説明

電気自動車の充電システム

【課題】設備費用が安価で、急速充電が可能な電気自動車の充電システムを提供する。
【解決手段】電気鉄道用の電力供給系統のき電線5からの直流電力で、電気自動車10に搭載された動力用の蓄電装置11を充電する。ここに、き電線5と蓄電装置11とは、充電ステーション2に設けられた給電端子26と電気自動車に取り付けられた受電端子部22とを電気的に接続することにより、接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車の動力用蓄電池を充電する為の電気自動車用の充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車は、動力用蓄電池を搭載して、この動力用蓄電池からの電力をモータに供給して走行する。したがって、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等を動力とした一般の自動車のように排気ガスの問題がなく、クリーンで環境に優しい技術として期待されている。
【0003】
電気自動車の充電方法については、種々の方法が提案されている。電気自動車に関していえば、ガソリン車やディーゼル車との対比の関係で、その航続距離(走行可能距離)と充電時間が問題となる。すなわち、電気自動車は動力用蓄電池に蓄えられた電気エネルギーを動力源として走行するので、1回あたりの蓄電池の充電での航続距離が問題になるとともに、蓄電池の充電時間が、電気自動車の競争力を決める重要なファクターとなっている。これは、ガソリン車等の給油時間に比べて、蓄電池の充電時間がかなり長いことに起因している。
【0004】
電気自動車に搭載の蓄電池を充電する方法として、特許文献1に示すようにDC−DCコンバータを用いる方法や、特許文献2および特許文献3に示すように別途用意した蓄電池を用いて充電する方法や、特許文献4に示すように蓄電池の交換による方法が提案されている。
【0005】
特許文献1を除き、いずれも電気自動車に搭載される動力用蓄電池の急速充電を課題としたものであり、充電に必要な時間の短縮に関する技術が開示されている。なお、特許文献1には、充電対象として電気自動車ではなく、鉄道もしくは軌道の電気車両に搭載の蓄電池の充電に関する技術が開示されている。
【0006】
ここで、本発明のバックボーンとなる電気鉄道の電力供給システムについて、電気鉄道固有の事項を中心に説明する。図17は、現在採用されている一般的な電気鉄道用の電力供給システムである(例えば、特許文献5)。電気鉄道用の変電所309では、電力会社の商用交流電源系統301から交流電力を受電して、変圧器303で適当な電圧に降圧した後、整流器304にて直流電力に変換し、き電線305を介して空中架線306からパンタグラフ311を通じて電気車両310に直流電力を供給している。
【0007】
電気車両310は、供給された直流電力を車両に搭載された電力変換装置312を介して走行用モータ313に電力を供給することで電気エネルギーを走行エネルギーに変換して力行(加速走行)を行う。加速時には電気車両310は大きな電力負荷となるので、架線306に大電流が流れ架線電圧が降下し、ひいてはき電線305の電圧が降下する。
【0008】
また、反対に回生能力を持つ電気車両310は、減速時には電気車両310が持っている走行エネルギーを、走行用モータ313を発電機として使用して、電気エネルギーに変換を行い、それが回生電力となる。
【0009】
回生電力は、同時に走行している他の電気車両が加速走行時であれば、その電気車両で消費されるが、加速走行する電気車両がない場合は回生電力は消費されず、架線電圧が上昇してき電線電圧が上昇する。そのため、電気車両310では一定電圧以上で回生電力の発生を抑えるよう電気車両の電力変換装置312による制御が行われ、いわゆる回生の絞り込みが行われる。さらに、それ以上に電圧が上昇すれば、電気車両310の電力変換装置312によって電力の回生を打ち切る制御が行われ、一般的にいわれる回生失効となる。
【0010】
回生の絞り込みもしくは回生失効が起これば、電気車両310の必要な減速度を確保するために機械ブレーキを使用することになり、走行エネルギーは最終的に熱エネルギーに変換され無駄に廃棄されることになる。
【0011】
回生失効を防止するため、変電所で回生電力を消費するためにチョッパーを利用して回生電力を抵抗器で熱エネルギーに変換する方法もとられているが、この場合も回生電力が無駄に廃棄されることになる。図17に示す変電所309においては、回生失効を防止するため、電力貯蔵装置308を配置して、充放電制御を行なうDC−DCコンバータ302を介して電力貯蔵装置308に回生電力の貯蔵を行う例が示されている。このような電力供給システムでは回生電力は無駄に廃棄されることはないが、DC−DCコンバータ302や電力貯蔵装置308は高価であるので変電所309の建設費が高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2010−23785号公報
【特許文献2】特開2009−77557号公報
【特許文献3】特開平07−250405号公報
【特許文献4】再表2008−123543号公報
【特許文献5】特開2001−260719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
電気自動車に搭載の蓄電池の充電を短時間に行ないたいという要望は、ガソリン車等との対抗上、強く求められている。そして、その手法が種々提案されているが、一般的に短時間で蓄電池を充電するためには、高電圧を印加して、大電流を流して蓄電池を充電する必要がある。つまり、電圧と電流の積が電力であるので、急速充電には大電力を必要とすることになり、設備費と契約電力料金が大きくなるという問題がある。
【0014】
例えば、1kWhで5km走行する電気自動車を500km走行させる仕様で100kWhの蓄電池が搭載されている場合、36秒で充電するためには10,000kWの充電設備が必要になる。日本では契約電力は1kW当り1ヶ月間で約1,700円必要なので年間の契約料は2億400万円になる。
【0015】
更に、充電器は使用最大電力に応じてその体格が大きくなり、価格が高くなる。例えば、5万円/kWとすると充電器は5億円になり過大な設備費用を必要とする。
【0016】
特許文献2には、車外に設置した急速充電器から車載の高圧蓄電池に充電して、この高圧充電器で低圧蓄電池を充電する技術が開示されている。この場合、車外に設置した充電器が高価になるという問題がある。また、車載の高圧蓄電池も必要とするので充電システムが複雑化し高価になるという問題がある。
【0017】
特許文献3には、車外に設置した大容量の蓄電池から車載の蓄電池を充電する技術が開示されている。これは蓄電池から蓄電池への充電が比較的速やかに行なわれることを利用したものである。この方法によれば、車外に設置した大容量の蓄電池の充電は深夜電力によって充電されるので、充電に大電力を必要とせず、契約電力の低減および充電器の小型化・低価格化が可能である。しかし、この方法では、別途大容量の蓄電池が必要となり、大きな設備費用を必要とする。
【0018】
