説明

電気機械装置およびそれを用いたアクチュエーター、モーター、ロボット、ロボットハンド。

【課題】電気機械装置を小型化する技術を提供する。
【解決手段】電気機械装置の一種である動力発生装置100は、中心軸110と、永久磁
石123を有するローター121と、ローター121の外周に配置されたステーターであ
る電磁コイル124と、ローター121に連結され、回転駆動力の伝達に用いられる回転
機構部130と、前記回転機構と負荷とを接続する負荷接続部133とを備える。ロータ
ー121には、中心軸110と永久磁石123との間において、少なくとも中心軸110
の軸方向の一方に開口し、回転機構部130の少なくとも一部を収容する収容空間として
の凹部1212が形成されている。回転機構部130は、ローターと接続または一体に形
成される入力部と、ステーターと接続または一体に形成される固定部と、負荷接続部13
3と接続または一体に形成される出力部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気機械装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットの関節部位を駆動する動力源としては、通常、モーターが用いられる(下記特
許文献1等)。モーターは、一般に、モーターの回転速度やトルクを調整する減速機など
の回転機構と接続されて用いられる。ロボットを小型化するためには、モーターやそれに
接続される回転機構によって構成される電力と動力とを変換する電気機械装置が、よりコ
ンパクトに構成されることが望ましい。これまで、こうした要求に対して十分な工夫がな
されてこなかったのが実情であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−159847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、電気機械装置を小型化する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の
形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]
電気機械装置であって、中心軸と、前記中心軸の外周に沿って配置されたローター磁石
を有するローターと、前記ローターの外周に配置されたステーターと、前記ローターに連
結され、回転駆動力の伝達に用いられる回転機構と、前記回転機構と負荷とを接続する負
荷接続部と、を備え、前記ローターには、前記中心軸と前記ローター磁石との間において
、少なくとも前記中心軸の軸方向の一方に開口し、前記回転機構の少なくとも一部を収容
する収容空間が形成されており、前記回転機構は、前記ローターと接続または一体に形成
される入力部と、前記ステーターと接続または一体に形成される固定部と、前記負荷接続
部と接続または一体に形成される出力部と、を有し、増速機または減速機として機能する
、電気機械装置。
この電気機械装置によれば、回転機構の少なくとも一部がローターの収容空間に収容さ
れて、回転を発生させるローターと、それを伝達する回転機構とが一体的に構成される。
従って、電気機械発生装置が小型化される。
【0007】
[適用例2]
適用例1に記載の電気機械装置であって、前記中心軸は、前記中心軸の軸方向に延びる
貫通孔を有し、前記貫通孔には、前記ローターの回転を制御するための電気を送信する導
電線が挿通されている、電気機械装置。
この電気機械装置によれば、ローターの回転を制御するための導電線が、中心軸の内部
に挿通されるため、導電線の外部への露出が抑制され、導電線の保護性や配設性が向上す
る。また、電気機械装置が搭載される機器の意匠性が、導電線の露出によって低下してし
まうことが抑制される。
【0008】
[適用例3]
適用例1または2に記載の電気機械装置であって、前記回転機構の中心部に配置された
サンギアと、前記回転機構の外周部に配置されたアウターギアと、前記サンギアと前記ア
ウターギアとの間に配置されたプラネタリーギアと、前記プラネタリーギアを接続された
プラネタリーキャリアと、を有する遊星ギアを含み、前記回転機構は、前記サンギアと前
記アウターギアと前記プラネタリーキャリアの3つのうちの1つが前記入力部であり、残
り2つのうちの1つが前記固定部であり、残りの1つが出力部である、電気機械装置。
この電気機械装置によれば、遊星ギアとローターとが一体的に構成されるため、電気機
械装置が小型化される。
【0009】
[適用例4]
適用例1または2に記載の電気機械装置であって、前記回転機構は、前記回転機構の中
心部に配置されたウェーブジェネレーターと、前記回転機構の外周部に配置されたサーキ
ュラスプラインと、前記ウェーブジェネレーターと前記サーキュラスプラインとの間に配
置されたフレックススプラインと、を有するハーモニックドライブ機構(「ハーモニック
ドライブ」は登録商標)を含み、前記回転機構は、前記ウェーブジェネレーターと、前記
サーキュラスプラインと、前記フレックススプラインの3つのうちの1つが前記入力部で
あり、残り2つのうちの1つが前記固定部であり、残りの1つが出力部である、電気機械
装置。
この電気機械装置によれば、ハーモニックドライブ(登録商標)機構とローターとが一
体的に構成されるため、電気機械装置が小型化される。
【0010】
[適用例5]
適用例1または2に記載の電気機械装置であって、前記回転機構は、外縁にエピトコロ
イド平行曲線形状を有し中心に形成された第1の孔と前記第1の孔の周りに形成された複
数の第2の孔とを有する曲線板と、前記曲線板の前記エピトコロイド平行曲線と接するよ
うに配置される外ピンと、前記第2の孔の中に配置される内ピンと、前記第1の孔の中に
配置される偏心体と、を有するサイクロ機構を含み、前記偏心体と前記外ピンと前記内ピ
ンの3つのうちの1つが前記入力部であり、残り2つのうちの1つが前記固定部であり、
残りの1つが出力部である、電気機械装置。
この電気機械装置によれば、サイクロ機構とローターとが一体的に構成されるため、電
気機械装置が小型化される。
【0011】
[適用例6]
適用例1〜5のいずれか一つに記載の電気機械装置において、さらに、ローターと一体
に形成されたエンコーダーを備える、電気機械装置。
この電気機械装置によれば、エンコーダーとローターとが一体的に構成されるため、電
気機械装置が小型化される。
【0012】
[適用例7]
アクチュエーターであって、適用例1〜6のいずれか一つに記載の電気機械装置を備え
る、アクチュエーター。
このアクチュエーターによれば、駆動源として小型化された電気機械装置を用いるため
、よりコンパクトな構成とすることが可能である。
【0013】
[適用例8]
モーターであって、中心軸と、前記中心軸の外周に沿って配置されたローター磁石を有
するローターと、前記ローターの外周に配置されたステーターと、前記ローターに連結さ
れ、回転駆動力の伝達に用いられる回転機構と、前記回転機構と負荷とを接続する負荷接
続部と、を備え、前記中心軸と前記ローター磁石との間には、少なくとも前記中心軸の軸
方向の一方に開口し、前記ローターに連結され、回転駆動力の伝達に用いられる回転機構
の少なくとも一部を収容するための収容空間が形成されており、前記回転機構は、前記ロ
ーターと接続または一体に形成される入力部と、前記ステーターと接続または一体に形成
される固定部と、前記負荷接続部と接続または一体に形成される出力部と、を有し、増速
機または減速機として機能する、モーター。
このモーターであれば、ローターと回転機構とをよりコンパクトに一体的化して構成す
ることが可能である。
【0014】
[適用例9]
ロボットであって、基部と、前記基部を移動させるための駆動部と、を備え、前記駆動
部は、適用例1〜6のいずれか一つに記載の電気機械装置を含む、ロボット。
【0015】
[適用例10]
ロボットであって、基部と、前記基部に対して相対的に運動する運動部と、前記運動部
を前記基部に対して運動させる駆動部と、を備え、前記駆動部は、適用例1〜6のいずれ
か一つに記載の電気機械装置を含む、ロボット。
【0016】
[適用例11]
ロボットハンドであって、基部と、前記基部に配置され、対象物を把持する把持部と、
前記把持部を駆動して前記把持部に対して前記対象物を把持させる駆動部と、を備え、前
記駆動部は、請求項7に記載のアクチュエーターを含む、ロボットハンド。
【0017】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、モーターや発電装
置などの電気機械装置、それを用いたアクチュエーターやロボット、ロボットアーム、移
動体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施例におけるロボットアームの構成を示す概略図。
【図2】参考例としてのロボットアームの構成を示す概略図。
【図3】第1実施例の動力発生装置の内部構成を示す概略断面図。
【図4】第1実施例の動力発生装置の内部構成を示す概略分解断面図。
