説明

電池および組電池

【課題】バスバーを電極端子に固定(接続)するための新規な構造を提案する。
【解決手段】この組電池は、複数の単電池10が電気的に接続されて構成された組電池であって、電極体を収容する電池ケースと、該電池ケースの外面に突出した電極端子62とを備える単電池10を複数備えており、複数の単電池10は、隣接する単電池10間において一方の電極端子62と他方の電極端子とがバスバー20を介して互いに連結されており、バスバー20は、電極端子間を連結する板状の本体部を有する金属部材であって、電極端子62を挿入する端子挿入孔22と、該端子挿入孔22の周縁の少なくとも一部を構成する爪部26であって該バスバーの本体部24から電極端子62の先端方向へ傾斜するように形成された爪部26とを有しており、端子挿入孔22に挿入された電極端子62に対して爪部26がかしめられることにより、バスバー20が電極端子62に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池および組電池に関する。詳しくは、バスバーを介して電気的に接続される電池(単電池)と組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池、ニッケル水素電池その他の二次電池あるいはキャパシタ等の蓄電素子を単電池とし、該単電池を複数直列接続して成る組電池は高出力が得られる電源として、車両搭載用電源、或いはパソコンおよび携帯端末の電源として重要性が高まっている。特に、軽量で高エネルギー密度が得られるリチウムイオン電池を単電池として複数直列に接続した組電池は、車両搭載用高出力電源として好ましく用いられるものとして期待されている。
【0003】
この種の複数の単電池から構成された組電池においては、隣接する単電池間をバスバーにより互いに連結した構造が知られている。例えば特許文献1には、素電池を互いにバスバーで連結した構成が開示されている。ここでは、ボルト式電極端子のボルト部にバスバーを装着し、当該バスバーの上からナットを締め込むことでバスバーが外れないように固定される。この種のバスバーと電極端子との接続に関する他の従来技術として特許文献2が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−188787号公報
【特許文献2】特開2003−331816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電極端子の構成材料としては、電解質に対して耐性のよい材料を用いる必要があることから、一般に、アルミニウムや銅などの有機溶剤に対する耐性の高い金属材料が採用されている。しかしながら、アルミニウムや銅からなる電極端子は物理的強度が弱いため、ナットで締め付けるときのトルクが大きすぎると、電極端子のボルト部が容易に損傷してしまう。すなわち、ナット締結時に高トルクをかけることができないという問題がある。ナット締結時のトルクが適切でないと、電池に加わる振動等によってナットが緩むため、バスバーと電極端子との接続に不都合が生じる場合がある。例えば、ナットが緩むとバスバーと電極端子との接触状態が不安定になるため、バスバーと電極端子間の通電性が悪くなる不具合が生じる。特に自動車等に搭載される組電池は、振動が発生する状態での使用が前提となることから、電池に加わる振動によって不都合が生じないようなバスバーと電極端子との接続構造が求められている。
【0006】
本願発明者は、上述したバスバーと電極端子との接続に関する課題に対して、従来技術の延長線上で対応するのではなく、新たな方向で対処し、それらの課題を解決するように試みた。本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、バスバーを電極端子に固定(接続)するための新規な構造を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によって提供される組電池は、複数の単電池が電気的に接続されて構成された組電池である。
【0008】
本発明に係る組電池は、電極体を収容する電池ケースと、該電池ケースの外面に突出した電極端子とを備える単電池を複数備えている。上記複数の単電池は、隣接する単電池間において一方の電極端子と他方の電極端子とがバスバーを介して互いに連結されている。ここで、上記バスバーは、上記電極端子間を連結する板状の本体部を有する金属部材であって、上記電極端子を挿入する端子挿入孔と、該端子挿入孔の周縁の少なくとも一部を構成する爪部であって該バスバーの本体部から上記電極端子の先端方向若しくは上記電池ケース方向へ傾斜するように形成された爪部とを有している。そして、上記端子挿入孔に挿入された電極端子に対して上記爪部がかしめられることにより、上記バスバーが上記電極端子に固定されていることを特徴とする。
【0009】
ここで、電極端子に対して爪部が「かしめられる」(或いは爪部に対して電極端子が「かしめられる」)とは、爪部と電極端子の少なくとも一方に機械的な外力が加えられることにより、当該爪部及び/又は電極端子の少なくとも一部が変形(圧壊)して当該爪部と電極端子とが相互に固着されることをいう。
【0010】
なお、本明細書において「単電池」とは、組電池を構成するために相互に電気的に接続され得る個々の蓄電素子を指す用語であり、特に限定しない限り種々の組成の電池、キャパシタ(物理電池)を包含する。また、「二次電池」とは、繰り返し充電可能な電池一般をいい、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、電気二重層キャパシタ等のいわゆる蓄電池を包含する。リチウムイオン電池を構成する蓄電素子は、ここでいう「単電池」に包含される典型例であり、そのような単電池を複数備えて成るリチウムイオン電池モジュールは、ここで開示される「組電池」の典型例である。
【0011】
また、本発明は、電極体を収容する電池ケースと、上記電池ケースの外面に突出した電極端子とを備える電池を提供する。
【0012】
