説明

電源装置及びそれを用いた器具

【課題】電力損失及び雑音を低減させた小型の電源装置及びそれを用いた器具を提供する。
【解決手段】無電極放電灯点灯装置は、無電極放電灯4と、無電極放電灯4に誘導磁界を誘起させる誘導コイル3と、誘導コイル3に高周波電力を供給する高周波電源回路2とを備える。高周波電源回路2は、直流電源回路1の出力電圧が印加されるスイッチング素子Q2及びスイッチング素子Q3の直列回路と、スイッチング素子Q2,Q3を高周波で交互にオン・オフする駆動回路20とを備えており、スイッチング素子Q2,Q3にはワイドバンドギャップ半導体素子を用いている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置及びそれを用いた器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、無電極放電灯に点灯電力を供給する無電極放電灯点灯装置が提供されている(例えば特許文献1参照)。この無電極放電灯点灯装置は、交流電源から電力供給を受けて直流電圧を出力する直流電源回路と、直流電源回路を電源として動作し上記の直流電圧を高周波出力に変換する高周波電源回路とを主な構成要素として備える。そして、この無電極放電灯点灯装置によれば、暗所や低温時等の始動困難な場合には定常時よりも高い始動電圧を間欠発振することで無電極放電灯の始動性を向上させている。
【0003】
また従来より、電磁結合により非接触で負荷に電力供給を行う非接触給電装置も提供されている(例えば特許文献2参照)。この非接触給電装置は、交流電源を整流する整流器と、整流器により整流された直流電圧を高周波出力に変換するインバータと、インバータで生成された交流電圧を負荷側と絶縁するとともに、負荷に応じて必要な電流が流せるように任意に定めた変圧比で電圧変換する変圧器とを主な構成要素として備える。そして、この非接触給電装置によれば、インバータで生成された高周波の交流電圧を変圧器により電圧変換することで負荷に応じた所望の電力が供給できるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−158459号公報(段落[0023]−段落[0042]、及び、第1図−第4図)
【特許文献2】特開2001−352699号公報(段落[0010]−段落[0029]、及び、第1図−第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の無電極放電灯点灯装置や非接触給電装置のように誘導性負荷に電力を供給する場合、駆動周波数が低いとカプラのインピーダンスが小さくなり、電力供給が困難となってしまう。そのため、非接触給電装置では駆動周波数を数十kHz以上の高周波に設定し、また無電極放電灯点灯装置では駆動周波数を百kHz〜数十MHz、数十GHzの高周波に設定している。その結果、ダイオードのリカバリ損失やスイッチング素子のスイッチング損失など、半導体部品における電力損失が大きくなり、効率低下の原因となっている。
【0006】
また、上述のように電力損失が大きいと部品の発熱量も増加し、これが装置の大型化や放熱構造の複雑化、組立性の悪化、デザインの制約、そして熱に対する信頼性低下の原因となっている。特に近年では、用途拡大のために100Wを超える大容量の非接触給電装置の検討や、無電極放電灯点灯装置のラインナップの拡充がなされており、これにより負荷電流がますます増大することから、低損失化、小型化がより大きな課題となっている。例えば、駆動周波数が百数十kHz程度の無電極放電灯点灯装置の場合、100W以上のクラスではダイオードやFETなどの半導体素子の発熱量がかなり大きくなるため、半導体素子を放熱シートを介してケース側面にクリップ固定し、半導体素子で発生した熱をケース外殻に逃がすといった複雑な放熱構造をとっており、無電極放電灯点灯装置の大型化につながっている。
【0007】
さらに、従来のSi系半導体素子では、数十ns程度の逆回復時間が存在し、この逆回復時間が数十MHz程度の周波数帯の雑音スペクトルの発生要因(雑音端子電圧、雑音電力、輻射雑音など)となっている。そして、この雑音は周囲機器に悪影響を及ぼす原因となる場合がある。また、従来のSi系半導体素子では、上記の逆回復時間が温度特性を持っているため、発生する雑音スペクトルの周波数帯が温度により変化する。したがって、より広い温度領域で雑音を抑えるためにはより広い周波数帯に対応させた雑音対策が必要であり、装置の大型化や構造複雑化、デザイン制約などの原因となってしまう。
【0008】
また、照明器具の場合には、その形状が10MHz〜30MHzの雑音帯域に影響を与えて、雑音レベルが変化することも知られている。例えば、電子安定器の出力側(ランプ線側)からランプ線を経由して器具に誘導される電流を介して電源線に重畳されるものが確認されており、またこの帯域の雑音はアースの取り方、アース安定度によっても変わることが確認されている。そして、上記のSi系半導体素子を用いた場合には、上記の理由により10MHz〜30MHzの帯域の雑音が増大することになる。したがって、特に照明器具では、雑音の増大やこの雑音を対策するために器具設計が限定されるなどの原因となっている。上記の現象は数十kHz以上の高周波で動作する電源装置でみられる現象であるが、電源装置に無関係な筐体がたまたま電源装置に近接している場合でも影響を受けることがある。
【0009】
上記の半導体素子に起因する雑音の問題は誘導性負荷を用いた場合に特に顕著であり、この場合、カプラから磁束が発生するため雑音が外部に放射されやすい。また、カプラに近接して配置された筐体が当該カプラと結合しやすいことも雑音増加の原因であり、さらに高周波駆動させていることから、逆回復の回数が多いことも雑音を増大させる原因となっている。例えば、駆動周波数が100kHz以上の無電極放電灯点灯装置では、金属反射板の形状やアースの取り方により10MHz以上の帯域における雑音への影響が顕著に確認されている。
