説明

電池及び電池の製造方法

【課題】高いエネルギー密度を有するとともに、柔軟性と形状加工の容易性とを備える電池及び電池の製造方法を提供すること。
【解決手段】電池は、導電部材である集電体を含有する集電体層と、溶媒とラジカルポリマーとを含有し、集電体層上に設けられるゲル層と、を備える正極を有する。集電体は、開口部を備えており柔軟性を有する。また、ラジカルポリマーは、不対電子を有する高分子化合物であり、部分構造としてニトロキシドラジカル基を分子中に含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジカル化合物を含有する電池及び電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ラジカル化合物を活物質として電極中に含有する電池は、エネルギー密度が高く安定性に優れている。そのため、電極中に活物質としてラジカル化合物を含有する電池の開発が盛んに行われている。例えば、正極又は負極の活物質がラジカル化合物を含有し、正極及び負極が固体状である二次電池の技術が開示されている(例えば、特許文献1)。上記特許文献1では、ラジカル化合物として鎖状のニトロキシドラジカル化合物や環状の構造を有するニトロキシドラジカル化合物を利用している。
【0003】
また、液状電極である正極又は負極が、活物質としてラジカル化合物を含有する二次電池の技術も開示されている(例えば、特許文献2)。上記特許文献2では、二次電池の電極として、ラジカル化合物を含む液状中に粒子状の集電体を分散させた正極の構造が開示されている。
【0004】
さらに、近年の情報化社会の発展に伴い、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)、携帯音楽プレーヤー等のようなモバイル機器には、図4及び図5に示すような薄型のリチウムイオン二次電池が実装されている。このようなモバイル機器は様々な分野で使用されるようになってきており、用途の多様化により内部の電池には更なる薄型化と形状の自由度が要求されてきていた。
【0005】
リチウムイオン二次電池を実装したモバイル機器に関連して、リチウム電池等の二次電池を内蔵した薄膜型のIC(Integrated Circuit)カードの技術が開示されている(例えば、特許文献3)。また、ラジカルポリマーと溶媒を含有する層を備えることで、薄膜化を容易にした二次電池の技術も開示されている(例えば、特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−151084号公報
【特許文献2】特開2003−036849号公報
【特許文献3】特開2005−010859号公報
【特許文献4】特開2008−123816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、ラジカル化合物を活物質として使用する電池は高エネルギー密度を有することから、近年、様々な分野で使用されるようになってきており、特に、携帯電話、PDA、携帯音楽プレーヤーのようなモバイル機器への実装が求められてきていた。モバイル機器では、電子回路の高集積化に伴い使用デバイスの小型化、機器内の構造の複雑化が進んでおり、機器内で電池を配置できるスペースはより一層小さくなってきている。このため、薄く、いかなるスペースでも搭載可能であり、かつ形状加工の容易な電池の開発が求められていた。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2に開示された二次電池は、主に高エネルギー化を目的としており、二次電池の薄膜化及び形状加工性については充分に検討されていないという課題があった。
【0009】
また、上記特許文献3及び特許文献4に開示された電池では、薄型化や柔軟性については検討されているものの、形状加工の容易性、特に昨今のデザインを重視した曲面形状のような3次元形状の機器内での電池配置に対しての柔軟性、成型性及び形状加工の容易性等については十分に検討されていなかった。そのため、曲面、立体加工を無理に行うと内部の集電体が外形形状に追従出来ずに破損するおそれがあり、信頼性が低いという課題があった。
【0010】
本発明はこのような実情を鑑みてなされたものであり、上記課題を解決し、高いエネルギー密度を有するとともに、柔軟性と形状加工の容易性とを備える電池及び電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の電池は、導電部材である集電体を含有する集電体層と、溶媒とラジカルポリマーとを含有し、集電体層上に設けられるゲル層と、を備える正極を有し、集電体は、開口部を備え、ラジカルポリマーは、部分構造として下記式(1)で表されるニトロキシドラジカル基を分子中に含むことを特徴とする。
【0012】
【化1】

【0013】
本発明の電池の製造方法は、導電部材である集電体にラジカルポリマーを塗布する塗布ステップと、ラジカルポリマーに溶媒を吸収させてゲル層を形成するゲル層形成ステップと、ゲル層と導電部材である集電体を備える負極とが対向するように、ゲル層とセパレータと負極とを積層して電極対を形成する電極対形成ステップと、電極対を外装部材に封入する封入ステップと、を有し、集電体は、開口部を備え、ラジカルポリマーは、部分構造として下記式(1)で表されるニトロキシドラジカル基を分子中に含むことを特徴とする。
【0014】
【化2】

