電気光学装置
【課題】電気光学装置10における可撓性基板90と複数個の外部回路接続端子との間の抵抗を均一にする。
【解決手段】 電気光学装置10は、電気光学物質を間に挟んで対向した素子基板11および対向基板12を有する。素子基板11には電気光学物質を駆動する回路が形成されている。素子基板11は、各層間に絶縁層を挟んだ複数層の配線層WRL2およびWRL1を有する。また、記素子基板11は、同じ高さに位置する複数のITOパッド3−iを有する。複数のITOパッド3−iの各々の下部には、絶縁層を挟んで配線層WRL2およびWRL1をのうちのいずれかの層の配線層が配置されるとともに、絶縁層を貫通して当該ITOパッドを当該配線層WRL2またはWRL1に電気的に接続する複数のコンタクトホールCHL2またはCHL1が形成されている。
【解決手段】 電気光学装置10は、電気光学物質を間に挟んで対向した素子基板11および対向基板12を有する。素子基板11には電気光学物質を駆動する回路が形成されている。素子基板11は、各層間に絶縁層を挟んだ複数層の配線層WRL2およびWRL1を有する。また、記素子基板11は、同じ高さに位置する複数のITOパッド3−iを有する。複数のITOパッド3−iの各々の下部には、絶縁層を挟んで配線層WRL2およびWRL1をのうちのいずれかの層の配線層が配置されるとともに、絶縁層を貫通して当該ITOパッドを当該配線層WRL2またはWRL1に電気的に接続する複数のコンタクトホールCHL2またはCHL1が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクターや携帯電話機などに搭載される液晶ディスプレイ装置等として好適な電気光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電気光学装置では、液晶パネルにおける液晶層を挟む2枚の基板のうち一方の基板である素子基板の液晶層側の面の端部に、横一列をなす複数個の外部回路接続端子が設けられている。外部回路接続端子の各々は、液晶層のある側と反対側に向かって凹んだ凹部にこの凹部に沿った凹状をなすITO(Indium Tin Oxide)パッドを嵌め込んだものである。素子基板内には、ITOパッドの底面から素子基板上の回路素子に至る配線が埋設されている。また、この種の電気光学装置における2枚の基板を制御する駆動回路は、液晶パネル駆動ICとして液晶パネルから分離されて可撓性基板上に載置され、この液晶パネル駆動ICと可撓性基板とによりCOF(Chip On Film)モジュールが形成される。このCOFモジュールは、可撓性基板の先端部を液晶パネルにおける各外部回路接続端子にACF(Anisotropic Conductive Film:異方性導電膜)材を介して熱圧着させることにより、液晶パネルと一体化される。このような電気光学装置は、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−354966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の電気光学装置のうち多層配線を介して素子基板上の各ITOパッドと素子基板上の回路各部との接続を行う構成のものでは、例えば配線の混雑緩和等の理由により、複数の外部回路接続端子間で、各ITOパッドに接続する配線層の層を異ならせる場合がある。この場合、各ITOパッドの高さが複数の外部回路接続端子間で異なったものとなる。このため、可撓性基板と素子基板におるITOパッドとをACF材を間に挟んで熱圧着すると、可撓性基板とITOパッドの各々との間のACF内における導電粒子の密度にばらつきが生じ、可撓性基板及び各ITOパッド間の抵抗が不均一になるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、電気光学装置における可撓性基板と各外部回路接続端子との間の抵抗を均一にする技術的手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、この発明は、電気光学物質を間に挟んで対向した素子基板および対向基板を有し、前記電気光学物質を駆動する回路が前記素子基板に形成された電気光学装置において、前記素子基板は、各層間に絶縁層を挟み、前記回路の各箇所に接続された複数層の配線層を有し、前記素子基板は、複数のITOで構成された電極パッドを有し、前記複数の電極パッドの各々の下部には、絶縁層を挟んで前記複数層の配線層のうちのいずれかの層の配線層が配置されるとともに、前記絶縁層を貫通して当該電極パッドを当該配線層に電気的に接続する複数のコンタクトホールが形成され、前記複数の電極パッドの前記対向基板と対向する面が同じ高さに位置していることを特徴とする電気光学装置を提供する。
【0007】
この発明によれば、素子基板における複数のITOパッドが同じ高さに位置しているので、可撓性基板とITOパッドとをAFC材を間に挟んで熱圧着した場合において、可撓性基板と各ITOパッドとの接触抵抗を均一にすることができる。
【0008】
好ましい態様において、前記各電極パッドは、可撓性基板が、導電性粒子を樹脂内に均一配合してなる膜である異方性導電膜を介して熱圧着され、前記コンタクトホールの直径が前記導電性粒子の直径よりも小さくなっている。この態様によれば、異方性導電膜の導通性粒子がコンタクトホール内に入り込むことはない。よって、導通性粒子がコンタクトホールからその奥の配線に達して配線の接続先の回路素子に誤動作を発生させる、という不具合が防止される。
【0009】
また、他の好ましい態様において、前記素子基板の前記対向基板との対向面には、前記対向基板と電気的に接続されるべき配線層を絶縁層から露出させる凹部と、この凹部の内表面を覆うITOで構成された電極パッドとが形成されており、この電極パッドと前記対向基板との間に基板間導通部材が介在している。この態様によると、2枚の基板を接合する際に一方の基板を他方の基板に押しつける力を強くし過ぎて導通不良が発生する、という事態が防止される。
【0010】
前記素子基板における前記各コンタクトホールを覆う複数個の電極パッドが同じ製造プロセスにおいて形成されてもよい。この態様によると、コンタクトホール及び凹部を別の製造プロセスにより形成する場合よりも、製造コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態である電気光学装置の斜視図である。
【図2】同電気光学装置の正面図及び左側面図である。
【図3】同電気光学装置におけるITOパッドとその周辺部分の拡大図及び断面図である。
【図4】同電気光学装置におけるITOパッドとその周辺部分の拡大図及び断面図である。
【図5】同電気光学装置におけるITOパッドとその周辺部分の断面図である。
【図6】同電気光学装置の効果を説明するための図である。
