説明

電気駆動ダンプトラック

【課題】トロリー線の結合区間があっても、トロリー走行中のドライバの操作負担を軽減し安定したトロリー走行を行うことができる電気駆動ダンプトラックを提供する。
【解決手段】車両制御装置50と、コントローラ100と、インバータ制御装置30と、操舵制御装置32とで構成される制御装置200は、車両本体1が、トロリー線結合区間Cに至る前の第1走行区間では第1トロリー線3L,3Rに、トロリー線結合区間を過ぎた後の第2走行区間では第2トロリー線3L,3Rに追従して走行するよう車両本体1にヨーモーメントを与える制御を行い、トロリー線結合区間では代表点から第2目標点に向かって所定の経路が設定され、この所定の経路に沿って、いずれは第2トロリー線3L,3Rに追従して走行するよう車両本体1にヨーモーメントを与える制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気駆動ダンプトラックに関わり、特に、トロリー線から電力を受けて走行する電気駆動ダンプトラックに関する。
【背景技術】
【0002】
鉱山を走行するダンプトラックには、エンジンが発電機を駆動し、その発電機が発電する電力を後輪のモータに供給し、後輪を駆動するシリーズハイブリッド型のものが知られている。また、この電気的な構成を利用して、所定の上り坂区間にて、エンジン−発電機による電力供給ではなく、一般的には電車に見られるトロリー線を設置し、車両本体に設けた昇降可能な集電装置のすり板を上げてトロリー線に接触させ、電力を得て走行する(以下トロリー走行という)トロリー方式の走行技術が実現されている。このトロリー方式の走行技術は例えば特許文献1に記載されている。この場合、エンジンによって発電した電力よりもトロリー線から供給される電力の方が大きいため、トロリー走行が可能な上り坂区間での走行速度低下を回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許4,483,148号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のようなトロリー方式の走行技術においては、ドライバが車両(ダンプトラック)がトロリー走行区間に入っているかを判断する。車両がトロリー走行区間に入り、すり板とトロリー線の位置関係をドライバが目視してすり板がトロリー線に接触できると判断されるときに、ドライバがトロリー走行開始ボタン等を操作し、トロリー走行が開始される。トロリー走行中は車両とトロリー線の変位を目視し、すり板の中心位置がトロリー線から横方向に大きく外れないようドライバがハンドル操作を行う。また、トロリー走行が終了するタイミングもドライバが判断してボタン等により操作される。
【0005】
ここで、トロリー線はさまざまな環境に耐えるために合金で作られており、設計上の長さ(基準長さ)が決められている。
トロリー走行区間がこの基準長さ以下であれば、トロリー走行区間に設置されるトロリー線は一本で済むため、この一本のトロリー線から外れないようにドライバがハンドル操作を行えばよい。
しかし、トロリー走行区間が基準長さ以上である場合、トロリー走行区間に車両の進行方向に複数本のトロリー線を設置する必要がある。この場合、既存のトロリー線(第1トロリー線)と新規のトロリー線(第2トロリー線)の結合区間が発生する。この結合区間では、第1トロリー線の終端部分と第2トロリー線の始端部分とが並行している。
【0006】
このような結合区間を有する場合にドライバの目視によって操作することは、ドライバが単純にすり板の中心位置がトロリー線から横方向に大きく外れないようにハンドル操作を行いながら走行するだけでなく、すり板が接触するトロリー線が第1トロリー線から第2トロリー線に遷移するようハンドル操作を行わなければならず、ドライバに大きな操作負担をかけることになる。
【0007】
本発明の目的は、トロリー線の結合区間がある場合であっても、トロリー走行中のドライバの操作負担を軽減し安定したトロリー走行を行うことができる電気駆動ダンプトラックを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、少なくとも1本の第1トロリー線を設けた第1走行区間と、少なくとも1本の第2トロリー線を設けた第2走行区間と、前記第1トロリー線の終端部分と前記第2トロリー線の始端部分とが並行するトロリー線結合区間とを有する道路上を、車両本体に設けられた昇降可能な集電装置のすり板を上げて前記第1トロリー線から前記第2トロリー線へと順次接触させることで、前記第1トロリー線及び前記第2トロリー線から電力を受けて前記第1走行区間及び前記第2走行区間を走行する電気駆動ダンプトラックにおいて、前記車両本体に設けられ、走行中に前記トロリー線の下方から前記第1トロリー線と前記第2トロリー線を検出するトロリー線検出装置と、前記トロリー線検出装置により検出した前記電気駆動ダンプトラックと前記トロリー線の相対位置情報に基づいて、前記トロリー線結合区間の前後の前記第1走行区間及び前記第2走行区間において前記車両本体が前記第1トロリー線及び第2トロリー線に追従して走行するよう前記車両本体にヨーモーメントを与える第1制御を行う制御装置とを備え、前記制御装置は、前記車両が前記トロリー線結合区間を走行しているときは、前記車両本体が前記第1トロリー線から前記第2トロリー線に向かう所定の経路に追従して走行するようヨーモーメントを与える第2制御を行うこととする。
【0009】
このように構成した本発明においては、トロリー線(第1トロリー線と第2トロリー線)の下方からトロリー線をトロリー線検出装置で検出するため、従来のように地表面を撮像しレーンマーカ等を検知する場合と比べ、検知誤差に繋がる因子が少ないため、検知精度が向上する。これにより第1トロリー線や第2トロリー線に追従して走行するよう車両本体にヨーモーメントを与える制御を行うときの制御精度が向上するため、走行中にすり板の中心位置がトロリー線から横方向に大きく外れにくくなり、トロリー走行中のドライバの操作負担を軽減することができる。また、トロリー線(第1トロリー線)に追従しつつ、車両本体がトロリー線結合区間を走行中であるかどうかを検出し、トロリー線結合区間では、第1トロリー線への追従制御を継続するのではなく、第1トロリー線から第2トロリー線に向かう所定の経路に追従して走行するよう制御することで、第1トロリー線を追従したまま走行路端へ向けて走行することを防ぐことができる。トロリー線結合区間後は新たなトロリー線(第2トロリー線)に追従するヨーモーメント制御を行うため、ドライバがハンドル操作に気を配らなくてもすり板と接触するトロリー線が第1トロリー線から第2トロリー線に遷移し、トロリー線一本の基準長さよりも長いトロリー走行路でのトロリー線への追従制御が可能となる。
【0010】
また請求項2記載の発明は、請求項1記載の電気駆動ダンプトラックにおいて、前記制御装置は、前記第1制御において、前記電気駆動ダンプトラックと前記第1トロリー線及び第2トロリー線の相対位置情報に基づいて、前記車両本体の少なくとも1つの代表点と、前記第1トロリー線及び第2トロリー線上に位置する少なくとも1つの第1目標点を算出し、前記代表点が前記第1目標点に近づくように前記車両本体にヨーモーメントを与える制御を行い、前記第2制御において、前記電気駆動ダンプトラックと前記第1トロリー線及び前記第2トロリー線の相対位置情報に基づいて、前記車両本体の少なくとも1つの代表点と、前記第2トロリー線上に位置する少なくとも1つの第2目標点を算出し、かつ前記代表点から前記第2目標点に遷移する変動点を設定し、前記代表点が前記変動点に近づくように前記車両本体にヨーモーメントを与える制御を行う。
【0011】
これにより、トロリー線結合区間では車両の状態に応じて追従するトロリー線が第1トロリー線から第2トロリー線に安定して遷移し、更に第1走行区間及び第2走行区間では高い精度でトロリー線に追従して走行するようになる。
【0012】
また請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の電気駆動ダンプトラックにおいて、走行用の左右の電動モータを更に備え、前記制御装置は、前記左右の電動モータを制御することで前記車両本体にヨーモーメントを与える制御と走行速度の制御の両方を行う。
【0013】
これにより電動モータ制御でヨーモーメントの生成と減速を両立することができ、効率的な制御を行うことができる。
【0014】
また請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項記載の電気駆動ダンプトラックにおいて、走行用の左右の電動モータと、操舵装置とを更に備え、前記制御装置は、車両制御装置と、コントローラと、インバータ制御装置と、操舵制御装置とを備え、前記車両制御装置は、前記トロリー線検出装置により検出した情報に基づいて、前記車両本体が前記トロリー線に追従して走行するよう前記車両本体にヨーモーメントを与えるためのヨーモーメント補正値を演算し、前記コントローラは、前記ヨーモーメント補正値に基づいて、前記インバータ制御装置及び前記操舵制御装置により前記左右の電動モータと前記操舵装置の少なくとも一方を制御する。
【0015】
このように車両制御装置とコントローラを別体としてヨーモーメント制御を行うことにより、コントローラが既存のコントローラであっても、車両制御装置を付加するだけで本発明の制御が行える、或いは、車両制御装置の機能を変更するだけでヨーモーメント制御のパラメータを調整することができるなど、制御系に柔軟性を持たせることができる。
【0016】
また請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項記載の電気駆動ダンプトラックにおいて、前記トロリー線検出装置は、前記車両本体に設けられ、走行中に前記トロリー線を連続的に撮像するカメラと、前記車両本体に設けられ、前記トロリー線を照らす照明装置とを有する。
【0017】
このようにトロリー線検出装置としてカメラを用いた場合でも、照明装置でトロリー線を照らすことで、空に対するトロリー線のコントラストが維持され、昼間の天候状態が良好なときだけでなく、夕方、夜間、雨天など、トロリー線と空との高いコントラストが得にくい場合でも、ヨーモーメント制御を精度良く行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、トロリー線に追従して走行するよう車両本体にヨーモーメントを与える制御を行うときの制御精度が向上するため、走行中にすり板の中心位置がトロリー線から横方向に大きく外れにくくなり、トロリー走行中のドライバの操作負担を軽減することができる。更に、ドライバがハンドル操作に気を配らなくても、すり板と接触するトロリー線が第1トロリー線から第2トロリー線に遷移し、トロリー線1本の基準長さよりも長いトロリー走行路でも安定したトロリー線への追従制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態による電気駆動ダンプトラックの側部外観を示す側面図である。
【図2】ダンプトラックの後部外観を示す背面図である。
【図3】本実施の形態における電気駆動ダンプトラックの駆動システムを示す図である。
【図4】トロリー線から電力を受ける集電装置の構成を示す図である。
【図5】操舵制御装置と操舵装置とから構成される操舵システムを示す図である。
【図6】操舵制御装置が転舵トルク指令値を算出するにいたる機能を示すブロック図である。
【図7】コントローラの車体速制御部の機能の説明を示すブロック図である。
【図8】コントローラのヨーモーメント制御部の機能の詳細を示すブロック図である。
【図9】モータ駆動力100%で走行しているときの総駆動力に対する、ヨーモーメント補正値を駆動力差によって実現する場合の影響を示す図である。
