説明

電子部品装置

【課題】シール部材のシール面圧の不均一度合いを小さくしてシール不良を防止する。
【解決手段】シール部材9とリード線8とターミナル7が一体化され且つターミナル7と接点部材61が接続された状態で、シール部材9が通し孔41に挿入される電子部品装置において、ターミナル7は、リード線8に接続された部位と接点部材61に接続された部位との間に変形が容易な薄板のターミナル板部71を備え、ターミナル板部71は中間部でねじられて複数の平らな平板部711、712が形成されている。そして、複数の平板部711、712はそれぞれ異なる方向に容易に変形可能であるため、蓋4の通し孔41に挿入する前のシール部材9の軸線と、蓋4の通し孔41に挿入した後のシール部材9の軸線とがずれていても、その軸ズレは平板部711、712の変形によって吸収され、シール部材9のシール面圧の不均一度合いが小さくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋に形成された通し孔に筒状のシール部材が挿入され、シール部材にリード線が通された電子部品装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関に燃料を噴射するインジェクタとして、内燃機関に噴射される燃料の圧力を検出する圧力センサを、インジェクタのボデー内に配置するものが提案されている。また、インジェクタのボデーにコネクタが設けられ、コネクタのターミナルと圧力センサが電気的に接続されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−242574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本発明者らは、上記した従来のコネクタを廃止し、圧力センサに電気的に接続したリード線をインジェクタのボデーの外部に取り出す構成のインジェクタを検討した。
【0005】
図5は、リード線8を使用するインジェクタの検討案であり、インジェクタのロアボデー1とアッパーボデー3と蓋4とによって形成された空間に圧力センサ6を配置している。
【0006】
圧力センサ6は、信号処理回路用ICおよび接点部材61等を備えている。そして、接点部材61がターミナル7に溶接され、さらにターミナル7がリード線8と電気的に接続されている。また、蓋4に形成された通し孔41に筒状のシール部材9が挿入され、リード線8がこのシール部材9に挿入されて外部に取り出されている。
【0007】
組み付けは以下の手順で行われる。まず、ターミナル7とリード線8とシール部材9を一体化しておく。次に、圧力センサ6をロアボデー1に螺合し、接点部材61とターミナル7を溶接し、アッパーボデー3をロアボデー1に螺合する。続いて、蓋4をアッパーボデー3の開口部31に挿入するとともに、蓋4の通し孔41にシール部材9を挿入する。
【0008】
ここで、一般的に用いられているターミナル7は、リード線8に接続された部位と接点部材61に接続された部位との間が平面形状やコの字形状をしており、変形を前提としておらず、変形したとしても一定方向のみの変形しか許容できない形状となっている。
【0009】
そのため、シール部材9とリード線8とターミナル7が一体化され且つターミナル7と接点部材61が接続された状態におけるシール部材9の軸線(すなわち、蓋4の通し孔41に挿入する前のシール部材9の軸線)と、蓋4がアッパーボデー3の開口部31に挿入されると共にシール部材9が蓋4の通し孔41に挿入された状態でのシール部材9の軸線(すなわち、蓋4の通し孔41に挿入した後のシール部材9の軸線)とがずれると、シール部材9に偏心力がかかり、シール部材9の周方向でシール面圧が不均一となり、シール不良が発生する虞がある。
【0010】
本発明は上記点に鑑みて、シール部材のシール面圧の不均一度合いを小さくしてシール不良を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、貫通する通し孔(41)を有する蓋(4)と、通し孔(41)に挿入される筒状のシール部材(9)と、シール部材(9)に挿入されるリード線(8)と、一端がリード線(8)に接続されると共に他端が電子部品(6)の接点部材(61)に接続される金属製のターミナル(7)とを備え、シール部材(9)とリード線(8)とターミナル(7)が一体化され且つターミナル(7)と接点部材(61)が接続された状態で、シール部材(9)が通し孔(41)に挿入される電子部品装置において、ターミナル(7)は、リード線(8)に接続された部位と接点部材(61)に接続された部位との間に変形が容易な薄板のターミナル板部(71)を備え、ターミナル板部(71)は中間部でねじられて複数の平らな平板部(711、712)が形成されていることを特徴とする。
