説明

電源装置

【課題】隣接する電池セルを絶縁すると共に、効率よく電池セルの膨張を抑制する。
【解決手段】扁平な直方体形状の外装缶22を有し、外装缶22の幅広面24を対向させて配設される複数の電池セルと、各電池セルの間に配設されるセパレータ3と、電池セルを加圧した状態で、電池セル及びセパレータ3を締結する締結具とを備え、外装缶22の幅広面24は、幅広面24の周縁に位置する稜線部24aと、幅広面24の中央に位置する中央部24bとを含み、セパレータ3は、隣接する電池セルを絶縁する絶縁部31と、幅広面24の中央部24bと対応する位置に形成され、中央部24bを押圧する押圧部32とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池セルを備えた電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッドカーや電気自動車、大型の蓄電装置等に使用される電源装置は、高電圧出力であることや高電流容量であることが求められる。この種の電源装置として、複数の電池セルを積層して形成される電源装置があり、電池セルを直列に接続することで電源装置の出力電圧を高く、並列に接続することで電源装置の電流容量を大きくすることができる。電源装置を構成する電池セルとしては、繰り返し充放電ができるように、二次電池が使用される。
【0003】
二次電池は、充放電を繰り返すことにより電池セルが膨張し、膨張に伴う電池性能(入出力特性)の劣化が生じる。そのため、複数の電池セルを積層して構成される電源装置において、電池セルを加圧した状態で締結することで電池セルの膨張を防止し、膨張に伴う電池性能の劣化を抑制する締結具を備えた電源装置がある。
【0004】
この種の電源装置としては、例えば、電池セルとして、直方体形状の外装缶を有する角形電池と角形電池を保持するセパレータとを交互に積層して形成される電池ブロックと、電池ブロックの両端に配設される一対のエンドプレートと、エンドプレートに架設され、積層されている角形電池を積層方向に加圧した状態で締結するバインドバーとを備えた電源装置が知られている(特許文献1)。この構成によると、バインドバーを介して電池ブロックを締結することで、各角形電池の外装缶は、隣接するセパレータに押圧され、外装缶の膨張が抑制されるようになっている。具体的には、エンドプレートに架設されたバインドバーによって、角形電池の寸法が制限されているので、充放電を繰り返すことで、外装缶内の内圧が上昇しても、セパレータが外装缶の幅広面を押圧して、外装缶の膨張が阻止される。
【0005】
一方、電池性能の劣化は、電池セルの寿命(経年変化による内部抵抗の増加等)にも影響される。具体的には、電池セルは、高温度下での使用により電池セルの寿命が低下する。そのため、特許文献1の電源装置は、上述した構成に加えて、外装缶を金属で形成し、電池セルの放熱性能を高めると共に、電池ブロックの下部に当接する冷却プレートを介して、各電池セルを冷却できるように構成している。
【0006】
金属製の外装缶を用いた場合、隣接する電池セルの外装缶に電位差が生じるため、隣接する電池セル同士を絶縁する必要がある。また冷却プレート等の冷却機構を備えた電源装置では、周囲との温度差により、結露水が外装缶等に付着するおそれがあるため、隣接する電池セル同士を絶縁する必要がある。特許文献1の電源装置では、絶縁性のセパレータを隣接する電池セルの間に配置することにより、隣接する電池セルを絶縁している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−34775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の電源装置において、セパレータは、隣接する電池セルを絶縁すると共に、バインドバーを介して、電池セルの外装缶を押圧して、外装缶の膨張を防止するように構成されている。
【0009】
しかしながら、特許文献1の構成では、セパレータは、外装缶の幅広面を均一に押圧する構成であり、膨張による角形電池の電池性能の劣化を効率よく抑制するためのセパレータの最適な形状については充分な検討がなされておらず、角形電池の膨張を効率よく防止することが望まれていた。
【0010】