【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高いエネルギー密度を有するとともに、柔軟性と形状加工の容易性とを向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る電池の概略構成例を示す断面図である。
【図2】本実施形態に係る電池の概略構成例を示す平面図(a)と側面図(b)である。
【図3】本実施形態に係る電池の概略構成例を示す断面図である。
【図4】本発明に関連する電池の構成を示す断面図である。
【図5】本発明に関連する電池の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施形態の例について、図面を用いて詳細に説明する。また、本実施形態では「上」や「下」と表現することがあるが、これは相対的な位置関係を便宜的に表現したものに過ぎず、例えば、上下を入れ替えたり上下を左右に置き換えたりしてもよい。
【0018】
図1及び図2は、本実施形態に係る電池の概略構成例を示す。ここで、図1は本実施形態に係る電池の内部概略構成例を示す断面図である。また、図2の(a)は本実施形態に係る電池の平面図であり、図2の(b)は本実施形態に係る電池の側面図である。図1に示すように、本実施形態に係る電池は、外装材1、正極集電体2、負極集電体3、セパレータ4、正極材層5、負極材層6、を備えている。本実施形態に係る電池は、正極材層5、セパレータ4、負極材層6を順に積層したものであり、この積層体を両側から外装材1である外装用フィルムで挟んだ構造となっている。
【0019】
また、図1に示すように、本実施形態に係る電池では正極集電体2上に正極材層5を形成しており、正極材層5をセパレータ4側に対向するように設けている。また、負極集電体3上に負極材層6を形成しており、負極材層6をセパレータ4側に対向するように設けている。そして、セパレータ4を上記正極材層5及び負極材層6で挟むことで、本実施形態に係る電池を形成している。
【0020】
図2に示すように、正極集電体2及び負極集電体3は、それぞれ+電極タブ21及び−電極タブ31と接続されている。正極集電体2及び負極集電体3は、接続された+電極タブ21及び−電極タブ31を介して電力を取り出せるようになっている。
【0021】
ここで、正極材層5と正極集電体2の厚さは、正極材層5と正極集電体2との合計が50〜300μm程度であることが好ましいが、これに限定されるものではない。また、負極材層6と負極集電体3の厚さも、合計50〜300μm程度であることが好ましいが、これに限定されるものではない。さらに、電池全体の厚さは0.2〜0.4mm程度であることが好ましい。正負極材層及び電池全体が上述した範囲の厚さを有することによって、本実施形態に係る電池は十分な容量及び優れた柔軟性を有することができる。尚、図1では本実施形態に係る電池として薄膜平面凸型電池の例を挙げて示したが、本実施形態に係る電池は優れた柔軟性を有するため、機器内の設置スペースに応じて所望の形状に変形することが可能である。また、電池のタイプも特に限定はされず、例えば円盤型、正方薄型、自由形状型等とすることができる。
【0022】
上記図1に示すように、本実施形態に係る電池は正極と負極を有する。正極は、柔軟性と伸縮性とを有する集電電極部材である正極集電体2と、活物質であるラジカルポリマー及び溶媒を含有する正極材層5と、を備えている。尚、本実施形態に係る電池では、正極活物質として早い電極反応を達成可能なラジカルポリマーを適用する。
【0023】
