説明

電源装置

【課題】電池の劣化抑制や電源装置の小型化を図りつつ、キャパシタを短時間で使用可能な状態に充電することが可能となる電源装置の提供。
【解決手段】電源装置2は、電池1と並列に接続されるキャパシタ10と、キャパシタ10と直列に接続され、半導体スイッチング素子から成る2つのスイッチング回路31,32と、スイッチング回路31に並列に接続され、半導体スイッチング素子から成るプリチャージスイッチング回路33と、キャパシタ10の電圧が電池1の電圧よりも低いときに、プリチャージスイッチング回路33とスイッチング回路32とを制御して、キャパシタのプリチャージ電流制限を行う制御部14と、を備える。その結果、プリチャージスイッチング回路33とスイッチング回路32とで電流制限時の損失が分担される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャパシタと電池とを備えるハイブリッド構成の電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電池技術の進歩によって、ハイブリッド車の普及が急速に進んでいる。このようなハイブリッド車は電池によってモータ等を駆動したり、減速時のエネルギーを電池に回生したりする電源システムを採用している。このような電源システムにおいては、新型電池の出現,小型軽量化および高出力密度化によってシール鉛バッテリーからNi水素電池、さらにはLiイオン電池へと発展してきた。いずれの電池においてもエネルギー密度を高めるため、電池活物質の開発や、高容量かつ高出力の電池構造の開発が行われ、出力密度が高く、より使用時間の長い電源を実現する努力が払われている。
【0003】
しかしながら、自動車分野において、より一層の燃費改善への努力がなされているが、今後も二酸化炭素などの排出物削減のために既存の自動車にも新しい燃費改善機能を追加する傾向が予想される。そのため、より低損失の電源、すなわち、内部抵抗の小さい電源を必要とする方向に向かうことになる。
【0004】
前記のような低抵抗の電源を二次電池において実現する場合は、その最大出力電流の小ささが問題になる。そのため、出力電流の制限を必要としない大容量電気化学キャパシタの必要性が高まっていて、その一例として、電気二重層キャパシタ(EDLC)が一般的に知られている。電気二重層キャパシタは、平滑用などに使用されるようなコンデンサと電池との中間的な特性を示す。また、電気二重層キャパシタと電池の中間的な特性を示すより高エネルギー密度のキャパシタとして、リチウムイオンをドープしたハイブリッドキャパシタ(HC)があげられる。
【0005】
これらキャパシタに関しては、エネルギー密度は小さいが出力密度が電池よりも高いことから、瞬間的な出力が要求されるアイドリングストップシステムに適用した例が知られる。ただし、一般的にキャパシタは自己放電が大きいため、鉛蓄電池等の電池とのハイブリッド構成で使用される。鉛蓄電池とキャパシタとを接続するスイッチには、機械式のリレーやMOSFET(metal oxide field-effect transistor)等の半導体スイッチング素子が使用される。
【0006】
ところで、キャパシタは自己放電が大きいため、例えば長期保管後の再スタート時には、鉛蓄電池とキャパシタとの間に大きな電位差が生じやすい。このように電位差がある状態で鉛蓄電池とキャパシタとの間のスイッチをオンにすると、キャパシタの内部抵抗が小さいため、鉛蓄電池から過大な電流が流れることになり、鉛蓄電池の寿命劣化につながる。
【0007】
このような過大な電流が流れるのを防止する方法として、スイッチと並列に制限抵抗とスイッチとを設けて、制限抵抗を介してキャパシタへ電流を流すことにより充電電流を制限する方法(プリチャージ)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
また、制限抵抗の代わりに半導体スイッチング素子をスイッチと並列に設けて、その半導体スイッチング素子を用いてプリチャージ機能を実現する構成も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−312156号公報
