説明

電池パックおよび充放電制御方法

【課題】電池パック内部で二次電池の状態を判断し、二次電池の状態に応じて充放電を完全に停止させ、使用不可能状態にするようにする。
【解決手段】電池パック内の二次電池の電圧および電流を監視し、電界効果トランジスタ等からなる充電制御スイッチおよび放電制御スイッチをON/OFFさせて充放電を制御する充放電制御ICと、電池パック内の二次電池の電圧、電流および電池温度等を監視して、二次電池の状態を判断し、二次電池の状態が充放電を停止すべき状態であると判断した場合には、充放電制御ICの制御信号に関わらず充電制御スイッチを強制的にOFFさせて充放電を制御するマイクロコンピュータを用いる。このとき、マイクロコンピュータに電源電圧を供給するレギュレータがオフされないようにする。これにより、充電制御スイッチをOFFさせる制御信号を出力し続けることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電池パックおよび電池パックで用いられる充電制御方法に関し、特に、電池パック内の複数の二次電池間の電圧または電池容量のばらつきや、電池の劣化を判断することによって自身で充放電制御を行う電池パックおよび充放電制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノート型パーソナルコンピュータや携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)などの携帯型電子機器では、その電源として、リチウムイオン二次電池を用いた電池パックが広く使用されている。リチウムイオン二次電池は、軽量、高容量、残容量検出の容易さ、サイクル寿命の長さといった利点を有する
【0003】
電池パックは消耗品であり、使用回数が増えて内部に収容した二次電池が劣化するに従って満充電状態から放電しきるまでの使用可能時間が短くなってしまう。そして、さらに継続して使用すると電池パックの損傷につながるおそれがある。このため、製造メーカは、満充電状態における二次電池の電池容量が、電池パック製造時における満充電状態の二次電池の電池容量に対して所定の割合以下となった場合に、電池パックが使用限界に達した状態、すなわち二次電池の寿命であると定義している。製造メーカは、ユーザに対して、電池パックの二次電池が寿命であると判断された場合には新しい電池パックへ交換するように促している。
【0004】
例えば、極度に劣化した電池パックは、その特性上電池内部でガスが発生して電池パックに膨れが生じるおそれがある。電池パックは、電子機器の電池パック挿入部に挿入されて使用される。電池パック挿入部は、電池パックの外寸と略同等の大きさとされている。このため、電池パックに膨れが生じると電池パック挿入部の内壁により電池パックに外圧がかかり、電池パックが破損したり、電池パック外に電解液の液漏れが生じたりする。また、電池パックを電池パック挿入部から外すことが困難となり、電池パックを外す際に電池パックが破損したり、電子機器の破損が生じるおそれもある。
【0005】
そこで、電池パックの劣化の検出について、下記の特許文献1のように電池パック内の二次電池の充放電のサイクル数をカウントして既知のテーブルデータで補正することが行われている。
【0006】
下記の特許文献2のように、電池パック内の二次電池の内部抵抗を測定して電池パックの劣化を検出することも行われている。
【0007】
また、電池パック内において二次電池を複数本直列に接続した構造を用いている場合、上述した二次電池の劣化に加えて、各二次電池の電圧や電池容量のばらつきが発生するという問題も知られている。この原因としては、例えば二次電池それぞれの製造における個体差が挙げられる。
【0008】
さらに、各二次電池が電子機器から受ける熱がそれぞれ異なるという環境的な要因も挙げられる。二次電池の温度により二次電池の内部抵抗が変化するため、各二次電池の電圧のばらつきや劣化の進行の差が生じてしまう。
【0009】
電圧のばらつきや劣化の進行の差が生じた複数の二次電池を用いる場合、充放電制御が困難となり、二次電池に負担をかけてしまう。例えば、放電終止電圧に達していない二次電池が多くあるにも関わらず、放電が停止してしまうことが考えられる。充電時においても、満充電に達していない二次電池があるにも関わらず、充電が停止してしまうという同様の問題が生じる。これにより、劣化が進むにつれて電池パックの使用可能時間(すなわち放電時間)が、満充電に達するために要する時間および充放電の回数が増加し、さらに二次電池の劣化を進行させることとなる。
【0010】
一方、ある二次電池が放電終止電圧に達する、もしくは満充電状態に達しても、他の二次電池の電圧が充放電可能電圧であるために充放電が継続されるおそれもある。
【0011】
これに対して、下記の特許文献3のように、充電中の二次電池の電池容量が規定値の1.5〜2倍となった場合に電池の異常を検出する構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平9−33620号公報
【特許文献2】特開2002−214310号公報
【特許文献3】特許第3546856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述の特許文献1ないし3に記載の発明は、二次電池の故障や異常状態を検出した場合に警告をするのみに留まっている。すなわち、二次電池(電池パック)の交換はユーザに委ねられており、ユーザが二次電池を交換しない場合は、さらに二次電池の充放電が繰り返されてしまう。
【0014】
したがって、この発明は、二次電池の状態を判断し、二次電池の状態に応じて充放電を完全に停止させ、使用不可能状態にすることができる電池パックおよび充放電制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
課題を解決するために、第1の発明は、1または複数の電池セルと、
第1の制御信号により制御され、電池セルに対する充電電流をON/OFFする充電制御スイッチと、
第2の制御信号により制御され、電池セルに対する放電電流をON/OFFする放電制御スイッチと、
第1および第2の制御信号を出力することにより、充電制御スイッチおよび放電制御スイッチを制御する第1の制御部と、
電池セルの状態を監視し、電池セルの状態が充放電を停止すべき状態であると判断した場合には、第1の制御信号のレベルに関わらず充電制御スイッチをOFFさせる第3の制御信号を出力する第2の制御部と、
第2の制御部に所定の電源電圧を供給する電源供給部と、
