説明

電気光学装置、電気光学装置の駆動方法および電子機器

【課題】表示に寄与する画素とダミー画素との境界での表示上の不具合を抑える。
【解決手段】マトリクス状に配列する表示画素110aに対して、ダミー画素110bは、平面視で表示画素110aを囲むように配列する。駆動回路は、表示画素110aの画素電極の各々に対して、フレームを単位として繰り返し供給された映像データであって、かつ、表示画素110aの各々にそれぞれ対応した映像データで指定された階調レベルに応じた電圧をそれぞれ印加する。一方、ダミー画素110bの画素電極の各々に対しては、隣り合う表示画素110aについて1フレーム前の映像データで指定された階調レベルに応じた電圧を印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に表示領域の縁端部分での表示の不具合を抑える技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電気光学装置、例えば液晶パネルは、一対の素子基板と対向基板とが一定の間隙を保って貼り合わせられるとともに、この間隙に液晶が封入された構成となっている。素子基板において、対向基板に対向する面には画素電極が画素毎にマトリクス状に配列する一方、対向基板において、素子基板に対向する面には、コモン電極が、すべての画素電極に対向するように設けられている。
このように画素がマトリクス状に配列する液晶パネルでは、表示領域、すなわち表示に寄与する画素が配列する領域の光学特性を均一化するために、当該表示領域を囲むように、表示に寄与しないダミー画素を設ける技術が提案されている(特許文献1参照)。さらに、表示領域の縁端部分で光が漏れるような表示上の不具合を防止するために、ダミー画素の画素電極に対し、表示領域の画素電極のうち、当該ダミー画素電極に隣り合う画素電極と同じ電圧を印加する技術も提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−241778号公報(図1参照)
【特許文献2】特開2010−210734号公報(図5参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、表示領域で表示させるべき画像の映像データが垂直走査および水平走査される順番で供給される構成では、一旦、映像データを記憶しないと、ダミー画素に供給する電圧を確定できない場合がある。このため、表示遅延が発生するといった懸念が生じた。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、表示領域の縁端部分での表示上の不具合を小さく抑えることを、表示遅延の発生を避けて実現する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係る電気光学装置にあっては、素子基板と、前記素子基板に対向配置される対向基板と、前記素子基板と前記対向基板との間隙に挟持された液晶と、駆動回路と、を具備し、前記素子基板は、前記対向基板との対向側に形成され、所定のピッチで配列する複数の第1画素の各々に対応した第1画素電極と、平面視で前記第1画素を囲むように配列する複数の第2画素に対応し、かつ、前記第1画素電極に隣り合う第2画素電極と、を有し、前記対向基板は、前記素子基板との対向側に、所定の電圧が印加される対向電極を有し、前記駆動回路は、前記第1画素電極に対して、フレームを単位として繰り返し供給される映像データであって、かつ、前記複数の第1画素にそれぞれ対応した映像データに基づく電圧を印加し、前記第2画素電極に対して、当該第2画素電極と隣り合う第1画素電極に対応した第1画素の1フレーム前の映像データに基づく電圧を印加する構成を特徴とする。この構成によれば、映像データで規定される画像に動きがなければ、表示画素にかかる第1画素電極とダミー画素にかかる第2画素電極との間で横電界が生じないので、表示上の不具合を小さく抑えることが可能になる。さらに、第1画素電極の各々に対しては、繰り返し供給される映像データに基づく電圧がそれぞれ印加されるので、表示遅延の問題も発生しない。
【0006】
この構成において、前記対向基板は、平面視で前記第1画素に対応した部分で開口し、前記第2画素に対応する部分を遮蔽するブラックマトリクスを有することが好ましい。これによって平面視したときに、第2画素がブラックマトリクスによって遮蔽されて、観察者に視認されてしまうことが防止される。
さらに、前記駆動回路は、前記複数の第1画素のうち、前記複数の第2画素と隣り合う画素に対応した記憶領域を有するメモリーと、供給された映像データが前記記憶領域に対応した画素のものであるとき、当該映像データを当該記憶領域に格納させ、前記第2画素電極に電圧を印加するとき、当該第2画素と隣り合う画素に対応した記憶領域から前記映像データを読み出す制御回路と、を有し、当該読み出した映像データに基づくデータ信号を前記第2画素電極に印加し、供給された映像データに基づくデータ信号を前記第1画素電極に印加する構成が好ましい。この構成によれば、メモリーには、第1画素のすべてに対応した記憶領域が必要でなく、第1画素のうち、第2画素に隣り合う画素だけに対応した記憶領域だけで足りる。このため、メモリーの記憶領域に要求される容量を小さく抑えて、構成の複雑化を避けることができる。
くわえて、前記素子基板は、複数の走査線と平面視したときに前記複数の走査線と交差する複数のデータ線と、を有し、前記複数の第1画素および前記複数の第2画素の各々は、前記複数の走査線および前記複数のデータ線の交差に対応して設けられ、前記駆動回路は、前記複数の走査線を駆動する走査線駆動回路と、前記複数のデータ線に前記データ信号を供給するデータ線駆動回路と、を含む構成としても良い。この構成によれば、データ信号の画素の順を、走査線駆動回路およびデータ線駆動回路の動作によって規定することができる。
なお、本発明は、電気光学装置のほか、当該電気光学装置の駆動方法、さらには当該電気光学装置を含む電子機器としても概念することが可能である。このような電子機器としては、電気光学装置による光変調画像を拡大投射するプロジェクターが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施形態に係る電気光学装置の構成を示すブロック図である。
【図2】同電気光学装置における液晶パネルの構成を示す図である。
【図3】液晶パネルにおける画素の等価回路を示す図である。
【図4】液晶パネルにおける画素の配列を説明するための図である。
【図5】液晶パネルの対向基板に形成されるブラックマトリクスを示す図である。
【図6】上位装置から電気光学装置に供給される映像データを示す図である。
【図7】ダミー画素の映像データを供給する際の参照先を示す図である。
【図8】映像データが液晶パネルへの転送される際の動作を示す図である。
【図9】供給される映像データと転送される映像データとの関係を示す図である。
【図10】走査線駆動回路の動作を示す図である。
【図11】データ線駆動回路の動作を示す図である。
【図12】表示画素とダミー画素とに指定された階調レベルの関係を示す図である。
【図13】実施形態の優位性を説明するための図である。
【図14】液晶パネルを適用したプロジェクターの構成を示す図である。
【図15】比較例の問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
