説明

電気機器の冷却構造

【課題】小型化を図りながら複数の冷却媒体通路における冷却媒体の流量のばらつきを抑制することが可能な電気機器の冷却構造を提供する。
【解決手段】電気機器の冷却構造は、インバータと、インバータ用の冷却媒体が流れる複数の冷却媒体通路724と、複数の冷却媒体通路724に供給される冷却媒体が流入する入口部722とを備え、複数の冷却媒体通路724は、入口部722と複数の冷却媒体通路724とが並ぶ方向と交差する方向に延在する。そして、電気機器の冷却構造は、冷却媒体の流れを抑制することにより、各々の冷却媒体通路724への冷却媒体の分散を促進する冷却媒体分散機構をさらに備える。冷却媒体分散機構は、少なくとも1つの冷却媒体通路724を流れる冷却媒体の流量を抑制する流量抑制機能を有する。この流量抑制機能は、冷却媒体通路724上に設けられた壁726A,726B,726Cにより実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器の冷却構造に関し、特に、複数の冷却媒体通路を有する電気機器の冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
入口部から冷却媒体通路へ向かう冷却媒体の流れ方向と交差する方向に延在する冷却媒体通路(横流し水路)を有する電気機器の冷却構造が従来から知られている。
【0003】
たとえば、米国特許第5504378号明細書(特許文献1)においては、横流れ水路を有するスイッチングモジュールの直接冷却構造が開示されている。
【0004】
また、特開2004−28403号公報(特許文献2)においては、冷却水の入口部と出口部とが一方の辺に設けられた発熱体冷却器が開示されている。
【0005】
また、特開2005−64382号公報(特許文献3)においては、冷却水の入口部と出口部とが一方の辺に設けられた、複数の電子部品を両面から冷却するための冷却器が開示されている。
【特許文献1】米国特許第5504378号明細書
【特許文献2】特開2004−28403号公報
【特許文献3】特開2005−64382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の冷却構造では、冷却媒体の入口部から離れた箇所において、冷却媒体通路に冷却媒体が流れにくい場合がある。この場合、複数の冷却媒体通路に流入する冷却媒体の流量が、各々の冷却媒体通路ごとにばらつくこととなる。これに対し、入口部から離れた冷却媒体通路の幅を拡大すると、上記ばらつきを抑制することはできるが、一方で、冷却構造が大型化する。
【0007】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、小型化を図りながら複数の冷却媒体通路における冷却媒体の流量のばらつきを抑制することが可能な電気機器の冷却構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電気機器の冷却構造は、電気機器と、電気機器用の冷却媒体が流れる複数の冷却媒体通路と、複数の冷却媒体通路に供給される冷却媒体が流入する入口部とを備え、複数の冷却媒体通路は、入口部と複数の冷却媒体通路とが並ぶ方向と交差する方向に延在する。そして、電気機器の冷却構造は、冷却媒体の流れを抑制することにより、各々の冷却媒体通路への冷却媒体の分散を促進する冷却媒体分散機構をさらに備える。
【0009】
上記構成によれば、冷却媒体通路の幅を過度に拡大することなく、複数の冷却媒体通路に流入する冷却媒体の流量をコントロールすることができる。この結果、電気機器の冷却構造の小型化を図りながら、複数の冷却媒体通路における冷却媒体の流量のばらつきを抑制することができる。
【0010】
上記電気機器の冷却構造において、好ましくは、冷却媒体分散機構は、少なくとも1つの冷却媒体通路を流れる冷却媒体の流量を抑制する流量抑制機能を有する。
【0011】
上記構成によれば、流量抑制機能を有する冷却媒体通路を選択的に設けることにより、冷却媒体の分散を促進することができる。また、冷却性能を要求する箇所の近傍に流量抑制機能を設けることにより、冷却媒体の分散を促進することに加えて、当該箇所での乱流の生成を促進して、冷却効率の向上を図ることができる。
【0012】
