説明

電気機器の遠隔制御システム

【課題】電気機器の制御装置及び管理サーバの通信トラフィックの負担を軽減できるとともに、通信異常の箇所が推定できる電気機器の遠隔制御システムを提供する。
【解決手段】電気機器の制御装置50と、遠隔操作装置1と、管理サーバ60とがインターネット2を介して接続されており、前記制御装置50と前記管理サーバ60の両方が、双方間でIPアドレス情報の通信を行う通信手段(53,61)と、双方間に発生した通信障害を遠隔操作装置1に通知する通知手段(53,62)とを備える。IPアドレスの通信により管理サーバ60は制御装置と管理サーバ間の専用の監視信号の必要なしに制御装置50の監視ができ、外部の遠隔操作装置1は、通知手段より通知される電子メールにより障害がどの箇所に発生しているのか推測できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の電気機器を携帯電話やパソコン等の遠隔操作装置によりインターネットを介して制御する遠隔制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話端末・パソコン等の通信端末を用い、インターネットを通じて、外出先から家庭などに設置された照明やエアコンなどの各種の電気機器を制御する遠隔制御システムが多く提案されている。この場合遠隔制御システムの保守点検等の観点からその電気機器を制御する制御装置をサーバにより管理する方法が考えられる。併せて、管理サーバは制御装置の場所を特定するために個々の制御装置のIP(Internet Protocol)アドレスの管理も必要となる。
【0003】
従来の遠隔制御システムにおいて、図8に示すように、管理サーバ60が制御装置50の状態を監視できるように、制御装置50が一定時間毎に監視信号を管理サーバ60に送信すると共に、自己のIPアドレスを管理サーバ60に通知する技術が知られている(例えば特許文献1)。特許文献1の場合、アパートのインターネットを統括する制御装置であるルータが監視信号を一定時間毎に発生させ管理サーバに送信している。管理サーバ側は監視信号が途切れたときにシステム側に異常が発生したと認識できる。また、比較的安価なインターネット接続の方法であるADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line(非対称デジタル加入者線))を採用してインターネットに接続しており、一定時間毎に変更される動的IPアドレスがインターネットサービスプロバイダ(ISP)よりルータに付与され、ルータはIPアドレスの情報も管理サーバと送受信している。
【特許文献1】特開2003−46503号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、監視信号やIPアドレスの情報を制御装置側から管理サーバ側へ発信してシステムを管理する方法は、監視のための専用信号を定期的に発信する必要があることから、回線のトラフィックが混雑し、本来の制御信号の通信に支障をきたすおそれがある。特に図9に示すように複数の住宅5a〜5cに設置された制御装置を1台の管理サーバ60で管理するような場合、トラフィックの増加によりサーバに支障を来すことも考えられる。また、監視信号が途切れることにより制御装置側に異常が発生したことを認識できるものの、その異常が回線上で発生しているのか、制御装置そのもので発生しているのか把握することはできなかった。
【0005】
本発明の目的は、これらの問題点を解決するべく、通信のトラフィックを低減することにより制御装置及び管理サーバの負担を軽減し、電気機器を円滑に制御できるシステムを提供すること、及び、通信に異常が発生した場合に遠隔操作装置に対して障害の発生を通知することにより、どの箇所で障害が発生しているのか推定することができるシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の遠隔制御システムは、電気機器を制御する制御装置と、制御装置を遠隔操作する遠隔操作装置と、複数台の制御装置を管理する管理サーバとがインターネットを介して接続された遠隔制御システムであって、電気機器を制御する制御装置と管理サーバの両方が、双方間でIPアドレス情報の通信を行う通信手段と、双方間に発生した通信障害を遠隔操作装置に通知する通知手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
ここで、通信手段としては、DDNS(Dynamic Updates in the Domain Name System)サービスを利用する手段が使用できる。DDNSサービスとは、常時接続環境を利用するインターネットに接続された機器が自己のIPアドレスをDDNSサーバのDNS(Domain
Name System)レコードに定期的に登録更新することで、DDNSサーバから一意のドメイン名がその機器のIPアドレスに対応づけられ変換されるサービスである。
【0008】
また、通知手段には、遠隔操作装置が携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)やパーソナルコンピュータなどである場合、電子メールによる通知を利用する手段が使用できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の遠隔制御システムによれば、制御装置と管理サーバのIPアドレスの通信の不能より障害の発生を認識することから、制御装置から管理サーバに対して専用の監視信号を発する必要がなくなる。このため、通信のトラフィックの低減を図ることができ、本来の機能である電気機器の制御を円滑に行うことができる。また、複数の制御装置を一台の管理サーバで管理する場合、管理サーバが監視信号の管理をする必要がないことから安定した運用を図ることができる。一方、障害が発生した場合制御装置と管理サーバの双方に通知手段が備えられていることから、通信障害発生時には遠隔操作装置に届く通知からユーザは通信障害の箇所の特定が容易である。即ち、遠隔操作装置に届いた通知が制御装置からのみ届いた場合には管理サーバ側に障害が、管理サーバからのみ届いた場合には制御装置側に障害が、制御装置及び管理サーバから届いた場合には双方を接続する通信に障害があると推定することができる。