特許文献4には、車載の蓄電池を既に充電済みの蓄電池との交換を行うことにより、蓄電池の充電に要する時間の短縮を図る技術が開示されている。この技術によれば、蓄電池の交換作業と、交換した蓄電池を充電場所まで搬送して充電する作業が必要になるので、作業が煩瑣となり工賃が高くなる。また、交換用の蓄電池が別途必要となり、大きな設備費用を必要とする。
【0019】
特許文献1には、電気車両に搭載の蓄電池を電気鉄道のき電線から充電する技術が開示されているが、き電線の公称電圧と蓄電池の仕様電圧にはギャップがある(例えば、き電線の公称電圧が1,500Vであるところ蓄電池の仕様電圧が600Vである場合等)。この電圧のギャップをうめて降圧し、適切に蓄電池の充放電を行うために蓄電池の充電に別途DC−DCコンバータを必要としている。これは、電気鉄道の電力供給システムにおいて、電力供給系統の電圧変動が大きいためである。すなわち、商用の電力系統において、その電圧変動は高々10%程度であるところ、電力供給システムにおいては、ときには30%を超えることがある。この電圧変動に耐えて適切に蓄電池の充放電を行なうために、DC−DCコンバータが用いられている。急速充電をする場合は、DC−DCコンバータは大電力仕様とする必要があり、高価となる。
【0020】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、電気鉄道のき電線から電気自動車に搭載された動力用蓄電池を充電することにより、高価な充電器もしくはDC−DCコンバータを必要とせず、また、多大な契約電力の負担を要せず、別途充電用の大容量蓄電池も不要であり、蓄電池の交換の手間もない、安価でシンプルな電気自動車に搭載された蓄電池の急速充電システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
(請求項1)
上記の目的を達成するために、本発明に係る電気自動車の充電システムは、交流電力回線から受電する変圧器と前記変圧器に接続された整流装置と前記整流装置に接続されたき電線とを有する電気鉄道用電力供給システムにおいて、電気自動車に搭載され、当該電気自動車に走行用の駆動電力を供給する充電可能な蓄電装置と、前記き電線に接続された給電用接続子と、前記電気自動車に取り付けられ、前記蓄電装置に接続された受電用接続子とを備え、前記給電用接続子と前記受電用接続子とを電気的に接続することにより、前記蓄電装置が前記給電用接続子を介して前記き電線と接続して充電される。
【0022】
この構成によれば、好ましくは、き電線と給電用接続子の間に直流遮断器を設けてもよい。直流遮断器を設ければ、充電システムに過電流が流れもしくは地絡事故が生じたときに、事故電流を遮断して充電システムを保護することが可能となる。直流遮断器は高速度で作動する高速直流遮断器であってもよい。直流遮断器は、空気遮断器であってもよく、真空遮断器であってもよい。
【0023】
電気自動車は充電ステーションに駐車して、き電線から直流電力の供給を受けて電気自動車に搭載の蓄電装置の充電を行う。ここに、受電用接続子は電気自動車に取り付けられているが、給電用接続子は地上設備として設けられていて、充電ステーションの固定設備の一部をなす。
【0024】
電気自動車は、充電可能な蓄電装置と、蓄電装置から電力変換器を介して走行用のモータに電力が供給されて運転される。本発明に係る電気自動車は、前記蓄電装置や電力変換器を備えるとともに、ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンを搭載したいわゆるハイブリッド車であってもよい。ハイブリッド車によっては、搭載した蓄電装置の充電が必要になることもあるからである。
【0025】
蓄電装置は、好ましくは充電が可能な二次電池であって、二次電池として、例えば鉛電池、ニッケル水素電池またはリチウム電池であってもよい。また、蓄電装置として、二次電池以外では、キャパシタなどの電力貯蔵が可能なものであってもよい。電気自動車は、乗用車であってもよく、バスやトラックであってもよく、バイクであってもよい。充電可能な蓄電装置と電力変換器を介して走行用のモータで運転が可能であればよい。バスの場合は、電池バスとして知られている。
【0026】
充電ステーションは、一般道路の近傍に設けられておれば、随時充電が可能である。電気自動車が、公共交通機関として定められた路線を定期的に運行される路線バス(電池バス)である場合は、停留所または車庫に充電ステーションが設けられていてもよい。路線バスが停留所または車庫に停車中に充電を行えば、電池バスの充電が電池バスの運行に与える影響を少なくすることができる。充電ステーションの好適な場所としては、き電線が近くを通る電気鉄道の沿線沿いが考えられる。このような場合、き電線の延伸距離が短くてすみ、設置費用が安価であり、電力損失も少なくすることができる。なお、本発明の説明において電気鉄道とは、いわゆる電気鉄道の他、軌道法における軌道を含むものとする。
【0027】
充電ステーションに停車する電気自動車は1台に限定されるものでなく、複数台であってもよい。電気自動車が複数台充電ステーションにき電線を介して接続されていれば、電気鉄道の電力供給システムとして、電気自動車の蓄電装置の分だけ、電力貯蔵装置の抵抗が小さくなって省エネ効果が大きくなるので、電力供給システムにとっては好ましい。すなわち、回生電力を多く貯蔵することができ、省エネルギーに役立つ。また、電気車両の力行に伴うき電線の電圧低下の軽減にも、大容量の電力貯蔵は威力を発揮する。
【0028】
給電用接続子および受電用接続子は、2つの導体を電気的に接続する役割を果たすものであり、電気コネクタのプラグとレセプタクルや、端子形状をしたものや、ブスバーとシューの組み合わせたものであってもよい。
【0029】
(請求項2)
また、本発明に係る電気自動車の充電システムは、前記き電線と前記蓄電装置が直流電圧の調整が可能なDC−DCコンバータを介さずに接続されていてもよい。
【0030】
電気鉄道用の変電所には、き電線の公称電圧と蓄電池の仕様電圧の電圧ギャップをうめて降圧し、適切に蓄電池の充放電を行うために、特許文献1に示すような直流電圧の調整が可能なDC−DCコンバータを設けることがある。これは、電気鉄道の電力供給システムにおいて、その電力供給系統の電圧変動が大きいためである。これは、電気車両が力行、回生を行うからであり、電圧変動がときには30%を超えることがある。この電圧変動を抑制して適切に機器の運転を行うために、直流電圧の調整が可能なDC−DCコンバータを設けることがある。本発明の構成によれば、高価なDC−DCコンバータを必要としない。
【0031】
(請求項3)
また、本発明に係る電気自動車の充電システムは、前記給電用接続子が、前記変圧器が設置された変電所と異なる箇所に設けられていてもよい。
【0032】
この構成によれば、給電用接続子が変電所に設けられていないので、充電ステーションは、変電所の設置場所とは独立に自由に選択可能となるので、充電ステーションの配置の融通性が高まる。
【0033】
(請求項4)
上記蓄電装置は積層型ニッケル水素電池であることが好ましい。また、当該ニッケル水素電池の導電剤に炭素を含むことが好ましい。
【0034】
(請求項5)