かかる電池は、上記電極端子に接続され、該電極端子と当該電池外の端子(例えば、本発明の電池を単電池として複数備えた組電池を構築した際に該電池と隣接する単電池が備える電極端子であり得る。)とを連結するバスバーとを備える。上記バスバーは、板状の本体部を有する金属部材であって、上記電極端子を挿入する端子挿入孔と、該端子挿入孔の周縁の少なくとも一部を構成する爪部であって該バスバーの本体部から前記電極端子の先端方向若しくは上記電池ケース方向へ傾斜するように形成された爪部とを有している。そして、上記端子挿入孔に挿入された電極端子に対して上記爪部がかしめられることにより、上記バスバーが前記電極端子に固定されていることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る組電池又は電池では、例えば単電池間において一方の電極端子と他方の電極端子とを電気的に接続するバスバー(金属製連結部材)として、フラットな本体部と、端子挿入孔と、当該端子挿入孔の周縁の一部に形成された爪部とを有し、且つ、当該爪部が本体部から電極端子の先端方向(即ち電池ケースから離れる方向)若しくは電池ケース方向(即ち電池ケースに接近する方向)に傾斜するように当該本体部から立ち上がるように曲げられて形成されていることを特徴とするバスバーを使用する。即ち、かかる構成のバスバーを使用することによって、当該曲がり部分として本体部から立ち上がるように形成された面積部分である爪部をかしめ固定に有効に利用することができる。
【0014】
従って、本発明に係る組電池又は電池では、電極端子に対してバスバーの爪部をかしめる(即ち上記のとおり、機械的外力により爪部及び/又は電極端子の少なくとも一部を変形(圧壊)して当該爪部と電極端子とを相互に固着する)という簡易な方法によって、バスバーと電極端子とを確実に固定することができる。また、従来のバスバーをネジ止めする構造に比べて、バスバーと電極端子との接続界面が安定するので(振動などでネジが緩むことがないため)、バスバーと電極端子間の通電性を良好に保つことができる。さらに、ナットレス化が可能となり、部品点数やコストを削減することができる。また、電極端子に対してバスバーの爪部をかしめる際に、電極端子の表面に形成された酸化皮膜(典型的には電極端子の自然酸化により形成された酸化皮膜)が削り取られるので、バスバーと電極端子とが金属同士の素地接触となる。そのため、バスバーと電極端子間の通電抵抗が低下し、バスバーと電極端子間の通電性が向上する。従って、本発明によれば、外部接続抵抗の少ない組電池又は電池を提供することができる。
【0015】
ここで開示される組電池又は電池のある好適な一態様において、上記爪部は、上記端子挿入孔の周縁全周を構成するように形成された上記バスバー本体部から上記先端方向若しくは上記電池ケース方向へ立ち上がる環状の爪部であり、該環状爪部が上記電極端子の全周にわたってかしめられていることを特徴とする。このような構造を持つバスバーを使用することによって、環状爪部を電極端子の全周にわたってかしめることができ、バスバーと電極端子の接続強度(かしめ強度)がさらに増大するとともに、当該曲がり部分として本体部から立ち上がるように形成された面積部分である爪部をかしめ固定にさらに有効に利用することができる。また、環状爪部が電極端子の周方向に沿ってかしめられているため、抜け方向(電極端子の軸方向)に力が作用しても、大きな抵抗力を発揮し得る。
【0016】
ここで開示される組電池又は電池のある好適な一態様において、上記環状爪部には、上記端子挿入孔から外方向に延びるスリットが形成されていることを特徴とする。かかる構成によれば、環状爪部の剛性が低下して変形し易くなる。そのため、環状爪部を電極端子にかしめ易くなり、組付け作業性が向上する。
【0017】
ここで開示される組電池又は電池のある好適な一態様において、上記バスバーの端子挿入孔に挿入された電極端子には、該端子挿入孔よりも電極端子の先端寄りに押えリング部材が嵌合されている。そして、上記押えリング部材が上記電池ケース方向に押し込まれることにより該押えリング部材と電池ケースとの間に介在する上記爪部が上記電極端子に対してかしめられていることを特徴とする。かかる構成によれば、押えリング部材を押し込むだけでバスバーを固定でき、組付け作業性がよい。そのため、組電池等の構築を速やかに行うことができる。また、押えリング部材を押し込むだけでバスバーを固定でき、電極端子周辺に広いツーリングスペース(レンチ等の工具を入れるための隙間)を必要としない。そのため、端子間距離が狭いコンパクトな組電池又は電池であっても、バスバーを容易に固定できる。
【0018】
ここで開示される組電池又は電池のある好適な一態様において、上記押えリング部材の上記バスバーに対向する面には、上記爪部の上記バスバー本体部から上記電極端子先端方向への傾斜に対応する傾斜面が形成されている。この場合、上記傾斜面の上記バスバー本体部からの傾斜角θ2と、上記爪部の上記バスバー本体部からの傾斜角θ1とがθ1≦θ2の関係となるように形成するとよい。かかる構成によれば、傾斜面のバスバー本体部からの傾斜角θ2と、爪部のバスバー本体部からの傾斜角θ1との角度差θ2−θ1を利用して、爪部を電極端子に適切にかしめることができるとともに、この角度差θ2−θ1のレベルに応じた常に一定のかしめ量(かしめ具合)で爪部を電極端子にかしめることができる。これによって、バスバーを電極端子に安定に固定することができるとともに、組電池等を構成する個々の電池間においてバスバーの固定強度にバラつきが生じることを回避することができる。
【0019】
本発明に係る組電池又は電池は、上述したとおり、電極端子に対してバスバーが強固に固定されるので、振動が発生する状態で使用したとしても、バスバーと電極端子との接続に不都合が生じることはない。従って、本発明に係る組電池又は電池は、振動が発生する状態での使用が前提となる車両(典型的には自動車、特にハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車のような電動機を備える自動車)に好ましく搭載することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る組電池の構成を模式的に示す外観斜視図である。