【特許文献2】特開2007−143221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、数百〜数千Fの大容量キャパシタを、制限抵抗を介してプリチャージすると、CRの時定数によって充電時間が長くなり過ぎるという問題が生じる。なお、この充電時間を短くするためには制限抵抗の抵抗値を小さくする必要があるが、制限抵抗値を小さくしてより大きな電流を流す場合には、電流値に合わせて制限抵抗の定格電力値を大きくせざるを得ない。そのため、制限抵抗の大型化および高コスト化を招き、さらには、制限抵抗の発熱を処理する冷却構造も追加する必要が生じる。
【0011】
一方、制限抵抗の代わりに半導体スイッチング素子のみでプリチャージを行う構成の場合には、半導体スイッチング素子の定格容量を超えないように、半導体スイッチング素子の制御電圧を制御する必要があった。そのため、数十から数百Aの大電流を流すことは難しく、プリチャージ時間が長くなってしまう。また、半導体スイッチング素子の温度を監視するなどの冷却関係を、検討する必要が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明による電源装置は、電池と並列に接続されるキャパシタと、キャパシタと直列に接続された2つのスイッチング回路と、2つのスイッチング回路の一方に並列に接続されたプリチャージスイッチング回路と、キャパシタの電圧が電池の電圧よりも低いときに、プリチャージスイッチング回路と2つのスイッチング回路の少なくとも1つとを制御してキャパシタのプリチャージ電流制限を行う制御部と、を備えたことを特徴とする。
請求項9の発明による電源装置は、電池と並列に接続されるキャパシタと、キャパシタと直列に接続され、1つの半導体スイッチング素子または並列接続された複数の半導体スイッチング素子から成る2つのスイッチング回路と、キャパシタの電圧が電池の電圧よりも低いときに、2つのスイッチング回路で電流制限時の損失を分担するように各スイッチング回路の半導体スイッチング素子を制御して、キャパシタのプリチャージ電流制限を行う制御部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電池の劣化抑制や電源装置の小型化を図りつつ、キャパシタを短時間で使用可能な状態に充電することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態による電源装置を、回転電機の駆動に用いた場合の概略ブロック図である。
【図2】プリチャージ時の充電電流経路を示す図である。
【図3】制御手順を示すフローチャートである。
【図4】充電遮断用MOSFET31および放電遮断用MOSFET32を、それぞれ、並列接続された複数のMOSFETで構成した場合の図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態による電源装置を説明する図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態による電源装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
―第1の実施の形態―
図1は、本発明の第1の実施の形態による電源装置を、回転電機の駆動に用いた場合の概略ブロック図である。図1において、電源装置2は、リレー5a,5bを介してインバータ装置4に接続される。回転電機3は、インバータ装置4により回転駆動される。回転電機3は、車両のアイドリングストップシステムにおけるエンジン起動用のスタータモータやモータジェネレータを構成している。
【0016】
電源装置2は、鉛蓄電池などの二次電池1と並列接続されるキャパシタ10、充電遮断用MOSFET31、放電遮断用MOSFET32、プリチャージ用MOSFET33、ゲートドライバ12、制御部14、電圧検出部16、温度検出部18、電流検出部20を備えている。
【0017】
本実施の形態では、キャパシタ10として電気二重層キャパシタを用いているが、電気二重層キャパシタと同様の保護制御が必要とされる大容量キャパシタであれば、本発明は適用可能である。キャパシタ10は、複数のセルから成る。本実施の形態では、各MOSFET31〜33にNチャネルMOSFETを使用することでより低抵抗な構成としているが、もちろん各MOSFETの全てもしくはいずれか1つにPチャネルMOSFETを使用しても構わないし、同様の機能を実現できるものであれば適用可能である。
【0018】
また、放電遮断用MOSFET32,充電遮断用MOSFET31およびプリチャージ用MOSFET33にNチャネルMOSFETを使用する場合、MOSFETのゲートを駆動するゲートドライバ12には、昇圧型ゲートドライバが用いられる。昇圧型ゲートドライバは、チャージポンプ型等NチャネルMOSFETのゲート駆動が可能なものであればどのようなものでも構わない。
