説明

電気光学装置、電子機器、及び電気光学装置の駆動方法

【課題】1フレーム期間で表現できる階調数を飛躍的に高めることが可能な電気光学装置、電子機器、電気光学装置の駆動方法を提供する。
【解決手段】電気光学装置は、フレーム期間の少なくとも一部が複数のサブフィールド期間に分割され、サブフィールド期間ごとに画素電極と対向電極との間に印加される駆動電圧を、オン電圧およびオフ電圧のいずれか一方から選択することで、電気光学層の透過光を制御して複数の階調を表示する。電気光学装置の駆動回路は、表示される階調に応じて、オン電圧の印加期間とオフ電圧の印加期間との比率、並びにオン電圧及びオフ電圧の配列を決定する。フレーム期間は、オン電圧が前記正極性電圧となる正極性期間と、オン電圧が負極性電圧となる負極性期間とを有し、正極性期間と負極性期間との間で、オン電圧及びオフ電圧の印加期間の配列が互いに異なる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置、電子機器、及び電気光学装置の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気光学装置の一例として、液晶装置について説明する。従来から、液晶表示装置の駆動方法として、サブフィールド駆動が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−148417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
サブフィールド駆動では、1フィールド期間が、複数のサブフィールド期間に分割される。液晶のオン状態及びオフ状態は、サブフィールドごとに制御される。これにより、液晶装置での階調表示が実現され得る。
【0005】
ところで、上記特許文献1には、1フィールドごとにデータ書き込み極性を反転させることが記載されている。これにより、液晶に作用する電界の向きを、1フィールドごとに反転させることができる。この結果、液晶装置における焼き付きと呼ばれる現象を軽減することができる。
【0006】
また、上記特許文献1には、1フィールド期間の透過光の積分値が階調データと対応するように、オン電圧およびオフ電圧が決定されることが記載されている。1フィールド期間のサブフィールド数が多いほど、表現できる階調数が多くなることが知られている。
【0007】
しかしながら、従来の液晶装置では、焼き付きを防止しながら階調数を増大させることが困難であるという課題があった。具体的には、片極性である1フィールドごとに階調データが決定される場合、正極性フィールドと負極性フィールドで同じ階調データとすることで、焼き付きを軽減することはできるものの、表現できる階調数は、片極性の期間内のサブフィールド数によって制限されてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一つを解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現され得る。
【0009】
《適用例1》走査線とデータ線との交点に対応して設けられたスイッチングトランジスターと、該スイッチングトランジスターに接続され、該データ線から該スイッチングトランジスターを介して電位が供給される画素電極と、対向電極と、該画素電極と該対向電極との間に発生する電界が印加される電気光学層と、該走査線及び該データ線を駆動する駆動回路と、を有し、フレーム期間の少なくとも一部が複数のサブフィールド期間に分割され、前記サブフィールド期間ごとに、前記電界を発生させるために前記画素電極と前記対向電極との間に印加される駆動電圧を、オン電圧およびオフ電圧のいずれか一方から選択することで、前記電気光学層の透過光を制御して複数の階調を表示する電気光学装置であって、前記複数のサブフィールド期間は、複数の正極性サブフィールド期間と、複数の負極性サブフィールド期間と、からなり、前記フレーム期間において、前記正極性サブフィールド期間の数は、前記負極性サブフィールド期間の数と等しく、前記正極性サブフィールド期間において、前記画素電極の電位が前記対向電極の電位より高い場合の前記駆動電圧である正極性電圧が前記オン電圧として選択され、前記負極性サブフィールド期間において、前記画素電極の電位が前記対向電極の電位より低い場合の前記駆動電圧である負極性電圧が前記オン電圧として選択され、前記正極性サブフィールド期間と前記負極性サブフィールド期間とにおいて、前記画素電極の電位が前記対向電極の電位と略等しい場合の前記駆動電圧が前記オフ電圧として選択され、前記駆動回路は、表示される前記階調に応じて、前記フレーム期間における前記オン電圧の印加期間と前記オフ電圧の印加期間との比率、並びに前記オン電圧が選択されるサブフィールド期間の配列及び前記オフ電圧が選択されるサブフィールド期間の配列を決定し、前記フレーム期間において、複数の前記正極性サブフィールド期間からなる列を正極性サブフィールド列とし、複数の前記負極性サブフィールド期間からなる列を負極性サブフィールド列としたとき、前記正極性サブフィールド列における前記オン電圧が選択される正極性サブフィールド期間の配置と、前記負極性サブフィールド列における前記オン電圧が選択される負極性サブフィールド期間の配置とが互いに異なることを特徴とする電気光学装置。
【0010】
この電気光学装置では、1フレーム期間内において、電気光学層に正極性電圧と、負極性電圧を印加し、複数の階調を表示する。
これにより、この電気光学装置では、焼き付きの要因の1つを1フレーム期間内で解消しやすくすることができるので、焼き付きを効果的に軽減することができる。
【0011】
この電気光学装置では、フレーム期間における透過光の積分値が、複数の階調のうちいずれかの階調に対応するように、オン電圧の印加期間とオフ電圧の印加期間との比率、及びオン電圧及びオフ電圧の配列を決定し、フレーム期間は、オン電圧が正極性電圧となる正極性サブフィールド期間と、オン電圧が負極性電圧となる負極性サブフィールド期間とを有し、複数の正極性サブフィールド期間からなる正極性サブフィールド列と複数の負極性期間からなる負極性サブフィールド列との間で、オン電圧及びオフ電圧の印加期間の配置を互いに異ならせることができる。
これにより、この電気光学装置では、オン電圧を印加するサブフィールドの配置の自由度を高めることができる。液晶の応答特性によって、サブフィールド配置が異なることで、フレーム期間内における透過光の積分値が異なることから、表現できる階調数を高めることができる。
【0012】
《適用例2》上記適用例に記載の前記フレーム期間において、複数の前記正極性サブフィールド期間の長さの合計と、複数の前記負極性サブフィールド期間の長さの合計との比率は、前記複数の階調間で互いに等しいことが好ましい。
【0013】
《適用例3》上記適用例に記載の前記フレーム期間において、複数の前記正極性サブフィールド期間のうち前記オン電圧が選択される正極性サブフィールド期間の数は、複数の前記負極性サブフィールド期間のうち前記オン電圧が選択される負極性サブフィールド期間の数と等しいことが好ましい。
【0014】
《適用例4》上記適用例に記載の前記フレーム期間の前半に、前記正極性サブフィールド期間と前記負極性サブフィールド期間のうちいずれかが互いに連続して配置され、前記フレーム期間の後半に、前記正極性サブフィールド期間と前記負極性サブフィールド期間のうち他方が互いに連続して配置されていることが好ましい。
【0015】
《適用例5》上記適用例に記載の前記フレーム期間において、前記正極性サブフィールド期間と前記負極性サブフィールド期間とが交互に配置されていることが好ましい。
【0016】
《適用例6》上記適用例に記載の電気光学装置を具備した電子機器。
【0017】
《適用例7》走査線とデータ線との交点に対応して設けられたスイッチングトランジスターと、該スイッチングトランジスターに接続され、該データ線から該スイッチングトランジスターを介して電位が供給される画素電極と、対向電極と、該画素電極と該対向電極との間に発生する電界が印加される電気光学層と、該走査線及び該データ線を駆動する駆動回路と、を有し、フレーム期間の少なくとも一部が複数のサブフィールド期間に分割され、前記サブフィールド期間ごとに、前記電界を発生させるために前記画素電極と前記対向電極との間に印加される駆動電圧を、オン電圧およびオフ電圧のいずれか一方から選択することで、前記電気光学層の透過光を制御して複数の階調を表示する電気光学装置の駆動方法であって、前記複数のサブフィールド期間は、複数の正極性サブフィールド期間と、複数の負極性サブフィールド期間と、からなり、前記フレーム期間において、前記正極性サブフィールド期間の数は、前記負極性サブフィールド期間の数と等しく、前記正極性サブフィールド期間において、前記画素電極の電位が前記対向電極の電位より高い場合の前記駆動電圧である正極性電圧が前記オン電圧として選択され、前記負極性サブフィールド期間において、前記画素電極の電位が前記対向電極の電位より低い場合の前記駆動電圧である負極性電圧が前記オン電圧として選択され、前記正極性サブフィールド期間と前記負極性サブフィールド期間とにおいて、前記画素電極の電位が前記対向電極の電位と略等しい場合の前記駆動電圧が前記オフ電圧として選択され、表示される前記階調に応じて、前記フレーム期間における前記オン電圧の印加期間と前記オフ電圧の印加期間との比率、並びに前記オン電圧が選択されるサブフィールド期間の配列及び前記オフ電圧が選択されるサブフィールド期間の配列を決定し、前記フレーム期間において、複数の前記正極性サブフィールド期間からなる列を正極性サブフィールド列とし、複数の前記負極性サブフィールド期間からなる列を負極性サブフィールド列としたとき、前記正極性サブフィールド列における前記オン電圧が選択される正極性サブフィールド期間の配置と、前記負極性サブフィールド列における前記オン電圧が選択される負極性サブフィールド期間の配置とが互いに異なることを特徴とする電気光学装置の駆動方法。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態におけるプロジェクターの主要構成を示すブロック図。