【0010】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、電力損失及び雑音を低減させた小型の電源装置及びそれを用いた器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の電源装置は、誘導性負荷と、誘導性負荷に高周波電力を供給する高周波電源回路を含む回路部とを備え、回路部を構成する半導体素子のうち少なくとも1つがワイドバンドギャップ半導体からなることを特徴とする。
【0012】
この電源装置において、回路部は、高周波電源回路に直流電圧を供給するチョッパ回路を有し、チョッパ回路を構成するダイオード又はスイッチング素子がワイドバンドギャップ半導体からなるのが好ましい。
【0013】
また、この電源装置において、高周波電源回路は、ワイドバンドギャップ半導体からなるスイッチング素子を有し、スイッチング素子を所定周波数以上の周波数でオン・オフすることで誘導性負荷に所望の高周波電力を供給するのも好ましい。
【0014】
さらに、この電源装置において、回路部は、高周波電源回路に直流電圧を供給するチョッパ回路を有し、チョッパ回路を始動させてから高周波電源回路が誘導性負荷に始動電圧を供給するまでの間は高周波電源回路を微弱発振させており、高周波電源回路を微弱発振させている間は定常時よりも高周波電源回路を構成するスイッチング素子のゲート電圧を低減させるか又はゲート抵抗を増大させているのも好ましい。
【0015】
また、この電源装置において、誘導性負荷が発光部を有しているのも好ましい。
【0016】
さらに、この電源装置において、誘導性負荷が、無電極放電灯と、無電極放電灯に近接配置され、高周波電源回路から供給される高周波電力により無電極放電灯に誘導磁界を誘起させる誘導コイルとで構成されているのも好ましい。
【0017】
また、この電源装置において、誘導性負荷が、一次側巻線を具備する給電側と、二次側巻線を具備し給電側から非接触で給電される受電側とが分離可能な絶縁トランスを有しているのも好ましい。
【0018】
さらに、この電源装置において、絶縁トランスの二次側巻線には、ワイドバンドギャップ半導体からなるダイオード又はスイッチング素子が接続されているのも好ましい。
【0019】
本発明の器具は、上記の電源装置を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
電力損失及び雑音を低減させた小型の電源装置及び器具を提供することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態1を示す回路図である。
【図2】同上の使用形態の一例を示し、(a)は斜視図、(b)はそれに用いられる無電極放電灯の構造図である。
【図3】同上を用いた照明器具の一例を示し、(a)は斜視図、(b)は概略断面図である。
【図4】同上を用いた照明器具の他の例を示し、(a)は正面図、(b)は下面図、(c)は左側面図である。
【図5】本発明の実施形態2を示す回路図である。
【図6】同上の高周波出力の周波数特性を示す動作説明図である。
【図7】(a)は従来例の動作を示すタイムチャート、(b)は本発明の実施形態2の動作を示すタイムチャートである。
【図8】(a)、(b)は本発明の実施形態3の要部の回路図である。
【図9】(a)〜(e)は同上の動作を示すタイムチャートである。
【図10】本発明の実施形態4を示す回路図である。
【図11】本発明の実施形態5を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る電源装置及び器具の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
(実施形態1)
図1は本実施形態の無電極放電灯点灯装置(電源装置)の一例を示す回路図であり、本点灯装置は、商用交流電源13の交流出力から所望の直流出力を生成する直流電源回路1と、直流電源回路1の直流出力を高周波出力に変換して無電極放電灯4の近傍に配置された誘導コイル3に供給する高周波電源回路2と、無電極放電灯4の始動時に高周波電源回路2の出力電圧を徐々に上昇させて無電極放電灯4を始動する始動回路8と、高周波電源回路2の出力電圧(つまり誘導コイル3への印加電圧)V2を検出する電圧検出回路9と、インダクタL2、コンデンサC3,C4からなる共振回路に流れる共振電流を検出する電流検出回路と、電流検出回路の検出電流を参照して高周波電源回路2の出力電圧V2が所望のレベルとなるように駆動回路20を制御して駆動信号V7,V8の周波数(動作周波数)f1を変化させる制御回路7とを備える。ここに、本実施形態では、上記の高周波電源回路2を含むすべての回路により回路部が構成されている。また、本実施形態では、無電極放電灯4と誘導コイル3とで誘導性負荷が構成され、さらに無電極放電灯4により発光部が構成されている。
【0024】
直流電源回路1は、商用交流電源13の交流出力を整流する整流回路10と、インダクタL1、ダイオードD1、スイッチング素子Q1、及び平滑コンデンサC1と、スイッチング素子Q1を駆動する駆動回路11とを具備した従来周知の昇圧チョッパ回路からなる。
【0025】