【0019】
制御部14は電源装置全体の制御を行うものであり、専用のICや汎用マイコンが用いられるが、同様の機能が実現できるものであればこれらに限らない。制御部14は、ゲートドライバ12を制御する制御機能の他に、各部電圧の監視機能、キャパシタ10の各セル電圧を調整するバランススイッチ機能、上位への通信機能等を備える。
【0020】
制御部14が監視する各部電圧としては、二次電池1の総電圧、電圧検出部16によって検出されるキャパシタ10の各セル電圧や総電圧、電流検出部20の出力,温度検出部18の出力などがある。各部からの出力は、制御部14に設けられたA/DコンバータによりA/D変換され取り込まれる。また、上位への通信機能としては、CAN(Controller Area Network)、I2C(Inter-Integrated Circuit)、SPI(System Packet Interface)など、必要なものであればどのようなものでも構わない。本実施の形態では、回転電機3を起動する際の起動信号(IGN信号)が、通信機能を介して上位から入力される。
【0021】
本実施の形態では、電流検出部20として、ホール素子により電流検出を行うものが用いられるが、放電遮断用MOSFET32から充電遮断用MOSFET31までの両端電圧の差動アンプ検出や、シャント抵抗の電圧測定や、カレントトランスの電圧測定などによって電流検出するものでも良い。また、検出した電流値は、制御部14に内蔵されたA/Dコンバータにより取得することを想定しているが、同様の機能が実現できるものであればどのようなものでも構わない。
【0022】
温度検出部18は、NTCサーミスタもしくはPTCサーミスタと抵抗を直列とした分圧による検出や、温度ICによる検出などが考えられるが、これも同様の機能が実現できるものであれば構わない。温度検出の対象としては、キャパシタセル、MOSFETが実装されている基板、筐体などが考えられるが、必要に応じて追加しても構わない。なお、図1の温度検出部18は、MOSFETが実装されている基板の温度を検出するものである。温度検出値は、制御部14に内蔵されたA/Dコンバータにより取得することを想定しているが、同様の機能が実現できるものであればどのようなものでも構わない。
【0023】
電力経路においては、キャパシタ10から二次電池1への+側の供給経路において、キャパシタ10と直列に放電遮断用MOSFET32と充電遮断用MOSFET31が設けられている。充電遮断用MOSFET31には、プリチャージ用MOSFET33が並列に接続されている。なお、必要に応じて、放電遮断用MOSFET32と充電遮断用MOSFET31およびプリチャージ用MOSFET33との、どちらかをグランド側に移動させても良いし、+側やグランド側にMOSFETを追加で加えても良い。
【0024】
放電遮断用MOSFET32は、ボディダイオード321の順方向がキャパシタ10の放電電流方向と逆向きとなるように構成されている。充電遮断用MOSFET31とプリチャージ用MOSFET33は、ボディダイオード311,331の順方向とキャパシタ10への充電電流方向とが逆向きとなるように構成されている。
【0025】
充電遮断用MOSFET31は逆向きに接続されたボディダイオード311を有しているため、充電遮断用MOSFET31をオフしても、キャパシタ10からの放電電流はボディダイオード311を順方向に流れることができ、放電電流は遮断されない。放電電流を遮断するスイッチとしては、放電遮断用MOSFET32が直列に設けられている。放電遮断用MOSFET32をオフすると、放電電流が遮断されることになる。ただし、ボディダイオード321の順方向は充電電流方向と同方向であるため、放電遮断用MOSFET32をオフしても充電電流はボディダイオード321を流れることができる。このように、2つのMOSFET31,32を逆向きに直列接続することで、充電電流および放電電流の両方に対して遮断・非遮断動作を行なうことができる。
【0026】
なお、図1に示す例では、充電遮断用MOSFET31を電源ライン側(+側)に配置し、放電遮断用MOSFET32をキャパシタ1側に配置したが、逆に配置しても構わない。
【0027】