負荷と接続される第1および第2の出力端子と
を備え、
第2の制御部において電池セルの電池状態が通常状態であると判断されている場合に、第1の制御部において所定値以上の電流値が検出されたときには、充電制御スイッチもしくは放電制御スイッチがOFFされて電流の遮断を行うとともに、電源供給部の第2の制御部に対する電源供給が遮断され、
第2の制御部において電池セルの電池状態が充放電を停止すべき状態であると判断された場合には、電源供給部の第2の制御部に対する電源供給が継続されて、充電制御スイッチをOFFさせる第3の制御信号の出力を継続する
電池パックである。
【0016】
第2の発明は、複数の電池セルの放電時において、電池セルの電流、電圧および電池温度を検出する検出のステップと、
検出のステップにおいて検出された電流、電圧および電池温度を基に、複数の電池セルのそれぞれの電池容量を算出する容量算出のステップと、
複数の電池セルのそれぞれの電池容量のうち、最大の電池容量と最小の電池容量との差分値を算出する差分算出のステップと、
差分算出のステップにより得られた差分値が、所定値よりも大きい場合には、複数の電池セルの電池状態が充放電を停止すべき状態であると判断する判断のステップと、
判断のステップにより電池セルの電池状態が充放電を停止すべき状態であると判断された場合において、電池セルが充電状態とされたときには、電池セルの充電を強制的に遮断するとともに、電池セルの充電の遮断を継続する遮断のステップと
を有する充放電制御方法である。
【0017】
第3の発明は、1または複数の電池セルの放電時において、電池セルの電流、電圧および電池温度を検出する検出のステップと、
検出のステップにおいて検出された電流および電池温度を基に、電池セルの状態判定が可能であるか否かを判断する判断のステップと、
複数の電池セルの電圧と、予め設定された1または複数の設定電圧とを比較することにより、電池セルの状態を判定する電池状態判定のステップと、
電池状態判定のステップにより電池セルの電池状態が充放電を停止すべき状態であると判断された場合において、電池セルが充電状態とされたときには、電池セルの充電を強制的に遮断するとともに、電池セルの充電の遮断を継続する遮断のステップと
を有する充放電制御方法である。
【0018】
この発明では、電池の状態が充放電を停止すべき状態であると判断された場合は、充電および放電を停止させ、停止状態を継続する。このような判断を電池パック自身が行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、電池の状態が充放電を停止すべき状態であると判断された場合に、電池パックが電子機器等に挿入されたままとされても充放電の遮断状態が継続されるため、安全性が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施の形態における電池パックの一構成例を示す回路図である。
【図2】従来の電池パックの一構成例を示す回路図である。
【図3】従来の実施の形態における電池パックの一構成例を示す回路図である。
【図4】従来の実施の形態における電池パックの一構成例を示す回路図である。
【図5】第1の実施の形態における電池パックの放電時の動作を示すフローチャートである。
【図6】第1の実施の形態における電池パックの充電時の動作を示すフローチャートである。
【図7】充放電サイクル回数、電池電圧と放電容量の関係を示すグラフである。
【図8】第2の実施の形態における電池パックの放電時の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、発明を実施するための形態(以下、実施の形態とする)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(複数の二次電池間の電池電圧のばらつきを検出して電池パックを使用不可能にする例)
2.第2の実施の形態(二次電池の劣化状態(寿命)を検出して電池パックを使用不可能にする例)
3・変形例
【0022】
<1.第1の実施の形態>
以下、この発明の第1の実施の形態について図面を参照しながら説明する。第1の実施の形態では、複数の二次電池間の電池電圧のばらつきを検出し、検出結果に応じて、電池パックの交換を行わない状態であっても完全に使用不可能にする例を説明する。
【0023】
図1は、第1の実施の形態における電池パックの一構成例を示す回路図である。図2ないし図4は、従来の回路構成であり、図1の回路構成の理解を容易にするための説明に用いる。図5は、第1の実施の形態における電池パックの放電時の動作を示すフローチャートである。図6は、第1の実施の形態における電池パックの充電時の動作を示すフローチャートである。
【0024】
[電池パックの回路構成]
図1の電池パック1は、二次電池2aおよび2bからなる組電池2、保護回路10、プラス端子3aおよびマイナス端子3b、ならびに通信端子4から構成される。
【0025】
組電池2は、リチウムイオン二次電池等の複数の二次電池が直列および/または並列接続されたものである。この発明の第1の実施の形態では、2つの二次電池2aおよび2bが直列に接続された場合について説明する。
【0026】
プラス端子3aおよびマイナス端子3bは、それぞれ図示しない外部の電子機器や充電器のプラス端子およびプラス端子に接続され、二次電池2aおよび2bに対する充放電が行われる。通信端子4は、電子機器との通信を行い、例えば電子機器に対して電池パックの状態を送信し、必要に応じて電子機器においてステータス表示を行うためのものである。例えば、電子機器のアラームランプを点灯させたり、電子機器の表示部に電池状態を文字やアイコン等で表示させることができる。また、通信端子4を介して電子機器と通信を行うことにより、電池パック1が正規の製品であるかを認証したり、二次電池2aおよび2bの残容量を電子機器に通知する。
【0027】
保護回路10は、この発明による組電池2異常時の充放電強制遮断制御を行うためのマイクロコンピュータ11、マイクロコンピュータ11に所定の電源電圧を供給するためのレギュレータ12、電圧検出部13、電流検出部14、電流検出抵抗15、温度検出素子16、充放電制御IC(Integrated Circuit)17、メモリ18、放電制御FET(Field Effect Transistor;電界効果トランジスタ)19、充電制御FET20、ダイオード21aおよび21b、トランジスタ22aおよび22bならびに過電流検出用抵抗23からなる。なお、トランジスタ22aはPNP型のトランジスタからなり、トランジスタ22bはNPN型のトランジスタからなる。