この実施形態は、プロジェクターのライトバルブとして用いられる電気光学装置である。なお、以下の図においては、各層、各部材、各領域などを認識可能な大きさとするために、縮尺を異ならせている場合がある。
【0009】
図1は、実施形態に係る電気光学装置の全体的な構成を示すブロック図である。この図に示されるように、電気光学装置1は、制御回路2、メモリー3、セレクター4、D/A変換回路5および液晶パネル100を含んだ構成となっている。
このうち、液晶パネル100には、本実施形態にあっては480行プラス4行の計484行の走査線112が図において行(X)方向に沿って設けられている。一方、640列プラス4列の計644列のデータ線114が、列(Y)方向に沿って、かつ、各走査線112と互いに電気的に絶縁を保つように設けられている。画素110は、484行の走査線112と644列のデータ線114との交差に対応して、それぞれ配列している。
したがって、本実施形態では、画素110が縦484行×横644列でマトリクス状に配列することになるが、本発明を当該配列に限定する趣旨ではない。
【0010】
本実施形態にあっては、走査線112または画素110の行を区別するために、図1において上から順に、a行目、b行目、1行目、2行目、…、480行目、c行目、d行目と呼ぶことにし、同様にデータ線114または画素110の列を区別するために、図1において左から順に、A列目、B列目、1列目、2列目、…、640列目、C列目、D列目と呼ぶことにする。
【0011】
図4は、本実施形態における画素の配列を説明するための平面図である。この図において四角枠で簡易的に示されているものが画素であり、上述したように縦484行×横644列でマトリクス状に配列している。
このうち、図においてa、b、cおよびd行を除いた1〜480行と、A、B、CおよびD列を除いた1〜640列との交差に対応するものが、表示に寄与する表示画素(第1画素)である。
一方、a、b、cおよびd行と、A、B、CおよびD列との交差に対応するものが、表示に寄与しないダミー画素(第2画素)である。図において、枠状の仮想線200は、表示画素が配列する表示領域とダミー画素が配列するダミー領域とを便宜的に区画するためのものである。すなわち、当該仮想線200の内側が表示領域であり、仮想線200の外側がダミー領域である。
なお、本実施形態においてダミー画素は、表示に寄与する画素と比較して、ブラックマトリクスで遮光されるなど、構造的な相違はあるが、電気的な構成についてみれば特別な相違はない。このため、区別しないときは画素110と表記するが、区別するときには、図4に示されるように表示画素については符号を110aで表し、ダミー画素については符号を110bで表すことにする。
【0012】
説明を再び図1に戻すと、液晶パネル100は、画素110が配列する領域の周辺に走査線駆動回路130およびデータ線駆動回路140を形成した周辺回路内蔵型となっている。このうち、走査線駆動回路130は、a、b、1、2、…、480、c、d行目の走査線112にそれぞれ走査信号Ga、Gb、G1、G2、…、G480、Gc、Gdを供給するものである。詳細には、走査線駆動回路130は、制御回路2から供給されるスタートパルスDyをクロック信号Clyにしたがって順次転送するとともに、そのパルス幅を狭めて、順次排他的にHレベルとなる走査信号を各行にそれぞれ供給する。
【0013】
データ線駆動回路140は、サンプリング信号出力回路142と、データ線114毎に設けられるnチャネル型のTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスター)144とを有する。
このうち、サンプリング信号出力回路142は、A、B、1、2、…、640、C、D列目のデータ線114に対応して、それぞれサンプリング信号SA、SB、S1、S2、…、S640、SC、SDを供給するものである。詳細には、サンプリング信号出力回路142は、制御回路2から供給されるスタートパルスDxをドットクロック信号Clxにしたがって順次転送して、順次排他的にHレベルとなるサンプリング信号を各列にそれぞれ供給する。
各列に設けられるTFT144は、そのソース電極が信号線146に接続され、そのドレイン電極が列に対応するデータ線114に接続され、そのゲート電極には、列に対応するサンプリング信号が供給される。
【0014】
電気光学装置1には、映像データDaが、図示省略した上位装置から垂直同期信号Vs、水平同期信号Hsおよびドットクロック信号Clkに同期してフレーム単位で繰り返し供給される。この映像データDaは、例えば8ビットであり、画素110の濃淡(階調レベル)を最も暗い「0」から最も明るい「255」までの256階調で指定する。
メモリー3は、表示に寄与する表示画素110aのうち、最外周に位置する表示画素110aに対応した記憶領域を有する(図4参照)。
なお、メモリー3の各記憶領域には、制御回路2による指示にしたがって、それぞれ映像データDaが格納される一方で、1フレーム経過後に、液晶パネル100における書込走査に応じて映像データDmとして読み出される構成となっている。
【0015】
セレクター4は、上位装置から入力端aに供給された映像データDa、または、メモリー3から読み出されて入力端bに供給された映像データDmのいずれかを、制御回路2の指示にしたがって選択して、映像データDbとして出力するものである。
D/A変換回路5は、選択された映像データDbを階調レベルに応じた電圧であって、かつ、極性指示信号Polによって指定された極性の電圧のデータ信号Vidに変換するものである。詳細には、D/A変換回路5は、正極性が指示されていれば電圧Vcを基準として高位側電圧に変換する一方、負極性が指示されていれば電圧Vcを基準として低位側電圧に変換し、データ信号Vidとして信号線146に出力する。
なお、電圧Vcは、データ信号Vidの振幅中心電位であり、画素110への書込極性の基準であって、電源電圧VH、VLのほぼ中間電圧である(後述する図10および図11参照)。換言すれば、本実施形態では、データ信号についていえば電圧Vcよりも高位側を正極性とし、低位側を負極性としている。一方、電圧については、特に説明のない限り、電圧VL(=Gnd)を基準とする。
また、データ信号の極性を反転する理由は、画素を交流駆動するためである。本実施形態にあっては、フレーム毎にすべての画素を極性反転させる面反転方式としている。
【0016】
図2(A)は、液晶パネル100の構造を示す斜視図であり、図2(B)は、図2(A)におけるH−h線で破断した断面図である。
これらの図に示されるように、液晶パネル100は、画素電極118が形成された素子基板101と、コモン電極108が設けられた対向基板102とが、スペーサー(図示省略)を含むシール材90によって一定の間隙を保って、互いに電極形成面が対向するように貼り合わせられ、この間隙に例えばVA(Vertical Alignment)型の液晶105が挟持された構造になっている。
【0017】
素子基板101および対向基板102には、それぞれガラスや石英などの光透過性を有する基板が用いられる。素子基板101にあっては、対向基板102よりも図2(A)においてY方向のサイズが長いが、奥側(h側)で揃えられているので、素子基板101の手前側(H側)の一辺が対向基板102から張り出している。この張り出した領域にX方向に沿って複数の端子107が設けられている。複数の端子107は、FPC(Flexible Printed Circuits)基板に接続されて、制御回路2やD/A変換回路5から各種信号や各種電圧、データ信号などが供給される。