本願発明は、斯かる問題を解決するためになされたものであり、複数の電池セルを積層して形成される電源装置において、電池性能の劣化を抑制することができる電源装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
扁平な直方体形状の外装缶を有し、該外装缶の幅広面を対向させて配設される複数の電池セルと、各電池セルの間に配設されるセパレータと、前記電池セルを加圧した状態で、前記電池セル及び前記セパレータを締結する締結具とを備え、前記外装缶の幅広面は、幅広面の周縁に位置する稜線部と、幅広面の中央に位置する中央部とを含み、前記セパレータは、隣接する前記電池セルを絶縁する絶縁部と、前記幅広面の中央部と対応する位置に形成され、前記中央部を押圧する押圧部とを有する。
【0012】
前記外装缶は、上面を開口した有底の収納ケースであり、前記電池セルは、前記外装缶内に配設される電極体と、前記外装缶の開口を閉塞する封口体と、該封口体に立設され、前記電極体と電気的に接続される出力端子とを有し、前記セパレータは、前記封口体の近傍に位置する前記稜線部と前記絶縁部との間に空隙を設けるように構成されることが好ましい。
【0013】
前記絶縁部は、前記外装缶の前記封口体側の端面よりも上方に延設されることが好ましい。
【0014】
前記電池セルは、前記外装缶内の内圧が高くなった際に、前記出力端子と前記電極体とを電気的に遮断する電流遮断機構を有し、該電流遮断機構は、前記封口体近傍に配置されることが好ましい。
【0015】
前記押圧部は、前記押圧部の中央に位置する頂点部と、頂点部の周縁に位置する周縁部とを有すると共に、前記頂点部から上側に位置する前記周縁部にかけて形成される第一の傾斜面と、前記頂点部から下側に位置する前記周縁部にかけて形成される第二の傾斜面とを有することが好ましい。
【0016】
前記第一の傾斜面が、前記第二の傾斜面より、緩やかな勾配となるように形成されることが好ましい。
【0017】
前記電極体は、正極及び負極の積層体を巻取体に巻装して形成されると共に、前記巻取体の軸方向を前記外装缶の左右側面方向に向けて、前記外装缶内に配設され、前記押圧部は、前記頂点部から側方に位置する前記周縁部にかけて形成される第三の傾斜面及び第四の傾斜面とを有し、さらに、前記押圧部は、前記第三の傾斜面が、前記第四の傾斜面と勾配が等しくなるように形成されることが好ましい。
【0018】
前記電流遮断機構は、前記出力端子の一方に設けられ、前記押圧部は、前記頂点部から側方に位置する前記周縁部にかけて形成される第三の傾斜面及び第四の傾斜面とを有すると共に、前記第三の傾斜面は、前記電流遮断機構と近接する位置に形成され、さらに、前記押圧部は、前記第三の傾斜面が、前記第四の傾斜面よりも、急勾配となるように形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の構成によると、隣接する電池セルを絶縁すると共に、膨張しやすい外装缶の中央部を押圧することができるため、効率よく電池セルの膨張を抑制することができる等の効果を奏する。
【0020】
請求項2の構成によると、空隙を設けることで、封口体近傍に位置する稜線部を押圧することなく、絶縁することができ、例えば、封口体と外装缶の接合部分が破損することを防止できる等の効果を奏する。
【0021】
請求項3の構成によると、隣接する電池セルの出力端子の間に絶縁部を位置させることができ、例えば、結露などによる短絡を防止することができる等の効果を奏する。
【0022】
請求項4によると、外装缶の内圧に応じて作動する電流遮断機構を押圧部による負荷がかかりにくい封口体近傍に設けることで、電流遮断機構の誤作動を防止することができる等の効果を奏する。
【0023】
請求項5によると、押圧部が頂点部から周縁部にかけて傾斜が形成されるため、締結具による締結力に応じて、押圧部と外装缶の幅広面の接触面積を緩やかに変化させることができる等の効果を奏する。
【0024】
請求項6によると、主に底面側の幅広面を押圧することができ、封口体等にかかる負荷を低減できる等の効果を奏する。
【0025】
請求項7によると、電極体の軸方向において幅広面を均等に押圧することができる等の効果を奏する。
【0026】
請求項8によると、電流遮断機構に近接する第三の傾斜面を、第四の傾斜面よりも急勾配とすることで、電流遮断機構にかかる負荷を低減することができ、電流遮断機構の誤作動を防止することができる等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態における電源装置1の斜視図である。