【0012】
これによると、ターミナル板部(71)における複数の平板部(711、712)はそれぞれ異なる方向に容易に変形可能である。したがって、蓋(4)の通し孔(41)に挿入する前のシール部材(9)の軸線と、蓋(4)の通し孔(41)に挿入した後のシール部材(9)の軸線とがずれていても、その軸ズレは平板部(711、712)の変形によって吸収される。よって、シール部材(9)のシール面圧の不均一度合いを小さくしてシール不良を防止することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の電子部品装置において、ターミナル板部(71)は、略90度ねじられていることを特徴とする。これによると、ターミナル板部(71)は直交する二方向に変形可能である。
【0014】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子部品装置を備えるインジェクタを示す正面図である。
【図2】図1のインジェクタの要部を示す正面断面図である。
【図3】図1のインジェクタにおけるターミナル近傍を拡大して示す正面図である。
【図4】図1のターミナルを異なる方向から見た形状を示す図である。
【図5】インジェクタの検討案を示す要部の正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態について説明する。図1は本発明の一実施形態に係る電子部品装置を備えるインジェクタを示す正面図、図2は図1のインジェクタの要部を示す正面断面図、図3は図1のインジェクタにおけるターミナル近傍を拡大して示す正面図、図4は図1のターミナルを異なる方向から見た形状を示す図である。
【0017】
図1に示すように、インジェクタのロアボデー1には、コモンレール(図示せず)から供給される高圧燃料が流通する高圧通路が形成されており、その高圧燃料は、ロアボデー1の下端に装着されたノズル2からディーゼル内燃機関(図示せず)の気筒内に噴射される。
【0018】
図2に示すように、ロアボデー1の上端外周側には、円筒状のアッパーボデー3が螺合されている。ロアボデー1およびアッパーボデー3は、電磁シールド性に富む金属にて形成されている。
【0019】
アッパーボデー3の上端には、後述するリード線の取り出し口となる開口部31が設けられている。この開口部31に金属または樹脂よりなる円柱状の蓋4が圧入固定されて、開口部31が塞がれている。この蓋4には、後述するリード線およびシール部材が挿入される貫通した通し孔41が2つ形成されている。また、アッパーボデー3と蓋4との間にOリング5が配置されており、アッパーボデー3と蓋4との間はこのOリング5によりシールされている。
【0020】
ロアボデー1とアッパーボデー3と蓋4にて囲まれた空間には、高圧通路の燃料圧力を検出する電子部品としての圧力センサ6が配置されている。この圧力センサ6は、ロアボデー1の上端に螺合されている。
【0021】
圧力センサ6は、高圧通路の燃料圧力に応じて抵抗値が変化するセンサチップ、センサチップの抵抗値変化に基づいて圧力に応じたセンサ信号を出力する信号処理回路用IC、および接点61等を備えている。そして、信号処理回路用ICは、接点部材61およびターミナル7を介してリード線8と電気的に接続されている。
【0022】
シール部材9は、ゴムにて円筒状に成形されている。そして、シール部材9は蓋4の通し孔41に挿入され、シール部材9の貫通孔にリード線8が挿入されている。また、リード線8の一端側は、インジェクタの外部に露出している。
【0023】
ターミナル7は、導電性金属よりなる薄板をプレス等にて成形したものである。なお、ターミナル7の材質としては、りん青銅、黄銅、真鍮、銅合金等が望ましく、さらに、金メッキ、錫メッキ、ニッケルメッキ等を施してもよい。
【0024】
そして、図2〜図4に示すように、ターミナル7の一端側は、かしめや溶接によりリード線8に電気的に接続されると共に、かしめによりシール部材9に機械的に結合されている。また、ターミナル7の他端側は、溶接により接点部材61に電気的に接続されている。
【0025】
さらに、ターミナル7は、リード線8に接続された部位と接点部材61に接続された部位との間に、変形が容易な薄板のターミナル板部71を備えている。このターミナル板部71は、中間部のねじり部710で略90度ねじられて、2つの平らな板部である第1平板部711と第2平板部712が形成されている。
