説明

電源装置

【課題】 商用交流電源が過電圧状態になった場合に1次平滑用アルミ電解コンデンサが開弁して電解液が噴出するといった問題を解決すること。
【解決手段】 1次平滑コンデンサと並列に1次平滑コンデンサより静電容量が小さいアルミ電解コンデンサを接続し、前記アルミ電解コンデンサにサーミスタを近傍配置又は接触させる。前記サーミスタは回路上では1次電流をオンオフするメインスイッチング素子の最大オン時間を決める時定数回路内に組み込む、又はトランス2次巻線からの帰還信号ラインに直列接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商用交流電源から供給される交流電圧を整流し、平滑して得られた高圧直流電圧を、機器が必要とする数V〜数十Vの所定の低電圧に変換するリンギングチョークコンバータ(RCC方式)に代表される自励発振で動作する電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、商用交流電源を入力電源とする各種装置の過電圧保護手段を備えた電源装置は提案されている。例えば、特開2000−134794号公報に記載の電源装置があり、図5にRCC方式の電源に接続した場合の構成を記載する。101は商用交流電源、102は電流ヒューズ、103はバリスタ、104は異極間に配置されたXコンデンサ、105はコモンモードノイズ除去用ラインフィルタ、106は整流用ブリッジダイオード、107は整流された電圧を平滑する第1の平滑用アルミ電解コンデンサであり、これより下流は一般的なRCC方式の電源の構成例を示している。商用交流電源から過電圧が入力された時にはバリスタ103が応答し、電流ヒューズ102が溶断されることで、バリスタ103より下流には影響を及ぼさない構成となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−134794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
あるいは、商用交流電源として110Vが使用されている地域用に生産されたものであっても、誤って、商用交流電源が220Vあるいは240V地域で使用された場合を留意して、1次平滑コンデンサ104の耐圧を上げることで開弁しないようにすることもあった。
【0005】
しかしながら、上述したような従来の電源装置においては以下のような問題があった。
【0006】
バリスタは応答が比較的速いため、バリスタの応答電圧を低く設定した場合には、実際の商用交流電源電圧実効値が過電圧状態ではなくIEC等で定められている誤動作してはならないレベルの雷サージ等のノイズに対しても応答し電流ヒューズが溶断してしまう可能性があった。この可能性を回避する為にはバリスタ応答電圧をある程度上げてIEC等の規格に対応することもあった。しかしながら、その場合にはバリスタが応答しないけれども保証以上の過電圧がかかった状態では保護機能が働かないため、バリスタ応答電圧まで平滑用アルミ電解コンデンサの耐圧を上げる必要がでてくる。
【0007】
またバリスタにも耐圧限界が存在し、想定以上の過電圧が印加された場合にはヒューズが応答する前にバリスタが破壊してしまう可能性があるため、バリスタが破壊した場合であっても問題がないようにする必要があった。
【0008】
また単純にどの地域で使用されたとしても、1次平滑コンデンサが開弁しないようにする為に耐圧を上げた場合には、当然1次平滑コンデンサのコストが上がり、且つ外形サイズもあがってしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、商用交流電源が機器の保証している入力電圧範囲より過電圧になった場合に1次平滑アルミ電解コンデンサを開弁し電解液が噴出し実装基板を汚染するといった問題を安価で簡単な構成で解決するようにした自励発振で動作する電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、このような目的を達成する為になされたもので、請求項1に記載の発明は、商用交流電源101と該商用交流電源ラインに過大電流が流れた時に溶断する電流ヒューズ102と商用交流電源101からの電圧を整流する前記第1の整流ダイオード106と、整流された電圧を平滑する平滑コンデンサ107で第1の整流装置が形成され、前記第1の整流装置に前記一次巻線、帰還巻線、二次巻線を有するトランス117と、前記一次巻線に流れる電流の導通及び遮断を制御する第1のスイッチング素子108と、帰還巻線に発生する電圧を前記第1のスイッチング素子の制御部に伝達する伝達手段、前記第1のスイッチング素子の最大オン時間を規定する時定数回路(抵抗111、コンデンサ112)、前記二次巻線に発生する電圧を整流する第2の整流ダイオード120と整流後の電圧を平滑する第2の平滑コンデンサ116とを備える第2の整流装置と、前記第2の整流装置から供給される直流電圧に応じて前記第1のスイッチング素子108を制御するために基準電圧を備えるシャントレギュレータ115、電圧誤差によって出力される信号を伝達する為のフォトカプラ114、前記フォトカプラ114のトランジスタ側電流を制限する抵抗を伝達制御部として備えるRCC方式の電源において、請求項1に記載のように前記第1の平滑用アルミ電解コンデンサと並列に前記第1の平滑用アルミ電解コンデンサよりも容量が小さいアルミ電解コンデンサを接続し、請求項2に記載のように前記並列に接続したアルミ電解コンデンサの近傍もしくは接するようにサーミスタ118を配置し、温度検出を可能にし、前記サーミスタは電気的には前記時定数回路(抵抗111、コンデンサ112)に接続されているか又は請求項3に記載のように前記フォトカプラのトランジスタ側の電流制限抵抗と接続されていることを特徴としている(実施例1、実施例2)。