【0018】
素子基板101において対向基板102と対向する面には、画素電極118が形成されている。画素電極118は、ITO(Indium Tin Oxide)などの透明性を有する導電層を矩形状にパターニングしたものである。
なお、画素電極については、表示画素110aに係るものと、ダミー画素110bに係るものについて、区別しないときは符号を118として表記する。ただし、区別するときには、表示画素110aに係る画素電極(第1画素電極)について符号を118aと表記し、ダミー画素110bに係る画素電極(第2画素電極)について符号を118bと表記する場合がある。
【0019】
また、素子基板101において、画素電極118が配列する周辺には、データ線駆動回路140のほか、走査線駆動回路130が形成されている。
なお、図2(B)では、Y方向に沿ったH−h線で破断したために、走査線駆動回路130が図示されていない。
一方、対向基板102において、素子基板101と対向する面には、ITOなどの透明性を有するベタ状のコモン電極108が設けられている。
【0020】
対向基板102には、後述するようにブラックマトリクスが設けられるが、図2(B)では省略されている。また、シール材90は、対向基板102の内縁に沿って額縁状に形成されるが、液晶105を封入するために、その一部が開口している。このため、液晶105の封入後に、その開口部分が封止材92によって封止されている。さらに、素子基板101の対向面および対向基板102の対向面には、電圧無印加状態において液晶分子を基板面の法線方向に沿って配向させる配向膜がそれぞれ設けられるが、図示省略されている。
【0021】
なお、実施形態においては、素子基板101に光透過性を有しない基板、例えばシリコン基板を用いて、液晶パネル100を、いわゆるLCOS(Liquid Crystal on Silicon)型として構成しても良い。LCOS型とする場合には、素子基板101に制御回路2、メモリー3、セレクター4およびD/A変換回路5を、走査線駆動回路130およびデータ線駆動回路140とともに形成しても良い。
【0022】
図3は、画素110の等価回路を示す図である。この図に示されるように、各画素110は、nチャネル型のTFT116と液晶素子120と補助容量125とを含む。各画素110については、上述したように表示に寄与するものであるか否かに拘わらず、電気的にみれば、互いに同一構成である。
ここで、ある行と、ある列とに着目したときに、着目行および着目列に対応する画素110については、TFT116のゲート電極が着目行の走査線112に接続される一方、そのソース電極が着目列のデータ線114に接続され、そのドレイン電極が画素電極118と補助容量125の一端をなす容量電極62に接続されている。コモン電極108は、すべての画素110にわたって共通であって、本実施形態にあっては電圧LCcomに保たれている。
【0023】
上述したように、液晶パネル100は、素子基板101と対向基板102との間隙に液晶105が挟持された構造である。このため、液晶素子120は、素子基板101の対向面に形成された画素電極118と対向基板102の対向面に形成されたコモン電極108とで誘電体たる液晶105を挟持した構成となる。液晶105は、上述したようにVA型であるから、本実施形態にあっては、電圧無印加状態で黒色となるノーマリーブラックモードに設定されている。
また、補助容量125の他端は容量電極115であり、すべての画素110に対して、容量線72を介して電圧LCcomが共通に印加されている。補助容量125は、容量電極62、115によって画素110毎に図示省略した絶縁体を挟持することによって構成される。このため、補助容量125は、画素110毎に液晶素子120に対して並列に接続されている。
【0024】
図5は、対向基板102に設けられるブラックマトリクスの位置関係を平面視で示す図である。
この図に示されるようにブラックマトリクス94は、仮想線200の内側の表示領域にあっては、画素電極同士の隙間を遮蔽するように格子状に設けられる。逆にいえば、ブラックマトリクス94は、表示領域においては、表示画素に対応した開口部分を有する。一方、ブラックマトリクス94は、仮想線200の外側のダミー領域にあっては、全面にわたって設けられる。
【0025】
このような構成において、走査線駆動回路130が、ある走査線112を選択して、選択しんた走査線112への走査信号をHレベル(電圧VH)にすると、当該走査線112にゲート電極が接続されたTFT116がオン状態になって、画素電極118がデータ線114に電気的に接続された状態になる。このため、走査線112がHレベルであるときに、データ線駆動回路140が、TFT144をオンさせて、階調に応じた電圧のデータ信号を信号線146からデータ線114に順次サンプリングすると、当該データ信号は、オン状態になったTFT116を介して画素電極118に印加される。走査線112がLレベル(電圧VL)になると、TFT116はオフ状態になるが、画素電極118に印加された電圧は液晶素子120の容量性および補助容量125によって保持される。
走査線駆動回路130は、a、b、1、2、…、480、c、d行目の順番で選択するとともに、データ線駆動回路140が、選択された走査線112に位置する1行分の画素に対しデータ信号を、順次データ線にサンプリングして供給することによって、すべての液晶素子120に階調に応じた電圧が印加・保持される。この動作が1フレーム(1垂直走査期間)毎に繰り返される。
一方、液晶素子120では、画素電極118およびコモン電極108の間によって生じる電界の強さに応じて液晶105の分子配向状態が変化する。
【0026】
図2(A)または図2(B)において素子基板101の側から入射した光は、画素電極118、液晶105およびコモン電極108という経路を辿って、対向基板102の側に出射する。このときに液晶素子120に入射する光量に対して出射する光量の比率、すなわち透過率は、液晶素子120に印加・保持された電圧が高くなるにつれて、大きくなる。このように液晶パネル100では、液晶素子120毎に透過率が変化するので、表示領域に属する1〜480行と1〜640列との交差に対応する液晶素子120が、表示すべき画像の最小単位である画素として機能することになる。
なお、ダミー領域に属する画素の液晶素子120は、ブラックマトリクス94で遮蔽されているので、透過率が変化しても表示にはなんら寄与しない。
【0027】
次に、上述した電気光学装置1の動作について説明する。まず、便宜上、メモリー3に対する動作について説明する。
映像データDaは、垂直同期信号Vsおよび水平同期信号Hsに同期して上位装置からフレームを単位として繰り返し供給される。詳細には、1フレームの期間にわたって、図6に示されるように、1行1列〜1行640列、2行1列〜2行640列、3行1列〜3行640列、…、480行1列〜480行640列という順番で、図6では省略したドットクロック信号Clkに同期して画素毎に供給される。
【0028】
メモリー3は、図4において太線で示されるように、表示領域の最外周に位置する表示画素110aに対応した記憶領域を有する。制御回路2は、上位装置から供給された映像データDaが、表示領域の最外周に位置する表示画素110aに対応するものであれば、当該映像データDaを対応する記憶領域に格納させる。一方、制御回路2は、供給された映像データDaが、表示領域の最外周に位置する表示画素110aに対応するものでなければ、当該映像データDaをメモリー3に格納させない。
