説明

電池の保管容器

【課題】保管容器2に冷却装置3やコネクタ4を設けることにより、電池を長期間保管する場合に、高温による寿命性能の低下を防止し、電池性能の厳密な管理を行うことができる電池の保管容器を提供する。
【解決手段】電池を収納して保管する電池の保管容器において、保管容器2内の温度を容器外の温度よりも低温に冷却する冷却装置3が設けられると共に、保管容器2内に収納した組電池1の各単電池1aの端子に接続されるコネクタ4が、容器外面に取り付けられた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池等を収納して保管する電池の保管容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電池は、一般に、高温の環境で長期間放置されると、寿命性能が低下する。特にリチウムイオン二次電池では、この傾向が顕著であり、長期間の保管が必要な場合には、できるだけ低温で保管することが要請されている。
【0003】
ところが、電池を低温室に収納して保管する場合(例えば、特許文献1参照)には、室内を冷却する冷却装置等の設備が大がかりで高価なものになるだけでなく、保管場所がこのような設備を備えた場所に限定されるという問題があった。しかも、除湿は行われているとしても、比較的湿度の高い低温室内の全体を冷却するために、電池に結露が生じやすくなるという問題もあった。
【0004】
また、電池やこの電池の充電器等に冷却ファンを設けたものもあったが(例えば、特許文献2参照)、これは充電等によって発熱した電池を外気によって冷却するためのものであり、高温の環境下で単に保管されている電池の温度を下げる効果は期待できない。しかも、電池自体に他の冷却手段を設けたとしても、この電池の寿命が尽きる等して使用できなくなると、冷却手段だけを再利用することは困難になるため、無駄が大きくなるという問題も生じる。
【0005】
さらに、電池の保管容器に充電用のコネクタを設けたものもあったが(例えば、特許文献3参照)、蓋を開けなければ、このコネクタに充電器を接続することができないので、保管中の電池の充電作業が面倒なものになるという問題もあった。さらに、保管容器に収納された電池が複数の単電池からなる組電池である場合に、各単電池の端子に接続されたコネクタを保管容器に設けたものは存在しなかったので、これら各単電池ごとの端子電圧を個別に測定することにより、電池性能を正確に把握して厳密な管理を行うこともできなかった。
【特許文献1】特開平5−89864号公報
【特許文献2】特開平8−185897号公報
【特許文献3】特開平8−185894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、容器に冷却手段やコネクタを設けることにより、電池を長期間保管する場合に、高温による寿命性能の低下を防止すると共に、電池性能の厳密な管理を行うことができる電池の保管容器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、電池を収納して保管する電池の保管容器において、容器内の温度を容器外よりも低温に冷却する冷却手段が設けられたことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、電池を収納して保管する電池の保管容器において、容器内に収納した電池の各単電池の端子に接続されるコネクタが、容器外面に取り付けられたことを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、電池を収納して保管する電池の保管容器において、容器内の温度を容器外の温度よりも低温に冷却する冷却手段が設けられると共に、容器内に収納した電池の各単電池の端子に接続されるコネクタが、容器外面に取り付けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、保管容器内を外部の環境温度よりも低温に冷却する冷却手段が設けられるので、高温環境下で保管される電池も確実に低温に保って、寿命性能の低下を防止することができるようになる。また、冷却手段は保管容器に設けられるので、保管していた電池が取り出された後は、新たな電池を収納して保管することができ、冷却手段の再利用が容易となる。さらに、冷却手段は、保管容器内だけを冷却するので、この内部を密閉すれば、十分に湿度が低い状態に保って結露を防止することも容易となる。
【0011】
請求項2の発明によれば、電池を保管容器内に収納したままで、この保管容器外面に取り付けられたコネクタを通じて、電池の各単電池の端子電圧を個別に測定することにより、電池性能を正確に把握して厳密な管理を容易に行うことができる。しかも、このコネクタを通じて電池の充電を行うこともできる。
【0012】