【図2A】本発明の一実施形態に係るバスバーの構成を模式的に示す外観斜視図である。
【図2B】本発明の一実施形態に係るバスバーの構成を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るバスバーを電極端子に固定する部分の構造を模式的に示す要部断面図である。
【図4A】本発明の一実施形態に係る押えリングを模式的に示す要部断面図である。
【図4B】本発明の一実施形態に係るバスバーを模式的に示す要部断面図である。
【図4C】本発明の一実施形態に係るバスバーを模式的に示す要部断面図である。
【図5A】本発明の一実施形態に係るバスバーを電極端子に固定する前の状態を模式的に示す要部断面図である。
【図5B】本発明の一実施形態に係るバスバーを電極端子に固定した後の状態を模式的に示す要部断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る電極体を模式的に示す側面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る組電池を備えた車両を模式的に示す側面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るバスバーの構成を模式的に示す外観斜視図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るバスバーを電極端子に固定した後の状態を模式的に示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明による実施の形態を説明する。以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。なお、以下、角形リチウムイオン二次電池を単電池10として複数備えた組電池100の構造について詳細に説明するが、本発明をかかる実施形態に記載されたものに限定することを意図したものではない。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
【0022】
図1を参照しながら本実施形態の組電池100の構成について説明する。図1は本実施形態の組電池100の構成を模式的に示す斜視図である。組電池100は、複数の充放電可能な単電池10が直列に接続されて構成されている。図示した例では、同形状の4個の単電池10が一定の間隔で直列に配列されている。
【0023】
単電池10は、正極および負極を備える電極体80(図6)と、該電極体80および電解質を収容する電池ケース50とを備える。本実施形態の電極体80は、典型的な組電池に装備される単電池と同様、所定の電池構成材料(正負極それぞれの活物質、正負極それぞれの集電体、セパレータ等)から構成されている。また、ここでは電極体80として後述する扁平形状の捲回電極体80が用いられている。
【0024】
本実施形態の電池ケース50は扁平形状の捲回電極体80を収容し得る形状(図示した例では箱型)を有する。電池ケース50の材質は、典型的な単電池で使用されるものと同じであればよく特に制限はないが、組電池自体の軽量化の観点から、例えば薄い金属製或いは合成樹脂製の容器が使用され得る。電池ケース50の外面(上面)には、捲回電極体80の正極と電気的に接続する正極端子62および負極と電気的に接続する負極端子72が設けられている。そして、隣接する単電池10間において一方の正極端子62と他方の負極端子72とがバスバー20を介して互いに連結されている。このようにバスバー20を介して各単電池10の電極端子62、72間を直列に接続することにより、所望する電圧の組電池100が構築される。
【0025】
続いて、図2A、B及び図3を加えて、バスバー20が電極端子(正極端子62)に固定された部分の構造について説明する。図2Aはバスバー20の外観斜視図であり、図2Bはバスバー20の断面図である。図3はバスバー20が電極端子(正極端子62)に固定された部分の構造を示す断面図である。なお、以下では主としてバスバー20を正極端子62に取り付ける場合について説明するが、負極端子72側も同様にしてバスバー20を負極端子72に取り付けることができる。
【0026】
バスバー20は、図2A及び図2Bに示すように、単電池間において一方の正極端子62と他方の負極端子72とを電気的に接続するバスバー(金属製連結部材)として、フラットな本体部(平板部)24と、端子挿入孔22と、当該端子挿入孔22の周縁の一部に形成された爪部26とを有している。フラットな本体部24は、単電池間において一方の正極端子62と他方の負極端子72とを連結する板状の金属部材であり、端子挿入孔22は、正極端子62を挿入して取り付けるための取付孔である。
【0027】
端子挿入孔22の周縁の一部に形成された爪部26は、図3に示すように、当該爪部26がフラットな本体部24から正極端子62の先端方向(即ち電池ケースから離れる方向)に傾斜するように当該本体部24から立ち上がるように曲げられて形成されている。そして、端子挿入孔22に挿入された正極端子62に対して爪部26がかしめられることにより、バスバー20が正極端子62に固定されている。即ち、かかる構成のバスバー20を使用することによって、当該曲がり部分として本体部24から立ち上がるように形成された面積部分である爪部26をかしめ固定に有効に利用することができる。
【0028】
従って、本実施形態に係る組電池100では、正極端子62に対してバスバー爪部26をかしめる(即ち、機械的外力により爪部26及び/又は正極端子62の少なくとも一部を変形(圧壊)して当該爪部26と正極端子62とを相互に固着する)という簡易な方法によって、バスバー20と正極端子62とを確実に固定することができる。また、従来のバスバーをネジ止めする構造に比べて、バスバー20と正極端子62との接続界面が安定するので(振動などでネジが緩むことがないため)、バスバー20と正極端子62間の通電性を良好に保つことができ、外部接続抵抗の少ない組電池100を提供することができる。