また、本発明に係る電気自動車の充電システムは、前記受電用接続子が前記電気自動車の屋根に設けられていて、当該受電用接続子に充電時に対向する位置に前記給電用接続子が配されていてもよい。
【0035】
この構成によれば、好ましくは電気自動車の屋根に設けられた受電用接続子に対抗する上方に、給電用接続子を地上側設備として設け、当該給電用接続子をき電線に接続する。電気自動車が充電ステーションの所定位置に停車したときに、受電用接続子を上昇させるか、給電用接続子を降下させることにより、受電用接続子と給電用接続子とを接触させて、電気的に接続可能にする。したがって、受電用接続子は電気自動車の屋根近傍に設置されていればよく、電気自動車の上方部に位置していればよい。係る受電用接続子には、作業の安全のために感電防止板を設けてもよい。電気自動車が電池バスのような大型自動車である場合、受電用接続子を電気自動車の屋根に設けることは、き電線の空中配線が可能となり、充電ステーションの設備の簡素化に有利である。
【0036】
(請求項6)
また、本発明に係る電気自動車の充電システムは、前記電気自動車の側部もしくは床部であって前記給電用接続子に充電時に対向する位置に前記電気自動車に搭載された前記蓄電装置に接続された受電用接続子を備えていてもよい。
【0037】
この構成によれば、給電用接続子とこれに嵌合する受電用接続子からなる電気コネクターを用いて、き電線と蓄電装置を電気的に接続してもよい。一般に係る電気コネクターはプラグとレセプタクルからなり、プラグはケーブル側に取り付けられ、レセプタクルは機器側に取り付けられる。電気コネクターは、安全に、確実に、かつ容易に人手での脱着が可能である。電気コネクターは、ねじ式や嵌合式等種々の組み合わせがある。電気コネクターによる接続は、比較的車高の低い乗用車のような電気自動車に適している。ガソリン車における給油の感覚で電気コネクターを電気自動車に接続することができる。
【0038】
(請求項7)
また、本発明に係る電気自動車の充電システムは、前記電気自動車の上部であって前記受電用接続子と前記蓄電装置との間に伸縮自在な蛇腹部を有し、前記給電用接続子に充電時に対向する位置に前記電気自動車に搭載された前記蓄電装置に接続された受電用接続子を備えていてもよい。
【0039】
この構成によれば、蛇腹部はラックとピニオン式で伸縮を可能にしたものであってよく、また、空気シリンダーとピストンの組み合わせにより伸縮をさせてもよく、あるいは電動サーボを用いて伸縮させてもよく、更には電動モータとリミットスイッチにより伸縮させてもよい。道路走行中は蛇腹部を縮めて受電用接続子を下げ、充電ステーションで充電時に蛇腹部を延伸して受電用接続子を上げてもよい。
【0040】
(請求項8)
また、本発明に係る電気自動車の充電システムは、前記給電用接続子が、前記変圧器が設置された変電所に備えられていて、前記電気自動車の屋根であって前記給電用接続子に充電時に対向する位置に前記電気自動車に搭載された前記蓄電装置に接続された受電用接続子を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、電気鉄道用の電力供給システムのき電線から直流電力の供給を受けて高電圧で大電流で充電するので、急速充電が可能である。すなわち、本発明による充電システムによれば、充電に必要な大電力は電気鉄道用の電力供給システムから供給されるので、別途大電力の契約の必要がなく、高価な充電器やDC−DCコンバータを必要としないので安価なシステムを提供する。副次的には、電気鉄道における回生電力の貯蔵や、電力不足によるき電線電圧の低下に対処することが可能となり、省エネルギー効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1の実施形態の電気自動車の充電システムの概略構成図である。
【図2】ニッケル水素電池を構成する単位電池の構造を示す断面図である。
【図3】図2に示す単位電池の枠形部材、第1蓋部材及び第2蓋部材の構造を示す斜視図である。
【図4】電池モジュールの横断面図である。
【図5】電池モジュールに用いられる伝熱板の斜視図である。
【図6】各種電池等のSOC(state of charge)に対する電圧変化を示すSOC特性図である。
【図7】本発明の第1の実施形態の電気自動車の充電システムの給電部と受電端子部の外観の斜視図である。
【図8】(a)は、本発明の第1の実施形態の電気自動車の充電システムの給電部と受電端子部の外観の側面図であり、(b)は、同充電システムの給電部と受電端子部の外観の正面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態の電気自動車の充電システムの概略構成図である。
【図10】本発明の第2の実施形態の電気自動車の充電システムの給電コネクターの外観の斜視図である。
【図11】本発明の第2の実施形態の電気自動車の充電システムの充電方法を示すフローチャートである。
【図12】(a)は、本発明の第3の実施形態の電気自動車の走行時の状態を示す図であり、(b)は、充電時の状態を示す図である。また(c)は、(b)における要部の拡大図である。
【図13】本発明の参考例の電気自動車の充電システムの概略構成を示す図である。
【図14】電車と電池バスを示した充電システムの構想図である。
【図15】路面電車と電池バスを示した充電システムの構想図である。
【図16】本発明の第1の実施形態の電気自動車の充電システムの試験結果を示す表である。
【図17】従来技術からなる電気鉄道の電力供給システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明に係る実施の形態を図面に基づき説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0044】
1.[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電気自動車の充電システムの概略構成図である。図1において、電気自動車10は変電所8とは異なる場所に設けられた充電ステーション2に、電気自動車10の蓄電装置11を充電するための設備が準備されている。すなわち、電気自動車10は、車載用の蓄電装置11と、回生機能を有する電力変換器12と、蓄電装置11から電力変換器12を介して電力が供給される走行用モータ13とを搭載し、走行用モータ13によって車輪15が駆動され、一般道路上を走行可能に構成されている。
【0045】
そして、電気自動車10の屋根には受電端子部22が設けられている。この受電端子部22は、蓄電装置11の正極側端子(図示せず)と電気的に接続された正側受電端子53aと、蓄電装置11の負極側端子(図示せず)と電気的に接続された負側受電端子53bとを有している(図8参照)。蓄電装置11としては、充電が可能な二次電池やキャパシタを用いてもよい。
【0046】
なお、電気自動車10がガソリンエンジンをも搭載してなるハイブリッド車である場合においては、ハイブリッド車に搭載された蓄電装置へも充電が可能である。
【0047】
図1に示す電気鉄道用の変電所8では、電力会社の商用交流電源系統1からの交流電力を受電して、変圧器3で適当な電圧に降圧した後、整流器4にて直流電力に変換し、き電線5を介して電気車両16に直流電力を供給する。
