説明

電気光学装置、電気光学装置の製造方法、および投射型表示装置

【課題】金属層と金属酸化物層からなる画素電極とが接する構造を採用した場合でも、金属層と画素電極との接続抵抗の低減、および画素電極のシート抵抗の低減の双方を図ることができる電気光学装置、電気光学装置の製造方法、および投射型表示装置を提供すること。
【解決手段】液晶装置100においては、画素電極9aに用いた第1金属酸化物層91および第2金属酸化物層92のうち、下層側の第1金属酸化物層91は酸素含有量が少ないITO膜からなるため、ドレイン電極6bとの接続抵抗が低い。第2金属酸化物層92は酸素含有量が多いITO膜からなるため、シート抵抗が低い。かかる画素電極9aは、ITO膜を成膜する際、第1スパッタ工程ST1と第2スパッタ工程ST2との間でターゲットを変えず、第2スパッタ工程ST2での酸素ガス流量比を大に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素子基板の一方面側に透光性の画素電極を備えた電気光学装置、該電気光学装置の製造方法、および当該電気光学装置を備えた投射型表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶装置や有機エレクトロルミネッセンス装置等の電気光学装置において素子基板の一方面側には、ITO(Indium Tin Oxide)膜からなる透光性の画素電極が形成されており、かかる透光性の画素電極は、下層側に形成されたアルミニウム層等からなる金属層に接することにより、画素トランジスターに電気的に接続されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−352515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ITOは金属酸化物であるため、特許文献1に記載の発明のように、ITO膜からなる透光性の画素電極とアルミニウム層等からなる金属層とが接した構造を採用すると、画素電極(ITO膜)の酸素と金属層(アルミニウム層)とが結合し、接続抵抗が著しく増大するという問題点がある。かといって、酸素含有量を低下させたITO膜を画素電極として用いると、画素電極のシート抵抗が増大するという問題点がある。
【0005】
かかる問題点は、画素電極にITO膜を用いた場合に限らず、IZO(Indium Zinc Oxide)等、ITO以外の金属酸化物を用いた場合に同様に発生する問題点である。また、上記の問題点は、金属層にアルミニウム膜を用いた場合に限らず、チタン等の金属層を用いた場合でも同様に発生する問題点である。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、金属層と金属酸化物層からなる画素電極とが接する構造を採用した場合でも、金属層と画素電極との接続抵抗の低減、および画素電極のシート抵抗の低減の双方を図ることができる電気光学装置、該電気光学装置の製造方法、および当該電気光学装置を備えた投射型表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、素子基板用の基板本体の一方面側に設けられた金属層と、該金属層に対して前記基板本体とは反対側で接する透光性の画素電極と、を有する電気光学装置であって、前記画素電極は、前記金属層に接する透光性の第1金属酸化物層と、該第1金属酸化物層に対して前記金属層が位置する側とは反対側に積層され、前記第1金属酸化物層と金属種が同一であって、当該第1金属酸化物層より酸素含有量が大である透光性の第2金属酸化物層と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、前記第2金属酸化物層は、前記第1金属酸化物層よりシート抵抗が小である構成を実現することができる。
【0009】
本発明において、画素電極に用いた第1金属酸化物層および第2金属酸化物層のうち、第1金属酸化物層は酸素含有量が少ないため、金属層と接している場合でも金属層に酸素を提供しないので、金属層との接続抵抗が低い。ここで、第1金属酸化物層は酸素含有量が少ないため、シート抵抗が高いが、第1金属酸化物層には、酸素含有量が多い第2金属酸化物層が積層されており、かかる第2金属酸化物層はシート抵抗が低い。それ故、本発明によれば、金属層と金属酸化物層からなる画素電極とが接する構造を採用した場合でも、金属層と画素電極との接続抵抗の低減、および画素電極のシート抵抗の低減の双方を図ることができる。
【0010】
また、本発明は、素子基板用の基板本体の一方面側に設けられた金属層と、該金属層に対して前記基板本体とは反対側で接する透光性の画素電極と、を有する電気光学装置の製造方法であって、前記画素電極を形成するにあたっては、反応性スパッタ法により前記金属層と接する透光性の第1金属酸化物層を形成する第1スパッタ工程と、該第1スパッタ工程と同一組成のターゲットを用い、該第1スパッタ工程より酸素ガス流量比を増大させた条件での反応性スパッタ法により前記第1金属酸化物層の上層に第2金属酸化物層を形成する第2スパッタ工程と、を行うことを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、ターゲットを変えずに、酸素ガス流量比を変えるだけで、第1金属酸化物層および第2金属酸化物層が積層された画素電極を形成することができるので、生産性が低下することがない。
【0012】
本発明は、前記第1金属酸化物層および前記第2金属酸化物層がITO(Indium Tin Oxide)膜を有して構成されている場合に適用すると効果的である。ITO膜の場合は特に酸素量によって金属層との接続抵抗やシート抵抗が変動するので、本発明を適用した場合の効果が顕著である。
【0013】
本発明は、前記金属層において前記画素電極と接する層は、アルミニウム、チタン、タンタルまたはニオブを主成分とする金属材料によって構成されている場合に適用すると効果的である。アルミニウム、チタン、タンタル、ニオブ等の金属材料は酸素と結合して絶縁性の酸化膜になるので、本発明を適用した場合の効果が顕著である。
【0014】
本発明において、前記金属層と前記画素電極との層間に層間絶縁膜が設けられ、当該層間絶縁膜に設けられたコンタクトホールにおいて前記金属層と前記画素電極とが接している構成を採用することができる。
【0015】
本発明において、前記金属層は、前記画素電極に対して前記基板本体が位置する側で積層された反射層である構成を採用することができる。
【0016】
本発明に係る電気光学装置、および電気光学装置の製造方法は、液晶装置や有機エレクトロルミネッセンス装置等、各種電気光学装置に適用することができる。これらの電気光学装置のうち、液晶装置に本発明を適用する場合、前記素子基板は、前記基板本体の一方面側に対向配置された対向基板との間に液晶層を保持する液晶装置用素子基板であって、当該液晶装置用素子基板には、前記画素電極に対して前記対向基板が位置する側に配向膜が設けられている。