【図2】第1実施形態におけるプロジェクターの画像形成部の主要構成を示す図。
【図3】第1実施形態におけるプロジェクターの画像形成パネルを示す斜視図。
【図4】図3中のA−A線における断面図。
【図5】第1実施形態での液晶パネル駆動回路と液晶パネルとを示す回路図。
【図6】第1実施形態での画像形成パネルにおける複数の画素の一部を示す平面図。
【図7】第1実施形態での液晶パネルの図6中のC−C線における断面図。
【図8】図7中のTFT素子の拡大図。
【図9】第1実施形態での半導体層、信号線及び走査線の配置を説明する平面図。
【図10】第1実施形態での画素電極の配置を説明する平面図。
【図11】第1実施形態でのサブフィールド期間を説明するタイミングチャート。
【図12】第1実施形態での走査線駆動回路を説明するブロック図。
【図13】第1実施形態での選択信号を説明するタイミングチャート。
【図14】第1実施形態での信号線駆動回路を説明するブロック図。
【図15】第1実施形態での極性反転信号を説明するタイミングチャート。
【図16】第1実施形態でのラッチ信号を説明するタイミングチャート。
【図17】第1実施形態での正極性期間と負極性期間とを説明するタイミングチャート。
【図18】第2実施形態での駆動電圧波形を説明するタイミングチャート。
【図19】第1実施形態の液晶装置が適用された電子機器の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施形態について、電子機器の1つであるプロジェクターを例に、図面を参照しながら説明する。
【0020】
[第1実施形態]
第1実施形態におけるプロジェクター1は、主要構成を示すブロック図である図1に示すように、光学系3と、制御回路5と、電源部7と、を有している。プロジェクター1は、図示しない外部装置から入力される画像信号に応じた画像を、光学系3を介してスクリーン8などに投射することができる。
【0021】
光学系3は、画像信号に基づいた画像を形成し、形成した画像をスクリーン8などに投射する。制御回路5は、画像信号に基づいて光学系3の駆動を制御する。
なお、プロジェクター1では、外部電源9から入力される電力が、電源部7によって直流電力に変換される。光学系3や制御回路5などには、電源部7から直流電力が供給される。
【0022】
光学系3は、ランプ11と、画像形成部13と、投射レンズ部15と、を有している。
ランプ11は、画像形成部13や投射レンズ部15を経てスクリーン8に向けて射出される投射光17を発生する。ランプ11としては、例えば、高圧水銀ランプやメタルハライドランプなどが採用され得る。
【0023】
画像形成部13は、後述する液晶パネルなどを有している。画像形成部13は、制御回路5から入力される画像データなどに基づいて液晶パネルに画像を形成する。画像形成部13には、ランプ11からの光が照射される。このため、画像形成部13に形成された画像は、ランプ11からの光によって投射レンズ部15に投影される。
【0024】
投射レンズ部15には、ランプ11からの光が画像形成部13を経て入射される。投射レンズ部15は、入射された光を広げる方向に屈折させて、投射光17として射出する。このため、画像形成部13に形成された画像は、拡大された状態でスクリーン8に投射され得る。
【0025】
制御回路5は、制御部21と、画像処理部23と、液晶パネル駆動回路25と、を有している。
制御部21は、例えば、マイクロコンピューターで構成され、CPU(Central Processing Unit)27と、メモリー部29と、を有している。
CPU27は、メモリー部29に格納されている制御プログラムに従って、プロジェクター1の動作を統括制御する。メモリー部29は、フラッシュメモリー等のROM(Read Only Memory)や、RAM(Random Access Memory)等を含んでいる。ROMには、CPU27が実行する制御プログラムなどが格納されている。RAMは、CPU27によって実行される制御プログラムを一時的に展開したり、各種設定値等を一時的に格納したりする。
【0026】
画像処理部23には、画像信号が入力される。画像処理部23は、制御部21からの指示に基づいて、画像信号に種々の処理を施す。また、画像処理部23は、画像信号を画像データに変換する。画像信号から変換された画像データは、液晶パネル駆動回路25に出力される。
なお、画像処理部23が画像信号に施す処理としては、各種の画質調整や、メニュー、メッセージ等のOSD(オンスクリーンディスプレー)画像を合成する処理などが挙げられる。また、各種の画質調整としては、解像度変換、輝度調整、コントラスト調整、シャープネス調整などが挙げられる。
液晶パネル駆動回路25は、入力された画像データに応じて、画像形成部13の駆動を制御する。
【0027】
ここで、画像形成部13の構成について、詳細を説明する。
画像形成部13は、主要構成を示す図である図2に示すように、分光部31と、画像形成パネル33と、クロスダイクロイックプリズム35と、を有している。
分光部31には、ランプ11からの光41が入射される。分光部31は、光41から、赤系(R)の色の光41R、緑系(G)の色の光41G、及び青系(B)の色の光41Bのそれぞれを分離する。
【0028】
ここで、Rの色は、純粋な赤の色相に限定されず、橙等を含む。Gの色は、純粋な緑の色相に限定されず、青緑や黄緑等を含む。Bの色は、純粋な青の色相に限定されず、青紫や青緑等を含む。他の観点から、Rの色を呈する光41Rは、光の波長のピークが、可視光領域で570nm以上の範囲にある光であると定義され得る。また、Gの色を呈する光41Gは、光の波長のピークが500nm〜565nmの範囲にある光であると定義され得る。Bの色を呈する光41Bは、光の波長のピークが415nm〜495nmの範囲にある光であると定義され得る。
【0029】
分光部31は、ダイクロイックミラー43と、ダイクロイックミラー45と、反射ミラー47と、反射ミラー48と、反射ミラー49と、を有している。光41は、光軸51aに沿って分光部31に入射する。
ダイクロイックミラー43は、光軸51aと交差する位置に設けられている。ダイクロイックミラー43は、光軸51aの方向に対して傾斜している。ダイクロイックミラー43は、光41のうちで、Rの光41Rを透過させ、Gの光41G及びBの光41Bを反射させることができる。
【0030】
従って、ダイクロイックミラー43によって、光41からRの光41Rが分離され得る。他方で、Gの光41G及びBの光41Bが混合した光53が、ダイクロイックミラー43によって、光41から分離され得る。
ダイクロイックミラー43を透過した光41Rは、光軸51aに沿って反射ミラー47へ導かれる。
他方で、ダイクロイックミラー43によって反射された光53は、光軸51aが光軸51bに変えられてから、ダイクロイックミラー45へ導かれる。
【0031】
ダイクロイックミラー45は、光軸51bと交差する位置に設けられている。ダイクロイックミラー45は、光軸51bの方向に対して傾斜している。ダイクロイックミラー45は、光53のうちで、Bの光41Bを透過させ、Gの光41Gを反射させることができる。従って、ダイクロイックミラー45によって、光53からGの光41GとBの光41Bとが分離され得る。
ダイクロイックミラー45を透過した光41Bは、光軸51bに沿って反射ミラー48へ導かれる。
他方で、ダイクロイックミラー45によって反射された光41Gは、光軸51bが光軸51cに変えられる。
【0032】
反射ミラー47は、光41Rの光軸51aと交差する位置に設けられている。反射ミラー47は、光軸51aの方向に対して傾斜している。光41Rは、反射ミラー47で反射することによって、光軸51aが光軸51dに変えられる。
反射ミラー48は、光41Bの光軸51bと交差する位置に設けられている。反射ミラー48は、光軸51bの方向に対して傾斜している。光41Bは、反射ミラー48によって光軸51bが光軸51eに変えられてから、反射ミラー49に導かれる。
