説明

電気絶縁油組成物及びこの調製

電気絶縁油組成物が異性化基油から調製される。一実施形態の電気絶縁油組成物は、<5ppmの硫黄レベルを有する優れた硫黄防食特性;ASTM D−2300−1976に従って測定して分当たり<30μLの優れたガス吸収性及びASTM D2272−02に従って測定して少なくとも400分の回転式圧力容器酸化安定性(RPVOT)値を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、電気絶縁油組成物に関する。より詳細には、異性化基油から製造される電気絶縁油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電気絶縁油(又は時には「絶縁油(electrical oils)」又は「変圧器油」と呼ばれる)は、電力の伝送において必要不可欠である。電気絶縁油は、電流の通過に高い抵抗を持つことを意味する、非常に低い導電率を提供するために製造される。また、電気を移動させると多量の熱を発生するので、電気絶縁油はその冷却能力のために必要である。高性能化への要求により、アメリカ試験材料学会(ASTM)、国際電気標準会議(IEC)、英国規格(BS)及びドイツ規格DIN57370/VDE0370を含む規格が、異なる製造業者からの液体が交換可能であることを保証するために開発された。
【0003】
先行技術において電気絶縁油組成物は、通常、基油原料としてグループI、II、III、V(ナフテン油)、合成PAO(ポリ−α−オレフィン)又はこれらの混合物を使用する。これらのグループは、基油のガイドラインを作る目的で、アメリカ石油協会(API)によって開発された基礎原料の広いカテゴリーである。石油系油は十分な性能を有するが、容易に生分解しない。
【0004】
最近の改質工程によって新規の種類の油(例えばフィッシャー−トロプシュ基油(FTBO))が形成されてきており、これらの油、留分又は供給物は、フィッシャー−トロプシュ法を起源として得られたものか、又はある段階でその方法により製造されたものである。フィッシャー−トロプシュ法に用いる供給材料は、バイオマス、天然ガス、石炭、シェール油、石油、都市廃棄物、これらの派生物及びこれらの組み合わせを含む種々様々の炭化水素質資源からもたらされてもよい。フィッシャー−トロプシュ法から調製された粗製生成物は、様々な固体状、液状及びガス状炭化水素の混合物を含み、この混合物はディーゼル油、ナフサ、ワックス及び他の液状の石油又は特異な製品などの生成物に精製することができる。
【0005】
参照によって本明細書に組込まれるいくつかの出願及び公開特許、即ち米国特許出願公開第2006/0289337号、米国特許出願公開第2006/0201851号、米国特許出願公開第2006/0016721号、米国特許出願公開第2006/0016724号、米国特許出願公開第2006/0076267号、米国特許出願公開第2006/020185号、米国特許出願公開第2006/013210号、米国特許出願公開第2005/0241990号、米国特許出願公開第2005/0077208号、米国特許出願公開第2005/0139513号、米国特許出願公開第2005/0139514号、米国特許出願公開第2005/0133409号、米国特許出願公開第2005/0133407号、米国特許出願公開第2005/0261147号、米国特許出願公開第2005/0261146号、米国特許出願公開第2005/0261145号、米国特許出願公開第2004/0159582号、米国特許第7018525号、米国特許第7083713号、米国特許出願第11/400570号、米国特許出願第11/535165号及び米国特許出願第11/613936号において、フィッシャー−トロプシュ基油は、供給原料がフィッシャー−トロプシュ合成から回収されたワックス状供給物である方法から製造される。この方法は、二元機能触媒又はパラフィンを選択的に異性化することができる触媒を使用して、完全又は部分的な水素化異性化脱蝋するステップを含む。水素化異性化脱蝋は、水素化異性化条件の下で異性化ゾーンにおいて水素化異性化触媒にワックス状供給物を接触させることにより達成される。
【0006】
米国特許出願公開第2006/0113216号及び2006/0113512号は、フィッシャー−トロプシュ基油を含む誘電性流体を開示している。WO2006/136591は、変圧器油又は開閉装置油用などの使用のための高い耐酸化性の石油製品を開示しており、この組成物は、鉱物由来ナフテン基油、鉱物由来パラフィン基油又はフィッシャー−トロプシュ由来基油から選択される1つ又は複数の基油を含み、油調合物から極性化合物を取り除くために、基油は白土処理される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
低下させたガス吸収性、改善された防食及び優れた生分解性を有する電気絶縁油のニーズがなお存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態において、ASTM D3487−2000及びIEC60296−2003の少なくとも1つに準拠し、及びOECD301Dに従って測定して少なくとも30%の生分解性を有する電気絶縁油組成物が提供され、本組成物は、(a)炭素原子の連続番号及びn−d−Mによる10重量%未満のナフテン炭素を有する潤滑基油(b)添加剤パッケージ、酸化防止剤、抗ガス剤、流動点抑制剤、金属不活性化剤、金属不動態化剤、消泡剤、及びこれらの混合物から選択される、0.001から10重量%の少なくとも1種の添加剤を含む。
【0009】
別の実施形態において、電気絶縁油組成物は、金属不活性化剤として0.001から1重量%のトリアゾール誘導体、及び抗酸化剤として0.001から1重量%の少なくとも1種の芳香族アミンを含む。
【0010】
別の態様において、優れた硫黄防食性、OECD301Dに従って測定して少なくとも30%の生分解性を有し、IEC60296の要求を満たす電気絶縁油組成物が提供される。この組成物は次のものを含む:(a)炭素原子の連続番号、及びn−d−Mによる10重量%未満のナフテン炭素を有する潤滑基油;(b)金属不活性化剤としての0.001から1重量%の少なくとも1種のトリアゾール誘導体;及び(c)酸化防止剤としての0.001から1重量%の少なくとも1種の芳香族アミン。
【0011】
以下の用語は、特に断らなければ、本明細書の全体にわたって使用され、以下の意味を有する。
【0012】
絶縁/冷却能及び配電機器用に使用することができ、アメリカ試験材料学会(ASTM D−3487)及び国際電気標準会議(IEC)によって規定されたヨーロッパ規格60296によって規定された電気絶縁油規格及び試験方法を満足する組成物に関して、本明細書では、用語「電気絶縁油」、「変圧器油」、「誘電性流体」、「変圧器流体」は相互に交換して使用することができる。
【0013】
「フィッシャー−トロプシュ由来」とは、生成物、留分又は供給原料が、フィッシャー−トロプシュ法を起源として得られたものか、又はある段階でその方法により製造されたものである。本明細書では、「フィッシャー−トロプシュ基油」は、「FT基油」、「FTBO」、「GTL基油」(GTL:gas−to−liquid)又は「フィッシャー−トロプシュ由来基油」と相互に交換し使用することができる。
【0014】
本明細書では、「異性化基油」はワックス状供給物を異性化することによって製造された基油を指す。
【0015】
本明細書では、「ワックス状供給物」は少なくとも40重量%のn−パラフィンを含む。一実施形態において、ワックス状供給物は、50重量%を超えるn−パラフィンを含む。別の実施形態においては、75重量%を超えるn−パラフィンを含む。一実施形態において、また、ワックス状供給物が含む窒素及び硫黄は非常に低レベルで、例えば、窒素及び硫黄を合わせて合計25ppm未満である。他の実施形態では20ppm未満である。ワックス状供給物の例には、スラックワックス、脱油スラックワックス、精製蝋下油、ワックス状潤滑ラフィネート、n−パラフィンワックス、NAOワックス、化学プラント工程で製造したワックス、脱油石油由来ワックス、微結晶質ワックス、フィッシャー−トロプシュワックス、及びこれらの混合物を挙げることができる。一実施形態において、ワックス状供給物の流動点は50℃より高く、好ましくは60℃より高い。
【0016】
本明細書では、「流動点降下配合成分」とは、その成分を含有する潤滑基油の流動点を降下させるように、比較的高い分子量と分子中に指定されたアルキル分岐度を有する異性化したワックス状生成物を指す。流動点降下配合成分の例は、米国特許第6,150,577号、7,053,254号及び米国特許出願公開第2005−0247600A1号に開示される。流動点降下配合成分は次のようなものとすることができる:1)異性化したフィッシャー−トロプシュ由来の蒸留残渣;2)異性化した高度にワックス状の鉱油から調製された蒸留残渣、又は3)ポリエチレンプラスチックから製造した、100℃で少なくとも約8mm/sの動粘度を有している異性化ゴム。