【図10】モータトルク指令値の算出方法の一例を示す図である。
【図11】車両制御装置の構成及び車両制御装置とコントローラとの入出力関係を示す図である。
【図12】トロリー線の結合区間を示す図である。
【図13】車両とカメラの撮像範囲(トロリー線検出装置の検出範囲)の位置関係を車両の側面からみた場合の図である。
【図14】車両とカメラの撮像範囲(トロリー線検出装置の検出範囲)の位置関係を上空(車両の上方)から見た場合の図である。
【図15】カメラで撮像された画面を示す図である。
【図16】撮像した画面の処理(エッジ抽出)を示す図である。
【図17】撮像した画面の処理(中心線の抽出)を示す図である。
【図18】トロリー線に対して車両が左にずれた場合のカメラの画面を示す図である。
【図19】トロリー線に対して車両が斜めに走行している場合のカメラの画面を示す図である。
【図20】車両状態量制御部の機能の詳細を示すブロック図であって、目標位置に対する現位置の偏差をヨーモーメント補正値にする計算の流れを示す図である。
【図21】車両制御装置の実施例におけるカメラで上方を撮像してから制御出力されるまでの処理の流れを示すフローチャートである。
【図22】車両制御装置の他の実施例で用いるトロリー線検出領域と座標系を示す図である。
【図23】車両制御装置の他の実施例で用いるトロリー線検出領域と座標系を示す図である。
【図24】車両状態量制御部の他の実施例での機能の詳細を示すブロック図であって、目標位置に対する現位置の偏差をヨーモーメント補正値にする計算の流れを示す図である。
【図25】トロリー線の結合区間前後におけるトロリー線と第1目標点、第2目標点、変動点、代表点の動作を示す図である。
【図26】トロリー線の結合区間前後におけるトロリー線と第1目標点、第2目標点、変動点、代表点の動作を示す図である。
【図27】トロリー線の結合区間前後におけるトロリー線と第1目標点、第2目標点、変動点、代表点の動作を示す図である。
【図28】トロリー線の結合区間前後におけるトロリー線と第1目標点、第2目標点、変動点、代表点の動作を示す図である。
【図29】トロリー線の結合区間前後におけるトロリー線と第1目標点、第2目標点、変動点、代表点の動作を示す図である。
【図30】トロリー線の結合区間前後におけるトロリー線と第1目標点、第2目標点、変動点、代表点の動作を示す図である。
【図31】トロリー線の結合区間前後におけるトロリー線と第1目標点、第2目標点、変動点、代表点の動作を示す図である。
【図32】トロリー線の結合区間前後におけるトロリー線と第1目標点、第2目標点、変動点、代表点の動作を示す図である。
【図33】代表点と第1目標点が一致していない状態でのトロリー線の結合区間前後のトロリー線と第1目標点、第2目標点、変動点、代表点の動作を示す図である。
【図34】代表点と第1目標点が一致していない状態でのトロリー線の結合区間前後のトロリー線と第1目標点、第2目標点、変動点、代表点の動作を示す図である。
【図35】代表点と第1目標点が一致していない状態でのトロリー線の結合区間前後のトロリー線と第1目標点、第2目標点、変動点、代表点の動作を示す図である。
【図36】代表点と第1目標点が一致していない状態でのトロリー線の結合区間前後のトロリー線と第1目標点、第2目標点、変動点、代表点の動作を示す図である。
【図37】代表点と第1目標点が一致していない状態でのトロリー線の結合区間前後のトロリー線と第1目標点、第2目標点、変動点、代表点の動作を示す図である。
【図38】代表点と第1目標点が一致していない状態でのトロリー線の結合区間前後のトロリー線と第1目標点、第2目標点、変動点、代表点の動作を示す図である。
【図39】代表点と第1目標点が一致していない状態でのトロリー線の結合区間前後のトロリー線と第1目標点、第2目標点、変動点、代表点の動作を示す図である。
【図40】代表点と第1目標点が一致していない状態でのトロリー線の結合区間前後のトロリー線と第1目標点、第2目標点、変動点、代表点の動作を示す図である。
【図41】車両制御装置の他の実施例におけるカメラで上方を撮像してから制御出力されるまでの処理の流れを示すフローチャートである。
【図42】第1のしきい値を設定した場合のトロリー線検出領域と座標系を示す、図22と同様な図である。
【図43】目標点の位置に応じたヨーモーメント補正値の算出方法の一例を示す図である。
【図44】第1及び第2のしきい値を設定した場合のトロリー線検出領域と座標系を示す、図22及び図42と同様な図である。
【図45】図41に示したフローチャートのうち、トロリー線への追従制御ステップの他の例を示すフローチャートである。
【図46】目標点の位置に応じて目標車速を減少側に補正するための目標車速補正値の算出方法の一例を示す図である。
【図47】目標点の位置に応じて目標車速を増加側に補正するための目標車速補正値の算出方法の一例を示す図である。
【図48】目標車速の補正値によるモータトルクの生成方法を示す、図10と同様な図である。
【図49】カメラで撮像する方向をさらに前方に向けた場合の、図13と同様な図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0021】
(車両−ダンプトラック−の構成に関して)
図1は、本発明の実施の形態による電気駆動ダンプトラックの側部外観を示す側面図である。
【0022】
図1において、ダンプトラックは、車両本体1、土砂等を積載するためのベッセル2、左右2本のトロリー線3L,3R(片方が高電圧、もう片方がアースに接続(以下、第1トロリー線3L,3Rと第2トロリー線3L,3Rを総称して便宜上トロリー線3L,3Rと記載することがある))から電力を受けるための昇降可能なすり板4La,4Raを備えた左右の集電装置4L,4R、受けた電力により駆動する左右の後輪(タイヤ)5L,5Rで構成されている。集電装置4L,4Rは車両本体1の前部に設けられている。また、ダンプトラックは、車両本体1の前部に設けられ、走行中に前方のトロリー線3L,3Rを連続的に検出するトロリー線検出装置15を備えている。トロリー線検出装置15は、本発明によって新たに取り付けられたものである。トロリー線検出装置15は、図示の例では車両本体1の前部に配置されているが、車両本体1の屋根等に設置しても構わない。
【0023】
図2はダンプトラックの後部外観を示す背面図である。後輪5L,5Rはベッセル2に積載される土砂等の荷重に耐えるため、ダブルタイヤの構造になっている。このダブルタイヤを、左右の電動モータ(例えば誘導モータ)6L,6Rにより制駆動する。
【0024】
図3に本実施の形態における電気駆動ダンプトラックの駆動システムを示す。
【0025】
図3において、電気駆動ダンプトラックの駆動システムは、アクセルペダル11、リタードペダル12、シフトレバー13、前後加速度と横加速度とヨーレイトをセンシングするヨーレイト検出装置としてのコンバインセンサ14、エンジン21、交流発電機22、その他のエンジン負荷28、整流回路23、検出抵抗24、コンデンサ25、チョッパ回路26、グリッド抵抗27、上記集電装置4L,4R、上記後輪5L,5R及び電動モータ6L,6R、電動モータ6L,6Rの出力軸6La,6Raに接続された減速機7R,7L、制御装置200を備えている。電磁ピックアップセンサ16L,16Rはそれぞれ左右後輪の車輪速を計測する。また後輪5L,5Rと同様に、左右の前輪45L,45Rの車輪速を計測する電磁ピックアップセンサ36L,36Rを設け、この電磁ピックアップセンサ36L,36Rによって前輪車輪速を左右それぞれ計測する。ここで、後輪5L,5Rは駆動輪であり、駆動、制動によってタイヤが変形するため、大抵の場合は問題ないが、車体速の計測には厳密にはふさわしくない。従動輪である前輪は駆動、制動の影響を受けにくいため、電磁ピックアップセンサ36L,36Rの計測値を用いた車体速の演算のほうがより実際の車体速に近い値を演算できると言える。なお、車両の運動を制御する際は、前輪車輪速、後輪車輪速よりも車両本体1の重心の対地速度(車体速)を論じた方が好適な場合がある。そこで、対地車速センサ37のように対地車速そのものを計測するセンサを設置し、車体速の計測に用いても良い。これらは一般的にはミリ波レーダセンサ、光学センサ等が挙げられる。
【0026】
制御装置200は、トルク指令の入力で電動モータ6L,6Rを制御するインバータ制御装置30、ドライバのボタン操作や外部からの入力で集電装置4L,4Rのすり板4La,4Raの昇降を行う昇降制御装置31、ドライバの操舵操作を電気信号に変換し前輪の操舵を制御する操舵制御装置32、本発明の特徴部である車両制御装置50と、コントローラ100とを有している。
【0027】
インバータ制御装置30は、左右の電動モータ6L,6Rのそれぞれに対する公知のトルク指令演算部30a、モータ制御演算部30b、インバータ(スイッチング素子)30cを有している。集電装置4L,4Rは、昇降制御装置31の昇降指令信号ですり板4La,4Raを昇降させる昇降装置を備えている。集電装置4L,4R、昇降制御装置31、操舵制御装置32を含む操舵システム、車両制御装置50の詳細は後述する。
【0028】
(走行を含む基本動作)
アクセルペダル11の踏込み量Pとリタードペダル12の踏込み量Qはコントローラ100の入力となり、それぞれ駆動力やリタード力(ブレーキ力)の大きさを制御する信号となる。例えばドライバがアクセルペダル11を踏み込んでダンプトラックを前進又は後進させるときは、コントローラ100からエンジン21に対して目標回転数Nrの指令を出力する。これはアクセル開度に対する目標エンジン回転数Nrのテーブルが予め設定されており、これに基づいて出力される。エンジン21は電子ガバナ21aを装着したディーゼルエンジンであり、電子ガバナ21aは目標回転数Nrの指令を受け取ると、エンジン21が目標回転数Nrで回転するように燃料噴射量を制御する。
【0029】
エンジン21には交流発電機22が接続されており、交流発電を行う。交流発電により発生した電力は整流回路23によって整流され、コンデンサ25に蓄電され、直流電圧値はVとなる。交流発電機22は直流電圧Vを検出抵抗24で分圧された電圧値をフィードバックして当該電圧値が所定の一定電圧V0となるようにコントローラ100によって制御される。
【0030】
交流発電機23により発生した電力はインバータ制御装置30を介して左右の電動モータ6L,6Rに供給される。コントローラ100は、整流回路23によって整流された直流電圧Vが所定の一定電圧V0となるように交流発電機22を制御することで、電動モータ6L,6Rに必要な電力が供給されるよう制御している。一方、集電装置4L,4Rのすり板4La,4Raがトロリー線3L,3Rに接触した場合、直流電圧V0が直接トロリー線3L,3Rからインバータ制御装置30に供給される。
【0031】
コントローラ100は、アクセルペダル11及びリタードペダル12の操作量に応じたトルク指令値T_ML_a,T_MR_aを演算し、このトルク指令値T_ML_a,T_MR_aと、車体速制御のトルク補正値T_ML_V,T_MR_V及びヨーモーメント制御のモータトルク補正値T_ML_Y,T_MR_Yに基づいて左右の電動モータ6L,6Rのトルク指令値T_ML,T_MRを生成し、出力する(後述)。この左右の電動モータ6L,6Rのトルク指令値T_ML,T_MRと電磁ピックアップ16L,16Rにより検出される各電動モータ6L,6Rの回転速度ωL,ωRとはインバータ制御装置30に入力され、インバータ制御装置30は、トルク指令演算部30a、モータ制御演算部30b、インバータ(スイッチング素子)30cを介して各電動モータ6L,6Rを駆動する。
【0032】