反射ミラー49は、光41Bの光軸51eと交差する位置に設けられている。反射ミラー49は、光軸51eの方向に対して傾斜している。光41Bは、反射ミラー49で反射することによって、光軸51eが光軸51fに変えられる。
【0033】
クロスダイクロイックプリズム35は、光軸51c、光軸51d及び光軸51fの交点に重なる位置に設けられている。クロスダイクロイックプリズム35は、面35aと、面35bと、面35cと、面35dと、を有している。
面35aは、反射ミラー47側に向けられている。面35bは、ダイクロイックミラー45側に向けられている。面35cは、反射ミラー49側に向けられている。
【0034】
画像形成パネル33は、光41R、光41G及び光41Bごとに設けられている。つまり、プロジェクター1は、光41Rに対応する画像形成パネル33と、光41Gに対応する画像形成パネル33と、光41Bに対応する画像形成パネル33と、を有している。なお、以下において、画像形成パネル33を光41R、光41G及び光41Bごとに識別する場合には、画像形成パネル33は、画像形成パネル33R、画像形成パネル33G及び画像形成パネル33Bと表記される。
画像形成パネル33R、画像形成パネル33G及び画像形成パネル33Bは、相互に同じ仕様の画像形成パネル33が採用され得る。
【0035】
画像形成パネル33Rは、面35aと反射ミラー47との間において、光軸51dに交差する位置に設けられている。画像形成パネル33Rは、面35aに対向している。
画像形成パネル33Gは、面35bとダイクロイックミラー45との間において、光軸51cに交差する位置に設けられている。画像形成パネル33Gは、面35bに対向している。
画像形成パネル33Bは、面35cと反射ミラー49との間において、光軸51fに交差する位置に設けられている。画像形成パネル33Bは、面35cに対向している。
【0036】
ここで、画像形成パネル33は、透過型の液晶パネルをライトバルブとして有している。
液晶パネルは、後述する複数の画素と、画素ごとに駆動が制御される液晶と、を有している。液晶パネルは、複数の画素に入射された光の偏光状態を、画素ごとに変化させることができる。なお、液晶パネルについては、詳細を後述する。
画像形成パネル33では、液晶パネルの複数の画素に入射された光の偏光状態を画素ごとに変化させることによって、画像形成パネル33を透過した光で画像を形成することができる。
【0037】
画像形成パネル33を透過した光は、クロスダイクロイックプリズム35に導かれる。
画像形成パネル33Rを透過した光41Rは、面35aからクロスダイクロイックプリズム35に入射する。
画像形成パネル33Gを透過した光41Gは、面35bからクロスダイクロイックプリズム35に入射する。
画像形成パネル33Bを透過した光41Bは、面35cからクロスダイクロイックプリズム35に入射する。
このため、面35aには、Rの画像が投影され、面35bには、Gの画像が投影され、面35cには、Bの画像が投影され得る。
【0038】
クロスダイクロイックプリズム35に入射した光41R、光41G及び光41Bは、クロスダイクロイックプリズム35によって合成される。つまり、クロスダイクロイックプリズム35によって、Rの画像、Gの画像及びBの画像が合成され得る。
クロスダイクロイックプリズム35によって合成された光41R、光41G及び光41Bは、画像光55としてクロスダイクロイックプリズム35の面35dから射出される。
【0039】
面35dから射出された画像光55は、投射レンズ部15へ導かれてから、投射レンズ部15に入射する。投射レンズ部15に入射した画像光55は、投射光17(図1)としてスクリーン8などに投射される。
【0040】
ここで、画像形成パネル33の構成について、詳細を説明する。
画像形成パネル33は、図3に示すように、液晶パネル61と、位相差板62と、位相差板63と、偏光板64aと、偏光板64bと、を有している。
ここで、画像形成パネル33には、複数の画素65が設定されている。複数の画素65は、領域67内で、図中のX方向及びY方向に配列しており、X方向を行方向とし、Y方向を列方向とするマトリックスMを構成している。
図3では、構成をわかりやすく示すため、画素65が誇張され、且つ画素65の個数が減じられている。
なお、X方向は、後述する走査線が延在する方向でもある。Y方向は、後述する信号線が延在する方向でもある。
【0041】
プロジェクター1では、画像形成パネル33は、偏光板64b側の面69が、図2に示すクロスダイクロイックプリズム35側に向けられている。画像形成パネル33では、面69側に画像が形成(表示)される。従って、以下においては、面69は、表示面69と表記される。
領域67は、画像が形成(表示)される領域に相当する。このため、以下において、領域67は、表示領域67と表記される。
【0042】
液晶パネル61は、図3中のA−A線における断面図である図4に示すように、素子基板71と、対向基板73と、液晶75と、シール材77と、を有している。
素子基板71には、表示面69側すなわち液晶75側に、複数の画素65のそれぞれに対応して、後述するスイッチング素子などが設けられている。
対向基板73は、素子基板71よりも表示面69側で素子基板71に対向し、且つ素子基板71との間に隙間を有した状態で設けられている。対向基板73には、面79側すなわち液晶75側に、後述する対向電極などが設けられている。なお、面79は、画像形成パネル33における表示面69とは反対側の底面に相当している。このため、以下において、面79は、底面79と表記される。
【0043】
液晶75は、素子基板71及び対向基板73の間に挟持されており、液晶パネル61の周縁よりも内側で表示領域67を囲むシール材77によって、素子基板71及び対向基板73の間に封止されている。本実施形態では、液晶75の駆動方式として、VA(Vertical Alignment)型の駆動方式が採用されている。
【0044】
位相差板62は、素子基板71よりも底面79側、すなわち液晶75側とは反対側に設けられている。
位相差板63は、対向基板73よりも表示面69側、すなわち液晶75側とは反対側に設けられている。画像形成パネル33では、位相差板62及び位相差板63は、それぞれ、入射された光に対して位相差を付与することで、画像形成パネルへ入射する光、ならびに画像形成パネルから射出する光の偏光状態を最適化することができる。
【0045】
偏光板64aは、素子基板71の底面79側に設けられている。偏光板64bは、位相差板63の表示面69側に設けられている。偏光板64a及び偏光板64bは、それぞれ、透過軸に沿った偏光軸を有する直線偏光を透過させることができる。
また、液晶パネル61は、液晶パネル駆動回路25と液晶パネル61とを示すブロック図である図5に示すように、走査線駆動回路81と、信号線駆動回路83と、を有している。液晶パネル駆動回路25と液晶パネル61とは、それぞれ、電気光学装置の一例としての液晶装置85の構成要素の1つである。
【0046】
マトリックスMでは、Y方向に沿って並ぶ複数の画素65が、図6に示すように、1つの画素列87を構成している。また、X方向に沿って並ぶ複数の画素65が、1つの画素行88を構成している。
【0047】
ここで、液晶パネル61の素子基板71及び対向基板73のそれぞれの構成について、詳細を説明する。
素子基板71は、図6中のC−C線における断面図である図7に示すように、第1基板93と、素子層92とを有している。
第1基板93は、例えばガラスや石英などの光透過性を有する材料で構成されており、表示面69側に向けられた第1面93aと、底面79側に向けられた第2面93bとを有している。
【0048】
素子層92は、第1基板93の第1面93aに設けられている。素子層92には、絶縁膜95と、絶縁膜97と、絶縁膜99と、配向膜101とが含まれている。また、素子層92には、図5にも示すように、画素65ごとに、スイッチング素子の1つであるTFT(Thin Film Transistor)素子103と、画素電極105と、図示しない容量素子と、が含まれている。
【0049】
絶縁膜95は、図7に示すように、第1基板93の第1面93aに設けられている。絶縁膜97は、絶縁膜95の表示面69側に設けられている。絶縁膜99は、絶縁膜97の表示面69側に設けられている。画素電極105は、絶縁膜99の表示面69側に設けられている。配向膜101は、画素電極105の表示面69側に設けられている。
なお、絶縁膜95の材料としては、例えば、酸化シリコンや窒化シリコンなどの無機材料が採用され得る。本実施形態では、絶縁膜95の材料として、酸化シリコンが採用されている。
【0050】
TFT素子103と、画素電極105とは、それぞれ、各画素65に対応して設けられている。
TFT素子103は、拡大図である図8に示すように、半導体層109と、ゲート電極111と、を有している。半導体層109は、絶縁膜95の表示面69側に設けられている。半導体層109は、ゲート絶縁膜113によって表示面69側から覆われている。