高周波電源回路2は、直流電源回路1の出力端間に直列接続された一対のスイッチング素子Q2,Q3を具備し、ローサイドのスイッチング素子Q3に上記の共振回路が接続された所謂ハーフブリッジ型のインバータ回路で構成されている。そして、駆動回路20から出力される矩形波パルスの駆動信号V7,V8により一対のスイッチング素子Q2,Q3を交互にスイッチングすることで、共振回路を介して誘導コイル3に高周波出力を供給する。なお、上記のスイッチング素子Q2,Q3は、例えば電界効果トランジスタからなり、またスイッチング素子Q2を駆動する駆動信号V7と、スイッチング素子Q3を駆動する駆動信号V8は略180度の位相角を有している。
【0026】
電圧検出回路9は、整流用のダイオード、分圧用の抵抗、平滑用のコンデンサ等からなり、出力電圧V2に応じた直流電圧である検出電圧V10を始動回路8に出力する。
【0027】
一方、始動回路8は、直流電源回路1の出力電圧V1を降圧・安定化して得られる動作電圧V3により感温抵抗R1を介して充電されるコンデンサC2と、オペアンプOP1に入力抵抗及び帰還抵抗を接続してなり、コンデンサC2の両端電圧V4と電圧検出回路9の検出電圧V10の差分を増幅する誤差増幅器と、コンデンサC2と並列に接続された分圧抵抗R2と、コンデンサC2と並列に接続された放電用のスイッチ80とを具備し、抵抗R1とコンデンサC2からなる充電回路の時定数(抵抗R1の抵抗値とコンデンサC2の容量値の積)に応じて出力電圧が徐々に上昇するものである。そして、この出力電圧が入力される駆動回路20では、この出力電圧の上昇に応じて駆動信号V7,V8の周波数を徐々に減少させている。
【0028】
電流検出回路は、高周波電源回路2を構成するローサイドのスイッチング素子Q3と回路のグランドとの間に接続された検出抵抗R3からなり、スイッチング素子Q3に流れる高周波電流(共振回路に流れる共振電流)に応じた検出電圧V6を制御回路7に出力している。
【0029】
制御回路7は、オペアンプOP2に入力抵抗等を接続してなり、基準電圧V9と電流検出回路の検出電圧V6の差分を増幅する誤差増幅器(作動増幅器)と、抵抗を介してオペアンプOP2の出力端子にカソードが接続されたダイオードD2とを具備する。オペアンプOP2は、基準電圧V9が非反転入力端子に入力されるとともに、反転入力端子と出力端子の間に抵抗R10とコンデンサC11の並列回路からなる遅延回路が接続されている。また、始動回路8の誤差増幅器を構成するオペアンプOP1の出力端子にも抵抗を介してダイオードD3のカソードが接続されており、これら2つのダイオードD2,D3のアノードが駆動回路20の入力端子に並列接続されている。ここで、駆動回路20の入力端子には定電圧(入力端子電圧)が印加されており、始動回路8の誤差増幅器の出力電圧(オペアンプOP1の出力端子電圧)が駆動回路20の入力端子電圧よりも小さいときにダイオードD3が導通してその電位差に応じた第1の制御電流I2が流れるとともに、制御回路7の誤差増幅器の出力電圧(オペアンプOP2の出力端子電圧)が駆動回路20の入力端子電圧よりも小さいときにダイオードD2が導通してその電位差に応じた第2の制御電流I3が流れる。故に、駆動回路20の入力端子から流れ出る制御電流I1の大きさは、第1の制御電流I2と第2の制御電流I3の和となる。
【0030】
一方、駆動回路20は発振器を具備しており、入力端子から始動回路8並びに制御回路7の出力端子へ流れる制御電流I1に応じて発振器の発振周波数を変化させ、制御電流I1に比例して駆動信号V7,V8の周波数(動作周波数)f1を増減している。したがって、始動回路8並びに制御回路7の誤差増幅器の出力電圧が大きくなるほど駆動回路20の動作周波数f1は減少することになる。
【0031】
誘導コイル30は、図2(a)に示すように円筒形状のカプラ30に巻回される。図2(a)に示す例では、誘導性負荷(本例では誘導コイル3と無電極放電灯4)を除く無電極放電灯点灯装置が金属製のケース100に収納され、給電線100aを介して誘導コイル3に電気的に接続されている。
【0032】
無電極放電灯4は、図2(b)に示すように、例えばガラスのような透明な材料からなり、外面に凹部41を有する中空のバルブ40と、合成樹脂からなる筒形状であって、バルブ40に対し凹部41の開口を囲む形で取り付けられた口金42とを有し、凹部41にカプラ30が挿入されることによって誘導コイル3の近傍に配置される。バルブ40には、例えば不活性ガスと金属蒸気とを含む放電ガスが封入されている。また、バルブ40の凹部41の底面には、カプラ30に挿入される排気管41aが突設されている。さらに、バルブ40の内面には、保護膜40aと蛍光体膜40bとが設けられている。そして、誘導コイル3が発生させる高周波電磁界によってバルブ40内にアーク放電が発生すると、発生した紫外線が蛍光体膜40bにおいて可視光に変換されることにより、無電極放電灯4が発光する。
【0033】
ここで、上述の直流電源回路1や高周波電源回路2は、その駆動周波数が高周波であることから、各回路1,2を構成する半導体部品の電力損失が大きくなって効率低下の原因となってしまう。また、半導体部品の電力損失が大きくなるにつれて発熱量も増加することから、装置の大型化や放熱構造の複雑化、組立性の悪化、デザインの制約、そして熱に対する信頼性低下の原因となってしまう。
【0034】
そこで、本実施形態では、上記の問題を解決すべく、直流電源回路1を構成する整流回路10のダイオードや、ダイオードD1、スイッチング素子Q1、並びに、高周波電源回路2を構成するスイッチング素子Q2,Q3にワイドバンドギャップ半導体素子(例えばGaN系半導体素子やSiC系半導体素子)を用いている。ここにおいて、ワイドバンドギャップ半導体とは、周期律表第2周期の軽元素(B、C、N、O)を構成要素とする半導体であり、バンドギャップ(禁止帯)がSi系半導体の2倍以上(2.0eV以上)のものをいう。このワイドバンドギャップ半導体は、従来のSi系半導体に比べて通電損失やオン抵抗が十分小さくなっており(1桁から2桁小さい)、また高温時における動作も可能となっている。