【0017】
本明細書では、流動点降下配合成分の沸点範囲の「10パーセント点」は、その留分内に存在する炭化水素の10重量パーセントが大気圧で蒸発する温度を指す。同様に、それぞれの沸点範囲の90パーセント点は、その留分内に存在する炭化水素の90重量パーセントが大気圧で蒸発する温度を指す。1000°F(538℃)以上の沸点範囲を有するサンプルについては、沸点範囲は標準分析手法D−6352−04又はその等価法を使用して測定することができる。1000°F(538℃)未満の沸点範囲を有するサンプルについては、本開示において沸点範囲分布は標準分析手法D−2887−06又はその等価法を使用して測定することができる。減圧蒸留残渣である流動点降下配合成分に言及する場合、90パーセント点又はそれより高い沸騰限界が無関係になる蒸留残渣留分に由来するため、各々の沸点範囲の10パーセント点のみが使用されることは留意されるだろう。
【0018】
「動粘度」はASTM D445−06によって測定され、重力下での流体の流動抵抗のmm/sでの測定値である。
【0019】
「粘度指数」(VI)は、油の動粘度に対する温度変化の影響を示す経験的無単位数である。油のVIが高くなるほど、温度による粘度変化の傾向は小さくなる。粘度指数はASTM D2270−04に従って測定することができる。
【0020】
低温クランクシミュレーター見掛け粘度(CCS VIS)は、低温及び高い剪断の下で潤滑基油の粘度特性を測定する、ミリパスカル秒(mPa・s)での測定値である。CCS VISはASTM D5293−04によって測定される。
【0021】
基油の沸点範囲分布は、ASTM D6352−04、「ガスクロマトグラフィーによる174から700℃の沸点範囲の石油蒸留物の沸点範囲分布」に従って擬似蒸留(SIMDIS)によって重量%で測定される。
【0022】
「ノアック揮発性」は、ASTM D5800−05、手順Bに従って、一定の空気流を60分間流通させ250℃で油を加熱したときに失われる油の質量を重量%で表したものとして規定されている。
【0023】
ブルックフィールド粘性は、低温運転中の潤滑剤の内部流体摩擦を測定するために使用され、ASTM D2983−04によって測定することができる。
【0024】
流動点は、注意深く制御された条件で基油の試料が流動し始める温度の測定値であり、ASTM D5950−02に記載されたようにして測定することができる。
【0025】
「自己発火温度」は、空気に接して液体が自発的に発火する温度で、ASTM 659−78に従って測定することができる。
【0026】
「Ln」は、底「e」を持つ自然対数を指す。
【0027】
「トラクション係数」は、摩擦力Fと法線力Nの無次元の比として表される固有の潤滑油特性の指標である。ここで摩擦は、滑る又は転がる面と面の動きに抵抗するか妨害する機械的力である。トラクション係数は、平らな直径46mmの研磨した円盤(SAE AISI 52100鋼)に対し220度の角度をなす、研磨した直径19mmの球(SAE AISI 52100鋼)で構成されたPCS Instruments, Ltd.からのMTM Traction Measurement Systemで測定することができる。鋼球及び円盤は、独立して、毎秒3メートルの平均回転速度、40%の滑り−転がり比、及び20ニュートンの負荷で測定される。この転がり比は、球及び円盤の平均速度で割った、球及び円盤の間の滑り速度の差として規定される。即ち、転がり比=(速度1−速度2)/((速度1+速度2)/2)である。
【0028】
本明細書では、「炭素原子の連続番号」は、中間の炭素数のすべての数を有する炭素数の範囲にわたり炭化水素分子の分布を、基油が有していることを意味する。例えば、基油は、C22からC36、又はC30からC60の範囲で、中間のすべての炭素数の炭化水素分子を有することができる。ワックス状供給物が炭素原子の連続番号を有する結果、基油の炭化水素分子も互いに異なる炭素原子の連続番号を有する。例えば、フィッシャー−トロプシュ炭化水素合成反応において、炭素原子の起源はCOで、炭化水素分子は一度に一炭素原子が構築される。石油由来のワックス状供給物は炭素原子の連続番号を有する。ポリ−α−オレフィン(「PAO」)に基づく油と対照的に、異性化基油の分子は、より直鎖の構造を有し、短い枝を持つ比較的長い骨格を有する。PAOの古典的教科書記述は星形の分子であり、具体的にはトリデカンで、中心点に結合した3個のデカン分子として示される。星形の分子は理論上のものであるが、PAO分子は、本明細書に開示される異性化基油を構成する炭化水素分子より少なくより長い分岐を有する。
【0029】
「シクロパラフィン官能基を有する分子」とは、単環式又は縮合多環式飽和炭化水素基であるか、又はこれらを1個又は複数の置換基として含む分子を意味する。
【0030】
「モノシクロパラフィン官能基を有する分子」とは、3〜7員環炭素の単環式飽和炭化水素基である分子か、又は3〜7員環炭素の1個の単環式飽和炭化水素基で置換された分子を意味する。
【0031】
「マルチシクロパラフィン官能基を有する分子」とは、2個以上の縮合環の縮合多環式飽和炭化水素環式基である分子、2個以上の縮合環の縮合多環式飽和炭化水素環式基の1個又は複数で置換された分子、又は3〜7員環炭素の単環式飽和炭化水素基の2個以上で置換された分子を意味する。
【0032】
シクロパラフィン官能基を有する分子、モノシクロパラフィン官能基を有する分子、及び、マルチシクロパラフィン官能基を有する分子は、重量パーセントとして報告され、電界イオン化質量分光法(FIMS)、芳香族のHPLC−UV、オレフィンのプロトンNMRの組み合わせによって決定され、十分に本明細書に記述される。
【0033】
オキシデーターBNは、シミュレートした用途での潤滑基油の応答を測定する。1リットルの酸素を吸収するための高い値、即ち長い時間は良好な酸化安定性を示す。酸化剤BNは、340°Fで1気圧の純粋酸素下でDornte型酸素吸収装置により測定でき(R.W.Dornte「ホワイトオイルの酸化(Oxidation of White Oils)」、Industrial and Engineering Chemistry、Vol.28、26頁、1936年)、100gの油が1000mlのOを吸収する時間が報告される。酸化剤BN試験において、100グラムの油につき0.8mlの触媒が使用される。この触媒は、使用されるクランクケース油の平均金属分析をシミュレートする、可溶性のナフテン酸金属塩の混合物である。添加剤パッケージは、100グラムの油について80ミリモルのビスポリプロピレンフェニルジチオリン酸亜鉛である。
【0034】
分子のキャラクタリゼーションは、電界イオン化質量分光法(FIMS)及びn−d−M分析(ASTM D3238−95(2005年再承認))を含む、当業界で知られている方法によって行うことができる。FIMSにおいて、基油は、アルカン及び異なる不飽和数を有する分子であると特徴づけられる。異なる不飽和数を有する分子はシクロパラフィン、オレフィン及び芳香族で構成されてもよい。著しい量の芳香族が存在すれば、4−不飽和物であると同定される。著しい量のオレフィンが存在する場合は、1−不飽和物であると同定される。FIMS分析からの1−不飽和物、2−不飽和物、3−不飽和物、4−不飽和物、5−不飽和物、及び6−不飽和物の全体から、プロトンNMRによる重量%オレフィン及びHPLC−UVによる重量%芳香族を差し引いたものが、シクロパラフィン官能基を有する分子の全重量パーセントである。芳香族含量が測定されなかった場合は0.1重量%未満とみなされ、シクロパラフィン官能基を有する分子の合計重量%の計算には含まれない。シクロパラフィン官能基を有する分子の全重量パーセントは、モノシクロパラフィン官能基を有する分子の重量パーセント及びマルチシクロパラフィン官能基を有する分子の重量パーセントの和である。
【0035】
分子量はASTM D2503−92(2002年再承認)によって測定される。この方法は、蒸気圧(VPO)の熱電気測定を使用する。サンプル体積が不十分な状況においては、ASTM D2502−94の代替方法が使用されてもよいが、使用された場合はそのように指摘される。
【0036】
密度はASTM D4052−96(2002年再承認)によって測定される。試料は振動するサンプルチューブに導入され、チューブの質量変化で引き起こされる発振周波数の変化が、サンプルの密度を決定するために、較正データに関連して使用される。
【0037】