【0026】
次に、組み付け手順について説明する。まず、ターミナル7、リード線8およびシール部材9を一体化し、圧力センサ6をロアボデー1に取り付け、ターミナル7と接点部材61を溶接により接続し、アッパーボデー3をロアボデー1に取り付ける。続いて、蓋4およびOリング5をアッパーボデー3の開口部31に挿入するとともに、シール部材9を蓋4の通し孔41に挿入する。以上により、図2に示す構成部品の組み付けが完了する。
【0027】
ここで、一般的には、ターミナル7と接点部材61が溶接により接続された状態におけるシール部材9の軸線(すなわち、蓋4の通し孔41に挿入する前のシール部材9の軸線)と、蓋4の通し孔41に挿入した後のシール部材9の軸線とがずれてしまう。
【0028】
そして、本実施形態では、第1平板部711は図3において紙面左右方向に容易に変形可能であり、第2平板部712は図3において紙面垂直方向に容易に変形可能である。すなわち、略90度ねじられた第1平板部711と第2平板部712を有するターミナル板部71は、直交する二方向に容易に変形可能である。
【0029】
したがって、蓋4の通し孔41に挿入する前のシール部材9の軸線と蓋4の通し孔41に挿入した後のシール部材9の軸線とがずれていても、その軸ズレは第1平板部711と第2平板部712の変形によって吸収される。よって、シール部材9のシール面圧の不均一度合いを小さくしてシール不良を防止することができる。
【0030】
なお、上記実施形態では、本発明をインジェクタに適用したが、本発明はインジェクタ以外の電子部品装置にも適用することができる。
【0031】
また、上記実施形態では、電子部品として圧力センサ6を示したが、本発明は圧力センサ6以外の電子部品を備える電子部品装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0032】
4 蓋
6 圧力センサ(電子部品)
7 ターミナル
8 リード線
9 シール部材
41 通し孔
61 接点部材
71 ターミナル板部
711 第1平板部
712 第2平板部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通する通し孔(41)を有する蓋(4)と、前記通し孔(41)に挿入される筒状のシール部材(9)と、前記シール部材(9)に挿入されるリード線(8)と、一端が前記リード線(8)に接続されると共に他端が電子部品(6)の接点部材(61)に接続される金属製のターミナル(7)とを備え、
前記シール部材(9)と前記リード線(8)と前記ターミナル(7)が一体化され且つ前記ターミナル(7)と前記接点部材(61)が接続された状態で、前記シール部材(9)が前記通し孔(41)に挿入される電子部品装置において、
前記ターミナル(7)は、前記リード線(8)に接続された部位と前記接点部材(61)に接続された部位との間に変形が容易な薄板のターミナル板部(71)を備え、前記ターミナル板部(71)は中間部でねじられて複数の平らな平板部(711、712)が形成されていることを特徴とする電子部品装置。
【請求項2】
前記ターミナル板部(71)は、略90度ねじられていることを特徴とする請求項1に記載の電子部品装置。
【請求項3】
前記ターミナル(7)の一端が前記リード線(8)に接続されると共に前記シール部材(9)に結合されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電子部品装置。
【請求項4】
前記シール部材(9)は、ゴムにて成形されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の電子部品装置。
【請求項5】
高圧燃料が流通する高圧通路が形成されたボデー(1)を備え、内燃機関に搭載されて燃料を噴射するものであって、
前記電子部品(6)は、前記内燃機関に噴射される燃料の圧力を検出する圧力センサであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の電子部品装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−216467(P2012−216467A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81939(P2011−81939)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】