なお、セレクター4の入力端aに入力された映像データDaは、メモリー3から読み出されて入力端bに入力された映像データDmとともに、映像データDbとしてD/A変換回路5に供給されて、液晶パネル100において後述する表示動作に用いられる。
【0029】
さて、1行1列から480行640列までの表示画素110aに係る映像データDaが1フレーム分供給されると、メモリー3の記憶領域には、表示領域の最外周に位置する表示画素110aの映像データDaが記憶されている。
上位装置から供給される映像データDaは、表示画素110aに対応したものだけであるのに対し、液晶パネル100には、表示画素110aのほかにダミー画素110bも含まれる。このため、本実施形態において、ダミー画素110bに対応する映像データDmについては、メモリー3のうち、当該ダミー画素110bに関連性の高い表示画素110aの記憶領域を参照して読み出し、当該ダミー画素110bに対応する映像データDmとして供給する構成としている。
【0030】
図7は、ダミー画素110bに対応する映像データDmをメモリー3から読み出す際に、参照先の記憶領域を示す図である。この図に示されるように、ダミー画素110bの映像データは、当該ダミー画素に対して距離が最も近い表示画素110aの映像データがメモリー3から読み出される構成となっている。例えば、ダミー画素110bであるa行B列については、同図に示されるように、表示画素110aのうち、距離が最も近い1行1列の映像データDaが、メモリー3から読み出されて映像データDmとして供給される構成となっている。また例えば、ダミー画素110bであるc行3列については、表示画素110aのうち、距離が最も近い480行3列の映像データDaが、メモリー3から読み出されて映像データDmとしてそれぞれ供給される構成となっている。
なお、参照先の記憶領域を決定するために、あらかじめダミー画素110bと参照先の記憶領域との関係を、ルックアップテーブルに記憶しておくとよい。
【0031】
ここで、液晶パネル100に対し、表示画素110aおよびダミー画素110bに対応する映像データDbについては、図8に示される走査の順で供給する必要がある。すなわち、同図に示されるように、映像データDbについては、a行目、b行目、1行目、2行目、…、479行目、480行目、c行目、d行目という順番で、さらに各行については、A列目、B列目、1列目、2列目、…、639列目、640列目、C列目、D列目という順番で、画素毎に供給する必要がある。
【0032】
そこで、制御回路2は、第1に、上位装置から供給される垂直同期信号Vs、水平同期信号Hsおよびドットクロック信号Clkで規定される走査を、液晶パネル100に合わせた走査に再構成する。
詳細には、制御回路2は、1行目の映像データDaが供給される前の垂直走査帰線期間のうち二水平走査期間にわたって、それぞれa行目およびb行目の映像データDmを供給するように液晶パネル100の走査を再構成する。同様に、制御回路2は、480行目の映像データDaが供給された後の垂直走査帰線期間のうち二水平走査期間にわたって、それぞれc行目およびd行目の映像データDmを供給するように液晶パネル100の走査を再構成する。
さらに、制御回路2は、各行におけるA列目およびB列目の映像データDmについては、各行における1列目の映像データDaが供給される前の水平走査帰線期間のうち2ドットクロック期間(2画素分の映像データの供給期間)にわたって、それぞれ供給するように、また、各行におけるC列目およびD列目の映像データDmについては、各行における640列目の映像データDaが供給された後の水平走査期間のうち2ドットクロック期間にわたって、それぞれ供給するように、それぞれ当該液晶パネル100の走査を再構成する。
【0033】
制御回路2は、第2に、液晶パネル100に合わせて再構成した走査のうち、最初のa行目の映像データDbを供給開始するタイミングにおいて、スタートパルスDyを出力するとともに、各行の映像データDbを供給開始するタイミングにおいて、スタートパルスDxを出力する。
制御回路2は、第3に、セレクター4に対し、再構成した走査において表示画素110aの映像データDaを供給するときには入力端aを選択させ、ダミー画素110bの映像データDmをメモリー3の参照先から読み出すときには、入力端bを選択させる。
【0034】
図9は、上位装置から供給される同期信号等で規定される走査と、液晶パネル100に合わせて再構成された走査との関係を示す図である。詳細には、図9(A)は、垂直同期信号Vsおよび水平同期信号Hsで規定される走査にしたがって供給される映像データDaを示す図であり、図9(B)は、液晶パネル100に合わせて再構成された走査にしたがって供給される映像データDbを示す図である。
なお、いずれの図においてもドットクロック信号Clk、Clxについては省略している。
【0035】
これらの図に示されるように、フレームについては、図4において左上隅の画素に対応する映像データの供給タイミングから、再び左上隅の画素に対応する映像データの供給タイミングまでの期間として規定されている。なお実質的には、フレームは、1カット(コマ)分の映像データが上位装置から供給される期間、または、1カットの分の画像を液晶パネル100が形成するのに要する期間をいい、垂直走査信号Vsの周波数が60Hzである場合、その1周期分の16.67ミリ秒である。
ここで、表示画素110aに対応する1行1列から480行640列までの映像データDaは、セレクター4における入力端aの選択によって、そのままスルー状態で映像データDbとして供給される。一方、ダミー画素110bに対応する映像データDmは、1フレーム前に供給された時点でメモリー3に格納されたものを参照先から読み出されて、セレクター4における入力端bの選択によって、映像データDbとして供給される。
【0036】
さて、制御回路2は、液晶パネル100への映像データDbの転送に際し、再構成した走査における開始タイミングにスタートパルスDyを出力するとともに、1行分の映像データDbを供給する毎にクロック信号Clyの論理レベルを反転させて、それぞれ走査線駆動回路130に供給する。
【0037】
図10は、走査線駆動回路130によって出力される走査信号Ga、Gb、G1、G2、…、G480、Gc、Gdの波形を示す図である。走査線駆動回路130では、スタートパルスDyがクロック信号Clyにしたがって順次転送されるとともに、そのパルス幅が狭められ、走査信号として出力される。このため、走査信号Ga、Gb、G1、G2、…、G480、Gc、Gdは、一水平走査期間(H)ずつ順次遅延して排他的にHレベルになる。
また、図において、走査信号のHレベルは電圧VHであり、Lレベルが電圧VLである。本実施形態において、Lレベルに相当する電圧VLは、上述したように実際には接地電位Gndであって電圧ゼロであり、電圧基準となっている。
本実施形態では上述したように面反転方式としているので、極性指示信号Polの論理レベルは1フレーム毎に反転している。ここで、上位装置から、あるフレームに相当する映像データDaが供給されている場合に、当該フレームを、便宜的に現行フレームまたはnフレームと呼び、次のフレームをnフレームに続くという意味で(n+1)フレームと呼ぶ場合がある。また、nフレームに対して、1つ前のフレームを(n−1)フレームと呼ぶ場合がある。
なお、説明の便宜上、nフレームについては、極性指示信号PolがHレベルであって正極性書込が指定され、次の(n+1)フレームについては、極性指示信号Polの論理レベルがLレベルに反転して負極性書込が指定されるものとする。