【0028】
[充放電制御IC]
充放電制御IC17は、GNDで示す基準電位端子およびVMで示す過電流検出端子の両端の電圧を検出し、検出された電圧から、等価的に保護回路10に流れる電流を検出する。基準電位端子GNDと過電流検出端子VMとの間には、放電制御FET19および充電制御FET20が設けられる。すなわち、放電制御FET19および充電制御FET20の抵抗によって生じる電圧降下に基づいて等価的に放電電流を検出する。そして、規定の電流値以上の負荷電流(すなわち、過電流)が流れた場合に、放電制御FET19をOFFさせて負荷電流を遮断する。これにより、二次電池2aおよび2b、外部の電子機器、および電池パック1内の保護回路10の各部の劣化や損傷を防止している。
【0029】
放電制御FET19および充電制御FET20のそれぞれのドレイン・ソース間には、寄生ダイオード19aおよび20aが存在する。寄生ダイオード19aは、プラス端子3aから組電池2の方向に流れる充電電流に対して順方向で、マイナス端子3bから組電池2の方向に流れる放電電流に対して逆方向の極性を有する。寄生ダイオード20aは、充電電流に対して逆方向で、放電電流に対して順方向の極性を有する。
【0030】
放電制御FET19および充電制御FET20のそれぞれのゲートには、充放電制御IC17からの制御信号DOおよびCOがそれぞれ供給される。通常の充電動作および放電動作では、制御信号DOが論理“H”レベル(以下、ハイレベルと適宜称する)とされて放電制御FET19がON状態とされる。制御信号DOがハイレベルとされることにより、レギュレータ12の出力を制御するスイッチ(図示せず)をONとする。制御信号COがハイレベルとされて充電制御FET20がON状態とされる。放電制御FET19および充電制御FET20はNチャンネル型であるので、ソース電位より所定値以上高いゲート電位によってONする。すなわち、通常の充電および放電動作では、制御信号DOおよびCOがハイレベルとされ、放電制御FET19および充電制御FET20がON状態とされる。
【0031】
なお、後に詳細に説明するが、マイクロコンピュータ11からは、通常の充電動作および放電動作時、すなわち二次電池2aおよび2bの異常状態を検出するまでは、ハイレベルの充放電制御信号CO’が出力されている。マイクロコンピュータ11から出力される充放電制御信号CO’がハイレベルとされることにより、PNP型のトランジスタ22aがOFFとされる。そして、NPN型のトランジスタ22bも同様にOFFとされる。このため、充電制御FET20は、充放電制御IC17からの制御信号DOおよびCOによってのみ制御される。また、ハイレベルの充放電遮断信号CO’が出力されてトランジスタ22aおよび22bがOFFとされることにより、ダイオード21bを介してレギュレータ12にローレベルが供給される。
【0032】
充放電制御IC17において放電電流が過電流状態であると検出された場合には、制御信号DOが論理“L”レベル(以下、ローレベルと適宜称する)とされ、放電制御FET19がOFF状態とされる。制御信号DOは、省電力化対策機能を兼務している。このため、制御信号DOがローレベルとされることで、ダイオード21aを介してレギュレータ12の出力を制御するスイッチ(図示せず)へローレベルの制御信号DOが入力される。このとき、電池パック1が通常の放電動作中である場合には、通常の放電制御がなされる。ダイオード22aおよび22bのそれぞれからレギュレータ12に対して、ローレベルが入力され、レギュレータ12の出力を制御するスイッチもOFFとされる。これにより、マイクロコンピュータ11およびその周辺部の電源電圧を一括して遮断することができ、省電力な設計とされる。レギュレータ12およびマイクロコンピュータ11の制御については、後に詳細に説明する。
【0033】
一方、マイクロコンピュータ11は、二次電池2aおよび2bの異常状態を検出すると、ローレベルの充放電制御信号CO’を出力する。これにより、PNP型のトランジスタ22aがONされ、NPN型のトランジスタ22bもONされる。これにより、充電制御FET20のゲート電圧とソース電圧とが同電位となり、充電制御FET20が強制的にOFFされる。このとき、レギュレータ12には、ダイオード21bを介してトランジスタ22bのゲートと同様にハイレベルの制御信号が供給される。
【0034】
充放電制御IC17は、マイナス端子3b側の電圧を検出する。充放電制御IC17は、マイナス端子3b側の電圧から、充放電制御IC17以外の制御による動作で充電制御FET20がOFFされたと判断した場合には、過電流検出時と同様に制御信号DOがローレベルとされる。このとき、ダイオード21aを介してレギュレータにローレベルの制御信号が入力される。すなわち、二次電池2aおよび2bの異常状態が検出された場合には、ダイオード22aからレギュレータ12に対してローレベルが入力され、ダイオード22bからレギュレータ12に対してハイレベルが入力される。このため、レギュレータ12の出力を制御するスイッチはONのままとされる。
【0035】
充放電制御IC17は、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)等からなるメモリ18に予め格納されたプログラムに従い、図示しないRAM(Random Access Memory)をワークメモリとして各部を制御する。
【0036】
[マイクロコンピュータ]
マイクロコンピュータ11は、電圧検出部13によって検出された二次電池2aおよび2bの電圧値、電流検出抵抗15を用いて電流検出部14で検出された保護回路10を流れる電流値、温度検出素子16を用いて得た二次電池2aおよび2bの温度を得る。そして、得られた電圧値、電池温度および電流値から、二次電池2aおよび2bそれぞれの電池容量を算出する。マイクロコンピュータ11には、図示しないメモリに温度および劣化(サイクル回数)に応じた補正係数が記憶されている。電池容量は、二次電池2aおよび2bの温度およびサイクル回数に応じた補正係数によって補正されて算出される。
【0037】
第1の実施の形態では、マイクロコンピュータ11は、放電時に算出した電池容量(放電容量)を基に、二次電池2aおよび2bの電池容量が大きく異なる場合には、「電池容量のバランス崩れ」という異常状態であると判断する。マイクロコンピュータ11は、通常の充放電時には、ハイレベルの充放電遮断信号CO’を出力する。このとき、PNP型のトランジスタ22aのベースにはエミッタに対してハイレベルの電圧が入力され、トランジスタ22aがOFFされる。そして、トランジスタ22aがOFFされることにより、NPN型のトランジスタ22bもOFFされる。そして、二次電池2aおよび2bの異常状態を検出後、電池パック1が充電状態とされた場合には、ローレベルの充放電遮断信号CO’を出力することにより、トランジスタ22aおよび22bがONされる。