請求項3の発明によれば、上記請求項1と請求項2の効果に加えて、電池を保管容器内に収納したままで、この電池の端子電圧の測定等の保守管理が行えるので、冷却手段により冷却した容器内を保守のたびに温度上昇させる無駄をなくすことができる。また、電池を保管容器内に収納したままで充電を行った場合に、この電池の発熱による容器内の温度上昇を冷却手段によって抑制することもできる。さらに、容器内を密閉すれば、保守のたびにこの容器内の空気が入れ替わるようなことがなくなり、十分に湿度が低い状態に保って結露を防止することも容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の最良の実施形態について図1〜図2を参照して説明する。
【0014】
本実施形態は、リチウムイオン二次電池の単電池を多数組み合わせた大型大容量の組電池1を収納する保管容器2について説明する。組電池1は、図1に示すような円筒形の容器に、図2に示すような多数の単電池1aを直列に接続して収納したものである。この組電池1は、直列接続した多数の単電池1aの両端のノードと、各単電池1a間のノードからそれぞれ引き出された端子が、円筒形の容器の一方の端面にそれぞれ配置されている。なお、各単電池1aは、ここでは、帯状の正負極をセパレータを介して長円筒形に巻回した長円筒形巻回型のリチウムイオン二次電池を用いている。
【0015】
保管容器2は、図1に示すように、筐体状の容器部2aと、この容器部2aの上端開口部を塞ぐ蓋板部2bとで構成されている。これらの容器部2aと蓋板部2bは、いずれもアルミニウム角材によって形成された枠体の各壁面をアルミニウム板で覆ったものである。なお、これらの枠体の各壁面には、2枚のアルミニウム板の間や、1枚のアルミニウム板の内側に断熱材を配置して、保温効果を高めることが好ましい。
【0016】
容器部2aの下面には、コロ2cと固定具2dが取り付けられている。コロ2cは、保管容器2が床面を移動しやすいようにするものであり、固定具2dは、操作によってこのコロ2cを持ち上げることにより、保管容器2が床面に載置されて容易には動かないようにするものである。また、容器部2aの上端開口部付近の側壁外面には、取っ手2eが取り付けられて、保管容器2を手で持ちやすいようにしている。さらに、図示はしていないが、容器部2aの適所にアイボルト等を取り付けて、クレーンで持ち上げたり、搬送車で牽引できるようにしてもよい。
【0017】
蓋板部2bは、上記容器部2aのいずれかの側壁の上端部にヒンジを介して揺動自在に取り付けられている。また、この蓋板部2bは、容器部2aの上端開口部を塞いだときに、止め金具2fによって固定されるようになっている。そして、この蓋板部2bが容器部2aを塞いで固定されると、保管容器2の内部が確実に防水されると共に、ほぼ気密状態となるようになっている。
【0018】
上記保管容器2の容器部2aには、冷却装置3が取り付けられている。冷却装置3は、半導体を組み合わせたペルチェ素子とこのペルチェ素子の駆動回路や電源回路等からなるものであり、図2に示すように、ペルチェ素子の冷却部3aを保管容器2内に配置すると共に、放熱部3bを保管容器2の外側、即ち、図1に示すように、容器部2aの側壁外面よりも外側に突出させて、この側壁との間を封止している。そして、容器部2aの外側に引き出された電源コード3cを図示しない外部電源に接続することにより、保管容器2の内部を冷却することができる。また、この冷却装置3は、保管容器2の内部に配置した図示しない温度センサの検出結果に基づいて、自動制御により適宜な温度(一定の温度又は外部環境に応じた温度)にまで冷却するようになっている。
【0019】
上記保管容器2の容器部2aには、コネクタ4も取り付けられている。コネクタ4は、多数のピン端子4aを備えた接続具であり、図1に示すように、これらのピン端子4aのある接続部が容器部2aの側壁外面から突出するように取り付けられている。このコネクタ4の各ピン端子4aは、保管容器2内に収納された組電池1の円筒形の容器の一方の端面に設けられた多数の端子にそれぞれ接続することにより、図2に示すように、直列接続した単電池1aの両端のノードと、各単電池1a間の各ノードに接続されるようになっている。なお、図1では、容器部2aの側壁外面にコネクタ4がそのまま露出している状態を示すが、組電池1を保管容器2内に収納して実際に使用する場合には、このコネクタ4を防水するために、接続相手となるコネクタと同一形状の図示しない防水キャップを装着しておく。
【0020】
組電池1は、図1に示すように、上記保管容器2の容器部2a内にクッション材5を介在させて収納することにより、衝撃によって容易に破損することがないようにしている。クッション材5は、ポリエチレンフォームやウレタンフォームからなるものであり、図1に示す厚板状のもの以外にも、組電池1を取り囲んで確実に衝撃吸収効果を得ることができるように、適宜形状のものを組み合わせて配置される。また、組電池1は、この容器部2a内への収納の際に、各端子を上記コネクタ4の各ピン端子4aに接続する作業を行う。そして、この組電池1が容器部2a内に収納されると、上端開口部を蓋板部2bで覆って止め金具2fにより固定する。本実施形態の場合、この組電池1の保管容器2への収納は、製造工場のクリーンルームの環境内で行うので、保管容器2の内部は、十分に乾燥した空気で満たされる。