【0017】
本発明に係る電気光学装置は、各種直視型表示装置等の電気機器に用いられる。また、本発明に係る電気光学装置が液晶装置である場合、投射型表示装置のライトバルブや直視型表示装置として用いられる。かかる投射型表示装置は、前記電気光学に供給される光を出射する光源部と、前記液晶装置によって変調された光を投射する投射光学系と、が設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を適用した液晶装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る液晶装置に用いた液晶パネルの説明図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る液晶装置の画素の説明図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る液晶装置に用いた画素電極の説明図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る液晶装置の製造方法において、画素電極を構成するITO膜を成膜する際の条件を示す説明図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る液晶装置におけるドレイン電極と画素電極との接続部分を拡大して示す説明図である。
【図7】本発明の実施の形態3に係る液晶装置の説明図である。
【図8】本発明の別の実施の形態に係る液晶装置の製造方法において、画素電極を構成するITO膜を成膜する際の条件を示す説明図である。
【図9】本発明を適用した液晶装置を用いた投射型表示装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明では、各種の電気光学装置のうち、液晶装置およびその製造方法に本発明を適用した場合を中心に説明する。また、以下の説明で参照する図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。
【0020】
[実施の形態1]
(全体構成)
図1は、本発明を適用した液晶装置(電気光学装置)の電気的構成を示すブロック図である。図1において、液晶装置100は、TN(Twisted Nematic)モードやVA(Vertical Alignment)モードの液晶パネル100pを有しており、液晶パネル100pは、その中央領域に複数の画素100aがマトリクス状に配列された画素領域10a(画像表示領域)を備えている。液晶パネル100pにおいて、後述する素子基板10(図2等を参照)では、画素領域10aの内側で複数本のデータ線6aおよび複数本の走査線3aが縦横に延びており、それらの交点に対応する位置に画素100aが構成されている。複数の画素100aの各々には、電界効果型トランジスターからなる画素トランジスター30、および後述する画素電極9aが形成されている。画素トランジスター30のソースにはデータ線6aが電気的に接続され、画素トランジスター30のゲートには走査線3aが電気的に接続され、画素トランジスター30のドレインには、画素電極9aが電気的に接続されている。
【0021】
素子基板10において、画素領域10aより外周側には走査線駆動回路104やデータ線駆動回路101が設けられている。データ線駆動回路101は各データ線6aに電気的に接続しており、画像処理回路から供給される画像信号を各データ線6aに順次供給する。走査線駆動回路104は、各走査線3aに電気的に接続しており、走査信号を各走査線3aに順次供給する。
【0022】
各画素100aにおいて、画素電極9aは、後述する対向基板20(図2等を参照)に形成された共通電極と液晶層を介して対向し、液晶容量50aを構成している。また、各画素100aには、液晶容量50aで保持される画像信号の変動を防ぐために、液晶容量50aと並列に保持容量55(容量素子)が付加されている。本形態では、保持容量55を構成するために、複数の画素100aに跨って走査線3aと並行して延びた容量線5bが形成されており、かかる容量線5bは、共通電位Vcomが印加された共通電位線5cに導通している。
【0023】
(液晶パネル100pの構成)
図2は、本発明の実施の形態1に係る液晶装置100に用いた液晶パネル100pの説明図であり、図2(a)、(b)は各々、本発明を適用した液晶装置100の液晶パネル100pを各構成要素と共に対向基板の側から見た平面図、およびそのH−H′断面図である。
【0024】
図2(a)、(b)に示すように、液晶パネル100pでは、素子基板10(電気光学装置用基板/液晶装置用基板)と対向基板20とが所定の隙間を介してシール材107によって貼り合わされており、シール材107は対向基板20の外縁に沿うように枠状に設けられている。シール材107は、光硬化樹脂や熱硬化性樹脂等からなる接着剤であり、両基板間の距離を所定値とするためのグラスファイバー、あるいはガラスビーズ等のギャップ材が配合されている。
【0025】
かかる構成の液晶パネル100pにおいて、素子基板10および対向基板20はいずれも四角形であり、液晶パネル100pの略中央には、図1を参照して説明した画素領域10aが四角形の領域として設けられている。かかる形状に対応して、シール材107も略四角形に設けられ、シール材107の内周縁と画素領域10aの外周縁との間には、略四角形の周辺領域10bが額縁状に設けられている。素子基板10において、画素領域10aの外側では、素子基板10の一辺に沿ってデータ線駆動回路101および複数の端子102が形成されており、この一辺に隣接する他の辺に沿って走査線駆動回路104が形成されている。なお、端子102には、フレキシブル配線基板(図示せず)が接続されており、素子基板10には、フレキシブル配線基板を介して各種電位や各種信号が入力される。
【0026】
詳しくは後述するが、素子基板10の一方側の基板面において、画素領域10aには、図1を参照して説明した画素トランジスター30、および画素トランジスター30に電気的に接続する画素電極9aがマトリクス状に形成されており、かかる画素電極9aの上層側には配向膜16が形成されている。
【0027】
また、素子基板10の一方面側において、周辺領域10bには、画素電極9aと同時形成されたダミー画素電極9b(図2(b)参照)が形成されている。ダミー画素電極9bについては、ダミーの画素トランジスターと電気的に接続された構成、ダミーの画素トランジスターが設けられずに配線に直接、電気的に接続された構成、あるいは電位が印加されていないフロート状態にある構成が採用される。かかるダミー画素電極9bは、素子基板10において配向膜16が形成される面を研磨により平坦化する際、画素領域10aと周辺領域10bとの高さ位置を圧縮し、配向膜16が形成される面を平坦面にするのに寄与する。また、ダミー画素電極9bを所定の電位に設定すれば、画素領域10aの外周側端部での液晶分子の配向の乱れを防止することができる。