各電動モータ6L,6Rにはそれぞれ減速機7L,7Rを介して左右の後輪(タイヤ)5L,5Rが接続されている。電磁ピックアップ16L,16Rは通常は減速機7L,7R内のギアの1枚の歯の周速を検出するセンサである。また、例えば、右側駆動系を例に取ると、電動モータ6R内部の駆動軸や減速機7Rとタイヤ5Rを接続する駆動軸に検出用の歯車をつけ、その位置に設置しても構わない。
【0033】
走行中にアクセルペダル11を戻し、リタードペダル12を踏み込んだときは、交流発電機22が発電しないようコントローラ100は制御する。また、コントローラ100からのトルク指令T_ML_a,T_MR_aは負となり、インバータ制御装置30は各電動モータ6L,6Rを駆動して走行するダンプトラックにブレーキ力を与える。この時、各電動モータ6L,6Rは発電機として作用し、インバータ制御装置30に内蔵された整流機能によってコンデンサ25を充電するように働く。直流電圧値Vは予め設定された直流電圧値V1以下になるようにチョッパ回路26が作動し、電流をグリッド抵抗27に流して電気エネルギーを熱エネルギーに変換する。
【0034】
(集電装置のすり板の昇降)
次に、集電装置4L,4Rのすり板4La,4Raの昇降装置について説明する。図4にトロリー線3L,3Rから電力を受ける集電装置4L,4Rの構成を示す。集電装置4L,4Rは同じ構成を有しており、その構成を集電装置4Lで代表して説明する。集電装置4Lは、昇降装置として車両本体1に筐体を固定した油圧ピストン装置4aを備え、油圧ピストン装置4aの油圧ピストン4bのロッド4cの先端にすり板4Laが取り付けられている。このすり板4Laは、油圧配管4dを介して油圧ポンプを含む油圧機器4eから送られた油で油圧ピストン4bを上下させることで、トロリー線3Lとの接触、乖離を制御される。油圧ピストン4bのロッド4cとすり板4Laは絶縁体4fによって絶縁されている。トロリー線3Lの電力はすり板4La、電線4gを介して、図3に示したモータ駆動のためのインバータ制御装置30の電源系統へ接続されている。昇降制御装置31は、ドライバの昇降スイッチ操作や本発明の車両制御装置50などの外部からのスイッチ(フラグ)操作や制御の指令信号に基づいて、油圧機器4eに昇降指令信号4hを送る仕組みとなっている。当然、油圧ピストン装置4aによりすり板4Laの昇降装置を構成する他に、一般的には電車で見られるような平行リンク、ばね、モータ等を利用したパンタグラフと呼ばれるシステムで昇降装置を構成してもよい。
【0035】
(操舵システム)
次に図5を用いて操舵システムについて説明する。
【0036】
操舵システムは、前述した操舵制御装置32と操舵装置40とから構成されている。操舵装置40は、ハンドル41、操舵角センサ付反力モータ42、転舵角センサ付転舵モータ43、ラック&ピニオンギア44を有している。
【0037】
ドライバはハンドル41を操作したとき、ハンドル41の操作量を操舵角センサ付反力モータ42の操舵角センサが検知し、これを操舵制御装置32に送信する。操舵制御装置32は現在の転舵角がドライバの操舵角に対応する転舵角になるように転舵角センサ付転舵モータ43にトルク信号を送り、転舵角センサ付転舵モータ43が生成する転舵トルクによって、ラック&ピニオンギア44を介し前輪45L,45Rを転舵する。また、この時のトルクの大きさに応じて、操舵角センサ付反力モータ42に反力トルクを送信し、ハンドル41に反力を伝える。またこのとき、操舵制御装置32はコントローラ100へ操舵角を送信する。一方、操舵制御装置32は、コントローラ100から転舵トルク補正値を受信し、これに応じて転舵角センサ付転舵モータ43を動作させる機能も持つ。同様に操舵制御装置32が操舵角センサ付反力モータ42に、反力を送信するかどうかは、そのときのモード(後述)やコントローラ100からの指令によって任意に変更できる。例えば、操舵制御装置32がコントローラ100から転舵トルク補正値を受信し、この補正値に応じて転舵角センサ付転舵モータ43を動作させる一方で、操舵角センサ付反力モータ42に反力指令値を送らなければ、車両(ダンプトラック)は操舵角に応じて旋回をするが、ドライバはそのときの操舵感覚がない状態になる。逆に、ドライバが操舵をしても、転舵角センサ付転舵モータ43に指令を送らなければ、ハンドル41を切っても曲がらないという現象となる。例えば、コントローラ100が何らかの判断で、ハンドル41を操作してはならない場合には、この手段は有効となる。さらにはこのときハンドル41の操作をしてはならないということをドライバに報知する手段としては、操舵制御装置32はドライバが操舵をしている方向と逆方向にトルクを生成させることで、ドライバは一般的にはハンドル41が重いと感じ、これによってドライバはその方向へハンドル操作をしてはならないと判断することができるようになるものもある。
【0038】
本実施の形態では、ハンドル41が前輪45L,45Rと直結していないステアバイワイヤ方式に関して説明したが、これに限らず、操舵角センサ付反力モータ42と転舵角センサ付転舵モータ43を一体化して直結させた電気式のパワーステアリング方式でも構わない。また、転舵角センサ付転舵モータ43は油圧サーボ式のものでも構わない。さらにコントローラ100から送られる補正値はトルクではなく補正角度でも良い。この場合、操舵制御装置32は、転舵角センサで検知した角度と補正角度との偏差をなくすようトルクのフィードバック制御を行うものでもよい。
【0039】
図6は、操舵制御装置32が転舵トルク指令値を算出するにいたる機能を示すブロック図である。操舵制御装置32は、変換部32aにおいて操舵角センサ付反力モータ42から受信したドライバの操舵角にゲインをかけてドライバの転舵角に変換し、演算部32bにおいてそのドライバの転舵角から現在の転舵角を減算し、変換部32cにおいてその減算結果にゲインをかけてドライバ要求転舵トルクに変換する。次いで、演算部32dにおいてそのドライバ要求転舵トルクにコントローラ100から受け取った転舵トルク補正値を加算して転舵トルク指令値を求め、この転舵トルク指令値を転舵角センサ付転舵モータ43に出力する。
【0040】
(車体速制御)
図3に戻り、コントローラ100は、車体速制御モードが選択された場合に、車体速制御モードで設定される目標車体速に対する現在の車体速のフィードバック制御を行い、車体速制御モードにて車体速を制御することを可能とする車体速制御部101を備えている。図7は車体速制御部101の機能の説明を示すブロック図である。図7に示すように、車体速制御部101は、車体速制御モードがOn(1)(スイッチ部101cがOn)のとき、目標車体速と現在の車体速を入力して演算部101aにおいて減算し、変換部101bにおいてその減算値にゲインをかけてトルクに変換することで現車速を目標車体速にするためのトルク補正値T_ML_V,T_MR_Vを求めて出力する。車体速制御部101は、電磁ピックアップ16L,16Rにより検出される各電動モータ6L,6Rの回転速度ωL,ωRを入力し、この回転速度から車体速を演算するが、車体速の演算には前述のように電磁ピックアップ36L,36Rの検出値を用いてもよいし、対地車速センサ37の測定値を用いてもよい。すなわち、車体速制御部101及び後輪の電磁ピックアップセンサ16L,16Rや前輪の電磁ピックアップセンサ36L,36R、対地車速センサ37によって車体速検出装置は構成される。車体速制御モードに入るか否かの指令は、例えば車両制御装置50にスイッチを設け、ドライバからのスイッチ操作でも良いし、外部からの入力によってなされるものでも良い。車体速制御モードの解除は、ドライバがリタードペダルを踏むことで行ってもよいし、外部からの入力によって行ってもよい。車体速制御モードを解除した場合、車体速制御モードの指令をOff(0)(スイッチ部101cをOff)とし、ゼロ出力部101dから車体制御トルク指令値0を出力する。またコントローラ100は、トルク補正値T_ML_V,T_MR_Vに応じたエンジン回転数指令値のテーブルがあらかじめ設定されており、このテーブルに基づいてエンジン回転数指令値をエンジン21に対して出力する。
【0041】
(ヨーモーメント制御)
さらに、コントローラ100は、図3に示すように、車体の旋回方向を制御するためのヨーモーメント制御部102を備えている。図8はヨーモーメント制御部102の機能の詳細を示すブロック図である。図8に示すように、ヨーモーメント制御部102に対する入力信号として、例えば横滑り防止制御といった他のヨーモーメント制御によって生成されるヨーモーメント制御値、本発明によって生成されるヨーモーメント補正値、車体速、前後加速度、横加速度、ヨーレイト、操舵角、ヨーモーメント制御モードの指令がある。出力信号は転舵トルク補正値とモータへのトルク補正値T_ML_Y,T_MR_Yである。ヨーモーメント制御値とヨーモーメント補正値は演算部102aにおいて加算され、ヨーモーメント指令値となる。このヨーモーメント指令値は操舵トルク制御部102b、モータトルク制御部102c、最適配分制御部102dに入力される。操舵トルク制御部102b及びモータトルク制御部102cは、それぞれ入力されたヨーモーメント指令値に基づいて転舵トルク補正値とモータトルク補正値を算出する。また、最適配分制御部102dは入力されたヨーモーメント指令値、車体速、ヨーレイト、操舵角、前後加速度、横加速度に基づいてヨーモーメントの配分比を計算し、その配分比に応じた転舵トルク補正値とモータトルク補正値を算出する。ヨーモーメント制御モードの指令はスイッチ部102eに入力され、スイッチ部102eは、ヨーモーメント制御モードが1のときには操舵トルク制御部102bで演算した転舵トルク補正値を出力し、2のときにはモータトルク制御部102cで演算したモータトルク補正値を出力し、3のときには最適配分制御部102dで演算した操舵トルク補正値と左右モータへのトルク補正値を出力する。
【0042】
(ヨーモーメント制御モードの設定)
ところで、ダンプが走行する鉱山では土砂等を運ぶ時間の短縮の要求が高い。かかる時間が短ければそれだけ一台当りの土砂を運ぶインターバルが短くなり、回数をこなせるからである。時間短縮に直接影響するのは車両速度であり、従って、車両速度が低くなるような制御を行うことは避けることが望ましい。
【0043】
図9は、モータ駆動力100%で走行しているときの総駆動力に対する、ヨーモーメント補正値を駆動力差によって実現する場合の影響を示す図である。例えば図9のa側に示すように、車両が今駆動力を100%の状態で、ある速度を保って走行しているものとする。この場合、車両の駆動力の合計は、走行抵抗(空気抵抗、摩擦抵抗、傾斜等)と釣り合っている。100%というのは、本実施の形態の構成で言えば後輪のモータの出力限界であり、その速度で出力できるモータの駆動力の最大値を意味する。ここで、車両に制駆動力を与えてヨーモーメントを生成することを考える。この場合ヨーモーメントを生成するには、先に上げたように、モータが出力限界であるため、図9のb側に示すように、左右のどちらか片方のモータ駆動力を下げることでしかヨーモーメント生成を達成できない。この下げた分だけ車両にヨーモーメントが生成される一方で、駆動力が低下するため車速が低下する。これは先に述べたように、時間短縮の要求に反することになる。従って、このときヨーモーメントを生成すべきアクチュエータとしては、動作しても比較的速度低下が小さい操作が望ましく、図8に示すようにヨーモーメント制御モードを1にすることが適切である。一方、車両の駆動力が100%よりも小さい場合は、その程度やその他の車両状態量に応じて、モータトルク制御(ヨーモーメント制御モード2)或いは最適配分制御(ヨーモーメント制御モード3)に切り換える。
【0044】
(各部で生成したモータトルクの合成)