【0038】
上述のように、マイクロコンピュータ11から出力された充放電遮断信号CO’は、ダイオード21bを介してレギュレータ12にも供給される。通常の充放電動作中においては、トランジスタ22aおよび22bがOFFされるため、レギュレータ12にはダイオード21bを介してローレベルの制御信号が入力される。また、放電中に異常状態であると判断された後、放電が終了して充電が開始された場合には、トランジスタ22aおよび22bがONされるため、レギュレータ12にはダイオード21bを介してハイレベルの制御信号が入力される。
【0039】
異常状態で充電状態とされた場合において、充放電制御号CO’をローレベルとしたときは、充電制御FET20のゲートとソース間が同電位となる。このため、充放電制御IC17からの制御信号COがハイレベルであっても充電制御FET20はOFFされ、充電が直ちに終了する。
【0040】
充電時において、充放電制御信号CO’がローレベルとされて充電制御FET20が強制的にOFFされると、充放電制御IC17のGND端子−VM端子間が高抵抗となる。すると、充放電制御IC17は論理上、負荷電流の増大、すなわち過電流状態であると判断する。通常、過電流状態は電圧値をもとに検出している。GND端子−VM端子間の放電電流の値が一定であっても抵抗値が増大し、電圧値が増大するためである。このような充放電制御IC17の性質から、充放電制御FET20を強制的にOFFすると、充放電制御IC17は、制御信号DOをハイレベルからローレベルに切り替えて出力する。そして、放電制御FET19がOFFされるとともに、ダイオード21aを介してレギュレータ12にローレベルの制御信号DOが供給される。
【0041】
マイクロコンピュータ11は、二次電池2aおよび2bが通常状態であれば、レギュレータ12からの電源電圧が遮断されることにより、リセット状態となる。すなわち、充放電制御IC17からの制御信号DOもしくはCOがハイレベルに戻ることにより、通常状態の充放電動作を再開させることができる。
【0042】
また、二次電池2aおよび2bの電池容量のバランスが崩れた異常状態の場合は、マイクロコンピュータ11からはローレベルの充放電遮断信号CO’が出力され、ダイオード21bを介してレギュレータ12にハイレベルの制御信号が入力される。すなわち、レギュレータ12がOFFされないため、充電制御FET20のOFF状態を継続することができる。これにより、二次電池2aおよび2bが所定の電圧を出力不可能となるまでの間、強制的に充電制御FET20をOFFし続けることができる。二次電池2aおよび2bが所定の電圧を出力不可能となった場合は、レギュレータ12からマイクロコンピュータ11に対して所定電圧の供給が不可能となる。この場合は、電池パック1自体が充放電不可能な状態となっており、電池パック1が電子機器に装着されたままであっても危険な状態となることを防止できる。
【0043】
[レギュレータ]
レギュレータ12は、二次電池2aおよび2bの電圧値を所定電圧に安定化させて、マイクロコンピュータ11の電源電圧として供給する。レギュレータ12には、ダイオード21aを介して制御信号DOが供給されるとともに、ダイオード21bを介して充放電遮断信号CO’が供給される。レギュレータ12は、供給される制御信号DOおよび充放電遮断信号CO’の双方がローレベルのときにのみ、出力が制御されて供給電圧が遮断される。
【0044】
すなわち、マイクロコンピュータ11が二次電池2aおよび2b間の「電池容量のバランス崩れ」という異常状態を検出していない場合には、マイクロコンピュータ11からはハイレベルの充放電制御信号CO’が出力されている。そして、PNP型のトランジスタ22aおよびダイオード21bを介して、レギュレータ12にはローレベルの制御信号が入力される。このため、充放電制御IC17から出力される制御信号DOがローレベルとなった場合には、レギュレータ12に入力される制御信号がどちらもローレベルとなり、レギュレータ12からマイクロコンピュータ11に対する電源供給は遮断される。
【0045】
マイクロコンピュータ11において二次電池2aおよび2b間の異常状態が検出された状態で電池パック1が充電状態とされた場合には、マイクロコンピュータ11からの充放電遮断信号CO’がローレベルとされて充電制御FET20がOFFとされる。続いて、充放電制御IC17が過放電状態と判断して放電制御FET19をOFFする。そして、PNP型のトランジスタ22aおよびダイオード21bを介して、レギュレータ12にはハイレベルの制御信号が入力される。このため、充放電制御IC17から出力される制御信号DOがローレベルとなった場合であっても、レギュレータ12に入力される制御信号はハイレベル/ローレベルとなり、レギュレータ12からマイクロコンピュータ11に対する電源供給は継続される。マイクロコンピュータ11への電源供給が継続されることにより、充放電制御FET20をOFFするローレベルの充放電遮断信号CO’の出力が継続される。このため、充電制御および放電制御が継続される。
【0046】
なお、放電時において二次電池2aおよび2b間の異常状態が検出された場合でも、直ちに充電制御FET20をOFFとせず、放電動作を継続する。そして、充電状態となってから、充電制御FET20をOFFとする。充放電遮断信号CO’は、電池パック1が充電状態となった後直ちにローレベルとされるのではなく、誤動作防止のために所定値以上の充電電流が所定時間以上流れたことを検出してからローレベルとされることが好ましい。この発明は、異常状態を検出した後に、充放電を完全に遮断するものである。電池パック1が放電中で、かつ放電可能な電池容量を残しているにも関わらず充放電が完全に遮断されてしまうことを防止することが好ましい。
【0047】
ここで、この発明の第1の実施の形態における電池パック1の回路構成の特徴の理解をより容易にするために、従来の回路構成を用いて説明する。
【0048】
図2に、二次電池32aおよび32bを用いた電池パック30の保護回路における従来の一般的な構成を簡易的に示す。図2に示すように、電池パック30では、充放電制御IC33、放電制御FET34、充電制御FET35および過電流検出用抵抗36とを備えた保護回路を用いている。