【0028】
対向基板20において素子基板10と対向する一方面側には共通電極21が形成されており、共通電極21の上層には配向膜26が形成されている。共通電極21は、対向基板20の略全面あるいは複数の帯状電極として複数の画素100aに跨って形成されている。また、対向基板20において素子基板10と対向する一方面側には、共通電極21の下層側に遮光層108が形成されている。本形態において、遮光層108は、画素領域10aの外周縁に沿って延在する額縁状に形成されており、見切りとして機能する。ここで、遮光層108の外周縁は、シール材107の内周縁との間に隙間を隔てた位置にあり、遮光層108とシール材107とは重なっていない。なお、対向基板20において、遮光層108は、隣り合う画素電極9aにより挟まれた領域と重なる領域等にも形成されることがある。
【0029】
このように構成した液晶パネル100pにおいて、素子基板10には、シール材107より外側において対向基板20の角部分と重なる領域に、素子基板10と対向基板20との間で電気的導通をとるための基板間導通用電極109が形成されている。かかる基板間導通用電極109には、導電粒子を含んだ基板間導通材109aが配置されており、対向基板20の共通電極21は、基板間導通材109aおよび基板間導通用電極109を介して、素子基板10側に電気的に接続されている。このため、共通電極21は、素子基板10の側から共通電位Vcomが印加されている。
【0030】
シール材107は、略同一の幅寸法をもって対向基板20の外周縁に沿って設けられている。このため、シール材107は、略四角形である。但し、シール材107は、対向基板20の角部分と重なる領域では基板間導通用電極109を避けて内側を通るように設けられており、シール材107の角部分は略円弧状である。
【0031】
かかる構成の液晶装置100において、本形態のように、画素電極9aおよび共通電極21を透光性導電膜により形成すると、透過型の液晶装置を構成することができる。これに対して、後述する実施の形態3のように、共通電極21を透光性導電膜により形成し、画素電極9aに下層側に反射層を設けると、反射型の液晶装置を構成することができる。液晶装置100が反射型である場合、対向基板20の側から入射した光が素子基板10の側で反射して出射される間に変調されて画像を表示する。液晶装置100が透過型である場合、素子基板10および対向基板20のうち、一方側の基板から入射した光が他方側の基板を透過して出射される間に変調されて画像を表示する。
【0032】
液晶装置100は、モバイルコンピューター、携帯電話機等といった電子機器のカラー表示装置として用いることができ、この場合、対向基板20には、カラーフィルター(図示せず)や保護膜が形成される。また、液晶装置100では、使用する液晶層50の種類や、ノーマリホワイトモード/ノーマリブラックモードの別に応じて、偏光フィルム、位相差フィルム、偏光板等が液晶パネル100pに対して所定の向きに配置される。さらに、液晶装置100は、後述する投射型表示装置(液晶プロジェクター)において、RGB用のライトバルブとして用いることができる。この場合、RGB用の各液晶装置100の各々には、RGB色分解用のダイクロイックミラーを介して分解された各色の光が投射光として各々入射されることになるので、カラーフィルターは形成されない。
【0033】
本形態において、液晶装置100が、後述する投射型表示装置においてRGB用のライトバルブとして用いられる透過型の液晶装置であって、対向基板20から入射した光が素子基板10を透過して出射される場合を中心に説明する。また、本形態において、液晶装置100は、液晶層50として、誘電異方性が負のネマチック液晶化合物を用いたVAモードの液晶パネル100pを備えている場合を中心に説明する。
【0034】
(画素の具体的構成)
図3は、本発明の実施の形態1に係る液晶装置100の画素の説明図であり、図3(a)、(b)は各々、本発明を適用した液晶装置100に用いた素子基板10において隣り合う画素の平面図、および図3(a)のF−F′線に相当する位置で液晶装置100を切断したときの断面図である。なお、図3(a)では、半導体層1aは細くて短い点線で示し、走査線3aは太い実線で示し、データ線6aおよびそれと同時形成された薄膜は一点鎖線で示し、容量線5b(保持容量55の第2電極)は二点鎖線で示し、画素電極9aは太くて長い破線で示してある。また、図3(a)では、下電極層4a(保持容量55の第1電極)およびエッチングストッパー層40aの開口部40bについては二重の細い実線で示してあり、かかる二重の細い実線のうち、外側の実線は下電極層4aの形成領域に相当し、内側の実線はエッチングストッパー層40aの開口部40bに相当する。また、二点鎖線で示す容量線5bと重なる領域には誘電体層42aが形成されている。
【0035】
図3(a)に示すように、素子基板10上には、複数の画素100aの各々に矩形状の画素電極9aが形成されており、各画素電極9aの縦横の境界に各々沿ってデータ線6aおよび走査線3aが形成されている。データ線6aおよび走査線3aは各々、直線的に延びており、データ線6aと走査線3aとが交差する領域に画素トランジスター30が形成されている。素子基板10上には、走査線3aと重なるように容量線5bが形成されている。本形態において、容量線5bは、走査線3aと重なるように直線的に延びた主線部分と、データ線6aと走査線3aとの交差部分でデータ線6aに重なるように延びた副線部分とを備えている。
【0036】
図3(a)、(b)に示すように、素子基板10は、石英基板やガラス基板等の透光性の基板本体10wの液晶層50側の表面(一方面側)に形成された画素電極9a、画素スイッチング用の画素トランジスター30、および配向膜16を主体として構成されており、対向基板20は、石英基板やガラス基板等の透光性の基板本体20w、その液晶層50側の表面(素子基板10と対向する一方面側)に形成された共通電極21、および配向膜26を主体として構成されている。
【0037】
素子基板10において、複数の画素100aの各々には、半導体層1aを備えた画素トランジスター30が形成されている。半導体層1aは、走査線3aの一部からなるゲート電極3cに対して透光性のゲート絶縁層2を介して対向するチャネル領域1gと、ソース領域1bと、ドレイン領域1cとを備えており、ソース領域1bおよびドレイン領域1cは各々、低濃度領域および高濃度領域を備えている。半導体層1aは、例えば、基板本体10w上に、シリコン酸化膜等からなる透光性の下地絶縁膜12上に形成された多結晶シリコン膜等によって構成され、ゲート絶縁層2は、CVD法等により形成されたシリコン酸化膜やシリコン窒化膜からなる。また、ゲート絶縁層2は、半導体層1aを熱酸化してなるシリコン酸化膜と、CVD法等により形成されたシリコン酸化膜やシリコン窒化膜との2層構造を有する場合もある。走査線3aには、導電性のポリシリコン膜、金属シリサイド膜、あるいは金属膜が用いられる。