【図5】第1実施例の動力発生装置の内部において回転駆動力が伝達される機構を説明するための模式図。
【図6】第1実施例の他の構成例としての動力発生装置の構成を示す概略図。
【図7】第1実施例の他の構成例としての動力発生装置の構成を示す概略図。
【図8】第1実施例の他の構成例としての動力発生装置の構成を示す概略図。
【図9】第2実施例の動力発生装置の内部構成を示す概略断面図。
【図10】第2実施例の動力発生装置の内部構成を示す概略分解断面図。
【図11】第2実施例の動力発生装置の二段式の遊星ギアにおいて、回転駆動力が伝達される機構を説明するための模式図。
【図12】第3実施例の動力発生装置の内部構成を示す概略断面図。
【図13】第3実施例の動力発生装置の内部構成を示す概略分解断面図。
【図14】第3実施例の動力発生装置の内部において回転駆動力が伝達される機構を説明するための模式図。
【図15】第4実施例の動力発生装置の内部構成を示す概略断面図。
【図16】第4実施例の動力発生装置の内部構成を示す概略分解断面図。
【図17】第4実施例の動力発生装置の内部において回転駆動力が伝達される機構を説明するための模式図。
【図18】第5実施例の動力発生装置の構成を示す概略断面図。
【図19】第5実施例の動力発生装置に取り付けられる回転軸の種類を例示する概略図。
【図20】本発明の第6実施例としての動力発生装置100Eの内部構成を示す概略断面図である。
【図21】動力発生装置100Eの各構成部を分解して示す概略分解断面図である。
【図22】サイクロ機構を模式的に示す説明図である。
【図23】第6の実施例の変形例としての動力発生装置100Fの構成を示す概略図である。
【図24】第7の実施例としての動力発生装置100Gの構成を示す概略図である。
【図25】永久磁石と電磁コイル群の構成を示す説明図である。
【図26】第8の実施例としての動力発生装置100Hの構成を示す概略図である。
【図27】エンコーダーの構成の一例を示す説明図である。
【図28】エンコーダーの構成の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
A.第1実施例:
図1(A),(B)は本発明の一実施例としてのロボットアーム10(「ロボットハン
ド」とも呼ぶ。)の構成を示す概略図である。図1(A)は、ロボットアーム10の変形
態様を示す模式図であり、変形前のロボットアーム10と、変形後のロボットアーム10
とが図示されている。なお、図1(A)には、互いに直交する3次元矢印x,y,zが図
示されている。
【0020】
ロボットアーム10は、4つの基体部11〜14を備える。4つの基体部11〜14は
それぞれ、第1〜第3の関節部J1〜J3を介して、互いに直列に連結されている。以後
、ロボットアーム10において、第1の基体部11側を「後端側」と呼び、第4の基体部
14側を「先端側」と呼ぶ。
【0021】
ロボットアーム10は、各関節部J1〜J3における回動により、各基体部11〜14
の連結角度が変わり、全体として湾曲状の形態に変形する。なお、図1(A)では、ロボ
ットアーム10の変形後の態様として、ロボットアーム10が紙面上側に向かって湾曲し
た状態が図示されている。
【0022】
図1(B)は、ロボットアーム10の内部構成を示す概略断面図である。なお、図1(
B)には、図1(A)と対応するように三次元矢印x,y,zが図示されている。各基体
部11〜14の内部は中空であり、各関節部J1〜J3の動力源である動力発生装置10
0と、動力発生装置100からの駆動力が伝達される2つのベベルギア(かさ歯車)21
,22と、が収容されている。以下では、第1と第2の基体部11,12を連結する第1
の関節部J1の構成について説明する。なお、第2と第3の基体部12,13を連結する
第2の関節部J2および第3と第4の基体部13,14を連結する第3の関節部J3の構
成は、第1の関節部J1の構成と同様であるため、その説明は省略する。
【0023】
動力発生装置100は、電磁力により回転駆動力を発生するモーターを有している。動
力発生装置100の詳細な内部構成については後述する。動力発生装置100は、第1の
基体部11の先端側に配置されており、第1のベベルギア21の回転軸と接続されている
。第1のベベルギア21は、その回転軸が第1と第2の基体部11,12の境界を貫通す
るように配置され、回転軸の先端に設けられた歯車部(ギア部)が第2の基体部12内に
配置されている。
【0024】
第2のベベルギア22は、第2の基体部12の後端側において、そのギア部が第1のベ
ベルギア21のギア部と連結するように、第2の基体部12の内壁面に固定的に取り付け
られている。動力発生装置100から伝達された回転駆動力によって、第1のベベルギア
21が回転する。第1のベベルギア21の回転により、第2のベベルギア22が回転し、
第2の基体部12が回動する。
【0025】
ところで、ロボットアーム10の内部には、各動力発生装置100に電力や制御信号を
送信するための導電線の束である導電線束25が挿通されている。具体的には、導電線束
25は、後端側から第1の基体部11の内部に挿通され、その一部の導電線が分岐して第
1の基体部11内の動力発生装置100の接続部に接続される。そして、残りの導電線束
25は、動力発生装置100の中央を通る貫通孔(後述)と、第1のベベルギア21の中
心軸を貫通する貫通孔(図示は省略)とを通って、第2の基体部12へと延びる。
【0026】
導電線束25は、第2の基体部12においても、同様に配設されている。即ち、第2の
基体部12内部に挿通された導電線束25は、その一部が動力発生装置100に接続され
、残りが、動力発生装置100および第1のベベルギア21の内部を通って、第3の基体
部13へと挿通される。そして、第3の基体部13に挿通された導電線束25は、動力発
生装置100に接続される。
【0027】
図2(A),(B)は、本実施例の参考例としてのロボットアーム10cfを示す概略
図である。図2(A),(B)は、導電線束25が動力発生装置100および第1のベベ
ルギア21の外部に配線されている点以外は、図1(A),(B)とほぼ同じである。
【0028】
この参考例のロボットアーム10cfでは、導電線束25が各関節部J1〜J3におい
て外部に露出されている。そのため、ロボットアーム10cfの変形に伴って、各関節部
J1〜J3において、導電線束25が各基体部11〜14に挟まれるなどして劣化してし
まう可能性がある。また、導電線束25が外部に露出していることにより、ロボットアー
ム10cfの意匠性を低下させてしまう可能性がある。しかし、本実施例のロボットアー
ム10であれば、導電線束25の外部に露出していないため、こうした不具合の発生が抑
制されている。
【0029】
図3は、動力発生装置100の内部構成を示す概略断面図であり、図4は、動力発生装
置100の各構成部を分解して示す概略分解断面図である。なお、図3および図4には、
動力発生装置100に接続される第1のベベルギア21の回転軸が破線で図示されている
。動力発生装置100は、中心軸110と、モーター部120と、回転機構部130とを
備える。
【0030】
モーター部120と回転機構部130とは、後述するように、互いに勘合して一体化す
るように配置され、中心軸110は、一体化されたモーター部120と回転機構部130
の中央を貫通するように配置される。中心軸110は、軸方向に延びる貫通孔111を有
しており、貫通孔111には、導電線束25が挿通されている。
【0031】
モーター部120は、ローター121と、ケーシング122とを備える。モーター部1
20は、以下に説明するように、ラジアルギャップ型の構成を有している。ローター12
1の本体部は略円盤形状を有しており、その本体部の側壁の外周面には、永久磁石123
が円筒形に配列されている。永久磁石123の磁束の方向は、放射方向である。なお、永
久磁石123の裏側の面(ローター121の側壁側の面)には、磁力効率を向上させるた
めの磁石バックヨーク125が配置されている。
【0032】
ローター121は、その中央に中心軸110を挿通させるための貫通孔1211を有し
ている。なお、貫通孔1211の内壁面と、中心軸110の外周面との間には、ローター
121が中心軸110を中心に回転可能とするための軸受け部112が配置されている。
軸受け部112は、例えば、ボールベアリングによって構成することができる。
【0033】
ローター121の回転機構部130と対向する側の面には、貫通孔1211を中心とす
る略円環状の溝として形成された凹部1212が設けられている。貫通孔1211と凹部
1212とを隔てる略円筒状の隔壁1213の外側の壁面には、ギア歯121tが形成さ
れている。以後、このローター121の中央に設けられたギア歯121tを有する隔壁1
213を「ローターギア1213」と呼ぶ。後述するように、本実施例におけるローター
ギア1213は、遊星ギアのサンギアとして機能する。
【0034】
ケーシング122は、回転機構部130と対向する側の面が開放された略円筒形状の中
