説明

電気コネクタ組立体

【課題】コネクタ同士の抜け防止のロック機能を向上させたコネクタ組立体を提供することを課題とする。
【解決手段】金属板を板厚方向に屈曲して形成された屈曲部23からコネクタ嵌合方向先方に位置する自由端部に向け延びる第一接触部25が設けられた第一端子20を備える第一コネクタ10と、該第一接触部25の一方の板面に対して接圧をもって上記嵌合方向先方へ向け摺動して接触し正規位置で第一接触部25と抜出方向に係止する第二接触部55とが形成された第二端子50を備える第二コネクタ40とを有するコネクタ組立体において、第一接触部25と第二接触部55の少なくとも一方は上記接圧の方向に弾性変位可能であり、第一接触部25はその板厚の全厚さ範囲にわたる板厚面または他方の板面側で係止部26A−1が形成され、第二接触部55は第一接触部25の該係止部26A−1の少なくとも一部と上記抜出方向で係止する被係止部57を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気コネクタ組立体に関し、特に、嵌合される二つのコネクタの端子同士が抜け防止のために互いに係止し合う電気コネクタ組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる電気コネクタ組立体としては、特許文献1に開示されているコネクタが知られている。この特許文献1では、一方のコネクタの端子が金属板を板厚方向に屈曲して作られていて、相手方たる他方のコネクタの端子に互いに上下で隣接して設けられた突起状の接触部そして当接部と係止するロック凹部が上記一方のコネクタの端子の板面に設けられている。かくして、上記他方のコネクタの端子に設けられた接触部と当接部が該一方のコネクタの端子に形成されたロック凹部内に位置し、コネクタ抜出方向の不用意な力を受けたとき、突起状の接触部が接触部のロック凹部の縁部に係止し、この接触部が縁部から外れても、次に、上記当接部がロック凹部の縁部に係止して、抜け防止のロック作用をもたらす。該ロック凹部は、この端子の板面を局部的に圧して没入せしめることにより形成されており、該ロック凹部の深さは端子の板厚寸法に比べると、極小さいものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−032425
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のコネクタにあっては、一方のコネクタの端子に形成されたロック凹部は端子の板厚に制限されるため、その深さは板厚に比べ極めて小さい。したがって、振動を受けたり、大きな外力が予想される環境で使用されるコネクタには、そのロック力は十分とは言えず、改善の余地を残していた。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑み、端子の形状を複雑にしたり端子を大型化することなく、ロックのための係止量を十分に確保できる端子を有する電気コネクタ組立体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電気コネクタ組立体は、金属板を板厚方向に屈曲することにより形成された屈曲部からコネクタ嵌合方向先方に位置する自由端部に向け延びる第一接触部が設けられた第一端子を備える第一コネクタと、該第一接触部の一方の板面に対して接圧をもって上記嵌合方向先方へ向け摺動して接触し正規位置で第一接触部と抜出方向に係止する第二接触部とが形成された第二端子を備える第二コネクタとを有する。
【0007】
かかるコネクタ組立体において、本発明では、第一接触部と第二接触部の少なくとも一方は上記接圧の方向に弾性変位可能であり、第一接触部はその板厚の全厚さ範囲にわたる板厚面または他方の板面側で係止部が形成され、第二接触部は第一接触部の該係止部の少なくとも一部と上記抜出方向で係止する被係止部を有していることを特徴としている。
【0008】
このように構成される本発明によると、第一端子に形成された係止部と第二端子に形成された被係止部とは、上記係止部における板厚の全厚さ範囲で係止可能なので、係止面積が十分に大きく確保でき、従来に比べロック力が激増する。
【0009】
本発明において、第一接触部の係止部は板厚方向に貫通した窓状部の縁面で形成されているようにすることができる。したがって、第二接触部の被係止部は板厚寸法を有する上記窓状部の縁面で係止する。
【0010】