【図7】同電気光学装置の効果を説明するための図である。
【図8】同電気光学装置の効果を説明するための図である。
【図9】同電気光学装置の製造工程を説明するための図である。
【図10】同電気光学装置の製造工程を説明するための図である。
【図11】同電気光学装置を適用したパーソナルコンピューターを示す図である。
【図12】同電気光学装置を適用した携帯電話機を示す図である。
【図13】同電気光学装置を適用した情報携帯端末を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(A:構成)
以下、本発明の一実施形態である電気光学装置10について説明する。図1は、電気光学装置10の斜視図である。図2(A)は、電気光学装置10の正面図である。図2(B)は、電気光学装置10の左側面図である。電気光学装置10は、液晶層LQD(不図示)と、この液晶層LQDを挟んで対向する2枚の基板である素子基板11及び対向基板12とを有する。素子基板11は、薄い直方体状をなしている。対向基板12は、素子基板11よりも一回り小さい縦幅及び横幅をもった薄い直方体状をなしている。液晶層LQDは、電気光学物質である一又は複数のネマティック液晶の混合物により形成されている。素子基板11と対向基板12はシール部材13により接合されている。シール部材13は、対向基板12の基板周辺に沿って形成されるが、液晶を封入するために一部が開口している。このため、液晶の封入後にその開口部分が封止材51によって封止されている。
【0013】
素子基板11における対向基板12との対向面110上には、M列N行のマトリクスをなす画素電極P−m(m=1〜M)−n(n=1〜N)及びこれらをスイッチングする素子であるTFT111−m(m=1〜M)−n(n=1〜N)、TFT111−m(m=1〜M)−n(n=1〜N)を挟んで横幅方向に向い合う走査線駆動回路14L及び14Rなどの各種回路素子が設けられている。対向基板12における素子基板11との対向面120上には、画素電極P−m(m=1〜M)−n(n=1〜N)と対峙する対向電極P’(不図示)が設けられている。素子基板11の対向面110上における縦幅方向に隣り合うTFT111−m−n間には、横幅方向に延在する複数の走査線112−mが設けられている。各走査線112−mの一端は走査線駆動回路14Lに接続されている。各走査線112−mの他端は走査線駆動回路14Rに接続されている。また、各走査線112−mは各TFT111−m−nのゲート電極と接続されている。
【0014】
素子基板11における対向基板12との対向面110の一辺をなす端部には、可撓性基板90と当該電気光学装置10とを接続する外部回路接続端子としての役割を果たすL個のITOで構成されたITOパッド3−i(i=1〜L、電極パッド)が対向面110の一辺に沿った方向に並べて配設されている。これらのITOパッド3−i(i=1〜L)の対向基板12と対向する面3−i−1には、可撓性基板90の先端部がACF(具体的には、ある程度の軟性を有する樹脂内に導電性粒子を均一配合してなる膜)材91により熱圧着される。素子基板11の対向面110における四隅に相当する位置には4つのITOパッド4−k(k=1〜4)が配設されている。これらのITOパッド4−k(k=1〜4)の各々と対向基板12との間には、両基板11及び12を導通する役割を果たす部材である基板間導通部材93−kが介挿されている。基板間導通部材93−kは、ACF材91のものよりも高い硬性を有する球状樹脂に金をコーティングしたものである。
【0015】
ここで、本実施形態の特徴は、素子基板11の構造にある。以下では、この素子基板11の構造について詳細に説明する。図3(A)は、図2(A)におけるITOパッド3−1とその周辺部分の拡大図である。図3(B)は、図2(A)におけるITOパッド3−1とその周辺部分のA−A’線断面図である。図4(A)は、図2(A)におけるITOパッド3−2とその周辺部分の拡大図である。図4(B)は、図2(A)におけるITOパッド3−2とその周辺部分のB−B’線断面図である。図5は、図2(A)におけるITOパッド4−1とその周辺部分のC−C’線断面図である。
【0016】
これらの図に示すように、素子基板11は、ガラス基板Gの上に、絶縁層L1、絶縁層L2を順次積層させた積層体である。素子基板11において、素子基板11におけるL個のITOパッド3−i(i=1〜L)は、ガラス基板G上の配線層WRL1と、絶縁層L2上の配線層WRL2とからなる多層配線を介して素子基板11内の回路各部と接続される。ここで、配線層WRL2の各配線には、例えば基板間導通部材93−kに接続されている配線や走査線駆動回路14L及び14Rに接続されている配線が含まれている。また、配線層WRL1の各配線にはTFT111−m−nのソース電極に至る配線等が含まれている。そして、L個のITOパッド3−i(i=1〜L)には、絶縁層L2上の配線層WRL2を介して素子基板11内の回路に接続されるもの(例えば、図3(A)および(B)に示すITOパッド3−1)と、ガラス基板G上の配線層WRL1を介して素子基板11内の回路に接続されるもの(例えば、図4(A)および(B)に示すITOパッド3−2)とが混在している。
【0017】
図3(B)に示すように、配線層WRL2と対向しているITOパッド3−1は、厚さH1を有する皿状部PLTL2を有している。この皿状部PLTL2の下部には、絶縁層L2を貫通して配線層WRL2に至るコンタクトホールCHL2が形成されている。そして、皿状部PLTL2には、ITO材料からなり、コンタクトホールCHL2内を通って配線層WRL2に達する脚部LGL2が?がっている。また、図4(B)に示すように、配線層WRL1と対向しているITOパッド3−2は、厚さH1を有する皿状部PLTL1を有している。この皿状部PLTL1の下部には、絶縁層L2およびL1を貫通して配線層WRL1に至るコンタクトホールCHL1が形成されている。そして、皿状部PLTL1には、ITO材料からなり、コンタクトホールCHL1内を通って配線層WRL1に達する脚部LGL1が?がっている。ここで、コンタクトホールCHL2およびCHL1は図3(A)および図4(A)に示すように正方形をなすITOパッド3−iの4辺に沿って複数個並べて穿設されている。また、各コンタクトホールCHL2及びCHL1の直径φ1は、ACF材91内における導電性粒子の直径φ2よりも小さくなっている。
【0018】
上述したように、可撓性基板90の先端部とITOパッド3−i(i=1〜L)とを熱圧着する素材であるACF材91は、導電性粒子を均一配合してなる薄い樹脂からなる。このACF材91により可撓性基板90とITOパッド3−i(i=1〜L)とを熱圧着した状態において、可撓性基板90と各ITOパッド3−iとの間のACF材91は熱により溶解し、ACF材91内の導電性粒子の密度が密になる。これにより、可撓性基板90と各ITOパッド3−iとが導通する。この導通状態における可撓性基板90及び各ITOパッド3−i間の抵抗は、ACF材91内における導電性粒子の密度に依存する。