【0051】
半導体層109としては、例えば、単結晶シリコンや、多結晶シリコン、非晶質シリコンなどが採用され得る。本実施形態では、半導体層109として、多結晶シリコンが採用されている。
ゲート絶縁膜113の材料としては、例えば、酸化シリコンや窒化シリコンなどの無機材料が採用され得る。本実施形態では、ゲート絶縁膜113の材料として、酸化シリコンが採用されている。
【0052】
ゲート電極111は、ゲート絶縁膜113を挟んで半導体層109に対向する位置に設けられている。
ゲート電極111の材料としては、例えば、多結晶シリコンなどにイオンなどを注入したものなどが採用され得る。また、ゲート電極111の材料として、モリブデン、タングステン、タンタル、クロムなどの金属や、これらを含む合金なども採用され得る。モリブデンやタングステンなどを含む合金としては、例えば、モリブデンシリサイドや、タングステンシリサイドなどが挙げられる。
本実施形態では、ゲート電極111として、多結晶シリコンにイオンなどを注入した所謂ポリシリコンゲートが採用されている。
【0053】
本実施形態では、半導体層109は、チャネル領域109aと、ソース領域109bと、ドレイン領域109cと、を有している。
チャネル領域109aは、平面視でゲート電極111に重なっている。ソース領域109b及びドレイン領域109cは、それぞれ、平面視でチャネル領域109aの外側に設けられている。チャネル領域109aは、ソース領域109bとドレイン領域109cとの間に設けられている。
なお、半導体層109としては、チャネル領域109aとソース領域109bとの間や、チャネル領域109aとドレイン領域109cとの間に、LDD(Lightly Doped Drain)領域を設けた構成も採用され得る。
【0054】
上記の構成を有するTFT素子103は、絶縁膜97によって表示面69側から覆われている。絶縁膜97の材料としては、例えば、酸化シリコンや窒化シリコンなどの無機材料が採用され得る。本実施形態では、絶縁膜97の材料として、酸化シリコンが採用されている。
絶縁膜97及びゲート絶縁膜113には、コンタクトホール115aと、コンタクトホール115bと、が設けられている。
コンタクトホール115aは、ソース領域109bに及んでいる。コンタクトホール115bは、ドレイン領域109cに及んでいる。コンタクトホール115a内には、ソース電極117が設けられている。コンタクトホール115b内には、ドレイン電極119が設けられている。
【0055】
絶縁膜97の表示面69側には、図7に示すように、信号線Sが設けられている。信号線Sは、平面視でソース電極117に重なる位置に設けられている。信号線Sとソース電極117とは、互いに電気的につながっている。信号線Sは、ソース電極117を介して半導体層109のソース領域109b(図8)に電気的につながっている。信号線Sは、図7に示すように、絶縁膜99によって表示面69側から覆われている。絶縁膜99の材料としては、例えば、酸化シリコンや窒化シリコンなどの無機材料が採用され得る。本実施形態では、絶縁膜99の材料として、酸化シリコンが採用されている。
【0056】
ここで、図8に示すコンタクトホール115bは、絶縁膜99の表示面69側に及んでいる。ドレイン電極119は、図7に示すように、絶縁膜99の表示面69側に及んでいる。画素電極105とドレイン電極119とは、互いに電気的につながっている。画素電極105は、ドレイン電極119を介して半導体層109のドレイン領域109c(図8)に電気的につながっている。
画素電極105としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)や、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide)などの光透過性を有する材料が採用され得る。本実施形態では、画素電極105の材料として、ITOが採用されている。
【0057】
画素電極105は、図7に示すように、配向膜101によって表示面69側から覆われている。
配向膜101の材料としては、例えばポリイミドなどの光透過性を有する材料が採用され得る。本実施形態では、配向膜101の材料として、ポリイミドが採用されている。なお、配向膜101には、表示面69側に配向処理が施されている。
【0058】
対向基板73は、第2基板121と、対向層122とを有している。第2基板121は、例えばガラスや石英などの光透過性を有する材料で構成されており、表示面69側に向けられた外向面121aと、底面79側に向けられた対向面121bとを有している。
対向層122は、第2基板121の対向面121bに設けられている。対向層122には、絶縁膜123と、対向電極125と、配向膜127と、が含まれている。
絶縁膜123は、第2基板121の対向面121bに設けられている。絶縁膜123の材料としては、例えば、酸化シリコンや窒化シリコンなどの無機材料が採用され得る。本実施形態では、絶縁膜123の材料として、酸化シリコンが採用されている。
【0059】
対向電極125は、絶縁膜123の底面79側に設けられている。対向電極125の材料としては、例えばITOやインジウム亜鉛酸化物などの光透過性を有する材料が採用され得る。本実施形態では、対向電極125の材料として、ITOが採用されている。
対向電極125は、マトリックスMを構成する複数の画素65(図3)にわたって一連した状態で設けられている。対向電極125は、マトリックスMを構成する複数の画素65に対して共通して機能する。
なお、本実施形態では、画素65の領域は、図7に示すように、1つの画素電極105と、対向電極125とが重なり合う領域であると定義され得る。
【0060】
配向膜127は、対向電極125の底面79側に設けられている。対向電極125は、配向膜127によって底面79側から覆われている。配向膜127の材料としては、例えばポリイミドなどの光透過性を有する材料が採用され得る。本実施形態では、配向膜127の材料として、ポリイミドが採用されている。配向膜127には、底面79側に配向処理が施されている。
【0061】
ここで、Y方向に並ぶ複数のソース電極117は、図9に示すように、信号線Sを介して、画素列87(図5)単位で相互に電気的につながっている。
また、X方向に並ぶ複数のゲート電極111は、図9に示すように、走査線Tを介して、画素行88(図5)単位で相互に電気的につながっている。
複数の信号線Sは、それぞれY方向に延びており、X方向に並んでいる。X方向に隣り合う信号線S同士の間には、隙間が設けられている。
複数の走査線Tは、それぞれX方向に延びており、Y方向に並んでいる。Y方向に隣り合う走査線T同士の間には、隙間が設けられている。
【0062】
本実施形態では、図示しないがX方向に沿って延在する容量線が設けられている。容量線は、走査線Tに対応して、すなわち画素行88(図5)ごとに設けられている。
本実施形態では、容量線は、図7に示す絶縁膜95の表示面69側に設けられており、絶縁膜97によって表示面69側から覆われている。容量線の材料としては、例えば、モリブデン、タングステン、クロムなどの金属や、これらを含む合金などが採用され得る。なお、ゲート電極111(走査線T)と、容量線とは、図9に示すように、Y方向に隙間をあけた状態で並んでいる。
【0063】
画素65は、複数の信号線Sと、複数の走査線Tとの各交差に対応して設定されている。
画素電極105は、図10に示すように、互いに隣り合う信号線Sと、互いに隣り合う走査線Tとによって囲まれる領域に重なっている。なお、本実施形態では、画素電極105は、周縁部が信号線S及び走査線Tに重なっている。また、画素電極105は、容量線に重なっている。
これにより、液晶パネル61では、容量線と画素電極105との間に、図5に示す容量素子が形成される。
なお、図8に示すTFT素子103の断面は、図10中のH−H線における断面に相当している。
【0064】
本実施形態では、液晶パネル61は、図5に示すように、n本(nは、1以上の整数)の走査線Tと、m本(mは、1以上の整数)の信号線Sとを有している。なお、以下においてn本の走査線Tが個々に識別される場合に、走査線T(i)という表記が用いられる。iは、1以上且つn以下の整数である。また、m本の信号線Sが個々に識別される場合に、信号線S(j)という表記が用いられる。jは、1以上且つm以下の整数である。
【0065】
素子基板71及び対向基板73の間に介在する液晶75は、図7に示すように、配向膜101と配向膜127との間に介在している。
本実施形態では、図4に示すシール材77は、図7に示す第1基板93の第1面93aと、第2基板121の対向面121bとによって挟持されている。つまり、液晶パネル61では、液晶75は、第1基板93及び第2基板121によって保持されている。なお、シール材77は、配向膜101及び配向膜127の間に設けられていてもよい。この場合、液晶75は、素子基板71及び対向基板73に保持されているとみなされ得る。