【0021】
上記構成の保管容器2は、組電池1を収納した状態で保管場所に設置し、電源コード3cを電源に接続すれば、冷却装置3がこの保管容器2内を冷却するので、特に夏場に高温になりやすい倉庫内等に数年間保管されるような場合でも、組電池1の寿命性能が低下するのを防止することができるようになる。また、保管容器2の内部は、十分に乾燥した空気で満たされて、ある程度密閉されるので、十分に冷却しても、組電池1が結露するようなこともない。ただし、本実施形態における冷却装置3による冷却温度としては、5〜15℃程度が好ましく、完全な乾燥ガスで満たしている訳ではないので、0℃以下まで冷却すると結露が生じるおそれがある。この保管容器2は、組電池1を取り出して使用した後は、新たな組電池1を収納することができるので、冷却装置3を再利用することができる。
【0022】
また、上記保管容器2は、コネクタ4に測定機器を接続するだけで、組電池1の各単電池1aの端子電圧を個別に測定することができるので、保管中の組電池1の電池性能を、保管容器2から取り出すことなく正確に把握して厳密な管理を容易に行うことができる。即ち、この端子電圧の測定を行う保守作業が容易になるだけでなく、この保守作業のたびに保管容器2の内部の温度が上昇するのを防止することができ、しかも、この内部の空気の乾燥状態も維持できるので、電池寿命の低下や結露の発生を防止することができる。さらに、このコネクタ4に充電器を接続すれば、組電池1の充電を行うこともできる。
【0023】
なお、上記実施形態では、冷却装置3として半導体を組み合わせたペルチェ素子を用いる場合を示したが、半導体以外の金属材料等を用いたペルチェ素子であってもよく、保管容器2内の温度を外部よりも低温に冷却することができる冷却手段であれば、例えば冷媒を循環させるような冷却装置を用いることもできる。ただし、ペルチェ素子のように可動部を有さない冷却装置であれば、故障率を低下させて保守を容易にすることができる。また、上記実施形態では、冷却装置3の冷却部3aと放熱部3bが密接して一体化されている場合を示したが、冷媒を循環させるパイプやヒートパイプ等を介して冷却部3aと放熱部3bを分離して配置することもできる。特に、本実施形態ではクッション材5が断熱材としても機能するために、冷却部3aは、できるだけ組電池1に近い位置に分散して配置して冷却効率を高めるようにすることが好ましい。さらに、上記実施形態では、冷却装置3が保管容器2内の温度制御を行う場合を示したが、結露のおそれがなければ、例えば外部の環境温度にかかわりなく一定の電力を供給して冷却を行うようにすることもでき、この場合には、温度センサを保管容器2内に配置する必要がなくなる。
【0024】
また、上記実施形態では、多数のピン端子4aを備えたコネクタ4を用いる場合を示したが、機器との接続が容易なものであれば、このコネクタの形式は任意である。しかも、このコネクタは、保管容器2内や組電池1内に配置された温度センサ等にも接続して、電池温度等を測定することができるようにしてもよい。
【0025】
また、上記実施形態では、保管容器2がアルミニウム製の筐体状の容器部2aと蓋板部2bからなる場合を示したが、この保管容器2の材質や形状、蓋の取り付け構造等は任意である。さらに、コロ2cや固定具2d、取っ手2eの有無も任意である。さらに、クッション材5を用いるかどうかも任意であり、特に高い耐衝撃性能が必要ない場合には、組電池1が保管容器2内にガタ付きなく収納されるだけでもよい。
【0026】
また、上記実施形態では、多数のリチウムイオン二次電池からなる単電池1aを組み合わせた組電池1を用いる場合を示したが、保管容器2に収納する電池の種類や構成も任意である。
【実施例1】
【0027】
図1及び図2に示した保管容器2を用いて保管した組電池1の寿命性能を試験した結果を図3及び図4示す。
【0028】
保管容器2は、60℃の恒温室内に設置し、冷却装置3によって内部を0℃、15℃及び35℃の各保管温度とした場合について試験すると共に、比較例として冷却装置3を用いない場合(保管温度が60℃)についても試験した。
【0029】
この保管容器2に保管する組電池1は、容量100Ahのリチウムイオン二次電池を用いた。この際、組電池1は、5%SOCの状態で、コネクタ4を通じて各単電池1aにフロート電圧の3.60Vを印加した状態で保管した。また、組電池1の寿命性能は、まず20A、3.98Vの定電流定電圧充電を8時間行って満充電とし、次に20Aの定電流放電を行いながら、各組電池1の端子電圧を測定して、いずれかの単電池1aの端子電圧が2.75V以下となったときにこの放電を停止し、この間の放電容量(20A×放電時間)を算出することにより測定した。なお、この放電容量の測定結果は、試験開始時の組電池1の放電容量を100%とし、これに対する放電容量維持率として示している。