また、使用開始時から正極材層5の中の全体にわたって溶媒を含有しているため、正極材層5の表面に存在するラジカルポリマーだけでなく、正極材層5の内部に存在するラジカルポリマーも電極反応に関与することができる。このため本実施形態に係る電池は、高エネルギー密度の電力を供給することができる。また、活物質中のラジカル部位のみが反応に寄与するため、サイクル特性が活物質の拡散に依存しない安定性に優れた電池とすることができる。さらに、この正極材層5は高い柔軟性を有するため、本実施形態の電池全体としても高い柔軟性を有することができる。また、薄膜化が容易であると共に形状加工性に優れた電池とすることができる。
【0024】
上述したように、本実施形態に係る電池は形状加工性に優れているため、様々な用途に使用することができる。例えば、飲料用ペットボトルの表面に貼り付けたり、化粧品用の円筒型容器の表面に貼り付けたりすることができる。更に、所望の凹凸を有する形状に加工して使用することもできる。
【0025】
以下、本実施形態に係る電池の各構成の詳細について説明する。
【0026】
(正極)
本実施形態に係る電池の正極は、正極集電体2と正極材層5とから構成されている。正極材層5はラジカル化合物であるラジカルポリマーと溶媒とを含有しており、ゲル層である。尚、本実施形態において「ゲル層」とは、柔軟性を有しながら形状維持性を有するゼリー状の弾性層を表す。正極が完全な液状であると形状維持性を有さないため、安定した電極特性を保持することができなくなる。また、正極が完全な固体状であると形状維持性を有するが柔軟性を有さないため、電池は形状加工性に劣ったものとなる。そこで、本実施形態では、正極がゲル層を有することによって、液体と固体の両特性を備えた柔軟性及び形状維持性を有することができる。そのため、本実施形態に係る電池全体としても形状加工性を向上させることができる。
【0027】
(ラジカルポリマー)
以下、本実施形態の正極が含有するラジカルポリマーについて説明する。
【0028】
ラジカルポリマーとは、不対電子を有する高分子化合物のことである。一般的に、ラジカル化合物は反応性に富んだ化学種であり、各種反応の中間体として発生する不安定なものが多い。しかし、本実施形態の正極活物質として使用するラジカルポリマーは、例えば有機保護基による立体障害やπ電子の非局在化によってラジカルが安定化しており、安定して存在することができるものである。例えば、本実施形態で適用するラジカルポリマーは、電子スピン共鳴分析で測定したスピン濃度が長時間、例えば1秒間以上にわたって通常、1019〜1023spin/gの範囲内にあるものである。このラジカルポリマーは、電池の容量の点から、ラジカル濃度が1019spin/g以上に保たれていることが好ましく、特に1021spin/g以上に保たれていることが好ましい。
【0029】
一般に、ラジカル濃度はスピン濃度で表すことができる。すなわち、スピン濃度は単位重量当りの不対電子(ラジカル)数を意味し、例えば、電子スピン共鳴スペクトル(以下ESRスペクトルとする)の吸収面積強度から以下に示す方法で求められる値である。
【0030】
まず、ESRスペクトルの測定に供する試料を乳鉢等ですりつぶして粉砕する。この粉砕試料の一定量を内径2mm以下、望ましくは1〜0.5mmの石英ガラス製細管に充填し、10-5mmHg以下に脱気して封止し、ESRスペクトルを測定する。ESRスペクトルは例えば、JEOL−JES−FR30 型ESRスペクトロメーター等を用いて測定する。スピン濃度は得られたESRシグナルを二回積分して検量線と比較して求めることができる。ただし、本実施形態ではスピン濃度が正しく測定できる方法であればよく、測定機や測定条件等を限定することはしない。上述したように、ラジカルポリマーのスピン濃度は、例えば、電子スピン共鳴スペクトル等によって評価することができる。
【0031】
本実施形態のラジカルポリマーとしては、所定のラジカル基を有する高分子化合物が好適であり、特に部分構造として下記式(1)で表されるニトロキシドラジカル基(ニトロキシルラジカル基)を有することが好ましい。
【0032】
【化3】