【0049】
この場合、放電制御FET34および充電制御FET35を用いて通常の充放電制御を行うことはできるものの、二次電池32aおよび32bの状態に応じて充電制御FET34を充放電制御IC33外部から強制的に制御することができない。
【0050】
そこで、図3に示すように、マイクロコンピュータ36、レギュレータ37、電池パック30の充放電を完全に遮断するための遮断用放電制御FET38、遮断用充電制御FET39をさらに設けた保護回路がある。図3の保護回路は、マイクロコンピュータ36が二次電池32aおよび32bの電圧および電流を電圧検出部40および電流検出部41から得て監視するものである。マイクロコンピュータ36は、二次電池32aおよび32bが異常状態となると、遮断用放電制御FET38、遮断用充電制御FET39をOFFにして充放電の遮断を行うものである。
【0051】
しかしながら、図3の保護回路では、二次電池の保護用の他に、電流遮断用のFET素子が必要となる。したがって、電池パックの製造コストが高くなるとともに、電力の損失やスペース効率の低下という問題が生じてしまう。
【0052】
さらに、図4に示すような構成とすることもできる。なお、図4Aおよび図4Bでは、放電制御FET34および充電制御FET35がオフされた状態を、スイッチのオフ状態を示す電気記号で示す。
【0053】
図4の電池パック30では、マイクロコンピュータ36が充電制御FET35を強制的にOFFすることができる回路構成とされる。図4Aに示すように、二次電池32aおよび32bの異常状態を検出した後、充電制御FET35がマイクロコンピュータ36によって強制的にOFFされる。すると、充放電制御IC33が過電流状態であると判断してローレベルの制御信号DOが出力される。制御信号DOがローレベルとされると、図4B示すように、放電制御FET34がOFFされるとともに、レギュレータ37がOFFされてマイクロコンピュータ36への電力供給が遮断される。マイクロコンピュータ36は、レギュレータ37からの電力供給が遮断されることによりリセットされ、充電制御FETのOFF状態が解除される。このため、二次電池32aおよび32bが異常状態であるにも関わらず、充放電を完全に遮断することができない。
【0054】
したがって、図1に示す電池パック1の回路構成においては、二次電池32aおよび32bが異常状態となった場合にそれ以降の充放電を完全に遮断することができるため、高い安全性を有しているといえる。
【0055】
[放電時の動作]
図5のフローチャートを用いて、この発明の第1の実施の形態における電池パック1の放電時の動作を説明する。なお、以下の処理は、電池パック1内のマイクロコンピュータ11および電圧検出部13、電流検出部14、電流検出抵抗15および温度検出素子16によりなされる。図5のフローチャートの処理は、電池パック1が一旦満充電まで充電された後、ある任意の放電量が放電された時点で開始される。以下の説明では、満充電状態に対して10%放電がなされた状態でフローチャートの処理が開始されるものとする。
【0056】
ここで、フローチャートの処理は、二次電池2aおよび2bのそれぞれの電圧値の平均が満充電時の電圧値の90%となった時点で開始されるようにする。また、二次電池2aおよび2bのいずれか電圧値の低い方もしくは高い方が、満充電時の電圧値の90%となった時点で処理が開始されるようにしてもよい。第1の実施の形態では、電池パック1における二次電池2aおよび2bの電池容量のばらつきが小さい場合は充放電制御フラグを「0」、ばらつきが大きい場合は充放電制御フラグを「1」とする。
【0057】
まず、ステップS1において、放電時の電流I、二次電池2aおよび2bそれぞれの電圧V、二次電池2aおよび2bそれぞれの電池温度Tが測定される。この時点で、充放電制御フラグは0とされている。そして、ステップS2において、二次電池2aおよび2bの電池容量、すなわち残容量90%の状態における放電容量がそれぞれ算出される。電池容量は、例えば測定したそれぞれの電圧Vを基に、電圧Vと電池容量との関係を示すテーブルデータから求める方法等が挙げられる。電池容量は、電池温度Tおよび充放電サイクル回数に応じた補正係数によって補正されて得られる。
【0058】
そして、ステップS3において、二次電池2aおよび2bのそれぞれの電池容量の差分が求められる。二次電池が3以上用いられている場合には、最大の電池容量から最小の電池容量を引いて差分が求められる。そして、電池容量の差分値、すなわち電池容量のばらつきが、基準となる基準差分値ΔCよりも大きいか否かが判断される。
【0059】
ステップS3において、算出した電池容量の差分値が基準差分値ΔCよりも小さい場合は、処理がステップS6に移る。ステップS6では、二次電池2aおよび2b間の電池容量のばらつきが小さいため、電子機器に対して通信端子4を介して電池パック1の状態が良好であるとのステータスを通知する。充放電制御フラグは0のままとされ、処理が終了する。
【0060】
ステップS3において、算出した電池容量の差分値が基準差分値ΔCよりも大きい場合は、処理がステップS4に移る。ステップS4では、二次電池2aおよび2b間の電池容量のばらつきが大きく、電池パック1が異常状態であるとして充放電遮断フラグが1とされる。続いて、ステップS5では、電子機器に対して通信端子4を介して二次電池2aおよび2b間の電池容量のバランスが崩れているとのステータスを通知し、処理が終了する。
【0061】
なお、充放電遮断フラグの値に関わらず、ユーザが使用を停止するか、もしくは二次電池2aおよび2bが放電しきるまで放電動作が継続される。
【0062】
[充電時の動作]
図6のフローチャートを用いて、この発明の第1の実施の形態における電池パック1の充電時の動作を説明する。以下の判断は、マイクロコンピュータ11によりなされる。まず、ステップS11において、充放電遮断フラグが0であるか否かが判断される。ステップS11において充放電遮断フラグが0であると判断された場合には、処理がステップS15に移り、電池パック1では通常の充電動作が行われる。
【0063】
ステップS11において充放電遮断フラグが0でないと判断された場合には、二次電池2aおよび2bの電池容量が所定値以上に差があるため、充放電遮断動作に入る。処理がステップS12に移り、充電電流が100mAを超えた状態で60秒が経過したか否かが判断される。ステップS12において条件を満たさない、すなわち、確実に充電しているとはいえない状態であると判断された場合には、処理が終了される。ステップS12において条件を満たす、すなわち、確実に充電していると判断された場合には、ステップS13に処理が移る。