【0010】
また、請求項2の発明によれば、ISPより一定時間毎に変更される動的グローバルIPアドレスが付与される一般的なインターネット接続サービスを利用してインターネットに接続されていても、グローバルIPアドレスではなくドメイン名を利用して遠隔操作装置が制御装置にアクセスすることが可能になる。
【0011】
また、請求項3の発明によれば、通信障害を電子メールで遠隔操作装置に通知することから、通信障害を文章で伝えることができ、より詳細な通信障害の情報をユーザに対して伝達することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本遠隔制御システムの外観的なブロック図を示し、図2は図1の遠隔制御システムの具体的な使用例を示す図である。
【0013】
図1に示すように、この実施形態の遠隔制御システムでは、電気機器としての照明器具57を制御する制御装置50と、制御装置50を遠隔操作する遠隔操作装置1と、複数台の制御装置50を管理する管理サーバ60とがインターネット2を介して双方向通信可能に接続されている。
【0014】
遠隔操作装置1には、インターネットを通じて制御装置50に照明器具57の制御信号を送ることができる機能を備えた各種の機器を使用できる。具体的には、図2に示すように、PDA11やパーソナルコンピュータ12や携帯電話13などが使用できる。
【0015】
管理サーバ60はDDNSサーバ部61と通信障害通知部62とを備えている。DDNSサーバ部61は、DDNSサービスを利用し、制御装置50とIPアドレス情報の通信を行う。通信障害通知部62は制御装置50との通信障害を遠隔操作装置1に電子メールで通知する機能を備えている。
【0016】
制御装置50は、モデム又はルータ51とWEBインターフェース53と照明コントローラ55とから構成されている。モデム又はルータ51は、インターネット接続回線4を通じてISP3に接続される。WEBインターフェース53は、イーサネット(登録商標)52によりモデム又はルータ51に接続され、管理サーバ60とIPアドレス情報の通信を行う手段として機能するとともに、管理サーバ60との通信障害を遠隔操作装置1に電子メールで通知する手段としても機能する。照明コントローラ55は、専用通信線54でWEBインターフェース53に接続され、WEBインターフェース53からの指令に従って住宅5内に設置された多数の照明器具57の調光を制御する。
【0017】
図3は通常時における制御装置50と管理サーバ60との間でのIPアドレス情報の流れを示すブロック図である。
【0018】
制御装置50はWEBインターフェース53より定期的に管理サーバ60に対して自己に割り振られたIPアドレスを送出する(100)。管理サーバ60は制御装置50から送出されたIPアドレス情報をDDNSサーバ部61で受信し、あらかじめ定められたドメイン名とIPアドレスの関連付けをする。そして制御装置50に対してIPアドレス情報の受信完了通知を送出する(101)。
【0019】
図4は通常時における外部の遠隔操作装置1から住宅等5の宅内にある照明器具57の制御の流れを示すブロック図である。
【0020】
まず、遠隔操作装置1はデータセンター6内にある管理サーバ60のDDNSサーバ部61にアクセスしあらかじめ定められたドメイン名の制御装置50のインターネット上の場所を確認する(102)。DDNSサーバ部61は前述の制御装置50とのIPアドレスの送受信(100,101)及びIPアドレスとドメイン名の関連付けにより把握している制御装置50のインターネット上の場所、即ち制御装置50のIPアドレスを遠隔操作装置1に対して通知する(103)。遠隔操作装置1は管理サーバ60より受信した情報に従って制御装置50のインターネット上の場所を特定し、制御装置50に対し照明器具57の制御信号を送信する(104)。制御信号を受信した制御装置50のWEBインターフェース53は照明コントローラ55に専用通信線54を通じて伝達し、その情報に従って照明コントローラ55は照明器具57を制御する。
【0021】
図5はデータセンター6内にある管理サーバ60側の通信回線または機器自体に障害が発生した場合の遠隔制御システムの動きを示したブロック図である。
【0022】
まず制御装置50はWEBインターフェース53より管理サーバ60に対して自己に割り振られたIPアドレスを送出するものの、障害によりその通信は管理サーバ60に到達しない(105)。その場合、図3で示した管理サーバ60から制御装置50へのIPアドレス報告の受領確認(101)が制御装置50に対して送信されないので、それにより制御装置50は管理サーバ60側に障害が発生したと判断できる。障害が発生したと判断した制御装置50はWEBインターフェース53より遠隔操作装置1に対して障害が発生した旨記載した電子メールを送信する(106)。この遠隔操作装置1に対する通信障害の通知手段としては電子メールによるほかにも制御装置50の側に設定されたホームページに障害の発生を表示する方法も利用できる。
【0023】
図6は住宅等5の宅内に設置された制御装置50側の通信回線または機器自体に障害が発生した場合の遠隔制御システムの動きを示したブロック図である。
【0024】