また、表示領域を含む1行目から480行目までを一般化して説明するために、符号i(iは1から480までの整数)を用いる。走査信号Giは、i行目の走査線112に供給される走査信号である。
【0038】
映像データDbの転送に際し、制御回路2は、1行分の映像データDbの供給開始タイミングにスタートパルスDxを出力するとともに、1画素分の映像データDbを供給する毎にクロック信号Clxの論理レベルを反転させて、それぞれデータ線駆動回路140に供給する。
【0039】
図11は、サンプリング信号出力回路142によって出力されるサンプリング信号SA、SB、S1、S2、…、S640、SC、SDの波形を示す図である。サンプリング信号出力回路142では、スタートパルスDxがクロック信号Clxにしたがって順次転送されて、サンプリング信号として出力される。このため、サンプリング信号SA、SB、S1、S2、…、S640、SC、SDは、メモリー3から1画素分の映像データDbが読み出される期間、すなわちドットクロック信号Clxの半周期ずつ順次遅延して排他的にHレベルになる。
【0040】
さて、液晶パネル100におけるフレームでは、図8または図9(B)に示されるように、まずa行目に位置する1行分の映像データDbが液晶パネル100に転送される。
a行目は、すべてダミー画素110bである。このため、制御回路2は、メモリー3において、ダミー画素110bに対応する参照先の記憶領域から映像データDmを読み出すとともに、セレクター4に対してa行目の映像データを供給する期間にわたって入力端bを選択させる。これにより、セレクター4から出力される映像データDbのうち、a行目のA列目、B列目および1列目の計3画素の映像データDbは、1フレーム前に上位装置から供給された1行1列の映像データDaとなる。a行目のうち、2列目から639列目の映像データDbは、それぞれ1フレーム前に上位装置から供給された1行2列から1行639列の映像データDaとなる。また、a行目のうち、640列目、C列目およびD列目の計3画素の映像データDbは、1フレーム前に上位装置から供給された1行640列の映像データDaとなる。
nフレームであれば、極性指定信号Polによって正極性書込が指定されるので、映像データDbは、D/A変換回路5によって、正極性のデータ信号Vidに変換されて信号Vidに変換されて信号線146に出力される。
【0041】
ここで、a行A列の映像データDbが変換されてデータ信号Vidとして信号線146に出力されているときに、サンプリング信号出力回路142は、図11に示されるようにサンプリング信号SAをHレベルにする。これにより、A列に対応するTFT144がオンするので、信号線146に供給されたa行A列のデータ信号Vidは、A列のデータ線114にサンプリングされる。
以降同様にして、a行目であって、B列、1列、2列、…、640列、C列、D列の映像データDbが変換されてデータ信号Vidとして信号線146に出力されるのに合わせて、サンプリング信号出力回路142が、サンプリング信号SB、S1、S2、…、S640、Sc、Sdを順にHレベルにする。これによって、各列のTFT144が順にオンするので、a行B列、a行1列、a行2列、…、a行640列、a行C列、a行D列のデータ信号VidがB列、1列、2列、…、640列、C列、D列のデータ線114に、それぞれサンプリングされる。
一方、a行目の映像データDbが転送される期間において、走査線駆動回路130は、図10に示されるように、走査信号GaをHレベルにさせて、a行目に位置する画素110におけるTFT116をオンさせる。このため、各列のデータ線114にサンプリングされたデータ信号Vidは、a行目のダミー画素110bにおける画素電極118にそれぞれ印加される。
【0042】
次に、b行目の映像データDbが液晶パネル100に転送される。b行目についても、すべてダミー画素110bであるので、制御回路2は、メモリー3において、ダミー画素110bに対応する参照先の記憶領域から映像データを読み出すとともに、セレクター4に対してb行目の映像データを供給する期間にわたって入力端bを選択させる。これにより、b行目のうち、A列目、B列目および1列目の計3画素の映像データDbは、1フレーム前に上位装置から供給された1行1列の映像データDaとなる。b行目のうち、2列目から639列目の映像データDbは、それぞれ1フレーム前に上位装置から供給された1行2列から1行639列の映像データDaとなる。また、b行目のうち、640列目、C列目およびD列目の計3画素の映像データDbは、1フレーム前に上位装置から供給された1行640列の映像データDaとなる。
nフレームであるので、b行目の映像データDbは、D/A変換回路5によって、正極性のデータ信号Vidに変換されて信号線146に出力される。
【0043】
a行目と同様に、b行目であって、A列、B列、1列、2列、…、640列、C列、D列の映像データDbが変換されてデータ信号Vidとして信号線146に出力されるのに合わせて、サンプリング信号出力回路142が、サンプリング信号SA、SB、S1、S2、…、S640、Sc、Sdを順にHレベルにする。これによって、b行A列、b行B列、b行1列、b行2列、…、b行640列、b行C列、b行D列のデータ信号VidがA列、B列、1列、2列、…、640列、C列、D列のデータ線114に、それぞれサンプリングされる。一方、b行目の映像データDbが転送される期間において、走査線駆動回路130は、走査信号GbをHレベルにさせる。このため、各列のデータ線114にサンプリングされたデータ信号Vidは、b行目のダミー画素110bにおける画素電極118にそれぞれ印加される。
なお、a行目およびb行目、さらには、後述するc行目およびd行目については、ブラックマトリクス94によって遮光されているので、印加電圧に応じた透過率となっても、視認されることはない。
【0044】
次に、1行目の映像データDbが液晶パネル100に転送される。1行目については、A列目、B列目、C列目およびD列目がダミー画素110bであり、1列目から640列目までが表示画素110aである。このため、制御回路2は、A列目、B列目、C列目およびD列目のときには、メモリー3のうち、対応する参照先の記憶領域から映像データを読み出すとともに、セレクター4に対して入力端bを選択させる。これにより、1行目のうち、A列目およびB列目の2画素の映像データDbは、1フレーム前に上位装置から供給された1行1列の映像データDaとなる。また、1行目のうち、C列目およびD列目の2画素の映像データDbは、1フレーム前に上位装置から供給された1行640列の映像データDaとなる。
一方、制御回路2は、1列目から640列目までのときには、セレクター4に対して入力端aを選択させる。これにより、1行1列から1行640列目までの映像データDbは、上位装置から供給された現フレームの映像データDaが、スルー状態で転送される。また、このときに供給された1行1列から1行640列までの映像データDaは、制御回路2によって、メモリー3において対応する記憶領域に格納されて、次の(n+1)フレームにおいて用いられる。
1行目の映像データDbは、D/A変換回路5によって、正極性のデータ信号Vidに変換されて信号線146に出力される。
【0045】