本発明において、第一接触部は、自由端から屈曲部へ向け延びるスリットが少なくとも係止部まで及んで形成されており、係止部での第二接触部との係止時にスリットがその幅を拡げるように、幅方向に弾性を有していると共に、第二接触部の側縁を幅方向に弾性押圧する押圧部を有しているようにすることができる。こうすることで、第一接触部は押圧部で第二接触部の側縁を幅方向に弾性押圧するので、接触圧が高められ接触が良好となる。
【0011】
本発明において、第一接触部は、自由端から屈曲部へ向け延びるスリットが形成されており、自由端の側の部分が係止部を形成し、第二接触部は、第一接触部のスリットを該第一接触部の一方の板面側から板厚方向で貫通した後に該第一接触部の先端部の他方の板面側に向けて屈曲され且つ幅方向で上記スリットよりも両側に張り出して形成される張出部で被係止部を形成しているようにすることができる。
【0012】
こうすることで、第二接触部は、側方から見たときに、上記スリットを通って第一接触部と交差するようにして被係止部が第一接触部の他方の板面側にまわり込むように位置し、係止部による係止がより確実になる。
【0013】
本発明において、第一接触部は、幅方向で中間位置より一方の側縁側が自由端に向け切り欠かれていて、自由端までの距離が短い短域とこれよりも長い長域とを形成し、短域の自由端における板厚端面が第二接触部の被係止部と係止する係止部を形成し、長域の短域側に位置する側縁が第二接触部の側縁を幅方向に弾性押圧する押圧部を形成しているようにすることができる。
【0014】
こうすることで、第一接触部の短域に形成された係止部で第二接触部の被係止部を係止すると共に長域の側縁面で第二接触部の側縁に押圧力を与え、ここでの接圧を向上する。
【0015】
本発明において、第二接触部は、第一接触部の自由端部と弾性接触すると共に該自由端部の先方で該自由端部の端面に面するように屈曲された鉤状部を有し、上記第一接触部の自由端部が係止部を、そして第二接触部の鉤状部が被係止部を形成しているようにすることもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以上のように、一方のコネクタたる第一コネクタの端子の板厚方向で全範囲に及ぶように係止部を形成したので、他方のコネクタたる第二コネクタの端子の被係止部が、コネクタ抜出方向で上記係止部に対して大きな面積で係止されるのでロック力が十分に大きくなり、ロック機能が大いに向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態の第一コネクタと第二コネクタの嵌合前の斜視図である。
【図2】図1の第一コネクタの複数の端子のうち対向する一対の第一端子を抜き出した状態で示す斜視図である。
【図3】図1の一対の第一端子とこれに対応する第二端子とを、コネクタの嵌合状態で示す斜視図である。
【図4】第二実施形態の第一端子を、図2と同様の状態で示す斜視図である。
【図5】図4の第一端子とこれに対応する第二端子を、図3と同様の状態で示す斜視図である。
【図6】図5の第一端子と第二端子を示し、(A)は正面図、(B)は断面図である。
【図7】第三実施形態の第一端子と第二端子を示し、(A)は斜視図、(B)は側面図である。
【図8】第四実施形態の第一コネクタと第二コネクタの嵌合時の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施形態について説明する。
【0019】
<第一実施形態>
図1は、本実施形態に係る電気コネクタ組立体の斜視図であり、この電気コネクタ組立体は、互いに嵌合される第一コネクタ10と第二コネクタ40とを有している。図1において、第一コネクタ10と第二コネクタ40は、図における底面側でそれぞれ回路基板(図示せず)に取り付けられ、使用時には、第二コネクタ40は上下反転された状態で第一コネクタ10へ上方から嵌合される。
【0020】
第一コネクタ10は、電気絶縁材から作られたハウジング11と、該ハウジング11により保持される第一端子20そして取付金具30とを有している。ハウジング11は、複数の第一端子20を配列保持する平行な二つの側壁12と、側壁12同士を両端で連結する端壁13と、そして底壁14とを有していて、これらの側壁12、端壁13そして底壁14により、後述する相手方たる第二コネクタ40の対応せる島状の中央壁を受け入れる受入凹部15を形成している。
【0021】