空容体であり、ローター121を収容する。ケーシング122は、炭素繊維強化プラスチ
ック(CFRP;carbon fiber reinforced plastics)などの樹脂材料によって構成され
るものとしても良い。これによって、動力発生装置100の軽量化が可能である。
【0035】
ケーシング122の底面の中央には、中心軸110を挿通するための貫通孔1221が
形成されている。中心軸110とケーシング122とは互いに固定的に取り付けられる。
なお、ケーシング122の外側には、中心軸110の保持性を向上させるための軸受けリ
ング113が勘合的に取り付けられている。
【0036】
ケーシング122の内周面には、電磁コイル124が、ローター121の永久磁石12
3と間隔を有しつつ対向するように円筒形に配列されている。即ち、モーター部120で
は、電磁コイル124がステーターとして機能し、中心軸110を中心としてローター1
21を回転させる。なお、電磁コイル124とケーシング122との間には、磁力効率を
向上させるためのコイルバックヨーク128が配置されている。
【0037】
ケーシング122の底面には、永久磁石123の位置を検出する位置検出部126と、
ローター121の回転を制御するための回転制御回路127が設けられている。位置検出
部126は、例えば、ホール素子によって構成され、永久磁石123の周回軌道の位置に
対応するように配置されている。位置検出部126は、回転制御回路127と信号線を介
して接続されている。
【0038】
回転制御回路127には、導電線束25から分岐した導電線が接続されている。また、
回転制御回路127は、電磁コイル124と電気的に接続されている。回転制御回路12
7は、位置検出部126が出力する検出信号を動力発生装置100の駆動を制御する制御
部(図示せず)に送信する。また、回転制御回路127は、制御部からの制御信号に従っ
て、電磁コイル124に電力を供給して磁界を発生させ、ローター121を回転させる。
【0039】
回転機構部130は、ローター121のローターギア1213とともに遊星ギアを構成
し、減速機として機能する。回転機構部130は、ギア固定部131と、3個のプラネタ
リーギア132と、負荷接続部133とを備える。なお、図3および図4では便宜上、2
個のプラネタリーギア132のみを図示してある。
【0040】
ギア固定部131は、内壁面にギア歯131tが設けられた略円環状のギアであるアウ
ターギア1311と、アウターギア1311の外周に突出した鍔部1312とを有してい
る。ギア固定部131は、鍔部1312と、モーター部120のケーシング122の側壁
端面とを固定用ボルト114によって締結することにより、モーター部120に固定的に
取り付けられる。
【0041】
ギア固定部131のアウターギア1311は、ローター121の凹部1212に収容さ
れる。また、アウターギア1311の内周面と、ローターギア1213の外周面との間に
は、3個のプラネタリーギア132が、ローターギア1213の外周に沿って、ほぼ等間
隔で配置される。なお、プラネタリーギア132のギア歯132tと、アウターギア13
11のギア歯131tおよびローターギア1213のギア歯121tとが互いに噛み合う
ことにより、これら3種のギア1213,132,1311は連結される。
【0042】
負荷接続部133は、プラネタリーキャリアとして機能する略円筒形状の部材である。
負荷接続部133の底面の中央には、中心軸110を挿通する貫通孔1331が設けられ
ている。貫通孔1331の内壁面と、中心軸110の外周面との間には、負荷接続部13
3が中心軸110を中心に回転可能とするための軸受け部112が配置されている。なお
、負荷接続部133に取り付けられた軸受け部112と、ローター121に取り付けられ
た軸受け部112との間には、スペーサー115が配置される。
【0043】
ここで、ギア固定部131の中央部には、アウターギア1311の内周空間に連通する
略円形形状の開口部1313が形成されており、負荷接続部133は、その開口部131
3に配置される。負荷接続部133のモーター部120側(図3および図4の紙面右側)
の底面には、ローター121の凹部1212に収容されたプラネタリーギア132の回転
軸132sを回転可能に保持するための軸孔1332が形成されている。
【0044】
負荷接続部133の外側(図3および図4の紙面左側)の底面には、中心軸110の保
持性を向上させるための軸受けリング113が勘合的に取り付けられている。負荷接続部
133の外側の底面には、さらに、第1のベベルギア21の回転軸が、固定用ボルト11
4によって固定されている。
【0045】
図5は、動力発生装置100の内部において回転駆動力が伝達される機構を説明するた
めの模式図である。図5には、中心軸110の軸方向に沿って動力発生装置100を見た
ときの、ローターギア1213と、3個のプラネタリーギア132と、アウターギア13
11と、負荷接続部133とが模式的に図示されている。なお、図5では、便宜上、各ギ
アのギア歯の図示は省略されている。
【0046】
ここで、動力発生装置100において、ローター121の回転にともなってサンギアで
あるローターギア1213が、一点鎖線の矢印で図示する方向に回転する場合を想定する
。上述したとおり、アウターギア1311は固定配置されているため、ローターギア12
13の回転に伴って、各プラネタリーギア132が、自身の回転軸132sを中心に実線
矢印で図示する方向に回転(「自転」とも呼ぶ。)しつつ、ローターギア1213の周り
を二点鎖線の矢印で示す方向に周回移動(「公転」とも呼ぶ。)する。各プラネタリーギ
ア132の周回移動に伴って、負荷接続部133が回転し、負荷接続部133に接続され
た第1のベベルギア21(図1)が回転する。
【0047】
ところで、通常のモーターでは、モーターの応答性を向上させるために、ローターの径
を縮小し、そのイナーシャ(モーターイナーシャ)を低減させ、イナーシャ特性を向上さ
せることが好ましい。これに対し、本実施例のモーター部120では、ローター121の
径は、回転機構部130を収容可能な程度に拡大されており、モーターイナーシャが増大
されている。しかし、本発明の発明者は、本実施例のように、ローター121を大径化し
、モーターイナーシャが増大した場合であっても、動力発生装置100の制御に対する過
渡応答性の低下は抑制されることを見出した。この理由は、以下のためである。
【0048】
即ち、本実施例の動力発生装置100では、ローター121の径の大型化に伴い、モー
ター部120において発生するトルクが増大されており、ローター121の回転開始時、
回転方向の切り替え時において、回転機構部130に伝達されるトルクが増大されている
。従って、動力発生装置100では、モーター部120の回転の変化に対して即応的に回
転機構部130を追従させることができ、動力発生装置100の過渡応答性の低下が抑制
される。即ち、動力発生装置100では、モーター部120におけるイナーシャ特性の低
下が、ローター121の大径化に伴うトルク特性の向上によって補償されている。
【0049】
このように、本実施例の動力発生装置100では、ローター121にサンギアが一体的
に設けられ、ローター121に設けられた凹部1212に、プラネタリーギア132と、
アウターギア1311とが収容されている。即ち、動力発生装置100は、モーターと減
速機である遊星ギアとが、コンパクトに一体化された構成を有しており、この動力発生装
置100を用いることにより、ロボットアーム10を小型化・軽量化することが可能であ
る。
【0050】
また、動力発生装置100では、ローター121の回転駆動を制御するための導電線束
25が、中心軸110の内部に挿通されている。従って、この動力発生装置100を用い
ることにより、導電線束25の配設性が向上する。また、導電線束25が外部に露出する
ことを回避でき、ロボットアーム10の駆動に伴う導電線束25の劣化を抑制するととも
に、ロボットアーム10の意匠性の向上が可能である。
【0051】
B.第1実施例の他の構成例:
図6(A)は、本実施例の他の構成例としての動力発生装置100aの構成を示す概略
図である。図6(A)は、ブラシシール部140が設けられている点以外は、図3とほぼ
同じである。ブラシシール部140は、負荷接続部133の側面と、ギア固定部131の
開口部1313の内周面との間に設けられ、動力発生装置100の内部への塵芥の侵入を
抑制する。これによって、動力発生装置100の劣化が抑制される。
【0052】
図6(B)は、本実施例の他の構成例としての動力発生装置100bの構成を示す概略
図である。図6(B)は、ブラシシール部140に換えて、ゴムシール部141が設けら
れている点以外は、図6(A)とほぼ同じである。ゴムシール部141は、負荷接続部1
33の側面と、ギア固定部131の開口部1313の内周面との間に設けられ、動力発生
装置100を気密にシールする。これによって、気流による動力発生装置100における