【0048】
電気車両16は、供給された直流電力を車両に搭載された電力変換器17を介して走行用モータ18に電力を供給することで電気エネルギーを走行エネルギーに変換して力行(加速走行)を行う。加速時には電気車両16は大きな電力負荷となるので、き電線5に大電流が流れき電線5の電圧が降下する。しかし、変電所8に電力貯蔵装置6が設置されておれば、電力貯蔵装置6から電力をき電線5に供給することにより電圧の低下は軽減される。
【0049】
一方減速時には、電気車両16が持っている走行エネルギーは、走行用モータ18が発電機として作用して、電気エネルギーに変換を行い、回生電力を発生させる。
【0050】
回生電力は、同時に走行している他の電気車両が加速時であれば、その電気車両で消費されるが、回生電力を消費する加速電気車両がない場合は、変電所8に設置した電力貯蔵装置6に貯蔵される。電力貯蔵装置6を設置することにより、回生失効を防ぎつつ省エネルギーを実現することができる。
【0051】
図1に示す充電ステーション2は、電気自動車10が駐車可能になっている。そして、この充電ステーション2において、き電線5は直流遮断器9および給電線20を介して給電部21に接続されている。直流遮断器9はき電線5からの直流電力の投入/遮断の制御を行うとともに、充電システムに異常が生じたときに事故電流を遮断して、充電システムを保護する。充電ステーション2に電気自動車10が進入して所定位置に停車した状態で、給電部21の給電端子26を下降させて受電端子部22の受電端子53に接触させる。これにより、電気自動車10の蓄電装置11は給電部21の給電端子26と電気的に接続された状態になり、結果的には給電線20を介してき電線5に接続される。その後、直流遮断器9を投入して導通状態とし、き電線5から給電線20を介して電気自動車10の蓄電装置11を急速充電する。その結果、短時間で蓄電装置11は次の充電ステーション2まで十分に走行可能な状態に充電される。なお、図1には充電ステーション2が1つ示されているが、充電ステーション2は1つに限らず複数個所に配置してもよい。
【0052】
また、電気自動車10は、充電ステーション2への進入に当たってブレーキをかけて減速するが、その際、走行用モータ13には回生電力が発生する。この回生電力は、電力変換器12を介して蓄電装置11に供給され、蓄電装置11を充電する。このように、走行用モータ13が回生状態となる度に蓄電装置11は充電されるので、充電ステーション2に到着時には幾分のエネルギーが蓄積され、停車中におけるき電線5からの充電は次の充電ステーション2までの走行に要する電力不足分でよい。このような場合、電気自動車10への電力供給量は少なくてすみ、短時間の急速充電が可能になる。
【0053】
ここで、蓄電装置が積層構造を有するニッケル水素電池である場合を例に取り、その構造と特性について図を参照しながら説明する。図2及び図3は、上述の積層型ニッケル水素電池の単位電池の構成例を説明するための図である。
【0054】
図2は、上記単位電池Cの構造を示す断面図である。単位電池Cは、セパレータ161、正極を構成する正極板162、及び負極を構成する負極板163を含む電極体165と、電極体165を電解液と共に収容する空間を形成する矩形の枠形部材167と、第1蓋部材169と、第2蓋部材171とを備えている。なお、図2に示す単位電池Cは、水酸化ニッケルを主要な正極活物質とし、水素吸蔵合金を主要な負極活物質とし、アルカリ系水溶液を電解液とする、繰り返し充放電が可能なニッケル水素2次電池として構成している。
【0055】
図3に示すように、第1蓋部材169は、枠形部材167の一方の開口167aを覆う平板状の本体部169aを有しており、本体部169aの4つの各辺において一体に形成された縁部が、枠形部材167の4つの各辺167bにほぼ沿うように折り曲げられて、枠形部材167の外周面の一部を覆う側部169bを形成している。第2蓋部材171も、第1蓋部材169と同様に、本体部171a及び側部171bを有しており、枠形部材167の他方の開口167cを覆っている。
【0056】
電極体165は、図2に示すように、正極板162と負極板163とが、セパレータ161を介して所定の方向に交互に積層されて対向する積層構造を有している。より具体的にはプリーツ状に折り曲げられたセパレータを介して、正極板162と負極板163とが交互に積層されて対向するプリーツ構造を有している。図2及び図3に示す単位電池Cにおいて、電極体165は、枠形部材167の、図3の左右方向に向かい合う一組の辺167b、167bの一方から他方に向かう方向Yに積層されている。
【0057】
このようなプリーツ型セパレータが単位電池に採用されることにより、多数の単位電池で構成されるニッケル水素電池においては、セパレータの面積Sは非常に大きいものとなり、その結果、ニッケル水素電池全体の静電容量も非常に大きいものとなる。
【0058】
図4は、電池モジュールBの横断面図である。図5は、図4の電池モジュールBに用いられている伝熱板の斜視図である。
【0059】
この電池モジュールBは、複数の単位電池を積層したものである。単位電池の各々では、対向して設けられた正極集電体129と負極集電体130の間に、アルカリ電解液中で腐食など変質せず、イオンは透過するが電子を透過させない蛇腹状のセパレータ131が交互に両集電体に近接するように配置される。更に各単位電池では、蛇腹状のセパレータ131と正極集電体129とで区画される空間に電解質溶液132とともに正極活物質を含有する正極シート133が配置され、蛇腹状のセパレータ131と負極集電体130とで区画される空間に電解質溶液132とともに負極活物質を含有する負極シート134が配置され、正極シート133と負極シート134がセパレータ131を挟んで交互に組み込まれている。単位電池はセパレータ131を蛇腹状とすることにより、正極シート133、負極シート134を、多数セルとして単位電池の中に積層することができる。このことにより、隣り合うセル間を非常に小さな抵抗で繋ぐことができるためセル間を繋ぐケーブルが不要となり、電池が全体としてコンパクトになる。
【0060】
また、正極シート133は正極集電体129に接し、負極シート134は負極集電体130に接している。そして、隣り合う2個の単位電池の間には、一方の単位電池の正極集電体129ともう一方の単位電池の負極集電体130に接するように図5に示す伝熱板126が挿入されている。この伝熱板126の空気通流孔127の向きは、正極シート133と負極シート134の上下方向に一致している。各単位電池の正極集電体129と負極集電体130との間は、セパレータ131によって正極セルと負極セルとに2分割され、セパレータ131と正極集電体129とで区画され正極シート133が配置される領域が正極セルとなり、セパレータ131と負極集電体130とで区画され負極シート134が配置される領域が負極セルとなる。
【0061】
図4に示すように、導電性に優れるとともに熱伝導性のよい金属で構成された正極集電体129と負極集電体130が、それぞれ正極シート133及び負極シート134と直接接触し、その上、各集電体129、130が、電気的に正極集電体129と負極集電体130をつなぐ役割を果たす伝熱板126と接触している。