【0066】
液晶75は、図7に示すように、L1なる厚みに設定されている。液晶75は、入射した光を変調することができる。本実施形態では、液晶75は、入射した光に位相差を付与することができる。これは、液晶75のリタデーション(複屈折率と厚みL1との積)の設定により実現され得る。本実施形態では、入射した光に1/2波長の位相差を付与するリタデーションが設定されている。
【0067】
液晶パネル61では、画素電極105と対向電極125との間に電圧を印加すると、画素電極105と対向電極125との間に電界が発生する。液晶パネル61では、TFT素子103がオフ状態からオン状態に変化すると、画素電極105と対向電極125との間に電界が発生する。この電界によって液晶75の配向状態を画素65ごとに変化させることができる。
本実施形態では、液晶75に電界が作用すると、液晶75がオン状態になる。他方で、液晶75に作用する電界が解除されると、液晶75がオフ状態になる。
プロジェクター1では、図2に示す画像形成部13に光41を照射した状態で、各液晶パネル61における液晶75の配向状態を画素65ごとに変化させることにより、表示が制御される。液晶75の配向状態は、TFT素子103のオフ状態及びオン状態を切り替えることによって変化し得る。
【0068】
図7に示す配向膜101及び配向膜127のそれぞれには、配向処理が施されている。配向処理が施された配向膜101及び配向膜127によって、液晶75の初期的な配向状態が規制される。
画像形成パネル33では、液晶75のオン状態及びオフ状態の切り替えにより、液晶75を透過する光の偏光状態を制御し、画像の形成が制御される。
【0069】
本実施形態では、液晶75がオフ状態のときに画像形成パネル33からの光の射出が遮断される所謂ノーマリーブラック(初期的に“黒表示”の状態)の表示モードが採用されている。しかしながら、表示モードは、ノーマリーブラックに限定されず、所謂ノーマリーホワイト(初期的に“白表示”の状態)も採用され得る。
ノーマリーブラックモードにおいて、最も暗い状態の透過率を相対透過率0%とし、最も明るい状態の透過率を相対透過率100%としたとき、液晶75に印加される電圧のうち、相対透過率が10%となる電圧を光学的しきい値電圧といい、相対透過率が90%となる電圧を光学的飽和電圧という。通常、光学的しきい値電圧がオフ電圧に相当し、光学的飽和電圧がオン電圧に相当する。電圧変調方式(アナログ駆動)において、液晶75を中間調(灰色)とさせる場合には、液晶75に光学的飽和電圧以下の電圧が印加されるように設計される。このため、液晶75の透過率は、液晶75の印加電圧にほぼ比例した値となる。
ノーマリーホワイトモードにおいては、液晶75に印加される電圧のうち、相対透過率が90%となる電圧を光学的しきい値電圧といい、相対透過率が10%となる電圧を光学的飽和電圧という。本明細書では便宜上、ノーマリーホワイトモードにおいても光学的しきい値電圧がオフ電圧に相当し、光学的飽和電圧がオン電圧に相当する。
【0070】
ここで、図5に示す液晶装置85の駆動方法について説明する。
液晶パネル駆動回路25は、図5に示すように、コントローラー161と、メモリー部163と、を有している。
コントローラー161には、図1に示す画像処理部23を介して、垂直同期信号VSYNCと、水平同期信号HSYNCと、クロック信号DCLKと、画像データDATAと、が供給される。
【0071】
メモリー部163には、1フレーム分の画像データDATAが一時的に格納される。コントローラー161は、メモリー部163に格納された1フレーム分の画像データDATAから、画素行88単位の画像データdataを読み出す。コントローラー161は、読み出した画像データdataをシリアルデータとして信号線駆動回路83に出力する。信号線駆動回路83には、クロック信号CLX、イネーブル信号ENBX及び極性反転信号FRも、コントローラー161から入力される。
また、コントローラー161は、スタートパルスDYと、クロック信号CLYと、を走査線駆動回路81に出力する。
【0072】
ここで、本実施形態では、1フレーム期間の少なくとも一部を複数のサブフィールド期間に分割するサブフィールド駆動が採用されている。サブフィールド駆動では、サブフィールド期間ごとに液晶75のオン状態及びオフ状態を制御することができる。
本実施形態では、1フレーム期間が、図11に示すように、32個のサブフィールド期間SF1〜SF32に分割される。本実施形態では、32個のサブフィールド期間SF1〜SF32は、相互に同じ長さに設定される。
【0073】
なお、以下においては、サブフィールド期間SF1〜サブフィールド期間SF32という表記と、サブフィールド期間SFという表記とが併用される。
垂直同期信号VSYNCは、フレーム期間の開始を規定する信号である。スタートパルスDYは、サブフィールド期間SFの開始を規定する信号であり、垂直同期信号VSYNCを基準としてコントローラー161(図5)によって生成される。
【0074】
走査線駆動回路81は、図12に示すように、シフトレジスター165を有している。スタートパルスDY及びクロック信号CLYは、シフトレジスター165に入力される。
シフトレジスター165からは、選択信号g(1)〜選択信号g(n)が出力される。選択信号g(1)は、図5に示すように、走査線T(1)に供給される。選択信号g(2)が走査線T(2)に供給され、選択信号g(n)が走査線T(n)に供給される。
【0075】
選択信号g(i)は、図13に示すように、クロック信号CLYの半周期のパルス幅を有している。
選択信号g(1)は、スタートパルスDYが立ち上がってからクロック信号CLYの2番目の変化点に基づいてLoレベルからHiレベルに立ち上がる。ここで、変化点とは、パルス信号がLoレベルからHiレベルに変化する時点と、パルス信号がHiレベルからLoレベルに変化する時点とを示す。
Hiレベルに立ち上がった選択信号g(1)は、図12に示すシフトレジスター165によって、クロック信号CLYの変化点ごとに選択信号g(2),g(3),…,g(n)の順にシフトされていく。
【0076】
選択信号g(1)がLoレベルからHiレベルに立ち上がってから、選択信号g(n)がHiレベルからLoレベルに戻るまでの期間が、1垂直期間に相当している。本実施形態では、1垂直期間は、サブフィールド期間SFよりも短い長さに設定されている。
なお、本実施形態では、スタートパルスDYが立ち上がってからクロック信号CLYの1番目の変化点に基づいて、イネーブル信号ENBXがLoレベルからHiレベルに立ち上がる。
【0077】
イネーブル信号ENBXの1周期は、選択信号g(i)のパルス幅と同等に設定されている。イネーブル信号ENBXは、LoレベルからHiレベルに立ち上がった後に、選択信号g(1)〜選択信号g(n)の各立ち上がりに基づいて、順次にLoレベルからHiレベルに立ち上がっていく。従って、イネーブル信号ENBXは、1つのサブフィールド期間SF内で、n+1個の立ち上がりパルスを有している。
なお、本実施形態では、イネーブル信号ENBXの1周期が1水平期間に相当している。
【0078】
信号線駆動回路83は、図14に示すように、シフトレジスター171と、第1ラッチ回路173と、第2ラッチ回路175と、レベルシフター177と、を有している。
シフトレジスター171には、イネーブル信号ENBXと、クロック信号CLXとが入力される。
第1ラッチ回路173には、シフトレジスター171からの出力信号(ラッチ信号LT(1)〜ラッチ信号LT(m))と、画像データdataとが入力される。
第2ラッチ回路175には、第1ラッチ回路173からの出力信号と、イネーブル信号ENBXとが入力される。
【0079】
レベルシフター177には、第2ラッチ回路175からの出力信号と、極性反転信号FRとが入力される。
レベルシフター177からは、データ信号d(1)〜データ信号d(m)が出力される。データ信号d(1)は、図5に示すように、信号線S(1)に供給される。データ信号d(2)が信号線S(2)に供給され、データ信号d(m)が信号線S(m)に供給される。
【0080】
シフトレジスター171は、イネーブル信号ENBXを、クロック信号CLXの変化点ごとにシフトさせながら、ラッチ信号LT(1),LT(2),LT(3),…,LT(m)として順次に出力していく。
第1ラッチ回路173は、2値信号である画像データdataを、ラッチ信号LT(j)のHiレベルからLoレベルへの変化に基づいて順次にラッチしていく。
【0081】
第2ラッチ回路175は、第1ラッチ回路173でラッチされた画像データdataのそれぞれを、イネーブル信号ENBXにもとづいて一斉にラッチする。第2ラッチ回路175でラッチされた各画像データdataは、データ信号d(1)〜データ信号d(m)として、レベルシフター177を介して、信号線S(1)〜信号線S(m)に一斉に供給される。
【0082】
レベルシフター177は、極性反転信号FRのレベルに応じて、データ信号d(1)〜データ信号d(m)に対応する電位を選択する。