ギアやローターの回転損失を低減することができる。
【0053】
図7(A)は、本実施例の他の構成例としての動力発生装置100cの構成を示す概略
図である。図7(A)は、熱交換フィン142が設けられている点以外は、図3とほぼ同
じである。熱交換フィン142は、モーター部120のケーシング122の外表面に設け
られている。これによって、電磁コイル124におけるコイル電流による発熱を効率的に
冷却することができ、モーター部120の出力トルクを増大させることができる。なお、
熱交換フィン142と、電磁コイル124のためのコイルバックヨーク128とを直接的
に接触するように配置するものとしても良い。これによって、電磁コイル124の発熱に
対する放熱効果を向上させることができる。熱交換フィン142に換えて、ケーシング1
22の外周に冷媒ジャケットを装着させるものとしても良い。
【0054】
図7(B)は、本実施例の他の構成例としての動力発生装置100dの構成を示す概略
図である。図7(B)は、回転制御回路127に換えて、ケーシング144の内部に、制
御部143と、通信部143cと、ドライバ回路143dとが設けられている点以外は、
図3とほぼ同じである。制御部143は、中央処理装置と主記憶装置とを有するマイクロ
コンピュータによって構成され、通信部143cと、ドライバ回路143dとを制御する
。通信部143cは、外部とのコマンドの通信を実行する。ドライバ回路143dは、制
御部143の指令に応じて、電磁コイル124に流す電流を制御する。即ち、この構成例
では、動力発生装置100dに一体的に設けられた制御部143、通信部143c、ドラ
イバ回路143dによって、動力発生装置100dを、外部から送信されたコマンド指令
に応じて駆動させることができる。
【0055】
図8(A),(B)は、本実施例の他の構成例としての動力発生装置100eの構成を
示す概略図である。図8(A),(B)はそれぞれ、負荷接続部133に換えて、負荷接
続部133eが設けられ、第1のベベルギア21の回転軸を示す破線が省略されている点
以外は図3とほぼ同じである。図8(A),(B)の構成例における動力発生装置100
eは、第1実施例の動力発生装置100とは異なり、ロボットアーム10とは異なる構成
を有するアクチュエーターやマニピュレーターに用いられる。
【0056】
図8(A)に示す構成例では、負荷接続部133eは、ギア固定部131から突出した
側壁面にギア歯133tが設けられた平歯車と一体的に構成されている点以外は、第1実
施例の負荷接続部133(図3)と同様に構成されている。即ち、この構成例では、負荷
接続部133eが、プラネタリーキャリアとして機能するとともに、外部負荷へと回転駆
動力を伝達するギアとしても機能する。
【0057】
図8(B)に示す構成例は、負荷接続部133eがベベルギアと一体的に構成されてい
る点以外は、図8(A)の構成例と同様の構成である。このように、負荷接続部133e
は、種々のタイプのギアと一体的に構成することが可能である。
【0058】
C.第2実施例:
図9,図10は本発明の第2実施例としての動力発生装置100Aの構成を示す概略図
である。図9は、動力発生装置100Aの内部構成を示す概略断面図であり、図10は、
動力発生装置100Aの各構成部を分解して示す概略分解断面図である。この動力発生装
置100Aは、遊星ギアを二段重ねた減速機とモーターとを一体化した構成を有しており
、以下の点が第1実施例の動力発生装置100(図3,図4)と異なる。
【0059】
第2実施例の動力発生装置100Aは、回転機構部130Aを有している。回転機構部
130Aのギア固定部131Aには、中心軸110の軸方向に並列に重ねて設けられた第
1と第2のアウターギア1311a,1311bが設けられている。第1と第2のアウタ
ーギア1311a,1311bは、ギア固定部131Aがケーシング122に固定的に取
り付けられたときに、ともにローター121の凹部1212に収容される。
【0060】
第1のアウターギア1311aは、ローターギア1213と第1のプラネタリーギア1
32aを介して連結される。即ち、ローターギア1213は、一段目の遊星ギアにおける
サンギアとして機能する。第1のプラネタリーギア132aは、プラネタリーキャリア1
35に回転可能に取り付けられる。
【0061】
プラネタリーキャリア135は、比較的径が大きい円筒形状の前段部1351と、比較
的経の小さい円筒形状の後段部1352とが連接された回転部材である。プラネタリーキ
ャリア135の前段部1351は、第1と第2のアウターギア1311a,1311bの
間に配置され、その底面に第1のプラネタリーギア132aの回転軸132sを保持する
ための軸孔1354が設けられている。後段部1352は、側壁面にギア歯135tが形
成されるとともに、第2のアウターギア1311bの内周空間に配置される。
【0062】
なお、プラネタリーキャリア135の中央部には、中心軸110を挿通するための貫通
孔1353が、前段部1351および後段部1352をともに貫通して設けられている。
貫通孔1353と中心軸110との間には、プラネタリーキャリア135を回転可能とす
るための軸受け部112が配置される。なお、軸受け部112同士の間には、適宜、スペ
ーサー115が配置される。
【0063】
プラネタリーキャリア135の後段部1352と、第2のアウターギア1311bとの
間には、第2のプラネタリーギア132bが配置される。即ち、後段部1352は、二段
目の遊星ギアにおけるサンギアとして機能する。第2のプラネタリーギア132bは、プ
ラネタリーキャリアとして機能する負荷接続部133に、回転可能に取り付けられる。
【0064】
図11(A),(B)は、動力発生装置100Aの二段式の遊星ギアにおいて回転駆動
力が伝達される機構を説明するための、図5と同様な模式図である。図11(A)には、
ローターギア1213と、第1のプラネタリーギア132aと、第1のアウターギア13
11aと、プラネタリーキャリア135の前段部1351とで構成される一段目の遊星ギ
アが図示されている。一段目の遊星ギアでは、ローターギア1213の回転に伴って、第
1のプラネタリーギア132aが自身の回転軸132sを中心に回転しつつ、ローターギ
ア1213の外周を周回移動する。第1のプラネタリーギア132aの周回移動に伴って
、プラネタリーキャリア135の前段部1351が回転する。
【0065】
なお、図11(A)では、ローターギア1213の回転方向を一点鎖線の矢印で図示し
、第1のプラネタリーギア132aの回転方向を実線の矢印で図示してある。また、第1
のプラネタリーギア132aの周回移動の方向、即ち、プラネタリーキャリア135の回
転方向を二点鎖線の矢印で図示してある。
【0066】
図11(B)には、プラネタリーキャリア135の後段部1352と、第2のプラネタ
リーギア132bと、第2のアウターギア1311bと、負荷接続部133で構成される
二段目の遊星ギアが図示されている。二段目の遊星ギアでは、プラネタリーキャリア13
5の後段部1352の回転に伴って、第2のプラネタリーギア132bが自身の回転軸1
32sを中心に回転しつつ、プラネタリーキャリア135の後段部1352の外周を周回
移動する。第2のプラネタリーギア132bの周回移動に伴って、負荷接続部133が回
転し、負荷接続部133に接続された外部負荷に回転駆動力が伝達される。
【0067】
なお、図11(B)では、プラネタリーキャリア135の後段部1352の回転方向を
二点鎖線の矢印で図示し、第2のプラネタリーギア132bの回転方向を実線の矢印で図
示してある。また、第2のプラネタリーギア132bの周回移動の方向、即ち、負荷接続
部133の回転方向を破線の矢印で図示してある。
【0068】
このように、第2実施例の動力発生装置100Aは、より高トルクの回転駆動力の出力
が可能な減速機として二段式の遊星ギアを、ローター121の凹部1212に収容し、小
型化されている。この動力発生装置100Aをロボットアーム10(図1)に適用すれば
、第1実施例の場合より高いトルクで、第1〜第3の関節部J1〜J3を回動させること
ができる。なお、動力発生装置100Aでは、さらに多くの段数を有する遊星ギアが構成
されるものとしても良い。
【0069】
D.第3実施例:
図12,図13は、本発明の第3実施例としての動力発生装置100Bの構成を示す概
略図である。図12は、動力発生装置100Bの内部構成を示す概略断面図であり、図1
3は、動力発生装置100Bの各構成部を分解して示す概略分解断面図である。この動力
発生装置100Bは、増速機として機能する遊星ギアとモーターとを一体化した構成を有
しており、ベベルギア21に回転駆動力を伝達する。ベベルギア21は外部負荷となる。
動力発生装置100Bは、以下の点が第1実施例の動力発生装置100(図3,図4)と
異なる。
【0070】
第3実施例のモーター部120Bは、ローター121Bを備える。ローター121Bは