【0064】
ここで、ステップS12は、誤動作を防止するために、確実に充電状態にあるかを判断するためのステップである。充放電遮断がなされると、例え二次電池2aおよび2bの放電容量が充分に残っていても、電池パック1を充放電動作に復帰させることはできない。この発明の第1の実施の形態では、放電動作中に異常状態が検出された場合、放電動作が終了するまで、すなわちユーザが電子機器を使用している最中には充放電遮断をしないようにしている。ステップS12により、ユーザが電子機器を確実に使用していないことを確認してから充放電遮断動作に入ることができる。
【0065】
ステップS12において二次電池2aおよび2bが充電状態であると判断された場合には、ステップS13において二次電池2aおよび2bの充放電を遮断する。すなわち、マイクロコンピュータ11からローレベルの充放電制御信号CO’を出力する。これにより、トランジスタ22aおよび22bをONさせ、充電制御FET20を強制的にOFFさせることができる。充電制御FET20を強制的にOFFすると、その特性上放電制御FET19もOFFされる。一方、レギュレータ12には、PNP型のトランジスタ22aおよびダイオード21bを介してハイレベルの制御信号が入力される。このため、レギュレータ12はONのままとなり、マイクロコンピュータ11からローレベルの充放電制御信号CO’を出力して充電制御FET20のOFF状態を継続することができる。
【0066】
<2.第2の実施の形態>
以下、この発明の第2の実施の形態について図面を参照しながら説明する。第2の実施の形態では、二次電池の寿命を判断し、判断結果に応じて、電池パックの交換を行わない状態であっても完全に使用不可能にする例を説明する。
【0067】
第2の実施の形態における電池パックは、第1の実施の形態と同様の構成とすることができるため、回路構成の説明を省略する。
【0068】
図7は、電池パック1の放電時の電池容量(放電容量)と電圧との関係を示すグラフである。図7において、参照符号51は、製造直後の電池パック1の放電容量を示す。参照符号52は、充放電サイクルを300サイクル行った後の電池パック1の放電容量を示す。参照符号53は、充放電サイクルを500サイクル行った後の電池パック1の放電容量を示す。参照符号54は、充放電サイクルを1000サイクル行った後の電池パック1の放電容量を示す。参照符号55は、充放電サイクルを1500サイクル行った後の電池パック1の放電容量を示す。図7に示されるグラフの電池パックは、電圧4.2Vを満充電状態とし、電圧3.0Vを放電終止電圧として放電させるように構成されている。
【0069】
図7から分かるように、充放電サイクルが進むにつれて終止電圧3.0Vにおける放電容量が減少する。このため、満充電状態から電池パック1の放電を開始し、放電容量の残容量が、製造時の電池容量に対して所定の割合となった時点での電池電圧を比較すると、充放電サイクルが進むにつれて電圧値が低下していくことが分かる。
【0070】
このため、第2の実施の形態では、例えば製造時の電池容量の10%を放電した時点での電池電圧を測定し、測定された電池電圧が低すぎる場合は二次電池2aおよび2bが劣化しすぎているものとして充放電遮断を行う。
【0071】
そして、測定された電池電圧に応じて電子機器に電池パック1の状態を送信するようにする。例えば、図7において10%放電時における電池電圧VがV<V2であれば、電池の使用を停止させるとともに、二次電池2aおよび2bが使用不可能な状態にあることを示す情報を電子機器本体に通知するようにする。また、電池電圧VがV2≦V<V1であれば、二次電池2aおよび2bが劣化状態にあることを示す情報を電子機器本体に通知するようにする。なお、V1は電池劣化、V2は電池寿命を示す上限電圧であり、V2とV1はV2<V1の関係にある。以下、V1を電池劣化電圧、V2を電池寿命電圧と称する。
【0072】
[放電時の動作]
図8のフローチャートを用いて、この発明の第2の実施の形態における電池パック1の放電時の動作を説明する。なお、以下の処理は、電池パック1内のマイクロコンピュータ11および電圧検出部13、電流検出部14、電流検出抵抗15および温度検出素子16によりなされる。図8のフローチャートの処理は、電池パック1が一旦満充電まで充電された後、ある任意の放電量が放電された時点で開始される。以下の説明では、満充電状態の電池容量に対して10%放電がなされた状態でフローチャートの処理が開始されるものとする。
【0073】
ここで、フローチャートの処理は、二次電池2aおよび2bが満充電時の電池容量の10%分の容量を放電した時点で開始されるようにする。第2の実施の形態においては、10%放電時における電圧値が上述の電池寿命電圧V2よりも高い場合は充放電制御フラグを「0」、10%放電時における電圧値が上述の電池寿命電圧V2よりも低い場合は充放電制御フラグを「1」とする。
【0074】
まず、ステップS21において、放電時の電流I、二次電池2aおよび2bそれぞれの電圧V、二次電池2aおよび2bそれぞれの電池温度Tが測定される。この時点で、充放電制御フラグは0とされている。そして、ステップS22において、二次電池2aおよび2bの電池温度Tが所定の範囲内にあり、かつ電流Iが低電流であるか否かが判断される。電池温度Tは、予め定められた温度領域(T1<T<T2)にあれば、劣化の判定を可能とする。電池温度Tが高すぎる場合もしくは低すぎる場合は、劣化の判定が正常に行われない。また、電流Iが例えば基準電流以上の場合も同様に、劣化の判定が正常に行われない。このため、ステップS22において条件を満たさないと判断された場合は、電池状態の判定を行わないようにし、処理がステップS28に移る。ステップS28では、外部の電子機器に対してステータス「未表示」の信号が送信される。なお、ステータス「未表示」の信号が電子機器に送信された場合には、電子機器の表示部等への表示を行わないようにする。
【0075】
ステップS22において所定の温度条件および電流条件を満たすと判断された場合には、ステップS23において電圧Vが電池劣化電圧V1より小さいか否かが判断される。ステップS23において電圧Vが電池劣化電圧V1より小さくないと判断された場合には、電池状態は正常であるとして処理がステップS28に移る。ステップS28では、電子機器に対してステータス「未表示」の信号が送信される。
【0076】
