を基板に実装する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−318599号(特許第4122170号)公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電子部品の角形状による判定が困難で、しかも電子部品に極性判定マークが無い場合がある。その場合、正しく電子部品の回転による影響を判定することができない。
【0007】
従って、本発明の目的は、電子部品の角形状による判定が困難で、極性判定マークが無い場合であっても、正規の電子部品を正しい位置及び角度で基板に実装できる電子部品実装装置または電子部品実装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の目的を達成するために、少なくとも下記の特徴を有する。
本発明は、保持部材で電子部品を電子部品供給装置から保持し、前記保持部材による前記電子部品の保持状態を撮像し、前記保持状態の第1の撮像結果に基づいて前記保持部材に対する前記電子部品の位置、角度の少なくとも一方を補正し基板に実装する電子部品実装方法または装置において、前記電子部品は極性判定マークがなく、Nを1以上の整数とし、(360/N)度で規定される回転認識処理角度の範囲内に実装部を含めた形状が同一となる状態が一つしかない非回転対称部品であって、前記電子部品の所定の状態を撮像し、前記所定の状態の第2の撮像結果から前記電子部品の部品認識像を得、前記電子部品の前記形状のあるべき状態を示す基準像、前記部品認識像のうち少なくとも一方を回転させて、前記回転認識処理角度の範囲内に前記基準像と前記部品認識像が一致する角度が存在するかの回転認識処理し、電子部品が実装すべき正規の電子部品かを判定することを第1の特徴とする。
【0009】
また、本発明は、前記所定の状態は前記保持状態であることを第2の特徴とする。
さらに、本発明は、前記所定の状態は裏面が透明なトレイに載置された状態であり、前記電子部品の所定の状態を前記裏面の側から撮像したことを第3の特徴とする。
【0010】
また、本発明は、前記電子部品は前記回転認識処理角度の範囲内に、前記形状が同一であり、且つ同一機能を有する状態が一つしかない非回転対称部品であることを第4の特徴とする。
さらに、本発明は、前記基準像は部品ライブラリデータから得ることを第5の特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記回転認識処理は、想定される前記保持部材の角度ズレよりも大きく、且つ前記回転認識処理角度を整数で割り切れる角度であるΔ回転角度毎に前記一致する角度が存在するかの探索を行うことを第6の特徴とする。
さらに、本発明は、記電子部品は実装部を除いた電子部品の外形形状が長方形、正多角形であって、前記部品認識像の一辺を前記基準像の一辺に合わせ、前記合わせた状態から前記回転認識処理を、Mは角数であって(360/M)度毎に実施することを第7の特徴とする。
【0012】
また、本発明は、前記回転認識処理は、回転認識処理を実施するしないを示す回転認識データを有することを第8の特徴とする。
さらに、本発明は、前記回転認識データは前記Nの値を有していることを第9の特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、Nを1以上の整数とし、(360/N)度の所定の回転角度範囲内に同一形状・同一機能を有する状態が一つしかない非回転対称部品において、電子部品の角形状による判定が困難で、極性判定マークが無い場合であっても、正規の電子部品を正しい位置及び角度で基板に実装できる電子部品実装装置または電子部品実装方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態である電子部品実装装置の平面図である。
【図2】図1に示す電子部品実装装置をA方向から見た側面図である。
【図3】電子部品実装装置の電子部品実装に係る制御のための制御ブロック図である。
【図4】本発明の実施形態の対象部品の例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態の対象部品でない例を示す図である。