上記電気機器の冷却構造において、好ましくは、流量抑制機能は、冷却媒体通路と交差するように該冷却媒体通路上に設けられた壁により実現される。これにより、簡単な構造で流量抑制機能を得ることができる。
【0013】
上記電気機器の冷却構造において、好ましくは、壁は、入口部からの距離が互いに異なる複数の冷却媒体通路上に設けられ、複数の冷却媒体通路に設けられた壁の高さが互いに異なる。これにより、入口部からの距離に応じて流量抑制の程度を変化させることができる。結果として、複数の冷却媒体通路における冷却媒体の流量のばらつきを抑制することができる。
【0014】
ここで、入口部から遠い冷却媒体通路上に位置する壁の高さは相対的に低く、入口部に近い冷却媒体通路上に位置する壁の高さは相対的に高いことが好ましい。これにより、入口部から遠い冷却媒体通路への冷却媒体の流入を促進することができる。結果として、複数の冷却媒体通路における冷却媒体の流量のばらつきを抑制することができる。
【0015】
上記電気機器の冷却構造において、好ましくは、壁は、入口部に近い冷却媒体通路上に選択的に設けられる。これにより、入口部に近い冷却媒体通路への冷却媒体の流入を抑制して、入口部から遠い冷却媒体通路への冷却媒体の流入を促進することができる。結果として、複数の冷却媒体通路における冷却媒体の流量のばらつきを抑制することができる。
【0016】
上記電気機器の冷却構造において、1つの例として、電気機器はインバータを含む。この場合は、インバータの冷却を効率よく行なうことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電気機器の冷却構造の小型化を図りながら、複数の冷却媒体通路における冷却媒体の流量のばらつきを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明に基づく電気機器の冷却構造の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0019】
図1は、本発明の1つの実施の形態に係る電気機器の冷却構造を含む駆動ユニットの構造の一例を概略的に示す図である。図1に示される例では、駆動ユニット1は、ハイブリッド車両に搭載される駆動ユニットであり、モータジェネレータ100と、ハウジング200と、減速機構300と、ディファレンシャル機構400と、ドライブシャフト受け部500と、端子台600とを含んで構成される。
【0020】
モータジェネレータ100は、電動機または発電機としての機能を有する回転電機であり、軸受120を介してハウジング200に回転可能に取付けられた回転シャフト110と、回転シャフト110に取付けられたロータ130と、ステータ140とを有する。
【0021】
ロータ130は、たとえば、鉄または鉄合金などの板状の磁性体を積層することにより構成されたロータコアと、該ロータコアに埋設された永久磁石とを有する。永久磁石は、たとえば、ロータコアの外周近傍にほぼ等間隔を隔てて配置される。なお、ロータコアを圧粉磁心により構成してもよい。
【0022】
ステータ140は、リング状のステータコア141と、ステータコア141に巻回されるステータコイル142と、ステータコイル142に接続されるバスバー143とを有する。バスバー143は、ハウジング200に設けられた端子台600および給電ケーブル700Aを介してPCU(Power Control Unit)700と接続される。また、PCU700は、給電ケーブル800Aを介してバッテリ800に接続される。これにより、バッテリ800とステータコイル142とが電気的に接続される。
【0023】
ステータコア141は、たとえば、鉄または鉄合金などの板状の磁性体を積層することにより構成される。ステータコア141の内周面上には複数のティース部(図示せず)および該ティース部間に形成される凹部としてのスロット部(図示せず)が形成されている。スロット部は、ステータコア141の内周側に開口するように設けられる。なお、ステータコア141を圧粉磁心により構成してもよい。
【0024】
3つの巻線相であるU相、V相およびW相を含むステータコイル142は、スロット部に嵌り合うようにティース部に巻き付けられる。ステータコイル142のU相、V相およびW相は、互いに円周上でずれるように巻き付けられる。バスバー143は、それぞれステータコイル142のU相、V相およびW相に対応するU相、V相およびW相を含む。