二つの側壁12のそれぞれには、その内面、上面そして外面に連続する複数の端子溝16が形成されて、それぞれの端子溝16内に端子の対応部分を収容するようになっている。又、端壁13には、金具溝17が形成されていて、該金具溝17には、第一コネクタ10を回路基板(図示せず)に固定取付するための取付金具30が収められている。
【0022】
第一コネクタ10の端子である第一端子20は、抜き加工等で外形づけられた帯状金属材をその板厚方向に屈曲されて作られている。図2には、図1における互いに平行で対向する二つの側壁12に取り付けられた複数の第一端子20のうち、一方の側壁12から一つの第一端子20を、そして他方の側壁12からはこれに対向する第一端子20を抜き出して、対をなす第一端子20が図示されている。この一対の第一端子20は、対向して対称に配されているが、全く同じ形態に作られている。したがって、図2の斜視図は一方の第一端子20について一方の面の側から示すと共に、他方の第一端子について反対側から示すこととなる。
【0023】
第一端子20は、図2に見られるように、逆U字状部21と該逆U字状部21の一方の脚部から水平方向に延出する水平部22とを有している。逆U字状部21は、屈曲部23と、該屈曲部23の頂部から両側に垂下する一方の脚部をなす取付部24と他方の脚部をなす第一接触部25とを有している。取付部24は平坦面を有し、その幅方向の両側縁に突出部24Bが形成されており、該取付部24がハウジング11の端子溝16へ上方から取り付けられるとき、上記突出部24Bが端子溝16の対応面を圧し、該取付部24での側壁12への取付けを強固とする。上記第一接触部25は、側壁12への端子取付状態で、下方に向け側壁12の内面から若干離間しており、その離間により第一接触部25は板厚方向に弾性が与えられている。
【0024】
上記取付部24は、その内面側が平坦に形成されているが、外面側には略四角形の窪み部24Aが形成されている。この窪み部24Aは、相手コネクタたる第二コネクタの第二端子とのロック兼接触部を形成する。上記取付部24の下端部はL字状に屈曲され水平方向に延出する水平部22に連結されている。該水平部22は、その下面が回路基板の対応回路部に接面して半田接続される接続部として形成されている。
【0025】
逆U字状部21の他方の脚部としての第一接触部25は、下端が自由端となっており、この自由端から屈曲部23の頂部の位置までの範囲を幅方向で二つの片状部分に分けるスリット26が延びている。二つの片状部分はスリット26を拡幅する方向に弾性を有している。該スリット26が延びる方向で自由端側部分に、板厚方向に貫通する窓状部26Aが形成されている。該窓状部26Aの上縁面はアーチ状をなし相手コネクタたる第二コネクタ40の第二端子との係止部26A−1を形成している。また、該係止部26A−1から下方の側縁面は自由端まで直状に延びていて該第二端子を押圧する押圧部26Bをなしている。かくして、スリット26の窓状部26Aは門型をなしている。上記窓状部26Aには、上記第一接触部25の外面側の縁部の一部に斜面で面取りされた導入部26A−2が形成されている。
【0026】
上記屈曲部23には、板厚方向に貫通する孔部27が形成されていて、上記窓状部26Aを貫通して上方に延びるスリット26はこの孔部27に連通している。
【0027】
かかる第一コネクタ10に嵌合される相手方たる第二コネクタ40は、電気絶縁材料から作られたハウジング41と、該ハウジング41により保持される第二端子50そして取付金具60とを有している。ハウジング41は複数の第二端子50を配列保持する平行な二つの側壁42と、側壁42同士を両端で連結する端壁43と、底壁44そして該底壁44上に島状に設けられた中央壁45とを有し、これらの側壁42、端壁43、中央壁45そして底壁44により、四角環状の受入凹部46を形成している。該受入凹部46は、既述の第一コネクタの側壁12そして端壁13を受け入れ、上記中央壁45は第一コネクタ10の受入凹部15に受け入れられる。
【0028】
上記ハウジング41には、中央壁45の両側に、端子溝47が形成されている。各側の端子溝47は、第一コネクタ10との嵌合時に、該第一コネクタ10の第一端子20の配列方向で該第一端子20に対応する位置に形成されている。端子溝47は、中央壁45の側面、底壁44の上面、側壁42の内面、上面、外面に連続して形成されている。したがって端子溝47は、これらの面にわたりS字状に形成されている。又、上記端壁43には、金具溝48が形成されていて、該金具溝48には、第二コネクタ40を回路基板(図示せず)に固定取付けするための取付金具60が収められている。
【0029】