、中央に設けられた隔壁1213の外表面のギア歯121tが省略され、ローター121
Bの側壁の内周面にギア歯121tBが設けられている点以外は、第1実施例で説明した
ローター121の構成と同様の構成を有する。第3実施例の動力発生装置100Bでは、
ローター121Bがアウターギアとして機能する。
【0071】
動力発生装置100Bの回転機構部130Bは、サンギア136を備える。サンギア1
36は、中央に中心軸110を挿通するための貫通孔1361が設けられた略円筒状の部
材であり、側壁面にギア歯136tが形成されている。貫通孔1361は、ローター12
1Bの中央の隔壁1213を、空隙を残しつつ収容可能な前段部1361aと、中心軸1
10と固定的に接続される後段部1361bとを有する。
【0072】
プラネタリーギア132は、ローター121Bの凹部1212に配置され、サンギア1
36とアウターギアであるローター121Bとを連結する。プラネタリーギア132は、
プラネタリーキャリアとして機能する負荷接続部133に回転可能に取り付けられる。負
荷接続部133には、ベベルギア21の回転軸(二点破線で図示)が固定用ボルト114
によって取り付けられている。
【0073】
図14は、動力発生装置100Bの内部において回転駆動力が伝達される機構を説明す
るための図11と同様な模式図である。サンギア136は中心軸110に固定されている
ため、アウターギアであるローター121Bの回転に伴って、プラネタリーギア132は
、自身の回転軸132sを中心に回転するとともに、サンギア136の外周を周回移動す
る。プラネタリーギア132の周回移動に伴って、プラネタリーキャリアである負荷接続
部133が回転する。
【0074】
なお、図14では、ローター121Bの回転方向が一点鎖線の矢印で図示され、プラネ
タリーギア132の回転方向が実線の矢印で図示されている。また、図14では、プラネ
タリーギア132の周回移動の方向、即ち、負荷接続部133の回転方向が、二点鎖線の
矢印で図示されている。
【0075】
このように、第3実施例の動力発生装置100Bであれば、増速機として機能する遊星
ギアがモーター部120のローター121Bの凹部1212に収容され、小型化されてい
る。従って、この動力発生装置100Bを用いれば、高速な回転駆動力を要するアクチュ
エーターやマニピュレーターを、よりコンパクトに構成することが可能である。
【0076】
上記の第1の実施例では、遊星ギアを減速機として機能させ、第3の実施例では、遊星
ギアを増速機として機能させている。遊星ギアにおいては、サンギア(SG)とアウター
ギア(OG)とプラネタリーキャリア(PC)の3つのうちの1つを入力部とし(ロータ
ー121と一体的に設けられ、あるいは接続され)、残り2つのうちの1つを出力部とし
(負荷接続部133と一体的に設けられ、あるいは接続され)、残りの1つを固定部とし
ても(ステーター(ケーシング122)と一体に設けられ、あるいは接続されても)よい
。遊星ギアでは、サンギア(SG)とアウターギア(OG)とプラネタリーキャリア(P
C)とを、入力部と固定部と出力部と、のどれに割り当てるかにより、遊星ギアを減速機
あるいは増速機として用いることが決めることが出来る。逆に言えば、遊星ギアを、減速
機あるいは、増速機として用いるかにより、入力部、固定部、出力部をどれにするかを決
定することになる。また、そのときの減速比(増速比)は、サンギア(SG)とアウター
ギア(OG)の歯数により決定することが出来る。
【0077】
サンギアの歯数をZa、アウターギアの歯数をZcとすると、各状態における減速比及
び入力部の回転方向に対する出力部の回転方向は、以下のように示される。
SG OG PC 減速比 増減速 回転方向
入力部 固定部 出力部 Za/(Za+Zc) 減速 同方向
固定部 入力部 出力部 Zc/(Za+Zc) 減速 同方向
固定部 出力部 入力部 (Za+Zc)/Zc 増速 同方向
出力部 固定部 入力部 (Za+Zc)/Za 増速 同方向
入力部 出力部 固定部 −Za/Zc 減速 逆方向
出力部 入力部 固定部 −Zc/Za 増速 逆方向
【0078】
E.第4実施例:
図15,図16は、本発明の第3実施例としての動力発生装置100Cの構成を示す概
略図である。図15は、動力発生装置100Cの内部構成を示す概略断面図であり、図1
6は、動力発生装置100Cの各構成部を分解して示す概略分解断面図である。この動力
発生装置100Cは、ハーモニックドライブ機構(「ハーモニックドライブ」は登録商標
)とモーターとを一体化した構成を有しており、ベベルギア21に回転駆動力を伝達する
。動力発生装置100Cは、以下の点が第1実施例の動力発生装置100(図3,図4)
と異なる。
【0079】
この動力発生装置100Cでは、ローター121の凹部1212に、回転機構部130
Cとして、ハーモニックドライブ機構を構成するウェーブジェネレーター160と、フレ
ックススプライン162と、サーキュラスプライン165とが収容される。ウェーブジェ
ネレーター160は、底面が略長円形形状を有する略楕円筒形状の部材である。
【0080】
ウェーブジェネレーター160には、その中心軸方向(紙面左右方向)に貫通する貫通
孔1601が設けられており、貫通孔1601の内壁面には、ギア歯160tが形成され
ている。ウェーブジェネレーター160は、貫通孔1601にローターギア1213を勘
合的に収容した状態で、締結ボルトFBによってローター121と締結される。これによ
って、ウェーブジェネレーター160は、ローター121の回転に伴って回転する。
【0081】
ところで、ウェーブジェネレーター160の両端部には、外周方向に突出した鍔部16
02が設けられている。この鍔部1602は、ウェーブジェネレーター160の外周に配
置されるフレックススプライン162の脱落を防止するためのものである。なお、図16
では、フレックススプライン162の取り付けのために、一方の鍔部1602が分離され
た状態が図示されている。分離された鍔部1602は、フレックススプライン162が配
置された後に、締結ボルトFBによって固定される。
【0082】
フレックススプライン162は、ウェーブジェネレーター160の回転に合わせて変形
可能なたわみを有する環状部材であり、その外周面にはギア歯162tが形成されている
。また、フレックススプライン162の内周面には、ウェーブジェネレーター160の回
転を円滑にするためのベアリング161が配置されている。
【0083】
サーキュラスプライン165は、ローター121の凹部1212に収容されるとともに
、内側にフレックススプライン162を収容する前段部1651と、中心軸110が挿通
されるとともに、ベベルギア21の回転軸が接続される後段部1652とを有している。
前段部1651は、内周面にフレックススプライン162のギア歯162tと噛み合うギ
ア歯165tが形成されている。後段部1652には、中心軸110との間に、サーキュ
ラスプライン165を回動可能とするための軸受け部112が配置される。
【0084】
図17は、動力発生装置100Cの内部において回転駆動力が伝達される機構を説明す
るための、図14と同様な模式図である。なお、図17では、フレックススプライン16
2の内側に設けられたベアリング161については、図示が省略されている。動力発生装
置100Cでは、ローターギア1213の回転(一点鎖線の矢印で図示)にともなって、
ウェーブジェネレーター160が回転する(実線の矢印で図示)。
【0085】
ウェーブジェネレーター160は、その長円方向において、フレックススプライン16
2をサーキュラスプライン165側に押圧し、フレックススプライン162とサーキュラ
スプライン165とを接触させる。これによって、ウェーブジェネレーター160の長円
方向において、フレックススプライン162のギア歯162t(図示は省略)と、サーキ
ュラスプライン165のギア歯165t(図示は省略)とが互いに噛み合うこととなる。
なお、ウェーブジェネレーター160の短円方向においては、フレックススプライン16
2と、サーキュラスプライン165とは非接触の状態である。
【0086】
ウェーブジェネレーター160の長円方向におけるフレックススプライン162とサー
キュラスプライン165との連結により、ウェーブジェネレーター160の回転が、サー
キュラスプライン165へと伝達される。なお、図17では、サーキュラスプライン16
5の回転方向を二点鎖線の矢印で図示してある。
【0087】
ハーモニックドライブ機構は、一般に、バックラッシュを省略可能であるため、高精度
な回転の伝達が可能である。第3実施例の動力発生装置100Cであれば、ハーモニック
ドライブ機構を構成する回転機構部130Cが、ローター121の凹部1212に一体的
に収容されている。そのため、この動力発生装置100Cによれば、コンパクトで動作精
度の高いアクチュエーターやマニピュレーターを構成することが可能である。
【0088】
ハーモニックドライブ機構においても、遊星ギアと同様に、ウェーブジェネレーター1