【0035】
その結果、従来のSi系半導体素子を用いた場合に比べて、直流電源回路1や高周波電源回路2で発生する電力損失を低減することができる。また、電力損失を低減することで発熱量を抑えることができ、しかもワイドバンドギャップ半導体素子は高温時の動作も可能であることから、従来例のように複雑な放熱構造を設けなくてもよく、小型の無電極放電灯点灯装置を提供することができる。さらに、放熱構造の簡素化、組立性向上、デザインの自由度向上、及び熱に対する信頼性向上なども期待できる。
【0036】
次に、図3は本発明に係る照明器具(器具)Aの一例であり、本照明器具Aは、透光性材料により略球状に形成されたバルブ40を具備する無電極放電灯4と、下面が開口する円筒状の本体部81と、本体部81の下面側に配置される椀型の外郭部82と、外郭部82の内面に沿って配置される反射板83とを備える。
【0037】
本体部81は、鋼板からなる取付部84が上面側に設けられており、また下面の開口近傍にはソケット90が配置されている。このソケット90には無電極放電灯4の口金42が装着され、ソケット90と口金42にそれぞれ設けられた電線(図示せず)同士が電気的に接続される。また、本体部81の内部には、無電極放電灯4を点灯させる点灯回路91が収納されている。ここに本例では、点灯回路91により、誘導性負荷(誘導コイル3と無電極放電灯4)を除く無電極放電灯点灯装置が構成されている。
【0038】
外郭部82は、本体部81の下面に設けられた開口の周縁から下方に向かって拡径されており、外郭部82の内面側には所定の間隔を空けて反射板83が配置されている。反射板83は、アルミ板によってパラボラ型に形成されており、中心に形成された挿通孔83aにはバルブ40が挿通され、挿通孔83aの上側には遮光部材86が配置されている。そして、反射板83の下側には、透明強化ガラスにより円盤状に形成されたガラスパネル85が配置されている。
【0039】
また、図4は本発明に係る照明器具(器具)Aの他の例であり、本照明器具Aは、例えばステンレスからなる前面が開口した直方体形状のボディ71aと、例えば強化ガラスのような透光性を有する材料からなり、ボディ71aを開閉自在に閉塞するカバー71bとで構成された器具本体71を備える。ボディ71aの内底面には、例えばアルミニウムからなり、無電極放電灯4の光を前方へ配光する断面U字形状の反射板71cが固定されており、器具本体71に収納された無電極放電灯4の光はカバー71bを通して前方へ出射される。さらに、ボディ71aの内底面には、無電極放電灯4が取り付けられるカプラ(図示せず)と、誘導性負荷を除く無電極放電灯点灯装置を収納したケース100と、ケース100内の直流電源回路1に電気的に接続された端子台14とが、それぞれ固定されている。端子台14には、一端が商用交流電源13に接続された電線(図示せず)の他端が接続されるのであり、直流電源回路1は上記の電線と端子台14とを介して商用交流電源13に電気的に接続される。
【0040】
ここで、従来のSi系半導体素子は、上述したように数十ns程度の逆回復時間が存在し、さらにこの逆回復時間が温度特性を持っているため、数十MHz程度の周波数帯の雑音を発生させる。また、上述したように照明器具の形状が10MHz〜30MHzの雑音帯域に影響し、雑音レベルが変化する場合もある。例えば、図3又は図4に示す照明器具Aにおいて、直流電源回路1や高周波電源回路2を構成する半導体素子にSi系半導体素子を用いた場合には、上記の半導体素子で発生した雑音がランプ線を経由して反射板83や遮光部材86、反射板71cなどに誘導され、さらにこれらと電気的に接触する筐体を流れることで上記の雑音が電源線に重畳される可能性がある。
【0041】
これに対して本実施形態では、上記の半導体素子にワイドバンドギャップ半導体素子を用いており、このワイドバンドギャップ半導体素子は、Si系半導体素子に比べて逆回復時間や逆回復時間の温度特性がほとんどないことから、広い温度領域での雑音低減が可能である。そして、雑音源である半導体素子の雑音を低減することで、ランプ線を介して誘導される10MHz〜30MHz帯域の雑音を抑えることもできる。
【0042】
ここで、本実施形態の直流電源回路1は、100V〜242Vの入力電圧に対応させたユニバーサル電源であり、100V系使用時の入力電流は200V系使用時の入力電流の約2倍程度にもなるため、大きな損失差が生じる。例えば、従来のSi系半導体素子を直流電源回路1に用いた場合には、100V系使用時の温度は200V系使用時の温度よりも数十℃程度高くなることがある。これは、Si系半導体素子の逆回復時間の温度特性に換算すると、雑音スペクトルが数MHz程度ずれるのに相当し、より広い周波数範囲に対して雑音対策をしなければならないことを意味する。
【0043】
これに対して本実施形態では、ワイドバンドギャップ半導体素子を直流電源回路1に用いているため、発熱量を低減することができて温度差を小さくすることができ、また逆回復時間や逆回復時間の温度特性がほとんどないため、雑音についても低減することができる。
【0044】
而して、本実施形態によれば、無電極放電灯点灯装置を構成する半導体素子にワイドバンドギャップ半導体素子を用いることで、照明器具Aとの結合で影響の出る数十MHz帯域の雑音を低減することができる。また、無電極放電灯点灯装置の場合、百kHz〜数十MHz、数十GHzの高周波で動作するため電力損失が大きく、また主な雑音源にもなりうるが、高周波特性が良好なワイドバンドギャップ半導体素子を用いることで電力損失及び雑音を効果的に低減することができる。さらに、無電極放電灯点灯装置のカプラ30では、構造的にカプラ30からの輻射雑音や、カプラ30と周囲筐体(例えば反射板など)との結合による雑音増大が問題となりやすいが、雑音源である半導体素子(ダイオードD1やスイッチング素子Q1〜Q3など)からの雑音を低減することでこれらの雑音についても低減することができる。