通常状態、すなわち二次電池1とキャパシタ10との間に電位差がなくプリチャージが行なわれない状態においては、充電遮断用MOSFET31、放電遮断用MOSFET32およびプリチャージ用MOSFET33は、全てオン状態とされている。IGN起動時には回転電機3に大電流が流れるため、充電遮断用MOSFET31および放電遮断用MOSFET32には大電流に対応したMOSFETが用いられる。
【0028】
次に、本実施形態における制御方法について述べる。図2はプリチャージ時の充電電流経路を示す図である。図2では、制御方法の説明に必要なキャパシタ10、二次電池1およびMOSFET31〜33を示した。図3は制御手順を示すフローチャートであり、制御プログラムは制御部14において実行される。
【0029】
制御部14に上位から起動信号IGNが入力されると、ステップS100に進む。ステップS100では、制御部14は二次電池1の総電圧とキャパシタ10の総電圧とを比較し、それらの電位差が予め設定された電位差閾値以上か否かを判定する。すなわち、キャパシタ10の電圧が二次電池1の電圧よりも低く、プリチャージが必要か否かを判定する。電位差閾値としては、放電遮断用MOSFET32のボディダイオード321の順方向電圧(例えば、0.5V)が考えられるが、必ずしもこれに限らない。
【0030】
ステップS100で二次電池1とキャパシタ10との電位差が電位差閾値よりも小さいと判定されると、ステップS120へ進み、各MOSFET31〜33をオン状態、すなわち、キャパシタ1の充放電を自由に行なうことができる通常状態に設定する。その後、ステップS130へ進んで、電源装置としての通常の動作がスタートする。
【0031】
一方、ステップS100で電位差閾値以上と判定されると、ステップS115へ進んでプリチャージ動作のための処理が実行される。ステップS115では、プリチャージ動作を行なうために、制御部14はゲートドライバ12に指令して、充電遮断用MOSFET31と放電遮断用MOSFET32をオフし、プリチャージ用MOSFET33についてはオン状態のままとする。このとき、充電電流は破線で示すような経路でキャパシタ10に流れ込む。
【0032】
オフ状態の放電遮断用MOSFET32においては、充電電流はボディダイオード321のみを通過する。一方、オフ状態の充電遮断用MOSFET31については、充電電流は通過することができず、オン状態のプリチャージ用MOSFET33を経由してキャパシタ10に流れ込む。このようにして、キャパシタ10の充電が行なわれる。なお、プリチャージ用MOSFET33は、通常必要なゲート電圧でオン状態を保持するように制御されるが、ゲート電圧を調整してプリチャージ用MOSFET33のオン抵抗を調整することにより、充電電流値をより最適な値に調整するようにしても良い。
【0033】
例えば、プリチャージ時の素子温度が高くなり過ぎる場合には、ゲート電圧を下げて充電電流値を下げるようにする。また、プリチャージ用MOSFET33のゲートにPWM(Pulse Width Modulation)パルスを印加して、PWM制御により充電電流量を調整しても良い。
【0034】
従来は、プリチャージ時の電流制限のために、制限抵抗またはプリチャージ用の半導体スイッチング素子(プリチャージ用MOSFET33に相当する)のみで損失を負担しなければならなかった。また、制限抵抗やプリチャージ用半導体スイッチング素子の許容損失が小さいことから、数十から数百Aの大電流を流すことは難しかった。
【0035】
しかし、本実施の形態では、プリチャージ時の電流制限における損失を、放電遮断用MOSFET32のボディダイオード321による損失と、プリチャージ用MOSFET33のオン抵抗による損失とで分担することになり、放熱が2つのMOSFET31,32に分散され放熱性能の向上を図ることができる。さらに、キャパシタ10には内部抵抗があるため、この内部抵抗による損失によっても分担されることになる。
【0036】
図2に示した構成では、プリチャージで大電流を流した場合の各MOSFET32,33およびキャパシタ10の損失W(32)、W(33)、W(20)の大きさは、W(32)>W(33) ≧W(20)の順となり、もともと大電流通電用として放熱性に優れた設計となっている放電遮断用MOSFET32に損失を分散していることに特長がある。
【0037】