【0029】
以下、さらに本実施形態に係る組電池100について詳細に説明する。この実施形態では、図3に示すように、バスバー20の端子挿入孔22に挿入された正極端子62には、該端子挿入孔22よりも正極端子62の先端寄りに押えリング部材30が嵌合されている。この押えリング部材30が電池ケース方向に押し込まれることにより該押えリング部材30と電池ケースとの間に介在する爪部26が正極端子62に対してかしめられている。
【0030】
図4A〜図4Cは、バスバー20が正極端子62に固定された部分の構造について、上述した押えリング部材30とバスバー20と正極端子62とからなるアセンブリを組み付ける前の状態を示している。正極端子62は、図4Aに示すように、断面円形の棒状の部材である。正極端子62は、電池ケースの外面よりも外側に突出した突出部分66を有しており、この正極端子62の突出部分66にバスバー20が固定される。該正極端子62を構成する材料は、典型的なリチウム二次電池で使用されるものであればよく特に制限はない。本実施形態ではアルミニウム製である。
【0031】
バスバー20は、図4Bに示すように、フラットな本体部24と、端子挿入孔22と、当該端子挿入孔22の周縁の一部に形成された爪部26とを有している。端子挿入孔22は、正極端子62を挿入して取り付けるための取付孔であり、正極端子62の突出部分66を装着できる程度の孔径を有しており(ここでは直径約6mm)、正極端子62の突出部分66は遊びなく端子挿入孔22に装着され得る。
【0032】
バスバー爪部26は、バスバー20の本体部24から正極端子62の先端方向(即ち電池ケースから離れる方向)に傾斜するように当該本体部24から立ち上がるように曲げられて形成されている。
この実施形態では、図2Aに示すように、爪部26は環状の爪部であり、端子挿入孔22の周縁全周を構成するように、当該環状爪部26が本体部24から正極端子62の先端方向に傾斜するように曲げられて形成されている。このような環状爪部26を有する構造のバスバー20を使用することによって、環状爪部26を正極端子62の全周にわたってかしめることができ、バスバー20と正極端子62の接続強度(かしめ強度)がさらに増大するとともに、当該曲がり部分として本体部24から立ち上がるように形成された面積部分である爪部26をかしめ固定にさらに有効に利用することができる。
なお、環状爪部26には、端子挿入孔22から外方向に延びるスリット28が形成されている。このように環状爪部26の一部にスリット28を形成することにより、環状爪部26の剛性が低下して変形し易くなる。そのため、環状爪部26を正極端子62にかしめ易くなる。スリット28の数や形状は、電池の具体的構成(例えば爪部に求められる剛性や材質など)に応じて適宜変更するとよい。
【0033】
バスバー20を構成する材料は、導電性を有する材料であればよく特に限定されないが、所望の強度を有する金属材料が好ましい。一例として銅またはアルミニウム製のバスバーを好ましく用いることができる。本実施形態では銅製である。バスバー20の厚みは特に限定されないが、例えば1.4mm程度にすると良い。
【0034】
押えリング部材30は、図4Aに示すように、バスバー20の端子挿入孔22に挿入された正極端子62に嵌合される円筒状の部材である。押えリング部材30の中央部分には貫通孔32が形成されており、当該貫通孔32に正極端子62が挿通されるようになっている。また、押えリング部材30のバスバー20に対向する面(図では下面)34には、バスバー爪部26のバスバー本体部24から正極端子先端方向への傾斜に対応する傾斜面36が形成されている。
【0035】
かかる傾斜面36は、図5Aに示すように、バスバー爪部26の上に押えリング部材30を被せたときに、該押えリング部材30の傾斜面36が爪部26の先端部分26aに当接するように形成されている。具体的には、傾斜面36のバスバー本体部24(特に本体部表面24a)からの傾斜角θ2と、爪部26のバスバー本体部24(特に本体部表面24a)からの傾斜角θ1とがθ1<θ2の関係となるように予め形成しておくとよい。かかる構成によれば、バスバー爪部26の上に押えリング部材30を被せたときに、押えリング部材の傾斜面36がバスバー爪部26の先端部分26aに確実に当接する。
【0036】
この実施形態では、傾斜面36の本体部表面24aからの傾斜角θ2が150°、爪部26の本体部表面24aからの傾斜角θ1が135°に設定され、2つの傾斜角θ1、θ2の差15°分によって傾斜面36がバスバー爪部26に確実に当接する。また、この実施形態では、傾斜面36は、押えリング部材30の中央部分に設けられた貫通孔32の開口周縁部に周方向に連続して設けられ、爪部先端部分26aの全周にわたって当接するようになっている。
【0037】
押えリング部材30を構成する材料は、所要の強度を有する材料であればよく特に制限されない。例えば、押えリング部材30は、バスバー20と同じ金属材料で構成してもよいし、バスバー20と異なる金属材料で構成してもよい。本実施形態では、アルミニウム製である。また、押えリング部材30は、バスバー20よりも高強度な材料で構成してもよい。これにより、押えリング部材30でバスバー爪部26を押し込んだ際に押えリング部材30の変形を防止することができる。また、押えリング部材30は、絶縁性を有する材料で構成してもよい。これにより、バスバーと電極端子との連結部分周辺に絶縁性を付与することができる。押えリング部材30の厚みは特に限定されないが、例えば3mm程度にすると良い。
【0038】