第二コネクタ40の端子である第二端子50は、図3に見られるように、金属板の平坦面を維持して抜き加工により作られていて、略S字状をなしている。
【0030】
上記第二端子50は、第一コネクタ10の第一端子20との接続状態として図1の状態から上下反転して第一端子20と共に示される図3に見られるように、図にてU字状をなす取付部51と、該取付部51の内方上端から逆L字状に延びる弾性部52と、上記取付部51の外方上端から外方へ延出する接続部53とを有している。ここで、図3における第二端子50に関しての上下方向は、該第二端子50が図3では図1の状態を上下反転して示されているので、図1に示される第二端子50とは反対となる。したがって、図3では、第二端子50がハウジング41に保持されたときに、第二コネクタ40用の回路基板は、上記第二端子50の上部側に位置することとなる。
【0031】
U字状をなす取付部51の両脚の対向内面は、ハウジング41の端子溝47の対応面に係止する。さらに、U字状をなす取付部51は弾性部52側の一方の脚で上記対向内面とは反対側の面に、ロック突部51Cが設けられている。
【0032】
上記U字状の取付部51の内側上端から逆L字状に延びる弾性部52は、第二端子50が上記取付部51でハウジング41へ取り付けられた状態では、上記取付部51の内側上端を支点として弾性撓み変形可能となっている。
【0033】
上記弾性部52は、上記取付部51の内側上端からハウジング41の底壁44に沿って横方向に延びる底腕部54と、該底腕部54から屈曲され下方に延びる第二接触部55とを有している。底腕部54と第二接触部55との間の屈曲移行部には外方に突出した突出係止部56が設けられている。
【0034】
該第二接触部55、底腕部54そして該底腕部54につながる取付部51の一方の脚部とは逆U字状をなして、上記第一コネクタ10の第一端子20の逆U字状部21、すなわち、屈曲部23、取付部24そして第一接触部25をかかえ込むような形状をなしている。
【0035】
第二接触部55は、その自由端たる下端に内方へ突出した鉤状部をなす被係止部57を有している。この被係止部57は、第一コネクタ10への嵌合後の第二コネクタ40が上方へもち上げられたとき、第一コネクタ10の第一端子に形成された係止部26A−1と係止して抜け防止のためのロック機能をもたらす。
【0036】
かかる第二端子50は、ハウジング41の端子溝47へ収められるように取り付けられると、図3の第二端子50が上下反転して示されている図1に見られるように、被係止部57が該端子溝47から突出している(なお、突出係止部56は、図1では表われていない)。
【0037】
このような本実施形態の第一コネクタ10へ第二コネクタ40が嵌合されると、両コネクタ10,40の一対の端子20,50のみを示す図3に見られるように、第二コネクタ40の第二端子50は、底腕部54と第二接触部55から成る弾性部52と、該底腕部54につらなる取付部51の脚部とで、第一コネクタ10の第一端子20の第一接触部25、及び屈曲部23そして取付部24をかかえ込むように嵌り込む。
【0038】
第二端子50の取付部51の底腕部54側の脚部は上記第一端子20の取付部24の外面で案内され、一方、第二端子50の第二接触部55はその鉤状の被係止部57にて第一端子20の第一接触部25によって案内される。第二端子50の第二接触部55は被係止部57にて第一端子20の第一接触部25からの反力により弾性撓みしながら案内される。上記被係止部57が第一接触部25上を滑りながら第一接触部25の窓状部26Aの位置にまで達すると、第二端子50の第二接触部55はその弾性撓みの量を減じもしくは解放されるようにして、被係止部57が窓状部26A内に突入する。被係止部57が窓状部26A内に入ると、被係止部57はスリット26の内側縁面たる押圧部26Bを押圧して該スリット26の幅を広げようとする。したがって、この押圧部26Bからの反力により、第二接触部55は第一接触部25との接圧を高める。
【0039】
第二端子50は、被係止部57が第一端子20の窓状部26Aに突入すると共に、該第二端子50のロック突部51Cが第一端子20の窪み部24Aに係合する。
【0040】
かくして、コネクタの嵌合後、第二コネクタ40が上方にもち上げられて第一コネクタ10から抜出される方向の外力を受けても、第二コネクタ40はその被係止部57が第一コネクタ10側の窓状部26Aの上縁たる係止部26A−1と係止し、さらに、上記ロック突部51Cが窪み部24Aの上縁段部に係止するので、強固なロック力で抜出が阻止される。しかも、上記窓状部26Aは端子の板厚方向に貫通していてその係止部26A−1は板厚全範囲にわたっているので、上記被係止部57はこの板厚全範囲で係止することとなり、上記ロックが強大となる。
