説明

電気車両制御装置

【課題】本開示では蓄電装置の異常を早期に検出できるようにする。
【解決手段】蓄電装置を持つ電気車において、前記蓄電装置に対する充電用回路に対する駆動指令を充電回数としてカウントする充電回数カウント手段と、前記カウント手段のカウント内容で前記蓄電装置の状態を検出した第1の検出出力を得る第1の検出手段と、前記蓄電装置の膨張状態を測定した第2の検出出力を得る圧力センサ装置と、前記第1の検出出力を前記第2の検出出力で補正する補正手段と、第1の検出出力の補正出力の値に応じて、前記蓄電装置の検査を促す表示出力を得る手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば架線からの電力を電力変換装置で変換し、変換した電力を蓄電装置に充電する電気車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気車制御装置の駆動に蓄電装置を使用することが考えられている。この蓄電装置が劣化した場合、予定の出力が得られなくなる。そのため蓄電装置の異常や劣化を診断するために、該蓄電装置の充電回数を測定し表示する技術が、例えば特許文献1に開示されている。また蓄電装置の異常や劣化を診断するために、さらに蓄電装置の出力端子の開放時と負荷接続時の端子電圧の差で内部抵抗の上昇を測定することも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-189058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで電池に対して外圧により一部変形を生じていると、その後、膨張により電池自身の性能への影響または隣接する部品に圧力がかかることで不具合が起きることが懸念される。
【0005】
そこで本開示では、蓄電装置の異常を早期に検出できるようにした電気車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本実施形態では、蓄電装置を持つ電気車において、前記蓄電装置に対する充電用回路に対する駆動指令を充電回数としてカウントする充電回数カウント手段と、前記カウント手段のカウント内容で前記蓄電装置の状態を検出した第1の検出出力を得る第1の検出手段と、前記蓄電装置の膨張状態を測定した第2の検出出力を得る圧力センサ装置と、前記第1の検出出力を前記第2の検出出力で補正する補正手段と、前記第1の検出出力の補正出力の値に応じて、前記蓄電装置の検査を促す表示出力を得る手段を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施例に係る説明図であり、同図(A)は構成を示し、同図(B)は比較器34における比較特性の説明図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係る構成説明図である。
【図3】本発明のさらに他の実施形態に係る構成説明図である。
【図4】本発明のさらにまた他の実施形態に係る構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1(A)において、11はパンタグラフであり、架線(図示せず)から電力を取り込むための装置である。パンタグラフ11からの電力は、充電コンバータ12に供給される。充電コンバータ12は、車両制御装置30の充電指令部31からの指令信号に応答して、パンタグラフ11からの電力を所定の電圧に変換し、出力端子12a,12b間に変換電力として出力する。
【0009】
出力端子12a,12bには、それぞれ接続ライン13a,13bが接続され、この接続ライン13a,13b間には、蓄電装置15、電圧を検出するためのDCPT16、平滑コンデンサ17が接続されている。
【0010】
さらに接続ライン13a,13bは、可変電圧可変周波数(VVVF)インバータ14の入力端子14a、14bに接続される。VVVFインバータ14は、入力直流電圧を3相の交流駆動電圧に変換し、交流モータ20に供給する。この交流モータ20が車両の牽引用車輪に連結されている
VVVFインバータ14の入力端子14a,14b間には、基本的には蓄電装置15からの直流電圧が供給される。蓄電装置15は、リチウム電池を用いた所謂二次電池装置である。蓄電装置15への充電は、充電コンバータ12がオンしたときは、この充電コンバータ12が行う。
【0011】
また、VVVFインバータ14は、回生動作モードに切り替わることができ、モータ20からの回生電力を蓄電装置15へ充電することも可能である。VVVFインバータ14の回生動作モードへの切り替えは、車両制御装置30の回生指令部41からの指令により行われる。