ステップS23において電圧Vが電池劣化電圧V1より小さいと判断された場合には、ステップS24において電圧Vが電池寿命電圧V2より小さいか否かが判断される。ステップS24において、電圧Vが電池寿命電圧V2より小さくないと判断された場合、すなわち電池劣化電圧V1<電池電圧V<電池寿命電圧V2の場合には、処理がステップS27に移る。ステップS27では、外部の電子機器に対して通信端子4を介して二次電池2aおよび2bが電池劣化状態であるとのステータスを通知し、処理が終了する。なお、ステータス「電池劣化」の信号が電子機器に送信された場合には、電子機器の表示部等において文字やアイコンで電池劣化状態を表示する。また、電子機器の警告ランプを点滅させるようにしてもよい。
【0077】
ステップS24において電圧Vが電池寿命電圧V2より小さいと判断された場合には、処理がステップS25に移る。ステップS25では、二次電池2aおよび2bの電池電圧が低くなりすぎている、すなわち劣化しすぎており、電池パック1が異常状態であるとして充放電遮断フラグが1とされる。続いて、ステップS26では、電子機器に対して通信端子4を介して二次電池2aおよび2bが電池寿命状態であるとのステータスを通知し、処理が終了する。ステータス「電池寿命」の信号を受信した電子機器では、電子機器の表示部において文字やアイコンで電池寿命状態を表示する。また、電子機器の警告ランプを常時点灯させるようにしてもよい。警告ランプの点灯状態は、電池劣化状態と電池寿命状態で異なるようにすればどのような点灯状態としてもよい。
【0078】
なお、充放電遮断フラグの値に関わらず、ユーザが使用を停止するか、もしくは二次電池2aおよび2bが放電しきるまで放電動作が継続される。
【0079】
[充電時の動作]
この発明の第2の実施の形態における電池パック1の充電時の動作は、図6と同様である。ステップS11において、充放電遮断フラグが0であると判断された場合には、処理がステップS14に移り、電池パック1では通常の充電動作が行われる。
【0080】
ステップS11において充放電遮断フラグが0でないと判断された場合には、電池劣化により二次電池2aおよび2bの電池電圧Vが低くなりすぎている。このため、充放電遮断動作に入る。処理がステップS12に移り、充電電流が100mAを超えた状態で60秒が経過したか否かが判断される。ステップS12において条件を満たさない、すなわち、確実に充電しているとはいえない状態であると判断された場合には、処理が終了される。ステップS12において条件を満たす、すなわち、確実に充電していると判断された場合には、ステップS13に処理が移る。ステップS12において二次電池2aおよび2bが充電状態であると判断された場合には、ステップS13において二次電池2aおよび2bの充放電を遮断する。
【0081】
充放電の遮断は、マイクロコンピュータ11からローレベルの充放電制御信号CO’を出力することによりなされる。充放電制御信号CO’の出力をローレベルとした後の電池パック1の動作は、第1の実施の形態と同様である。
【0082】
以上のように、この発明の第1および第2の実施の形態では、電池パックが内部で電池状態の判断を行い、異常状態を検出した場合は充電器からの充電電流の受け入れや電子機器への電源供給を電池パック内部で完全に遮断する。このため、電池パックの異常状態検出後にユーザが電池パックの交換を行わない場合でも、高い安全性が保たれる。また、異常検出後もマイクロコンピュータで電力を消費しているため、電池内部での動作が完全に停止した状態よりも早く放電しきることができる。このため、長期保存による二次電池の漏液、発熱や電池パックの膨張等も抑制することができる。
【0083】
また、異常状態が検出された場合であっても、ユーザが電子機器を使用している間には充電の遮断を行わないため、ユーザが電子機器を快適に用いることができる。
【0084】
<3.変形例>
この発明の変形例としては、例えば二次電池2aおよび2bの異常状態を検出した場合のみならず、マイクロコンピュータ11が図示しない電子機器から、通信端子4を介して任意の制御信号を受信した場合に充放電の遮断を行う構成が挙げられる。
【0085】
なお、この発明の変形例における電池パックは、第1の実施の形態と同様の構成とすることができるため、回路構成の説明を省略する。
【0086】
例えば、接続された電池パック1が正規の製品であるかを電子機器が判断し、正規の製品ではないと判断した場合には、電池パック1の使用を停止させることが行われている。電子機器は、通信端子4を介して電池パック1内に設けられた図示しないID(Identification)抵抗を基に、電池パック1が正規の製品であるかを確認する。このとき、マイクロコンピュータ11が所定の制御信号を受信した場合には、即時、もしくは充電動作時を待って充放電を強制的に遮断させるようにすることができる。
【0087】
また、電池パックが正規品であっても、特定の電池パックについて使用を停止させたい場合に電子機器からの制御信号によって強制的に充放電を遮断することができる。これにより、製造者の意図によって充放電遮断を行うようにすることも可能となる。
【0088】
以上、この発明の実施の形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の各実施の形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0089】
例えば、上述の各実施形態において挙げた数値はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値を用いてもよい。二次電池の種類に応じて電池状態の判定基準が異なるため、用いる二次電池に応じて適切な基準値を設定する。
【0090】
また、電池パックの異常状態は、複数の二次電池間における電池容量のバランス崩れや、電池劣化に限らない。電池パック内部で検出可能な「異常状態」であればいずれの電池状態であっても良い。
【0091】
また、第1および第2の実施の形態、変形例の充放電制御を同時に行うようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0092】
1,30・・・電池パック
2・・・組電池
2a,2b,32a,32b・・・二次電池
3a・・・プラス端子
3b・・・マイナス端子
4・・・通信端子
10・・・保護回路
11,36・・・マイクロコンピュータ
12,37・・・レギュレータ
13,40・・・電圧検出部
14,41・・・電流検出部
15・・・電流検出抵抗
16・・・温度検出素子
17,33・・・充放電制御IC
18・・・メモリ
19,34・・・放電制御FET
20,35・・・充電制御FET