【0025】
給電ケーブル700Aは、U相ケーブルと、V相ケーブルと、W相ケーブルとからなる三相ケーブルである。バスバー143のU相、V相およびW相がそれぞれ給電ケーブル700AにおけるU相ケーブル、V相ケーブルおよびW相ケーブルに接続される。
【0026】
モータジェネレータ100から出力された動力は、減速機構300からディファレンシャル機構400を介してドライブシャフト受け部500に伝達される。ドライブシャフト受け部500に伝達された駆動力は、ドライブシャフト(図示せず)を介して車輪(図示せず)に回転力として伝達されて、車両を走行させる。
【0027】
一方、ハイブリッド車両の回生制動時には、車輪は車体の慣性力により回転させられる。車輪からの回転力によりドライブシャフト受け部500、ディファレンシャル機構400および減速機構300を介してモータジェネレータ100が駆動される。このとき、モータジェネレータ100が発電機として作動する。モータジェネレータ100により発電された電力は、PCU700におけるインバータを介してバッテリ800に蓄えられる。
【0028】
駆動ユニット1には、レゾルバロータと、レゾルバステータとを有するレゾルバ(図示せず)が設けられている。レゾルバロータは、モータジェネレータ100の回転シャフト110に接続されている。また、レゾルバステータは、レゾルバステータコアと、該コアに巻回されたレゾルバステータコイルとを有する。上記レゾルバにより、モータジェネレータ100のロータ130の回転角度が検出される。検出された回転角度は、PCU700へ伝達される。PCU700は、検出されたロータ130の回転角度と、外部ECU(Electrical Control Unit)からのトルク指令値とを用いてモータジェネレータ100を駆動するための駆動信号を生成し、その生成した駆動信号をモータジェネレータ100へ出力する。
【0029】
図2は、PCU700の主要部の構成を示す回路図である。図2を参照して、PCU700は、コンバータ710と、インバータ720と、制御装置730と、コンデンサC1,C2と、電源ラインPL1〜PL3と、出力ライン740U,740V,740Wとを含む。コンバータ710は、バッテリ800とインバータ720との間に接続され、インバータ720は、出力ライン740U,740V,740Wを介してモータジェネレータ100と接続される。
【0030】
コンバータ710に接続されるバッテリ800は、たとえば、ニッケル水素やリチウムイオン等の二次電池である。バッテリ800は、発生した直流電圧をコンバータ710に供給し、また、コンバータ710から受ける直流電圧によって充電される。
【0031】
コンバータ710は、パワートランジスタQ1,Q2と、ダイオードD1,D2と、リアクトルLとからなる。パワートランジスタQ1,Q2は、電源ラインPL2,PL3間に直列に接続され、制御装置730からの制御信号をベースに受ける。ダイオードD1,D2は、それぞれパワートランジスタQ1,Q2のエミッタ側からコレクタ側へ電流を流すようにパワートランジスタQ1,Q2のコレクタ−エミッタ間にそれぞれ接続される。リアクトルLは、バッテリ800の正極と接続される電源ラインPL1に一端が接続され、パワートランジスタQ1,Q2の接続点に他端が接続される。
【0032】
このコンバータ710は、リアクトルLを用いてバッテリ800から受ける直流電圧を昇圧し、その昇圧した昇圧電圧を電源ラインPL2に供給する。また、コンバータ710は、インバータ720から受ける直流電圧を降圧してバッテリ800を充電する。
【0033】
インバータ720は、U相アーム750U、V相アーム750VおよびW相アーム750Wからなる。各相アームは、電源ラインPL2,PL3間に並列に接続される。U相アーム750Uは、直列に接続されたパワートランジスタQ3,Q4からなり、V相アーム750Vは、直列に接続されたパワートランジスタQ5,Q6からなり、W相アーム750Wは、直列に接続されたパワートランジスタQ7,Q8からなる。ダイオードD3〜D8は、それぞれパワートランジスタQ3〜Q8のエミッタ側からコレクタ側へ電流を流すようにパワートランジスタQ3〜Q8のコレクタ−エミッタ間にそれぞれ接続される。そして、各相アームにおける各パワートランジスタの接続点は、出力ライン740U,740V,740Wを介してモータジェネレータ100の各相コイルの反中性点側にそれぞれ接続されている。