【0038】
走査線3aの上層側にはシリコン酸化膜等からなる透光性の第1層間絶縁膜41が形成されており、第1層間絶縁膜41の上層には下電極層4a(第1電極)が形成されている。下電極層4aは、走査線3aとデータ線6aとの交差する位置を基点として走査線3aおよびデータ線6aに沿って延出する略L字型に形成されている。
【0039】
本形態において、下電極層4aは、導電性のポリシリコン膜、金属シリサイド膜、あるいは金属膜等からなり、コンタクトホール7cを介してドレイン領域1cに電気的に接続されている。
【0040】
下電極層4aの上層側には誘電体層42aが形成されている。また、誘電体層42aの上層側には、誘電体層42aを介して下電極層4aと対向するように容量線5b(第2電極)が形成され、かかる容量線5b、誘電体層42aおよび下電極層4aによって、保持容量55が形成されている。容量線5bは、導電性のポリシリコン膜、金属シリサイド膜、あるいは金属膜等からなる。本形態において、容量線5bは、アルミニウム層とチタン窒化膜との2層構造や、銅含有アルミニウム層からなる。ここで、下電極層4a、誘電体層42aおよび容量線5bは、画素トランジスター30の上層側に形成され、画素トランジスター30に対して平面視で重なっている。このため、保持容量55は、画素トランジスター30の上層側に形成され、少なくとも画素トランジスター30に対して平面視で重なっている。
【0041】
誘電体層42aは、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜等からなる。また、誘電体層42aをアルミニウム酸化膜、チタン酸化膜、タンタル酸化膜、ニオブ酸化膜、ハフニウム酸化膜、ランタン酸化膜、ジルコニウム酸化膜等の高誘電率絶縁膜により形成すれば、保持容量55の単位面積当たりの静電容量を増大させることができる。なお、誘電体層42aは上記の高誘電率絶縁膜が複数層、積層された積層膜や、上記の金属酸化物が混在した多成分系の高誘電率絶縁膜が用いられることもある。本形態において、誘電体層42aは、容量線5bと略同一形状をもって同一の領域に形成されている。また、誘電体層42aの端縁42eおよび容量線5bの端縁5eは、下電極層4aと重なる位置にある。
【0042】
また、本形態では、下電極層4aと誘電体層42aとの層間にはシリコン酸化膜等からなるエッチングストッパー層40aが形成されており、かかるエッチングストッパー層40aには、下電極層4aの一部と重なる領域に開口部40bが形成されている。このため、下電極層4aと容量線5bとは、開口部40bにおいて誘電体層42aを介して対向し、保持容量55を構成している。また、エッチングストッパー層40aは、誘電体層42aの端縁42eおよび容量線5bの端縁5eと重なる領域に形成されている。なお、本形態では、エッチングストッパー層40aについては、誘電体層42aの端縁42eや容量線5bの端縁5eと重なる領域に加えて、その他の広い範囲にわたって形成されているが、誘電体層42aの端縁42eや容量線5bの端縁5eと重なる領域に沿ってエッチングストッパー層40aを限定的に形成してもよい。また、誘電体層42aや容量線5bが下電極層4aの端縁から外側に部分的に張り出しているような場合、誘電体層42aの端縁42eや容量線5bの端縁5eと重なる領域であっても、下層側に下電極層4aがない領域については、エッチングストッパー層40aの形成を省いてもよい。
【0043】
容量線5bの上層側には、シリコン酸化膜等からなる透光性の第2層間絶縁膜43が形成され、第2層間絶縁膜43の上層にはデータ線6aおよびドレイン電極6bが形成されている。データ線6aはコンタクトホール7aを介してソース領域1bに電気的に接続している。ドレイン電極6bはコンタクトホール7bを介して下電極層4aに電気的に接続し、下電極層4aを介してドレイン領域1cに電気的に接続している。本形態において、データ線6aおよびドレイン電極6bは、アルミニウム、チタン、タンタルまたはニオブを主成分とする金属材料からなる金属層である。なお、データ線6aおよびドレイン電極6bにアルミニウム膜を用いる場合、アルミニウム膜として銅等が配合された合金が多用される。
【0044】
データ線6aおよびドレイン電極6bの上層側には、シリコン酸化膜等からなる透光性の第3層間絶縁膜44が形成されている。第3層間絶縁膜44には、ドレイン電極6bへ通じるコンタクトホール7dが形成されている。第3層間絶縁膜44の上層には、ITO(Indium Tin Oxide)膜、IZO(Indium Zinc Oxide)膜、その他の金属酸化膜(透光性導電膜)からなる画素電極9aが形成されており、画素電極9aは、画素電極9aとドレイン電極6bとの層間に位置する第3層間絶縁膜44のコンタクトホール7dの底部でドレイン電極6bに接し、ドレイン電極6bに導通している。本形態において、第3層間絶縁膜44の表面は平坦面になっている。
【0045】
ここで、第3層間絶縁膜44の表面には、図2(b)を参照して説明したダミー画素電極9b(図3には図示せず)が形成されており、かかるダミー画素電極9bは、画素電極9aと同時形成された透光性導電膜からなる。
【0046】
画素電極9aの表面には配向膜16が形成されている。配向膜16は、ポリイミド等の樹脂膜、あるいはシリコン酸化膜等の斜方蒸着膜からなる。本形態において、配向膜16は、SiOX(x<2)、SiO2、TiO2、MgO、Al23、In23、Sb23、Ta25等の斜方蒸着膜からなる無機配向膜(垂直配向膜)であり、配向膜16と画素電極9aとの層間にはシリコン酸化膜やシリコン窒化膜等の透光性の保護膜17が形成されている。保護膜17は、表面が平坦面になっており、隣り合う画素電極9aの間に形成された凹部を埋めている。従って、配向膜16は、保護膜17の平坦な表面に形成されている。
【0047】
対向基板20では、石英基板やガラス基板等の透光性の基板本体20wの液晶層50側の表面(素子基板10に対向する側の面)に、ITO膜やIZO膜、その他の金属酸化膜(透光性導電膜)からなる共通電極21が形成されており、かかる共通電極21を覆うように配向膜26が形成されている。配向膜26は、配向膜16と同様、ポリイミド等の樹脂膜、あるいはシリコン酸化膜等の斜方蒸着膜からなる。本形態において、配向膜26は、SiOX(x<2)、SiO2、TiO2、MgO、Al23、In23、Sb23、Ta25等の斜方蒸着膜からなる無機配向膜(垂直配向膜)であり、配向膜26と共通電極21との層間にシリコン酸化膜やシリコン窒化膜等の保護膜27が形成されている。保護膜27は、表面が平坦面になっており、かかる平坦面上に配向膜26が形成されている。かかる配向膜16、26は、液晶層50に用いた誘電異方性が負のネマチック液晶化合物を垂直配向させ、液晶パネル100pは、ノーマリブラックのVAモードとして動作する。