19a,20a・・・寄生ダイオード
21a,21b・・・ダイオード
22a,22b・・・トランジスタ
23,36・・・過電流検出用抵抗
38・・・遮断用放電制御FET
39・・・遮断用充電制御FET

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または複数の電池セルと、
第1の制御信号により制御され、上記電池セルに対する充電電流をON/OFFする充電制御スイッチと、
第2の制御信号により制御され、上記電池セルに対する放電電流をON/OFFする放電制御スイッチと、
上記第1および第2の制御信号を出力することにより、上記充電制御スイッチおよび上記放電制御スイッチを制御する第1の制御部と、
上記電池セルの状態を監視し、上記電池セルの状態が充放電を停止すべき状態であると判断した場合には、上記第1の制御信号のレベルに関わらず上記充電制御スイッチをOFFさせる第3の制御信号を出力する第2の制御部と、
上記第2の制御部に所定の電源電圧を供給する電源供給部と、
負荷と接続される第1および第2の出力端子と
を備え、
上記第2の制御部において上記電池セルの電池状態が通常状態であると判断されている場合に、上記第1の制御部において所定値以上の電流値が検出されたときには、上記充電制御スイッチもしくは上記放電制御スイッチがOFFされて電流の遮断を行うとともに、上記電源供給部の上記第2の制御部に対する電源供給が遮断され、
上記第2の制御部において上記電池セルの電池状態が充放電を停止すべき状態であると判断された場合には、上記電源供給部の上記第2の制御部に対する電源供給が継続されて、上記充電制御スイッチをOFFさせる第3の制御信号の出力を継続する
電池パック。
【請求項2】
上記第2の制御部において上記電池セルの電池状態が通常状態であると判断されている場合には、ハイレベルの上記第3の制御信号が出力され、
上記第2の制御部において上記電池セルの電池状態が充放電を停止すべき状態であると判断された場合には、ローレベルの上記第3の制御信号が出力されて上記充電制御スイッチがOFFされる
請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
上記第2の制御部は、上記電池セルが充電状態にある場合にローレベルの上記第3の制御信号を出力する
請求項2に記載の電池パック。
【請求項4】
上記電源供給部は、
上記第2の制御信号と同レベルの第4の制御信号と、
上記第3の制御信号と逆レベルの第5の制御信号と
が供給され、
上記第4および上記第5の制御信号がともにローレベルのときのみ、上記第2の制御部への電源供給を遮断する
請求項3に記載の電池パック。
【請求項5】
上記第3の制御信号によって上記充電制御スイッチがOFFされた場合には、上記第1の制御部が、ローレベルの第2の制御信号を出力する
請求項4に記載の電池パック。
【請求項6】
第2の制御部が、
上記電池セルの劣化度が大きい場合または複数の上記電池セル間の電池容量の差が所定値以上となった場合に上記電池セルの状態が充放電を停止すべき状態であると判断し、上記第3の制御信号によって上記充電制御スイッチをOFFさせる
請求項5に記載の電池パック。
【請求項7】
所定の電池容量を放電した時点での上記電池セルの電圧から、上記劣化度を判断する
請求項6に記載の電池パック。
【請求項8】
複数の電池セルの放電時において、上記電池セルの電流、電圧および電池温度を検出する検出のステップと、
上記検出のステップにおいて検出された上記電流、上記電圧および上記電池温度を基に、複数の上記電池セルのそれぞれの電池容量を算出する容量算出のステップと、
複数の上記電池セルのそれぞれの電池容量のうち、最大の電池容量と最小の電池容量との差分値を算出する差分算出のステップと、
上記差分算出のステップにより得られた上記差分値が、所定値よりも大きい場合には、複数の上記電池セルの電池状態が充放電を停止すべき状態であると判断する判断のステップと、
上記判断のステップにより上記電池セルの電池状態が充放電を停止すべき状態であると判断された場合において、上記電池セルが充電状態とされたときには、上記電池セルの充電を強制的に遮断するとともに、上記電池セルの充電の遮断を継続する遮断のステップと
を有する充放電制御方法。
【請求項9】
上記遮断のステップにおいて、上記電池セルの充電が強制的に遮断された場合には、上記電池セルの充電も遮断される
請求項8に記載の充放電制御方法。
【請求項10】
上記遮断のステップにおいて、上記電池セルの電池状態が充放電を停止すべき状態であると判断されている場合には、確実に上記電池セルが充電状態であることを検出した後上記電池セルの充電を強制的に遮断する
請求項9に記載の充放電制御方法。
【請求項11】
上記遮断のステップにおいて、上記電池セルに対して所定値以上の充電電流が所定時間以上流れた場合に、上記電池セルが充電状態であることを検出する
請求項10に記載の充放電制御方法。
【請求項12】
上記判断のステップにおいて、上記電池セルの電池状態が充放電を停止すべき状態であると判断された場合には、上記電池セルの電池状態が充放電を停止すべき状態であることを示す制御信号を外部に出力する
請求項11に記載の充放電制御方法。
【請求項13】
1または複数の電池セルの放電時において、上記電池セルの電流、電圧および電池温度を検出する検出のステップと、
上記検出のステップにおいて検出された上記電流および上記電池温度を基に、上記電池セルの状態判定が可能であるか否かを判断する判断のステップと、
複数の上記電池セルの電圧と、予め設定された1または複数の設定電圧とを比較することにより、上記電池セルの状態を判定する電池状態判定のステップと、
上記電池状態判定のステップにより上記電池セルの電池状態が充放電を停止すべき状態であると判断された場合において、上記電池セルが充電状態とされたときには、上記電池セルの充電を強制的に遮断するとともに、上記電池セルの充電の遮断を継続する遮断のステップと
を有する充放電制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−166752(P2010−166752A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8545(P2009−8545)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.EEPROM
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】