60、フレックススプライン162、サーキュラスプライン165の3つのうちのいずれ
か1つを入力部とし、残り2つのうちの1つを固定部とし、残る1つを出力部としてもよ
い。これにより、ハーモニックドライブ機構を、減速機あるいは増速機として用いること
が可能となる。また、フレックススプライン162にダイヤフラムを接続し、フレックス
スプライン162の代わりにダイヤフラム入力部、固定部、出力部としてもよい。
【0089】
F.第5実施例:
図18は、本発明の第5実施例としての動力発生装置100Dの構成を示す概略断面図
である。図18は、回転機構部130に替えて、回転軸170が設けられている点以外は
、図3とほぼ同じである。この動力発生装置100Dでは、ローター121のローターギ
ア1213に回転軸170が交換可能に取り付けられている。
【0090】
回転軸170は、中心軸110を軸方向に挿通する貫通孔171を有している。貫通孔
171のローター121側の内壁面には、ローターギア1213が勘合的に収容されるよ
うにギア歯が設けられている。また、貫通孔171のローター121とは反対の側には、
軸受け部112や、軸受けリング113、スペーサー115が配置されている。この構成
によって、回転軸170は、ローター121とともに回転する。
【0091】
図19(A)〜(C)は、動力発生装置100Dにおいて、回転軸170に換えてロー
ター121に取り付けられる回転軸の種類を例示する概略図である。図19(A)の回転
軸170aは、先端側(紙面左側)の外表面に直線状のギア歯170taが設けられてお
り、スパーギア(平歯車)として機能する。図19(B)の回転軸170bは、先端側に
螺旋状に延びるギア歯170tbが設けられており、スクリューギア(螺旋歯車)として
機能する。図19(C)の回転軸170cは、先端側にテーパー状のギア歯170tcが
設けられており、ベベルギアとして機能する。
【0092】
このように、第5実施例の動力発生装置100Dでは、モーター部120のローター1
21に、種々の回転軸170,170a〜170cが交換可能に取り付けられる。そのた
め、動力発生装置100Dは、その汎用性が向上されている。なお、動力発生装置100
Dに用いられる回転軸170,170a〜170cは、その一部がローター121の凹部
1212に収容されている。即ち、動力発生装置100Dは、その分だけ小型化されてい
る。
【0093】
G.第6の実施例:
図20,図21は、本発明の第6実施例としての動力発生装置100Eの構成を示す概
略図である。図20は、動力発生装置100Eの内部構成を示す概略断面図であり、図2
1は、動力発生装置100Eの各構成部を分解して示す概略分解断面図である。この動力
発生装置100Eは、サイクロ機構とモーターとを一体化した構成を有しており、負荷接
続部133に回転駆動力を伝達する。動力発生装置100Eは、以下の点が第1実施例の
動力発生装置100(図3,図4)と異なる。すなわち、この動力発生装置100Eは、
ローター121の凹部1212に、回転機構部130Eとして、サイクロ機構を備えてい
る。
【0094】
図22は、サイクロ機構を模式的に示す説明図である。サイクロ機構は、偏心体180
、185と、曲線板181と、外ピン182と、内ピン183と、ベアリング1814と
、を備える。曲線板181は、略円盤形状を有しており、中心部に中心孔1810を有し
、中心孔1810の周りに8個の内ピン孔1811を有する。内ピン孔1811は、円周
上に45度間隔で配置されている。曲線板181の外周は、エピトコロイド平行線形状を
有している。本実施例では、エピトコロイド平行線形状の山の数は9個であり、40度回
転させるとエピトコロイド平行線形状が重なる。なお、本実施例では、図20に示すよう
に、サイクロ機構は曲線板181を2つ備えており、180度ずれている。その結果、一
方の曲線板181のエピトコロイド平行線形状の凸部が、他方の曲線板181のエピトコ
ロイド平行線形状の凹部に位置する。なお、図22では、図面が見難くなるため、一方の
曲線板181のみを記載している。
【0095】
外ピン182は、曲線板181側が略円形に形成されている部材である。外ピン182
は、円柱形の棒であってもよい。外ピン182は、本実施例では、10本あり、円周上に
36度間隔で配置されている。また、外ピン182は、曲線板181の外周に接するよう
に配置されている。ここで、外ピン182のうちの外ピン1821が曲線板181のエピ
トコロイド平行線形状の凸部の頂点に接しているとき、外ピン1821の対称位置にある
外ピン1822は、曲線板181のエピトコロイド平行線形状の凹部の底に接している。
図20、図21では、外ピン1822と曲線板181をギア歯の凹凸として接触した図と
して記載している。
【0096】
内ピン183は、円柱形の棒である。内ピン183は、内ピン孔1811の数と同じ数
(8本)あり、円周上に45度間隔で配置されている。内ピン183の太さは内ピン孔1
811の大きさよりも細く形成されており、内ピン183は内ピン孔1811の中に挿入
されている。なお、内ピン183が配置される円周と、内ピン孔1811が配置される円
周は、同じ大きさである。
【0097】
偏心体180、185は、それぞれ円柱形状を有している。偏心体180の中心180
1は、偏心体180の回転中心1802とずれている。偏心体185の中心1851は、
偏心体185の回転中心1852とずれている。なお、偏心体180の回転中心1802
と偏心体185の回転中心1852は同じ点(軸)である。そして、偏心体180の中心
1801と、偏心体185の中心1851の重心の位置に偏心体180の回転中心180
2(偏心体185の回転中心1852)が位置している。偏心体180、185の太さは
中心孔1810の大きさよりも細く形成されており、中心孔1810の中に挿入されてい
る。中心孔1810と偏心体180、185との間には、中心孔1810と偏心体180
、185との接触を滑らかにするためのベアリング1814が配置されている。偏心体1
80、185は、中心1801から見て回転中心1802、1852と反対側において、
中心孔1810に配置されたベアリング1814と接触している。この点を接触点180
3、1853と呼ぶ。
【0098】
図20に戻り、第6の実施例におけるサイクロ機構の接続関係について説明する。第6
の実施例では、偏心体180、185は、ローター121と一体に形成されている。外ピ
ン182は、ステーター(ケーシング122)と一体に形成されている。内ピン183は
、負荷接続部133と一体に形成されている。すなわち、偏心体180が入力部であり、
外ピン182が固定部であり、内ピン183が出力部である。
【0099】
図22を用いて、図20に示すように、サイクロ機構が接続されている場合の動作につ
いて説明する。ローター121(図20)が回転すると、偏心体180も回転する。この
とき偏心体180は、回転中心1802を中心に回転する。例えば、図22に示すように
、偏心体180が時計回りに回転したとする。このとき、接触点1803の位置も時計回
りに回転する。すると、曲線板181は、偏心体180よりベアリング1814を介して
力を受けて、外ピン182が配置された円周に沿って反時計回りに公転すると共に、自転
する。曲線板181が自転すると、内ピン孔1811の位置が、公転する。内ピン孔18
11が公転すると、内ピン183を押すため、内ピン183は内ピン183が配置された
円周に沿って公転する。本実施例では、偏心体180が一回転すると、曲線板181が1
/9回転する。例えば、曲線板181のエピトコロイド平行線形状の凸部の数をn個、外
ピンの数を(n+1)本とすると、偏心体180が一回転すると、曲線板181が1/n
回転する。したがって、極めて大きな減速比を得ることが出来る。また、外ピン182に
よって滑り接触が転がり接触に変換されるので、機械的損失が非常に小さく、極めて高い
ギア効率を得ることが可能となる。
【0100】
図23は、第6の実施例の変形例としての動力発生装置100Fの構成を示す概略図で
ある。図20に示す動力発生装置100Eでは、偏心体180をローター121と一体に
設けることにより入力部とし、外ピン182をステーター(ケーシング122)と一体に
設けることにより固定部とし、内ピン183を負荷接続部133と一体に設けることによ
り出力部としていた。この動力発生装置100Fでは、内ピン183をステーター(ケー
シング122)と一体に設けることにより固定部に変更し、外ピン182を負荷接続部1
33と一体に設けることにより出力部に変更している。このように構成しても減速機を構
成することができる。
【0101】
またサイクロ機構では、外ピン182または内ピン183の一方を入力部、他方を固定
部とし、偏心体180を出力部とすることにより、増速機としても機能させることが出来
る。このように、サイクロ機構では、偏心体180、外ピン182、内ピン183の3つ
のうちの1つを入力部、残る2つのうちの1つを固定部、残る1つをっ出力部とすること