【0048】
なお、図1および図2を参照して説明したデータ線駆動回路101および走査線駆動回路104には、Nチャネル型の駆動用トランジスターとPチャネル型の駆動用トランジスターとを備えた相補型トランジスター回路等が構成されている。ここで、駆動用トランジスターは、画素トランジスター30の製造工程の一部を利用して形成されたものである。このため、素子基板10においてデータ線駆動回路101および走査線駆動回路104が形成されている領域も、図3(b)に示す断面構成と略同様な断面構成を有している。
【0049】
(画素電極9aの詳細構成)
図4は、本発明の実施の形態1に係る液晶装置100に用いた画素電極9aの説明図であり、図4(a)、(b)は、ドレイン電極6bと画素電極9aとの接続部分を拡大して示す説明図、および画素電極9aに用いた透光性の金属酸化物層の酸素含有量(反応性スパッタの際の酸素ガス流量比)と抵抗との関係を示す説明図である。
【0050】
図3および図4(a)に示すように、本形態の液晶装置100において、ITO膜、IZO膜、その他の金属酸化膜(透光性導電膜)からなる画素電極9aは、コンタクトホール7dの底部で、アルミニウム、チタン、タンタルまたはニオブを主成分とする金属層からなるドレイン電極6bに接し、ドレイン電極6bに導通している。本形態において、画素電極9aはITO膜からなり、ドレイン電極6bは銅含有のアルミニウム層からなる。かかる構造において、画素電極9aを構成するITO膜からドレイン電極6bを構成するアルミニウム膜に酸素が供給されると、ドレイン電極6bの表面に絶縁膜が形成され、接続抵抗が増大してしまう。かかる接続抵抗の増大は、画素電極9aにIZO膜、その他の金属酸化膜を用い、ドレイン電極6bにチタン、タンタル、ニオブ等の金属層を用いた場合でも同様に発生する。
【0051】
そこで、本形態では、画素電極9aには、ドレイン電極6b(金属層)に接する透光性の第1金属酸化物層91と、第1金属酸化物層91の上層側(ドレイン電極6bが位置する側とは反対側)に積層された第2金属酸化物層92とが用いられており、第2金属酸化物層92は、第1金属酸化物層91と金属種が同一であって、第1金属酸化物層91より酸素含有量より大である。より具体的には、画素電極9aは、ドレイン電極6b(金属層)に接する下層側のITO膜(第1金属酸化物層91)と、上層側のITO膜(第2金属酸化物層92)とを備えており、上層側のITO膜(第2金属酸化物層92)は、下層側のITO膜(第1金属酸化物層91)より大である。
【0052】
本形態において、第1金属酸化物層91と第2金属酸化物層92とは同等の膜厚を有しており、例えば、第1金属酸化物層91の膜厚および第2金属酸化物層92の膜厚はいずれも50nm程度である。また、第1金属酸化物層91と第2金属酸化物層92とは同一のエッチング工程でパターニングされていることから、同一の形状をもって同一の領域に形成されている。
【0053】
ここで、ITO膜は、酸素含有量が多い程、図4(b)に実線L1で示すように、シート抵抗が低い一方、実線L2で示すように、金属層(アルミニウム層)との接触抵抗が高い傾向にある。逆にいえば、ITO膜は、酸素含有量が少ない程、金属層との接触抵抗が低い一方、シート抵抗が高い傾向にある。また、本形態では、画素電極9aにおいてドレイン電極6b(金属層)に接する第1金属酸化物層91として酸素含有量が少ないITO膜を用い、その上層側に積層された第2金属酸化物層92として酸素含有量が多いITO膜を用いている。このため、画素電極9aは、ドレイン電極6b(金属層)との接続抵抗が低く、かつ、シート抵抗も低い。
【0054】
このような酸素含有量の異なるITO膜は、後述する反応性スパッタ工程において、チャンバー内に導入するスパッタガス(アルゴンガス+酸素ガス)における酸素流量比を変えることにより実現することができる。具体的には、図4(b)に示すように、酸素ガス流量比を高く設定すれば、酸素含有量の多いITO膜を形成でき、酸素ガス流量比を低く設定すれば、酸素含有量の少ないITO膜を形成することができる。
【0055】
(液晶装置100の製造方法)
図5は、本発明の実施の形態1に係る液晶装置100の製造方法において、画素電極9aを構成するITO膜を成膜する際の条件を示す説明図である。
【0056】
本形態の液晶装置100を製造するにあたっては、まず、図3(b)に示すように、周知の方法で画素トランジスター30、保持容量55、ドレイン電極6b、第3層間絶縁膜44等を形成した後、第3層間絶縁膜44にコンタクトホール7cを形成する。
【0057】
次に、画素電極9aを形成するにあたっては、ITO膜(金属酸化物層)を第3層間絶縁膜44上に形成する成膜工程を行った後、ITO膜をパターニングする。本形態において、成膜工程では、反応性スパッタ法を用いてITO膜を形成する。より具体的には、DCマグネトロンスパッタ装置等のスパッタ装置においてITOをターゲットにしてチャンバー内にアルゴンガスを導入してITO膜をスパッタ形成する際、酸素ガスを導入する。その際の温度は、例えば、200℃以上であり、かかる温度条件に設定すれば、結晶性のITO膜を形成することができる。
【0058】
かかる成膜工程において、本形態では、まず、図5に示すように、反応性スパッタ法によりドレイン電極6b(金属層)と接する透光性の第1金属酸化物層91を形成する第1スパッタ工程ST1を行い、次に、第1スパッタ工程より酸素ガス流量比を増大させた条件での反応性スパッタ法により第1金属酸化物層91の上層に第2金属酸化物層92を形成する。その際、第1スパッタ工程ST1と第2スパッタ工程ST2とでは同一組成のターゲットを用いる。
【0059】
ここで、第1スパッタ工程ST1における酸素ガス流量比、および第2スパッタ工程ST2における酸素ガス流量比は、例えば、以下の条件である。
【0060】
第1スパッタ工程ST1における酸素ガス流量比
アルゴンガス流量:酸素ガス流量=100SCCM:0.5 SCCM
第2スパッタ工程ST2における酸素ガス流量比
アルゴンガス流量:酸素ガス流量=100SCCM:1.5 SCCM
【0061】
かかる構成によれば、第3層間絶縁膜44の上層に、酸素含有量が少ないITO膜からなる第1金属酸化物層91と、酸素含有量が多いITO膜からなる第2金属酸化物層92との積層膜を形成することができる。従って、第2金属酸化物層92の上層にエッチングマスクを形成した状態で、第1金属酸化物層91と第2金属酸化物層92とを同一工程で連続的にエッチングすれば、画素電極9aを形成することができる。
【0062】
しかる後には周知な方法で、図3(b)に示す保護膜17、配向膜16等を形成すると、図3等を参照して説明した素子基板10を得ることができる。