【0019】
図5に示すように、素子基板11の対向面110における四隅に相当する位置には、絶縁層L2内の配線層WRL2を露出させる凹部DP−kが形成されており、この凹部DP−kの内表面がITOパッド4−kにより覆われている。このITOパッド4−kは、凹部DP−kに沿って凹んだ凹状をなしている。ITOパッド4−kにおける対向基板12の側に開口した部分の上縁は僅かな厚みだけ対向面110から対向基板12側に食み出しており、この食み出した部分の外周は外側に僅かに拡がっている。また、ITOパッド4−kの底面はそのほぼ全面に亙って絶縁層L2の配線層WRL2と接触している。基板間導通部材93−kはこのITOパッド4−kにおける凹んだ部分に収められている。
【0020】
この電気光学装置10において、可撓性基板90上に搭載されている液晶パネル駆動IC(不図示)からITOパッド3−iに共通電位CLL(グランド)が供給されると、この電位CLLが、絶縁層L2内の配線層WRL2、ITOパッド4−k(k=1〜4)、及び基板間導通部材93−k(k=1〜4)を介して対向基板12に印加され、対向基板12における対向電極P’の電位がCLLになる。この状態において、液晶パネル駆動ICは、ITOパッド3−iに走査線駆動回路14L及び14Rの駆動信号であるタイミング信号CLを供給するとともに、ITOパッド3−iに各画素の濃度を示す画像信号VIDを供給する。タイミング信号CLは絶縁層L2内の配線層WRL2を介して走査線駆動回路14L及び14Rに供給され、同回路14L及び14Rがこの信号CLに従って走査線112−m(m=1〜M)を順次アクティブレベルにする操作を繰り返す。また、画像信号VIDは絶縁層L1の配線層WRL1を介してTFT111−m−nのソース電極に供給され、TFT111−m−nがこの信号VIDに従って画素電極P−m−nを駆動させる操作を繰り返す。この画素電極P−m−nの駆動により、各画素電極P−m−nと対向電極P’との電位差が変化し、この電位差に応じて画素(各画素電極P−m−nと対向電極P’に挟まれた液晶)の透過光量が変化する。これにより、M×N画素の解像度の画像が当該電気光学装置10の正面に向けて照射される。
【0021】
以上が、本実施形態である電気光学装置10の構成の詳細である。以上説明した本実施形態によると、次の4つの効果が得られる。
第1に、本実施形態では、ITOパッド3−iの対向基板12と対向する側の面3−i−1は、配線層WRL1に接続されたもの(面3−2−1)も配線層WRL2(面3−1−1)に接続されたものも同じ高さに位置する。このため、可撓性基板90とITOパッド3−i(i=1〜L)の表面3−i−1とをACF材91により熱圧着した場合における可撓性基板90及びITOパッド3−i(i=1〜L)間の導電性粒子の密度のばらつきが少なくなり、可撓性基板90及びITOパッド3−i(i=1〜L)間の抵抗を均一にすることができる。
【0022】
第2に、本実施形態では、素子基板11のコンタクトホールCHL1、CHL2の直径φ1がACF材91の導電性粒子の直径φ2よりも小さくなっている。このため、ITOパッド3−iに塞がれておらず対向面110の側に露出しているコンタクトホールCHL1、CHL2があった場合でも、ACF材91の導電性粒子がそのコンタクトホールCHL1、CHL2内に入り込むことはない。よって、導電性粒子がコンタクトホールCHL1、CHL2からその奥の配線層WRL1,WRL2に到達して配線層WRL1,WRL2の接続先の回路素子に誤動作を発生させる、という不具合が防止される。
【0023】
第3に、本実施形態では、素子基板11の対向面110における液晶層LQDを包囲する位置に、絶縁層L2内の配線層WRL2を露出させる凹部DP−kとこの凹部DP−kに嵌め込まれたITOパッド4−kとが形成されており、素子基板11における凹部DP−k及びITOパッド4−kと対向基板12との間に基板間導通部材93−kが介挿されている。すなわち、本実施形態では、基板間導通部材93−kを保持する部分の構造を従来の電気光学装置のものと同じにしている。本実施形態では、ITOパッド4−kをこのような構造にすることにより、基板11及び12をシール部材13により接合する際に基板12を基板11側に強く押しつけ過ぎて導通不良になる、という事態の発生を防止することができる。
【0024】
この効果について、詳細に説明する。上述したように、ACFはある程度の軟性をもったファイバーを金コーティングしたものを導電材として用いる。このため、可撓性基板90及びITOパッド3−iの熱圧着時における可撓性基板90をITOパッド3−i側に押しつける力Fは両者間のACF材91の横方向への伸長によってある程度吸収される(図6の概念図参照)。これに対し、基板間導通部材93−kはACF材91のものよりも高い硬性を持ったファイバーを金コーティングしたものを導電材として用いる。このため、電気光学装置10におけるITOパッド4−kをITOパッド3−iと同じ形状を有するITOパッド4’−kにすると、対向基板12を素子基板11の側に押しつける力Fが強すぎた場合に両基板12及び11間に挟まれた基板間導通部材93−kが素子基板11のITOパッド4’−kを突き破り、その奥の絶縁層L2に達してしまう(図7の概念図参照)。絶縁層L2のインピーダンスはITOよりも十分に高いため、この場合、素子基板11における配線層WRL2及び対向基板12間における導通不良が発生する。
【0025】
ここで、本実施形態のように、ITOパッド4−kの構造を従来のものと同じにしたとしても、基板間導通部材93−kがITOパッド4−kを突き破ることは同様に起こり得る。しかし、本実施形態では、ITOパッド4−kの底面が配線層WRL2と接しているため、ITOパッド4−kを突き破った基板基板間導通部材93−kは配線層WRL2と直接接触することになる(図8の概念図参照)。よって、素子基板11における配線層WRL2と対向基板12との間の導通が悪化することはない。以上の理由から、本実施形態によると、基板11及び12を接合する際に基板12を基板11側に強く押しつけ過ぎて導通不良になる、という事態の発生を防止することができる。
【0026】
第4に、本実施形態では、全てのITOパッド3−iを同一製造工程において形成するため、ITOパッド3−iの膜厚を均一にすることができ、ACFとITOパッド3−iとの接触抵抗のみならず、ITOパッド3−i自体の抵抗を均一にすることができる。また、工程数が減るため、製造コストを低減することができる。以下、従来の電気光学装置の製造方法と本実施形態による電気光学装置の製造方法を対比しつつ、この効果について詳述する。
【0027】