【0045】
ここに本実施形態では、直流電源回路1を構成する整流回路10のダイオード、ダイオードD1、及びスイッチング素子Q1、並びに、高周波電源回路2のスイッチング素子Q2,Q3のすべてをワイドバンドギャップ半導体素子とした場合について説明したが、少なくとも何れか1つがワイドバンドギャップ半導体素子であればよい。また、直流電源回路1は、米国277V仕様まで含めた100V〜277V対応のユニバーサル電源であってもよい。さらに、本実施形態では照明器具Aを例に説明したが、ワイドバンドギャップ半導体素子を用いた電源装置を利用するものであれば、他の器具であってもよい。
【0046】
(実施形態2)
図5は本実施形態の無電極放電灯点灯装置(電源装置)の一例を示す回路図であり、本点灯装置は、商用交流電源13から電力供給を受けて直流電圧を出力する直流電源回路1と、直流電源回路1を電源として動作し、直流電圧を高周波出力に変換する高周波電源回路2と、誘導コイル3及び無電極放電灯4とともに負荷回路を構成する共振回路6と、高周波電源回路2から無電極放電灯4への電力供給に異常があるときに、高周波電源回路2から誘導コイル3に与える高周波出力V2を無電極放電灯4が点灯しない大きさにする保護期間T1(図7参照)と無電極放電灯4が始動する大きさにする動作期間T4(図7参照)とを交互に繰り返すように高周波電源回路2を制御する保護回路15と、保護期間T1から動作期間T4に移行する際に誘導コイル3に与える高周波出力V2の立ち上がりを緩やかにするオーバーシュート防止回路5とを備える。なお、上記の直流電源回路1、高周波電源回路2及び共振回路6については実施形態1と同様であり、ここでは詳細な説明を省略する。
【0047】
保護回路15は、誘導コイル3の両端間に接続される抵抗R1とコンデンサC4の直列回路と、コンデンサC4の両端間に接続される抵抗R2と、第2電源12の出力端子間に接続される抵抗R3とコンデンサC5の直列回路と、コンデンサC5の両端間に接続される抵抗R4とを備える。さらに、第2電源12から電力供給されるコンデンサC5の両端間の電圧を基準電圧として、コンデンサC4の両端間の電圧が基準電圧を超えると出力がHレベルになるコンパレータCP1を備える。コンパレータCP1の出力端子と第2電源12の負極の出力端子との間には抵抗R5とコンデンサC6の直列回路が接続され、コンパレータCP1の出力がHレベルの期間にコンデンサC6を充電するようになっている。また、コンパレータCP1の出力がLレベルの期間にコンデンサC6に充電された電荷を放電するように、コンデンサC6と抵抗R5の接続点は抵抗R6とダイオードD2とを介してコンパレータCP1の出力端子に接続される。
【0048】
また、保護回路15は、高周波電源回路2のスイッチング素子Q3をオフにすることによって高周波電源回路2の動作を停止できるように、スイッチング素子Q3のゲートにダイオードD3を介して接続された高周波停止回路150を備える。高周波停止回路150のトリガ端子150aはコンデンサC6と抵抗R5の接続点に接続されており、コンデンサC6の両端間の電圧が高周波停止回路150の閾値電圧に達すると高周波電源回路2の動作を停止させるのである。
【0049】
オーバーシュート防止回路5は、第2電源12の出力端子間に接続される抵抗R7とコンデンサC7の直列回路と、コンデンサC7の両端間に接続される抵抗R8と、抵抗R7とコンデンサC7の接続点が非反転入力端子に接続されたオペアンプOP1とを備える。オペアンプOP1は、反転入力端子と出力端子との間に抵抗R9及びコンデンサC8が並列に接続されるとともに、反転入力端子と第2電源12の負極の出力端子との間に抵抗R10が接続されており、非反転入力端子の電位が高くなると出力端子の電位を高くするのである。
【0050】
また、オーバーシュート防止回路5は、高周波電源回路2の出力する高周波出力の周波数を決定する周波数設定回路50を備える。周波数設定回路50の制御端子50aは、ダイオードD4と抵抗R11の直列回路を介してオペアンプOP1の出力端子に接続されるとともに、抵抗R12を介して第2電源12の負極の出力端子に接続される。周波数設定回路50は、制御端子50aからダイオードD4及び抵抗R11を介してオペアンプOP1の出力端子に流れる電流I1が小さくなると高周波出力の周波数を低くするのである。
【0051】
さらに、オーバーシュート防止回路5は、コンデンサC7に充電された電荷を放電するための電荷放電回路51を備える。電荷放電回路51は、コンデンサC7の両端間に抵抗R13を介して接続されるMOSFETからなるスイッチング素子Q4と、周波数設定回路50の制御出力端子50bと第2電源12の負極の出力端子との間に接続されたダイオードD5と抵抗R14と抵抗R15の直列回路とを備え、抵抗R14と抵抗R15の接続点にスイッチング素子Q4のゲートが接続される構成を有し、周波数設定回路50の制御出力端子50bがHレベルの期間にスイッチング素子Q4をオンすることでコンデンサC7に充電された電荷を放電するのである。
【0052】