a行目、b行目と同様にして、1行A列、1行B列、1行1列、1行2列、…、1行640列、1行C列、1行D列のデータ信号VidがA列、B列、1列、2列、…、640列、C列、D列のデータ線114に、それぞれサンプリングされる。一方、1行目の映像データDbが転送される期間において、走査線駆動回路130は、走査信号G1をHレベルにさせる。このため、各列のデータ線114にサンプリングされたデータ信号Vidは、1行目の表示画素110aまたはダミー画素110bにおける画素電極118にそれぞれ印加される。
これにより、1行1列から1行640列までの表示画素110aは、上位装置から供給された映像データDaで指定された階調レベルに応じた透過率となる。
なお、1行目のうち、A列、B列、C列およびD列は、ブラックマトリクス94によって遮光されているので、印加電圧に応じた透過率となっても、視認されることはない。
【0046】
以降、2行目から480行目まで同様な動作が繰り返される。
ここで、1行目から480行目までを一般化して説明すると、i行目の走査線112に供給される走査信号GiがHレベルとなる期間に、データ信号Vidは、例えば図11に示されるような波形になる。
すなわち、i行A列およびi行B列に対応したデータ信号Vidは、1つ前の(n−1)フレームの映像データDaを現行のnフレームに合わせて正極性に変換した信号であるから、(n−1)フレームから現行のnフレームにかけて映像データDaで規定される画像に動きがなければ、これら3つの画素に対応するデータ信号Vidは、互いに同一電圧になる。また、i行1列〜i行640列までに対応するデータ信号Vidは、映像データDaで指定された階調レベルに応じた電圧、すなわち正極性が指定された現行のnフレームでは黒色に相当する電圧Vb(+)から白色に相当する電圧Vw(+)までの範囲であって、指定される階調レベルが高く(明るく)なるにつれて、電圧Vcよりも高位側の電圧になる。また、i行C列およびi行D列に対応したデータ信号Vidは、(n−1)フレームのi行640列の映像データDaを現行のnフレームに合わせて正極性に変換した信号であるから、画像に動きがなければ、これら3つの画素に対応するデータ信号Vidは、互いに同一電圧になる。
【0047】
続いて、ダミー画素110bにかかるc行目の映像データDbが転送され、これにより、c行目のうち、A列目、B列目および1列目の計3画素の映像データDbは、(n−1)フレームのときに上位装置から供給された480行1列の映像データDaとなる。c行目のうち、2列目から639列目の映像データDbは、それぞれ(n−1)フレームのときに上位装置から供給された480行2列から480行639列の映像データDaとなる。また、c行目のうち、640列目、C列目およびD列目の計3画素の映像データDbは、(n−1)フレームのときに上位装置から供給された480行640列の映像データDaとなる。
この映像データDaは、データ信号Vidに変換され、信号線146に出力されるとともに、走査線駆動回路130およびデータ線駆動回路140によって、c行目のダミー画素110bにおける画素電極118にそれぞれ印加される。これにより、c行A列からc行D列までのダミー画素110bの画素電極118には、画像に動きがなければ、480行A列から480行D列までの画素110の画素電極118と、それぞれ同じ電圧が印加されることになる。
【0048】
そして、ダミー画素110bにかかるd行目の映像データDbが転送され、これにより、d行目のうち、A列目、B列目および1列目の計3画素の映像データDbは、(n−1)フレームのときに上位装置から供給された480行1列の映像データDaとなる。d行目のうち、2列目から639列目の映像データDbは、それぞれ(n−1)フレームのときに上位装置から供給された480行2列から480行639列の映像データDaとなる。また、d行目のうち、640列目、C列目およびD列目の計3画素の映像データDbは、(n−1)フレームのときに上位装置から供給された480行640列の映像データDaとなる。
このため、d行A列からd行D列までのダミー画素110bの画素電極118には、画像に動きがなければ、480行A列から480行D列までの画素110の画素電極118と、c行A列からc行D列までのダミー画素110bの画素電極118と、それぞれ同じ電圧が印加されることになる。
【0049】
次の(n+1)フレームでは、極性指定信号PolがLレベルになって書込極性が負極性に指定される以外、同様な動作となる。なお、負極性書込が指定される(n+1)フレームにおいてデータ信号Vidは、図11に示されるように、黒色に相当する電圧Vb(-)から白色に相当する電圧Vw(-)までの範囲であって、指定される階調レベルが高く(明るく)なるにつれて、電圧Vcよりも低位側の電圧になる。
なお、制御回路2、メモリー3、セレクター4、D/A変換回路5、走査線駆動回路130およびデータ線駆動回路140が、表示画素110aおよびダミー画素110bにおける各画素電極にそれぞれ所定の電圧を印加する駆動回路として機能することになる。
【0050】
図12は、本実施形態において、表示画素110aのうち、表示領域の最外周における画素に指定された階調レベルと、ダミー画素110bに指定される階調レベルとを、連続する2フレームで通したときの関係を示す図である。
現行のnフレームよりも1つ前の(n−1)フレームにおいて、表示領域の最外周に位置する表示画素110aに対し、例えば図12(A)に示されるように階調レベルが「a」から「l(エル)」まで指定されているものとする。このとき、現行のnフレームにおいて、ダミー画素110bの映像データDmは、図7に示したように距離が最も近い表示画素110aを参照先として、メモリー3から読み出されたものが用いられる。このため、図12(B)に示されるように、画像に動きがなければ、ダミー画素110bに対して指定される階調レベルは、距離が最も近い表示画素110aに指定された階調レベルと同じになる。
したがって、仮想線200を挟むように位置する表示画素110aとダミー画素110bとでは、nフレームにおいて同じ階調レベルが指定されるので、当該2つの画素にかかる画素電極118には同じ電圧が印加されることになる。
【0051】
本実施形態に係る電気光学装置1による効果を説明する前に、本実施形態との比較対象となる比較例について図15(A)および図15(B)を参照して説明する。ここで、図15(B)は、比較例に係る液晶パネルにおいてドメインが発生する地点を説明するための図である。また、図15(A)は、比較例に係る液晶パネルについて、表示領域とダミー領域との境界である仮想線200を含むように図15(B)におけるQa−Qb線で破断した部分断面図である。
まず、図15(A)に示されるように、比較例に係る液晶パネルにおいて、ダミー画素の画素構造は、表示領域の画素と比べ、対向基板102のブラックマトリクス94によって遮蔽される点以外、ほぼ同一である。また、ダミー画素の画素電極118bに対しては、液晶を不透過とさせる黒色に相当する電圧、例えば液晶がVA型であってノーマリーブラックモードであれば、上述した電圧Vb(+)または電圧Vb(-)が印加される。このため、ダミー画素での液晶分子は、同図に示されるようにほぼ基板垂直方向に配向する。したがって、ダミー画素は、ブラックマトリクス94との相乗効果によって、表示領域を囲む黒色の額縁として機能する。
ここで、比較例に係る液晶パネルにおいて、例えば表示領域を白色表示にさせるために、表示領域の画素電極118aに白色に相当する電圧を印加させると、黒色に相当する電圧が印加されたダミー領域の画素電極118bに対して、大きな電位差が生じてしまう。このため、図15(A)において太線Eで示されるように、表示に寄与すべき縦電界を乱すように横電界が発生し、これによってドメイン(液晶配向不良)が引き起こされる。このようなドメインは、実際には、画素電極の隙間のみならず、液晶分子が連続的に配向する性質によって表示領域の画素を一部浸食するように発生する。