【図6】本実施形態の実施例であるBGA部品の予め登録されている部品ライブラリデータを示す図である。
【図7】回転認識機能データの入力する画面の例を示す図である。
【図8】回転認識処理を含めた部品認識処理を主体にした処理フローを示す図である。
【図9】本実施形態の実施例のBGA部品の回転認識処理フローを模式的に示す図である。
【図10】回転認識処理を含めた部品認識処理の他の処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の実施形態である電子部品実装装置50の平面図である。図2は図1に示す電子部品実装装置50をA方向から見た側面図である。電子部品実装装置50は、本体50Mと、本体50Mに実装または接続される実装ヘッド6やフィーダカート3などの外部ユニットからなる。
【0016】
図1は2個の実装ヘッド6が各々上側の複数のテープフィーダ3Bまたは下側の多段トレイフィーダ14から電子部品を吸着している図である。実装ヘッド6には電子部品を保持、例えば吸着するための保持部材である吸着ノズル5が円周上に複数本(例えば12本)取り付けられている。これらの吸着ノズルは、テープフィーダ3Bの上方に到達した後、テープフィーダ3Bの位置において、さらにXビーム4Aに沿って実装ヘッド6を移動させて、各吸着ノズルに目的とする電子部品を吸着する。実装ヘッド6内には、基板認識カメラ8が設置され、吸着後に実装ヘッド6が基板の上方に移動した時にプリント基板Pの基準点を認識し、このプリント基板Pの基準点を基に電子部品をプリント基板Pに実装する位置が決められる。また、電子部品実装装置50の前後には、操作画面等を表示するモニタ20が設けられている。なお、3Aは複数のテープフィーダ3Bを載置するフィーダベースである。また、テープフィーダ3B及び多段トレイフィーダ14を総称して電子部品供給装置という。
【0017】
図2に示すように、本体50Mの両側の電子部品供給領域の一方にはフィーダカート3が、他方には多段トレイフィーダ14が配置されている。フィーダカート3は、フィーダベース3Aと複数のテープフィーダ3Bとから構成され、本体50Mの本体に接続される。各テープフィーダ3Bは、一般的に電子部品のうち小型のチップ電子部品が収納された供給テープ60を有している。供給テープに収納された電子部品が実装ヘッド6の吸着ノズル5によって取り出されると供給テープがフィードされ、次の電子部品が取り出し可能となる。
一方、多段トレイフィーダ14には、CSP(Chip size package)やBGA(Ball grid array)等のパッケージ電子部品などの比較的大型の電子部品が整列して配置された複数のトレイ14Aが昇降可能に配置され、供給テープ同様にトレイ内の電子部品が実装ヘッド6の吸着ノズル5によって順次取り出される。
【0018】
フィーダカート3及び多段トレイフィーダ14と基板Pとの間には部品認識カメラ10が設置されている。部品認識カメラ10の撮像部は図1の紙面下側に配置されており、吸着ノズル5に吸着された電子部品の状態を認識する。認識の結果、実装に不適格な電子部品を廃棄ボックス12に廃棄する。
このようにして、実装ヘッド6は基板コンベア7を有する搬送装置2によって搬送されてきた基板Pに電子部品を実装する。
【0019】
実装ヘッド6はフィーダカート3または多段トレイフィーダ14で電子部品を吸着し、搬送されてきた基板Pに実装するためには、図1に示すXY平面上を高速に移動する移動機構が必要である。そのために、本体50Mの両側には、Y方向に延びるYビーム1A、1Bと、Yビーム1A、1B上移動しX方向に延びるXビーム4A、4Bと形成されている。Xビーム4A、4Bは、Y方向駆動モータである各Y方向リニアモータ9、99の駆動により左右一対の紙面上下に延びたガイドに沿って各ビームに固定されたスライダが摺動して個別にY方向に移動する。Y方向リニアモータ9、99は、左右一対の基体1A、1Bに沿って固定された一対の図示しない固定子と、Xビーム4A、4Bの両端部に設けられた取付板の下部に固定されたY可動子9a、99aとから構成される。
【0020】