液晶装置85では、液晶75をオン状態にするためのオン電圧と、オフ状態にするためのオフ電圧と、のいずれかの電圧が階調データに応じて選択される。ノーマリーブラックモードの場合、飽和電圧以上の駆動電圧であるオン電圧が印加された際には明表示となり、しきい値電圧以下の駆動電圧であるオフ電圧が印加された際には暗表示となる。反対に、ノーマリーホワイトモードの場合、オン電圧が印加された際には暗表示となり、オフ電圧が印加された際には明表示となる。
【0083】
液晶装置85では、液晶75をオン状態にするためのオン電圧として、正極性電圧と負極性電圧とが設定されている。正極性電圧は、画素電極105の電位が対向電極125の電位よりも高い場合の画素電極105と対向電極125との間の電位差である。
負極性電圧は、画素電極105の電位が対向電極125の電位よりも低い場合の画素電極105と対向電極125との間の電位差である。
本実施形態では、対向電極125は、正極性電圧と負極性電圧とで同じ電位に設定される。また、本実施形態では、正極性電圧の絶対値と負極性電圧の絶対値とが、互いに同じ値に設定される。
【0084】
液晶装置85では、液晶75をオフ状態にするためのオフ電圧として、基準電圧Vcが設定される。
ところで、対向電極125への印加電圧LCcomは、基準電圧Vcよりも低位側に設定される。これは、nチャネル型のトランジスターでは、ゲート・ドレイン電極間の寄生容量に起因して、オンからオフに状態変化するときにドレイン(画素電極105)の電位が低下する、というフィードスルーが発生するためである。仮に印加電圧LCcomを基準電圧Vcと一致させた場合、負極性書込による液晶素子の電圧実効値が、フィードスルーのために、正極性書込による電圧実効値よりも若干大きくなってしまう(トランジスターがnチャネルの場合)。このため、フィードスルーの影響が相殺されるような適正値に、印加電圧LCcomを基準電圧Vcよりも低位側にオフセットして設定される。ただし、フィードスルーの影響が無視できるならば、印加電圧LCcomと基準電圧Vcとは一致するように設定される。
【0085】
レベルシフター177は、極性反転信号FRがHiレベルのときに、正極性電圧に対応する電位を、データ信号d(1)〜データ信号d(m)の電位として選択する。レベルシフター177は、極性反転信号FRがLoレベルのときに、負極性電圧に対応する電位を、データ信号d(1)〜データ信号d(m)の電位として選択する。
【0086】
極性反転信号FRには、図15に示すように、1フレーム期間内にHiレベルの期間とLoレベルの期間とが設定されている。
本実施形態では、極性反転信号FRは、1フレーム期間の開始に基づいてLoレベルからHiレベルに立ち上がる。Hiレベルに立ち上がった極性反転信号FRは、サブフィールド期間SF16の終了時点までHiレベルの状態が維持される。
【0087】
また、本実施形態では、極性反転信号FRは、サブフィールド期間SF16の終了に基づいてHiレベルからLoレベルに変化する。Loレベルになった極性反転信号FRは、サブフィールド期間SF32の終了時点までLoレベルの状態が維持される。
つまり、本実施形態では、極性反転信号FRは、1フレーム期間の前半においてHiレベルに維持され、1フレーム期間の後半においてLoレベルに維持される。
【0088】
ラッチ信号LT(j)は、図16に示すように、クロック信号CLXの半周期のパルス幅を有している。
ラッチ信号LT(1)は、イネーブル信号ENBXがLoレベルからHiレベルに立ち上がってからクロック信号CLXの3番目の変化点に基づいてLoレベルからHiレベルに立ち上がる。
Hiレベルに立ち上がったラッチ信号LT(1)は、図14に示すシフトレジスター171によって、クロック信号CLXの変化点ごとにラッチ信号LT(2),LT(3),…,LT(m)の順にシフトしながら出力されていく。
【0089】
このとき、図14に示す第1ラッチ回路173は、ラッチ信号LT(1)のHiレベルからLoレベルへの変化に基づいて、信号線S(1)に対応する画像データdata(1)をラッチする。同様に、第1ラッチ回路173は、ラッチ信号LT(j)のHiレベルからLoレベルへの変化に基づいて、信号線S(j)に対応する画像データdata(j)をラッチする。
【0090】
第1ラッチ回路173から画像データdata(j)の出力を受ける第2ラッチ回路175は、次のイネーブル信号ENBXのHiレベルからLoレベルへの変化に基づいて、画像データdata(j)をレベルシフター177に一斉に出力する。レベルシフター177に出力された画像データdata(j)は、極性反転信号FRのレベルに応じた電位のデータ信号d(j)として、信号線S(j)に一斉に供給される。
【0091】
上述した画像データdata(j)のラッチ動作と、データ信号d(j)の出力動作とは、1つのサブフィールド期間SFにおいて、走査線T(i)の本数分だけ(本実施形態ではn回)繰り返される。これにより、1つのサブフィールド期間SFにおける画像の形成が完了する。これらの動作をサブフィールド期間SF1からサブフィールド期間SF32まで繰り返すことによって、1フレーム分の画像の形成が行われ得る。
本実施形態では、1フレーム期間において、サブフィールド期間SFごとに液晶75の駆動を選択的に制御することによって、1フレーム分の画像における階調表示が行われ得る。
【0092】
本実施形態では、図17に示すように、1フレーム期間は互いに長さが等しい32個のサブフィールド期間SFを有しており、32個のサブフィールド期間SFは、正極性サブフィールド期間S1乃至S16と負極性サブフィールド期間F1乃至F16とからなる。正極性サブフィールド期間S1乃至S16の数は負極性サブフィールド期間F1乃至F16の数と等しく、16個である。16個の正極性サブフィールド期間は互いに連続して配置され、16個の負極性サブフィールド期間も互いに連続して配置されている。正極性サブフィールド期間では正極性電圧がオン電圧として選択され、負極性サブフィールド期間では負極性電圧がオン電圧として選択される。本明細書では、サブフィールド期間の極性を区別しない場合には、正極性サブフィールド期間S1乃至S16と負極性サブフィールド期間F1乃至F16とを、単にサブフィールド期間SFと呼ぶ場合がある。
【0093】
図17に示した駆動電圧波形は、表示される複数の階調のうち一の階調に対するものである。液晶75にオフ電圧を印加する、すなわち画素電極105と対向電極125との間に光学的しきい値電圧以下の駆動電圧を印加するサブフィールド期間SFには、ハッチングが施されている。また、液晶75にオン電圧を印加する、すなわち画素電極105と対向電極125との間に光学的飽和電圧以上の駆動電圧を印加するサブフィールド期間SFには、ハッチングが施されていない。なお、図17では、1フレーム期間内の12個のサブフィールド期間SFにおいて液晶75をオン状態にする例が示されている。
【0094】
図17に示す例では、液晶75をオン状態にする12個のサブフィールド期間SFは、6個の正極性サブフィールド期間S2,S4,S6,S10,S12,S14と、6個の負極性サブフィールド期間F2,F5,F6,F10,F11,F14と、からなる。つまり、本実施形態では、1フレーム期間内において、液晶75が正極性電圧によってオン状態にされる期間の長さが、負極性電圧によってオン状態にされる期間の長さと等しい。このことは、図5に示すコントローラー161が、液晶75を正極性電圧でオン状態にする正極性サブフィールド期間SFの数と、液晶75を負極性電圧でオン状態にする負極性サブフィールド期間SFの数と、を同等に配分することによって実現される。
【0095】
ところで、正極性電圧は、前述したように、画素電極105の電位が対向電極125の電位よりも高い場合の画素電極105と対向電極125との間の電位差である。また、負極性電圧は、画素電極105の電位が対向電極125の電位よりも低い場合の画素電極105と対向電極125との間の電位差である。
このため、画素電極105と対向電極125との間に発生する電界には、正極性電圧によって発生する第1電界と、負極性電圧によって発生する第2電界とがある。そして、第1電界と第2電界とは、電界の向きが互いに反対の向きになる。これにより、液晶75の誘電分極現象を、打ち消しやすくすることができる。
【0096】
また、画素電極基板と対向電極基板の特性差(例えば仕事関数)によって、第1電界と第2電界の強度が異なることがある。この場合、正極性サブフィールド期間と負極性サブフィールド期間とを互いに異なる長さに設定することで、基板の特性差によって発生する電荷の偏りを打ち消しやすくすることができる。このように、正極性サブフィールド期間と負極性サブフィールド期間とを互いに異なる長さに設定した場合においても、正極性のオン電圧を印加する正極性サブフィールド期間とオフ電圧を印加する正極性サブフィールド期間との比率と、負極性のオン電圧を印加する負極性サブフィールド期間とオフ電圧を印加する負極性サブフィールド期間との比率とを、略等しい比率に保つことで、サブフィールド期間の長さによらず、全ての表示階調で、焼き付きを高精度に防止することができる。なお、正極性サブフィールド期間と負極性サブフィールド期間とが互いに異なる長さの場合、表示される階調が異なっても、正極性サブフィールド期間S1乃至S16の長さの合計と、負極性サブフィールド期間F1乃至F16の長さの合計との比率は、互いに等しく設定される。