【0033】
上記ニトロキシドラジカル基とは、酸素原子と窒素原子が結合してなるニトロキシド基を構成する酸素原子が不対電子を有する置換基のことを表す。このニトロキシドラジカル基は、窒素原子の電子吸引性によって酸素上にある不対電子が安定化されている。
【0034】
ニトロキシドラジカル基は、正極活物質として、還元状態において下記式(1)で表されるニトロキシドラジカル、酸化状態においては下記式(2)で表されるオキソアンモニウム(ニトロキシドカチオン)となる。このため、本実施形態の電池を一次電池として適用する場合、その放電時には下記式(1)に示すニトロキシドラジカルと、下記式(2)に示すオキソアンモニウムの間で電子の授受を行っている。また、実施形態の電池を二次電池として適用する場合、その充放電時には、下記式(1)に示すニトロキシドラジカルと、下記式(2)に示すオキソアンモニウムの間で可逆的に電子の授受を行っている。
【0035】
【化4】

【0036】
(集電体)
次に、本実施形態に係る電池に適用される正極集電体2及び負極集電体3について説明する。
【0037】
本実施形態では正極集電体2及び負極集電体3として、柔軟性と伸縮性とを有する導電性材料を適用することができる。柔軟性と伸縮性とを有する導電性材料とは、例えば、開口し、延び代が残る金属等の導電性材料を示しており、メッシュ状(網状)の金属や発泡金属等が好適である。また、柔軟性と伸縮性とを有する導電性材料として、例えば、密度が不均一な金属等も好適である。
【0038】
正極集電体2に適用する導電性材料は、例えばリチウムに対し合金化しにくい金属で形成された被覆層を有していればよく、特に限定はしないが、例えばアルミニウムや貴金属類等が好適である。他方、負極集電体3に適用する導電性材料も特に限定はしないが、例えば銅、ニッケル、その他貴金属類等が好適である。
【0039】
正極集電体2及び負極集電体3にメッシュ状(網状)金属や発泡金属を適用した例を図3に示す。図3に示すように、正極集電体2及び負極集電体3としてメッシュ状金属を適用すると、電極材料との接点における面積が単板金属に比較して増えるので、内部抵抗が減少し、より多くの充放電電流を流すことができるという相乗的な効果を奏する。また、本実施形態の集電体は柔軟性を持つ金属又は導電性材料であればよく、例えば金属不織布(フェルト)、金属織布、金属繊維焼結体、エンボスシート(プレス・エッチング又は成型等により任意の凹凸がついた金属シート)等を適用することができる。また、その他の導電材料としては、例えばカーボンのフェルト、織布等、またその他複合材料としては、例えばサポート材としての樹脂フィルムと金属箔の複合材料、カーボンと金属箔の複合材料等も適用することができる。
【0040】
電極としての開口率は、メッシュ状金属や発泡金属等の種類により異なるが、例えばパンチングプレートの場合、開口率30〜70%程度が好適であり、特に開口率50%程度が好ましい。また、メッシュ状金属や発泡金属については開口率に特に制限はないが、開口率は電極形成後の曲げに対する伸び率と正(負)極−電極間の接触に関係する。具体的には、開口率が低いものは伸び率が低く、開口率が高いものは伸び率が高くなるので、集電体に適用する金属の開口率はある程度高い方がよい。
【0041】
上述したような柔軟性を持つ金属又は導電性材料を集電体として適用することで、電池を所望の形状に成型する際に、集電体が断裂することを防ぐことができる。また、上記では集電体についてのみ記載したが、セパレータ4にも柔軟性と伸縮性とを有し、延び代が残る部材を適用することが好ましい。これにより、電池を所望の形状に成型する際に、セパレータ4が断裂することを防ぐことができる。
【0042】
(製造方法)
次に、本実施形態に係る電池の製造方法について説明する。
【0043】
まず、ラジカルポリマーを正極集電体2に塗布する。そして、正極集電体2を乾燥させ、正極集電体2と正極材層5とを含むラジカル正極層を形成し、ラジカル正極層表面にさらにラジカルポリマーを吹きつける。上記ラジカルポリマーに溶媒を吸収させることで、ラジカル正極層をゲル状の正極ゲル層とし、正極を形成する。他方、負極は、負極集電体3上に、例えばリチウム層を張り合わせて形成する。
【0044】
次に、上述したように形成した正極と負極が対向するように、正極、セパレータ4、負極の順に積層して電極対を形成する。その後、上記電極対と電解液とを外装材1中に封入して大まかな電池構造とし、さらに加熱・加圧することにより成型して所望の形状の電池を得る。尚、外装材1中への電解液の注入は、加熱成型後に行うことも可能であり、特に限定されるものではない。
【0045】
上述したように、本実施形態に係る電池は、正極材に活物質であるラジカルポリマーと溶媒とを含有する。このため、ラジカルポリマーの早い電極反応等を利用して高エネルギー密度の電力を供給することができる。また、この、正極材層は高い柔軟性を有するため、電池全体としても高い柔軟性を有することができる。この結果、電池は形状の加工性及び成型性を向上させることが可能となる。これにより、電池の形状を、電池を実装させる機器の形状に正確に沿わせることができる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明の詳細を具体的に実施例において示す。しかし、本発明はこれら実施例等に何ら制約されるものではない。
【0047】
まず、微粉化した下記式(3)で表されるラジカルポリマー、炭素粉末(ケッチェンブッラクEC300J(商品名);ライオン社製)、カルボキシメチルセルロース(CMC:HB−9(商品名)、日本ゼオン社製)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE:F−104(商品名)、ダイキン社製)をそれぞれの重量比が60/35/3/2となるように計量した。尚、重量比及び材料は上記したものに限定されない。
【0048】
【化5】