また、図1、図3に示すように、Xビーム4A、4Bにはその長手方向(X方向)にX方向駆動モータであるX方向リニアモータ23(223)によりガイドに沿って移動する実装ヘッド6が夫々内側に設けられている。また、X方向リニアモータ23(223)は各Xビーム4A、4Bに固定された図示しない前後一対の固定子と、各固定子の間に位置して実装ヘッド6に設けられた可動子11とを有する。実装ヘッド6が有する吸着ノズルは上下軸モータ25(225)により昇降可能であり、またθ軸モータ26(226)により実装ヘッド10、11を鉛直軸周りに回転させることにより、結果として各実装ヘッド6の各吸着ノズル5はX方向及びY方向に移動可能であり、垂直線回りに回転可能で、且つ上下動可能となっている。
【0021】
これ等の構成に基づき、Y可動子9a、99aおよびX可動子11が制御装置40(図2参照)の指令に基づき、基板上の任意の位置に実装ヘッド6を移動させ、吸着ノズル5によって電子部品を基板Pに実装することができる。
【0022】
図3は電子部品実装装置1の電子部品実装に係る制御のための制御ブロック図である。電子部品実装装置50の各要素は制御装置40内のCPU(セントラル・プロセッシング・ユニット)17が統括制御しており、この制御に係るプログラムを格納するROM(リ−ド・オンリー・メモリ)19及び各種データを格納するRAM(ランダム・アクセス・メモリ)18がバスライン22bを介して接続されている。また、CPU17にはモニタ20及びモニタに設けられたタッチパネルスイッチ21がインターフェース22を介して接続されている。また、Y方向リニアモータ9等が駆動回路24、インターフェース22を介してCPU17に接続されている。さらに、基板認識カメラ8、部品認識カメラ10の画像は、画像処理装置27で処理されインターフェース22を介してRAM18に格納される。
【0023】
RAM18には、生産する基板Pの種類(機種)毎にNCデータが格納されているが、このNCデータはオペレーションデータ、段取りデータ、実装データ等を有する。例えば、オペレーションデータはNCデータ名であるコメント、基板のX方向及びY方向のサイズ、基板の厚み、先付電子部品の有無、先付電子部品の高さ及び基板仕上げモードを有する。
また、RAM18には、形状データ・認識データ・制御データ・電子部品供給データから構成して各電子部品の特徴を表す部品ライブラリデータ等も格納されている。
【0024】
次に、本実施形態の特徴を述べる前に、本実施形態の対象部品である非回転対称部品を定義する。一般的に、Nを2以上の整数とし、ある中心(2次元図形の場合)の周りを(360/N)度回転させると自らと重なる性質を、N回対称などという。例えば、N=3の場合、120度回転させると自らと重なる3回対称となる。本実施形態においては、形状の前記対称性に加え、図形的な対称性時に電子部品として同一の機能を果たす電子部品をN次回転対称部品という。例えばN=3の場合を3次回転対称部品という。逆に、N次非回転対称部品とは、Nを1以上の整数とし、(360/N)度で規定される回転認識処理角度の範囲内に同一形状・同一機能を有する状態が一つしかないものをいい、それ等を総称して非回転対称部品という。
【0025】
このような非回転対称部品の定義の下において、本実施形態の特徴は、第1に、非回転対称部品を対象部品とし、対象部品の部品ライブラリデータから得られる基準像または電子部品を撮像して得られる部品認識像を回転させたときに、基準像と部品認識像とが一致するかの回転認識処理を行なうことである。第2に、この回転認識処理を実施する回転認識処理角度の範囲内で、基準像と部品認識像とが1回しか一致しないものを正規の電子部品として判定し、基板に電子部品を実装する。
【0026】
また、基準像と部品認識像とが一致した時の回転角度及び位置を得ることによって正しい位置及び角度で電子部品を基板に実装できる。
【0027】
このような本実施形態によれば、極性判定マークが無い場合や電子部品の角形状による判定が困難な非回転対称部品であっても、単に形状が一致しても電子部品としての機能を果たせないものを正規の電子部品とし判定することなく、また正規の電子部品であっても電子部品の回転によって非正規電子部品と判定することなく、正しい位置及び角度で基板に電子部品を実装できる。