【0034】
このインバータ720は、制御装置730からの制御信号に基づいて、電源ラインPL2から受ける直流電圧を交流電圧に変換してモータジェネレータ100へ出力する。また、インバータ720は、モータジェネレータ100によって発電された交流電圧を直流電圧に整流して電源ラインPL2に供給する。
【0035】
コンデンサC1は、電源ラインPL1,PL3間に接続され、電源ラインPL1の電圧レベルを平滑化する。また、コンデンサC2は、電源ラインPL2,PL3間に接続され、電源ラインPL2の電圧レベルを平滑化する。
【0036】
制御装置730は、モータジェネレータ100の回転子の回転角度、モータトルク指令値、モータジェネレータ100の各相電流値、およびインバータ720の入力電圧に基づいてモータジェネレータ100の各相コイル電圧を演算し、その演算結果に基づいてパワートランジスタQ3〜Q8をオン/オフするPWM(Pulse Width Modulation)信号を生成してインバータ720へ出力する。
【0037】
また、制御装置730は、上述したモータトルク指令値およびモータ回転数に基づいてインバータ720の入力電圧を最適にするためのパワートランジスタQ1,Q2のデューティ比を演算し、その演算結果に基づいてパワートランジスタQ1,Q2をオン/オフするPWM信号を生成してコンバータ710へ出力する。
【0038】
さらに、制御装置730は、モータジェネレータ100によって発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ800を充電するため、コンバータ710およびインバータ720におけるパワートランジスタQ1〜Q8のスイッチング動作を制御する。
【0039】
このPCU700においては、コンバータ710は、制御装置730からの制御信号に基づいて、バッテリ800から受ける直流電圧を昇圧して電源ラインPL2に供給する。そして、インバータ720は、コンデンサC2によって平滑化された直流電圧を電源ラインPL2から受け、その受けた直流電圧を交流電圧に変換してモータジェネレータ100へ出力する。
【0040】
また、インバータ720は、モータジェネレータ100の回生動作によって発電された交流電圧を直流電圧に変換して電源ラインPL2へ出力する。そして、コンバータ710は、コンデンサC2によって平滑化された直流電圧を電源ラインPL2から受け、その受けた直流電圧を降圧してバッテリ800を充電する。
【0041】
図3は、本実施の形態に係るインバータ720の冷却構造の構成を示した図である。また、図4は、図3に示されるケーシングの平面図である。そして、図5は、図4におけるV−V断面図である。なお、図4,図5においては、ケーシング721の蓋の図示は省略されている。
【0042】
図3〜図5を参照して、ケーシング721は、たとえばアルミニウムなどからなるダイカストケースである。ケーシング721内には、たとえばLLC(Long Life Coolant)などの冷却媒体が流れる。冷却媒体は、入口部722から矢印INの方向に沿ってケーシング721内に流入し、出口部723から矢印OUTの方向に沿ってケーシング721外に流出する。ケーシング721から流出した冷却媒体は、ラジエータ760に送られて冷却される。そして、冷却媒体は、入口部722から再びケーシング721に流入する。以上のようにして、ケーシング721上に搭載されたインバータ720(図3においては、パワートランジスタQ3およびダイオードD3のみ表示)の冷却が促進される。なお、冷却媒体の循環は、ウォータポンプ770により行なわれる。また、冷却媒体として、冷却水、不凍液などが使用されてもよい。
【0043】
ケーシング721内には、複数の冷却媒体通路724が形成されている。複数の冷却媒体通路724は、電気素子の搭載面に対して垂直に突出するように等間隔に設けられたフィン725により区画されている。これにより、同じ方向に延在する複数の冷却媒体通路724が形成される。
【0044】
冷却媒体通路724は、入口部722から複数の冷却媒体通路724へ向かう冷却媒体の流れ方向(図4中の矢印α方向)と交差する方向に延在している。ここでは、矢印α方向と、冷却媒体通路724の延在方向とが垂直に交差している。
【0045】