図9は従来の電気光学装置の製造方法を示す図である。従来の電気光学装置の製造方法では、まず、ガラス基板Gの上に配線層WRL1を形成し、次いで本実施形態におけるITOパッド3−2等に相当するITOパッド3−2’を配線層WRL1の上に形成する(図9(a)参照)。次いで絶縁膜L11を積層する(図9(b)参照)。そして、絶縁層L11の上に配線層WRL2を形成し、次いで本実施形態におけるITOパッド3−1等に相当するITOパッド3−1’を配線層WRL2の上に形成する(図9(c)参照)。次いで絶縁膜L12を積層する(図9(d)参照)。そして、ITOパッド3−1’および3−2’の表面を露出させる凹部CHaおよびCHbを設ける(図9(e)参照)。そして、このようにITOパッド3−1’および3−2’の表面を露出させた状態において、ACFを利用した可撓性基板とITOパッド3−1’および3−2’との接着を行うのである。
【0028】
このように従来の電気光学装置の製造方法では、本実施形態におけるITOパッド3−1に相当するITOパッド3−1’と、ITOパッド3−2に相当するITOパッド3−2’を異なる製造工程において形成するため、ITOパッド3−1’の膜厚Haと、ITOパッド3−2’の膜厚Hbが異なったものになるという問題があった。
【0029】
これに対し、本実施形態では、全てのITOパッド3−1、3−2…を同一の製造工程において形成するため、この問題は生じない。
【0030】
図10は、本実施形態による電気光学装置の製造方法を示すものである。本実施形態による電気光学装置の製造方法では、まず、ガラス基板Gの上に配線層WRL1を形成し(図10(a)参照)、その上に絶縁層L1を積層する(図10(b)参照)。次いで絶縁層L1の上に配線層WRL2を形成し(図10(c)参照)、その上に絶縁層L2を積層する(図10(d)参照)。次いで絶縁層L2を貫通して配線層WRL2に至るコンタクトホールCHL2と、絶縁層L2およびL1を貫通して配線層WRL1に至るコンタクトホールCHL1および上述した凹部DP−k(図示略)を形成する(図10(e)参照)。そして、配線層WRL1と対向するITOパッド3−1等および配線層WRL2と対向するITOパッド3−2等を形成する。
【0031】
以上のように、本実施形態では、配線層WRL1と対向するITOパッド3−1等および配線層WRL2と対向するITOパッド3−2等が同一製造工程において形成される。従って、ITOパッド3−1等の膜厚H1とITOパッド3−2等の膜厚H2を同じにすることができる。
【0032】
(B:変形)
以上、本発明の実施形態について説明したが、この実施形態に以下に述べる変形を加えても勿論良い。
(1)上記実施形態における電気光学装置10は、2層の絶縁層L2及びL1をガラス基板G上に積層したものであった。しかし、電気光学装置10における絶縁層の積層数を3層以上にしてもよい。
【0033】
(2)上記実施形態における電気光学装置10では、素子基板11の対向面110における基板間導通端子93−kと走査線駆動回路14L及び14Rが絶縁層L2内の配線層WRL2を介してITOパッド3−iと接続されており、素子基板11の対向面110におけるTFT111−m−nのソース電極が絶縁層L1内の配線層WRL1を介してITOパッド3−iと接続されていた。しかし、対向面110上における各種回路素子とITOパッド3−iとを接続する配線を埋設する絶縁層を入れ替えてもよい。
【0034】
(3)上記実施形態における電気光学装置10は、種々の電子機器に適用できる。図11に、電気光学装置10を適用したモバイル型のパーソナルコンピューターの構成を示す。パーソナルコンピューター2000は、表示ユニットとしての電気光学装置10と本体部2010を備える。本体部2010には、電源スイッチ2001及びキーボード2002が設けられている。
【0035】
図12に、電気光学装置10を適用した携帯電話機の構成を示す。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001及びスクロールボタン3002、並びに表示ユニットとしての電気光学装置10を備える。スクロールボタン3002を操作することによって、電気光学装置10に表示される画面がスクロールされる。
【0036】
図13に、電気光学装置10を適用した情報携帯端末(PDA:Personal Digital Assistants)の構成を示す。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001及び電源スイッチ4002、並びに表示ユニットとしての電気光学装置10を備える。電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が電気光学装置10に表示される。
【0037】
なお、電気光学装置10が適用される電子機器としては、図11〜13に示すものの他、デジタルスチルカメラ、液晶テレビ、ビューファインダー型、モニター直視型のビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、ワープロ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。そして、これらの各種電子機器の表示部として、前述した電気光学装置10が適用可能である。
【符号の説明】
【0038】
3,4…ITOパッド、10…電気光学装置、11…素子基板、12…対向基板、13…シール部材、14…走査線駆動回路、110,120…対向面、111…TFT、112…走査線、90…可撓性基板、91…ACF材、93…基板間導通部材。
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクターや携帯電話機などに搭載される液晶ディスプレイ装置等として好適な電気光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電気光学装置では、液晶パネルにおける液晶層を挟む2枚の基板のうち一方の基板である素子基板の液晶層側の面の端部に、横一列をなす複数個の外部回路接続端子が設けられている。外部回路接続端子の各々は、液晶層のある側と反対側に向かって凹んだ凹部にこの凹部に沿った凹状をなすITO(Indium Tin Oxide)パッドを嵌め込んだものである。素子基板内には、ITOパッドの底面から素子基板上の回路素子に至る配線が埋設されている。また、この種の電気光学装置における2枚の基板を制御する駆動回路は、液晶パネル駆動ICとして液晶パネルから分離されて可撓性基板上に載置され、この液晶パネル駆動ICと可撓性基板とによりCOF(Chip On Film)モジュールが形成される。このCOFモジュールは、可撓性基板の先端部を液晶パネルにおける各外部回路接続端子にACF(Anisotropic Conductive Film:異方性導電膜)材を介して熱圧着させることにより、液晶パネルと一体化される。