【0028】
まず、本発明の実施形態の対象部品及び逆に非対象部品について説明する。
図4は対象部品の例を示す図である。図4(a)から図4(d)は対象部品の最も典型的な例で、回転認識処理角度が360度の1次非回転対称部品の例である。図4(a)は、正(長)方形の形状を有し、3列3行に整列した電極Dgのうち1箇所が抜けている上下左右非対称のBGA部品である。図4(b)は、正(長)方形の形状を有し、整列されてない電極Dgを有する上下左右非対称のBGA部品である。図4(c)は、左右のリードDrの配置が異なる上下対称なSOP(Small outline package)電子部品である。図4(d)は、円形の形状にリードDrを3つ有する上下左右非対称のリード電子部品である。本例では3つのリードDrが120度に配置されていない例であるが、円形形状が完全円でない場合でもよい。
【0029】
図4(e)から図4(f)は、回転認識処理角度が180度の2次非回転対称部品の例である。図4(e)は上下又は左右の6リードDrの配置が対称なSOP電子部品で、例えば2つのトランジスタの端子が点対称に配列されている例である。図4(f)は、例えば左右に同一形状の2電極Dgを有する抵抗電子部品である。図4(g)は、回転認識処理角度が120度の3次非回転対称部品の例である。図4(d)で説明したリード電子部品のリードDr120度毎に配置されている例である。
なお、電極DgやリードDrの様に基板Pに実装される部分を総称して実装部という。
【0030】
一方、図5は非回転対称部品でない非対象部品の例を示す図である。図5(a)は、正(長)方形の形状を有し、3列3行に整列した電極Dgを有する上下左右対称のBGA部品である。本BGA部品は90度毎に基準像と部品認識像と形状的には一致する4回対称部品であるが、各電極の役割が異なるために、3回の対称位置においてBGA部品としての機能を果たせない例である。図5(b)、図5(c)は形状的には2回対称を有する例である。図5(b)は図4(e)に対応する例で、6リードDrの役割が異なる例である。図5(c)は図4(f)に対応する例で、例えば左右の電極Dgの役割が異なる電解コンデンサの例である。
【0031】
以上説明したように、回転認識処理角度の範囲内で機能を果たす角度が1回しかない非回転対称部品において、電子部品の角形状による判定が困難で、極性判定マークが無い場合であっても、正規の電子部品を正しく判定することをできる。
【0032】
以下の説明では、実施例として図4(a)に示す上下左右非対称のBGA部品を例に説明する。図6は実施例のBGA部品の予め登録されている部品ライブラリデータを示す図である。図6で示す部品ライブラリデータを図式化したのが図4(a)である。図4(a)の図式化は部品ライブラリデータを得ることなく、カタログ等から直接得てもよい。部品ライブラリデータは、BGA部品の2次元の寸法、電極の寸法、ピッチ及び配列数を有する形状データと、上述した回転認識に関する回転認識機能データとを有する。電極配列に関しては、図4(a)に示すように、3行×3列に配置ではなく、右から1列目、上から3列目の電極が抜けていることが特徴である。この抜けが回転認識を可能にしている。
【0033】
回転認識機能データは、例えば図1に示すモニタ20に、図6に示す当該BGA部品の部品ライブラリデータと共に、図7の示す画面を表示し、作業員が部品ライブラリデータを見ながら必要なデータを選択または入力することによって得られる。本実施例では、回転認識を次数1で行なうことが選択または入力されている。次数とは、N次非回転対称部品を示すNである。例えば、回転認識処理角度360度の範囲内に電子部品として機能する場合が1つ、即ち1次非回転対称部品であれば、次数1を入力する。本実施例はこのケースに該当する。また、180度毎に2つ、即ち、2次非回転対称部品であれば次数は2となり、同様120度毎、90度毎にあれば、次数はそれぞれ3、4となる。そして、基準像と部品認識像と一致のチェックする回転認識処理を次数が1であれば、360度1回転に対して行ない、次数が2、3、4であれば、それぞれ180度、120度、90度に対して行なう。