冷却媒体通路724上には、壁726A,726B,726Cが設けられている。なお、フィン725および壁726A,726B,726Cは、ケーシング721と一体に形成される。
【0046】
図6は、比較例に係る電気機器の冷却構造を示した平面図である。図6を参照して、本比較例においては、上述した壁726A,726B,726Cは設けられていない。この場合、入口部722に近い箇所(図6中のA部)に位置する冷却媒体通路724には冷却媒体が流入しやすく、入口部722から遠い箇所(図6中のB部)に位置する冷却媒体通路724には冷却媒体が流入しにくい。したがって、複数の冷却媒体通路724間で、冷却媒体の流量にばらつきが生じ、インバータ720の冷却性能が低下することが懸念される。
【0047】
これに対し、本実施の形態に係る冷却構造では、図4,図5に示すように、壁726Aを壁726Bよりも高く形成し、壁726Bを壁726Cよりも高く形成している。すなわち、入口部722から遠い壁の高さを相対的に低くしている。また、入口部722から最も遠い部分には、壁を設けていない。このようにすることで、入口部722に近い冷却媒体通路724への冷却媒体の流入を抑制しながら、入口部722から離れた冷却媒体通路724への冷却媒体の流入を促進することができる。この結果、複数の冷却媒体通路724における冷却媒体の流量のばらつきを抑制することができる。
【0048】
また、上記のような壁726A,726B,726Cが設けられることにより、壁726A,726B,726Cの下流側で乱流の形成が促進され、冷却性能が向上することが期待できる。
【0049】
なお、図4,図5の例では、壁726A,726B,726Cの各々の高さは、その幅方向全体にわたって一定であるが、壁726A,726B,726Cの各々の高さが、入口部722から遠ざかるにつれて低くなるようにしてもよい。
【0050】
上述した内容について要約すると、以下のようになる。すなわち、本実施の形態に係る電気機器の冷却構造は、「電気機器」としてのインバータ720と、インバータ720用の冷却媒体が流れる複数の冷却媒体通路724と、複数の冷却媒体通路724に供給される冷却媒体が流入する入口部722とを備え、複数の冷却媒体通路724は、入口部722と複数の冷却媒体通路724とが並ぶ方向と交差する方向に延在する。そして、電気機器の冷却構造は、冷却媒体の流れを抑制することにより、各々の冷却媒体通路724への冷却媒体の分散を促進する冷却媒体分散機構をさらに備える。より具体的には、冷却媒体分散機構は、少なくとも1つの冷却媒体通路724を流れる冷却媒体の流量を抑制する流量抑制機能を有する。この流量抑制機能は、冷却媒体通路724と交差するように冷却媒体通路724上に設けられた壁726A,726B,726Cにより実現される。このようにすることで、簡単な構造により流量抑制機能を得ることができる。
【0051】
壁726A,726B,726Cは、入口部722からの距離が互いに異なる複数の冷却媒体通路724上に設けられている。そして、壁726A,726B,726Cの高さは互いに異なる。より具体的には、入口部722から遠い冷却媒体通路724上に位置する壁726Cの高さは相対的に低く、入口部722に近い冷却媒体通路724上に位置する壁724Aの高さは相対的に高い。
【0052】
上記のように、壁726A,726B,726Cの高さを異ならせることで、入口部722からの距離に応じて流量抑制の程度を変化させることができる。より具体的には、入口部722に近い壁726Aの高さを高くし、入口部722から遠い壁726Cの高さを低くすることで、入口部722から遠い冷却媒体通路724への冷却媒体の流入を促進することができる。
【0053】
また、入口部722から最も遠い箇所に位置する冷却媒体通路724上には、上述した壁が設けられていない。換言すると、壁726A,726B,726Cは、入口部722に近い冷却媒体通路724上に選択的に設けられている。このようにすることで、入口部722に近い冷却媒体通路724への冷却媒体の流入を抑制して、入口部722から遠い冷却媒体通路724への冷却媒体の流入を促進することができる。
【0054】
なお、本実施の形態では、壁726A,726B,726Cの高さを変化させることにより冷却媒体の分散を促進しているが、たとえば、壁726A,726B,726Cの高さを一定にした上で、入口部722から離れた壁726Cに選択的に孔を設けたり、壁726A,726B,726Cのいずれにも孔を設けるが、その孔の大きさを互いに異ならせる(具体的には、壁726Aで相対的に小さく、壁726Cで相対的に大きくする)ことで冷却媒体の分散を促進してもよい。