で、サイクロ機構を、減速機あるいは増速機として機能させることが出来る。
【0102】
本実施例では、サイクロ機構は曲線板181を2つ備えているが、曲線板181の数は
1つでもよく、3以上であってもよい。例えば曲線板181がm個の場合、各曲線板18
1は360/m度ずれるように配置される。また、このとき偏心体180は曲線板181
と同数のm個あり、m個の円柱が接続された形状を有している。各円柱の中心1801と
回転中心1802を結ぶ線分は、360/m度ずれており、各円柱の中心1801の重心
に回転中心1802が位置する。
【0103】
H.第7の実施例:
図24は、第7の実施例としての動力発生装置100Gの構成を示す概略図である。第
1の実施例で説明した動力発生装置100は、モーター部120がラジアルギャップ型モ
ーターで構成されていたが、第7の実施例の動力発生装置100Gでは、モーター部12
0Gがアキシャルギャップ型モーターで構成されている点で異なっている。モーター部1
20Gは、永久磁石123と、電磁コイル群1240とを備える。
【0104】
図25は、永久磁石と電磁コイル群の構成を示す説明図である。図25(A)は、永久
磁石の構成を示す説明図である。永久磁石123は、扇形をした複数の永久磁石1231
が円盤形状に並べられて構成されている。各永久磁石1231の磁束の方向は、円盤形状
の法線方向である。永久磁石123は2つあり、電磁コイル群1240を挟んでいる。
【0105】
図25(B)は電磁コイル群の断面図の一部を示す説明図である。電磁コイル群124
0は、A相電磁コイル1240Aと、B相電磁コイル1240Bと、回路基板1241と
、を備える。回路基板1241は、A相電磁コイル1240Aと、B相電磁コイル124
0Bとに挟まれるように配置されている。A相電磁コイル1240Aと、B相電磁コイル
1240Bとは、それぞれ、永久磁石123と対向するように配置されている。
【0106】
図25(C)は、A相電磁コイルの平面図の一部を示す説明図である。図25(D)は
、B相電磁コイルの平面図の一部を示す説明図である。A相電磁コイル1240Aと、B
相電磁コイル1240Bとは同じ構造をしているので、A相電磁コイル1240Aを例に
取り説明する。A相電磁コイル1240Aは、複数の電磁コイル1242Aを備える。各
電磁コイル1242Aは、扇形に巻かれており、円盤形状に並べられている。なお、電磁
コイル1242AとB相の電磁コイル1242Bとは、電気角でπ/2だけずれて配置さ
れている。電磁コイル1242Aのうち1つの電磁コイルには、永久磁石123の磁束を
検知するための磁気センサー126Bが配置されている。この磁気センサー126Bの出
力は、電磁コイル1242Aを駆動制御するために用いられる。同様に、電磁コイル12
42Bのうち1つの電磁コイルには、永久磁石123の磁束を検知するための磁気センサ
ー126Aが配置され、この磁気センサー126Aの出力は、電磁コイル1242Bを駆
動制御するために用いられる。
【0107】
このように、動力発生装置は、モーター部として、ラジアルギャップ型モーターの他、
アキシャルギャップ型モーターを用いることが可能である。また、第7の実施例の動力発
生装置100Gでは、回転機構部130Gとして、遊星ギアを用いているが、遊星ギアの
代わりに、ハーモニックドライブ機構や、サイクロ機構を採用してもよい。
【0108】
I.第8の実施例
図26は、第8の実施例としての動力発生装置100Hの構成を示す概略図である。図
27は、エンコーダーの構成の一例を示す説明図である。第8の実施例の動力発生装置1
00Hは、第1の実施例の動力発生装置100に加えて、エンコーダー190を備えてい
る。エンコーダー190は、発光部191と、受光部192と、反射板193と、エンコ
ーダー回路194と、を備える。発光部191と、受光部192と、エンコーダー回路1
94とは、ステーター(ケーシング122)に配置され、反射板193は、ローター12
1に配置されている。発光部191から照射された光は、反射板193で反射し、受光部
192で検知される。ここで、エンコーダー190は反射板193を回転方向の円周に沿
って複数列備え、各列の反射板193からの反射光が2進数を示し、ローター121回転
に伴って1つずつ該2進数が増加ないし減少するように構成されている。反射板193を
このように構成することにより、エンコーダー回路194は、ローター121の回転位置
を正確に判断することができる。
【0109】
図28は、エンコーダーの構成の変形例を示す説明図である。この変形例では、エンコ
ーダー190は、発光部191と、受光部192と、孔195とを備える。発光部191
と受光部192は、ステーター(ケーシング122)に配置されている。ここで、発光部
191と受光部192は、ローター121を挟んでいる。ローター121の発光部191
と受光部192の間には、孔195が形成されている。孔195は、反射板193と同様
に、ローター121の回転方向の円周に沿って複数列設けられており、各列の孔195の
透過した光が2進数を示し、ローター121回転に伴って1つずつ該2進数が増加ないし
減少するように構成されている。このように、反射型ではなく透過型のエンコーダーを用
いてもよい。なお、透過型エンコーダーの場合には、ローター121の強度を維持するた
めに、孔195の代わりに、光透過可能な材料を用いて孔195を埋めてもよい。図27
に示した第8の実施例、あるいは図28に示した第8の実施例の変形例において、発光部
191と受光部192とを2組備えることにより、二相エンコーダーを実現してもよい。
なおこの二相エンコーダーを実現する場合、各エンコーダーの出力は、電気角でπの整数
倍と異なる位相差であることが好ましい。各エンコーダーの出力が電気角でπの整数倍で
ある場合には、エンコーダーの出力から回転方向を検知することが難しい場合があるから
である。また、図27に示した第8の実施例では、反射板193を用いたが、反射板19
3の代わりに光を屈折させる屈折材を用いてもよい。
【0110】
J.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱し
ない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形
も可能である。
【0111】
J1.変形例1:
上記第1実施例では、動力発生装置100は、ロボットアーム10の関節部J1〜J3
の動力源として用いられていた。しかし、第1実施例の動力発生装置100や、他の実施
例の動力発生装置100A〜100Hは、他のアクチュエーターやマニピュレーターの動
力源、あるいは、移動体の動力源などに用いられるものとしても良い。
【0112】
J2.変形例2:
上記実施例では、動力発生装置100,100A〜Hは、モーター部120で発生した
回転駆動力を外部負荷へと伝達していた。しかし、動力発生装置100,100A〜Hは
外部負荷から伝達された回転駆動力により、モーター部120に電力を発生させる発電装
置として機能するものとしても良い。このように、本発明は、電磁力を利用して動力を発
生させる動力発生装置に限らず、ローターおよびステーター、回転機構を用いて動力と電
力とを変換する電気機械装置に適用することが可能である。
【0113】
J3.変形例3:
上記実施例では、ローター121の凹部1212に、遊星ギアや、ハーモニックドライ
ブ機構、サイクロ機構などの回転機構の全部または一部が収容されていた。即ち、中心軸
110に対して垂直な方向に見たときに、ローター121と回転機構の全部または一部が
重なるように構成されていた。しかし、ローター121の凹部1212には、他の回転機
構の全部または一部が収容されるものとしても良い。例えば、ローター121の凹部12
12には、ローター121の回転をチェーンやベルトの回転を用いて伝達する回転機構が
収容されるものとしても良い。
【0114】
J4.変形例4:
上記実施例では、中心軸110の貫通孔111に導電線束25が挿通されていた。しか
し、中心軸110の貫通孔111は省略されるものとしても良く、導電線束25は、動力
発生装置100,100A〜100Hの外部に配設されるものとしても良い。
【0115】
J5.変形例5:
上記実施例では、ローター121は、回転機構を収容するための収容空間として略円環
状の溝として形成された凹部1212を有していた。しかし、ローター121は、回転機
構を収容するための収容空間として、他の構成の空間を有するものとしても良い。例えば
、ローター121を、円筒形状を有するかご型の骨組みを有する構成とし、その骨組みで
囲まれた空間を、回転機構の収容空間とするものとしても良い。
【0116】
J6.変形例6
第1の実施例では、第4の基体部14は、関節部J3を中心に第3の基体部13に対し
て相対的に回動しているが、第3の基体部13に,第3の基体部13に対して相対的に動
かない第5の基体部を備え、第4の基体部14と第5の基体部とで物を把持する把持部を