【0063】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の液晶装置100においては、画素電極9aに用いた第1金属酸化物層91および第2金属酸化物層92のうち、第1金属酸化物層91は酸素含有量が少ないため、ドレイン電極6b(金属層)と接している場合でもドレイン電極6bに酸素を提供しないので、ドレイン電極6bとの接続抵抗が低い。ここで、第1金属酸化物層91は酸素含有量が少ないため、シート抵抗が高いが、第1金属酸化物層91には、酸素含有量が多い第2金属酸化物層92が積層されており、かかる第2金属酸化物層92はシート抵抗が低い。それ故、本形態によれば、金属層からなるドレイン電極6bと、金属酸化物層(ITO膜)からなる画素電極9aとが接する構造を採用した場合でも、ドレイン電極6bと画素電極9aとの接続抵抗の低減、および画素電極9aのシート抵抗の低減の双方を図ることができる。
【0064】
また、本形態では、画素電極9aを構成するITO膜を成膜する際、第1スパッタ工程ST1と第2スパッタ工程ST2との間でターゲットを変えずに、酸素ガス流量比を変える。このため、第1金属酸化物層91および第2金属酸化物層92が積層された画素電極9aを形成する場合でも、生産性が低下することがない。
【0065】
[実施の形態2]
図6は、本発明の実施の形態2に係る液晶装置100におけるドレイン電極6bと画素電極9aとの接続部分を拡大して示す説明図である。なお、本形態の基本的な構成は実施の形態1と略同様であるため、共通する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0066】
実施の形態1では、配向膜16として無機配向膜を用い、配向膜16と画素電極9aとの層間に保護膜17を形成したが、本形態では、図6に示すように、配向膜16としてポリイミド等の有機配向膜を用いたため、配向膜16と画素電極9aとの層間に保護膜が形成されていない。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0067】
かかる構成の液晶装置100でも、実施の形態1と同様、画素電極9aに用いた第1金属酸化物層91および第2金属酸化物層92のうち、下層側の第1金属酸化物層91は酸素含有量が少なく、上層側の第2金属酸化物層92は酸素含有量が多い。このため、実施の形態1と同様な効果を奏する。
【0068】
また、ITO等の金属酸化物層では酸素含有量が多い程、未結合の金属濃度が少ないため、金属原子が配向膜16に侵入して配向膜16を劣化させるという不具合が発生しにくい傾向にある。ここに本形態では、画素電極9aにおいて、配向膜16に接する上層側の第2金属酸化物層92は酸素含有量が多いITO膜からなる。このため、本形態によれば、金属原子が配向膜16に侵入して配向膜16を劣化させるという不具合が発生しにくい。
【0069】
[実施の形態3]
図7は、本発明の実施の形態3に係る液晶装置100の説明図であり、図7(a)、(b)は、画素の断面図、およびドレイン電極6bと画素電極9aとの接続部分を拡大して示す説明図である。なお、本形態の基本的な構成は実施の形態1と略同様であるため、共通する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0070】
実施の形態1では、コンタクトホール7dの底部で画素電極9aとドレイン電極6bとを導通させるのに本発明を適用したが、本形態では、反射型の液晶装置100において、画素電極9aの下層側に形成した反射層8aと、画素電極9aとの電気的な導通等を改善することを目的に本発明が適用されている。
【0071】
より具体的には、本形態の液晶装置100において、第3層間絶縁膜44の上層には、画素電極9aと重なるようにアルミニウム層からなる反射層8aが形成されており、かかる構成の液晶装置100では、図7(a)に矢印L15で示すように、対向基板20の側から入射した光が素子基板10の側の反射層8aで反射して出射される間に変調されて画像を表示する。
【0072】
かかる構成の場合、反射層8aとドレイン電極6bとがコンタクトホール7dで導通し、画素電極9aは、反射層8aと接し、反射層8aを介してドレイン電極6bに電気的に接続されている。
【0073】
かかる構成の液晶装置100でも、実施の形態1と同様、画素電極9aに用いた第1金属酸化物層91および第2金属酸化物層92のうち、下層側の第1金属酸化物層91は酸素含有量が少なく、上層側の第2金属酸化物層92は酸素含有量が多い。このため、第1金属酸化物層91は酸素含有量が少ないため、反射層8a(金属層)と接している場合でも反射層8aに酸素を提供しないので、反射層8aとの接続抵抗が低い等、実施の形態1と同様な効果を奏する。
【0074】
また、第1金属酸化物層91は酸素含有量が少ないため、反射層8a(金属層)と接している場合でも反射層8aに酸素を提供しないので、反射層8aの表面が酸化しにくい。それ故、反射層8aの表面の反射率が低下することを防止できるという利点がある。
【0075】
[他の実施の形態]
図8は、本発明の別の実施の形態に係る液晶装置の製造方法において、画素電極を構成するITO膜を成膜する際の条件を示す説明図である。上記実施の形態では、第1金属酸化物層91および第2金属酸化物層92を形成する際、図5に示すように、第1スパッタ工程ST1と第2スパッタ工程ST2との間でターゲットを変えず、第2スパッタ工程ST2での酸素ガス流量比を大に切り換えた。このため、画素電極9aでは、第1金属酸化物層91と第2金属酸化物層92との間で酸素含有量が急峻に変化する階段接合構造となる。
【0076】
これに対して、本形態では、図8に示すように、スパッタ工程中、ターゲットを変えず、酸素ガス流量比を連続的に増大させる。かかる構成の場合、明確な区切りはないが、スパッタ工程の前半が第1スパッタ工程ST1であり、後半が第2スパッタ工程ST2である、このような条件で構成した画素電極9aでは、酸素含有量が連続的に変化する傾斜接合構造となるが、画素電極9aの下層側が第1金属酸化物層91に相当し、上層側が第2金属酸化物層92に相当することになる。従って、本形態でも、金属層と金属酸化物層(ITO膜)からなる画素電極9aとが接する構造を採用した場合でも、金属層と画素電極9aとの接続抵抗の低減、および画素電極9aのシート抵抗の低減の双方を図ることができる。
【0077】
[電子機器への搭載例]
上述した実施形態に係る液晶装置100を適用した電子機器について説明する。図9は、本発明を適用した液晶装置100を用いた投射型表示装置の概略構成図であり、図9(a)、(b)は各々、透過型の液晶装置100を用いた投射型表示装置の説明図、および反射型の液晶装置100を用いた投射型表示装置の説明図である。
【0078】
(投射型表示装置の第1例)