勿論、図5に示す電子部品に関しては回転認識不可能が選択される。
【0034】
次に、回転認識機能データで回転認識するとされた電子部品に対する回転認識処理を含めた部品認識処理の主体にした処理フローを、図8を主体に図9を参照しながら説明する。図9は本実施例のBGA部品の回転認識処理フローを模式的に示す図である。なお、この部品認識処理は、図3に示す制御装置40のCPU17がROM19に格納されている処理プログラムとRAM18に内蔵されている部品ライブラリデータを用いて行なう。図9(a)に部品ライブラリデータから得られる部品ライブラリ像を示す。
【0035】
図8の処理フローに入る前に、吸着ノズル5の電子部品の吸着状態の撮像データを得る画像処理範囲を決定しておく。画像処理範囲は、対象部品であるBGA部品の大きさと、BGA部品を収納する格子形状のトレイ14AおけるBGA部品のばらつきに基づき想定される吸着ノズル6の吸着時の位置ズレや角度ズレに基づき決定する。例えば、位置ズレは±0.3mm、角度ズレは±22.5度などと想定する。
【0036】
ステップ1:吸着ノズル5によりテープフィーダ3Bまたはトレイ14Aから電子部品を吸着する。本実施例では電子部品としては、比較的大きなBGA部品であるからトレイ14Aから取り出す。次に、部品認識カメラ10はその上を通る実装ヘッド6の吸着ノズル5が保持している電子部品を下から撮像する。得られた撮像画像から予め得られた画像処理範囲を切り出し画像処理し部品認識像を得る。そして、部品認識像の画像処理範囲の中心から位置ズレを求める。画像処理範囲の中心位置は吸着ノズルの中心位置と一致するから、前記位置ズレは吸着位置の位置ズレとなる。画像処理による位置ズレの検出は、CPUの制御の下、画像処理装置27で行なわれる。勿論CPUが行なってもよい。図9(f)はその結果得られた電子部品の部品認識像である。
【0037】
その後、基準像である部品ライブラリ像を所定のΔ回転角度ずつ回転させながら基準像と部品認識像とが一致するかの認識処理を行ない、電子部品の回転ズレ角度を求める回転認識処理を実施する。所定のΔ回転角度とは、想定される角度ズレより大きく且つ認識処理回数が整数となる角度とする。認識処理回数が整数となる角度は、回転認識処理角度を整数で割り切れる角度である。実施例では次数が1であり回転認識処理角度が360度であるので、認識処理回数が整数となる角度は360度を整数で割り切れる角度となる。次数2であれば回転認識処理角度は180度であるので、180度を整数で割り切れる角度となる。他の次数も同様である。
【0038】
ステップ2:認識処理を行なう認識開始角度を図9(b)に示す部品ライブラリ像そのものである0度に初期設定する。初期設定角としては0度以外を認識開始角度としてもよい。例えば、前述のように想定される角度ズレが±25度ならば−25度としてもよい。
ステップ3:認識開始角度で回転した基準像と図9(f)の部品認識像とに基づく認識処理をして基準像と部品認識像とが一致する角度を探索する。探索とは、例えば、少しずつ角度を変化させて一致する角度を検出する。
【0039】
ステップ4:認識処理の結果、一致する角度が存在するかを判定する。存在すればステップ5に行く。存在しなければステップ6に行く。
ステップ5:一致する角度がβであり、認識開始角度α度とすれば、図9(a)に示す基準像からθ=α+β回転していることになるから、角度ズレはθとなり、ステップ1で求めた位置ズレと共に吸着ノズルの位置・角度を補正し、基板に電子部品を実装する。
【0040】
以上が回転認識をしない従来の部品認識処理である。
【0041】
ステップ6:回転認識機能データに基づいて回転認識処理を実施するかを判断する。即ち、回転認識機能データに回転認識「する」が設定されているかを見る。設定されていなければステップ9に行き、設定されていればステップ7に行く。
【0042】
ステップ7:現在の認識開始角度に所定のΔ回転角度を足し新たな認識開始角度に変更する。本実施例としては所定のΔ回転角度として想定される角度ズレの2倍である45度とした。多くの電子部品は想定の角度ズレ範囲内あり、Δ回転角度が大きいと1回の認識処理に時間がかかりすぎる。一方、回転ズレが起きるときは±90度、180度ズレが多く、Δ回転角度が小さいと回転ズレが起きた角度に達するのに時間がかかる。これらを考慮してΔ回転角度を45度とした。