オレフィンの重量パーセントを、本明細書に規定したステップに従い、プロトン−NMRによって測定することができる。ほとんどの試験において、オレフィンは、通常のオレフィン、即ち二重結合炭素に水素が以下のように結合しているオレフィンのタイプの分布のある混合物である:アリル対オレフィンが1から2.5の間の検知可能な積分比を有するアルファ、ビニリデン、シス、トランス、及び3置換体。この比が3を超える場合は、一層大きい%のトリ又はテトラ置換オレフィンが存在することを示し、試料中の二重結合の数を計算するのに、分析技術で知られる別の仮定をすることができる。このステップは以下のとおりである:A)重水素化クロロホルム中に試験炭化水素を5〜10重量%入れた溶液を調製する。B)少なくとも12ppmスペクトル幅の正常プロトンスペクトルを取り、及びケミカルシフト(ppm)を正確に参照する。用いた装置は、レシーバー/ADCに過剰の負荷をかけることなく、信号を得るのに十分な利得範囲を持たなければならない。30度パルスを適用した場合、装置は、65,000の信号デジタル化最小ダイナミックレンジを持たなければならない。一実施形態において、装置には少なくとも260,000のダイナミックレンジがある。C)6.0〜4.5ppm(オレフィン);2.2〜1.9ppm(アリル);及び1.9〜0.5ppm(飽和物)の積分強度を測定する。D)ASTM D2503−92(2002年再承認)により測定した試験物質の分子量を用いて次のことを計算する。1.飽和炭化水素の平均分子式;2.オレフィンの平均分子式;3.全積分強度(=すべての積分強度の合計);4.試料水素1個当たりの積分強度(=全積分値/式中の水素の数);5.オレフィン水素の数(=オレフィン積分値/水素1個当たりの積分値);6.二重結合の数(=オレフィン水素×オレフィンの式中の水素/2);及び7.プロトンNMRによるオレフィンの重量%=100×二重結合の数×代表的なオレフィン分子中の水素の数÷代表的な試験物質分子中の水素の数。この試験において、プロトンNMR計算方法手順Dによるオレフィン重量%は、得られるオレフィンの重量%が低く、約15重量%より低い場合、特によく当てはまる。
【0038】
一実施形態の重量パーセント芳香族はHPLC−UVによって測定することができる。一実施形態において、HPケムステーション(Chem−station)にインターフェースされたHP1050ダイオードアレーUV−可視検出器と結合されたHewlett Packard1050シリーズ四勾配(Quaternary Gradient)高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)装置を用いて試験は行われる。高度に飽和した油中の個々の芳香族の種類は、これらのUVスペクトルパターン及びそれらの溶離時間に基づいて同定することができる。この分析のために用いられたアミノカラムは、主にこれらの環数(又は二重結合の数)に基づき芳香族分子を識別する。したがって、1つの芳香族環を含む分子は最初に溶出し、続いて1分子当たり二重結合数が増大する順序で多環式芳香族成分が溶出する。同様な二重結合特性を有する芳香族成分については、環上にアルキル置換基だけを有するものは、ナフテン置換基を有するものよりも早く溶出する。種々の芳香族炭化水素基油のUV吸収スペクトルによる明確な同定は、これらの電子遷移ピークが、環系のアルキル及びナフテン置換基の量に依存してある程度まで、純粋モデル類似化合物に対しすべてレッドシフトする事実を認識して、達成することができる。溶出する芳香族化合物の定量化は、それぞれの一般的種類の化合物について最適化された波長から作成されたクロマトグラムを、その芳香族についての適切な保持時間窓(retention time window)にわたって積分することにより行うことができる。各芳香族の種類についての保持時間窓の限定は、異なった時間で溶出する化合物の個々の吸収スペクトルを手動で評価し、モデル化合物吸収スペクトルに対するそれらの定性的類似性に基づき適当な芳香族の種類にそれらを割り当てることにより決定することができる。
【0039】
HPLC−UV較正。一実施形態において、これらの種類の芳香族化合物を非常に低いレベルでさえも同定するためにHPLC−UVを用いることができ、例えば、多環式芳香族成分は、単環式芳香族成分よりも10〜200倍強く吸収するのが典型的である。アルキル置換基は20%吸収に影響を与える。272nmで共溶出する1環及び2環芳香族成分についての積分範囲は、垂線降下法により行うことができる。それぞれの一般的種類の芳香族については、波長依存応答係数を、置換芳香族類似物に最も近いスペクトル吸光度ピークに基づき純粋モデル化合物混合物からベールの法則(Beer’s Law)によるプロットを作ることにより先ず決定することができる。芳香族成分の重量%濃度は、各種類の芳香族についての平均分子量が、全基油試料についての平均分子量にほぼ等しいと仮定することにより計算することができる。
【0040】
NMR分析。一実施形態において、精製したモノ芳香族標準物質中に少なくとも1個の芳香族官能基を有するすべての分子の重量%は、長時間炭素13NMR分析により確認することができる。NMRの結果は、高度に飽和した基油中の芳香族成分の95〜99%が単環式芳香族成分であることを知ることにより、芳香族炭素の%を芳香族分子の%に変換することができる(HPLC−UV及びD2007と一致している)。NMRによる少なくとも一個の芳香族官能基を有するすべての分子を低いレベルで正確に測定する別の試験において、500:1の最小炭素感度を与えるように、10〜12mmのナロラック(Nalorac)プローブを有する400〜500MHz NMRで15時間の長時間実験を実施して、標準法D5292−99(2004年再承認)を修正することができる(ASTM標準実施法E386による)。ベースラインの形を決定し、一貫した積分を行うために、Acorn PC積分ソフトウェアーを用いることができる。
【0041】
分岐の程度は、炭化水素中のアルキル分岐の数を指す。分岐及び分岐位置は、以下の9ステップの方法に従って炭素−13(13C)NMRを使用して決定することができる:1)DEPTパルスシーケンスを使用して、CH分岐中心及びCH分岐終端点を確認する(Doddrell,D.T.;Pegg,D.T.;Bendall,M.R.、Journal of Magnetic Resonance 1982年、48、323ff)。2)APTパルスシーケンスを使用して、複数分岐を開始する炭素(四級炭素)の不存在を確かめる(Patt,S.L.;Shoolery,J.N.、Journal of Magnetic Resonance 1982年、46、535ff)。3)当業界で知られている、作表され、計算された値を使用して、特定の分岐位置及び長さに対して種々の分岐炭素共鳴を割り当てる(Lindeman,L.P.、Journal of Qualitative Analytical Chemistry 43、1971年 1245ff;Netzel,D.A.ら、Fuel、60、1981年、307ff)。4)メチル/アルキル基の特定炭素の積分強度を、単一炭素の強度(全積分/混合物中の分子当たりの炭素の数に等しい)と比較して、異なる炭素位置の相対分岐密度を推定する。2−メチル分岐の独特な場合(末端及び分岐メチルの両方が同じ共鳴位置で発生する場合)では、強度は、分岐密度を推定する前に2で割られた。4−メチル分岐画分が計算され作表される場合、4+メチルへのその寄与は、二重計上を避けるために差し引かれねばならない。5)平均炭素数を計算する。平均炭素数は、14(CHの式量)でサンプルの分子量を割ることにより、潤滑油材料に対して十分な精度で決定され得る。6)分子当たりの分岐の数は、工程4で分かった分岐の合計である。7)100個の炭素原子当たりのアルキル分岐の数は、分子当たりの分岐の数(工程6)×100/平均炭素数から計算される。8)分岐度指数(BI)をH NMR分析により推定する。BIは、液体炭化水素組成物中の、NMRで推定された全水素中のメチル水素(化学シフト範囲0.6〜1.05ppm)のパーセンテージで示される。9)分岐近接度(BP)を13CNMRにより推定する。BPは、液体炭化水素組成物中の、NMRで推定された全炭素中の、末端基又は分岐(29.9ppmでNMR信号で表される)から離れた4つ以上の炭素である繰返しメチレン炭素のパーセンテージで示される。測定は、任意のフーリエ変換NMR分光計を使用して行うことができる。例えば、測定は、7.0T以上の磁石を有する分光計を使用して行われる。質量分析、UV又はNMR調査で芳香族炭素が不存在下であることの検証後に、13C NMR検討のためのスペクトル幅は、飽和炭素領域、即ちTMS(テトラメチルシラン)に対して約0〜80ppmに限定された。クロロホルム−d1中の25〜50重量%の溶液は、30度パルスで、次いで、1.3秒取得時間で励起された。非均一強度データを最小化するために、広帯域プロトン逆ゲート型デカップリングが、励起パルスの前で、取得中に、6秒遅延中に使用された。サンプルは、また、完全な強度の観察を確実にするために緩和剤として、0.03〜0.05M Cr(acac)(トリス(アセチルアセトネート)−クロム(III))でドープされた。DEPT及びAPTシーケンスは、Varian又はBruker操作取扱説明書に記載されている小さい偏差を伴う文献の記載に従って行うことができる。DEPTは分極移動による無歪増強(Distortionless Enhancement by Polarization Transfer)である。DEPT 45シーケンスは、プロトンに結合したすべての炭素に信号を与える。DEPT 90はCH炭素のみを示す。DEPT 135はCH及び上のCH及び相の180度外(下)のCHを示す。当業界で知られているAPTは、結合プロトン試験(Attached Proton Test)である。それはすべての炭素を見ることができる様にするが、CH及びCHが上である場合は、第4級化されたもの及びCHは下である。各サンプルの分岐特性は、全体のサンプルがイソパラフィン系であった計算での仮定を使用して13C NMRで決定することができる。不飽和化合物含量は電界イオン化質量分光法(FIMS)を使用して測定することができる。