バスバー20を正極端子62に固定するに際しては、まず、図5Aに示すように、押えリング部材30とバスバー20と正極端子62とを組み付ける。具体的には、バスバー20の端子挿入孔22に正極端子62を挿入した後、端子挿入孔22に挿入された正極端子62に押えリング部材30を嵌合し、押えリング部材30をバスバー爪部26の上に被せる。その際、押えリング部材30の傾斜面36が爪部26の先端部分26aの上端辺に当接するとともに、該爪部26の先端部分26aの下端辺が正極端子62の外周面64に当接するように配置する。このように組み付けられた各部品(押えリング部材30とバスバー20と正極端子62)は、図示しないかしめ工具にセットされる。
【0039】
そして、図示しないかしめ工具を用いて押えリング部材30を電池ケース方向(図5Aでは下方向)90に押し込む。図5Aの状態で押えリング部材30を下方向90に押し込んでいくと、正極端子62の外周面64に当接した爪部26の先端部分26aが正極端子62の外周面64に圧接され、該正極端子62の外周面64を削りながら下方向(図示した爪部26の傾斜角θ1が大きくなる方向)に移動する。そして、図5Bに示すように、爪部26の傾斜角θ1が傾斜面36の傾斜角θ2と略同じになるまで押えリング部材30を下方向90にさらに強く押し込むことにより、爪部26の先端部分26aと正極端子62の外周面64の少なくとも一部が変形(圧壊)して当該爪部26と正極端子62とが相互に固着される。このように、端子挿入孔22に挿入された正極端子62に対して爪部26がかしめられることにより、バスバー20が正極端子62に固定され得る。
【0040】
このように押えリング部材30を下方向90に押し込んでバスバー20を正極端子62に固定したら、その後、押えリング部材30の押し込みを止め、押えリング部材30からかしめ工具(図示せず)を取り外す。この際、押えリング部材30は、変形(圧壊)されたバスバー爪部26からのスプリングバックによって内側から圧力を受けるので、バスバー爪部26の上に被せられた状態で一体化する。
【0041】
以上のように、本実施形態に係る組電池100では、単電池間において一方の電極端子と他方の電極端子とを電気的に接続するバスバー(金属製連結部材)として、フラットな本体部24と、端子挿入孔22と、当該端子挿入孔22の周縁の一部に形成された爪部26とを有し、且つ、当該爪部26が本体部24から電極端子62の先端方向(即ち電池ケースから離れる方向)に傾斜するように当該本体部24から立ち上がるように曲げられて形成されていることを特徴とするバスバー20を使用する。即ち、かかる構成のバスバー20を使用することによって、当該曲がり部分として本体部24から立ち上がるように形成された面積部分である爪部26をかしめ固定に有効に利用することができる。
【0042】
従って、本実施形態に係る組電池100では、電極端子62に対してバスバー爪部26をかしめる(即ち上記のとおり、機械的外力により爪部26及び/又は電極端子62の少なくとも一部を変形(圧壊)して当該爪部26と電極端子62とを相互に固着する)という簡易な方法によって、バスバー20と電極端子62とを確実に固定することができる。また、従来のバスバーをネジ止めする構造に比べて、バスバー20と電極端子62との接続界面が安定するので(振動などでネジが緩むことがないため)、バスバー20と電極端子62間の通電性を良好に保つことができる。さらに、ナットレス化が可能となり、部品点数やコストを削減することができる。
【0043】
加えて、図5Aおよび図5Bに示したように、押えリング部材30を下方向90に押し込むと、爪部26の先端部分26aが電極端子62の外周面64に圧接され、該電極端子62の外周面64を削りながら下方向(図示した爪部26の傾斜角θ1が大きくなる方向)に移動する。その際、電極端子62の表面に形成された酸化皮膜(典型的には電極端子の自然酸化により形成された酸化皮膜)が削り取られるので、バスバー20と電極端子62とが金属同士の素地接触となる。そのため、バスバー20と電極端子62間の通電抵抗が低下し、バスバー20と電極端子62間の通電性が向上する。従って、本実施形態によれば、外部接続抵抗の少ない組電池100を提供することができる。
【0044】
本発明者は、バスバーが電極端子にかしめ固定されている組電池と、バスバーが電極端子にネジ(ボルト及びナット)止めされている従来の組電池をそれぞれ構築し、バスバーと電極端子間の通電抵抗を比較した。その結果、バスバーが電極端子にネジ止めされている従来の組電池では、バスバーと電極端子間の通電抵抗が概ね0.05mΩ程度となった。これに対して、バスバーが電極端子にかしめ固定されている組電池では、バスバー20と電極端子62間の通電抵抗が概ね0.01mΩ〜0.02mΩ程度となり、従来のバスバーをネジ止めする場合に比べて、バスバーと電極端子間の通電性が改善されることが確認された。これは、爪部26を電極端子62にかしめる際に、電極端子62の表面64に形成された酸化皮膜が削り取られ、バスバー20と電極端子62とが金属同士の素地接触となったからと考えられる。
【0045】
さらに、本実施形態に係る構成では、バスバー爪部26は、端子挿入孔22の周縁全周を構成するように形成された先端方向へ立ち上がる環状の爪部26である。そして、該環状爪部26が電極端子62の全周にわたってかしめられている。このような構造を有するバスバー20を使用することによって、環状爪部26を電極端子62の全周にわたってかしめることができ、バスバー20と電極端子62の接続強度(かしめ強度)がさらに増大するとともに、当該曲がり部分として本体部24から立ち上がるように形成された面積部分である爪部26をかしめ固定にさらに有効に利用することができる。なお、このような構造を有するバスバー20は、環状爪部26が電極端子62の周方向に全周にわたってかしめられているため、抜け方向(電極端子の軸方向、図3では上下方向)に力が作用しても、大きな抵抗力を発揮し得る。
【0046】