【0049】
次に、上述したように計量し混合した混合物に水を加えてホモジナイザーで攪拌することにより、均一なスラリー状に調整した。このスラリーを電極作製用コーターにて厚さ20μmのアルミエキスパンドメタル上に塗布し、さらに80℃で3分間乾燥して厚さ60μmのラジカル正極層を形成した。ここで、このラジカル正極層は、正極集電体2と正極材層5とを含有している。上述したように形成したラジカル正極層の表面上に上記式(3)で表されるラジカルポリマーをN−メチル−ピロリドン(NMP)中に溶かした溶液をエアスプレーで拭きつけた後、125℃で乾燥させてNMPを蒸発させた。
【0050】
1.0mol/LのLiPF6電解質塩を含むエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)との混合溶液(混合比 EC:DEC=3:7)を調合して、溶媒とした。そして、上述したように形成した集電体層とラジカル正極層との積層体を上記溶媒中に減圧状態(圧力2.6kPa)において20℃で3分間浸漬させ、ラジカルポリマーに溶媒を吸収させて、ラジカル正極層をゲル状の正極ゲル層とした。尚、このゲル層中のラジカルポリマーと溶媒の重量比は1/0.8とした。
【0051】
次に、正極のアルミエキスパンドメタル面にアルミリードを溶接した。また、負極集電体3として銅エキスパンドメタルを適用し、銅エキスパンドメタル上に薄膜状のリチウム層(リチウム厚10μm)を貼り合わせて負極とし、この銅エキスパンドメタル面にニッケルリードを溶接した。
【0052】
そして、正極材層5と負極の金属リチウム層とが対向するように、正極、多孔質ポリプロピレンセパレータ、負極の順に積層させてニッケルリード付電極対とした。この後、2枚の熱融着可能なアルミラミネートフィルムの三方を熱融着することにより袋状とし、上記のようにして作成したニッケルリード付電極対をこの中に封入した。
【0053】
この後、電解液0.1mlを袋状アルミラミネート外装材の中に封入した。電解液としては、1.0mol/LのLiPF6電解質塩を含むエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)との混合溶液(混合比 EC:DEC=3:7)を利用した。
【0054】
この状態でニッケルリード付電極のニッケルリードの端を、アルミラミネート外装材の外に1cm出し、アルミラミネート外装材の未溶着の一辺を熱融着した。これにより、電極と電解液をアルミラミネート中に完全に密閉して電池構造を作成した。
【0055】
次に成型したい凹凸形状の金型を準備し、両側の金型を合わせ加圧することにより、最終的に凸形状の電池を得ることができる。ここで金型は、加熱及び加圧しても良い。加熱はアルミラミネートと、電池材料を痛めない温度であれば、いかなる温度でもよく、例えば、80℃などで簡単に成型することができる。また、電解液の注入を加熱成型した後に行い、最後に未融着一辺を熱融着するようにしてもよい。
【0056】
本実施形態により、正極材料として柔軟性を有するラジカル化合物含有材料を適用することで、高エネルギー密度の電力の供給を実現した薄型電池を提供することが可能となり、かつ薄型電池を様々な形状に成型することも可能となる。
【0057】
また、薄型電池の集電体として、薄型で柔軟性と伸縮性とを有する金属又は導電性の材料を適用することで、柔軟で3次元曲面的成型を実現した薄型電池を提供することが可能となる。
【0058】
さらに、本実施形態により、電池全体としても高い柔軟性を維持することが可能となる。また、形状加工化が容易であると共に柔軟性に優れた電池とすることができ、フレキシブルな端末などに利用することが可能となる。また、端末において、電池スペースを有効活用することも可能となる。
【0059】
以上好適な実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上述した電池及び電池の製造方法に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であるということは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、カード型端末などの薄型端末、フレキシブルディスプレイや電子ペーパなどに使用される外形形状に沿った形状に加工でき、屈曲可能な薄型電池として適用することが可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 外装材
2 正極集電体
3 負極集電体
4 セパレータ
5 正極材層
6 負極材層
21 +電極タブ
31 −電極タブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電部材である集電体を含有する集電体層と、
溶媒とラジカルポリマーとを含有し、前記集電体層上に設けられるゲル層と、を備える正極を有し、
前記集電体は、開口部を備え、
前記ラジカルポリマーは、部分構造として下記式(1)で表されるニトロキシドラジカル基を分子中に含むことを特徴とする電池。
【化1】