ここで、図6は高周波電源回路2の高周波出力の周波数特性を示しており、無電極放電灯4を点灯させるには、高周波電源回路2が周波数f1(>f0)の高周波出力を出力することによって、最低始動出力V24より大きい始動出力V25を誘導コイル3に与えて無電極放電灯4を始動させる。その後、高周波電源回路2が周波数f2(>f1)の高周波出力を出力することによって、最低維持出力V22より大きい維持出力V23を誘導コイル3に与えて無電極放電灯4を点灯維持する。高周波出力の周波数を周波数f3(>f2)にすると、誘導コイル3に与える高周波出力V2が最低維持出力V22よりも小さい予備出力V21になり、無電極放電灯4を始動することも点灯維持することもできなくなるので、誘導コイル3に予備出力V21を与えた状態であれば、高周波電源回路2の動作を停止させなくても構成部品にかかるストレスを低減することができる。
【0053】
ところで、無電極放電灯4を点灯させる際には、誘導コイル3への印加電圧が高いほど短時間で点灯させることができ、また電圧印加時間が長いほど比較的低い印加電圧で点灯させることができる。通常、誘導コイル3への印加電圧は部品耐圧等を超えない範囲で設定され、低温時や暗所などの始動が困難な場合には電圧印加時間を長くすることで無電極放電灯4を点灯させる。しかしながら、無電極放電灯4の始動時には高周波電源回路2での消費電力が2倍以上となることから、素子破壊を防止するためには電圧印加時間を短くする必要があり、その結果、十分な始動性が確保できない場合があった。
【0054】
このような課題に対して、始動困難時に高周波電源回路2を間欠的に動作させる方法がある。図7(a)はその一例を示したものであり、高周波電源回路2から誘導コイル3に与える高周波出力V2を無電極放電灯4が点灯しない大きさにする保護期間T1と、無電極放電灯4が始動する大きさにする動作期間T4とを交互に繰り返すことで始動性を高めている。しかしながら、この方法でも動作期間T4は限られた期間となっており、また間に保護期間T1を必要としているため、その分始動性は低下することになる。
【0055】
そこで、本実施形態では、誘導コイル3への電圧印加時間を長くするために、高周波電源回路2を構成するスイッチング素子Q2,Q3にワイドバンドギャップ半導体素子を用いている。つまり、上述のようにワイドバンドギャップ半導体素子は電力損失や発熱が小さく、さらに高温動作が可能であることから、図7(b)に示すように動作期間T4を従来例よりも長くすることができ、その結果、低温時や暗所などの始動が困難な場合でも始動性を向上することができる。
【0056】
また、無電極放電灯4の始動時には定常時の2倍以上の大電力が必要であることから、従来のSi系半導体素子を用いた場合には必要な電力を供給できない場合がある。そこで、本実施形態では、直流電源回路1を構成する整流回路10のダイオードやダイオードD1、スイッチング素子Q1にワイドバンドギャップ半導体素子を用いている。その結果、直流電源回路1における電力損失を低減することができて、始動時に必要な電力を供給することができる。つまり、始動性を向上させることができるのである。
【0057】
なお、上述のワイドバンドギャップ半導体素子は、GaN系半導体素子又はSiC系半導体素子の何れでもよいが、GaN系半導体素子の場合には高周波特性がさらに良くなることから高効率化を図ることができ、またSiC系半導体素子の場合にはオン抵抗が低く高耐圧な素子を実現できるため、より高い始動電圧を印加することができ、始動性がさらに向上するという利点がある。
【0058】
(実施形態3)
図8(a)(b)は本実施形態の無電極放電灯点灯装置(電源装置)を構成する高周波電源回路2の概略回路図であり、図8(a)に示す例では、スイッチング素子Q2,Q3のゲートと駆動回路20の出力端の間に可変抵抗VR1,VR2がそれぞれ接続されており、制御回路7からの信号によりスイッチング素子Q2,Q3のゲート抵抗を調整できるようになっている。また、図8(b)に示す例では、スイッチング素子Q2,Q3のゲートと駆動回路20の出力端の間に抵抗R20,R21がそれぞれ接続されており、さらに抵抗R20と並列にスイッチ22と抵抗R22の直列回路が接続されるとともに、抵抗R21と並列にスイッチ23と抵抗R23の直列回路が接続されており、制御回路7からの信号によりスイッチング素子Q2,Q3のゲート抵抗を調整できるようになっている。なお、それ以外の構成については実施形態1と同様であるから、必要がある場合には図1を参照しながら説明する。
【0059】
ここで、無電極放電灯4を光源とする場合には予熱モードがないため、直流電源回路1を始動させてから無電極放電灯4に始動電圧を印加するまでの間は軽負荷となり、直流電源回路1の出力電圧がオーバーシュートする場合がある。そのため、無電極放電灯4に始動電圧を印加するまでの間は高周波電源回路2を微弱発振させて電力消費を行うことになる。しかしながら、本実施形態においても、高周波電源回路2を構成するスイッチング素子Q2,Q3にワイドバンドギャップ半導体素子を用いているため、高周波電源回路2を微弱発振させても電力消費が不十分となり、上記のオーバーシュートが防げない場合がある。
【0060】
そこで、本実施形態では、上述のようにスイッチング素子Q2,Q3のゲート抵抗を調整できるようになっており、具体的には、直流電源回路1を始動させてから無電極放電灯4に始動電圧を印加するまでの間は、点灯時(定常時)に比べてゲート抵抗を増大させることで電力消費量を一時的に増加させている。その結果、直流電源回路1の出力電圧V1がオーバーシュートするのを抑えることができる。なお、図9はその一例を示すタイムチャートであり、始動電圧を印加するまでの微弱発振期間T2では、可変抵抗VR1,VR2の抵抗値を増加させることでスイッチング素子Q2,Q3のゲート抵抗を増大させている。
【0061】