なお、上述した実施の形態では、キャパシタ10に電気二重層キャパシタを適用した場合を例に説明したが、キャパシタ10にリチウムイオンを負極にドープしたハイブリッドキャパシタを適用した場合には、プリチャージ時にプリチャージ用MOSFET33のゲートへの電圧印加をステップ的に急激に行うようにする。ハイブリッドキャパシタの場合、充電開始の際の電流をステップ的に急激に立ち上げると、端子電圧が開放電圧に対して大きく低下する現象が見られる。すなわち、電流をステップ的に立ち上げることで、内部抵抗を擬似的に増加させることができる。
【0038】
この擬似的な内部抵抗の増加は、プリチャージ動作時間程度であれば継続されることが分かっている。そこで、キャパシタ10にハイブリッドキャパシタを用いる場合には、プリチャージ用MOSFET33のゲートへの電圧印加をステップ的に急激に行って内部抵抗を擬似的に増加させ、キャパシタ10の負担する損失を大きくすることができる。その結果、損失に関する放電遮断用MOSFET32とプリチャージ用MOSFET33の負担分が小さくなり、二次電池1とキャパシタ10との間の電位差がより大きくなってプリチャージ電流がより大きい場合にも、容易に対応することが可能となる。
【0039】
図1,2に示す例では、充電遮断用MOSFET31、放電遮断用MOSFET32、プリチャージ用MOSFET33に1個のMOSFETを用いた。しかし、図4に示すように、通常使用時に大電流を流すことを想定している充電遮断用MOSFET31および放電遮断用MOSFET32を、それぞれ、並列接続された複数のMOSFETで構成するようにしても良い。もちろん、プリチャージ用MOSFET33についても、並列接続された複数のMOSFETで構成するようにしても良い。また、並列接続となっている充電遮断用MOSFET31とプリチャージ用MOSFET33を一体化し、その一体化したものとして、ゲートを別々に駆動できるワンチップ品を使用しても構わない。
【0040】
上述したように、本実施の形態では、二次電池1と並列に接続されるキャパシタ10を備える電源装置において、キャパシタ10と直列に接続された充電遮断用MOSFET31および放電遮断用MOSFET32と、充電遮断用MOSFET31に並列接続されるプリチャージ用MOSFET33とを備え、キャパシタ10の電圧が二次電池1の電圧よりも低いときに、プリチャージ用MOSFET33と放電遮断用MOSFET32とで電流制限時の損失を分担するようにした。
【0041】
このように、個々のMOSFETの負担を減少させることができるため、放熱性が向上するとともに、プリチャージ時に大電流を継続して流すことが可能となる。その結果、プリチャージ電流値を二次電池1にとって負担とならない値に制限して二次電池1の温度上昇の抑制や劣化抑制を図りつつ、キャパシタ10を短時間で使用可能な状態に充電することが可能となる。
【0042】
なお、MOSFET31,32はキャパシタ10の電力経路の開閉を行うスイッチング回路の機能を有するものであり、そのMOSFET32のボディダイオード321にのみにプリチャージ時の電流を流すことで、MOSFET32は損失を分担する素子としても機能している。
【0043】
また、スイッチング回路としてのMOSFET31,32のそれぞれを、並列接続された複数のMOSFETで構成することで、大電流に容易に対応することができ、かつ、MOSFET32における損失をより多数の素子に分散させることができる。なお、プリチャージ用MOSFET33についても並列接続された複数のMOSFETで構成することにより、損失をより分散させることができ、定格容量の小さなMOSFETを利用することができる。また、プリチャージ用MOSFET33を単にオン制御するかわりに、ゲート電圧を調整したり、PWM制御したりしてプリチャージ電流値を所望の値に調整することも可能となる。
【0044】
―第2の実施の形態―
図5は、本発明の第2の実施の形態による電源装置を説明する図であり、第1の実施の形態における図2に対応するものである。なお、その他の構成は第1の実施の形態と同様であり、説明を省略する。第2の実施の形態では、図5に示すようにキャパシタ10から二次電池1への+側の供給経路において、キャパシタ10と直列に放電遮断用MOSFET32と充電遮断用MOSFET31が設けられている。なお、第1の実施の形態の場合と同様に、必要に応じてMOSFET31,32のどちらかをグランド側に移動させても良いし、+側やグランド側にMOSFETを追加で加えても良い。
【0045】