【図2】同角形電池2の斜視図である。
【図3】同角形電池2の垂直縦断面図である。
【図4】同角形電池2の垂直横断面図である。
【図5】同電流遮断機構7の構造を示すための断面図である。
【図6】同電流遮断機構7が作動した際のダイアフラムの様子を示す断面図である。
【図7】本発明おけるセパレータ3Aの形状を示す断面図である。
【図8】同セパレータ3Aの形状を示す上面図である。
【図9】同セパレータ3Bの形状を示す断面図である。
【図10】同セパレータ3Cの形状を示す断面図である。
【図11】同セパレータ3Dの形状を示す断面図である。
【図12】同セパレータ3Eの形状を示す上面図である。
【図13】同セパレータ3Fの形状を示す上面図である。
【図14】同絶縁部と押圧部とを一体成型されたセパレータ3(3A)の断面図である。
【図15】平板状のセパレータを用いて押圧した際の押圧力と角形電池2のセル幅との関係を示すグラフである。
【図16】本発明の実施形態のセパレータを用いて押圧した際の押圧力と角形電池2のセル幅との関係を示すグラフである。
【図17】他の実施形態におけるセパレータの形状を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施形態について図1乃至図14に基づいて、以下に詳述する。
【0029】
図1は、本発明の実施形態における電源装置1の斜視図である。図1に示すように、電源装置1は、角形電池2と絶縁性のセパレータ3とを交互に積層して形成される電池ブロック4と、電池ブロック4の両端に配設されるエンドプレート5と、エンドプレート5に架設され、電池ブロック4を積層方向に加圧した状態で締結する締結具として、バインドバー6とを備えている。
【0030】
電池ブロック4を構成する角形電池2は、出力端子21が電池ブロック4の上面に並ぶように積層され、隣接している角形電池2同士は、バスバー8を介して接続される。角形電池2は直列に接続され、電源装置1の出力電圧を大きくしている。電池ブロック4の両端に配設されているエンドプレート5は、外形が角形電池2の外形とほぼ等しい直方体形状で、アルミニウムやアルミニウム合金等の比較的高い強度を有する金属や硬質のプラスチック等で形成されている。エンドプレート5の四隅には、上下に並設される一対のバインドバー6をネジ止め固定するためのネジ穴が形成されており、バインドバー6を架設できるようになっている。
【0031】
尚、上記実施形態では、各角形電池2は直列に接続されているが、並列に接続してもよい。角形電池2を並列に接続することで、電源装置1の電流容量を大きくすることができる。また、目的の出力電圧や電流容量に応じて、並列接続や直列接続を組み合わせて電池ブロック4を構成することもできる。
【0032】
図2乃至図4は、角形電池2の構成を示す図である。図2乃至図4に示すように、角形電池2は、上面を開口した扁平な直方体形状に形成される外装缶22と、外装缶22の開口を閉塞する封口体23と、封口体23から立設される出力端子21とを有する電池セルで、例えば、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の二次電池である。外装缶22は、熱伝導性に優れた金属で形成されており、角形電池2の冷却性を向上させるようになっている。熱伝導性に優れた金属としては、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金等がある。外装缶22は、セパレータ3と対向する幅広面24を有しており、バインドバー6により締結されることで、この幅広面24がセパレータ3によって押圧されるようになっている。外装缶22の幅広面24は、幅広面24の周縁に位置する稜線部24aと、中央に位置する中央部24bとで構成されている。この構成の角形電池2は、充放電を繰り返すことで外装缶22の内圧が上昇した際に、特に外装缶22の中央部24bが膨張する。
【0033】
図3及び図4の断面図に示すように、外装缶22内には、正極251と負極252の間に絶縁シート253を介在させた積層体を巻装して形成される電極体25と、図示しない電解液が封入されている。二つの出力端子21は、それぞれ、電極集電部材26を介して、正極251または負極252に電気的に接続され、電流遮断機構7が、正極251と、正極251に接続されている出力端子21との間に設けられている。電流遮断機構7は、電池セルの内圧、即ち外装缶22の内圧が設定圧力よりも高くなると電流を遮断するように構成されている。