このため、入射光がドメイン発生部分を通過する際に散乱する結果、観察側では表示領域の縁端部において、白でも黒でもない、一種の光漏れのような現象が現れて、表示品位を低下させてしまう。
【0052】
これに対して、本実施形態では 図13(A)において、仮想線200の外側に位置するダミー画素の画素電極118bには、映像データDaで規定される画像に動きがなければ、当該ダミー画素と仮想線200を挟んで隣り合う表示画素の画素電極118aと同じ電圧が印加される。このため、ダミー画素の画素電極118bと、表示領域の最外周に位置する表示画素の画素電極118aとの間に電位差が生じない。したがって、本実施形態によれば、比較例とは異なり、図13(B)に示されるように、仮想線200近傍でドメインは発生しないので、表示領域の縁端部において光漏れのような現象を防止することが可能になる。
なお、図13(A)および図13(B)は、それぞれ比較例にかかる図15(A)および図15(B)に対応した図である。このため、図13(A)は、本実施形態に係る液晶パネルについて、表示領域とダミー領域との境界である仮想線200を含むように図13(B)におけるPa−Pb線で破断した部分断面図となる。
【0053】
本実施形態において、ダミー画素の画素電極118bに印加される電圧の根拠となる映像データDmは、当該ダミー画素に対し仮想線200を挟んで隣り合う表示画素についての1フレーム前の映像データDaである。このため、映像データDaで規定される画像に動きがあれば、ドメインが発生する可能性がある。ただし、一般的な動画像において、ある画素についての階調レベルが極端に大きく変化することは、シーン変化などを除けばレアケースであるので、実際には、画像の動きによるドメインの影響は小さいと考えられる。
【0054】
ところで、ダミー画素110bの映像データDmを、隣り合う表示画素110aの1フレーム前の映像データDaではなく、上位装置から供給される映像データDaと同一フレームにする構成にすれば、当該ダミー画素の画素電極118bには、当該表示画素の画素電極118aと同じ電圧が印加されるので、画像の動きに関係なくドメインの発生が抑えられるはずである。
ただし、この構成では次の点を考慮しなければならない。すなわち、液晶パネル100に映像データDbを転送する場合、上述したようにa行目、b行目、1行目、2行目という順番で供給する必要があるが、a行目、b行目の映像データDbは、1行目の映像データDaが上位装置から供給されないと確定できない。同様に、同一行においてA列目、B列目の映像データDbは、当該同一行において1列目の映像データDaが上位装置から供給されないと確定できない。
ダミー画素110bの映像データDmを、隣り合う表示画素110aの映像データDaとフレームを揃えて供給するためには、上位装置から供給される映像データDaを一旦メモリーに記憶するとともに、記憶した映像データDaによってダミー画素110bの映像データDmを確定し、この後に、液晶パネル100の走査に合わせて、記憶した映像データを読み出して当該液晶パネル100に転送する構成が必要となる。しかしながら、この構成では、メモリー3には要する記憶容量が膨大になりやすいし、なによりも表示遅延が、すなわち上位装置から供給された映像データDaに対して、液晶パネル100の表示動作が遅延してしまうという問題が発生する。
これに対して、本実施形態では 表示画素110aのうち、ダミー画素110bに隣り合うものだけを記憶するので、メモリー3に多くの記憶容量を必要としない。さらに、本実施形態では、上位装置から供給された映像データDaについては、そのままスルー状態で液晶パネル100に転送しているので、表示遅延を発生させることもない。
【0055】
なお、上述した実施形態において、メモリー3は、表示領域の最外周に位置する表示画素110aに対応した記憶領域を有し、ダミー画素110bの映像データについては、距離が最も近い表示画素110aの記憶領域を参照先としてメモリー3から読み出したものを用いる、として説明した。
ここで、ダミー画素110bのうち、c行、d行と、C列、D列(a行、b行を除く)とに位置するダミー画素の映像データを液晶パネル100への供給するタイミングは、参照先となる上位装置から映像データDaの供給を受けた後である。したがって、ダミー画素110bに対し、距離が最も近い表示画素110aの記憶領域から1フレーム前に格納された映像データを読み出して供給する構成とする場合、これらのダミー画素の参照先となる記憶領域、すなわち図4において「+」印が付された画素に対応する記憶領域については、上書きによる消滅を防ぐために、2つの記憶領域を対応させるとともに、次のように動作させる必要がある。
詳細には、ある奇数フレームにおいて供給された表示画素の映像データを一方の記憶領域に格納して、次の偶数フレームにおいてダミー画素の参照先として用いるとともに、当該偶数フレームにおいて供給された表示画素の映像データを他方の記憶領域に格納して、次の奇数フレームにおいてダミー画素の参照先として用いる、という動作を交互に実行する構成となる。
もっとも、c行、d行と、C列、D列(a行、b行を除く)とに位置するダミー画素について、距離が最も近い表示画素110aの記憶領域から、1フレーム前ではなく現フレームの映像データを参照して供給する構成にすれば、図4において「+」印が付された画素に対応する記憶領域については、2つではなく、1つであれば良い。
【0056】
本発明は、上述した実施形態に限られず、次のような応用・変形が可能である。
上述した説明では、書込極性の基準とする電圧Vc、すなわちデータ信号の振幅中心電圧Vcと、コモン電極108に印加される電圧LCcomとを同一にしているが、これは、TFT116が理想的なスイッチとして機能する場合である。実際には、TFT116のゲート・ドレイン間の寄生容量に起因して、オンからオフに状態変化するときにドレイン電極、すなわち画素電極118の電位が低下する現象(プッシュダウン、突き抜け、フィールドスルーなどと呼ばれる)が発生する。液晶の劣化を防止するため、液晶素子120については交流駆動としなければならないが、コモン電極108への印加電圧LCcomを書込極性の基準電圧Vcに一致させて交流駆動すると、プッシュダウンのために、負極性書込による液晶素子120の電圧実効値が、正極性書込による実効値よりも若干大きくなってしまう(TFT116がnチャネルの場合)。このため、書込極性の基準となる電圧Vcとコモン電極108の電圧LCcomとを別々とするとともに、プッシュダウンの影響が相殺されるように、電圧Vcを、電圧LCcomに対して高位側にオフセットして設定しても良い。
【0057】
実施形態においては、マトリクス状に配列する表示画素110aに対して、ダミー画素110bを2行または2列で配設させたが、1行または1列であっても良いし、3行または3列以上であっても良い。
ここで、ダミー画素110bを2行または2列以上で配設させる場合、表示画素110aに隣り合うダミー画素110bの画素電極118bに対して、1フレーム前に供給された当該表示画素110aの映像データに基づくデータ信号を印加すれば良いので、それ以外のダミー画素110bの画素電極118bに対しては、例えば液晶素子120を不透過にさせる電圧、すなわち黒色に相当する電圧Vb(+)または電圧Vb(-)を印加しても良い。