コントローラ100におけるモータトルク指令の算出方法に関して図10を用いて説明する。図10はモータトルク指令値の算出方法の一例を示す図である。まず、前述のとおりドライバのアクセルペダル・リタードペダル操作に応じたトルク指令値T_ML_a,T_MR_aと車体速制御によって生成されたトルク指令値T_ML_V,T_MR_Vの一方を処理部100aで選択する。例えば、ドライバのトルク指令が有る場合はドライバのトルク指令、それ以外は車体速制御のトルク指令を処理部100aで選択する。その後、処理部100aで選択したトルク指令値に、ヨーモーメント制御部102によって生成されたヨーモーメント指令値に応じたモータトルク補正値T_ML_Y,T_MR_Yを演算部100bにおいて加算し、モータトルク指令値T_ML,T_MRを算出する。なお、このモータトルクの合成方法は一例であり、公知の手法など、本実施の形態に示した手法以外の様々な手法を用いることができる。
【0045】
(特徴部の全体構成)
次に、本実施の形態の電気駆動ダンプトラックの特徴部の全体構成を図11を用いて説明する。
【0046】
前述したように、本実施の形態の電気駆動ダンプトラックの駆動システムは、トロリー線3L,3Rを検出するトロリー線検出装置15と、車両制御装置50を有している。
【0047】
トロリー線検出装置15としては、代表的にはレーザレーダ、ミリ波レーダ、カメラ等のセンサが考えられる。車体の進行方向(車軸方向)をX軸、車体の横方向(車軸に対し鉛直方向)をY軸としたXY平面において、本発明では、いずれのセンサでも車体とトロリー線の相対位置関係を検出する手段となる。レーザレーダの場合、好適には車体X軸方向に沿って探査する方が、トロリー線をより正確に検出することができる。またミリ波レーダの場合は、他のセンサより霧や雨といった天候の影響が小さくて済む。これらのレーダセンサはXY方向だけでなく、車体とトロリー線の高さであるZ軸方向も検出することができる。従って、高さ方向の検出が必要な他のシステムと本発明のシステムを併用する場合では、レーダセンサが好適な場合がある。
【0048】
カメラの場合、トロリー線の下方からトロリー線を撮像するため、昼間で天候の良いときはトロリー線と空との高いコントラストが得られ、トロリー線を正確に検出することができる。また、車両本体1にトロリー線3L,3Rを照らす照明装置51を設けてもよい。この場合は、照明装置51でトロリー線3L,3Rを照らすことで、空に対するトロリー線3L,3Rのコントラストが維持され、夕方、夜間、雨天など、トロリー線3L,3Rと空との高いコントラストが得にくい場合でも、トロリー線を正確に検出することができる。
【0049】
また、いずれか2つ以上のセンサを組み合わせてシステムを構築しても良い。
【0050】
図11は、車両制御装置50の構成及び車両制御装置50とコントローラ100との入出力関係を示す図である。車両制御装置50は、図11に示すように、トロリー線検出装置15によって検出された情報を処理して車体とトロリー線の相対位置関係に係わる情報(相対位置情報)を取得するトロリー線検出情報処理部50a、トロリー線検出情報処理部50aによって得られた情報を元に車両の状態量を算出する車両状態量算出部50b、この結果に基づき車両状態量を制御する車両状態量制御部50cによって構成される。トロリー線3L,3Rは、絶縁体52を介して支柱53によって支えられる。また車両制御装置50は、目標速度補正値、ヨーモーメント補正値、ヨーモーメント制御モード、昇降制御装置昇降指令、制御・検知状態情報などを出力する。
【0051】
本実施の形態では、トロリー線検出装置15としてカメラを用い、画像処理を行ってXY平面での車体との相対位置関係を検出する場合を説明する。すなわち、トロリー線検出装置15はカメラとなり、トロリー線検出情報処理部50aは、カメラ15によって撮像された画像情報を処理する画像情報処理部となる。
【0052】
(カメラ15及び画像情報処理部50a)
カメラ15はトロリー線3L,3Rを撮像する。この二本のトロリー線3L,3Rをカメラ一台で撮像する場合は、カメラ15を左右のトロリー線3L,3Rの中央に配置することが好ましい。カメラ15の構成としては、左右のトロリー線3L,3Rをそれぞれ一台のカメラで撮像してもよい。カメラ15により撮像された画像情報は、車両制御装置50の画像情報処理部50aに送られる。画像情報は、カメラ15が撮像した範囲のピクセル配列であり、画像情報処理部50aはその画像情報を必要な情報に変換する。
【0053】
カメラ15の撮像方向に強い光源がある場合、画像情報処理部50aに送られる画像はハレーションと呼ばれる白くぼやける現象が発生し、検知すべき対象を認識できなくなることがある。これに対応する方法として、カメラ15を設置する箇所を、車両前方のトロリー線3L,3Rを撮像するカメラと、車両後方のトロリー線3L,3Rを撮像するカメラの2箇所とし、一方が画像情報処理部50aによってハレーションを起こしたと判断できる場合、もう一方のカメラにより補正する手法も考えられる。ハレーションの検知方法に関しては公知の手法に依る。また、ハレーションに限らず、画像情報処理部50aによって埃や泥等で片方のカメラの視界が遮られたと判断できる場合には、同様に他方のカメラで補正することもできる。また、カメラ15を筐体で囲み、ガラス越しにトロリー線3L,3Rを撮像し、画像情報処理部50aによりガラスが埃や泥等で視界が悪くなったと判断できる場合には、ワイパーやウォッシャー液等によって洗浄してもよい。
【0054】
また,薄暮時や暗闇において、画像情報処理部50aによってトロリー線3L,3Rを検知するのに十分な光量がないと判断される場合には、画像情報処理部50aは照明装置51へ明滅指令を出し、トロリー線3L,3Rを照らすことで、空に対するトロリー線3L,3Rのコントラストを維持してもよい。
【0055】
本実施の形態では、図11のように斜め方向を撮像するのではなく、簡単のために、図12に示すようなトロリー走行区間を走行しており、図13のようにカメラ15が車両の真上方向を撮像する場合を考える。図12は、本実施の形態におけるトロリー線の結合区間の周辺を上空から見た場合の模式図である。図12では、車両1は図の下方から上方に向かって走行しており、車両1の前方にある点線で囲まれた領域はカメラ15の撮像範囲である。車両1の左右両側にある実線は走行路端54を示す。また、トロリー線3L,3Rのうち、第1トロリー線3L,3Rは、この第1トロリー線3L,3Rのみが設置される第1走行区間を構成した後、トロリー線結合区間Cにて新規の第2トロリー線3L,3Rと所定の区間だけ並行した後、トロリー線終端部分3L1t,3R1tへと接続される。また、第2トロリー線3L,3Rはトロリー線始端部分3L2b,3R2bから第1トロリー線3L,3Rと所定の区間だけ並行した後、第2トロリー線3L,3Rのみが設置される第2走行区間を構成する。このとき、図14に示すように、車両の前方がカメラ15の撮像領域(トロリー線検出装置の検出領域)a,b,c,dとなる。図15は、その場合のカメラ15が取得する画像を示す図である。図15では、カメラ15がトロリー線3L,3Rを下から見上げるように撮像しているため、図14に示すトロリー線3L,3Rを上から見た画像の撮像領域a,b,c,dに対して、前後関係(a−dとb−cの図示上下方向における位置関係)と車両の進行方向が逆に現れる。
【0056】
図15に示すように、カメラ15が取得する画像情報は画面に対してトロリー線3L,3Rが縦方向に進行方向に平行に現れる。これを図16に示すようにエッジ部を抽出する処理(エッジ処理)を行う。これにより、左側のトロリー線3LはエッジLLとエッジLR、右側のトロリー線3RはエッジRLとエッジRR部に分かれる。次に図17において、左右のトロリー線3L,3Rにおいてそれぞれのエッジの中心線(左トロリー線3Lの中心線をLM、右トロリー線3Rの中心線をRM)を求める。このとき、画面の上部中央のOcを原点とするピクセル数に関する座標系(Y軸をda方向、X軸をab方向)をとる。Ocを原点として、LMとadの交点P(0,M_Lad_Ref)、RMのadとの交点Q(0,M_Rad_Ref)、LMとbcとの交点R(m,M_Lbc_Ref)、RMのbcとの交点S(m,M_Rbc_Ref)をとる。そして、これらP,Q,R,Sの各点はトロリー線3L、3R上に位置する点であり、これらを目標点と定義する。また、mは縦方向のピクセル数、nは横方向のピクセル数を示す。
【0057】
ここで、2本のトロリー線3L,3Rの中央をトロリー線3L,3Rに対して平行して直進しているとき、トロリー線3L,3Rがすり板4La,4Raの中央に位置する場合、左右の設置ずれや車両のゆれによるずれに対してロバストになる。従って車両はそのような状態で走行することが望ましい。
【0058】
図18に、左に車両がずれた場合を示す。すり板4La,4Raの中央を通るX軸に平行な直線(車両本体1の進行方向の直線)と撮像領域のad及びbcとの交点に車両本体1の代表点を設定すると、代表点は図18の点P’,点Q’,点R’,点S’となる。この代表点は、トロリー線3L,3Rに対する車両の位置を制御するための制御に用いる点である。したがって、代表点P’,Q’,R’,S’は制御点であると言うこともできる。各代表点の座標は、M_Lad_Cont、M_Rad_Cont、M_Lbc_Cont、M_Rbc_Contと定義する。
【0059】
図19に車両がトロリー線3L,3Rに対して斜めに走行している場合を示す。この場合も、代表点は点P’,点Q’,点R’,点S’となる。
【0060】
また、撮像範囲a,b,c,dのなかに、トロリー線(第1トロリー線3L,3R)のほかに、新たなトロリー線(第2トロリー線3L,3R)が検出されるかどうかの判断を行う。
【0061】
画像情報処理部50aはこれら目標点及び代表点の座標情報と、第2トロリー線3L,3Rを検出したかどうかの情報を車両状態量算出部50bへ送る。
【0062】
(車両状態量算出部50b)
本実施形態における車両状態量算出部50bは、代表点P’,Q’,R’,S’と目標点P,Q,R,Sとの偏差を算出する。ここで、代表点と目標点との偏差をそれぞれe_Lad、e_Rad、e_Lbc、e_Rbcとすると、これらは以下のように計算する。

e_Lad=M_Lad_Ref−M_Lad_Cont ・・・(1)
e_Rad=M_Rad_Ref−M_Rad_Cont ・・・(2)
e_Lbc=M_Lbc_Ref−M_Lbc_Cont ・・・(3)
e_Rbc=M_Rbc_Ref−M_Rbc_Cont ・・・(4)

これらの偏差は、車両がトロリー線に対して左にずれた場合に正、右にずれた場合に負となる。
【0063】
次に、図19に示すように、車両がトロリー線3L,3Rに対して斜めに走行している場合も同様にずれ量を定義する。このとき、左トロリー線3Lに対する車両の傾きeθ_L、右トロリー線3Rに対する車両の傾きeθ_Rは次のように算出できる。

eθ_L=(e_Lbc−e_Lad)/m ・・・(5)
eθ_R=(e_Rbc−e_Rad)/m ・・・(6)

カメラが本実施の形態のように左右のトロリー線3L,3Rを検知できている場合、式(1)、式(3)、式(5)に対し、式(2)、式(4)、式(6)は冗長となる。従って好適には、どちらか一方が何らかの理由でずれ量や傾きが算出できない場合は、算出できている方の情報を用いて計算する。
【0064】
また、車両状態量算出部50bは、画像情報処理部50aからの第1トロリー線3L,3R及び第2トロリー線3L,3Rの検出情報を元に、車両本体1がトロリー線結合区間Cを走行中であるかどうかについて算出する。なお、トロリー線結合区間Cは、第1トロリー線3L,3Rの終端部分3L1t,3R1tと第2トロリー線3L,3Rの始端部分3L2b,3R2bとが並行する区間である。
【0065】