【0041】
<第二実施形態>
第一実施形態では、第二端子の被係止部が第一端子の第一接触部に形成された窓状部の上縁面をなす係止部と係止したが、本第二実施形態では、被係止部が第一端子の第一接触部の一方の板面の裏側面にあたる他方の板面と係止する点に特徴がある。
【0042】
本実施形態では、図4に見られるように、第一端子20の第一接触部25は、第一実施形態の場合に比べ、自由端に向け取付部24から大きく離間して行くように傾斜している。又、窓状部26Aそして押圧部26Bは自由端まで延びていると共に、その外面縁部の面取りによる導入部26A−2が自由端に至っている。
【0043】
一方、第二端子50は、金属板を板厚方向に屈曲して得られる曲げ端子として形成されている。該第二端子50は、図5に見られるように、U字状の取付部51、これから延びる弾性部52、そして接続部53を有している。弾性部52は底腕部54と第二接触部55を有している。
【0044】
本実施形態では、図6(B)によく見られるように、上記第二接触部55は、自由端に向かう範囲が板厚方向で屈曲されてS字状断面を有し、その屈曲部分が上記スリット26の窓状部26Aの内幅より若干大きく、図6(A)に見られるように、自由端でその幅を窓状部26Aの内幅よりもさらに大きくなっていて被係止部としての張出部55Aを有している。
【0045】
かかる第二端子50を有する第二コネクタ40が第一コネクタ10に嵌合されると、第二端子50の第二接触部55は、その屈曲部分および張出部55Aが第一端子20の第一接触部25に形成されているスリット26の内幅を広げながら該スリット26の窓状部26Aへ突入し、上記張出部55Aは第一接触部25の自由端の裏側面に面するように位置する(図6(B)参照)。
【0046】
かかる状態で、第二コネクタ40を抜出方向にもち上げようとすると、上記張出部55Aは上記第一接触部25の自由端の裏側面で形成される係止部に接面して係止され、ロックが確保される。上記張出部55Aと第一接触部25の自由端とは、互いの板面同士で係止するので、その面積が大きく取れて、係止力は増大する。
【0047】
本実施形態においても、第一接触部25のスリット26には押圧部26Bが形成されていて、第二接触部55を弾性的に押圧して互いの接圧を高める点では、第一実施形態の場合と同様である。
【0048】
<第三実施形態>
本実施形態では、第一端子20の第一接触部25が、スリットを有しておらず、下部にて幅方向の中間位置より一方の側縁側が切り取られた形状をなしている点に特徴がある。図7(A),(B)に示される本実施形態では、第二端子50は、第一実施形態と全く同じである。
【0049】
第一端子20は、第一実施形態と同様に板厚方向に屈曲されて作られている曲げ端子ではあるが、第一接触部25のみが第一実施形態の第一端子20と相違する。
【0050】
本実施形態の第一端子20の第一接触部25は、自由端側をなす下部の一方の側縁側が切り取られていて、自由端までの距離が短い短域25Aと長い長域25Bとを有している。本実施形態では、上記短域25Aの自由端たる下端の板厚端面が係止部25A−1を、そして上記長域25Bの短域25A側に位置する側縁面が押圧部25B−1を形成している。
【0051】
かかる本実施形態では、第二コネクタ40が第一コネクタ10へ嵌合されると、第二端子50の第二接触部55はその鉤状の被係止部57が上記第一端子20の係止部25A−1と係止可能に位置し、第二接触部55の側縁面が上記第一端子20の押圧部25B−1により側方から弾性押圧されて接圧が高められる。
【0052】
第二コネクタ40が抜出方向にもち上げられようとすると、上記第二端子50の被係止部57が係止部25A−1とその板厚面で係止し、ロック機能を得られる。
【0053】
<第四実施形態>
本実施形態では、第一端子の第一接触部は、スリットを有していることもなく、部分的に切り取られていることもなく、その自由端の端面で係止部を形成している点に特徴がある。
【0054】
図8に示される本実施形態では、第二端子50は、第三実施形態と同様、第一実施形態の第二端子と全く同じである。第一端子20は、第一そして第三実施形態と同様曲げ端子ではあるが、第一接触部25のみが第一および第三実施形態の第一端子20と相違する。
【0055】