さらに、本実施形態に係る構成では、バスバー20の端子挿入孔22に挿入された電極端子62には、該端子挿入孔22よりも電極端子62の先端寄りに押えリング部材30が嵌合されている。そして、押えリング部材30が電池ケース方向90に押し込まれることにより該押えリング部材30と電池ケースとの間に介在する爪部26が電極端子62に対してかしめられている。かかる構成によれば、押えリング部材30を押し込むだけでバスバー20を固定でき、組付け作業性がよい。そのため、組電池等の構築を速やかに行うことができる。また、押えリング部材30を押し込むだけでバスバー20を固定でき、電極端子62周辺に広いツーリングスペース(レンチ等の工具を入れるための隙間)を必要としない。そのため、端子間距離が狭いコンパクトな組電池であっても、バスバー20を容易に固定できる。
【0047】
なお、押えリング部材30は、バスバー20を固定した後、バスバー20から取り外してもよいが、バスバー20に被せた状態で一体化することが好ましい。この実施形態では、押えリング部材30は、変形(圧壊)されたバスバーの爪部26からのスプリングバックによって内側から圧力を受け、バスバー爪部26の上に被せられた状態で一体化する。かかる構成によれば、押えリング部材30によって、変形(圧壊)された爪部26に生じた反力を押えることができ、バスバー20を強固に安定して固定できる。
【0048】
さらに、本実施形態に係る構成では、押えリング部材30のバスバー20に対向する面34には、爪部26のバスバー本体部24から電極端子62先端方向への傾斜に対応する傾斜面36が形成されている。そして、バスバー20を固定する前の状態において、傾斜面36のバスバー本体部24からの傾斜角θ2と、爪部26のバスバー本体部24からの傾斜角θ1とがθ1<θ2(図5A)の関係となるように形成しておき、バスバー20を固定する際に、爪部26のバスバー本体部24からの傾斜角θ1が、傾斜面36のバスバー本体部24からの傾斜角θ2と略同じ(θ1=θ2、図5B)になるまで、押えリング部材30を下方向90に押し込んでいる。
【0049】
かかる構成によれば、傾斜面36のバスバー本体部24からの傾斜角θ2と、爪部26のバスバー本体部24からの傾斜角θ1との角度差θ2−θ1(図5A)を利用して、爪部26を電極端子62に適切にかしめているので、この角度差θ2−θ1(図5A)のレベルに応じた常に一定のかしめ量(かしめ具合)で、爪部26を電極端子62にかしめることができる。これによって、バスバー20を電極端子62に安定に固定できるとともに、組電池100等を構成する個々の電池間においてバスバー20の固定強度にバラつきが生じることを回避することができる。
【0050】
かかる構成によれば、図5Aに示した傾斜面36の傾斜角θ2と爪部26の傾斜角θ1との角度差θ2−θ1を利用して爪部26を電極端子62にかしめているので、角度差θ2−θ1分に応じたレベルで常に一定のかしめ量(かしめ具合)を得ることができる。これにより、爪部26を電極端子62に適切に且つ安定してかしめることができる。また、組電池を構成する各単電池間において、バスバーと電極端子の接続強度にバラつきが生じることを回避することができる。なお、本発明は上記構成に限定されない。例えば、この場合でも、かしめ前後における爪部26の傾斜角θ1の角度変化に応じたレベルで爪部26を電極端子62にかしめることができる。
【0051】
続いて、図6を参照しつつ、本実施形態で使用され得る単電池10の構成及び単電池10を構成する各材料などについて詳述する。本実施形態に係る組電池100は、充放電可能な二次電池を単電池10とし、そのような単電池10を複数個直列に接続して成る組電池100であればよく、単電池10の構成は特に制限されない。単電池の種類は上述したリチウムイオン電池に限られず、ニッケル水素電池、電気二重層キャパシタ等が本発明の実施に好適な単電池の構成として挙げられる。
【0052】
また、上述したように単電池10は正極および負極を備える電極体と、該電極体および電解質を収容する電池ケース50とを備える。電池ケース50内に収容される捲回電極体の構成について詳述する。本実施形態に係る捲回電極体は、通常のリチウムイオン電池の捲回電極体と同様、シート状正極(以下「正極シート」という。)とシート状負極(以下「負極シート」という。)を計2枚のシート状セパレータ(以下「セパレータシート」という。)と共に積層し、さらに当該正極シートと負極シートとをややずらしつつ捲回し、次いで得られた捲回体を側面方向から押しつぶして拉げさせることによって作製される扁平形状の捲回電極体80である。
【0053】
図6に示すように、かかる捲回電極体80の捲回方向に対する横方向において、上記のとおりにややずらしつつ捲回された結果として、正極シート82および負極シート84の端の一部がそれぞれ捲回コア部分81(即ち正極シート82の正極活物質層形成部分と負極シート84の負極活物質層形成部分とセパレータシート86とが密に捲回された部分)から外方にはみ出ている。かかる正極側はみ出し部分(即ち正極活物質層の非形成部分)82Aおよび負極側はみ出し部分(即ち負極活物質層の非形成部分)84Aには、正極リード端子82Bおよび負極リード端子84Bがそれぞれ付設されており、それぞれ、上述の正極端子62および負極端子72と電気的に接続される。
【0054】
なお、かかる捲回電極体を構成する材料および部材自体は、従来のリチウムイオン電池の電極体と同様でよく、特に制限はない。例えば、正極シートは長尺状の正極集電体の上にリチウムイオン電池用正極活物質層が付与されて形成され得る。正極集電体にはアルミニウム箔(本実施形態)その他の正極に適する金属箔が好適に使用される。正極活物質は従来からリチウムイオン電池に用いられる物質の一種または二種以上を特に限定することなく使用することができる。好適例として、LiMn、LiCoO、LiNiO等が挙げられる。
【0055】
一方、負極シートは長尺状の負極集電体の上にリチウムイオン電池用負極活物質層が付与されて形成され得る。負極集電体には銅箔(本実施形態)その他の負極に適する金属箔が好適に使用される。負極活物質は従来からリチウムイオン電池に用いられる物質の一種または二種以上を特に限定することなく使用することができる。好適例として、グラファイトカーボン、アモルファスカーボン等の炭素系材料、リチウム含有遷移金属酸化物や遷移金属窒化物等が挙げられる。
【0056】