【0055】
本実施の形態に係る冷却構造によれば、冷却媒体通路724の幅を過度に拡大することなく、複数の冷却媒体通路724に流入する冷却媒体の流量をコントロールすることができる。この結果、インバータ720の冷却構造の小型化を図りながら、複数の冷却媒体通路724における冷却媒体の流量のばらつきを抑制することができる。
【0056】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の1つの実施の形態に係る電気機器の冷却構造を含む駆動ユニットの構造の一例を概略的に示す図である。
【図2】図1に示されるPCUの主要部の構成を示す回路図である。
【図3】本発明の1つの実施の形態に係る電気機器の冷却構造の全体構成を示した図である。
【図4】図3に示されるケーシングの平面図である。
【図5】図4におけるV−V断面図である。
【図6】比較例に係る電気機器の冷却構造におけるケーシングの平面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 駆動ユニット、100 モータジェネレータ、110 回転シャフト、120 軸受、130 ロータ、140 ステータ、141 ステータコア、142 ステータコイル、143 バスバー、200 ハウジング、300 減速機構、400 ディファレンシャル機構、500 ドライブシャフト受け部、600 端子台、700 PCU、700A,800A 給電ケーブル、710 コンバータ、720 インバータ、721 ケーシング、722 入口部、723 出口部、724 冷却媒体通路、725 フィン、726A,726B,726C 壁、730 制御装置、740U,740V,740W 出力ライン、750U U相アーム、750V V相アーム、750W W相アーム、760 ラジエータ、770 ウォータポンプ、800 バッテリ、C1,C2 コンデンサ、D1〜D8 ダイオード、L リアクトル、PL1,PL2,PL3 電源ライン、Q1〜Q8 パワートランジスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器と、
前記電気機器用の冷却媒体が流れる複数の冷却媒体通路と、
複数の前記冷却媒体通路に供給される前記冷却媒体が流入する入口部とを備え、
複数の前記冷却媒体通路は、前記入口部と複数の前記冷却媒体通路とが並ぶ方向と交差する方向に延在し、
冷却媒体の流れを抑制することにより、各々の前記冷却媒体通路への冷却媒体の分散を促進する冷却媒体分散機構をさらに備えた、電気機器の冷却構造。
【請求項2】
前記冷却媒体分散機構は、少なくとも1つの前記冷却媒体通路を流れる冷却媒体の流量を抑制する流量抑制機能を有する、請求項1に記載の電気機器の冷却構造。
【請求項3】
前記流量抑制機能は、前記冷却媒体通路と交差するように該冷却媒体通路上に設けられた壁により実現される、請求項2に記載の電気機器の冷却構造。
【請求項4】
前記壁は、前記入口部からの距離が互いに異なる複数の前記冷却媒体通路上に設けられ、
複数の前記冷却媒体通路に設けられた前記壁の高さが互いに異なる、請求項3に記載の電気機器の冷却構造。
【請求項5】
前記入口部から遠い前記冷却媒体通路上に位置する前記壁の高さは相対的に低く、
前記入口部に近い前記冷却媒体通路上に位置する前記壁の高さは相対的に高い、請求項4に記載の電気機器の冷却構造。
【請求項6】
前記壁は、前記入口部に近い前記冷却媒体通路上に選択的に設けられる、請求項3から請求項5のいずれかに記載の電気機器の冷却構造。
【請求項7】
前記電気機器はインバータを含む、請求項1から請求項6のいずれかに記載の電気機器の冷却構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−123606(P2007−123606A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−314756(P2005−314756)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】