図9(a)に示す投射型表示装置110は、観察者側に設けられたスクリーン111に光を照射し、このスクリーン111で反射した光を観察する、いわゆる投影型の投射型表示装置である。投射型表示装置110は、光源112を備えた光源部130と、ダイクロイックミラー113、114と、液晶ライトバルブ115〜117(液晶装置100)と、投射光学系118と、クロスダイクロイックプリズム119と、リレー系120とを備えている。
【0079】
光源112は、赤色光、緑色光及び青色光を含む光を供給する超高圧水銀ランプで構成されている。ダイクロイックミラー113は、光源112からの赤色光を透過させると共に緑色光及び青色光を反射する構成となっている。また、ダイクロイックミラー114は、ダイクロイックミラー113で反射された緑色光及び青色光のうち青色光を透過させると共に緑色光を反射する構成となっている。このように、ダイクロイックミラー113、114は、光源112から出射した光を赤色光と緑色光と青色光とに分離する色分離光学系を構成する。
【0080】
ここで、ダイクロイックミラー113と光源112との間には、インテグレーター121及び偏光変換素子122が光源112から順に配置されている。インテグレーター121は、光源112から照射された光の照度分布を均一化する構成となっている。また、偏光変換素子122は、光源112からの光を例えばs偏光のような特定の振動方向を有する偏光にする構成となっている。
【0081】
液晶ライトバルブ115は、ダイクロイックミラー113を透過して反射ミラー123で反射した赤色光を画像信号に応じて変調する透過型の液晶装置100である。液晶ライトバルブ115は、λ/2位相差板115a、第1偏光板115b、液晶パネル115c及び第2偏光板115dを備えている。ここで、液晶ライトバルブ115に入射する赤色光は、ダイクロイックミラー113を透過しても光の偏光は変化しないことから、s偏光のままである。
【0082】
λ/2位相差板115aは、液晶ライトバルブ115に入射したs偏光をp偏光に変換する光学素子である。また、第1偏光板115bは、s偏光を遮断してp偏光を透過させる偏光板である。そして、液晶パネル115cは、p偏光を画像信号に応じた変調によってs偏光(中間調であれば円偏光又は楕円偏光)に変換する構成となっている。さらに、第2偏光板115dは、p偏光を遮断してs偏光を透過させる偏光板である。したがって、液晶ライトバルブ115は、画像信号に応じて赤色光を変調し、変調した赤色光をクロスダイクロイックプリズム119に向けて射出する構成となっている。
【0083】
なお、λ/2位相差板115a及び第1偏光板115bは、偏光を変換させない透光性のガラス板115eに接した状態で配置されており、λ/2位相差板115a及び第1偏光板115bが発熱によって歪むのを回避することができる。
【0084】
液晶ライトバルブ116は、ダイクロイックミラー113で反射した後にダイクロイックミラー114で反射した緑色光を画像信号に応じて変調する透過型の液晶装置100である。そして、液晶ライトバルブ116は、液晶ライトバルブ115と同様に、第1偏光板116b、液晶パネル116c及び第2偏光板116dを備えている。液晶ライトバルブ116に入射する緑色光は、ダイクロイックミラー113、114で反射されて入射するs偏光である。第1偏光板116bは、p偏光を遮断してs偏光を透過させる偏光板である。また、液晶パネル116cは、s偏光を画像信号に応じた変調によってp偏光(中間調であれば円偏光又は楕円偏光)に変換する構成となっている。そして、第2偏光板116dは、s偏光を遮断してp偏光を透過させる偏光板である。したがって、液晶ライトバルブ116は、画像信号に応じて緑色光を変調し、変調した緑色光をクロスダイクロイックプリズム119に向けて射出する構成となっている。
【0085】
液晶ライトバルブ117は、ダイクロイックミラー113で反射し、ダイクロイックミラー114を透過した後でリレー系120を経た青色光を画像信号に応じて変調する透過型の液晶装置100である。そして、液晶ライトバルブ117は、液晶ライトバルブ115、116と同様に、λ/2位相差板117a、第1偏光板117b、液晶パネル117c及び第2偏光板117dを備えている。ここで、液晶ライトバルブ117に入射する青色光は、ダイクロイックミラー113で反射してダイクロイックミラー114を透過した後にリレー系120の後述する2つの反射ミラー125a、125bで反射することから、s偏光となっている。
【0086】
λ/2位相差板117aは、液晶ライトバルブ117に入射したs偏光をp偏光に変換する光学素子である。また、第1偏光板117bは、s偏光を遮断してp偏光を透過させる偏光板である。そして、液晶パネル117cは、p偏光を画像信号に応じた変調によってs偏光(中間調であれば円偏光又は楕円偏光)に変換する構成となっている。さらに、第2偏光板117dは、p偏光を遮断してs偏光を透過させる偏光板である。したがって、液晶ライトバルブ117は、画像信号に応じて青色光を変調し、変調した青色光をクロスダイクロイックプリズム119に向けて射出する構成となっている。なお、λ/2位相差板117a及び第1偏光板117bは、ガラス板117eに接した状態で配置されている。
【0087】
リレー系120は、リレーレンズ124a、124bと反射ミラー125a、125bとを備えている。リレーレンズ124a、124bは、青色光の光路が長いことによる光損失を防止するために設けられている。ここで、リレーレンズ124aは、ダイクロイックミラー114と反射ミラー125aとの間に配置されている。また、リレーレンズ124bは、反射ミラー125a、125bの間に配置されている。反射ミラー125aは、ダイクロイックミラー114を透過してリレーレンズ124aから出射した青色光をリレーレンズ124bに向けて反射するように配置されている。また、反射ミラー125bは、リレーレンズ124bから出射した青色光を液晶ライトバルブ117に向けて反射するように配置されている。
【0088】
クロスダイクロイックプリズム119は、2つのダイクロイック膜119a、119bをX字型に直交配置した色合成光学系である。ダイクロイック膜119aは青色光を反射して緑色光を透過する膜であり、ダイクロイック膜119bは赤色光を反射して緑色光を透過する膜である。したがって、クロスダイクロイックプリズム119は、液晶ライトバルブ115〜117のそれぞれで変調された赤色光と緑色光と青色光とを合成し、投射光学系118に向けて射出するように構成されている。
【0089】
なお、液晶ライトバルブ115、117からクロスダイクロイックプリズム119に入射する光はs偏光であり、液晶ライトバルブ116からクロスダイクロイックプリズム119に入射する光はp偏光である。このようにクロスダイクロイックプリズム119に入射する光を異なる種類の偏光としていることで、クロスダイクロイックプリズム119において各液晶ライトバルブ115〜117から入射する光を合成できる。ここで、一般に、ダイクロイック膜119a、119bはs偏光の反射特性に優れている。このため、ダイクロイック膜119a、119bで反射される赤色光及び青色光をs偏光とし、ダイクロイック膜119a、119bを透過する緑色光をp偏光としている。投射光学系118は、投影レンズ(図示略)を有しており、クロスダイクロイックプリズム119で合成された光をスクリーン111に投射するように構成されている。