このような電気光学装置は、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−354966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の電気光学装置のうち多層配線を介して素子基板上の各ITOパッドと素子基板上の回路各部との接続を行う構成のものでは、例えば配線の混雑緩和等の理由により、複数の外部回路接続端子間で、各ITOパッドに接続する配線層の層を異ならせる場合がある。この場合、各ITOパッドの高さが複数の外部回路接続端子間で異なったものとなる。このため、可撓性基板と素子基板におるITOパッドとをACF材を間に挟んで熱圧着すると、可撓性基板とITOパッドの各々との間のACF内における導電粒子の密度にばらつきが生じ、可撓性基板及び各ITOパッド間の抵抗が不均一になるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、電気光学装置における可撓性基板と各外部回路接続端子との間の抵抗を均一にする技術的手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、この発明は、電気光学物質を間に挟んで対向した素子基板および対向基板を有し、前記電気光学物質を駆動する回路が前記素子基板に形成された電気光学装置において、前記素子基板は、各層間に絶縁層を挟み、前記回路の各箇所に接続された複数層の配線層を有し、前記素子基板は、複数のITOで構成された電極パッドを有し、前記複数の電極パッドの各々の下部には、絶縁層を挟んで前記複数層の配線層のうちのいずれかの層の配線層が配置されるとともに、前記絶縁層を貫通して当該電極パッドを当該配線層に電気的に接続する複数のコンタクトホールが形成され、前記複数の電極パッドの前記対向基板と対向する面が同じ高さに位置していることを特徴とする電気光学装置を提供する。
【0007】
この発明によれば、素子基板における複数のITOパッドが同じ高さに位置しているので、可撓性基板とITOパッドとをAFC材を間に挟んで熱圧着した場合において、可撓性基板と各ITOパッドとの接触抵抗を均一にすることができる。
【0008】
好ましい態様において、前記各電極パッドは、可撓性基板が、導電性粒子を樹脂内に均一配合してなる膜である異方性導電膜を介して熱圧着され、前記コンタクトホールの直径が前記導電性粒子の直径よりも小さくなっている。この態様によれば、異方性導電膜の導通性粒子がコンタクトホール内に入り込むことはない。よって、導通性粒子がコンタクトホールからその奥の配線に達して配線の接続先の回路素子に誤動作を発生させる、という不具合が防止される。
【0009】
また、他の好ましい態様において、前記素子基板の前記対向基板との対向面には、前記対向基板と電気的に接続されるべき配線層を絶縁層から露出させる凹部と、この凹部の内表面を覆うITOで構成された電極パッドとが形成されており、この電極パッドと前記対向基板との間に基板間導通部材が介在している。この態様によると、2枚の基板を接合する際に一方の基板を他方の基板に押しつける力を強くし過ぎて導通不良が発生する、という事態が防止される。
【0010】
前記素子基板における前記各コンタクトホールを覆う複数個の電極パッドが同じ製造プロセスにおいて形成されてもよい。この態様によると、コンタクトホール及び凹部を別の製造プロセスにより形成する場合よりも、製造コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態である電気光学装置の斜視図である。
【図2】同電気光学装置の正面図及び左側面図である。
【図3】同電気光学装置におけるITOパッドとその周辺部分の拡大図及び断面図である。
【図4】同電気光学装置におけるITOパッドとその周辺部分の拡大図及び断面図である。
【図5】同電気光学装置におけるITOパッドとその周辺部分の断面図である。
【図6】同電気光学装置の効果を説明するための図である。
【図7】同電気光学装置の効果を説明するための図である。
【図8】同電気光学装置の効果を説明するための図である。
【図9】同電気光学装置の製造工程を説明するための図である。
【図10】同電気光学装置の製造工程を説明するための図である。
【図11】同電気光学装置を適用したパーソナルコンピューターを示す図である。
【図12】同電気光学装置を適用した携帯電話機を示す図である。
【図13】同電気光学装置を適用した情報携帯端末を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(A:構成)
以下、本発明の一実施形態である電気光学装置10について説明する。図1は、電気光学装置10の斜視図である。図2(A)は、電気光学装置10の正面図である。図2(B)は、電気光学装置10の左側面図である。電気光学装置10は、液晶層LQD(不図示)と、この液晶層LQDを挟んで対向する2枚の基板である素子基板11及び対向基板12とを有する。素子基板11は、薄い直方体状をなしている。対向基板12は、素子基板11よりも一回り小さい縦幅及び横幅をもった薄い直方体状をなしている。液晶層LQDは、電気光学物質である一又は複数のネマティック液晶の混合物により形成されている。素子基板11と対向基板12はシール部材13により接合されている。シール部材13は、対向基板12の基板周辺に沿って形成されるが、液晶を封入するために一部が開口している。このため、液晶の封入後にその開口部分が封止材51によって封止されている。
【0013】
素子基板11における対向基板12との対向面110上には、M列N行のマトリクスをなす画素電極P−m(m=1〜M)−n(n=1〜N)及びこれらをスイッチングする素子であるTFT111−m(m=1〜M)−n(n=1〜N)、TFT111−m(m=1〜M)−n(n=1〜N)を挟んで横幅方向に向い合う走査線駆動回路14L及び14Rなどの各種回路素子が設けられている。対向基板12における素子基板11との対向面120上には、画素電極P−m(m=1〜M)−n(n=1〜N)と対峙する対向電極P’(不図示)が設けられている。素子基板11の対向面110上における縦幅方向に隣り合うTFT111−m−n間には、横幅方向に延在する複数の走査線112−mが設けられている。各走査線112−mの一端は走査線駆動回路14Lに接続されている。各走査線112−mの他端は走査線駆動回路14Rに接続されている。また、各走査線112−mは各TFT111−m−nのゲート電極と接続されている。
【0014】