また、正負極シート間に使用される好適なセパレータシートとしては多孔質ポリオレフィン系樹脂で構成されたものが挙げられる。なお、電解質として固体電解質若しくはゲル状電解質を使用する場合には、セパレータが不要な場合(即ちこの場合には電解質自体がセパレータとして機能し得る。)があり得る。
【0057】
続いて、電池ケース50内に上記捲回電極体と共に収容される電解質の構成について説明する。本実施形態の電解質は例えばLiPF等のリチウム塩である。本実施形態では、適当量(例えば濃度1M)のLiPF等のリチウム塩をジエチルカーボネートとエチレンカーボネートとの混合溶媒(例えば質量比1:1)のような非水電解液に溶解して電解液として使用している。
【0058】
捲回電極体を電池ケース50に収容するとともに、上記電解液を注入して封止することによって本実施形態の単電池10は構築される。そして、単電池10を所定の方向(本実施形態では並列)に配列し、隣接する単電池10間において一方の正極端子62と他方の負極端子72とをバスバー20によって直列に接続することにより、所望する電圧の組電池100が構築される。
【0059】
本実施形態に係る組電池100は、上述したとおり、電極端子62に対してバスバー20が強固に固定されるので、振動が発生する状態で使用したとしても、バスバー20と電極端子62との接続に不都合が生じることはない。従って、本実施形態に係る組電池100は、振動が発生する状態での使用が前提となる車両に好ましく搭載することができる。従って、本発明では、図7に模式的に示すように、かかる組電池100を電源として備える車両(典型的には自動車、特にハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車のような電動機を備える自動車)1を提供することができる。なお、自動車等の車両に搭載する場合、より多くの単電池が直列に接続され得ると共に、組電池の主要部(単電池群、等)を保護するための外装カバー、車両の所定部位に当該組電池を固定するための部品、等が装備され得るが、このような装備の有無は本発明の技術的範囲を左右するものではない。
【0060】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。
【0061】
例えば、本実施形態では、図5Bに示したように、爪部26のバスバー本体部24からの傾斜角θ1が、傾斜面36のバスバー本体部24からの傾斜角θ2と略同じ(θ1=θ2、図5B)になるまで、押えリング部材30を下方向90に押し込んでいるが、これに限らない。例えば、十分なかしめ量(かしめ具合)が得られるのであれば、爪部26のバスバー本体部24からの傾斜角θ1が、傾斜面36のバスバー本体部24からの傾斜角θ2よりも小さいうちに、押えリング部材30の押し込みを止めてもよい場合がある(θ1≦θ2)。
【0062】
また、本実施形態では、図2Aに示したように、環状爪部26をかしめ易くするために、環状爪部26の一部にスリット28が2つ形成されている一例を示したが、これに限定されない。例えば、図2Aのスリット形状とは異なる形状を有するスリットを2つ以上形成してもよい。図8の例では、図2Aのスリットよりも幅広な4つのスリット28が形成されている。このように環状爪部26に形成されるスリットの数や形状を適宜変更することにより、環状爪部26の剛性を適切に調整して、所望のかしめ強度で電極端子にかしめることができる。
【0063】
また、本実施形態では、押えリング部材30は、バスバー20を固定した後、バスバー20から取り外さずに、バスバー20に被せた状態で一体化しているが、これに限定されない。例えば、図9に示すように、押えリング部材30は、バスバー20を固定した後、バスバー20から取り外してもよい。これにより、バスバー20と電極端子62の固定部分周辺の構造を簡略化することができる。
【0064】
さらに、本実施形態では、端子挿入孔22の周縁を構成する爪部26が、バスバー本体部24から電極端子62の先端方向へ傾斜するように(図2A、図2Bでは上方向に突出するように)形成されている一例を示したが、これに限定されない。例えば、図2A、図2Bに示したバスバー20の表面と裏面をひっくり返して(即ち爪部26が下方向に突出するように上下反転させて)使用してもよい。この場合、端子挿入孔22の周縁を構成する爪部26は、バスバー本体部24から電池ケース方向へ傾斜するように形成される。かかる構造を有するバスバーであっても、端子挿入孔22に挿入された電極端子62に対して、バスバー本体部24から電池ケース方向へ傾斜するように形成された爪部26をかしめることにより、バスバー20を電極端子62に適切に固定することができる。
【0065】
さらに、本発明に係るバスバーの端子固定構造は、組電池を構成する個々の単電池における電極端子間を連結する用途にも広く適用することができる。例えば、本発明は、図1に示すように、電極体を収容する電池ケース50と、電池ケース50の外面に突出した電極端子62とを備える電池10を提供する。
【0066】
かかる電池10は、電極端子62に接続され、該電極端子62と当該電池外の端子(図1の例では本発明に係る電池10を単電池として複数備えた組電池100を構築した際に該電池10と隣接する単電池が備える電極端子72である。)とを連結するバスバー20とを備える。電池外端子72は、組電池化したときに隣接する単電池が備える電極端子72に限らず、その他の電池外端子(例えば、インバータ等の電池外部装置が備える端子)であってもよい。かかるバスバー20は、図3に示すように、板状の本体部24を有する金属部材であって、電極端子62を挿入する端子挿入孔22と、該端子挿入孔22の周縁の少なくとも一部を構成する爪部26であって該バスバーの本体部24から電極端子62の先端方向若しくは電池ケース方向へ傾斜するように形成された爪部26とを有している。そして、上記端子挿入孔22に挿入された電極端子62に対して爪部26をかしめることにより、バスバー20を電極端子62に固定するとよい。
【0067】