また、液晶素子120は、透過型に限られず、反射型であっても良い。さらに、液晶素子120は、ノーマリーブラックモードに限られず、例えばTN方式として、電圧無印加時において液晶素子120が白状態となるノーマリーホワイトモードとしても良い。
【0058】
<電子機器>
次に、上述した実施形態に係る電気光学装置1を適用した電子機器の一例として、プロジェクターを例にとって説明する。図14は、このプロジェクターの構成を示す平面図である。
この図に示されるように、プロジェクター2100の内部には、ハロゲンランプ等の白色光源からなるランプユニット2102が設けられている。このランプユニット2102から射出された投射光は、内部に配置された3枚のミラー2106および2枚のダイクロイックミラー2108によってR(赤)色、G(緑)色、B(青)色の3原色に分離されて、各原色に対応するライトバルブ100R、100Gおよび100Bにそれぞれ導かれる。なお、B色の光は、他のR色やG色と比較すると、光路が長いので、その損失を防ぐために、入射レンズ2122、リレーレンズ2123および出射レンズ2124からなるリレーレンズ系2121を介して導かれる。
【0059】
このプロジェクター2100では、実施形態に係る電気光学装置が、R色、G色、B色のそれぞれに対応して3組設けられる。そして、R色、G色、B色のそれぞれに対応する映像データがそれぞれ上位回路から供給されて、各色に対応するデータ信号Vidに変換される構成となっている。ライトバルブ100R、100Gおよび100Bの構成は、上述した液晶パネル100と同様であり、R色、G色、B色のそれぞれに対応する映像データに応じて駆動される。
ライトバルブ100R、100G、100Bによってそれぞれ変調された光は、ダイクロイックプリズム2112に3方向から入射する。そして、このダイクロイックプリズム2112において、R色およびB色の光は90度に屈折する一方、G色の光は直進する。したがって、各色の画像が合成された後、スクリーン2120には、投射レンズ2114によってカラー画像が投射されることとなる。
【0060】
なお、ライトバルブ100R、100Gおよび100Bには、ダイクロイックミラー2108によって、R色、G色、B色のそれぞれに対応する光が入射するので、カラーフィルターを設ける必要はない。また、ライトバルブ100R、100Bの透過像は、ダイクロイックプリズム2112により反射した後に投射されるのに対し、ライトバルブ100Gの透過像はそのまま投射されるので、ライトバルブ100R、100Bによる水平走査方向は、ライトバルブ100Gによる水平走査方向と逆向きにして、左右を反転させた像を表示する構成となっている。
【0061】
なお、電子機器としては、図14を参照して説明したプロジェクターの他、電子ビューファインダーや、リヤ・プロジェクション型のテレビジョン、ヘッドマウントディスプレイなどが挙げられる。
【符号の説明】
【0062】
1…電気光学装置、2…制御回路、3…メモリー、4…セレクター、5…D/A変換回路、100…液晶パネル、101…素子基板、102…対向基板、105…液晶、108…コモン電極、110…画素、110a…表示画素、110b…ダミー画素、116…TFT、118…画素電極、120…液晶素子、130…走査線駆動回路、140…データ線駆動回路、2100…プロジェクター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子基板と、
前記素子基板に対向配置される対向基板と、
前記素子基板と前記対向基板との間隙に挟持された液晶と、
駆動回路と、
を具備し、
前記素子基板は、
前記対向基板との対向側に形成され、所定のピッチで配列する複数の第1画素の各々に対応した第1画素電極と、
平面視で前記第1画素を囲むように配列する複数の第2画素に対応し、かつ、前記第1画素電極に隣り合う第2画素電極と、
を有し、
前記対向基板は、
前記素子基板との対向側に、所定の電圧が印加される対向電極を有し、
前記駆動回路は、
前記第1画素電極に対して、フレームを単位として繰り返し供給される映像データであって、かつ、前記複数の第1画素にそれぞれ対応した映像データに基づく電圧を印加し、
前記第2画素電極に対して、当該第2画素電極と隣り合う第1画素電極に対応した第1画素の1フレーム前の映像データに基づく電圧を印加する
ことを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記対向基板は、
平面視で前記第2画素に対応する部分を遮蔽するブラックマトリクスを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記駆動回路は、
前記複数の第1画素のうち、前記複数の第2画素と隣り合う画素に対応した記憶領域を有するメモリーと、
供給された映像データが前記記憶領域に対応した画素のものであるとき、当該映像データを当該記憶領域に格納させ、
前記第2画素電極に電圧を印加するとき、当該第2画素と隣り合う画素に対応した記憶領域から前記映像データを読み出す制御回路と、
を有し、
当該読み出した映像データに基づくデータ信号を前記第2画素電極に印加し、
供給された映像データに基づくデータ信号を前記第1画素電極に印加する
ことを特徴とする請求項2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記素子基板は、
複数の走査線と
平面視したときに前記複数の走査線と交差する複数のデータ線と、
を有し、
前記複数の第1画素および前記複数の第2画素の各々は、前記複数の走査線および前記複数のデータ線の交差に対応して設けられ、
前記駆動回路は、
前記複数の走査線を駆動する走査線駆動回路と、
前記複数のデータ線に前記データ信号を供給するデータ線駆動回路と、
を含むことを特徴とする請求項3に記載の電気光学装置。
【請求項5】
素子基板と、
前記素子基板に対向配置される対向基板と、
前記素子基板と前記対向基板との間隙に挟持された液晶と、
駆動回路と、
を具備し、
前記素子基板は、
前記対向基板との対向側に形成され、所定のピッチで配列する複数の第1画素の各々に対応した第1画素電極と、
平面視で前記第1画素を囲むように配列する複数の第2画素に対応し、かつ、前記第1画素電極に隣り合う第2画素電極と、
を有し、
前記対向基板は、
前記素子基板との対向側に、所定の電圧が印加される対向電極
を有する電気光学装置の駆動方法であって、
前記第1画素電極の各々に対して、フレームを単位として繰り返し供給される映像データであって、かつ、前記複数の第1画素にそれぞれ対応した映像データに基づく電圧を印加し、
前記第2画素電極の各々に対して、当該第2画素電極と隣り合う第1画素電極に対応した第1画素の1フレーム前の映像データに基づく電圧を印加する
ことを特徴とする電気光学装置の駆動方法。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかに記載の電気光学装置を有する
ことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−132975(P2012−132975A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282737(P2010−282737)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】