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本発明によれば、従来からある自励発振で動作する電源装置に1個のアルミ電解コンデンサと1個のサーミスタを追加するという簡単で安価な構成変更によって、商用交流電源から保証範囲以上に高い電圧が印加された場合であっても1次平滑用アルミ電解コンデンサが開弁し電解液が噴出するといった問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の電源装置の実施例1を説明する為の回路構成図
【図2】本発明の電源装置の実施例1の動作を説明する為のシーケンスチャート
【図3】本発明の電源装置の実施例2を説明する回路構成図
【図4】本発明の電源装置の実施例2の動作を説明する為のシーケンスチャート
【図5】従来の実施例を説明する為の回路構成図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図面を参照して本発明の実施例について説明する。
[実施例1]
本実施例1は、従来の一般的なRCC方式の電源装置にサーミスタとアルミ電解コンデンサを追加することで商用交流電源に過電圧が投入された時に1次平滑コンデンサが開弁し電解液が噴出するといった問題が発生しないようにしたものである。
【0014】
図1は本発明の電源装置の実施例1を説明する為の回路構成図で、118はPTCサーミスタ、119はアルミ電解コンデンサである。それ以外の符号は従来例を示した図5と同じである。前記PTCサーミスタ118は前記アルミ電解コンデンサ119に近接して実装、又は接触する構成をとっている。アルミ電解コンデンサ119は容量が非常に小さなものを使用する。通常アルミニウム電解コンデンサの温度上昇速度は容量に依存し、大きければ大きいほど温度上昇するスピードが遅く、また同じ耐圧のアルミ電解コンデンサであったとしても過電圧が印加された状態においても開弁にいたる時間も長い。また大きな容量のアルミ電解コンデンサは、外形サイズも大きく、内部で使用されている電解液の量も多い。よって万が一開弁してしまった時に噴出される電解液の量も多くなる。
【0015】
図2は本発明の動作を説明する為のシーケンスチャートである。点線は保証範囲の電圧が商用交流電源101から入力されたときの動作波形、実線は保証以上の過電圧が入力されたときの動作波形、一点破線は本発明による過電圧保護が無かった場合の電圧波形を示している。
【0016】
図2に示すように商用交流電源101が投入される又は電源スイッチ(図示しない)がオンされるとダイオードブリッジ106によって交流電圧が整流され、1次平滑アルミ電解コンデンサ107によって平滑されていく。トランス117の2次巻線側の出力電圧は電源投入後まだ規定電圧に達していない為、フィードバック制御を行うシャントレギュレータ115、帰還信号113によってメインFET108がオフされることは無い。よってトランス117の帰還巻線に発生した電圧によってトランジスタ110のベース電圧が上昇し閾値を超えると、トランジスタがオンし、メインFET 108がオフされる。前記トランジスタ110のベース電圧上昇速度を決定する時定数回路は従来例においては固定抵抗111、コンデンサ112のみであった為、メインFET108の最大オン時間は固定であった。しかしながら本実施例においてはPTCサーミスタ118が固定抵抗11に直列接続されている為、アルミ電解コンデンサ119の温度が上昇すると時定数が大きくなり、メインFET108のオン時間が長くなる。点線で示したように保証範囲の電圧が入力された場合、アルミ電解コンデンサ119の温度上昇は小さい為PTCサーミスタ抵抗値は緩やかに上昇し、それに伴いメインFET108の最大オン時間も少しずつ上昇し、トランス117の2次巻線側のダイオード120による整流、平滑コンデンサ116による平滑後の電圧が規定電圧に達するとシャントレギュレータ115、フォトカプラ114、帰還信号113によってメインFETのオンオフが制御されるようになり、メインFET108のオン時間は電源オン時と比較して短くなり、流れる電流も少なくなる。このときPTCサーミスタの118の抵抗値上昇に伴いメインFETのオン時間は微小に長くなり、ピーク電流は大きくなる。しかしながら、電流ヒューズ102を溶断するほどには大きくならない。
【0017】