そして、車両状態量算出部50bは、車両本体1がトロリー線結合区間Cを走行していると算出すると、新規に検出された第2トロリー線3L,3Rに目標点(第2目標点)を設定する。また、代表点から第2目標点に向かって所定の経路を設定する。この所定の経路は、代表点から第2目標点を結ぶ直線や曲線等とすればよく、更にはトロリー線結合区間内で第2目標点に到達するよう遷移するように設定することが望ましい。更に、既存の第1トロリー線3L,3Rに設定されていた第1目標点は削除してもよいし、そのままでもよい。
【0066】
更に、車両状態量算出部50bは、画像情報処理部50aからの情報に基づき、第2トロリー線3L,3Rが検出されたときは結合モードフラグを1に設定し、後述する代表点と第2目標点が一致したときは結合モードフラグを0に設定する。
【0067】
(車両状態量制御部50c)
次に車両状態量制御部50cに関して説明する。本実施形態における車両状態量制御部50cは、代表点の少なくとも1つを、対応する目標点に一致させるためのヨーモーメント補正値を算出する。まず、式(1)〜式(6)で示されるずれ量や傾きにゲインをかけてそれをヨーモーメント補正値とする処理を図20に示す。図20は、車両状態量制御部50cの機能の詳細を示すブロック図である。この例は、目標点をPまたはQとし、代表点をP’またはQ’とした例である。
【0068】
図20に示すように、車両状態量算出部50bは、演算部50cにおいて車両状態量算出部50bから入力した目標点P(Q)の座標値M_Lad_Ref(M_Rad_Ref)から代表点P’(Q’)の座標値M_Lad_Cont(M_Rad_Cont)を減算して代表点P’(Q’)と目標点P(Q)との偏差e_Lad(e_Rad)を求める。車両状態量制御部50cは、変換部50cにおいて偏差e_Lad(e_Rad)にゲインをかけて偏差の値をヨーモーメント量に変換する。また変換部50cにおいて、車両状態量算出部50bから入力した車両の傾きeθ_L(eθ_R)にゲインをかけてヨーモーメント量に変換する。これらの2つのヨーモーメント量を演算部50cにおいて加算してヨーモーメント補正値を求め、このヨーモーメント補正値をヨーモーメント制御部102に出力する。
【0069】
なお、車両状態量制御部50cは、第2目標点が設定されたときは、代表点を第1目標点に一致させるためのヨーモーメント補正値を算出することを止め、代表点を第2目標点に一致させるためのヨーモーメント補正値を算出する。
【0070】
また、車両状態量制御部50cは、図8を用いて説明したヨーモーメント制御モードを決定する。そしてコントローラ100の前述したヨーモーメント制御部102は、この車両状態量制御部50cで決定されたヨーモーメント補正値とヨーモーメント制御モードに基づいて、モータトルク指令値と転舵トルク補正値とを演算し、インバータ制御装置30と操舵制御装置32にそれぞれ出力する。
【0071】
これにより車両制御装置50と、コントローラ100と、インバータ制御装置30と、操舵制御装置32とで構成される制御装置200は、車両本体1が、トロリー線結合区間Cに至る前の第1走行区間では第1トロリー線3L,3Rに、トロリー線結合区間を過ぎた後の第2走行区間では第2トロリー線3L,3Rに追従して走行するよう車両本体1にヨーモーメントを与える制御(第1制御)を行い、トロリー線結合区間では代表点から第2目標点に向かって所定の経路を設定して、この所定の経路を追従することでいずれは第2トロリー線3L,3Rに追従して走行するよう車両本体1にヨーモーメントを与える制御(第2制御)を行う。また、制御装置は傾きeθ_L(eθ_R)が小さくなるように車両本体1にヨーモーメントを与える制御を行う。
【0072】
なお、図20に示すような単純なゲインの制御に限らず、積分制御や微分制御等を加えても良い。
【0073】
(車両制御装置50の制御処理の詳細)
上述した車両制御装置50の制御処理の詳細を図21に示すフローチャートを用いて説明する。図21は、カメラで上方を撮像してから制御出力されるまでの処理の流れを示すフローチャートである。
【0074】
まずステップ200で、画像情報処理部50aは、カメラによって車両本体1の上方を撮像する。ステップ201にて撮像した画像の中からトロリー線3L又は3Rを探索する。ステップ201で探索する際、初めてトロリー線3L又は3Rを検知する場合は撮像画面の全領域から探索するが、一度トロリー線3L又は3Rを検知した場合、再度全領域から探索する必要はなく、検知していたトロリー線3L又は3Rの座標付近を探索することは、探索時間の短縮につながるため有効となる。ステップ202にて撮像画面内にトロリー線3L又は3Rに相当するものが存在するかを判断する。トロリー線3L又は3Rに相当するものがない場合は処理を終了する。トロリー線3L又は3Rに相当するものがある場合は、画像情報処理部50aは、ステップ203Aにてエッジ抽出して、トロリー線3L又は3Rの中線を算出する画像処理を行う。
【0075】
その後の処理は車両状態量算出部50bに移り、ステップ203Bにて、車両状態量算出部50bは、前述した目標点T,Uを設定し、それらの座標を算出する。その後目標点T,Uの座標情報を用いた処理がトロリー線3L,3Rへのトロリー線結合制御付追従制御ステップ500へ移行する。
【0076】
(トロリー線結合制御付追従制御)
トロリー線結合制御付追従制御ステップ500では、まずステップ510において、車両状態量算出部50bで設定される結合モードフラグが「0(結合モード(後述する)中でない)」であるかどうかを判断する。Yesの場合(結合モードフラグが「0」であり、結合モード中ではない場合)ステップ520へ処理が進行する。Noの場合(結合モードフラグが「1」で、結合モード中である場合)ステップ550へ処理が進む。
【0077】
ステップ520で、撮像範囲a,b,c,dのなかに、トロリー線3L,3Rのうちの第1トロリー線3L,3Rのほかに、新たなトロリー線(第2トロリー線3L,3R)に相当するものが検出されるかどうか判定する。
【0078】
ステップ520で新たなトロリー線が検出された場合、車両本体1はトロリー線結合区間Cを走行しており、既存の第1トロリー線3L,3Rに対して追従したまま走行し続けると、車両本体1が第1トロリー線3L,3Rの終端部分3L1t,3R1tへと誘導されて走行路端54からはみ出してしまうため、ステップ530に進み、ステップ530で結合モードフラグ「1」を立てる。その後、ステップ540に進み、第2トロリー線3L,3Rに新たな目標点(第2目標点)を生成し、ステップ550へと移行する。
【0079】
ステップ520で新たなトロリー線3L,3Rが検出されなかった場合、第1トロリー線3L,3Rへの追従制御を続行するため、ステップ320へと移行する。
【0080】
次にステップ550では、代表点を第2目標点に一致するように遷移させる。遷移のさせ方はさまざまであり、車両の運動特性や、積み込み状況、車速等を考慮した所定の経路を形成してもよい。例えば、第1トロリー線と第2トロリー線が平行に並んでいる間に第1トロリー線から第2トロリー線に遷移する程度の遷移速度としてもよいし、一次関数や二次関数等に従ってもよい。また第1トロリー線から第2トロリー線に急激に遷移させてもよい。絶対座標から見ると、図12のように第1トロリー線から第2トロリー線へ向けて直線的な遷移とする。この場合、車両はトロリー線が結合するたびに、これまで直進走行していた経路からずれることになる。しかし、上述のような制御を行うことによって、車両は、既存の第1トロリー線に追従して走行する第1走行区間、トロリー線結合区間、新規の第2トロリー線に追従して走行する第2走行区間を連続してほぼ直進(結合区間では図中破線上を走行)して走行することができ、遷移時の横方向のショックが少なく、走行効率向上および荷崩れ防止に効果的であるといえる。
【0081】
次にステップ560に関して説明する。ステップ560では、代表点が第2目標点に一致したか否かを判定し、代表点が第2目標点に一致したときはステップ570に移行し、結合モードフラグを0にしてステップ320に移行する。これによって第1トロリー線3L,3Rから第2トロリー線3L,3Rへの遷移が完了する。一方、代表点が第2目標点に一致しないNoの場合、第1トロリー線3L,3Rから第2トロリー線3L,3Rへの遷移中であることから、ステップ320へ処理を移行する。
【0082】
ステップ320では、車両状態量制御部50cはヨーモーメント補正値を算出し出力する。車両の進行方向に代表点があり、その方向へ走行する限り、車体本体1の車軸の延長線はいずれ第2目標点を通るようになり、第2トロリー線3L,3Rへの追従走行が可能となる。
【0083】
次いで、ステップ330にて、ヨーモーメント制御モードを選択し出力する。このとき、通常の走行では、車体速を落とす要求(ドライバのリタード操作や他の制御による減速)がないため、ヨーモーメント制御モードとして「1」を選択する。
【0084】
(効果)
以上のように構成した本実施の形態によれば、トロリー線3L,3Rの下方からトロリー線3L,3Rを検出するため、従来のように地表面を撮像しレーンマーカ等を検知する場合と比べ、検知誤差に繋がる因子が少ないため、検知精度が向上する。これによりトロリー線3L,3Rに追従して走行するようヨーモーメント制御を行うときの制御精度が向上するため、走行中にすり板4La,4Raの中心位置がトロリー線3L,3Rから横方向に大きく外れにくくなり、安定したトロリー走行が可能であるとともに、トロリー走行区間を走行中のドライバの操作負担を軽減することができる。
【0085】
また、トロリー線結合区間Cに至るまでは既存のトロリー線(第1トロリー線3L,3R)に追従しつつ(第1制御)、車両本体1がトロリー線結合区間Cを走行中であるかどうかを既存のトロリー線のほかに新たなトロリー線(第2トロリー線3L,3R)が検出されたかどうかで判断し、トロリー線結合区間Cを走行しているときは新たに検出されたトロリー線(第2トロリー線3L,3R)上の第2目標点に向かう所定の経路に追従するヨーモーメント制御(第2制御)を行う。更には、トロリー線結合区間Cを過ぎて第2走行区間に入ったら、第2トロリー線3L,3Rを追従するヨーモーメント制御(第1制御)を行う。これにより、第1トロリー線3L,3Rを追従したまま走行路端54へ向けて走行することを防ぐことができるとともに、ドライバがハンドル操作に気を配らなくてもすり板と接触するトロリー線が自動的に第1トロリー線3L,3Rから第2トロリー線3L,3Rに遷移し、トロリー走行区間の長さがトロリー線の基準長さを超えるような場合であっても、安定したトロリー走行が可能となる。
【0086】
そして、トロリー線検出装置としてカメラ15を用いた場合は、照明装置51でトロリー線3L,3Rを照らすことで、空に対するトロリー線3L,3Rのコントラストが維持され、昼間の天候状態が良好なときだけでなく、夕方、夜間、雨天など、トロリー線3L,3Rと空との高いコントラストが得にくい場合でも、トロリー線3L,3Rに追従して走行させるヨーモーメント制御を精度良く行うことができる。
【0087】
更に、制御装置200は、車両制御装置50とコントローラ100を別体としてヨーモーメント制御を行うことにより、コントローラ100が既存のコントローラであっても、車両制御装置50を付加するだけで本発明のヨーモーメント制御が行える、或いは、車両制御装置50の機能を変更するだけでヨーモーメント制御のパラメータを調整することができるなど、制御系に柔軟性を持たせることができる。
【0088】
(車両制御装置50の他の実施の形態)
次に、車両制御装置50の他の実施の形態を説明する。
【0089】