本実施形態では、基板の特性差がない例として、正極性のオン電圧を印加する正極性サブフィールド期間と負極性のオン電圧を印加する負極性サブフィールド期間を、互いに等しい長さとすることで、焼き付きを高精度に防止することができる。
【0097】
図17は、本実施形態における正極性サブフィールド期間と負極性サブフィールド期間とを説明するタイミングチャートである。図17には、垂直同期信号VSYNC、極性反転信号FR、サブフィールド期間の配置(SF)、駆動電圧、輝度波形が、いずれも共通の時間軸に対して描かれている。
16個の正極性サブフィールド期間S1乃至S16は正極性サブフィールド列(S1,S2,S3,・・・,S16)をなしており、16個の負極性サブフィールド期間F1乃至F16は負極性サブフィールド列(F1,F2,F3,・・・,F16)をなしている。図17に示す例では、オン電圧が選択される6個の正極性サブフィールド期間の正極性サブフィールド列(S1,S2,S3,・・・,S16)における配置の仕方は、オン電圧が選択される6個の負極性サブフィールド期間の負極性サブフィールド列(F1,F2,F3,・・・,F16)における配置の仕方とは異なっている。すなわち、正極性サブフィールド列(S1,S2,S3,・・・,S16)においては、オン電圧が正極性サブフィールド期間S2,S4,S6,S10,S12,S14で選択され、オフ電圧が残りの正極性サブフィールド期間で選択される一方、負極性サブフィールド列(F1,F2,F3,・・・,F16)においては、オン電圧が負極性サブフィールド期間F2,F5,F6,F10,F11,F14で選択され、オフ電圧が残りの負極性サブフィールド期間で選択される。
【0098】
つまり、本実施形態では、1フレーム期間内において、液晶75をオン状態にするサブフィールド期間の順序(分布)が、正極性サブフィールド列(S1,S2,S3,・・・,S16)と負極性サブフィールド列(F1,F2,F3,・・・,F16)とで異なっている。本実施形態では、図5に示すコントローラー161が、液晶75を正極性電圧でオン状態にする正極性サブフィールド期間SFの配置と、液晶75を負極性電圧でオン状態にする負極性サブフィールド期間SFの配置と、を互いに異ならせるように決定する。このようにして決定されたサブフィールド配列に対して、液晶はオン状態もしくはオフ状態へと応答する。液晶の応答状態によって透過光の強度は変化するが、1フレーム期間における透過光強度の積分値によって階調が表現される。具体的には、ノーマリーブラック液晶の場合、1フレーム期間の全てがオン状態であるときを最大階調とし、1フレーム期間の全てがオフ状態であるときを0階調とすることができる。1フレーム期間に、オン状態と、オフ状態と、オン状態からオフ状態への過渡状態と、オフ状態からオン状態への過渡状態のうちの2つ以上を混在させることで中間階調を表現できる。したがって、1フレーム期間における、オン電圧を印加する期間とオフ電圧を印加する期間の比率と、オン電圧とオフ電圧の配列を制御することで、様々な階調を表示することができる。
【0099】
従来手法によれば、1フレーム期間内において、液晶75を正極性電圧でオン状態にする正極性サブフィールド期間の正極性サブフィールド列(S1,S2,S3,・・・,S16)における配置の仕方と、液晶75を負極性電圧でオン状態にする負極性サブフィールド期間の負極性サブフィールド列(F1,F2,F3,・・・,F16)における配置の仕方と、は互いに同じであった。しかし、本実施形態では、1フレーム期間内において、液晶75を正極性電圧でオン状態にする正極性サブフィールド期間の正極性サブフィールド列(S1,S2,S3・・・S16)における配置の仕方と、液晶75を負極性電圧でオン状態にする負極性サブフィールド期間の負極性サブフィールド列(F1,F2,F3,・・・,F16)における配置の仕方と、を互いに異ならせている。そのため、焼き付き現象の発生を防止しながら、表現できる階調数を増大できる。
【0100】
その理由を、図17を用いてさらに詳細に説明する。図17の例によれば、液晶の応答時間の影響により、正極性サブフィールド列(S1,S2,S3,・・・,S16)において得られる透過率の積分値は、負極性サブフィールド列(F1,F2,F3,・・・,F16)において得られる透過率の積分値よりもわずかに小さい。これは、互いに連続している負極性サブフィールド期間F5とF6とにおいてオン電圧が選択されているために、液晶にオン電圧が印加されている期間が1個のサブフィールド期間SFの期間よりも長くなることで、高い透過率まで到達できるためである。具体的には、正極性サブフィールド列(S1,S2,S3,・・・,S16)においては、例えば正極性サブフィールド期間S4とS5のように、オン電圧が印加される正極性サブフィールド期間S4の後にはオフ電圧が印加される正極性サブフィールド期間S5が配置されている。このようにオン電圧が互いに分離されて印加される配置においては、オン電圧が印加されるサブフィールド期間SFの開始時においては液晶が駆動されていない状態であり、液晶の応答性に依存して、透過率が徐々に増加する挙動を示す。
【0101】
これに対して、負極性サブフィールド列(F1,F2,F3,・・・,F16)においては、たとえば負極性サブフィールド期間F5とF6のように、オン電圧が印加される負極性サブフィールド期間F5の後に続いて、さらにオン電圧が印加される負極性サブフィールド期間F6が配置されている。互いに隣り合う2つのサブフィールド期間SFでオン電圧が連続して印加されると、後段のサブフィールド期間SFの開始時には、前段のサブフィールド期間SFにおけるオン電圧によって液晶が駆動され透過率が高い状態となっている。よって、後段のサブフィールド期間SFにおいては、開始時から透過率が高い上に、その後さらにオン電圧が印加されるため、透過率がより一層高くなる。このため、この後段のサブフィールド期間SFにおける透過光の積分値は、オン電圧が独立して印加されるサブフィールド期間SFにおける透過光の積分値より大きくなる。
【0102】
このような作用により、図17においては、負極性サブフィールド列(F1,F2,F3,・・・,F16)において得られる透過率の積分値は、正極性サブフィールド列(S1,S2,S3,・・・,S16)において得られる透過率の積分値より大きくなる。このため、正極性サブフィールド列(S1,S2,S3,・・・,S16)と負極性サブフィールド列(F1,F2,F3・・・F16)とでオン電圧が印加されるサブフィールド期間SFの配置の仕方を互いに異ならせると、正極性サブフィールド列(S1,S2,S3,・・・,S16)と負極性サブフィールド列(F1,F2,F3,・・・,F16)とでオン電圧が印加されるサブフィールド期間SFの配置の仕方を互いに同じにした場合とは異なる透過率を実現できる。
【0103】
このように、1フレーム期間においてオン電圧が印加されるサブフィールド期間SFの数が同じであっても、オン電圧が印加されるサブフィールド期間SFの配置を制御することによって、複数レベルの階調を表現することができる。このため、中間階調を表現するうえで、表現可能な透過率のレベル数が増大するため、より高精度な階調表現が可能となる。
【0104】
[第2実施形態]
第1実施形態では、1フレーム期間の前半に正極性サブフィールド期間S1乃至S16を連続して配置し、後半に負極性サブフィールド期間F1乃至F16を連続して配置した例を示したが、これに限定するものではない。図18に示すように、1フレーム期間内において、例えば、正極性サブフィールド期間と負極性サブフィールド期間とを交互に配置する構成としても良い。ここでは、負極性サブフィールド列(F1,F2,F3,・・・,F16)においては、負極性サブフィールド期間F2,F5,F8,F11,F13においてオン電圧が印加され、正極性サブフィールド列(S1,S2,S3,・・・,S16)においては、正極性サブフィールド期間S2,S6,S8,S10,S14においてオン電圧が印加されている。このように、オン電圧が選択されている正極性サブフィールド期間の正極性サブフィールド列(S1,S2,S3,・・・,S16)における配置の仕方と、オン電圧が選択されている負極性サブフィールド期間の負極性サブフィールド列(F1,F2,F3,・・・,F16)における配置の仕方とは、互いに異なっている。