【0062】
次に、上述の構造を有する積層型ニッケル水素電池の特性について説明する。
ニッケル水素電池は、内部抵抗が小さく、かつSOC(state of charge)の変動による電圧変動が小さい。また、他の蓄電池に比べて電池容量を有効利用できるため、電気自動車の中で大きなスペースが必要なくコンパクトに設置できる。
【0063】
ニッケル水素電池は電圧変動が小さいため蓄電池の充放電制御を行なうDC−DCコンバータを必要とはせず、DC−DCコンバータの設置スペースを必要としない。高価なDC−DCコンバータを用いないため、装置全体として廉価となる。更に、ニッケル水素電池は体積エネルギー密度が高いことからも、電気自動車の中で大きなスペースが必要なくコンパクトに設置できる。
【0064】
また、ニッケル水素電池は、DC−DCコンバータのような動作遅れもなく、急速充放電特性に優れている。また、DC−DCコンバータとして用いられる昇降圧チョッパーが省略されれば、制御装置の障害となる高調波ノイズが発生するおそれもない。更に、ニッケル水素電池は、内部抵抗が小さく、かつSOCの変動による電圧変動が小さいことから、電気車両の加速時に、極めて短い時間に大電流が必要となる場合にニッケル水素電池から放電を行って電圧の低下を抑えるのに他の電池よりも適している。更に、ニッケル水素電池は、電気車両が回生を行うことによって極めて短い時間に大電流が発生しても、充電を行って電圧の上昇を抑えるのに他の電池よりも適している。したがって、き電線電圧の安定化を図り、電気車両運行の効率化に資することが可能となる。
【0065】
以下、本実施の形態の充電システムに使用されるニッケル水素電池の特性について他の種類の蓄電池と比較しながら説明する。
【0066】
図6は、各種電池等のSOC(state of charge)に対する電圧変化を示すSOC特性図である。曲線aはニッケル水素電池の電圧変化、曲線bは鉛蓄電池の電圧変化、曲線cはリチウムイオン電池の電圧変化、曲線dは電気二重層キャパシタの電圧変化を示す。
【0067】
SOCの変動に対する電圧変化(ΔV/ΔSOC)は、ニッケル水素電池で約0.1、鉛蓄電池で約1.5、リチウムイオン電池で約2、電気二重層キャパシタで約3になっている。つまり、同じ電圧変化を想定すれば、ニッケル水素電池は、鉛蓄電池の1/15に、リチウムイオン電池の1/20に、電気二重層キャパシタの1/30に電池容量を小さくできる。よって、これに相応して電池寸法を小さくすることができる。
【0068】
図6に示すように、曲線aで示されるニッケル水素電池は、他の電池等に比較して電圧の変動に対するSOCの変動の範囲Sが広いという特性を有する。即ち、ニッケル水素電池は、SOCの変動に対して電池電圧の変動が小さい。これに比べて、曲線b、c、dで示される他の電池等では、SOCの変動に対して電池電圧の変動が大きい。例えば、SOCの中央値でみれば、ニッケル水素電池では、中央値の電圧をV1 とし電圧変動が範囲dV1 内におさまるように使用する場合、SOCの範囲Sのほぼ全てにおいて使用することができ、電池容量を有効に利用することができる。これに対し、鉛蓄電池では中央値の電圧をV2 とし電圧変動が範囲dV2 内におさまるように使用する場合、SOCが狭い範囲でしか使用することができず、電池容量を有効に利用できない。同様に、リチウムイオン電池では中央値の電圧をV3 とし電圧変動が範囲dV3 内におさまるように使用する場合、SOCが狭い範囲でしか使用することができず、電池容量を有効に利用できない。ここで、電圧変動範囲の大きさは、dV1 /V1 =dV2 /V2 =dV3 /V3 とする。
【0069】
電圧変動の観点から考察すれば、SOCが範囲Sの中ほど(例えばSOCが40〜60パーセント)のとき、ニッケル水素電池を図1のようにき電線に直結した場合、ニッケル水素電池の充放電が繰り返されることによりその充電状態が変動しても電池電圧の変動を非常にさく抑えることができる。他方、他の電池(例えば、リチウムイオン電池)の場合は、電池電圧の変動が大きくなる。つまり、ニッケル水素電池は、電池容量を有効に利用することができる。
【0070】
次に、図7及び図8を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る受電端子部22および給電部21の詳細な構成について説明する。図7は、同充電システムの給電部と受電端子部の外観の斜視図である。また、図8(a)は、同充電システムの給電部と受電端子部の外観の側面図であり、図8(b)は、同充電システムの給電部と受電端子部の外観の正面図である。
【0071】
電気自動車10の屋根51の上には、蓄電装置11の正極側端子と電気的に接続された正側受電端子53aと、蓄電装置11の負極側端子と電気的に接続された負側受電端子53bとが、それぞれ碍子54を介して固設されている。受電端子53a、53bはそれぞれ、例えば銅あるいは銅合金で形成された長板状の導電板からなる。正側受電端子53a及び負側受電端子53bは、それぞれ車長方向に長く、かつ車幅方向に平行に並んで設けられている。これらの受電端子53a、53bによって受電端子部22が構成されている。
【0072】
なお、屋根51には、作業者が屋根上を歩くための歩み板52a、52bが車幅方向の両端部分に沿って設置されている。
【0073】
給電部21は、大地に固定された構造物29に、上下可動機構部23が取り付けられ、この上下可動機構部23によって正側給電端子26a及び負側給電端子26bを上昇及び下降させることができるように構成されている。正側給電端子26a及び負側給電端子26bは、それぞれ4個のばね25を介して絶縁支持部24に支持されている。ばね25はコイルばねである。絶縁支持部24は、上下可動機構部23に取り付けられ、上下可動機構部23によって上昇及び下降させられることによって、給電端子26a、26bが上昇及び下降する。
【0074】
給電端子26a、26bはそれぞれ、例えば銅あるいは銅合金で形成された長板状の導電板からなる。正側給電端子26aは電線(図示せず)によって直流遮断器9に接続されており、この直流遮断器9の投入時(導通時)にはき電線5の正側出力と電気的に接続される。また、負側給電端子26bは電線(図示せず)によってき電線5の負側出力(帰線7)と電気的に接続されている。
【0075】
なお、電気自動車10の屋根51に設置された長板状の受電端子53a、53bは、長板状の給電端子26a、26bとの接触面となる一主面が上方を向くように設けられている。そして、給電部21の上下可動機構部23は、給電端子26a、26bの受電端子53a、53bとの接触面となる一主面が下方を向いた状態で給電端子26a、26bを上昇及び下降させることができ、下降させたときに給電端子26a、26bが受電端子53a、53bと面接触した状態となり、上昇させたときに給電端子26a、26bが受電端子53a、53bと離間した状態となるように、給電端子26a、26bを上昇及び下降させるように構成されている。
【0076】