通常時は、MOSFET31,32の両方をオン状態とする。プリチャージ時には、図5に示すように放電遮断用MOSFET32をオフするとともに、充電遮断用MOSFET31のゲートをPWM制御する。その結果、充電電流は、破線で示すように、放電遮断用MOSFET32のボディダイオード321および充電遮断用MOSFET31を通って、キャパシタ10に流れ込む。充電遮断用MOSFET31におけるPWM制御は、二次電池1とキャパシタ10との電位差に応じて調整される。
【0046】
第2の実施の形態では、大電流に対応したMOSFET31,32およびキャパシタ10の内部抵抗で損失を分担することになり、放熱性能の向上が実現できる。また、プリチャージで大電流を流した場合の各MOSFET31,32およびキャパシタ10の損失W(31)、W(32)、W(20)の大きさは、W(32)≧W(31) >W(20)の順となり、もともと大電流対応で放熱性に優れた設計となっている放電遮断用MOSFET32および充電遮断用MOSFET31に、損失を分散するようにしていることも特長である。
【0047】
上述したように、第2の実施の形態では、二次電池1と並列に接続されるキャパシタ10を備える電源装置において、キャパシタ10と直列に接続された充電遮断用MOSFET31および放電遮断用MOSFET32をスイッチング回路として備え、キャパシタ10の電圧が二次電池1の電圧よりも低いときに、充電遮断用MOSFET31および放電遮断用MOSFET32で電流制限時の損失を分担するようにした。
【0048】
このように、個々のMOSFETの負担を減少させることができるため、放熱性が向上するとともに、プリチャージ時に大電流を継続して流すことが可能となる。その結果、プリチャージ電流値を二次電池1にとって負担とならない値に制限して二次電池1の温度上昇の抑制や劣化抑制を図りつつ、キャパシタ10を短時間で使用可能な状態に充電することが可能となる。さらに、第1の実施の形態と比較した場合、プリチャージ用MOSFET33が省略されるため、低コスト化および小型化をより図ることができる。
【0049】
なお、充電遮断用MOSFET31にプリチャージ用MOSFET33を並列接続させて、3つのMOSFETで損失を分担するようにしても良い。その場合、プリチャージ用MOSFET33を単にオン制御するだけでなく、ゲート電圧を調整するような制御を行っても良いし、PWM制御を行っても良い。また、第1の実施の形態で記載したように、MOSFET31〜33を、並列接続された複数のMOSFETで構成しても良い。
【0050】
―第3の実施の形態―
図6は、本発明の第3の実施の形態による電源装置を説明する図であり、第1の実施の形態における図2に対応するものである。上述した第1の実施の形態では、半導体スイッチング素子としてMOSFETを使用したが、本実施の形態では、キャパシタ10として高電圧のキャパシタモジュールを使用し、MOSFETに代えてIGBT(insulated gate bipolar transistor)モジュールを使用するようにした。
【0051】
図6に示すように、キャパシタ10から二次電池1への+側の供給経路において、キャパシタ10と直列に放電遮断用IGBT42および充電遮断用IGBT41が設けられる。充電遮断用IGBT41には、プリチャージ用IGBT43が並列に接続されている。すなわち、図2示すMOSFET31〜33を、IGBT41〜43に置き換えたものである。
【0052】
なお、必要に応じて、放電遮断用IGBT42と充電遮断用IGBT41およびプリチャージ用IGBT43との、どちらかをグランド側に移動させても良いし、+側やグランド側にIGBTを追加で加えても良い。また、高電圧のキャパシタ10には、ハイブリッドキャパシタが適用される。電気二重層キャパシタよりも最大セル電圧の高いハイブリッドキャパシタを適用することで、直列セル数を低下させることが可能となる。
【0053】
放電遮断用IGBT42は、ボディダイオードがキャパシタ10の放電電流方向と逆向きに接続される構成となっている。一方、充電遮断用IGBT41およびプリチャージ用IGBT33は、ボディダイオードがキャパシタ10への充電電流方向と逆向きに接続される構成となっている。なお、本実施の形態においては高電圧であるため、プリチャージ用IGBT31の代わりにプリチャージ用リレーを用いても構わない。
【0054】