素子基板11における対向基板12との対向面110の一辺をなす端部には、可撓性基板90と当該電気光学装置10とを接続する外部回路接続端子としての役割を果たすL個のITOで構成されたITOパッド3−i(i=1〜L、電極パッド)が対向面110の一辺に沿った方向に並べて配設されている。これらのITOパッド3−i(i=1〜L)の対向基板12と対向する面3−i−1には、可撓性基板90の先端部がACF(具体的には、ある程度の軟性を有する樹脂内に導電性粒子を均一配合してなる膜)材91により熱圧着される。素子基板11の対向面110における四隅に相当する位置には4つのITOパッド4−k(k=1〜4)が配設されている。これらのITOパッド4−k(k=1〜4)の各々と対向基板12との間には、両基板11及び12を導通する役割を果たす部材である基板間導通部材93−kが介挿されている。基板間導通部材93−kは、ACF材91のものよりも高い硬性を有する球状樹脂に金をコーティングしたものである。
【0015】
ここで、本実施形態の特徴は、素子基板11の構造にある。以下では、この素子基板11の構造について詳細に説明する。図3(A)は、図2(A)におけるITOパッド3−1とその周辺部分の拡大図である。図3(B)は、図2(A)におけるITOパッド3−1とその周辺部分のA−A’線断面図である。図4(A)は、図2(A)におけるITOパッド3−2とその周辺部分の拡大図である。図4(B)は、図2(A)におけるITOパッド3−2とその周辺部分のB−B’線断面図である。図5は、図2(A)におけるITOパッド4−1とその周辺部分のC−C’線断面図である。
【0016】
これらの図に示すように、素子基板11は、ガラス基板Gの上に、絶縁層L1、絶縁層L2を順次積層させた積層体である。素子基板11において、素子基板11におけるL個のITOパッド3−i(i=1〜L)は、ガラス基板G上の配線層WRL1と、絶縁層L2上の配線層WRL2とからなる多層配線を介して素子基板11内の回路各部と接続される。ここで、配線層WRL2の各配線には、例えば基板間導通部材93−kに接続されている配線や走査線駆動回路14L及び14Rに接続されている配線が含まれている。また、配線層WRL1の各配線にはTFT111−m−nのソース電極に至る配線等が含まれている。そして、L個のITOパッド3−i(i=1〜L)には、絶縁層L2上の配線層WRL2を介して素子基板11内の回路に接続されるもの(例えば、図3(A)および(B)に示すITOパッド3−1)と、ガラス基板G上の配線層WRL1を介して素子基板11内の回路に接続されるもの(例えば、図4(A)および(B)に示すITOパッド3−2)とが混在している。
【0017】
図3(B)に示すように、配線層WRL2と対向しているITOパッド3−1は、厚さH1を有する皿状部PLTL2を有している。この皿状部PLTL2の下部には、絶縁層L2を貫通して配線層WRL2に至るコンタクトホールCHL2が形成されている。そして、皿状部PLTL2には、ITO材料からなり、コンタクトホールCHL2内を通って配線層WRL2に達する脚部LGL2が?がっている。また、図4(B)に示すように、配線層WRL1と対向しているITOパッド3−2は、厚さH1を有する皿状部PLTL1を有している。この皿状部PLTL1の下部には、絶縁層L2およびL1を貫通して配線層WRL1に至るコンタクトホールCHL1が形成されている。そして、皿状部PLTL1には、ITO材料からなり、コンタクトホールCHL1内を通って配線層WRL1に達する脚部LGL1が?がっている。ここで、コンタクトホールCHL2およびCHL1は図3(A)および図4(A)に示すように正方形をなすITOパッド3−iの4辺に沿って複数個並べて穿設されている。また、各コンタクトホールCHL2及びCHL1の直径φ1は、ACF材91内における導電性粒子の直径φ2よりも小さくなっている。
【0018】
上述したように、可撓性基板90の先端部とITOパッド3−i(i=1〜L)とを熱圧着する素材であるACF材91は、導電性粒子を均一配合してなる薄い樹脂からなる。このACF材91により可撓性基板90とITOパッド3−i(i=1〜L)とを熱圧着した状態において、可撓性基板90と各ITOパッド3−iとの間のACF材91は熱により溶解し、ACF材91内の導電性粒子の密度が密になる。これにより、可撓性基板90と各ITOパッド3−iとが導通する。この導通状態における可撓性基板90及び各ITOパッド3−i間の抵抗は、ACF材91内における導電性粒子の密度に依存する。
【0019】
図5に示すように、素子基板11の対向面110における四隅に相当する位置には、絶縁層L2内の配線層WRL2を露出させる凹部DP−kが形成されており、この凹部DP−kの内表面がITOパッド4−kにより覆われている。このITOパッド4−kは、凹部DP−kに沿って凹んだ凹状をなしている。ITOパッド4−kにおける対向基板12の側に開口した部分の上縁は僅かな厚みだけ対向面110から対向基板12側に食み出しており、この食み出した部分の外周は外側に僅かに拡がっている。また、ITOパッド4−kの底面はそのほぼ全面に亙って絶縁層L2の配線層WRL2と接触している。基板間導通部材93−kはこのITOパッド4−kにおける凹んだ部分に収められている。
【0020】
この電気光学装置10において、可撓性基板90上に搭載されている液晶パネル駆動IC(不図示)からITOパッド3−iに共通電位CLL(グランド)が供給されると、この電位CLLが、絶縁層L2内の配線層WRL2、ITOパッド4−k(k=1〜4)、及び基板間導通部材93−k(k=1〜4)を介して対向基板12に印加され、対向基板12における対向電極P’の電位がCLLになる。この状態において、液晶パネル駆動ICは、ITOパッド3−iに走査線駆動回路14L及び14Rの駆動信号であるタイミング信号CLを供給するとともに、ITOパッド3−iに各画素の濃度を示す画像信号VIDを供給する。タイミング信号CLは絶縁層L2内の配線層WRL2を介して走査線駆動回路14L及び14Rに供給され、同回路14L及び14Rがこの信号CLに従って走査線112−m(m=1〜M)を順次アクティブレベルにする操作を繰り返す。また、画像信号VIDは絶縁層L1の配線層WRL1を介してTFT111−m−nのソース電極に供給され、TFT111−m−nがこの信号VIDに従って画素電極P−m−nを駆動させる操作を繰り返す。この画素電極P−m−nの駆動により、各画素電極P−m−nと対向電極P’との電位差が変化し、この電位差に応じて画素(各画素電極P−m−nと対向電極P’に挟まれた液晶)の透過光量が変化する。これにより、M×N画素の解像度の画像が当該電気光学装置10の正面に向けて照射される。
【0021】
以上が、本実施形態である電気光学装置10の構成の詳細である。以上説明した本実施形態によると、次の4つの効果が得られる。
第1に、本実施形態では、ITOパッド3−iの対向基板12と対向する側の面3−i−1は、配線層WRL1に接続されたもの(面3−2−1)も配線層WRL2(面3−1−1)に接続されたものも同じ高さに位置する。このため、可撓性基板90とITOパッド3−i(i=1〜L)の表面3−i−1とをACF材91により熱圧着した場合における可撓性基板90及びITOパッド3−i(i=1〜L)間の導電性粒子の密度のばらつきが少なくなり、可撓性基板90及びITOパッド3−i(i=1〜L)間の抵抗を均一にすることができる。