図7、図8では、電気自動車10が充電ステーション2の所定の充電位置に停車し、給電端子26a、26bが上昇しているときの状態を示している。このとき、正側給電端子26aが電気自動車10の正側受電端子53aと対向し、負側給電端子26bが電気自動車10の負側受電端子53bと対向している状態である。
【0077】
いま、電気自動車10が充電ステーション2へ進入してきて所定の充電位置に停車した直後であれば、この後、給電端子26a、26bを下降させて、正側給電端子26aの下面と正側受電端子53aの上面とを面接触させるとともに、負側給電端子26bの下面と負側受電端子53bの上面とを面接触させる。これにより、電気自動車10の蓄電装置11は給電端子26a、26bと電気的に接続された状態になる。その後、直流遮断器9を投入して導通状態とし、地上用蓄電装置6を、き電線5を介して電気自動車10の蓄電装置11へ急速放電させる。その結果、短時間で蓄電装置11は次の充電ステーション2まで十分に走行可能な状態に充電される。その後、直流遮断器9を開路させて、給電端子26a、26bを上昇させる。この後、電気自動車10は次の停車駅へ向かって走行する。
【0078】
ここで、給電端子26a、26bの下降及び上昇の制御と、蓄電装置11の充電の開始および終了の制御等について、その一例を示しておく。
【0079】
まず、電気自動車10が充電ステーション2に進入して所定位置に停車し、運転手の操作によって運転台から充電を行う旨の指示が出されると、電気自動車10の図示していない制御装置(以下、「車両側制御装置」という)から充電ステーション2の図示していない制御装置(以下、「給電側制御装置」という)へ充電指令信号が送信される。これを受けて給電側制御装置は、SOC送信指令信号を車両側制御装置へ送信し、給電端子26a、26bを下降させる。次に、給電側制御装置は、直流遮断器9を投入して導通状態とし、き電線5からの充電を開始させる。
【0080】
また、電気自動車10の蓄電装置11には、そのSOC(充電状態)を検出するSOC検出手段が設けられており、SOC検出手段によるSOC検出値は常時、車両側制御装置へ入力されている。車両側制御装置は、給電側制御装置からのSOC送信指令信号を受信してから後述の充電完了信号を受信するまでの間、常時、SOC検出値を給電側制御装置へ送信する。
【0081】
給電側制御装置では、電気自動車10の蓄電装置11の充電状態を監視しながら、SOC検出値が所定の値になるまで充電を行い、所定の値になれば、き電線5からの充電を終了させる。続いて、直流遮断器9を開路させて、給電端子26a、26bを上昇させる。そして、給電側制御装置は充電完了信号を車両側制御装置へ送信する。これを受けて車両側制御装置では、例えば運転台に設けている充電終了ランプを点灯させる。運転手は、充電終了ランプの点灯を確認してから電気自動車10の走行を開始させる。走行を開始させると充電終了ランプは消灯する。
【0082】
なお、上述のように運転手の操作によって充電指令信号を発生させる代わりに、例えば電気自動車10が所定位置に停車したことを検出する検出手段を地上に設けておき、その検出信号を充電指令信号として給電側制御装置へ入力するようにしてもよい。
【0083】
本実施形態において、給電端子26a、26bを下降させるとき、給電端子26a、26bが受電端子53a、53bに押しつけられて、給電端子26a、26bを保持しているばね25が若干縮む程度まで下降させるようにしている。これにより、給電端子26a、26bの下面に対して受電端子53a、53bの上面がいずれの方向に傾いていたとしても、その傾きが各々のばね25の伸縮度合いが異なることによって吸収され、給電端子26a、26bの下面を受電端子53a、53bの上面に容易に面接触させることができ、また、その面接触した状態を保持することができる。
【0084】
なお、それぞれの給電端子26a、26bを4個のばね25で保持しているが、これに限らず、それぞれの給電端子26a、26bを任意の方向に傾き可能な状態で保持できれば、5個以上のばねで保持するようにしてもよいし、3個以下のばねで保持するようにしてもよい。
【0085】
また、それぞれの給電端子26a、26bをばね25で保持しているが、これに限らず、それぞれの給電端子26a、26bを任意の方向に傾き可能な状態で保持できる部材であればよい。
【0086】
また、給電部21にばね25を設ける代わりに、車両側にばねを設けてもよい。例えば、各碍子54の上にばねを介して受電端子53a、53bを取り付けるようにしてもよい。この場合も、ばねに限らず、受電端子53a、53bを任意の方向に傾き可能な状態で保持できる部材であればよい。
【0087】
なお、本発明の第1の実施形態のように、電車における架線とパンタグラフによる給電方法を擬した充電システムは、電気車両におけるそれと同様に大電力の授受を可能にし、急速充電により適した構造となっている。
【0088】
ここで、いくつかの蓄電池を組み合わせて全体として50Ahの容量で1,200Vの蓄電池の全容量の50%を充電する場合について検討してみる。この場合、充電量は30kWhとなる。これを商用交流電源系統から給電する場合、例えば一般的な契約電力である50kW未満の低圧受電であれば、30kWhを充電するのに少なくとも36分を要する。これより大きな電力で充電する場合、高圧受電契約となり契約電力料金が高額となり、さらに受電設備ならびに充電設備も高額となる。
【0089】
一方、本発明にかかる電気自動車の充電システムによる充電方法を例にあげれば、電気鉄道におけるき電線は1,500Vで1,000A以上の電力を供給することができる。例えば1,000Aで充電するとすれば1,500kWの給電となり、30kWhの蓄電池を充電するのに要する時間は1分12秒となる。このようにき電線からの給電は、設備費が少なくてすむ上に、充電時間が短く急速充電を実現させる。
【0090】
2.[第2の実施形態]
次に、図9、図10を参照しながら本発明の第2の実施形態に係る電気自動車の充電システムの詳細について説明する。図9は、本発明の第2の実施形態に係る電気自動車の充電システムの概略構成図である。図10は、充電システムの給電コネクターの1例を示す外観の斜視図である。
【0091】
図9において、変電所8とは異なる場所に設けられた充電ステーション30には、電気自動車37の蓄電装置46を充電する設備が準備されている。すなわち、電気自動車37は、蓄電装置46と、回生機能を有する電力変換器47と、蓄電装置46から電力変換器47を介して電力が供給される走行用モータ48とを搭載し、走行用モータ48によって車輪が駆動され、一般道路上を走行することが可能に構成されている。
【0092】
き電線5と給電ケーブル33の間には直流遮断器39が接続されている。直流遮断器39はき電線5からの直流電力の投入/遮断の制御を行うとともに、充電システムに異常が生じたときに事故電流を遮断して、充電システムを保護する。
【0093】
給電ケーブル33は給電コネクタ40を介して電気自動車37に搭載された動力用の蓄電装置46に接続可能になっている。すなわち、給電コネクタ40は、給電ケーブル33の端部に取り付けられた給電プラグ31と電気自動車37に取り付けられた受電レセプタクル41からなっており、給電プラグ31と受電レセプタクル41とが嵌合することにより、き電線5と蓄電装置46とが電気的に接続可能になっている(図10参照)。