次に、第3の実施の形態における制御方法について説明する。通常状態においては、充電遮断用IGBT41,放電遮断用IGBT42およびプリチャージ用IGBT43の3つともオン状態となっている。外部からの起動信号INGが入力された後、キャパシタ10の総電圧と二次電池1の電圧を比較し、キャパシタ10の電圧が二次電池1の電圧よりも低い場合にはプリチャージ動作を行う。この際の判定基準である電位差閾値は、放電遮断用IGBT42のボディダイオードの順方向電圧(例えば、0.5V)以上と設定するが、必要に応じて変更しても構わない。
【0055】
プリチャージ時のキャパシタ10への充電電流経路は図6の破線で示す通りであり、充電電流は放電遮断用IGBT42のボディダイオードを通過した後、プリチャージ用IGBT43を通過してキャパシタ10に流れ込む。前述したように、ハイブリッドキャパシタは、ステップ的に電流を制御することで内部抵抗を擬似的に増加させることができる。したがって、プリチャージ用IGBT43をステップ的に駆動させることで、内部抵抗の擬似的な増加によりキャパシタ10の負担する損失分を大きくすることができる。その結果、二次電池1とキャパシタ10との間の電位差が大きい場合でも、十分対応することが可能となる。
【0056】
上述した例では、プリチャージ用IGBT43には通常必要なゲート電圧をステップ的に印加されるが、ゲート電圧を調整することでプリチャージ用IGBT43のオン抵抗を調整したり、プリチャージ用IGBT43のゲートにPWMパルスを印加したりすることで、プリチャージ電流をPWM制御により調整するようにしても良い。
【0057】
従来は、プリチャージ時の電流制限のために、制限抵抗か、半導体スイッチング素子(MOSFET)のみで損失を負担しなければならなかった。さらに、制限抵抗やスイッチング素子の許容損失が小さいことから、数十から数百Aの大電流を流すことは難しいという欠点があった。しかし、本実施の形態では、大電流放電に対応した放電遮断用IGBT42とプリチャージ用IGBT43とキャパシタ10の内部抵抗とで損失を分担することになり、放熱性能の向上が実現できる。
【0058】
本実施の形態では、プリチャージで大電流を流した場合のキャパシタ10(ハイブリッドキャパシタ)、IGBT42,43の損失W(20)、W(42)、W(43)は、W(20)>W(42)>W(43)の順の大きさとなり、もともと大電流放電のために放熱性に優れた設計となっている放電遮断用IGBT42に損失を分散していることに特長がある。また、プリチャージ時に大電流を流すことが可能であるため、キャパシタ10を短時間で使用可能な状態にすることが実現できる。さらに、従来用いていたリレーや制限抵抗の代わりに半導体スイッチング素子を用いているので、小型化、低コスト化を図ることができる。
【0059】
なお、プリチャージ用IGBT31の代わりにプリチャージ用リレーを用いた場合、プリチャージ時にリレーを閉じる。損失は、放電遮断用IGBT42とキャパシタ10の内部抵抗とにより分担される。
【0060】
上述した実施の形態では、車両のアイドリングストップシステムに適用した場合を例に説明したが、これに限らず、種々の負荷への電力を供給するハイブリッド構成の電源装置に適用することができる。なお、以上の説明はあくまでも一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではない。また、実施の形態と変形例の一つ、もしくは複数を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0061】
1:二次電池、2:電源装置、3:回転電機、4:インバータ装置、10:キャパシタ、12:ゲートドライバ、14:制御部、31:充電遮断用MOSFET、32:放電遮断用MOSFET、33:プリチャージ用MOSFET、41:充電遮断用IGBT、42:放電遮断用IGBT,43:プリチャージ用IGBT、311,321,331:ボディダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池と並列に接続されるキャパシタと、
前記キャパシタと直列に接続された2つのスイッチング回路と、
前記2つのスイッチング回路の一方に並列に接続されたプリチャージスイッチング回路と、
前記キャパシタの電圧が前記電池の電圧よりも低いときに、前記プリチャージスイッチング回路と前記2つのスイッチング回路の少なくとも1つとを制御して前記キャパシタのプリチャージ電流制限を行う制御部と、を備えたことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源装置において、