【0012】
上記した充電コンバータ12による蓄電装置15への充電は、車両制御装置30内の充電指令部31からの指令信号で実行される。一方、上記の蓄電装置15の電池形状の状態が圧力センサ21により検出される。電池パックに傷や窪みが生じる程度の不測の力が加わると、電池パックが発熱・膨張したりする危険がある。このような場合、発煙、破裂などの事故に繋がる危険性がある。そこで、圧力センサ21により、事前に危険性を回避しようとするものである。
【0013】
充電指令部31が充電指令を行う毎に、カウンタ32が指令回数をカウントし、またそのときの圧力センサ21の出力がデータ保持部36にて保持される。カウンタ32のカウント出力は、表示部50に充電回数として表示される。またカウンタ32のカウント数は、比較器34において、メモリ部33が記憶している定格回数と比較される。カウント数が定格回数より大きくなったとき、比較器34の出力は検出部35において、蓄電装置の「劣化あり」として検出される。カウント数が定格回数より小さいときは、比較器34の出力は検出部35において、蓄電装置の「劣化なし」として検出される。
【0014】
一方、圧力センサ21のデータ保持部36に保持されている圧力データP0は、比較器38a, 28b、38cにおいて、メモリ部37に記憶されている圧力閾値P1,P2,P3と比較される。
【0015】
圧力データP0>P1になると、補正データX1が補正データ回路39から出力され、加算器40に入力される。圧力データP0>P2になると、補正データX2が補正データ回路39から出力され、加算器40に入力される。圧力データP0>P3になると、補正データX3が補正データ回路39から出力され、加算器40に入力される。
【0016】
これによりカウンタ32の出力は、蓄電装置15の圧力に応じてその変化特性が可変されることになる。圧力データが大きくなればなるほど定格回数を越える時期が早まることになり、蓄電装置15の劣化状況に応じて早めに警告を得られる。
【0017】
なお定格数は、蓄電装置15の大きさ、規模、メーカに応じて予め設定されている。蓄電装置15は、その出力容量や特性が種々異なるものがある。このために定格回数は、製造者において、予め製品テストを行い型番に応じて設定されている。したがって、蓄電装置15が装着されたときは、定格回数情報が、メモリ33に入力される。この定格回数情報は、利用者によって、微調整できるようにしてもよい。さらにまた補正データ回路39の補正データも感度を調整できるようにしてもよい。
【0018】
図1(B)は、カウンタ32のカウンタ値に対して、警告を得る時期を決める定格回数の関係を示し、比較値が、蓄電装置15の圧力が変化したとき定格回数に到達する特性を示している。蓄電装置15における圧力が大きくなればなるほど、危険度が高くなることであるから、比較器34で比較する比較値を圧力に応じて可変するようにしている。
【0019】
圧力データが圧力閾値より大きいときは、比較器38の出力は検出部35において、蓄電装置の「劣化あり」として検出される。圧力データが圧力閾値より小さいときは、比較器38の出力は検出部35において、蓄電装置の「劣化なし」として検出される。
【0020】
検出部35が蓄電装置の「劣化あり」を検出した場合、表示部50にメッセージ用の信号を送信する。表示部50はこれに応答して蓄電装置15の検査を推奨するメッセージを表示する。
【0021】
図2は別の実施形態を示している。図1の実施形態と同一部分には同一符号を付している。図2の実施形態は、回生指令部41から出力される回生指令の回数をカウンタ42でカウントし、先の充電回数カウント値に加算することを基本としている。回生が行われたときも蓄電装置15に対する充電が行われるから、蓄電装置15の劣化に関係しているものと見なすことができる。カウンタ32、42のカウント値は、加算器45にて加算され、その加算出力が表示部50及び比較器34に供給されている。
【0022】
ここで、カウンタ42のカウント値を重み係数回路44で重み付けしてもよい。これは、回生時の充電は架線からの充電に比べて充分な充電が得られない場合があり、回生指令回数と充電指令回数とを同等に扱うと適切でないケースもあるからである。例えば、回生時の充電は、蓄電装置に対して常に例えば80%以上充電を達成するとは限らない。したがって、この実施形態では、カウンタ42のカウント値が重み係数回路44で補正されて、加算器45に入力されている。
【0023】