【0090】
(投射型表示装置の第2例)
図9(b)に示す投射型表示装置1000において、光源部890は、システム光軸Lに沿って光源810、インテグレーターレンズ820および偏光変換素子830が配置された偏光照明装置800を有している。また、光源部890は、システム光軸Lに沿って、偏光照明装置800から出射されたS偏光光束をS偏光光束反射面841により反射させる偏光ビームスプリッター840と、偏光ビームスプリッター840のS偏光光束反射面841から反射された光のうち、青色光(B)の成分を分離するダイクロイックミラー842と、青色光が分離された後の光束のうち、赤色光(R)の成分を反射させて分離するダイクロイックミラー843とを有している。
【0091】
また、投射型表示装置1000は、各色光が入射する3つの反射型の液晶装置100(液晶装置100R、100G、100B)を備えており、光源部890は、3つの液晶装置100(液晶装置100R、100G、100B)に所定の色光を供給する。
【0092】
かかる投射型表示装置1000においては、3つの液晶装置100R、100G、100Bにて変調された光をダイクロイックミラー842、843、および偏光ビームスプリッター840にて合成した後、この合成光を投射光学系850によってスクリーン860等の被投射部材に投射する。
【0093】
(他の投射型表示装置)
なお、投射型表示装置については、光源部として、各色の光を出射するLED光源等を用い、かかるLED光源から出射された色光を各々、別の液晶装置に供給するように構成してもよい。
【0094】
(他の電子機器)
本発明を適用した液晶装置100については、上記の電子機器の他にも、携帯電話機、情報携帯端末(PDA:Personal Digital Assistants)、デジタルカメラ、液晶テレビ、カーナビゲーション装置、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等の電子機器において直視型表示装置として用いてもよい。
【0095】
[他の電気装置]
上記実施の形態では、電気光学装置として液晶装置を例示したが、透光性を有する基板(電気光学装置用基板)を備えていれば。液晶装置に限らず、有機エレクトロルミネッセンス装置、プラズマディスプレイ装置、電気泳動ディスプレイ装置、電子放出を用いた装置(Field Emission Display)、DLP(Digital Light Processing)等の電気光学装置の製造方法に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0096】
6b・・ドレイン電極(金属層)、8a・・反射層(金属層)、9a・・画素電極、10・・素子基板、20・・対向基板、50・・液晶層、91・・第1金属酸化物層、92・・第2金属酸化物層、100・・液晶装置(電気光学装置)、110、1000・・投射型表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子基板用の基板本体の一方面側に設けられた金属層と、
該金属層に対して前記基板本体とは反対側で接する透光性の画素電極と、
を有する電気光学装置であって、
前記画素電極は、前記金属層に接する透光性の第1金属酸化物層と、該第1金属酸化物層に対して前記金属層が位置する側とは反対側に積層され、前記第1金属酸化物層と金属種が同一であって、当該第1金属酸化物層より酸素含有量が大である透光性の第2金属酸化物層と、を備えていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記第2金属酸化物層は、前記第1金属酸化物層よりシート抵抗が小であることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記第1金属酸化物層および前記第2金属酸化物層は、ITO(Indium Tin Oxide)膜を有して構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記金属層において前記画素電極と接する層は、アルミニウム、チタン、タンタルまたはニオブを主成分とする金属材料によって構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記金属層と前記画素電極との層間に層間絶縁膜が設けられ、
当該層間絶縁膜に設けられたコンタクトホールにおいて前記金属層と前記画素電極とが接していることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記金属層は、前記画素電極に対して前記基板本体が位置する側で積層された反射層であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記素子基板は、前記基板本体の一方面側に対向配置された対向基板との間に液晶層を保持する液晶装置用素子基板であって、
当該液晶装置用素子基板には、前記画素電極に対して前記対向基板が位置する側に配向膜が設けられていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の電気光学装置。
【請求項8】
素子基板用の基板本体の一方面側に設けられた金属層と、該金属層に対して前記基板本体とは反対側で接する透光性の画素電極と、を有する電気光学装置の製造方法であって、
前記画素電極を形成するにあたっては、
反応性スパッタ法により前記金属層と接する透光性の第1金属酸化物層を形成する第1スパッタ工程と、
該第1スパッタ工程と同一組成のターゲットを用い、当該第1スパッタ工程より酸素ガス流量比を増大させた条件での反応性スパッタ法により前記第1金属酸化物層の上層に第2金属酸化物層を形成する第2スパッタ工程と、
を行うことを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項9】
請求項7に記載の電気光学装置を備えた投射型表示装置であって、
前記電気光学装置に供給される光を出射する光源部と、
前記電気光学装置によって変調された光を投射する投射光学系と、
を有していることを特徴とする投射型表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−123141(P2012−123141A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273258(P2010−273258)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】