ここに本実施形態では、微弱発振期間T2において定常時よりもスイッチング素子Q2,Q3のゲート抵抗を増大させることで直流電源回路1がオーバーシュートするのを抑えているが、例えば図9(e)に示すように微弱発振期間T2において定常時よりもスイッチング素子Q2,Q3のゲート電圧V3を低減させてもよく、同様に直流電源回路1のオーバーシュートを抑えることができる。
【0062】
(実施形態4)
図10は本実施形態の無電極放電灯点灯装置(電源装置)の一例を示す回路図であり、本点灯装置は、商用交流電源13から出力される交流電圧を直流電圧に変換する直流電源回路1と、直流電源回路1の出力端に接続された高周波電源回路2と、高周波電源回路2の出力端に一次巻線LM1が接続されたトランス16と、トランス16の二次巻線LM2に接続された共振回路17と、共振回路17の出力端に接続され、無電極放電灯4に近接配置される誘導コイル3とを備える。
【0063】
直流電源回路1は、商用交流電源13から出力される交流電圧を全波整流することで直流電圧を得る整流回路10と、整流された電圧を平滑する平滑コンデンサC0とを備える。
【0064】
高周波電源回路2は、4つのスイッチング素子が直並列に接続された所謂フルブリッジ型のインバータ回路であり、直流電源回路1の出力端に互いに直列接続されてなるスイッチング素子Q1,Q2と、同じく直流電源回路1の出力端に互いに直列接続されてなるスイッチング素子Q3,Q4と、各スイッチング素子Q1〜Q4をオン・オフ制御する制御回路20とを備える。制御回路20は、所定のデューティ比の矩形波信号を出力する発振回路201と、発振回路201から出力される矩形波信号に基づいて各スイッチング素子Q1〜Q4をオン・オフさせる駆動回路202とを備える。ここに、上記のスイッチング素子Q1〜Q4は、例えばFET等のトランジスタからなる。
【0065】
トランス16は、一次巻線LM1の一端がスイッチング素子Q1,Q2の接続点に接続されるとともに、一次巻線LM1の他端がスイッチング素子Q3,Q4の接続点に接続され、また二次巻線LM2の一端が高周波電源回路2のグランド電位側の端子と同一のラインに接続されるとともに、二次巻線LM2の他端が共振回路17に接続されている。
【0066】
共振回路17は、インバータ回路2の出力を共振動作によって数kV〜数十kVの高周波高電圧に変換し、始動時にその高電圧を誘導コイル3に供給するもので、トランス16の二次巻線LM2の他端と誘導コイル3の他端との間に直列接続されたコイルL1及びコンデンサC1と、コイルL1とコンデンサC1の接続点に一端が接続されるとともに他端がグランド電位に接続されたコンデンサC2とを備える。
【0067】
ここで、上記の高周波電源回路2では、4つのスイッチング素子Q1〜Q4を用いているため、実施形態1〜3で説明した高周波電圧回路2よりも電力損失増大、大型化、及び雑音増大の問題がより顕著となる。したがって、高周波電源回路2を構成するスイッチング素子Q1〜Q4にワイドバンドギャップ半導体素子を用いた場合には、実施形態1〜3に比べて、より効果的に高周波電源回路2の低損失化、低雑音化、装置の小型化を図ることができる。また、直流電源回路1を構成する整流回路10のダイオードや、図示しない操作スイッチの操作に応じてオン・オフされるスイッチ18についてもワイドバンドギャップ半導体素子を用いているため、直流電源回路1の低損失化及び低雑音化を図ることもできる。
【0068】
ここに本実施形態では、図10に示すように一次巻線LM1と二次巻線LM2とが高周波電源回路2のグランド電位側で電気的に接続されたトランス16を備えた無電極放電灯点灯装置を例に説明したが、例えば一次巻線と二次巻線とが電気的に絶縁されたトランスを備えた非接触給電装置(電源装置)であってもよい。この場合も、高周波特性が良好なワイドバンドギャップ半導体素子を用いることで電力損失及び雑音を効果的に低減することができる。また、非接触給電装置のカプラ(図示せず)では、構造的にカプラからの輻射雑音や、カプラと周囲筐体との結合による雑音増大が問題となりやすいが、雑音源である半導体素子からの雑音を低減することでこれらの雑音についても低減することができる。
【0069】
(実施形態5)
図11は本実施形態の非接触給電装置(電源装置)の一例を示す回路図であり、本給電装置は、商用交流電源13から電力供給を受けて直流電圧を出力する直流電源回路1と、直流電源回路1の出力端に接続された高周波電源回路2と、高周波電源回路2の出力端に一次巻線LM1が接続されたトランス16と、トランス16の二次巻線LM2に接続された整流回路19の出力端に接続された複数(図11では3つ)の発光ダイオードLD1〜LD3とを備える。つまり、本実施形態では、電源装置が非接触給電装置である点と、光源が発光ダイオードLD1〜LD3である点で上記の実施形態1〜4と相違している。なお、高周波電源回路2については実施形態4と同様であり、ここでは詳細な説明を省略する。また、図11では、高周波電源回路2の制御回路(駆動回路)については図示を省略している。
【0070】
直流電源回路1は、商用交流電源13の交流出力を整流する整流回路10と、スイッチング素子Q5、インダクタL1、ダイオードD1、及び平滑コンデンサC1と、スイッチング素子Q5を駆動する駆動回路(図示せず)とを具備した降圧チョッパ回路からなる。
【0071】
この非接触給電装置では、実施形態4と同様に、高周波電源回路2に4つのスイッチング素子Q1〜Q4を用いているため、実施形態1〜3で説明した高周波電圧回路2よりも電力損失増大、大型化、及び雑音増大の問題がより顕著となる。したがって、高周波電源回路2を構成するスイッチング素子Q1〜Q4にワイドバンドギャップ半導体素子を用いた場合には、実施形態1〜3に比べて、より効果的に高周波電源回路2の低損失化、低雑音化、装置の小型化を図ることができる。また、直流電源回路1を構成する整流回路10のダイオードやダイオードD1、スイッチング素子Q5についてもワイドバンドギャップ半導体素子を用いているため、直流電源回路1の低損失化及び低雑音化を図ることもできる。さらに、発光ダイオードLD1〜LD3に直流電圧を供給する整流回路19を構成するダイオードについてもワイドバンドギャップ半導体素子を用いているため、整流回路19の低損失化及び低雑音化を図ることもできる。