【0042】
一実施形態において、電気絶縁組成物は、基油のマトリックスに、添加剤を含むいくつかの成分を含む。
【0043】
基油マトリックス成分:一実施形態において、基油又はこのブレンドは、生成物それ自体、この留分又は供給原料が、フィッシャー−トロプシュ法を起源として得られたものか、又はある段階でその方法からのワックス状供給物の異性化により製造されたものである、異性化基油を少なくとも1種含む(「フィッシャー−トロプシュ由来基油」)。別の実施形態において、基油は、実質的にパラフィンのワックス供給原料(「ワックス状供給物」)から製造された、少なくとも1種の異性化基油を含む。
【0044】
フィッシャー−トロプシュ由来基油は、例えば米国特許第6080301号、第6090989号及び第6165949号、並びに米国特許出願公開第2004/0079678A1号、米国特許出願公開第2005/0133409号及び米国特許出願公開第2006/0289337号を含むいくつかの特許公報に開示されている。フィッシャー−トロプシュ方法は、一酸化炭素及び水素が、共に実質的にパラフィンである、軽質の反応生成物及びワックス状の反応生成物を含む様々な形態の液化炭化水素に転化される、触媒化学反応である。
【0045】
一実施形態において、異性化基油は炭素原子の連続番号及びn−d−Mによる10重量%未満のナフテン炭素を有する。なお別の実施形態において、ワックス状供給物から製造される、異性化基油は、100℃で1.5から3.5mm/sの動粘度を有している。
【0046】
一実施形態において、異性化基油は、水素化異性化脱蝋が基油が:a)0.30重量パーセント未満の、少なくとも1個の芳香族官能基を有するすべての分子;b)10重量パーセントを超える、少なくとも1つのシクロパラフィン官能基を有するすべての分子の;c)モノシクロパラフィン官能基を有する重量パーセント分子対マルチシクロパラフィン官能基を有する重量パーセント分子の、20を超える比、及びd)28×Ln(100℃での動粘度)+80より大きい粘度指数を、有するのに十分な条件で行われる方法によって製造される。
【0047】
別の実施形態において、異性化基油が、高度にパラフィン性のワックスは、貴金属水素化成分を含む形状選択性中間孔径モレキュラーシーブを約600°F〜750°F(315−399℃)の条件で用いて水素化異性化する方法で製造される。この方法において、水素化異性化条件は、ワックス供給物中の700°F(371℃)より高い沸点を有する化合物の、700°F(371℃)より低い沸点を有する化合物への転化が、10重量%〜50重量%に維持されるように制御される。結果として生じる異性化基油は、100℃で1.0から3.5mm/sの動粘度及び50重量%未満のノアック(Noack)揮発性を有している。基油は、シクロパラフィン官能基を有する3重量%を超える分子及び0.30重量パーセント未満の芳香族を含む。
【0048】
一実施形態において、異性化基油は以下の式によって算定された量未満のノアック揮発性を有する:1000×(100℃の動粘度)−2.7。他の実施形態において、異性化基油は以下の式によって算定された量未満のノアック揮発性を有する:900×(100℃の動粘度)−2.8。第3の実施形態において、異性化基油は、100℃で>1.808mm/sの動粘度、及び以下の式によって算定された量未満のノアック揮発性を有する:1.286+20(100℃の動粘度)−1.5+551.8Ln(100℃の動粘度)。第4の実施形態において、異性化基油は、4.0mm/s未満の100℃での動粘度、及び0から100重量%のノアック揮発性を有する。第5の実施形態において、異性化基油は1.5から4.0mm/sの動粘度及び以下の式によって算定されるノアック揮発性値未満のノアック揮発性:160−40(100℃の動粘度)。
【0049】
一実施形態において、異性化基油は、100℃で2.4から3.8mm/sの範囲の動粘度及び次式によって規定される量未満のノアック揮発性を有する:900×(100℃の動粘度)−2.8−15。2.4から3.8mm/sの範囲の動粘度に対して、式:900×(100℃の動粘度)−2.8−15は式:160−40(100℃の動粘度)より低いノアック揮発性を与える
【0050】
一実施形態において、異性化基油は、100℃で3.6から4.2mm/sの動粘度、130を超える粘度指数、12重量%未満のノアック揮発性、−9℃未満の流動点を基油が有する条件の下で、高度にパラフィン性のワックスが水素化異性化される方法から製造される。
【0051】
一実施形態において、異性化基油は次式によって規定された自己発火温度(AIT)より高いAITを有する:AIT(℃)=1.6×(40℃の動粘度(mm/s))+300。第2の実施形態において、基油は329℃を超えるAIT及び28×Ln(100℃の動粘度(mm/s))+100より大きい粘度指数を有する
【0052】
一実施形態において、異性化基油は比較的低いトラクション係数を有し、特にそのトラクション係数は次式によって算定される量未満である:トラクション係数=0.009×Ln(動粘度(mm/s))−0.001[式中の動粘度はトラクション係数測定中の動粘度であり、2から50mm/sである]。一実施形態において、15mm/sの動粘度、40%の滑り−転がり比で測定したとき、異性化基油は0.023未満(又は0.021未満)のトラクション係数を有する。別の実施形態において、40%の滑り−転がり比で15mm/sの動粘度で測定したとき、異性化基油は0.017未満のトラクション係数を有する。別の実施形態において、15mm/sの動粘度、40パーセントの滑り−転がり比で測定したとき、異性化基油は150を超える粘度指数及び0.015未満のトラクション係数を有する。
【0053】
ある実施形態において、低いトラクション係数を有する異性化基油はまたより高い動粘度及びより高い沸点を示す。一実施形態において、基油は0.015未満のトラクション係数及び565℃(1050°F)を超える50重量%沸点を有する。別の実施形態において、基油には0.011未満のトラクション係数及びASTM D6352−04による582℃(1080°F)を超える50重量%沸点を有する。
【0054】
ある実施形態において、低いトラクション係数を有する異性化基油は、また23.4以下の分岐度指数、22.0以上の分岐近接度、及び9〜30の遊離炭素指数を含めた、NMRによる独特な分岐特性を有する。一実施形態において、基油は、ASTM D3238−95(2005年再承認)によるn−d−M分析による、少なくともナフテン炭素4重量%の、別の実施形態においては、少なくとも5重量%のナフテン炭素を有する。
【0055】
一実施形態において、中間の油異性化物がパラフィン族炭化水素成分を含み、分岐の程度が100の炭素当たり7個未満のアルキル分岐である方法で、異性化基油は製造される。ここで、基油は、分岐の程度が100の炭素当たり8個未満のアルキル分岐で、アルキル分岐の20重量%未満が2の位置にあるパラフィン族炭化水素成分を含む。一実施形態において、FT基油は−8℃未満の流動点;少なくとも100℃で3.2mm/sの動粘度;及び式:=22×Ln(100℃の動粘度)+132によって算定される粘度指数より大きい粘度指数を有する。
【0056】
一実施形態において、基油が含有するシクロパラフィン官能基を有する全分子は10重量%を超え、70重量%未満であり、モノシクロパラフィン官能基を有する重量パーセント分子対マルチシクロパラフィン官能基を有する重量パーセント分子の比が15を超える。
【0057】