【0043】
ステップ8:新たな認識開始角度が回転認識処理角度(360/N、N:次数)を超えているかを判定する。超えていなければステップ3に行き、超えていれば回転認識処理角度の範囲内で一致しない、即ち正規の電子部品でないとしてステップ9に行く。
【0044】
ステップ9:正規の電子部品でないとして電子部品を廃棄ボックス12(図1参照)に廃棄する。
【0045】
ステップ10:所定の基板枚数の処理をしたら終了する。
【0046】
上記の説明した実施形態によれば、回転認識処理角度の範囲内に電子部品として機能する場合が一つ存在する非回転対称部品において、電子部品の角形状による判定が困難で、極性判定マークが無い場合であっても、正規の電子部品を正しく基板に実装できる。
【0047】
また、以上説明した本実施形態によれば、非対称部品の場合、極性判定マークが無い場合や電子部品角の形状による判定が困難場合においても、電子部品の回転を正しく判定することができる。
また、電子部品を吸着前に電子部品の極性を把握する処理が不要となるため、装置の生産性を低下させずに電子部品の回転方向を正しい位置にて実装することができる。
また、方向違いにて認識異常で廃棄していた電子部品も正常に認識することで電子部品のロスを低減できる。
【0048】
回転認識処理方法には他の方法も考えられ上記で説明した方法に限らない。例えば、他の方法として、電子部品は実装部を除いた電子部品の外形形状が長方形、正多角形であって、前記部品認識像の一辺を前記基準像の一辺に合わせ、前記合わせた状態から前記回転認識処理を、角数を示すMに対して(360/M)度毎に実施する。本他の方法の一例を図4(a)に示すBGA部品を例に説明する。図10に示すように、図8に示すステップ1で得られた図9(f)に示す部品認識像が図10(a)に示すようにγだけ回転していた場合、図10(b)に示すようにγだけ回転を戻し図10(c)に示す基準像と実装部を除いた外形は同じ形状にし、その後図10(c)に示す基準像を90度ずつ回転させて比較し、一致する角度が存在するかを判定して角度ズレを求めて、図8で示すステップ1で求めた位置ズレと共に吸着ノズルの位置・角度を補正し、基板に電子部品を実装してもよい。この場合の角度ズレθは、90度単位の認識開始角度をα度とすれば、α+γとなる。
本方法は、実装部を除いた電子部品の外形形状が長方形、正多角形の他、所定の間隔で端子や固定部を有する円、楕円形などにも有効である。
【0049】
また、以上説明した実施形態では、基準像を回転させたが部品認識像を回転させてもよい。
【0050】
さらに、以上説明した実施形態では、2次以上の非回転対称部品を考慮したが、特定の次数のみ、特に1次のみの非回転対称部品を対象にすれば、極性に関するデータを定義する必要がなくなる。
【0051】
またさらに、例えば、トレイの底を収納した電子部品を下から撮像できるように透明な素材で作成し、吸着する前に撮像し上記で説明した方法で予め角度回転ズレを求めてもよい。特に、現在処理中のトレイではなく、次に処理するトレイに対して行なうことより処理時間の短縮を図ることができる。
【0052】
以上のように本発明の実施態様について説明したが、上述の説明に基づいて当業者にとって種々の代替例、修正又は変形が可能であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で前述の種々の代替例、修正又は変形を包含するものである。
【符号の説明】
【0053】
2:搬送装置 3:フィーダカート
3B:テープフィーダ 5:吸着ノズル
6:実装ヘッド 8:基板認識カメラ
10:部品認識カメラ 12:廃棄ボックス
14:多段トレイフィーダ 14A:トレイ
17:CPU 18:RAM
19:ROM 20:モニタ
27:画像処理装置 40:制御装置
50:電子部品実装装置 P:基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品供給装置から電子部品を保持する保持部材を有する実装ヘッドと、