この場合管理サーバ60はDDNSサーバ部61に図3に示す制御装置50から定期的に送られてくるはずのIPアドレスの報告(100)の受信ができないことにより制御装置50側に障害が発生していることを判断できる。障害が発生したと判断した管理サーバ60は遠隔操作装置1に対して通信障害通知部62より障害が発生した旨記載した電子メールを送信する(107)。この遠隔操作装置1に対する通信障害の通知手段としては電子メールによるほかにも管理サーバ60の側に設定されたホームページに障害の発生を表示する方法も利用できる。
【0025】
図7は管理サーバ60側及び制御装置50側の双方とも障害が発生していないがインターネット上その他の障害が理由で管理サーバ60と制御装置50がIPアドレス情報を送受信できない場合を示したブロック図である。
【0026】
制御装置50は自己のIPアドレスの通知を管理サーバ60に対して送信する(105)。しかし、インターネットその他の管理サーバ側の障害ではない障害が発生してその通信が管理サーバ60に到達しないことから管理サーバ60から制御装置50へのIPアドレス報告の受領確認(101)が制御装置50に対して送信されない。よって、制御装置50は障害が発生したと判断できる。障害が発生したと判断した制御装置50はWEBインターフェース53より遠隔操作装置1に対して障害が発生した旨記載した電子メールを送信する(106)。一方、管理サーバ60は定期的な制御装置50との通信が途絶えたことから障害の発生を検出する。障害が発生したと判断した管理サーバ60は遠隔操作装置1に対して通信障害通知部62より障害が発生した旨記載した電子メールを送信する(107)。
【0027】
外部の遠隔操作装置1は、制御装置50から電子メールを受信した場合は、管理サーバ60側に障害が発生していると推測することができる。また、管理サーバ60から電子メールを受信した場合は制御装置50側に障害が発生していると推測することができる。そして、遠隔制御装置50及び管理サーバ60の双方より電子メールを受領した場合には、制御装置50と管理サーバ60間の通信回線において障害が発生していると推測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明にかかる遠隔制御システムの構成を示したブロック図である。
【図2】図1の遠隔制御システムの適用例を示す図である。
【図3】通常時におけるIPアドレス情報の通信方法を示すブロック図である。
【図4】通常時における照明器具の制御方法を示すブロック図である。
【図5】管理サーバ側に障害が発生した際の動作を示すブロック図である。
【図6】制御装置側に障害が発生した際の動作を示すブロック図である。
【図7】インターネット上その他の障害が発生した際の動作を示すブロック図である。
【図8】従来の遠隔制御システムを示すブロック図である。
【図9】従来システムの問題点を指摘するブロック図である。
【符号の説明】
【0029】
1 遠隔操作装置
2 インターネット網
3 インターネットサービスプロバイダ(ISP)
4 インターネット接続回線
5 住宅等
6 データセンター
50 制御装置
51 モデム又はルータ
52 イーサネット(登録商標)回線
53 WEBインターフェース
54 専用通信線
55 照明コントローラ
56 接続ケーブル
57 照明器具
60 管理サーバ
61 DDNSサーバ部
62 通信障害通知部
100 制御装置50から管理サーバ60へのIPアドレスの報告
101 管理サーバ60から制御装置50へのIPアドレス報告の受領確認
102 遠隔操作装置1から管理サーバ60への制御装置50のドメイン名のインターネット上の場所の問い合わせ
103 遠隔操作装置1への制御装置50のIPアドレスの通知
104 遠隔操作装置1から制御装置50への電気機器制御信号の送信
105 管理サーバ60に届かなかった制御装置50のIPアドレスの報告
106 制御装置50から遠隔操作装置1への通信異常が発生した旨の電子メール
107 管理サーバ60から遠隔操作装置1への通信異常が発生した旨の電子メール
200 監視信号の通知

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器(57)を制御する制御装置(50)と、制御装置を遠隔操作する遠隔操作装置(1)と、複数台の制御装置を管理する管理サーバ(60)とがインターネット(2)を介して接続された遠隔制御システムであって、
前記制御装置と前記管理サーバの両方が、双方間でIPアドレス情報の通信を行う通信手段(53,61)と、双方間に発生した通信障害を遠隔操作装置に通知する通知手段(53,62)とを備えたことを特徴とする遠隔制御システム。
【請求項2】
前記通信手段は、DDNSサービスを使用することを特徴とする請求項1記載の遠隔制御システム。
【請求項3】
前記通知手段は、通信障害を電子メールで遠隔操作装置に通知することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の遠隔制御システム。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図2】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−281778(P2007−281778A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−104291(P2006−104291)
【出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【出願人】(000124591)河村電器産業株式会社 (857)
【Fターム(参考)】