本実施の形態における先の実施の形態との主たる相違点は、先の実施の形態が、車両が第1走行区間及び第2走行区間を走行しているときは第1トロリー線3L,3Rや第2トロリー線3L,3Rに追従して走行するよう車両本体1にヨーモーメントを与える制御を行い、トロリー線結合区間Cでは第2トロリー線3L,3Rに向かう所定の経路を追従して走行するよう車両本体1にヨーモーメントを与える制御(以下、適宜トロリー線結合制御付追従制御という)を行うだけであるのに対して、本実施の形態では、更に、集電装置4L,4Rのすり板4La又は4Raの昇降制御(以下、適宜すり板昇降制御という)を行うとともに、第1走行区間及び第2走行区間を走行している際に代表点と目標点の偏差に不感帯を設け、偏差が不感帯を超えた場合のみトロリー線を追従するヨーモーメント制御を行うようにした点である。
【0090】
(画像情報処理部50a)
画像情報処理部50aの処理内容は上述の実施の形態と同じであり、画像情報処理部50aは代表点P’,Q’,R’,S’の座標情報及び第2トロリー線3L,3Rを検出したかどうかの情報を車両状態量算出部50bへ送る。
【0091】
(車両状態量算出部50b及び車両状態量制御部50c)
車両状態量算出部50bは、トロリー線結合制御付追従制御を行うためのヨーモーメント補正値、集電装置4L,4Rのすり板4La又は4Raの昇降制御を行うための昇降制御装置昇降指令、ヨーモーメント制御モード、目標速度補正値、結合モードフラグ等の制御量或いは指令値を生成するための車両状態量を算出する部分であり、車両状態量制御部50cはその算出結果に基づいてヨーモーメント補正値、昇降制御装置昇降指令、ヨーモーメント制御モード、目標速度補正値等の制御量或いは指令値を生成し出力する部分である。
【0092】
(トロリー線検出領域と座標系)
まず、車両状態量算出部50bで用いるトロリー線検出領域と座標系について説明する。
【0093】
図22は、本実施の形態で用いるトロリー線検出領域と座標系を示す図である。
【0094】
車両状態量算出部50bは、画像情報処理部50aにおいてカメラ15により取得した図17〜図19に示すような撮像領域a,b,c,dの画像情報から図22のa1,b1,c1,d1に示すような領域をトロリー線検出領域として切り出して取得する。辺a1−d1は、図17〜図19に示す撮像領域a,b,c,dの辺a−dの一部に対応し、辺b1−c1は、撮像領域a,b,c,dの辺b−cの一部に対応する。トロリー線検出領域a1,b1,c1,d1は、トロリー線3L,3R又は3L,3Rを上から見た場合のすり板とトロリー線の位置関係を示しており、すり板4La又は4Raの左右の中心を通り車両の進行方向に伸びる直線が、辺a1−d1の中心と辺b1−c1の中心を通る領域である。前述したように、カメラ15が取得する撮像領域a,b,c,dの画像情報はトロリー線3L,3R又は3L,3Rを下から撮像した画像情報であり、トロリー線3L,3R又は3L,3Rを上から見た場合のトロリー線検出領域a1,b1,c1,d1は撮像領域a,b,c,dとは前後関係(図面では上下方向)が逆に現れる。
【0095】
また、車両状態量算出部50bは、すり板4La又は4Raの中心を原点Opとし、進行方向をX軸、進行方向左をY軸とする座標系を設定し、X軸と辺b1−c1の交点Zに代表点を設定し、トロリー線3L,3R又は3L,3Rと辺b1−c1との交点Tと、トロリー線3L,3R又は3L,3Rと辺a1−d1との交点Uに2つの目標点を設定する。ここで、カメラ15と集電装置4L,4Rのすり板4La又は4Raは共に車両本体に取り付けられ、両者の位置関係は既知であるので、図17〜図19に示すOc点を原点とする座標系における点P’,P,Rの値を図22のOp点を原点とする座標系の値に座標変換することにより、交点Z,T,Uの座標は容易に求めることができる。
【0096】
また、車両状態量算出部50bは、画像情報処理部50aからの第2トロリー線3L,3Rの検出情報を元に、車両本体1がトロリー線結合区間Cを走行中であるかどうかについて算出し、車両本体1がトロリー線結合区間Cを走行していると算出すると、新規に検出された第2トロリー線3L,3Rに第2目標点を設定し、代表点から第2目標点に向かって所定の経路が設定される。更には、第2トロリー線3L,3Rが検出されたときは結合モードフラグを1に設定し、代表点と第2目標点が一致したときは結合モードフラグを0に設定する。
【0097】
(トロリー線結合制御付追従制御)
車両状態量算出部50b及び車両状態量制御部50cは、トロリー線結合制御付追従制御を行う。本実施形態でのトロリー線結合制御付追従制御では、図23に示すように、車両本体がトロリー線結合区間Cを走行していると判断されるときに符号Fで示す変動点を設定し、代表点Zが変動点Fに一致するようにヨーモーメント制御を行う。
【0098】
車両状態量算出部50bは、車両本体がトロリー線結合区間Cを走行しているときは、変動点Fを設定し、この変動点Fを代表点Zから第2目標点Tに遷移するよう設定する(第2制御)。なお、トロリー線結合区間の前後である第1走行区間及び第2走行区間では、変動点Fは設定せず、代表点Zが目標点T(第1目標点T)に近づくようにヨーモーメントを与える制御を行う(第1制御)。第1制御の詳細は、先に説明した形態と略同じであるため、詳細は省略する。
【0099】
また、車両状態量算出部50bは、代表点Zと変動点Fとの偏差を演算する。ここで、変動点FのY座標値をY_cとすると、このY座標値Y_cは代表点Zと変動点Fの偏差に等しいため、車両状態量算出部50bは変動点FのY座標値Y_cを代表点Zと変動点Fとの偏差とする。偏差Y_cは、車両が変動点Fに対して右にずれた場合に正、左にずれた場合に負となる。
【0100】
車両状態量制御部50cは、代表点Zと変動点Fとの偏差Y_cを用いて代表点Zを変動点Fに一致させるためのヨーモーメント補正値を算出する。このとき、ヨーモーメント補正値は次のように算出できる。

ヨーモーメント補正値=ゲイン×Y_c ・・・(7)

つまり、代表点Zを式(7)に従って変動点Fと一致するように動作させる。これをブロック図にしたものを図24に示す。変換部50cにおいて偏差Y_cにゲインをかけてヨーモーメント補正値に変換し、このヨーモーメント補正値はヨーモーメント制御部102に出力され、車体にヨーモーメントが付加される。車両状態量制御部50cは、代表点Zが変動点Fに一致していない限り、ヨーモーメント補正値を出力し続ける。
【0101】
上述のように変動点Fを設定し、代表点Zが変動点Fに一致するようにヨーモーメントを付加するので、トロリー線結合区間では、代表点Zが第2目標点Tに一致するように走行するようヨーモーメント制御され、結果的には車両は第2トロリー線に対して徐々に近づくように走行し、やがては第2トロリー線に対して追従するようになる。
【0102】
変動点Fの設定の詳細については特に限定されないが、車両の運動特性や、積み込み状況、車速等を考慮することが望ましく、特には代表点Tと変動点Fの急峻な変化を防止するために第2目標点Tに向けて緩やかに遷移することが望ましい。
【0103】
図25〜図32に、トロリー線結合区間の前後を走行している場合における第1トロリー線の第1目標点Tから第2トロリー線の第2目標点Tに代表点Zが遷移する様子を示す。
【0104】
図25は、第1トロリー線3L,3Rに対して追従している状態であり、第1トロリー線3L,3R上の第1目標点Tと代表点Zが一点に重なっている。すなわち、第1トロリー線3L,3Rを追従するために、代表点Zは第1目標点Tと一致している。従って、図25では代表点Zと第1目標点Tとが一致するので、ヨーモーメントは付加されないため、直進(第1トロリー線3L,3Rの真下を走行)する。
【0105】
このまま直進すると、図26に示すように撮像範囲内に第2トロリー線3L,3Rが検出されるようになるが、図26の段階ではまだ第2トロリー線3L,3Rが十分に表れていないため、変動点Fと第2トロリー線3L,3R上に第2目標点Tを設定しない。
【0106】
その後、図27に示すように、第2トロリー線3L,3Rが撮像範囲内に明確に現れ、第2トロリー線3L,3Rが直線に遷移し始めたら、第2トロリー線が検出されたと判断してトロリー線結合区間を走行しているとし、第2トロリー線3L,3Rに第2目標点Tおよび変動点Fを設定し、またこの変動点Fが第2目標点Tに一致するように遷移するよう設定する。
【0107】
図28のように変動点Fが第2目標点Tに一致するよう遷移を始めると、変動点Fと代表点Zに偏差が生じ、この偏差を小さくするように車両本体1にヨーモーメントが付加され、図29に示すように、代表点Zは徐々に変動点Fに一致するように移動し、車両は第2トロリー線3L,3Rを追従するようヨーモーメント制御される。
【0108】
図30に示すように、変動点Fが第2目標点Tに重なると変動点Fは遷移を終了する。一方、変動点Fと代表点Zの偏差はまだ残っているため、代表点Zは引き続き変動点Fに一致するようにヨーモーメント制御は継続される。そして図31を経て、図32に示すように、第2目標点Tと変動点Fと代表点Zの3点が一致すると、トロリー線結合区間Cに対する対処を完了する。
【0109】
なお、第1走行区間において代表点Zと第1目標点Tが一致していない状態でトロリー線結合区間に到達する場合(例えば、第1走行区間が短かったために代表点と第1目標点が一致するほどの走行距離が確保できなかった場合や偶然の場合等)、図33〜図40に示すようになる。
【0110】
具体的には、図33に示すように、第1トロリー線3L,3R上の第1目標点Tに対して代表点Zが右側にずれている。この状態では代表点Zと第1目標点Tとが一致していないので、ヨーモーメントが付与されている状態である。
【0111】
その後、撮像範囲内に第2トロリー線3L,3Rが検出されるようになるが、図34の段階ではまだ第2目標点T及び変動点Fを設定しない。
【0112】
その後、図35に示すように、第2トロリー線3L,3Rが撮像範囲内に明確に現れ、第2トロリー線3L,3Rが直線に遷移し始めたら、第2トロリー線3L,3Rに第2目標点Tを算出し、また変動点Fを代表点Zから第2目標点Tに遷移するよう設定し、変動点Fが第2目標点Tに一致するように遷移するよう制御を開始する。
【0113】
図36に示すように変動点Fが第2目標点Tに一致するよう遷移を始め、図37及び図38に示すように、代表点Zは徐々に変動点Fに一致するよう移動する。
【0114】
図39に示すように、変動点Fが第2目標点Tに重なると変動点Fは遷移を終了する。一方、変動点Fと代表点Zの偏差はまだ残っているため、代表点Zは引き続き変動点Fに一致するようにヨーモーメント制御は継続される。そして図40に示すように、第2目標点Tと変動点Fと代表点Zの3点が一致すると、トロリー線結合区間Cに対する対処を完了する。
【0115】
このように、第1走行区間において代表点Zと第1目標点Tが一致していない状態でトロリー線結合区間に到達した場合であっても、本実施の形態のように代表点Zから第2トロリー線3L,3R上の第2目標点Tに遷移する変動点Fを設定し、代表点Zが変動点Fに近づくように車両本体にヨーモーメントを与える制御を行うことで、車両本体1は第2トロリー線を追従するようになる。従って、トロリー線結合区間Cでは、既存の第1トロリー線の位置(第1目標点)がどこにあるかよりも、変動点Fと代表点Zを一致させるように制御することが重要である。つまり、第1目標点以外に新規の目標点(第2トロリー線上の第2目標点)を第2トロリー線3L,3R上に新たに設置し、それに変動点を合わせるように制御することが重要であり、これにより、すり板と接触するトロリー線が第1トロリー線から第2トロリー線に自動的に遷移し、トロリー線1本の基準長さよりも長いトロリー走行路でも安定したトロリー線への追従制御を行うことができる。
【0116】