前記2つのスイッチング回路および前記プリチャージスイッチング回路は、1つの半導体スイッチング素子または並列接続された複数の半導体スイッチング素子を備えることを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電源装置において、
前記プリチャージ電流制限時に、前記各スイッチング回路を構成する半導体スイッチング素子をオフ制御すると共に、前記プリチャージスイッチング回路を構成する半導体スイッチング素子をオン制御して、前記プリチャージスイッチング回路と、該プリチャージスイッチング回路が並列接続されていないスイッチング回路の半導体スイッチング素子の内蔵ダイオードとを通電状態とすることを特徴とする電源装置。
【請求項4】
請求項2に記載の電源装置において、
前記プリチャージ電流制限時に、前記各スイッチング回路を構成する半導体スイッチング素子をオフ制御すると共に、前記プリチャージスイッチング回路を構成する半導体スイッチング素子をPWM(Pulse Width Modulation)制御して、前記プリチャージスイッチング回路と、該プリチャージスイッチング回路が並列接続されていないスイッチング回路の半導体スイッチング素子の内蔵ダイオードとを通電状態とすることを特徴とする電源装置。
【請求項5】
請求項2に記載の電源装置において、
前記プリチャージ電流制限時に、前記各スイッチング回路を構成する半導体スイッチング素子をオフ制御すると共に、前記プリチャージスイッチング回路を構成する半導体スイッチング素子のゲート電圧を制御して、前記プリチャージスイッチング回路と、該プリチャージスイッチング回路が並列接続されていないスイッチング回路の半導体スイッチング素子の内蔵ダイオードとを通電状態とすることを特徴とする電源装置。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか一項に記載の電源装置において、
前記プリチャージスイッチング回路に並列接続されたスイッチング回路の半導体スイッチング素子をPWM(Pulse Width Modulation)制御して、該スイッチング回路を通電状態とすることを特徴とする電源装置。
【請求項7】
請求項2に記載の電源装置において、
前記キャパシタに、リチウムイオンをドープさせたハイブリッドキャパシタを用いたことを特徴とする電源装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電源装置において、
プリチャージ電流制限時に、前記ハイブリッドキャパシタの内部抵抗に擬似的増加が生じるように、前記プリチャージスイッチング回路の各半導体スイッチング素子をステップ的にオン制御することを特徴とする電源装置。
【請求項9】
電池と並列に接続されるキャパシタと、
前記キャパシタと直列に接続され、1つの半導体スイッチング素子または並列接続された複数の半導体スイッチング素子から成る2つのスイッチング回路と、
前記キャパシタの電圧が前記電池の電圧よりも低いときに、前記2つのスイッチング回路で電流制限時の損失を分担するように各スイッチング回路の半導体スイッチング素子を制御して、前記キャパシタのプリチャージ電流制限を行う制御部と、を備えたことを特徴とする電源装置。
【請求項10】
請求項9に記載の電源装置において、
前記プリチャージ電流制限時に、一方のスイッチング回路の半導体スイッチング素子をオフ制御すると共に、他方のスイッチング回路の半導体スイッチング素子をPWM制御して、前記一方のスイッチング回路の半導体スイッチング素子の内蔵ダイオードと、前記他方のスイッチング回路とを通電状態とすることを特徴とする電源装置。
【請求項11】
請求項9に記載の電源装置において、
前記プリチャージ電流制限時に、一方のスイッチング回路の半導体スイッチング素子をオフ制御すると共に、他方のスイッチング回路の半導体スイッチング素子のゲート電圧を制御して、前記一方のスイッチング回路の半導体スイッチング素子の内蔵ダイオードと、前記他方のスイッチング回路とを通電状態とすることを特徴とする電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−193588(P2010−193588A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34019(P2009−34019)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】