【0094】
図10に示す受電レセプタクル41は、有底円筒状になっていて、その底部外表面には車体取付け用のレセプタクルフランジ43が設けられている。受電レセプタクル41のレセプタクルフランジ43の反対側の面には給電プラグ31と嵌合するための凹部49が形成されていて、当該凹部49に正側受電端子44aと負側受電端子44bとが当該凹部49の底部に配した絶縁板により電気的に絶縁された状態で、凸状の端子として設けられている。
【0095】
そして、正側受電端子44aと負側受電端子44bは、それぞれ、蓄電装置46の正極側と負極側に配線45を介して接続されている。受電レセプタクル41の凹部49の開口部にはレセプタクル蓋42が設けられていて、受電レセプタクル41の凹部49に内設した正側受電端子44aと負側受電端子44bとを保護可能にしている。なお、図10はレセプタクル蓋42が開いた状態を示す。
【0096】
給電プラグ31は、給電ケーブル33に接続され、給電プラグ31を把持操作するための把持部34と一体的に設けられていて、ロックレバー32を図10の矢符で示す本体側に近づける方向に握り締めることにより、受電レセプタクル41との嵌脱が可能になっている。給電プラグ31の給電ケーブル33と反対側であって、受電レセプタクル41と当接可能となっている面には、絶縁体で覆われ凹状に形成された正側給電端子35aと負側給電端子35bとが設けられていて、それぞれ、正側給電端子35aと正側受電端子44aおよび負側給電端子35bと負側受電端子44bとが互いに嵌合することで、き電線5と蓄電装置46とが電気的に接続可能になっている。
【0097】
ここで、急速充電の手順を図11に示すフローチャートを用いて説明する。
先ず、電気自動車37が充電ステーション30の所定の位置に停車するのを待って(ステップS1)、電気自動車37のシフトレバーをパーキングにして、パーキングブレーキを掛け、パワースイッチをOFFにする。
【0098】
次に、電気自動車37の受電レセプタクル41のレセプタクル蓋42を開ける(ステップS2)。そして、図示しない充電スタンドから給電プラグ31の把持部34を握り給電プラグ31を取り外し、親指でリリースレバー36を押しながら電気自動車37の受電レセプタクル41にしっかり差し込む(ステップS3)。
【0099】
次のステップS4にて、リリースレバー36を放し、把持部34をもって軽く手前に引いても抜けないかを確認する。そして、ステップS5で、給電プラグ31のロックレバー32をカチッと音がするまで握り固定する。
【0100】
ステップS6にて、直流遮断器39を投入して充電を開始する。ステップS7にて充電が完了すると、ステップS8にて直流遮断機39を開列して、き電線5と蓄電装置46とを遮断する。その後、ステップ9にてリリースレバー36を押す。そうするとステップS10にてロックが解除されロックレバー32が元の位置に戻る。
【0101】
次にステップS11にて、リリースレバー36を再度押しながら給電プラグ31を手前に抜き、ステップS12にて、電気自動車37の受電レセプタクル41のレセプタクル蓋42をカチッと音がするまで閉じる。その後ステップS13にて、図示しない充電スタンドに給電プラグ31を戻す。
【0102】
3.[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態に係る電気自動車の充電システムの詳細について、図12を参照しながら説明する。図12(a)は、電気自動車70の走行時の蛇腹部75の状態を示す図であり、(b)は、充電ステーションにおける充電時の蛇腹部75の状態を示す図である。また(c)は、(b)における要部の拡大図である。
【0103】
電気自動車70は、車載用の蓄電装置72と、回生機能を有する電力変換器73と、蓄電装置72から電力変換器73を介して電力が供給される走行用モータ74とを搭載し、走行用モータ74によって車輪が駆動され、一般道路上を走行することが可能に構成されている。電気自動車70の屋根78には、上下方向に伸縮自在な蛇腹部75に支持されて受電端子71が設けられていて、この受電端子71は電気自動車70に搭載された蓄電装置72に配線により電気的に接続されている。
【0104】
蛇腹部75はラックとピニオン式で伸縮自在になっており、図示しないピニオンは図示しない電動モータにより駆動されて、図示しないラックを上下に駆動する。蛇腹部75は、空気シリンダーとピストンの組み合わせにより伸縮をさせてもよく、あるいは電動サーボを用いて伸縮させてもよく、更には電動モータとリミットスイッチにより伸縮させてもよい。道路走行中は蛇腹部75を縮めることにより受電端子71を下げ(図12(a))、充電ステーションで充電時に蛇腹部75を延伸して受電端子71を上げる(図12(b))。
【0105】
充電ステーション内であって電気自動車70の駐車位置の上方にはき電線5に電気的に接続された架線77が張られていて、受電端子71と当接可能となっている。図12(c)において矢符で示す方向に蛇腹部75を延伸させて、蛇腹部75の上部に設けた正側受電シュー76aと負側受電シュー76bとを、それぞれ、正側の架線77aと負側の架線77bとに適当な圧力を持って押し当てて互いに接触させる。
【0106】
このように蛇腹部75を延伸自在とすることにより、電気自動車70の走行時における車両に対する建物の建築限界に余裕を持たせることが可能となる。
【0107】
最後に、図13を用いて本発明の参考例に係る電気自動車の充電システムについて説明する。電気自動車93には、車載用の蓄電装置88と、蓄電装置88から電力の供給を受けて駆動される走行用モータ91とを搭載し、走行用モータ91によって車輪92が駆動され、一般道路上を走行することが可能に構成されている。なお、図13において電気自動車93は、ディーゼルエンジン90も搭載してハイブリッド車となっている。
【0108】
き電線5からの直流電力の供給を受ける電源箱81が充電ステーション内に設置されている。この電源箱81にはき電線5からの直流電力の投入/遮断を行なう直流遮断器82と高周波発生器83が収納されており、高周波発生器83は配線84を介して、電気自動車93の駐車位置の地上に備えた一次コイル85に接続されている。
【0109】
電気自動車93の床面には、電気自動車93が所定の駐車位置に停車したときに、一次コイル85と電磁的に結合する位置に、二次コイル86が取付けられている。二次コイル86には整流器87を介して蓄電装置88に接続されている。
【0110】
直流遮断器81を投入すれば、き電線5からの直流電力は高周波発生器83で高周波交流で交流変換されて一次コイル85に供給される。一次コイル85は交番磁界を発生して、この交番磁界により二次コイル86には交流の起電力が生じる。つまり、一次コイル85と二次コイル86は電磁結合することにより、一次コイル85の交流電力が二次コイル86に伝達される。この交流電力は整流器87により直流電力に直されて蓄電装置88を充電可能としている。
【0111】
図14に示す電車と電池バスの充電システムの構想図によれば、き電線または変電所に併設された電車の加減速時に発生する電力を吸収しき電線の電圧を安定させる蓄電設備からの電力により、駅構内を始発/終発点とする電池バスを、始発/終発の短時間で、1走行(10km程度)可能な電力量を充電することが可能である。