【請求項2】
柔軟性を備える導電部材である集電体を含有する集電体層と、
溶媒とラジカルポリマーとを含有し、前記集電体層上に設けられるゲル層と、を備える正極を有し、
前記集電体は、密度が不均一であり、
前記ラジカルポリマーは、部分構造として下記式(1)で表されるニトロキシドラジカル基を分子中に含むことを特徴とする電池。
【化2】

【請求項3】
導電部材である集電体を含有する集電体層を備える負極をさらに有し、
前記集電体は、開口部を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の電池。
【請求項4】
柔軟性を備える導電部材である集電体を含有する集電体層を備える負極をさらに有し、
前記集電体は、密度が不均一であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電池。
【請求項5】
前記集電体は、開口率が30〜70%であることを特徴とする請求項1又は3に記載の電池。
【請求項6】
前記正極と前記負極とは、加圧により成型されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の電池。
【請求項7】
前記集電体は、厚さが不均一であることを特徴とする請求項項1から6の何れか1項に記載の電池。
【請求項8】
前記集電体は、発泡金属であることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の電池。
【請求項9】
前記集電体は、メッシュ状の金属であることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の電池。
【請求項10】
前記集電体は、エキスパンドメタルであることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の電池。
【請求項11】
前記集電体は、金属不織布及び金属織布の何れかであることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の電池。
【請求項12】
前記集電体は、金属繊維焼結体であることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の電池。
【請求項13】
前記集電体は、凹凸部を備える金属であることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の電池。
【請求項14】
前記集電体は、カーボン不織布及びカーボン織布の何れかであることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の電池。
【請求項15】
前記正極は、厚さが50〜300μmであることを特徴とする請求項1から14の何れか1項に記載の電池。
【請求項16】
導電部材である集電体にラジカルポリマーを塗布する塗布ステップと、
前記ラジカルポリマーに溶媒を吸収させてゲル層を形成するゲル層形成ステップと、
前記ゲル層と導電部材である集電体を備える負極とが対向するように、前記ゲル層とセパレータと前記負極とを積層して電極対を形成する電極対形成ステップと、
前記電極対を外装部材に封入する封入ステップと、を有し、
前記集電体は、開口部を備え、
前記ラジカルポリマーは、部分構造として下記式(1)で表されるニトロキシドラジカル基を分子中に含むことを特徴とする電池の製造方法。
【化3】

【請求項17】
柔軟性を備える導電部材である集電体にラジカルポリマーを塗布する塗布ステップと、
前記ラジカルポリマーに溶媒を吸収させてゲル層を形成するゲル層形成ステップと、
前記ゲル層と導電部材である集電体を備える負極とが対向するように、前記ゲル層とセパレータと前記負極とを積層して電極対を形成する電極対形成ステップと、
前記電極対を外装部材に封入する封入ステップと、を有し、
前記集電体は、柔軟性を備え、密度が不均一であり、
前記ラジカルポリマーは、部分構造として下記式(1)で表されるニトロキシドラジカル基を分子中に含むことを特徴とする電池の製造方法。
【化4】

【請求項18】
前記封入ステップにより外装部材に封入された前記電極対に加圧して成型する成型ステップをさらに有することを特徴とする請求項16又は17に記載の電池の製造方法。
【請求項19】
前記成型ステップは、前記電極対に加熱及び加圧して成型することを特徴とする請求項18記載の電池の製造方法。
【請求項20】
前記集電体は、発泡金属であることを特徴とする請求項16から19の何れか1項に記載の電池の製造方法。
【請求項21】
前記集電体は、メッシュ状の金属であることを特徴とする請求項16から19の何れか1項に記載の電池の製造方法。
【請求項22】
前記集電体は、エキスパンドメタルであることを特徴とする請求項16から19の何れか1項に記載の電池の製造方法。
【請求項23】
前記集電体は、金属不織布及び金属織布の何れかであることを特徴とする請求項16から19の何れか1項に記載の電池の製造方法。
【請求項24】
前記集電体は、金属繊維焼結体であることを特徴とする請求項16から19の何れか1項に記載の電池の製造方法。
【請求項25】
前記集電体は、凹凸部を備える金属であることを特徴とする請求項16から19の何れか1項に記載の電池の製造方法。
【請求項26】
前記集電体は、カーボン不織布及びカーボン織布の何れかであることを特徴とする請求項16から19の何れか1項に記載の電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−238403(P2010−238403A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82753(P2009−82753)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】