本実施形態の第一端子20は、第一実施形態の第一端子のようなスリットは形成されておらず、単純な板状をなし自由端へ向け延び、自由端部25Cが外方、すなわち第二端子の第二接触部55に向け傾斜している。自由状態での上記第一接触部25と第二接触部55とは、第一接触部25の上記自由端部25Cの先端と第二接触部55の鉤状部として形成された被係止部57の根元部分とが干渉量をもつ位置関係にある。上記第一接触部25の自由端部25Cがかかる干渉量を生ずる部分は、第二コネクタ40が第一コネクタ10に嵌合されたときには、上記第二接触部55によって押圧され上記干渉量分だけ第一接触部25は弾性変形する。このとき、第二接触部55も第一接触部25からの反力によって弾性変形した状態にある。この弾性変形により第一接触部25と第二接触部55は接圧を高める。また、第二接触部55の被係止部57は、上記第一接触部25の自由端部25Cの下端面の直下に位置しており、該下端面が第一接触部25の係止部として機能し、第二コネクタ40が抜出されようとしたとき、上記被係止部57に係止し、第二コネクタ40の抜出を阻止する。
【符号の説明】
【0056】
10 第一コネクタ 26A 窓状部
20 第一端子 26B 押圧部
25 第一接触部 26A−1 係止部
25A 短域 40 第二コネクタ
25A−1 係止部 50 第二端子
25B 長域 55 第二接触部
25B−1 押圧部 55A 張出部
25C 係止部(自由端部) 57 鉤状部(被係止部)
26 スリット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板を板厚方向に屈曲することにより形成された屈曲部からコネクタ嵌合方向先方に位置する自由端部に向け延びる第一接触部が設けられた第一端子を備える第一コネクタと、該第一接触部の一方の板面に対して接圧をもって上記嵌合方向先方へ向け摺動して接触し正規位置で第一接触部と抜出方向に係止する第二接触部とが形成された第二端子を備える第二コネクタとを有するコネクタ組立体において、第一接触部と第二接触部の少なくとも一方は上記接圧の方向に弾性変位可能であり、第一接触部はその板厚の全厚さ範囲にわたる板厚面または他方の板面側で係止部が形成され、第二接触部は第一接触部の該係止部の少なくとも一部と上記抜出方向で係止する被係止部を有していることを特徴とする電気コネクタ組立体。
【請求項2】
第一接触部の係止部は板厚方向に貫通した窓状部の縁面で形成されていることとする請求項1に記載の電気コネクタ組立体。
【請求項3】
第一接触部は、自由端から屈曲部へ向け延びるスリットが少なくとも係止部まで及んで形成されており、係止部での第二接触部との係止時にスリットがその幅を拡げるように、幅方向に弾性を有していると共に、第二接触部の側縁を幅方向に弾性押圧する押圧部を有していることとする請求項2に記載の電気コネクタ組立体。
【請求項4】
第一接触部は、自由端から屈曲部へ向け延びるスリットが形成されており、自由端の側の部分が係止部を形成し、
第二接触部は、第一接触部のスリットを該第一接触部の一方の板面側から板厚方向で貫通した後に該第一接触部の先端部の他方の板面側に向けて屈曲され且つ幅方向で上記スリットよりも両側に張り出して形成される張出部で被係止部を形成していることとする請求項1に記載の電気コネクタ組立体。
【請求項5】
第一接触部は、幅方向で中間位置より一方の側縁側が自由端に向け切り欠かれていて、自由端までの距離が短い短域とこれよりも長い長域とを形成し、短域の自由端における板厚端面が第二接触部の被係止部と係止する係止部を形成し、長域の短域側に位置する側縁面が第二接触部の側縁を幅方向に弾性押圧する押圧部を形成していることとする請求項1に記載の電気コネクタ組立体。
【請求項6】
第二接触部は、第一接触部の自由端部と弾性接触すると共に該自由端部の先方で該自由端部の端面に面するように屈曲された鉤状部を有し、上記第一接触部の自由端部が係止部を、そして第二接触部の鉤状部が被係止部を形成していることとする請求項1に記載の電気コネクタ組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−159507(P2011−159507A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20445(P2010−20445)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(390005049)ヒロセ電機株式会社 (383)
【Fターム(参考)】