一実施形態において、異性化基油には600から1100の平均分子量、及び分子中に100炭素原子当たり6.5から10のアルキル分岐の平均枝分れ度を有する。別の実施形態において、異性化基油には約8から約25mm/sの動粘度及び分子中の100炭素原子当たり平均6.5から10のアルキル分岐を有する。
【0058】
一実施形態において、異性化された基油は、高度にパラフィン性のワックスが、水素対供給原料の比が712.4から3562リットルのH/リットル油で水素化異性化され、基油が、10を超えるシクロパラフィン官能基を有する分子の全重量パーセント、及び15を超えるモノシクロパラフィン官能基を有する重量パーセント分子対マルチシクロパラフィン官能基を有する重量パーセント分子の比を有する方法から得られる。他の実施形態において、基油は次式によって規定される量より大きい粘度指数を有する:28×Ln(100℃の動粘度)+95。第3の実施形態において、基油は、0.30重量パーセント未満の芳香族;10重量パーセントを超えるシクロパラフィン官能基を有する分子;20を超える、モノシクロパラフィン官能基を有する分子の重量パーセント対マルチシクロパラフィン官能基を有する分子の重量パーセントの比;及び28×Ln(100℃の動粘度)+110より大きい粘度指数を含む。第4の実施形態において、基油は、100℃でさらに6mm/s以上の動粘度を有する。第5の実施形態において、基油は0.05重量パーセント未満の芳香族及び28×Ln(100℃の動粘度)+95より大きい粘度指数を有する。第6の実施形態において、0.30重量パーセント未満の芳香族、3をかけた100℃の動粘度(mm/s)より大きい重量パーセントのシクロパラフィン官能基を有する分子、及び15を超える、モノシクロパラフィン官能基を有する分子対マルチシクロパラフィン官能基を有する分子の比を、基油は有する。
【0059】
一実施形態において、異性化基油は、n−d−Mによって測定されるナフテン炭素を2から10%含む。一実施形態において、基油は、100℃で1.5〜3.0mm/sの動粘度及び2〜3%のナフテン炭素を有する。他の実施形態において、100℃で1.8〜3.5mm/sの動粘度及び2.5〜4%のナフテン炭素を有する。第3の実施形態では、100℃で3〜6mm/sの動粘度及び2.7〜5%のナフテン炭素を有する。第4の実施形態において、100℃で10〜30mm/sの動粘度及び5.2%を超えるナフテン炭素を有する。
【0060】
一実施形態において、異性化基油は475を超える平均分子量;140を超える粘度指数、及び10重量パーセント未満のオレフィンを有する。電気絶縁油組成物に組込まれたとき、基油は、混合物の空気放出を改善し低発泡特性をもたらす。
【0061】
一実施形態において、異性化基油は米国特許第7,214,307号及び米国特許出願公開第2006/0016724号に開示されるような白油である。一実施形態において、白色の異性化基油は、100℃で約1.5〜36mm/sの動粘度;次式によって算定される量より大きい粘度指数:粘度指数=28×Ln(100℃の動粘度)+105、18重量%未満のシクロパラフィン官能基を有する分子、0℃未満の流動点、及び+20以上のセーボルト色度を有している。他の実施形態において、異性化基油は100℃で約1.5センチストークスから36mm/s動粘度、次式によって算定される量より大きい粘度指数:粘度指数=28×Ln(100℃の動粘度)+95、5から18重量パーセント未満のシクロパラフィン官能基を有する分子、1.2重量パーセント未満のマルチシクロパラフィン官能性を有する分子、0℃未満の流動点、及び+20以上のセーボルト色度を有している白油である。
【0062】
一実施形態において、異性化基油は、100℃で2〜7mm/sの動粘度;40℃で6〜20mm/sの動粘度;115から150の粘度指数;−20から−60℃の範囲の流動点;350〜550の分子量;0.795から0.825の範囲の密度;93〜97%の範囲のパラフィン炭素;3〜7%の範囲のナフテン炭素;35から60時間の酸化剤BN;18から28の臭素指数;及びASTM D5800−05手順Bによって測定して10から80重量%のTGAノアックを有している。
【0063】
一実施形態において、電気絶縁組成物は、上に記述された、異性化基油の少なくとも1つから成る基油を使用する。別の実施形態において、組成物は、少なくともフィッシャー−トロプシュ基油から本質的に成る。本明細書では「本質的に‥から成る」という表現は、考慮している組成物の基本的で新規の特性に、実質的に影響しない成分の介在を許すということである。なお別の実施形態において、本組成物は少なくともフィッシャー−トロプシュ基油を、場合によって、5から50重量%の少なくとも別のタイプの油、例えば従来通り使用される鉱油、合成炭化水素油、合成エステル油、これらの混合物をその応用分野に依存して使用する。鉱物潤滑油基礎原料は、パラフィン、ナフテン及び混合基礎原油から由来した従来通りに精製された基礎原料であってもよい。使用することができる他の合成石油は合成炭化水素としては、例えばポリ−α−オレフィン;アルキルベンゼン(例えばテトラプロピレンでのベンゼンのアルキル化からアルキレート残分)、又はエチレン及びプロピレンのコポリマー、シリコーン油(例えば、エチルフェニルポリシロキサン、メチルポリシロキサンなど)を挙げることができる。他の適切な合成石油としてはポリフェニルエーテル、例えば3から7個のエーテル結合、及び4から8個のフェニル基を有するものを挙げることができる。他の適切な合成石油としては、ポリイソブテン、アルキル化ナフタレンなどのアルキル化芳香族を挙げることができる。
【0064】
添加剤成分:一実施形態において、抗ガス剤、流動点降下剤、金属不活性化剤、消泡剤、抗酸化剤(酸化防止剤)、腐食性硫黄及び帯電対策の添加剤(金属不動態化剤)、染料、マーカー、殺生物剤、帯電防止剤、及び当業界で知られている他の添加剤などの少なくとも1種の添加剤を、所望の効果を提供する十分な量で、本電気絶縁組成物は、さらに含む。一実施形態において、この十分な量は0.001から10重量%で、別の実施形態では0.005から6重量%の量である。
【0065】
一実施形態において、改善された流動点、改善された冷却特性、改善された酸化安定性、及び改善された誘電体安定性に対して特に設計された上の添加剤材料の少なくとも1種を含む添加剤パッケージを本電気絶縁油は含有する。
【0066】
改善されたガス吸収特性についての一実施形態において、本電気絶縁油組成物は、ASTM試験方法D2300に従って、+30μl/分に、又は別の実施形態において、15μl/分以下に、或いは第3の実施形態では、5μl/分以下に、ガス吸収性を低下させるために、抗ガス剤をさらに含む。一実施形態において、この量は2重量%未満である。水素が電気的ストレスにより発生する場合、低ガス傾向がある液体は発生した水素を吸収する傾向があり、それによって爆発の確率を減らすので、低ガス性は重要である。
【0067】
一実施形態において、組成物は抗ガス化合物として少なくとも1種のポリアリールアルカン化合物を含む。実施例は誘電性流体組成物に使用されるElf Atochem S.A.から市販されている組成物を含む。なお別の実施形態において、抗ガス剤(単数又は複数)は、1個又は複数の不安定な水素原子を含むか、又はジアリールを含む、フェノール化合物以外の抗ガス芳香族(単数又は複数)であり、このジアリールは1個又は複数の不安定な水素原子を含んでもよいし含まなくてもよい。適切な抗ガス剤の例としては、アルキル置換芳香族化合物、アルキル置換で部分的に飽和している芳香族化合物、及びこれらの組み合わせのグループから選択される9から11の炭素原子を有するジアリール、及び薬剤が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。別の実施形態において、組成物はアルキル置換又は非置換ビフェニル及びアルキル置換又は非置換ジアリールアルカンから成るグループから選択される抗ガス剤を含む。
【0068】
なお別の実施形態において、抗ガス化合物は水素供与添加剤、即ちそれらの内に不安定な水素原子を組込む分子である。この種の水素供与体としては、アルキル置換又は非置換の、部分飽和ポーリング(poling)芳香族(例えばある飽和度を有する多環芳香族化合物)、アルキル化単環式芳香族(例えばアルキル化ベンゼン)又はアルキル化多環式芳香族を挙げることができる。他の実施例において、抗ガス添加剤は、任意の化合物又は化合物の混合物であってもよく、非置換芳香族化合物以外の水素供与体で、例えば二環式部分飽和芳香族化合物、又はアルキル化ベンゼン化合物である。この種の二環式部分飽和化合物の例としては、アルキル化テトラヒドロナフタレンなどのジ及びテトラヒドロナフタレン化合物、アルキル化ヒドロナフタレン化合物を挙げることができる。一実施形態において、抗ガス化合物は、ジヒドロフェナントレン、フェニルオルトキシリルエタン、アルキル化ベンゼン、Dowtherm RPT(商標)(テトラヒドロ−5−(1−フェニルエチル)−ナフタレン、アセナフテン、テトラヒドロナフタレン、アルキル化テトラヒドロナフタレン、及びテトラヒドロキノリンから選択される水素供与体である。