車両状態量制御部50cのトロリー線追従制御に係わるその他の機能は上述の実施の形態と同じである。
【0117】
(すり板昇降制御)
車両状態量算出部50bは、ある時間tにおける車両の傾きθ_tを計算する。ある時間tにおけるトロリー線3L,3R又は3L,3Rに対する車両の傾きθ_tは、図18や図19に示すような座標系における2つの目標点T,Uの座標値を用いて次の式で表される。

θ_t=(Y_Cbc−Y_Cad)/(X_Cbc−X_Cad) ・・・(8)

また、すり板4La又は4Raとトロリー線3L,3R又は3L,3Rとの交点をWとすると、車両状態量算出部50bは、点WのY座標Y_p_tを計算する。
【0118】
点WのY座標Y_p_tは次のように近似できる。

Y_p_t=Y_Cbc−θ_t×X_Cbc もしくは、Y_p_t=Y_Cad−θ_t×X_Cad ・・・(9)

ここで、Y_p_tの1ステップ後(時間Δ後)の値Y_p_t+1は車両速度Vを用いて、次のように表される。

Y_p_t+1=Y_p_t+V×tanθ_t ・・・(10)

すり板4La又は4Raとトロリー線3L,3R又は3L,3Rが接触していて、良好な電力を得続けられるすり板4La又は4Ra上の点WのY座標Y_p_tの範囲を点Cと点Dの間のY_min(点DのY座標)<Y_p_t<Y_max(点CのY座標)とすると、Y_min<Y_p_t+1<Y_maxとなる領域では、すり板4La,4Raを上げても差し支えないと言える。
【0119】
車両状態量算出部50bは、現在時間tのときに、次の制御ステップt+1のときに点WのY座標Y_p_tがY_min(点DのY座標)とY_max(点CのY座標)の範囲外になるかどうかを判定し、その判定結果を車両状態量制御部50cに出力する。車両状態量制御部50cは、点WのY座標Y_p_tがY_min(点DのY座標)とY_max(点CのY座標)の範囲外になるときは、すり板4La,4Raを下げるもしくは、すり板4La,4Raを上げることを禁止する指令信号を出力する。逆に、範囲内にあるときにはすり板4La,4Raを上げる、もしくはすり板4La,4Raを上げることを許可する指令信号を出力する。また、このY_p_tの位置に応じて車両状態量制御部50cは操舵装置40の反力用モータ42(図5)に反力の補正をかけても良い。この補正量は、例えば、Y_min<Y_p_t+1<Y_maxとなる領域では反力を小さく、Y_min≧Y_p_t+1もしくは、Y_p_t+1≧Y_maxとなる領域では反力を大きくしてもよい。
【0120】
このように、車両制御装置50は、トロリー線結合制御付追従制御とすり板昇降制御の両方を行っている。トロリー線結合制御付追従制御では、車両状態量制御部50cは、第1走行区間や第2走行区間では第1トロリー線3L又は3Rか第2トロリー線3L又は3Rに追従するように偏差Y_Cbcや傾きθ_tにゲインをかけたヨーモーメント補正値を出力(第1制御)する。このヨーモーメント補正値は偏差Y_Cbcや傾きθ_tがゼロになるまで出力されるため、いずれすり板4La又は4Ra上の点WのY座標Y_p_tや車両の傾きθ_tはゼロに収束し、第1トロリー線3L又は3Rか第2トロリー線3L又は3Rに追従して走行する傾向になる。またトロリー線結合区間Cでは第2トロリー線3L又は3R上に第2目標点Tを算出し、かつ代表点Zから第2目標点Tに遷移する変動点を設定し、この代表点Zが変動点Fに近づくようにヨーモーメントを与える制御(第2制御)が行われるので、偏差Y_Cbcや傾きθ_tがゼロになるようヨーモーメント補正値が出力され、同様に第2トロリー線3L又は3Rに追従するようになる。
【0121】
(車両制御装置50の他の形態の制御処理の詳細)
上述した車両制御装置50の他の形態における制御処理の詳細を図41に示すフローチャートを用いて説明する。図41は、カメラで上方を撮像してから制御出力されるまでの処理の流れを示すフローチャートである。カメラは図13のように車軸の延長線上で車両本体1の前方に設置し、撮像するトロリー線は、図12に示すように一本とする。図42は、トロリー線追従制御の不感帯を設定した図22と同様な図である。前述したように、検出領域a1,b1,c1,d1に対して目標点T,U及び代表点Zが設定されている。また、代表点Zから所定の距離Y_l,Y_r(第1のしきい値)だけ離れた位置にトロリー線に対する追従制御の不感帯を規定する点A及び点Bが設定されている。
【0122】
ステップ200からステップ203Bまでの処理は図21に示した制御処理のフローの詳細と同じである。ステップ203Bの後、トロリー線3L,3Rへのトロリー線結合制御付追従制御ステップ500’へ移行する。
【0123】
(トロリー線結合制御付追従制御)
トロリー線結合制御付追従制御ステップ500’では、まずステップ510において、車両状態量算出部50bで設定される結合モードフラグが「0」であるかどうかを判断し、Yesの場合ステップ520へ処理が進行する。Noの場合ステップ550’へ処理が進む。
【0124】
次にステップ520で、撮像範囲a,b,c,dのなかに、トロリー線3L,3Rのうちの第1トロリー線3L,3Rのほかに、第2トロリー線3L,3Rに相当するものが検出されるかどうか判定する。第2トロリー線が検出された場合、ステップ530に進み結合モードフラグ「1」を立てる。その後、ステップ540’に進み第2トロリー線3L,3Rに第2目標点Tを、代表点Zからこの第2目標点Tに遷移する変動点Fを生成し、ステップ550’へと移行する。ステップ520で第2トロリー線3L,3Rが検出されなかった場合、ステップ310へと移行する。
【0125】
次にステップ550’では、変動点Fを第2目標点Tに一致するように遷移させる。遷移のさせ方は、上述の実施形態と同様とすればよい。
【0126】
次にステップ560’では、代表点Zが第2目標点Tに一致したか否かを判定し、代表点Zが第2目標点Tに一致したときはステップ570’に移行し、結合モードフラグを0に設定し、また変動点Fを消去して、ステップ310に移行する。一方、代表点Zが第2目標点Tに一致しないNoの場合、第1トロリー線3L,3Rから第2トロリー線3L,3Rへの遷移中であることから、ステップ320へ処理を移行する。
【0127】
その後、ステップ310にて、車両状態量算出部50bは、目標点T(T)が、図42で示した代表点Zから所定の距離(Y_l、Y_r)だけ離れた位置に設定された点Aと点Bの間(Y_l≦Y_Cbc,Y_r≧Y_Cbc)にあるかどうかを判定する。
【0128】
ステップ310において点Aと点Bの間に目標点Tがない場合やステップ560’においてNoとされた場合、ステップ320に移り、車両状態量制御部50cはヨーモーメント補正値を算出し出力する。
【0129】
このうち、ステップ560’から移行してきた場合のヨーモーメント補正値は、ステップ560’で変動点Fが第2目標点Tに一致するように遷移することで変動点Fと代表点Zの座標に差が生じるため、この差をなくすように例えば式(10)に基づき算出する。車両の進行方向に代表点Zがあり、その方向へ走行する限り、車体本体1の車軸の延長線はいずれ第2目標点Tを通るようになり、第2トロリー線3L,3Rへの追従走行が可能となる。
【0130】
またステップ310において点Aと点Bの間に目標点Tがないときのステップ320におけるヨーモーメント補正値の算出方法の一例を図43に示す。図43の点Aと点Bの外側の特性線の傾きは図24の変換部50cのゲインに相当する。
図43に示すように、点Aと点Bの外側において、目標点TのY座標値Y_Cbc(代表点Zと目標点Tの偏差)に応じたヨーモーメント補正値を算出する。すなわち、点Aの外側では(Y_Cbc値は正)、Y_Cbcが大きくなるにしたがってヨーモーメント補正値を大きくする。点Bの外側では(Y_Cbc値は負)、Y_Cbcが小さくなるにしたがってヨーモーメント補正値を小さくする。これにより点Aと点Bの間に目標点Tがない場合は(すなわち、代表点Zと目標点Tの偏差Y_Cbcの絶対値が第1のしきい値である点AのY座標値Y_l或いは点BのY座標値Y_rの絶対値よりも大きいときは)、代表点Zが目標点Tに近づくように車両本体1にヨーモーメントを与える制御が行われる。また、偏差Y_Cbcの絶対値が大きくなるにしたがって車両本体1に与えるヨーモーメントが大きくなるよう制御される。ヨーモーメント補正値が最大補正値或いは最小補正値に達すると、急激な旋回を防ぐために、ヨーモーメント補正値は一定とする。なお、このように点Aと点B間に目標点Tがない場合に、ヨーモーメント補正値を可変値として算出して出力する代わりに、一定のヨーモーメント補正値を出力してもよい。
【0131】
ここで、図43に示す点AB間でヨーモーメント補正値を0とする意図に関して説明する。目標点Tと代表点Zが一致させるように制御することで、車両本体1が前方に走行していれば点Wはすり板4La又は4Raの中心に位置するようになる。しかしこの場合、点Wがすり板4La又は4Raの中心から少しずれただけでもヨーモーメント補正値が算出されるため、これによってヨーモーメント補正を実現するアクチュエータ(本実施の形態の場合、操舵装置40の反力用モータ42や転舵モータ43(図5)、後輪の電動モータ6L,6R(図3))の動作頻度が増すことになる。点AB間でヨーモーメント補正値を0とすることで、後輪の電動モータ6L,6Rの動作頻度が低減し、制御の安定性と快適な乗り心地を確保することができる。このヨーモーメント補正をする必要のない点ABの範囲は、すり板4La又は4Raの幅に応じて決定すればよい。
【0132】
また、偏差Y_Cbcの絶対値が大きくなるにしたがって車両本体1に与えるヨーモーメントが大きくなるよう制御することにより、走行中にトロリー線3L,3Rからすり板4La,4Raが横方向に大きく外れようとする場合は、車両本体1はすり板4La,4Raの中心に速やかに戻るようになり、ダンプトラックがトロリー線3L,3Rの走行路から外れるのを確実に防止することができる。
【0133】
次いで、ステップ330にて、ヨーモーメント制御モードを選択し出力する。このとき、通常の走行では、車体速を落とす要求(ドライバのリタード操作や他の制御による減速)がないため、ヨーモーメント制御モードとして「1」を選択する。
【0134】
(トロリー線結合制御付追従制御でのトロリー線追従制御の他の例)
次に、トロリー線結合制御付追従制御でのトロリー線追従制御の他の例を図44〜図48を用いて説明する。図44は、トロリー線追従制御の逸脱監視点を設定した図22及び図42と同様な図である。図45は、図41に示したフローチャートのうち、トロリー線結合制御付追従制御ステップ500’に代わるステップ500’’を示すフローチャートである。
【0135】
図44に示すように、トロリー線追従制御の逸脱監視点として、点Aの外側(Y座標の大きい側)のY座標値Y_l’の位置に点A’(第2のしきい値)、点Bの外側(Y座標の負の値の小さい側)のY座標値Y_r’の位置に点B’(第2のしきい値)が設定されている。
【0136】
図45において、スタートしてからステップ510〜570を経由してヨーモーメント補正値を算出するステップ320までの処理は、先に説明した図33と同じである。ステップ320の処理後、ステップ321にて目標点Tの位置がさらに、目標点Tが点A’と点B’の間(Y_l’≦Y_Cbc,Y_r’≧Y_Cbc)にあるかどうかを判定し、真の場合は車両がトロリー走行路から外れる可能性があるため、ステップ322にて修正操舵を行うよう、音声かつ/または表示でドライバに警告する。
【0137】