形成してもよい。すなわち、ロボットアームの先端部に物を掴むための把持部を設け、当
該把持部の駆動に第1実施例の動力発生装置100や、他の実施例の動力発生装置100
A〜100Hを用いてもよい。また、ロボットアーム10全体を移動させるモーター、駆
動部として、第1実施例の動力発生装置100や、他の実施例の動力発生装置100A〜
100Hを用いてもよい。
【0117】
上記各実施例では、負荷接続部133にベベルギア21が接続されるとして説明してい
るが、負荷接続部133に外部負荷が接続されればよく、外部負荷の形状はベベルギア2
1に限られない。
【符号の説明】
【0118】
10,10cf…ロボットアーム
11…第1の基体部
12…第2の基体部
13…第3の基体部
14…第4の基体部
21…第1のベベルギア
22…第2のベベルギア
25…導電線束
100,100A〜100H,100a〜100e…動力発生装置
110…中心軸
111…貫通孔
112…軸受け部
113…軸受けリング
114…固定用ボルト
115…スペーサー
120,120B、120G…モーター部
121,121B…ローター
1211…貫通孔
1212…凹部
1213…隔壁(ローターギア)
121t,121tB…ギア歯
122…ケーシング
1221…貫通孔
123…永久磁石
124…電磁コイル
125…磁石バックヨーク
126…位置検出部
127…回転制御回路
128…コイルバックヨーク
130,130A,130B…回転機構部
131,131A…ギア固定部
1311…アウターギア
1311a,1311b…第1と第2のアウターギア
1312…鍔部
1313…開口部
131t…ギア歯
132…プラネタリーギア
132a,132b…第1と第2のプラネタリーギア
132s…回転軸
132t…ギア歯
133,133e…負荷接続部
1331…貫通孔
1332…軸孔
133t…ギア歯
135…プラネタリーキャリア
1351…前段部
1352…後段部
1353…貫通孔
1354…軸孔
135t…ギア歯
136…サンギア
1361…貫通孔
1361a…前段部
1361b…後段部
136t…ギア歯
140…ブラシシール部
141…ゴムシール部
142…熱交換フィン
143…制御部
143c…通信部
143d…ドライバ回路
144…ケーシング
160…ウェーブジェネレーター
1601…貫通孔
1602…鍔部
160t…ギア歯
161…ベアリング
162…フレックススプライン
162t…ギア歯
165…サーキュラスプライン
1651…前段部
1652…後段部
165t…ギア歯
170,170a〜170c…回転軸
170ta,170tb,170tc…ギア歯
171…貫通孔
180、185…偏心体
181…曲線板
182、1821、1822…外ピン
183…内ピン
190…エンコーダー
191…発光部
192…受光部
193…反射板
194…エンコーダー回路
195…孔
1801、1851…中心
1802、1852…回転中心
1803…接触点
1810…中心孔
1811…内ピン孔
1814…ベアリング
FB…締結ボルト
J1〜J3…第1〜第3の関節部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械装置であって、
中心軸と、
前記中心軸の外周に沿って配置されたローター磁石を有するローターと、
前記ローターの外周に配置されたステーターと、
前記ローターに連結され、回転駆動力の伝達に用いられる回転機構と、
前記回転機構と負荷とを接続する負荷接続部と、
を備え、
前記ローターには、前記中心軸と前記ローター磁石との間において、少なくとも前記中
心軸の軸方向の一方に開口し、前記回転機構の少なくとも一部を収容する収容空間が形成
されており、
前記回転機構は、
前記ローターと接続または一体に形成される入力部と、
前記ステーターと接続または一体に形成される固定部と、
前記負荷接続部と接続または一体に形成される出力部と、
を有し、増速機または減速機として機能する、電気機械装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電気機械装置であって、
前記中心軸は、前記中心軸の軸方向に延びる貫通孔を有し、
前記貫通孔には、前記ローターの回転を制御するための電気を送信する導電線が挿通さ
れている、電気機械装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電気機械装置であって、
前記回転機構は、
前記回転機構の中心部に配置されたサンギアと、
前記回転機構の外周部に配置されたアウターギアと、
前記サンギアと前記アウターギアとの間に配置されたプラネタリーギアと、
前記プラネタリーギアを接続されたプラネタリーキャリアと、を有する遊星ギアを含
み、
前記回転機構は、前記サンギアと前記アウターギアと前記プラネタリーキャリアの3つ
のうちの1つが前記入力部であり、残り2つのうちの1つが前記固定部であり、残りの1
つが出力部である、電気機械装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の電気機械装置であって、
前記回転機構は、
前記回転機構の中心部に配置されたウェーブジェネレーターと、
前記回転機構の外周部に配置されたサーキュラスプラインと、
前記ウェーブジェネレーターと前記サーキュラスプラインとの間に配置されたフレッ
クススプラインと、を有するハーモニックドライブ機構(「ハーモニックドライブ」は登
録商標)を含み、
前記回転機構は、前記ウェーブジェネレーターと、前記サーキュラスプラインと、前記
フレックススプラインの3つのうちの1つが前記入力部であり、残り2つのうちの1つが
前記固定部であり、残りの1つが出力部である、電気機械装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の電気機械装置であって、
前記回転機構は、
外縁にエピトコロイド平行曲線形状を有し中心に形成された第1の孔と前記第1の孔
の周りに形成された複数の第2の孔とを有する曲線板と、
前記曲線板の前記エピトコロイド平行曲線と接するように配置される外ピンと、
前記第2の孔の中に配置される内ピンと、
前記第1の孔の中に配置される偏心体と、を有するサイクロ機構を含み、
前記偏心体と前記外ピンと前記内ピンの3つのうちの1つが前記入力部であり、残り2
つのうちの1つが前記固定部であり、残りの1つが出力部である、電気機械装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の電気機械装置において、さらに、
ローターと一体に形成されたエンコーダーを備える、電気機械装置。
【請求項7】
アクチュエーターであって、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の電気機械装置を備える、アクチュエーター。
【請求項8】
モーターであって、
中心軸と、
前記中心軸の外周に沿って配置されたローター磁石を有するローターと、
前記ローターの外周に配置されたステーターと、
前記ローターに連結され、回転駆動力の伝達に用いられる回転機構と、
前記回転機構と負荷とを接続する負荷接続部と、
を備え、
前記中心軸と前記ローター磁石との間には、少なくとも前記中心軸の軸方向の一方に開
口し、前記回転機構の少なくとも一部を収容するための収容空間が形成されており、
前記回転機構は、
前記ローターと接続または一体に形成される入力部と、
前記ステーターと接続または一体に形成される固定部と、
前記負荷接続部と接続または一体に形成される出力部と、
を有し、増速機または減速機として機能する、モーター。
【請求項9】
ロボットであって、
基部と、
前記基部を移動させるための駆動部と、
を備え、
前記駆動部は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の電気機械装置を含む、ロボット。
【請求項10】
ロボットであって、
基部と、
前記基部に対して相対的に運動する運動部と、
前記運動部を前記基部に対して運動させる駆動部と、
を備え、
前記駆動部は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の電気機械装置を含む、ロボット。
【請求項11】
ロボットハンドであって、
基部と、
前記基部に配置され、対象物を把持する把持部と、
前記把持部を駆動して前記把持部に対して前記対象物を把持させる駆動部と、
を備え、
前記駆動部は、請求項7に記載のアクチュエーターを含む、ロボットハンド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate


【公開番号】特開2012−147541(P2012−147541A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2759(P2011−2759)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】