【0112】
電車の減速時に発生した電力を、電池バスへの充電に用いることは、エネルギーの有効利用につながり、蓄電設備を備えた鉄道き電システムと電池バスへの充電を行うシステム全体としての省エネ効果が高い。
【0113】
また、列車本数が多く、駅構内を始発/終発点とする電池バスが頻発するケースほど、電車の減速時に発生する電力を電池バスへ有効に充電できる確率が高まるのでシステム全体で効率が高くなるので、大都市圏およびその郊外に多い鉄道とバスの乗り換え交通網の例が多い大都市圏の鉄道網において、本発明の効果は高い。
【0114】
駅構内に充電設備があるため、鉄道の変電所またはき電線と充電設備の距離が近く、電線長が短くて済むため、設備費のコストが少ないだけでなく、電線自身の抵抗により電圧降下や発熱が少ない点からも、省資源で省エネルギー効果が高い。
【0115】
図15に示す路面電車と電池バスの充電システムの構想図によれば、路面電車のき電システムを利用し、路面電車の路線の近傍にある電池バスの停留所を兼ねた充電設備を設けることは可能である。この方法を採用すれば、路面電車の路線の近傍に、新たな受電設備を設置することなくき電線からの電力を受けるだけで、電池バスの充電設備を設けることが可能となる。路面電車の路線はバス路線との関係が深いため充電設備の設置間隔を短く想定できるため、1充電あたりの走行距離が短い小型の蓄電池を搭載した電池バスの採用が可能となり、電池バスに搭載される蓄電池の小型化ができるため、バス路線と路面電車路線が緊密な関係のある路線であれば、充電設備と電池バス本体を含んだ電池バスシステム全体としてローコストでコンパクトに構成できる利点がある。
【0116】
図16のNo.1は、蓄電装置を単独運転した場合の結果であり、当然のことながら、回生電力の回収は行われず、したがって、省エネルギー効果は見られなかった。これに比べて、蓄電装置をき電線に接続して系統連系した場合は、No.2およびNo.3に見られるように、年間400〜600MWhの省エネルギー効果があることが分かった。また、二酸化炭素発生の抑制効果も年間160tから230t期待できるので、環境に優しい発明であることも確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明に係る充電システムは、一般道路を走行する電気自動車について、電気鉄道用の給電を行なうき電線を利用して、電気自動車に搭載した動力用の蓄電装置に対して大電流による短時間急速充電を行うことができ、電気自動車の充電システムとして有用である。
【符号の説明】
【0118】
1 商用交流電源系統
2 充電ステーション
3 変圧器
4 整流装置
5 き電線
6 電力貯蔵装置
8 電気鉄道用の変電所
9 直流遮断器
10 電気自動車
11 蓄電装置
12 電力変換器
13 駆動用モータ
20 給電線
21 給電部
22 受電端子部
23 上下可動機構部
26a 正側給電端子
26b 負側給電端子
30 充電ステーション
31 給電プラグ
32 ロックレバー
33 給電ケーブル
34 把持部
35a 正側給電端子
35b 負側給電端子
36 リリースレバー
37 電気自動車
39 直流遮断器
40 給電コネクター
41 受電レセプタクル
44a 正側受電端子
44b 負側受電端子
46 蓄電装置
47 電力変換器
48 走行用モータ
49 凹部
51 屋根
53a 正側受電端子
53b 負側受電端子
70 電気自動車
71 受電端子
72 蓄電装置
73 電力変換器
74 走行用モータ
75 蛇腹部
76a 正側受電シュー
76b 負側受電シュー
77 架線
78 屋根
83 高周波発生器
85 一次コイル
86 二次コイル
87 整流器
88 蓄電装置
93 電気自動車
B 電池モジュール
C 単位電池
126 伝熱板
165 電極体
167 枠形部材
169 第1蓋部材
171 第2蓋部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力回線から受電する変圧器と前記変圧器に接続された整流装置と前記整流装置に接続されたき電線とを有する電気鉄道用電力供給システムにおいて、
電気自動車に搭載され、当該電気自動車に走行用の駆動電力を供給する充電可能な蓄電装置と、
前記き電線に接続された給電用接続子と、
前記電気自動車に取り付けられ、前記蓄電装置に接続された受電用接続子とを備え、
前記給電用接続子と前記受電用接続子とを電気的に接続することにより、前記蓄電装置が前記給電用接続子を介して前記き電線と接続して充電される電気自動車の充電システム。
【請求項2】
前記き電線と前記蓄電装置が直流電圧の調整が可能なDC−DCコンバータを介さずに接続されてなる請求項1に記載の電気自動車の充電システム。
【請求項3】
前記給電用接続子が、前記変圧器が設置された変電所と異なる箇所に設けられてなる請求項1または請求項2に記載の電気自動車の充電システム。
【請求項4】
電気自動車に搭載された充電可能な前記蓄電装置が、積層型ニッケル水素電池である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電気自動車の充電システム。
【請求項5】
前記受電用接続子が前記電気自動車の屋根に設けられていて、
当該受電用接続子に充電時に対向する位置に前記給電用接続子が配された請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の電気自動車の充電システム。
【請求項6】
前記電気自動車の側部もしくは床部であって前記給電用接続子に充電時に対向する位置に前記電気自動車に搭載された前記蓄電装置に接続された受電用接続子を備えた請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の電気自動車の充電システム。
【請求項7】
前記電気自動車の上部であって前記受電用接続子と前記蓄電装置との間に伸縮自在な蛇腹部を有し、前記給電用接続子に充電時に対向する位置に前記電気自動車に搭載された前記蓄電装置に接続された前記受電用接続子を備えた請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の電気自動車の充電システム。
【請求項8】
前記給電用接続子が、前記変圧器が設置された変電所に備えられていて、
前記電気自動車の屋根であって前記給電用接続子に充電時に対向する位置に前記電気自動車に搭載された前記蓄電装置に接続された受電用接続子を備えてなる請求項1または請求項2に記載の電気自動車の充電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−80628(P2012−80628A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221656(P2010−221656)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【出願人】(591139633)東京急行電鉄株式会社 (7)
【Fターム(参考)】