【0069】
一実施形態において、本電気絶縁油組成物は、さらに電気絶縁油が使用されることになっている気候に対して予想される最低気温より下に流動点を低下させることができる流動点降下剤を0.10から5.0重量%含む。これは、通常、−30℃から−40℃の温度になるだろう。一実施形態において、流動点降下剤はアルキル化ポリスチレンである。他の流動点降下剤の例として、無水マレイン酸エステル−スチレンコポリマー、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ハロパラフィンワックスと芳香族化合物の縮合生成物、ビニルカルボン酸重合体、ジアルキルフマレート、脂肪酸ビニルエステルのターポリマー、エチレン酢酸ビニルコポリマー、アルキルフェノールホルムアルデヒド縮合樹脂、アルキルビニルエーテル、オレフィンコポリマー、フマル酸エステル、RohMaxによって製造されるAcryloid(商標)155Cなどのポリメタクリレートケミカル、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0070】
別の実施形態において、流動点降下剤は流動点降下配合成分である。一実施形態において、流動点降下配合成分は、異性化されたフィッシャー−トロプシュ由来減圧蒸留残渣で、これは、分子中の特定のアルキル分岐度を得るために制御した条件で異性化された高沸点の合成原油留分である。フィッシャー−トロプシュ法から調製された合成原油は、様々な固体、液体及びガス状の炭化水素の混合物を含む。フィッシャー−トロプシュワックスが水素化処理及び蒸留などの様々な方法によってフィッシャー−トロプシュ基油に転化される場合、製造された基油は、異なった、狭い留分粘度範囲に収束する。真空カラムから潤滑基油留分を取り戻した後に留まる蒸留残渣は、潤滑基油それ自体としての使用には一般に適さず、より低い分子量の生成物への転化のために水素化分解設備に、通常、再利用される。
【0071】
一実施形態において、流動点降下配合成分は、600から1100の間の平均分子量及び分子中100炭素原子について6.5から10のアルキル分岐の平均枝分れ度を有する、異性化フィッシャー−トロプシュ由来減圧蒸留残渣である。一般に、より高い分子量炭化水素は、より低い分子量炭化水素より、流動点降下配合成分としてより効果的である。一実施形態において、結果としてより高沸点の蒸留残渣材料が生じる減圧蒸留設備中のより高い留分は、流動点降下配合成分を調製するために使用される。より高い留分は、また、結果として留出物基油留分をより高収率でもたらすという長所を有する。一実施形態において、流動点降下配合成分は、これと混合される留出物基油の流動点より少なくとも3℃高い流動点を有する、異性化フィッシャー−トロプシュ由来減圧蒸留残渣である。
【0072】
一実施形態において、減圧蒸留残渣である流動点降下配合成分の沸点範囲の10パーセント点は、約850°F〜1050°F(454〜565℃)の間である。別の実施形態において、流動点降下配合成分は、950°F(510℃)より高い沸点範囲、及びパラフィンの少なくとも50重量パーセントを有するフィッシャー−トロプシュ又は石油生成物のいずれかに由来する。なお別の実施形態において、流動点降下配合成分は1050°F(565℃)より高い沸点範囲を有する。
【0073】
別の実施形態において、流動点降下配合成分は、約1050°Fより高い沸点範囲を有する材料を含む異性化石油由来基油である。一実施形態において、異性化蒸留残渣材料は、流動点降下配合成分として使用される前に脱蝋された溶媒である。流動点降下配合成分から溶媒脱蝋する間さらに分離したワックス状生成物は、溶媒脱蝋後に回収された油性の製品と比較して、改善された優れた流動点降下特性を示すことが見出された。
【0074】
一実施形態において、流動点降下配合成分は、分子中に100炭素原子当たり6.5から10のアルキル分岐の範囲の平均枝分れ度を有している。別の実施形態において、流動点降下配合成分は600〜1100、第3の実施形態では700〜1000の平均分子量を有する。一実施形態において、流動点降下配合成分は、100℃で8〜30mm/sの動粘度を有し、蒸留残渣の沸点範囲の10%ポイントは約850〜1050°Fである。なお別の実施形態において、流動点降下配合成分は100℃で15〜20mm/sの動粘度及び−8から−12℃の流動点を有している。
【0075】
別の実施形態において、流動点降下配合成分は、ポリエチレンプラスチックから製造された異性化油で、100℃で少なくとも約8mm/sの動粘度を有する。一実施形態において、流動点降下配合成分は廃棄物プラスチックから製造される。別の実施形態において、流動点降下配合成分は、以下を含む方法から製造される:ポリエチレンプラスチックの熱分解、重質留分の分離、重質留分の水素化処理、水素化処理重質留分の触媒異性化、及び100℃で少なくとも約8mm/sの動粘度を有する流動点降下配合成分の回収。一実施形態において、ポリエチレンプラスチック由来の流動点降下配合成分は、1050°F(565℃)より高い沸点範囲、1200°F(649℃)すら超える沸点範囲を有する。
【0076】
一実施形態において、添加剤は(a)メチレンビス(ジ−n−ブチルジチオカルバメート)及び(b)トルトリアゾール又はベンゾトリアゾールのジフェニルアミン誘導物を、(a)対(b)が4:1から約50:1の比で含む。金属、特に銅が電気環境中に常にあるので、金属不活性化剤は、0.10から1.5%未満までの量を組成物に加えることができる。実施例は、電気装置内の銅の触媒活性を低下させるためにベンゾトリアゾール誘導体を含む。ある実施形態において、不活性化剤は、ベンゾトリアゾール誘導体、例えばトリアゾール誘導体(Ciba GeigyからIRGAMET(商標)30などのN,N−ビス(2−エチルヘキシル)−1H−1,2,4−トリアゾール−l−メタンアミン)である。
【0077】
一実施形態において、本電気絶縁油組成物は、少なくとも0.01重量%から3.0重量%の抗酸化剤(酸化防止剤)をさらに含み、誘電性液体の酸化安定性を改善し、それによって、貯蔵、処理及び使用中のオイルスラッジ及び酸の発生を最小限にする。酸化を最小限にすると、電導及び金属腐食が最小限に、システム寿命が最大限に、電気的破壊強度が最大限になり、十分な伝熱が保証される。酸化防止剤の例としてはヒンダードフェノール、シンナメート型フェノール酸エステル及びアルキル化ジフェニルアミンを含むが、これらに限定されない。一実施形態において、酸化防止剤は、2,6−ジtert−ブチルパラクレゾール、2、6−ジtert−ブチルフェノール及びこれらの組み合わせから成る群から選択される。一例では、2,6−ジtert−ブチルパラクレゾール及び2、6−ジtert−ブチルフェノールの組み合わせである。他の例として挙げることができるが、これらに限定されないものとしては、フェノールタイプ(フェノール系)酸化防止剤、例えば2,6−ジtert−ブチル−4−エチルフェノール、4’−メチレン−ビス(2,6−ジtert−ブチルフェノール、4,4’−ビス(2,6−ジtert−ブチルフェノール、4,4’−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール、4,4’−イソプロピリデン−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−ノニルフェノール、2,2’−イソブチリデン−ビス(4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジtert−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−5−メチレン−ビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチル−フェノール、2,6−ジ−tert−l−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−4−(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−10−ブチルベンジル)−スルフィド、アルキル化ジフェニルアミン、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)、フェニル−α−ナフチルアミン及びアルキル化α−ナフチルアミンである。他のタイプの酸化防止剤はジチオカルバミン酸金属(例えばジチオカルバミン酸亜鉛)及び15−メチレンビス(ジブチルジチオカルバメート)を含む。
【0078】