一方実線で示したように過大な電圧が商用交流電源から投入された場合、電解コンデンサ119の温度上昇速度は非常に早くなるためPTCサーミスタ118抵抗値も急上昇する。PTCサーミスタ抵抗値の上昇に伴い前記時定数が急速に大きくなりメインFET108の最大オン時間も急速に長くなりメインFET108に流れる電流は通常時と比較してかなり大きくなる。この過大な電流によって電流ヒューズ102は溶断され、商用交流電源101からの電流供給は遮断されメインFETに流れる電流も遮断され、1次平滑用アルミ電解コンデンサ107は開弁することなく、電圧は徐々に低下し電源装置は停止する。
[実施例2]
本実施例2に示す電源装置の基本構成は、実施例1で記載したRCC方式の電源装置であり、従来例に対して追加する部品は実施例1と同様PTCサーミスタとアルミ電解コンデンサである。ここでは正常な商用交流電源電圧で電源装置が動作中、外的な要因、例えば商用交流電源を供給している建築物に備えられた配電盤回路の故障やトランスの故障によって商用交流電源電圧が保証以上の電圧になった場合を例にとって、動作説明を行う。構成はサーミスタの接続個所が実施例1とは異なっている。図3は本発明の電源装置の実施例2を説明する為の回路構成図で、各符号は実施例2を示した図1と同じである。前記サーミスタ118は前記アルミ電解コンデンサ119に近接して実装、又は接触する構成をとっている。
【0018】
アルミ電解コンデンサ119は実施例1と同様に静電容量が1次平滑コンデンサ107よりも小さいものを選択する。図4は本発明の動作を説明する為のシーケンスチャートである。実線は商用交流電源電圧が保証以上の過電圧に切り替わる時の動作波形、一点破線は本発明による過電圧保護が無かった場合の電圧波形を示している。
【0019】
商用交流電源101から入力される電源電圧が保証値以内の場合、メインFET108に流れる電流は機器内部の負荷変動によって規定範囲内で変動し、最大オン時間でオンされつづけたとしても電流ヒューズ102を溶断することはない。
【0020】
しかしながら図4に示すように商用交流電源101から保証以上の過電圧が投入されると、アルミ電解コンデンサ119が発熱し、近傍配置又は接触されたサーミスタ118の抵抗値が上昇する。これによってフォトカプラ114のトランジスタがメインFET108をオフできなくなる。つまりトランス117の2次側、シャントレギュレータ115、フォトカプラ114で生成されたフィードバック信号が伝達されなくなり、電流ヒューズ102に過大電流が流れることで溶断し、商用交流電源101からの電流供給は遮断され、メインFET108に流れる電流も遮断され、1次平滑用アルミ電解コンデンサ107は開弁することなく電圧は徐々に低下し電源装置は停止する。
【符号の説明】
【0021】
101 商用交流電源
102 電流ヒューズ(又はブレーカ)
103 バリスタ
104 Xコンデンサ
105 コモンモードチョークラインフィルタ
106 ブリッジ整流ダイオード
107 1次平滑用アルミ電解コンデンサ
108 スイッチング素子(FET)
109 起動抵抗
110 トランジスタ
111 抵抗
112 コンデンサ
113 抵抗
114 フォトカプラ
115 シャントレギュレータ
116 2次平滑用アルミ電解コンデンサ
117 RCC用トランス
118 サーミスタ
119 アルミ電解コンデンサ
120 2次側整流ダイオード


【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用交流電源を整流する第1の整流ダイオードと、整流された電圧を平滑する第1の平滑コンデンサと、商用交流電源入力部に過大電流が流れた時溶断する電流ヒューズとを備える第1の整流装置と前記第1の整流装置に接続された一次巻線、帰還巻線、二次巻線を有するトランスと、前記一次巻線に流れる電流の導通及び遮断を制御する第1のスイッチング素子と、前記二次巻線に発生する電圧を整流する第2の整流ダイオードと整流後の電圧を平滑する第2の平滑コンデンサとを備える第2の整流装置と、前記第2の整流装置から供給される直流電圧に応じて前記第1のスイッチング素子を制御する制御部を備え、前記第1のスイッチング素子の最大オン時間を時定数回路によって決定する構成を備える自励発振で動作する電源において、前記第1の平滑コンデンサと並列に前記第1の平滑コンデンサより小さい静電容量のコンデンサ(以下、並列接続コンデンサ)を接続し、前記並列接続コンデンサの温度を検出可能な位置にサーミスタを配置し、前記サーミスタの抵抗値の変化によって前記電流ヒューズを溶断させる構成を備えることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記サーミスタは、帰還巻線に接続される前記スイッチング素子の最大オン時間を決定する手段に使用されていることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記サーミスタは前記第2の整流平滑装置からの帰還信号上に使用されていることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−115078(P2012−115078A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263301(P2010−263301)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】