【0072】
ここで、本実施形態のような非接触給電装置では、給電側と受電側とが分離しているため、設置の自由度が高く様々な場所に置くことができる。したがって、この非接触給電装置が照明器具を構成する筐体に近接して配置される場合もあり、この場合筐体と結合することで雑音が大きくなる可能性がある。これに対して本実施形態では、上述のようにスイッチング素子Q1〜Q5やダイオードD1などの半導体素子にワイドバンドギャップ半導体素子を用いているため、雑音源である半導体素子の雑音レベルを低減することができ、その結果、筐体と結合することで増大する雑音についても抑えることができる。
【0073】
また、非接触給電装置では、給電側と分離できる受電側は、その特徴を活かせるようにデザイン自由度を高くできる部品構成が望まれている。本実施形態では、受電側である整流回路19のダイオードにワイドバンドギャップ半導体素子を用いることで、抵抗などの発熱部品に近接する形でダイオードを配置できることから小型化することが可能であり、また上述のように照明器具を構成する筐体に近接して配置しても雑音を抑えられることから、デザイン自由度を高めることもできる。
【0074】
さらに、実施形態1〜5に示した無電極放電灯点灯装置又は非接触給電装置を用いた場合には、電力損失及び雑音を低減させた小型の照明器具を提供することができる。
【0075】
ここに本実施形態では、高周波電源回路2を4つのスイッチング素子Q1〜Q4で構成しているが、実施形態1〜3のように2つのスイッチング素子で構成してもいいし、また1つのスイッチング素子で構成してもよく、上記のスイッチング素子がワイドバンドギャップ半導体素子であればよい。また、実施形態1〜5では、器具が照明器具の場合について説明したが、器具は照明器具に限定されるものではなく、ワイドバンドギャップ半導体素子を用いた電源装置を用いるものであれば他のものでもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 直流電源回路(チョッパ回路)
2 高周波電源回路
30 誘導コイル(誘導性負荷)
31 無電極放電灯(誘導性負荷)
Q1,Q2 スイッチング素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導性負荷と、前記誘導性負荷に高周波電力を供給する高周波電源回路を含む回路部とを備え、前記回路部を構成する半導体素子のうち少なくとも1つがワイドバンドギャップ半導体からなることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記回路部は、前記高周波電源回路に直流電圧を供給するチョッパ回路を有し、前記チョッパ回路を構成するダイオード又はスイッチング素子がワイドバンドギャップ半導体からなることを特徴とする請求項1記載の電源装置。
【請求項3】
前記高周波電源回路は、ワイドバンドギャップ半導体からなるスイッチング素子を有し、前記スイッチング素子を所定周波数以上の周波数でオン・オフすることで前記誘導性負荷に所望の高周波電力を供給することを特徴とする請求項1又は2記載の電源装置。
【請求項4】
前記回路部は、前記高周波電源回路に直流電圧を供給するチョッパ回路を有し、前記チョッパ回路を始動させてから前記高周波電源回路が前記誘導性負荷に始動電圧を供給するまでの間は前記高周波電源回路を微弱発振させており、前記高周波電源回路を微弱発振させている間は定常時よりも前記高周波電源回路を構成する前記スイッチング素子のゲート電圧を低減させるか又はゲート抵抗を増大させていることを特徴とする請求項3記載の電源装置。
【請求項5】
前記誘導性負荷が発光部を有していることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の電源装置。
【請求項6】
前記誘導性負荷が、無電極放電灯と、前記無電極放電灯に近接配置され、前記高周波電源回路から供給される高周波電力により前記無電極放電灯に誘導磁界を誘起させる誘導コイルとで構成されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の電源装置。
【請求項7】
前記誘導性負荷が、一次側巻線を具備する給電側と、二次側巻線を具備し前記給電側から非接触で給電される受電側とが分離可能な絶縁トランスを有していることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の電源装置。
【請求項8】
前記絶縁トランスの二次側巻線には、ワイドバンドギャップ半導体からなるダイオード又はスイッチング素子が接続されていることを特徴とする請求項7記載の電源装置。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1項に記載の電源装置を備えていることを特徴とする器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−50247(P2012−50247A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190028(P2010−190028)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】