【0030】
図3は、上記0℃、15℃、35℃及び60℃の各保管温度の条件において、組電池1を24箇月間保管した場合に、この組電池1の寿命性能を3箇月ごとに測定した結果を示す。この測定結果によれば、冷却装置3を使用せずに保管温度を60℃とした比較例の場合には、最初の3箇月で放電容量は試験開始時の90%を大きく割り込み、その後も徐々に低下して12箇月を超える頃には放電容量が80%をも下回る77.1%にまで達することが分かる。これに対して、冷却装置3を使用した場合には、いずれの保管温度のときにもこの放電容量の低下が確実に抑制されていて、保管温度が35℃のときでも、放電容量が90%まで低下するのに21箇月を要し、保管温度が0℃や15℃のときには、24箇月経過後であっても、93.7%と96.3%の高い放電容量維持率を保つことができた。しかも、保管温度が15℃の場合が最も放電容量の低下が少なく、保管温度が0℃の場合には、これよりもわずかに放電容量が低下していた。
【0031】
図4は、上記試験の結果を、保管温度の相違に対する放電容量の変化として示したものであり、保管期間は6箇月、12箇月、18箇月及び24箇月の各場合について示す。なお、保管期間が0箇月の場合には、保管温度の影響は受けないので、いずれの温度でも放電容量維持率は100%となる。この図によれば、いずれの保管期間においても、保管温度が60℃の場合には、放電容量が大きく低下しているが、冷却装置3を使用して保管温度を0℃、15℃及び35℃とした場合には、いずれも放電容量の低下が確実に抑制されていることが分かる。しかも、保管温度が15℃の場合には、放電期間が長くなっても、、放電容量の低下はわずかとなり、保管温度が0℃の場合には、保管期間が長期になると、これよりもわずかに放電容量が低下することが分かる。
【0032】
以上の結果、外気温が60℃に達するような保管場所では、本実施例の保管容器2を用いて保管温度を0〜35℃とすることにより、組電池1の放電容量維持率を長期間にわたり確実に高く保つことができることが分かる。また、保管場所の外気温が35℃であった場合にも、本実施例の保管容器2を用いて保管温度を0〜15℃とすることにより、組電池1の放電容量維持率を長期間にわたり十分に高く保つことができることが分かる。特に、保管温度を15℃とした場合には、24箇月経過後にも、組電池1を96.3%という極めて高い放電容量維持率に保つことができるので、さらに長期間の保管が必要なときであっても、電池寿命の低下を確実に防止することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態を示すものであって、電池の保管容器の全体斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態を示すものであって、電池の保管容器の回路図である。
【図3】本発明の実施例を示すものであって、電池の保管期間と放電容量維持率との関係を示す図である。
【図4】本発明の実施例を示すものであって、電池の保管温度と放電容量維持率との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1 組電池
1a 単電池
2 保管容器
2a 容器部
2b 蓋板部
3 冷却装置
3a 冷却部
3b 放熱部
3c 電源コード
4 コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池を収納して保管する電池の保管容器において、
容器内の温度を容器外よりも低温に冷却する冷却手段が設けられたことを特徴とする電池の保管容器。
【請求項2】
電池を収納して保管する電池の保管容器において、
容器内に収納した電池の各単電池の端子に接続されるコネクタが、容器外面に取り付けられたことを特徴とする電池の保管容器。
【請求項3】
電池を収納して保管する電池の保管容器において、
容器内の温度を容器外の温度よりも低温に冷却する冷却手段が設けられると共に、
容器内に収納した電池の各単電池の端子に接続されるコネクタが、容器外面に取り付けられたことを特徴とする電池の保管容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−87731(P2007−87731A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−274208(P2005−274208)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(304021440)株式会社ジーエス・ユアサコーポレーション (461)
【Fターム(参考)】