【0022】
第2に、本実施形態では、素子基板11のコンタクトホールCHL1、CHL2の直径φ1がACF材91の導電性粒子の直径φ2よりも小さくなっている。このため、ITOパッド3−iに塞がれておらず対向面110の側に露出しているコンタクトホールCHL1、CHL2があった場合でも、ACF材91の導電性粒子がそのコンタクトホールCHL1、CHL2内に入り込むことはない。よって、導電性粒子がコンタクトホールCHL1、CHL2からその奥の配線層WRL1,WRL2に到達して配線層WRL1,WRL2の接続先の回路素子に誤動作を発生させる、という不具合が防止される。
【0023】
第3に、本実施形態では、素子基板11の対向面110における液晶層LQDを包囲する位置に、絶縁層L2内の配線層WRL2を露出させる凹部DP−kとこの凹部DP−kに嵌め込まれたITOパッド4−kとが形成されており、素子基板11における凹部DP−k及びITOパッド4−kと対向基板12との間に基板間導通部材93−kが介挿されている。すなわち、本実施形態では、基板間導通部材93−kを保持する部分の構造を従来の電気光学装置のものと同じにしている。本実施形態では、ITOパッド4−kをこのような構造にすることにより、基板11及び12をシール部材13により接合する際に基板12を基板11側に強く押しつけ過ぎて導通不良になる、という事態の発生を防止することができる。
【0024】
この効果について、詳細に説明する。上述したように、ACFはある程度の軟性をもったファイバーを金コーティングしたものを導電材として用いる。このため、可撓性基板90及びITOパッド3−iの熱圧着時における可撓性基板90をITOパッド3−i側に押しつける力Fは両者間のACF材91の横方向への伸長によってある程度吸収される(図6の概念図参照)。これに対し、基板間導通部材93−kはACF材91のものよりも高い硬性を持ったファイバーを金コーティングしたものを導電材として用いる。このため、電気光学装置10におけるITOパッド4−kをITOパッド3−iと同じ形状を有するITOパッド4’−kにすると、対向基板12を素子基板11の側に押しつける力Fが強すぎた場合に両基板12及び11間に挟まれた基板間導通部材93−kが素子基板11のITOパッド4’−kを突き破り、その奥の絶縁層L2に達してしまう(図7の概念図参照)。絶縁層L2のインピーダンスはITOよりも十分に高いため、この場合、素子基板11における配線層WRL2及び対向基板12間における導通不良が発生する。
【0025】
ここで、本実施形態のように、ITOパッド4−kの構造を従来のものと同じにしたとしても、基板間導通部材93−kがITOパッド4−kを突き破ることは同様に起こり得る。しかし、本実施形態では、ITOパッド4−kの底面が配線層WRL2と接しているため、ITOパッド4−kを突き破った基板基板間導通部材93−kは配線層WRL2と直接接触することになる(図8の概念図参照)。よって、素子基板11における配線層WRL2と対向基板12との間の導通が悪化することはない。以上の理由から、本実施形態によると、基板11及び12を接合する際に基板12を基板11側に強く押しつけ過ぎて導通不良になる、という事態の発生を防止することができる。
【0026】
第4に、本実施形態では、全てのITOパッド3−iを同一製造工程において形成するため、ITOパッド3−iの膜厚を均一にすることができ、ACFとITOパッド3−iとの接触抵抗のみならず、ITOパッド3−i自体の抵抗を均一にすることができる。また、工程数が減るため、製造コストを低減することができる。以下、従来の電気光学装置の製造方法と本実施形態による電気光学装置の製造方法を対比しつつ、この効果について詳述する。
【0027】
図9は従来の電気光学装置の製造方法を示す図である。従来の電気光学装置の製造方法では、まず、ガラス基板Gの上に配線層WRL1を形成し、次いで本実施形態におけるITOパッド3−2等に相当するITOパッド3−2’を配線層WRL1の上に形成する(図9(a)参照)。次いで絶縁膜L11を積層する(図9(b)参照)。そして、絶縁層L11の上に配線層WRL2を形成し、次いで本実施形態におけるITOパッド3−1等に相当するITOパッド3−1’を配線層WRL2の上に形成する(図9(c)参照)。次いで絶縁膜L12を積層する(図9(d)参照)。そして、ITOパッド3−1’および3−2’の表面を露出させる凹部CHaおよびCHbを設ける(図9(e)参照)。そして、このようにITOパッド3−1’および3−2’の表面を露出させた状態において、ACFを利用した可撓性基板とITOパッド3−1’および3−2’との接着を行うのである。
【0028】
このように従来の電気光学装置の製造方法では、本実施形態におけるITOパッド3−1に相当するITOパッド3−1’と、ITOパッド3−2に相当するITOパッド3−2’を異なる製造工程において形成するため、ITOパッド3−1’の膜厚Haと、ITOパッド3−2’の膜厚Hbが異なったものになるという問題があった。
【0029】
これに対し、本実施形態では、全てのITOパッド3−1、3−2…を同一の製造工程において形成するため、この問題は生じない。
【0030】
図10は、本実施形態による電気光学装置の製造方法を示すものである。本実施形態による電気光学装置の製造方法では、まず、ガラス基板Gの上に配線層WRL1を形成し(図10(a)参照)、その上に絶縁層L1を積層する(図10(b)参照)。次いで絶縁層L1の上に配線層WRL2を形成し(図10(c)参照)、その上に絶縁層L2を積層する(図10(d)参照)。次いで絶縁層L2を貫通して配線層WRL2に至るコンタクトホールCHL2と、絶縁層L2およびL1を貫通して配線層WRL1に至るコンタクトホールCHL1および上述した凹部DP−k(図示略)を形成する(図10(e)参照)。そして、配線層WRL1と対向するITOパッド3−1等および配線層WRL2と対向するITOパッド3−2等を形成する。
【0031】
以上のように、本実施形態では、配線層WRL1と対向するITOパッド3−1等および配線層WRL2と対向するITOパッド3−2等が同一製造工程において形成される。従って、ITOパッド3−1等の膜厚H1とITOパッド3−2等の膜厚H2を同じにすることができる。
【0032】
(B:変形)
以上、本発明の実施形態について説明したが、この実施形態に以下に述べる変形を加えても勿論良い。
(1)上記実施形態における電気光学装置10は、2層の絶縁層L2及びL1をガラス基板G上に積層したものであった。しかし、電気光学装置10における絶縁層の積層数を3層以上にしてもよい。
【0033】