酸化防止剤の1つの例は、Rhein Chemie Rheinau GmbH、Germanyによって製造されるAdditin(商標)RC9308であり、約1.5重量%のC12〜C14のt−アルキルアミン(CAS No.68955−53−3)、及び約4重量%のトリルトリアゾール(CAS No.29385−43−1)、約3.4重量%のリン酸トリブチル(CAS No.126−73−8)を含有する。この物質は、酸化防止剤に加えて、また腐食防止剤を含んでいる。他の適用可能な添加剤は、同じ製造業者によるRC7110(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)及びRC6301、又はRC7110+RC9308及びRC7110+RC6301を含む混合物である。
【0079】
一実施形態において、電気絶縁油組成物は、0.001から1重量%のトリアゾール誘導体金属不活性化剤、及び0.05から1重量%のフェノール系酸化防止剤を含む。第2の実施形態において、本組成物は、0.003から0.8重量%の銅不活性化剤、及び0.10から0.50重量%の固体のフェノール系抗酸化剤を含む。
【0080】
一実施形態において、電気絶縁油組成物(i)0.05から3.0重量%の少なくとも1種のヒンダードフェノール抗酸化剤及び(ii)0.01から1.5重量%の金属不活性化剤を含む。ヒンダードフェノール系抗酸化剤の例としては、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2、6−ジ−tert−ブチルパラクレゾール及びこれらの混合物を挙げることができる。一実施形態において、金属不活性化剤は、1,2,3トリルトリアゾールなどのトリルトリアゾール金属不活性化剤である。例としては、トリルトリアゾールとアルキル化ジフェニルアミンとの反応生成物を挙げることができる。
【0081】
製造の方法:電気絶縁油組成物を処方するのに使用される添加剤は、基油マトリックスへ別々に、又は様々な準組み合わせで混合することができる。一実施形態において、この成分はすべて添加剤濃縮物(即ち炭化水素溶剤などの希釈剤と添加剤)を同時に使用して混合される。添加剤濃縮物の使用は、添加剤濃縮物の形態であるときに、成分の組み合わせによって得られる相互の相溶性を利用する。
【0082】
別の実施形態において、電気絶縁油組成物は、基油マトリックスを別々の添加剤又は添加剤パッケージ(単数又は複数)と約60℃などの適温で均質になるまで混合することにより調製される。窒素ブランケットは、組成物の液レベル(water levels)を規定制限範囲より下に保つために、製造中使用される。
【0083】
特性:電気絶縁組成物は、ASTM D3487−2000及びIEC60296−2003によって提供される絶縁油の物理的、電気的及び化学的な特性の関連規格を満足している。
【0084】
一実施形態において、本組成物は、優れた耐酸化性、ASTM D−2300−1976に従って測定して分当たり<30μLのガス吸収性を有する低いガス吸収性、及びASTM D2272−02に従って測定して少なくとも400分の回転式圧力容器酸化安定性(RPVOT)値を示す。一実施形態において、本組成物は毎分<20μLのガス吸収性がある。別の実施形態において、本組成物は少なくとも500分のRPVOTがある。
【0085】
一実施形態において、電気絶縁油組成物は>30%の本質的な生分解性から>90%の容易な生分解性の範囲のOECD 301Dレベルを示す。一実施形態において、電気絶縁油組成物は40℃で<100mm/s(H)の動粘度及び約30%のOECD30IDの生分解性を有している。第2の実施形態において、本組成物は40℃で<40mm/s(M)の動粘度及び約40%のOECD301Dの生分解性を有している。第3の実施形態において、本組成物は40℃で<8mm/s(L)の動粘度及び≧40%のOECD301Dの生分解性を有している。第4の実施形態において、本組成物は40℃で<11mm/s(XL)の動粘度及び約80%のOECD301Dの生分解性を有している。第5の実施形態において、本組成物は40℃で<6mm/s(XL)の動粘度及び>93%のOECD301Dの生分解性を有している。
【0086】
一実施形態において、本組成物は10ppm未満の硫黄分を有し、優れた硫黄腐食特性を示す。第2の実施形態において、本組成物は<5ppm、第3の実施形態では、1ppm.未満の硫黄分を有する。
【0087】
一実施形態において硫酸スラッジ試験(ASTM D2440)にかけたとき、本組成物は、72時間で0.15質量%以下のスラッジ、及び0.5mgKOH/g以下の72時間「全酸価」(又は「TAN」)を生ずる。
【0088】
一実施形態において、電気絶縁油組成物は、絶縁油のASTM物理的性質要求をすべて満たすが、必ずしも以下のように限定されない:試験方法D1500を使用して測定して約0.5以下の色度;試験方法D92を使用して測定して145℃以上の引火点;試験方法D971を使用して測定して25℃で40ダイン/cm以上の界面張力;試験方法D92を使用して測定して−40℃未満の流動点;試験方法D1298に従って0.91以下の比重;試験方法Dl524に従って透明度と明度の外観試験;及び、試験方法D445によって測定して、0℃の76mm/s未満、40℃で12.0mm/s未満、100℃で3.0mm/sの粘度。
【0089】
一実施形態において、電気絶縁油組成物はまた、絶縁油の電気的特性の要求を満足し、ASTM要求のその特性は下記のように挙げることができるが必ずしもこれらに限定されない:試験方法D877による60Hzで30kV以上の円盤電極による絶縁破壊電圧;Dl816によって新しい油を使用して、60Hzで1.02mm(0.040インチ)のギャップで20kV以上の絶縁破壊電圧;試験方法D3300に従って、接地した25.4mm(1インチ)ギャップのニードル−球体を使用して、25℃で145kV以上の絶縁破壊電圧インパルス、試験方法D924を使用して、25℃で0.05%以下の、100℃で0.30%以下の60Hzでの力率。
【0090】
一実施形態において、電気絶縁油組成物はまた、絶縁油の化学的特性の要求を満足し、ASTM要求のその特性は下記のように挙げることができるが必ずしもこれらに限定されない:試験方法D2668を使用して測定して、又は酸化防止剤が2,6−ジtert−ブチルクレゾールの場合は試験方法D1473を使用して測定して、0.08重量%以下の、またタイプII油については0.3重量%以下の酸化防止剤含量;誘電性液体に接する銅及び銀などの特定の金属の腐食を防ぐため、試験方法D1274に従って、低い含量の元素硫黄及び熱的に不安定な硫黄を含有する化合物;試験方法Dl533による、35ppm以下の水分;試験方法D974を使用して、0.03mgKOH/g以下の中和価;及び、試験方法D4059を使用して測定して、検知できないポリ塩化ビフェニル(PCB)含量、即ち1ppm未満の含量。
【0091】
応用分野:一実施形態において、電気絶縁油は電力及び配電変圧器、回路遮断器(スイッチ)、コンデンサー(蓄電器)、及び絶縁ケーブルなどの高電圧電気機器を絶縁、冷却、潤滑するために使用される。別の実施形態において、本組成物はケーブル応用分野、レギュレーター、及び電力システム内の整流器に使用される。第3の実施形態において、本油は、医療機器(X線、MRI)及び工業的及び学術的な研究開発応用分野(ソナー、など)に使用される。可動部はトランスミッション、ハイドロスタティックトランスミッション、歯車箱、駆動装置、油圧装置、などを含む。
【0092】
以下の実施例は本発明の態様の非限定的な例示として挙げられる。
【実施例】
【0093】
特に断らなければ、本組成物は、実施例に示された量の成分の混合により調製されている。実施例で使用される成分を以下に挙げる。
【0094】
FT基油はSan Ramon,CAのChevron Corporationから入手可能である。
【0095】
IRGAMET(商標)30はCiba GeigyからのN,N−ビス(2−エチルヘキシル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1メタンアミンである。
【0096】
Additin(商標)RC7110はRhein Chemie Rheinau GmbHからのフェノール系抗酸化剤2,6−ジ−ターブチル−p−クレゾール2,6−ジ−ターブチル−p−クレゾールである。
【0097】
DPPCは2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールでいくつかのソースから商業的に入手可能な抗酸化剤である。
【0098】
Synesstic(商標)5はExxonMobilからのアルキル化ナフタレンである。
【0099】
(例1)