図3はさらに別の実施形態を示している。図1、図2の実施形態と同一部分には同一符号を付している。図3の実施形態は、図2に示した実施形態に加えて、開放時電圧値保持部61、充電時電圧値保持部63、電圧降下許容値を保持したメモリ部64、減算器65、比較器66が追加されている。充電時電圧値は、充電指令が与えられたときの蓄電装置15の端子電圧であるから、使用後である。逆に開放時電圧は、充電が完了したときの電圧である。開放時電圧値から充電時電圧値が、充電が行われる毎に、減算器65で減算され、差電圧を得ることができる。この差電圧は、蓄電装置15の充電前と充電後の端子電圧の差である。ここではこの差が電圧降下許容値よりも大きくなると、蓄電装置15が劣化したと判定する。そのため、前記差電圧は、比較器66において、メモリ部64に保持されている電圧降下許容値と比較される。蓄電装置15の劣化あるいは異常の判断要素をさらに追加することで、診断の信頼性を向上できる。
【0024】
図4はさらに別の実施形態を示している。先に説明した実施形態と同一部分には同一符号を付している。蓄電装置15の異常あるいは劣化が検出された場合、車両制御部30は、電気車が、その運転状態を架線からの電力を使用した運転状態となるように設定する。そのために、検出部35の検出出力は、表示部50の他に、スイッチ73にも与えられる。スイッチ73は、蓄電装置15が正常に使用されているときは蓄電装置使用モード72出力信号を選択して運転指令部75に供給する。しかし、スイッチ73は、蓄電装置15の異常あるいは劣化が検出されたときは、蓄電装置未使用モード73出力信号を選択して運転指令部75に供給する。
【0025】
運転指令部75は、蓄電装置未使用モード73出力信号が入力しているときは、電気車が、架線からの電力を使用した運転状態となるように設定する。これにより自動的に電気車の運転モードが切り替わる。
【0026】
上記したように実施形態は、蓄電装置を多面的な方向から診断し、異常事態に至る危険性を早期に予知して検出できる。
【0027】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0028】
11・・・パンタグラフ、12・・・充電コンバータ、14・・・VVVFインバータ、15・・・蓄電装置、20・・・交流モータ、30・・・車両制御装置、31・・・充電指令部、32・・・カウンタ、33・・・メモリ部、34・・・比較器、35・・・検出部、36・・・データ保持部、37・・・メモリ部、38・・・比較器、41・・・回生指令部、42・・・カウンタ、44・・・重み係数回路、45・・・加算器、50・・・表示部、61・・・開放時電圧保持部、63・・・充電時電圧値保持部、64・・・メモリ部、66・・・比較器、71・・・スイッチ、72・・・蓄電装置使用モード、73・・・蓄電装置未使用モード、75・・・運転指令部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置を持つ電気車において、
前記蓄電装置に対する充電用回路に対する駆動指令を充電回数としてカウントする充電回数カウント手段と、
前記カウント手段のカウント内容で前記蓄電装置の状態を検出した第1の検出出力を得る第1の検出手段と、
前記蓄電装置の膨張状態を測定した第2の検出出力を得る圧力センサ装置と、
前記第1の検出出力を前記第2の検出出力で補正する補正手段と、
前記第1の検出出力の補正出力の値に応じて、前記蓄電装置の検査を促す表示出力を得る手段を有する電気車制御装置。
【請求項2】
前記充電回数カウント手段は、架線電源からの充電回数に回生時の充電回数を足し合わせていることを特徴とする請求項1記載の電気車制御装置。
【請求項3】
前記架線電源による充電に対して回生時の充電の電力量が小さいため、回生時の充電回数に重み係数をつけて充電回数をカウントすることを特徴とする請求項2記載の電気車制御装置。
【請求項4】
さらに前記蓄電装置の温度を測定し、蓄電装置の仕様で決める動作温度と比較することで前記蓄電装置の劣化を判断する手段を含むことを特徴とする請求項2記載の電気車制御装置。
【請求項5】
前記蓄電装置の異常や劣化を判断したとき、蓄電装置を使用せずに運転するモードに変更する手段を有することを特徴とする請求項2乃至4記載の電気車制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−110129(P2012−110129A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257070(P2010−257070)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】