次のステップ323の処理にて、目標点Tの位置に応じて目標車速を補正する。図46はそのときの目標車速補正値の算出方法の一例を示す図である。この図に示すように、点A’と点B’の間に目標点Tがない場合は、点A’と点B’からの逸脱度合いに応じて目標車速を小さくするよう目標車速の補正値を算出する。すなわち、点A’の外側では(Y_Cbc値は正)、Y_Cbcが大きくなるにしたがって目標車速の減少側の補正値を大きくする。点B’の外側では(Y_Cbc値は負)、Y_Cbcが小さくなるにしたがって目標車速の減少側の補正値を小さくする。これにより点A’と点B’の間に目標点Tがない場合は(すなわち、代表点Zと目標点Tの偏差Y_Cbcの絶対値が第2のしきい値である点A’のY座標値Y_l’或いは点B’のY座標値Y_r’の絶対値よりも大きいときは)、偏差Y_Cbcの絶対値が大きくなるにしたがって走行速度が小さくなるよう制御される。このように車速を低くすることは、ドライバへの操作負担量軽減と、安心感付与の効果がある。
【0138】
図47は目標車速補正値の算出方法の他の例を示す図である。図47のように、点A’と点B’の間に目標点Tがある場合は、目標点Tが代表点Zに近づくにつれて目標車速を増大する補正をしてもよい。すなわち、点A’の内側では(Y_Cbc値は正)、Y_Cbcが小さくなるにしたがって目標車速の増加側の補正値を大きくする。点B’の内側では(Y_Cbc値は負)、Y_Cbcが大きくなるにしたがって目標車速の増加側の補正値を小さくする。これにより点A’と点B’の間に目標点Tがある場合は(すなわち、代表点Zと目標点Tの偏差Y_Cbcの絶対値が第2のしきい値である点A’のY座標値Y_l’或いは点B’のY座標値Y_r’の絶対値よりも小さいときは)、偏差Y_Cbcの絶対値が小さくなるにしたがって走行速度が大きくなるよう制御される。このように車速を大きくすることは、作業効率向上の効果がある。
【0139】
図48は、目標車速の補正値によるモータトルクの生成方法を示す、図10と同様な図である。図48に示すように、上記のように算出した目標車速の補正値に変換部100cにおいてゲインをかけてモータトルク指令値に変換する。次いで、演算部100bにおいて算出されたモータトルク指令値(ヨーモーメント制御部102(図8)によって生成されたヨーモーメント指令値に応じたモータトルク補正値T_ML_Y,T_MR_Yを処理部100aで選択したトルク指令値に加算した値)に変換部100cで算出した目標車速の補正値に応じたモータトルク指令値を加算し、モータトルク指令値T_ML,T_MRを算出する。
【0140】
次に、図46に示す目標車速の補正値により目標車速が低く補正される場合におけるヨーモーメント制御モードに関して説明する。図9に示したように、モータトルクが100%で出力されているような場合で、ヨーモーメントを生成する場合は、左右のどちらか一方のモータトルクを小さくする必要がある。これによって車両はそのとき出していた車体速を維持できなくなるので、速度の低下が起きる。つまり、目標車速を低くするよう補正される場合は、転舵トルク補正によりヨーモーメント補正を行うのではなく、モータトルクの補正によってヨーモーメント補正を行えば、左右の電動モータ6L,6Rを制御することで車両本体1にヨーモーメントを与える制御と走行速度の制御の両方が行われる。これによりヨーモーメントの生成と減速を両立することができ、効率的な制御を行うことができる。
【0141】
(その他)
上述の実施の形態では、トロリー線結合区間Cを車両本体が走行している間だけ変動点を設定し、その間のみ代表点が変動点に一致するように制御する場合について説明したが、第1トロリー線と第2トロリー線に対して追従して走行するトロリー線結合制御付追従制御の具体的態様はこれに限定されない。
例えば変動点はトロリー線結合区間以外でも常に設定していてもよい。この場合、第1走行区間及び第2走行区間では変動点Fの上を代表点Zが移動している状態と設定しておき、そして代表点Zを目標点Tに一致するように制御する。また、トロリー線結合区間では、上述のように第2トロリー線上に位置する第2目標点Tを算出し、かつ変動点Fを代表点Zから第2目標点Tに遷移するよう設定し、代表点Zが変動点Fに近づくように車両本体にヨーモーメントを与える制御とする。
【0142】
また、第1走行区間及び第2走行区間を走行している最中はトロリー線3L,3L,3R,3Rを追従するようヨーモーメントを出力し続ける場合について説明したが、第1走行区間や第2走行区間のうちの所定の走行区間、例えばトロリー線結合区間の前後の間のみトロリー線を追従するヨーモーメント補正値を算出し、ヨーモーメント制御を行うよう制御してもよい。
【0143】
更には、トロリー線検出装置としてカメラを用いる場合、カメラの向いている方向を真上としたが、図49に示すように、車両の前方上方を撮像するようにしても良い。このようにすることで、車両の進行方向に撮像されるトロリー線が長いため、対象とするトロリー線を判別しやすくなる。一方で、前方に撮像範囲を移すほど、撮像範囲に入る景色によるノイズが増大する。本発明を用いる環境に応じて、カメラの撮像範囲は調整するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0144】
1 車両本体
2 ベッセル
3L,3R トロリー線
3L,3R 第1トロリー線
3L1t,3R1t 第1トロリー線終端部分
3L,3R 第2トロリー線
3L2b,3R2b 第2トロリー線始端部分
4L,4R 集電装置
4La,4Ra すり板
4a 油圧ピストン装置
4b 油圧ピストン
4c ロッド
4d 油圧配管
4e 油圧機器
4f 絶縁体
4g 電線
4h 昇降指令信号
5L,5R 後輪
6L,6R 電動モータ
6La,6Ra 出力軸
7L,7R 減速機
11 アクセルペダル
12 リタードペダル
13 シフトレバー
14 コンバインセンサ
15 カメラ
16L,16R 後輪の電磁ピックアップセンサ
21 エンジン
21a 電子ガバナ
22 交流発電機
23 整流回路
24 検出抵抗
25 コンデンサ
26 チョッパ回路
27 グリッド抵抗
28 その他のエンジン負荷
30 インバータ制御装置
30a トルク指令演算部
30b モータ制御演算部
30c インバータ(スイッチング素子)
31 昇降制御装置
32 操舵制御装置
32a 変換部
32b 演算部
32c 変換部
32d 演算部
36L,36R 前輪の電磁ピックアップセンサ
37 対地車速センサ
40 操舵装置
41 ハンドル
42 操舵角センサ付反力モータ
43 転舵角センサ付転舵モータ
44 ラック&ピニオンギア
45L,45R 前輪
50 車両制御装置
50a 画像情報処理部
50b 車両状態量算出部
50c 車両状態量制御部
50c 演算部
50c 変換部
50c 変換部
50c 演算部
51 照明装置
52 絶縁体
53 支柱
54 走行路端
100 コントローラ
100a 処理部
100b 演算部
101 車体速制御部
101a 演算部
101b 変換部
101c スイッチ部
101d ゼロ出力部
102 ヨーモーメント制御部
102a 演算部
102b 操舵トルク制御部
102c モータトルク制御部
102d 最適配分制御部
102e スイッチ部
200 制御装置
C トロリー線結合区間
P,Q,R,S 目標点
P’,Q’,R’,S’ 代表点
T 目標点
第1目標点
第2目標点
Z 代表点(制御点)
F 変動点
e_Lad 偏差
θ_L 傾き
Y_Cbc 偏差
θ_t 傾き
Y_l,Y_r 点A,BのY座標値(第1のしきい値)
Y_l’,Y_r 点A’,B’のY座標値(第2のしきい値)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1本の第1トロリー線を設けた第1走行区間と、少なくとも1本の第2トロリー線を設けた第2走行区間と、前記第1トロリー線の終端部分と前記第2トロリー線の始端部分とが並行するトロリー線結合区間とを有する道路上を、車両本体に設けられた昇降可能な集電装置のすり板を上げて前記第1トロリー線から前記第2トロリー線へと順次接触させることで、前記第1トロリー線及び前記第2トロリー線から電力を受けて前記第1走行区間及び前記第2走行区間を走行する電気駆動ダンプトラックにおいて、
前記車両本体に設けられ、走行中に前記トロリー線の下方から前記第1トロリー線と前記第2トロリー線を検出するトロリー線検出装置と、
前記トロリー線検出装置により検出した前記電気駆動ダンプトラックと前記トロリー線の相対位置情報に基づいて、前記トロリー線結合区間の前後の前記第1走行区間及び前記第2走行区間において前記車両本体が前記第1トロリー線及び第2トロリー線に追従して走行するよう前記車両本体にヨーモーメントを与える第1制御を行う制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記車両が前記トロリー線結合区間を走行しているときは、前記車両本体が前記第1トロリー線から前記第2トロリー線に向かう所定の経路に追従して走行するようヨーモーメントを与える第2制御を行うことを特徴とする電気駆動ダンプトラック。
【請求項2】
請求項1記載の電気駆動ダンプトラックにおいて、
前記制御装置は、
前記第1制御において、前記電気駆動ダンプトラックと前記第1トロリー線及び第2トロリー線の相対位置情報に基づいて、前記車両本体の少なくとも1つの代表点と、前記第1トロリー線及び第2トロリー線上に位置する少なくとも1つの第1目標点を算出し、前記代表点が前記第1目標点に近づくように前記車両本体にヨーモーメントを与える制御を行い、
前記第2制御において、前記電気駆動ダンプトラックと前記第1トロリー線及び前記第2トロリー線の相対位置情報に基づいて、前記車両本体の少なくとも1つの代表点と、前記第2トロリー線上に位置する少なくとも1つの第2目標点を算出し、かつ前記代表点から前記第2目標点に遷移する変動点を設定し、前記代表点が前記変動点に近づくように前記車両本体にヨーモーメントを与える制御を行うことを特徴とする電気駆動ダンプトラック。
【請求項3】
請求項1又は2記載の電気駆動ダンプトラックにおいて、
走行用の左右の電動モータを更に備え、
前記制御装置は、前記左右の電動モータを制御することで前記車両本体にヨーモーメントを与える制御と走行速度の制御の両方を行うことを特徴とする電気駆動ダンプトラック。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の電気駆動ダンプトラックにおいて、
走行用の左右の電動モータと、
操舵装置とを更に備え、
前記制御装置は、
車両制御装置と、コントローラと、インバータ制御装置と、操舵制御装置とを備え、
前記車両制御装置は、前記トロリー線検出装置により検出した情報に基づいて、前記車両本体が前記トロリー線に追従して走行するよう前記車両本体にヨーモーメントを与えるためのヨーモーメント補正値を演算し、
前記コントローラは、前記ヨーモーメント補正値に基づいて、前記インバータ制御装置及び前記操舵制御装置により前記左右の電動モータと前記操舵装置の少なくとも一方を制御することを特徴とする電気駆動ダンプトラック。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の電気駆動ダンプトラックにおいて、
前記トロリー線検出装置は、
前記車両本体に設けられ、走行中に前記トロリー線を連続的に撮像するカメラと、
前記車両本体に設けられ、前記トロリー線を照らす照明装置とを有することを特徴とする電気駆動ダンプトラック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【公開番号】特開2013−74675(P2013−74675A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210724(P2011−210724)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】