FTBO XXL(WOW9841)を99.835重量%、IRGAMET(商標)30を0.005重量%及びAdditin(商標)RC7110を0.16重量%含む電気的絶縁調合物をIEC60296(2003)に照らして試験にかけた。表1に示した結果は、調合物が、優れた防食特性として0.001%未満の硫黄レベルを有し、十分に適合することを示した(IEC60296の要求事項ではない)。
【表1】

【0100】
(例2)
FTBO XL(WOW9843)を99.835重量%、IRGAMET(商標)30を0.005重量%及びAdditin(商標)RC7110を0.16重量%含有する電気絶縁調合物をIEC60296(2003)に照らして試験にかけた。その結果、優れた防食特性として1ppm未満の硫黄レベルを有し、十分に適合することを示した(IEC60296の要求事項ではない)。
【表2】

【0101】
(例3)
FTBO XXL(WOW9836)を94.73重量%、DBPC抗酸化剤を0.27重量%及びSynesstic(商標)5添加剤を5重量%含有する電気絶縁調合物を形成した。試料をガス吸収性(ASTM D−2300−1976)、回転式圧力容器酸化安定性又はRPVOT(ASTM D2272−02)などの酸化試験にかけた。その結果、27.7μl/分のガス吸収性を及び150℃で423分のRPVOTを示す。
【0102】
実施例1〜3で使用されるFTBO基油の特性を表3に示す。
【表3−1】


【表3−2】

【0103】
生分解性実施例:微生物による分解及び微生物への材料の毒性の評価試験は、電気絶縁油として使用する材料の生分解性の重要な指標である。材料の生物分解は、CO発生、有機性炭素の酸素消費量及び除去などの様々なパラメーター、又は化合物に特定の方法によってモニターすることができる。1つの標準試験は、OECD301D(密閉瓶試験)であり、「容易な生分解性」の限界は≧60%、「中程度又は本質的な生物分解性」の限界は20%である。
【0104】
Chevron Corporationからのいくつかの異性化基油FTBOをOECD301D(密閉瓶試験)にかけた。生分解性試験及びOECD301D結果で使用したFTBO油の特性を表4に示す。
【表4】

【0105】
本明細書及び添付された特許請求の範囲の目的のために、特に断らなければ、明細書及び請求項で使用される量、百分率又は割合及び他の数値を表すすべての数は、すべての場合に「約」という用語によって変更されるものと理解されてよい。したがって、もし逆の指摘がなければ、以下の明細書及び添付の特許請求項で述べられた数のパラメーターは、本発明によって得ようとされた所望の特性に依存して変動することがある近似である。本明細書及び添付された特許請求の範囲で使用される、単数形態の「a」、「an」及び「the」は、明白にまた明瞭に一指示物に限定するのでなければ、複数の指示物を含むことが留意される。本明細書で使用する用語「含む」及び、その文法上の変形は、非限定的であるように意図され、リスト内の品目の詳説が、リストに挙げた品目と置換又は追加できる他の類似のアイテムを排除するものではない。
【0106】
最も良好な方法を含め、本発明を開示し、また任意の当業者が本発明を製造し使用することを可能にするために、この明細書は具体例を使用している。特許の範囲は請求によって規定され、当業者に生じる他の具体例を含むことがある。このような他の具体例が、請求項の文字通りの言語と異ならない構成要素を含む場合、又は、請求項の文字通りの言語と実質的には異ならない等価な構成要素を含む場合、これらの具体例は、特許請求の範囲内になるように意図される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ASTM D3487−2000及びIEC60296−2003の少なくとも1つに準拠した電気絶縁油組成物であって、
(a)潤滑基油
(b)添加剤パッケージ、酸化防止剤、抗ガス剤、流動点降下剤、金属不活性化剤、金属不動態化剤、消泡剤、及びこれらの混合物から選択される、0.001から10重量%の少なくとも1種の添加剤を含み、
潤滑基油がOECD301Dに従って測定して少なくとも30%の生分解性、炭素原子の連続番号、及びn−d−Mによる10重量%未満のナフテン炭素を有する組成物。
【請求項2】
潤滑基油が100℃で2.0〜3.8mm/sの範囲の動粘度及び式:900×(100℃の動粘度)−2.8−15によって規定される量未満のノアック揮発性を有する、請求項1の電気絶縁油組成物。
【請求項3】
潤滑基油が、a)少なくとも1種の芳香族官能基を有するすべての分子が0.30重量パーセント未満、b)少なくとも1種のシクロパラフィン官能基を有するすべての分子が10重量パーセントを超え;c)モノシクロパラフィンを含む分子の重量パーセントとマルチシクロパラフィンを含む分子の重量パーセントの比が20を超え;及びd)28×Ln(100℃の動粘度)+80を超える粘度指数を有する、請求項1及び2のいずれかに記載の電気絶縁油組成物。
【請求項4】
潤滑基油が600から1100の平均分子量、及び分子中に100炭素原子当たり6.5から10のアルキル分岐を有する平均枝分れ度を有する、請求項1から3までのいずれか一項に記載の電気絶縁油組成物。
【請求項5】
1.6×(40℃の動粘度(mm/s))+300によって規定される自己発火温度(AIT(℃))より大きいAIT(℃)の潤滑基油を有する、請求項1から4までのいずれか一項に記載の電気絶縁油組成物。
【請求項6】
潤滑基油が、0.009×Ln(動粘度(mm/s))−0.001(式中、動粘度は、トラクション係数の測定中の油の粘性である)によって算定した量未満のトラクション係数を有する、請求項1から5までのいずれか一項に記載の電気絶縁油組成物。
【請求項7】
潤滑基油が、OECD301Dに従って測定して少なくとも80%の生分解性を有する、少なくとも1種の異性化された基油から本質的に成る、請求項1から6までのいずれか一項及び請求項1に記載の絶縁油組成物。
【請求項8】
電気絶縁油が、ASTM D−2300−1976に従って測定した<30μL/分のガス吸収性を示す、請求項1から7までのいずれか一項及び請求項1に記載の電気絶縁油組成物。
【請求項9】
電気絶縁油が、ASTM D−2300−1976に従って測定した<20μL/分のガス吸収性を示す、請求項1から8までのいずれか一項及び請求項9に記載の電気絶縁油組成物。
【請求項10】
電気絶縁油が、ASTM D2272−02に従って測定して、少なくとも400分の回転式圧力容器酸化安定性(RPVOT)値を示す、請求項1から9までのいずれか一項に記載の電気絶縁油組成物。
【請求項11】
電気絶縁油が、ASTM D2272−02に従って測定して、少なくとも500分の回転式圧力容器酸化安定性(RPVOT)値を示す、請求項1から10までのいずれか一項に記載の電気絶縁油組成物。
【請求項12】
添加剤が、水素供与体、1から6重量%の量のアルキル化ナフタレン、ポリメタクリレート;ポリアクリレート;ポリアクリルアミド;ハロパラフィンワックス及び芳香族化合物の縮合物;ビニルカルボン酸塩重合体;ジアルキルフマレート、脂肪酸のビニルエステル、及びアルキルビニルエーテルのターポリマー及びこれらの混合物の流動点降下配合成分の群から選択される流動点降下剤;及びフェノール化合物、芳香族アミン、硫黄及びリンを含有する化合物、有機硫黄化合物、有機リン化合物及びこれらの混合物から成る群から選択される抗酸化剤の少なくとも1種である、請求項1から10までのいずれか一項に記載の電気絶縁油組成物。
【請求項13】
添加剤が、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、トリルトリアゾール誘導体及びこれらの混合物から成る群から選択される金属不活性化剤である、請求項1から12までのいずれか一項に記載の電気絶縁油組成物。
【請求項14】
潤滑油を塗る基油が5ppm未満の硫黄含量を有する、請求項1から14までのいずれか一項に記載の電気絶縁油組成物。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか一項に記載の電気絶縁油組成物を含む電気機器。

【公表番号】特表2010−532084(P2010−532084A)
【公表日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−515075(P2010−515075)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/068180
【国際公開番号】WO2009/006156
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(503148834)シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド (258)
【Fターム(参考)】