前記保持部材による前記電子部品の保持状態を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段による撮像結果から前記電子部品の部品認識像を得る部品認識手段と、
前記撮像結果から基づいて前記保持部材の位置、角度を補正する補正手段と、を有し、
前記電子部品は極性判定マークがなく、Nを1以上の整数とし、(360/N)度で規定される回転認識処理角度の範囲内に実装部を含めた形状が同一となる状態が一つしかない非回転対称部品であって、
前記実装ヘッドは補正された前記保持部材の位置、角度で前記基板に実装し、
前記電子部品の前記形状のあるべき状態を示す基準像、前記部品認識像のうち少なくとも一方を回転させて、前記回転認識処理角度の範囲内に前記基準像と前記部品認識像が一致する角度が存在するかの回転認識処理し、電子部品が実装すべき正規の電子部品かを判定する判定手段を有することを特徴とする電子部品実装装置。
【請求項2】
前記電子部品は前記回転認識処理角度の範囲内に、前記形状が同一であり、且つ同一機能を有する状態が一つしかない非回転対称部品であることを特徴とする請求項1に記載の電子部品実装装置。
【請求項3】
保持部材で電子部品を電子部品供給装置から保持し、前記保持部材による前記電子部品の保持状態を撮像し、前記保持状態の第1の撮像結果に基づいて前記保持部材に対する前記電子部品の位置、角度の少なくとも一方を補正し基板に実装する電子部品実装方法において、
前記電子部品は極性判定マークがなく、Nを1以上の整数とし、(360/N)度で規定される回転認識処理角度の範囲内に実装部を含めた形状が同一となる状態が一つしかない非回転対称部品であって、
前記電子部品の所定の状態を撮像し、前記所定の状態の第2の撮像結果から前記電子部品の部品認識像を得、
前記電子部品の前記形状のあるべき状態を示す基準像、前記部品認識像のうち少なくとも一方を回転させて、前記回転認識処理角度の範囲内に前記基準像と前記部品認識像が一致する角度が存在するかの回転認識処理し、
電子部品が実装すべき正規の電子部品かを判定することを特徴とする電子部品実装方法。
【請求項4】
前記所定の状態は前記保持状態であることを特徴とする請求項3に記載の電子部品実装方法。
【請求項5】
前記所定の状態は裏面が透明なトレイに載置された状態であり、前記電子部品の所定の状態を前記裏面の側から撮像したことを特徴とする請求項3に記載の電子部品実装方法。
【請求項6】
前記電子部品は前記回転認識処理角度の範囲内に、前記形状が同一であり、且つ同一機能を有する状態が一つしかない非回転対称部品であることを特徴とする請求項4又は5に記載の電子部品実装方法。
【請求項7】
前記基準像は部品ライブラリデータから得ることを特徴とする請求項4又は5に記載の電子部品実装方法。
【請求項8】
前記回転認識処理は、想定される前記保持部材の角度ズレよりも大きく、且つ前記回転認識処理角度を整数で割り切れる角度であるΔ回転角度毎に前記一致する角度が存在するかの探索を行うことを特徴とする請求項4または5に記載の電子部品実装方法。
【請求項9】
前記電子部品は実装部を除いた電子部品の外形形状が長方形、正多角形であって、前記部品認識像の一辺を前記基準像の一辺に合わせ、前記合わせた状態から前記回転認識処理を、角数を示すMに対して(360/M)度毎に実施することを特徴とする請求項4または5に記載の電子部品実装方法。
【請求項10】
前記回転認識処理は、回転認識処理を実施するしないを示す回転認識データを有することを特徴とする請求項4又は5に記載の電子部品実装方法。
【請求項11】
前記回転認識データは前記Nの値を有していることを特徴とする請求項10に記載の電子部品実装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−26385(P2013−26385A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158930(P2011−158930)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(300022504)株式会社日立ハイテクインスツルメンツ (607)
【Fターム(参考)】