(2)上記実施形態における電気光学装置10では、素子基板11の対向面110における基板間導通端子93−kと走査線駆動回路14L及び14Rが絶縁層L2内の配線層WRL2を介してITOパッド3−iと接続されており、素子基板11の対向面110におけるTFT111−m−nのソース電極が絶縁層L1内の配線層WRL1を介してITOパッド3−iと接続されていた。しかし、対向面110上における各種回路素子とITOパッド3−iとを接続する配線を埋設する絶縁層を入れ替えてもよい。
【0034】
(3)上記実施形態における電気光学装置10は、種々の電子機器に適用できる。図11に、電気光学装置10を適用したモバイル型のパーソナルコンピューターの構成を示す。パーソナルコンピューター2000は、表示ユニットとしての電気光学装置10と本体部2010を備える。本体部2010には、電源スイッチ2001及びキーボード2002が設けられている。
【0035】
図12に、電気光学装置10を適用した携帯電話機の構成を示す。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001及びスクロールボタン3002、並びに表示ユニットとしての電気光学装置10を備える。スクロールボタン3002を操作することによって、電気光学装置10に表示される画面がスクロールされる。
【0036】
図13に、電気光学装置10を適用した情報携帯端末(PDA:Personal Digital Assistants)の構成を示す。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001及び電源スイッチ4002、並びに表示ユニットとしての電気光学装置10を備える。電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が電気光学装置10に表示される。
【0037】
なお、電気光学装置10が適用される電子機器としては、図11〜13に示すものの他、デジタルスチルカメラ、液晶テレビ、ビューファインダー型、モニター直視型のビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、ワープロ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。そして、これらの各種電子機器の表示部として、前述した電気光学装置10が適用可能である。
【符号の説明】
【0038】
3,4…ITOパッド、10…電気光学装置、11…素子基板、12…対向基板、13…シール部材、14…走査線駆動回路、110,120…対向面、111…TFT、112…走査線、90…可撓性基板、91…ACF材、93…基板間導通部材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学物質を間に挟んで対向した素子基板および対向基板を有し、前記電気光学物質を駆動する回路が前記素子基板に形成された電気光学装置において、
前記素子基板は、各層間に絶縁層を挟み、前記回路の各箇所に接続された複数層の配線層を有し、
前記素子基板は、複数のITOで構成された電極パッドを有し、
前記複数の電極パッドの各々の下部には、絶縁層を挟んで前記複数層の配線層のうちのいずれかの層の配線層が配置されるとともに、前記絶縁層を貫通して当該電極パッドを当該配線層に電気的に接続する複数のコンタクトホールが形成され、前記複数の電極パッドの前記対向基板と対向する面が同じ高さに位置していることを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記各電極パッドは、可撓性基板が、導電性粒子を樹脂内に均一配合してなる膜である異方性導電膜を介して熱圧着され、前記コンタクトホールの直径が前記導電性粒子の直径よりも小さくなっていることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記素子基板の前記対向基板との対向面には、前記対向基板と電気的に接続されるべき配線層を絶縁層から露出させる凹部と、この凹部の内表面を覆うITOで構成された電極パッドとが形成されており、この電極パッドと前記対向基板との間に基板間導通部材が介在していることを特徴とする請求項1また2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記素子基板における前記各コンタクトホールを覆う複数個の電極パッドが同じ製造プロセスにおいて形成されることを特徴とする請求項3に記載の電気光学装置。
【請求項1】
電気光学物質を間に挟んで対向した素子基板および対向基板を有し、前記電気光学物質を駆動する回路が前記素子基板に形成された電気光学装置において、
前記素子基板は、各層間に絶縁層を挟み、前記回路の各箇所に接続された複数層の配線層を有し、
前記素子基板は、複数のITOで構成された電極パッドを有し、
前記複数の電極パッドの各々の下部には、絶縁層を挟んで前記複数層の配線層のうちのいずれかの層の配線層が配置されるとともに、前記絶縁層を貫通して当該電極パッドを当該配線層に電気的に接続する複数のコンタクトホールが形成され、前記複数の電極パッドの前記対向基板と対向する面が同じ高さに位置していることを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記各電極パッドは、可撓性基板が、導電性粒子を樹脂内に均一配合してなる膜である異方性導電膜を介して熱圧着され、前記コンタクトホールの直径が前記導電性粒子の直径よりも小さくなっていることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記素子基板の前記対向基板との対向面には、前記対向基板と電気的に接続されるべき配線層を絶縁層から露出させる凹部と、この凹部の内表面を覆うITOで構成された電極パッドとが形成されており、この電極パッドと前記対向基板との間に基板間導通部材が介在していることを特徴とする請求項1また2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記素子基板における前記各コンタクトホールを覆う複数個の電極パッドが同じ製造プロセスにおいて形成されることを特徴とする請求項3に記載の電気光学装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−203056(P2012−203056A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65165(P2011−65165)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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