本実施形態においても、負極性サブフィールド期間F2と正極性サブフィールド期間S2のようにオン電圧が連続して印加される場合の透過率は、オン電圧が分離されて印加される場合よりも高くなる。これにより、第1実施形態で得られる効果に加えて、液晶75に印加される電圧の極性反転に起因して発生するフリッカを抑制することができる。フィールドスルーおよびオフリークの影響により、正極性サブフィールド列(S1,S2,S3,・・・,S16)と負極性サブフィールド列(F1,F2,F3,・・・,F16)とで、液晶に印加される実効電圧が異なる場合がある。極性反転周波数が高ければ、極性反転による実効電圧が変動しても、液晶応答が追従できなくなるため、フリッカーのない安定した階調表示を実現できる。
【0105】
なお、いずれの実施形態においても、それぞれ、液晶75の駆動方式としてVA型の駆動方式が採用されているが、駆動方式はこれに限定されない。液晶75の駆動方式は、TN(Twisted Nematic)型、IPS(In Plane Switching)型、FFS(Fringe Field Switching)型等の種々の方式も採用され得る。
【0106】
上述した液晶装置85は、例えば、図19に示す電子機器500の表示部510に適用され得る。この電子機器500は、携帯電話機である。この電子機器500は、操作ボタン511を有している。表示部510は、操作ボタン511で入力した内容や着信情報を始めとする様々な情報について表示を行うことができる。この電子機器500では、表示部510に液晶装置85が適用されているので、表示部510における液晶75の焼き付きを効果的に軽減することができる。
なお、電子機器500としては、携帯電話機に限られず、モバイルコンピューター、デジタルスチールカメラ、デジタルビデオカメラ、カーナビゲーションシステム用の表示機器などの車載機器、オーディオ機器等の種々の電子機器が挙げられる。
【符号の説明】
【0107】
1…プロジェクター、5…制御回路、13…画像形成部、20…画像形成部、21…制御部、25…液晶パネル駆動回路、33…画像形成パネル、61…液晶パネル、65…画素、67…表示領域、69…表示面、71…素子基板、73…対向基板、75…液晶、79…底面、81…走査線駆動回路、83…信号線駆動回路、85…液晶装置、93…第1基板、103…TFT素子、105…画素電極、121…第2基板、125…対向電極、161…コントローラー、163…メモリー部、165…シフトレジスター、171…シフトレジスター、173…第1ラッチ回路、175…第2ラッチ回路、177…レベルシフター、500…電子機器、d(1)〜d(m)…データ信号、Sr(1)〜Sr(n)…シフト信号、g(1)〜g(n)…選択信号、S(1)〜S(m)…信号線、T(1)〜T(n)…走査線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査線とデータ線との交点に対応して設けられたスイッチングトランジスターと、該スイッチングトランジスターに接続され、該データ線から該スイッチングトランジスターを介して電位が供給される画素電極と、対向電極と、該画素電極と該対向電極との間に発生する電界が印加される電気光学層と、該走査線及び該データ線を駆動する駆動回路と、を有し、
フレーム期間の少なくとも一部が複数のサブフィールド期間に分割され、
前記サブフィールド期間ごとに、前記電界を発生させるために前記画素電極と前記対向電極との間に印加される駆動電圧を、オン電圧およびオフ電圧のいずれか一方から選択することで、前記電気光学層の透過光を制御して複数の階調を表示する電気光学装置であって、
前記複数のサブフィールド期間は、複数の正極性サブフィールド期間と、複数の負極性サブフィールド期間と、からなり、
前記フレーム期間において、前記正極性サブフィールド期間の数は、前記負極性サブフィールド期間の数と等しく、
前記正極性サブフィールド期間において、前記画素電極の電位が前記対向電極の電位より高い場合の前記駆動電圧である正極性電圧が前記オン電圧として選択され、
前記負極性サブフィールド期間において、前記画素電極の電位が前記対向電極の電位より低い場合の前記駆動電圧である負極性電圧が前記オン電圧として選択され、
前記正極性サブフィールド期間と前記負極性サブフィールド期間とにおいて、前記画素電極の電位が前記対向電極の電位と略等しい場合の前記駆動電圧が前記オフ電圧として選択され、
前記駆動回路は、表示される前記階調に応じて、前記フレーム期間における前記オン電圧の印加期間と前記オフ電圧の印加期間との比率、並びに前記オン電圧が選択されるサブフィールド期間の配列及び前記オフ電圧が選択されるサブフィールド期間の配列を決定し、
前記フレーム期間において、複数の前記正極性サブフィールド期間からなる列を正極性サブフィールド列とし、複数の前記負極性サブフィールド期間からなる列を負極性サブフィールド列としたとき、前記正極性サブフィールド列における前記オン電圧が選択される正極性サブフィールド期間の配置と、前記負極性サブフィールド列における前記オン電圧が選択される負極性サブフィールド期間の配置とが互いに異なることを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記フレーム期間において、複数の前記正極性サブフィールド期間の長さの合計と、複数の前記負極性サブフィールド期間の長さの合計との比率は、前記複数の階調間で互いに等しいことを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記フレーム期間において、複数の前記正極性サブフィールド期間のうち前記オン電圧が選択される正極性サブフィールド期間の数は、複数の前記負極性サブフィールド期間のうち前記オン電圧が選択される負極性サブフィールド期間の数と等しいことを特徴とする請求項1または2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記フレーム期間の前半に、前記正極性サブフィールド期間と前記負極性サブフィールド期間のうちいずれかが互いに連続して配置され、
前記フレーム期間の後半に、前記正極性サブフィールド期間と前記負極性サブフィールド期間のうち他方が互いに連続して配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記フレーム期間において、前記正極性サブフィールド期間と前記負極性サブフィールド期間とが交互に配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の電気光学装置を具備したことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
走査線とデータ線との交点に対応して設けられたスイッチングトランジスターと、該スイッチングトランジスターに接続され、該データ線から該スイッチングトランジスターを介して電位が供給される画素電極と、対向電極と、該画素電極と該対向電極との間に発生する電界が印加される電気光学層と、該走査線及び該データ線を駆動する駆動回路と、を有し、
フレーム期間の少なくとも一部が複数のサブフィールド期間に分割され、
前記サブフィールド期間ごとに、前記電界を発生させるために前記画素電極と前記対向電極との間に印加される駆動電圧を、オン電圧およびオフ電圧のいずれか一方から選択することで、前記電気光学層の透過光を制御して複数の階調を表示する電気光学装置の駆動方法であって、
前記複数のサブフィールド期間は、複数の正極性サブフィールド期間と、複数の負極性サブフィールド期間と、からなり、
前記フレーム期間において、前記正極性サブフィールド期間の数は、前記負極性サブフィールド期間の数と等しく、
前記正極性サブフィールド期間において、前記画素電極の電位が前記対向電極の電位より高い場合の前記駆動電圧である正極性電圧が前記オン電圧として選択され、前記負極性サブフィールド期間において、前記画素電極の電位が前記対向電極の電位より低い場合の前記駆動電圧である負極性電圧が前記オン電圧として選択され、
前記正極性サブフィールド期間と前記負極性サブフィールド期間とにおいて、前記画素電極の電位が前記対向電極の電位と略等しい場合の前記駆動電圧が前記オフ電圧として選択され、
表示される前記階調に応じて、前記フレーム期間における前記オン電圧の印加期間と前記オフ電圧の印加期間との比率、並びに前記オン電圧が選択されるサブフィールド期間の配列及び前記オフ電圧が選択されるサブフィールド期間の配列を決定し、
前記フレーム期間において、複数の前記正極性サブフィールド期間からなる列を正極性サブフィールド列とし、複数の前記負極性サブフィールド期間からなる列を負極性サブフィールド列としたとき、前記正極性サブフィールド列における前記オン電圧が選択される正極性サブフィールド期間の配置と、前記負極性サブフィールド列における前記オン電圧が選択される負極性サブフィールド期間の配置とが互いに異なることを特徴とする電気光学装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−217251(P2010−217251A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60748(P2009−60748)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】