かかる構成では、電極端子62と電池外の端子とを電気的に接続するバスバー(金属製連結部材)として、フラットな本体部24と、端子挿入孔22と、当該端子挿入孔22の周縁の一部に形成された爪部26とを有し、且つ、当該爪部26が本体部24から電極端子62の先端方向(即ち電池ケースから離れる方向)若しくは電池ケース方向(即ち電池ケースに接近する方向)に傾斜するように当該本体部24から立ち上がるように曲げられて形成されていることを特徴とするバスバー20を使用する。即ち、かかる構成のバスバー20を使用することによって、当該曲がり部分として本体部24から立ち上がるように形成された面積部分である爪部26をかしめ固定に有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0068】
10 単電池
20 バスバー
22 端子挿入孔
24 本体部
26 爪部
26a 爪部の先端部分
28 スリット
30 押えリング部材
32 貫通孔
34 押えリング部材のバスバーに対向する面
36 傾斜面
50 電池ケース
62 正極端子
64 外周面
72 負極端子
80 捲回電極体
81 捲回コア部分
82 正極シート
82B 正極リード端子
84 負極シート
84B 負極リード端子
86 セパレータシート
100 組電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の単電池が電気的に接続されて構成された組電池であって、
電極体を収容する電池ケースと、該電池ケースの外面に突出した電極端子とを備える単電池を複数備えており、
前記複数の単電池は、隣接する単電池間において一方の電極端子と他方の電極端子とがバスバーを介して互いに連結されており、
前記バスバーは、前記電極端子間を連結する板状の本体部を有する金属部材であって、前記電極端子を挿入する端子挿入孔と、該端子挿入孔の周縁の少なくとも一部を構成する爪部であって該バスバーの本体部から前記電極端子の先端方向若しくは前記電池ケース方向へ傾斜するように形成された爪部とを有しており、
前記端子挿入孔に挿入された電極端子に対して前記爪部がかしめられることにより、前記バスバーが前記電極端子に固定されていることを特徴とする、組電池。
【請求項2】
前記爪部は、前記端子挿入孔の周縁全周を構成するように形成された前記バスバー本体部から前記先端方向若しくは前記電池ケース方向へ立ち上がる環状の爪部であり、
該環状爪部が前記電極端子の全周にわたってかしめられていることを特徴とする、請求項1に記載の組電池。
【請求項3】
前記環状爪部には、前記端子挿入孔から外方向に延びるスリットが形成されていることを特徴とする、請求項2に記載の組電池。
【請求項4】
前記バスバーの端子挿入孔に挿入された電極端子には、該端子挿入孔よりも電極端子の先端寄りに押えリング部材が嵌合されており、
前記押えリング部材が前記電池ケース方向に押し込まれることにより該押えリング部材と電池ケースとの間に介在する前記爪部が前記電極端子に対してかしめられていることを特徴とする、請求項1から3の何れか一つに記載の組電池。
【請求項5】
前記押えリング部材の前記バスバーに対向する面には、前記爪部の前記バスバー本体部から前記電極端子先端方向への傾斜に対応する傾斜面が形成されており、
ここで該傾斜面の前記バスバー本体部からの傾斜角θ2と、前記爪部の前記バスバー本体部からの傾斜角θ1とがθ1≦θ2の関係であることを特徴とする、請求項4に記載の組電池。
【請求項6】
電極体を収容する電池ケースと、
前記電池ケースの外面に突出した電極端子とを備える電池であって、
前記電極端子に接続され、該電極端子と当該電池外の端子とを連結するバスバーと
を備え、
前記バスバーは、板状の本体部を有する金属部材であって、前記電極端子を挿入する端子挿入孔と、該端子挿入孔の周縁の少なくとも一部を構成する爪部であって該バスバーの本体部から前記電極端子の先端方向若しくは前記電池ケース方向へ傾斜するように形成された爪部とを有しており、
前記端子挿入孔に挿入された電極端子に対して前記爪部がかしめられることにより、前記バスバーが前記電極端子に固定されていることを特徴とする、電池。
【請求項7】
前記爪部は、前記端子挿入孔の周縁全周を構成するように形成された前記バスバー本体部から前記電極端子先端方向若しくは前記電池ケース方向へ立ち上がる環状の爪部であり、
該環状爪部が前記電極端子の全周にわたってかしめられていることを特徴とする、請求項6に記載の電池。
【請求項8】
前記環状爪部には、前記端子挿入孔から外方向に延びるスリットが形成されていることを特徴とする、請求項7に記載の電池。
【請求項9】
前記バスバーの端子挿入孔に挿入された電極端子には、該端子挿入孔よりも電極端子の先端寄りに押えリング部材が嵌合されており、
前記押えリング部材が前記電池ケース方向に押し込まれることにより該押えリング部材と電池ケースとの間に介在する前記爪部が前記電極端子に対してかしめられていることを特徴とする、請求項6から8の何れか一つに記載の電池。
【請求項10】
前記押えリング部材の前記バスバーに対向する面には、前記爪部の前記バスバー本体部から前記電極端子先端方向への傾斜に対応する傾斜面が形成されており、
ここで該傾斜面の前記バスバー本体部からの傾斜角θ2と、前記爪部の前記バスバー本体部からの傾斜角θ1とがθ1≦θ2の関係であることを特徴とする、請求項9に記載の電池。
【請求項11】
請求項1から5の何れか一つに記載の組電池または請求項6から10の何れか一つに記載の電池を備えた車両。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−205535(P2010−205535A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49122(P2009−49122)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(592204886)冨士発條株式会社 (11)
【Fターム(参考)】