【0034】
図5乃至図6は、電流遮断機構7の具体的な構成を示す断面図である。電流遮断機構7は、出力端子21と正極251とを電気的に接続する導通部71を有しており、封口体23の近傍に設けられている。この導通部71は、正極251と電気的に接続される接続金属71aと、外装缶22の内圧に応じて変形する金属製のダイアフラム71bとで構成される。ダイアフラム71bは、封口体23に固定された出力端子21の下端に外周を当接させて、この当接部分を溶接することで、出力端子21とダイアフラム71bとを電気的に接続している。ダイアフラム71b及び接続金属71aは、プラスチック等の絶縁材で形成されるインナーケース72に収納される。
【0035】
インナーケース72は、ダイアフラム71bの上面を気密に密閉している。ダイアフラム71bの上面側を気密に密閉することで、ダイアフラム71bの上面側には外装缶22の内圧が作用しないように構成される。ダイアフラム71bの下面側には、外装缶22の内圧が作用し、内圧によってダイアフラム71bを上方へ押し上げる力が働く。このダイアフラム71bを押し上げる力は、外装缶22の内圧に比例して大きくなる。外装缶22の内圧が充分小さい場合には、ダイアフラム71bを押し上げる力も小さく、ダイアフラム71bの上面側の密閉空気によって、ダイアフラム71bの変形を阻止される。外装缶22の内圧が上昇してダイアフラム71bを押し上げる力がある一定値を越えた場合には、ダイアフラム71bの変形を阻止できなくなり、図6に示すように変形する。図6の状態のダイアフラム71bは、接続金属71aから離間した状態となり、出力端子21と正極251とが電気的に遮断される。ダイアフラム71bが変形する内圧は、ダイアフラム71bの材厚や形状によって設定することができる。図6に示すように変形したダイアフラム71bは、外力が働かない限りこの形状に保持されるため、一度、電流遮断機構7が作動すると、その後も出力端子21と正極251とは、電気的に遮断される状態が維持される。
【0036】
この構成により、外装缶22の内圧が異常に上昇した場合等には、電源装置1が接続される負荷、例えば車両用モータ等から、角形電池2を電気的に遮断することができる。尚、上記実施形態において、電流遮断機構7は、正極251側に設けられているが、負極252側に設ける構成としても良い。
【0037】
図7乃至図13は、セパレータ3の形状を示すための断面図である。図7に示すように、隣接する角形電池2の間には、セパレータ3が設けられており、このセパレータ3は、隣接する角形電池2を絶縁するための絶縁部31と、外装缶22の幅広面24の中央部24bと対向する位置に押圧部32とを有している。具体的には、押圧部32は、外装缶22内に封入される電極体25対応する位置に形成され、幅広面24の電流遮断機構7より下方に位置する部分を押圧するように構成されることが好ましい。
【0038】
尚、上述したエンドプレート5を金属で形成した場合、エンドプレート5と角形電池2との間にもセパレータ3が配設される。この電池ブロック2の端部に配設されるセパレータ3は、角形電池2と対向する面は一面だけであり、押圧部32も角形電池2と対向する面に形成される。また、端部のセパレータ3は、エンドプレート5を保持するように、エンドプレート5と嵌合するような形状とすることもできる。このように形成することで、電池ブロック2をバインドバー6で締結する際、エンドプレート5の位置ずれを防止することができる。
【0039】
図7に示されるセパレータ3(3A)において、押圧部32は、絶縁部31よりも外装缶22の幅広面24に向かって突出した形状に形成されている。図7及び図8に示すように、外装缶22の稜線部24a近傍においては、絶縁部31と外装缶22の稜線部24aとの間に空隙を設けるように、押圧部32に対して段差が設けられている。尚、必ずしも絶縁部31と外装缶22との間に空隙を設ける必要はないが、少なくとも封口体23近傍に位置する稜線部24aと、セパレータ3Aの絶縁部31との間に空隙を設けることが好ましい。
【0040】
角形電池2の外装缶22は、上述の通り、特に幅広面24の中央部24bが膨張し、幅広面24の稜線部24aはそれほど膨張しない。このような構成において、外装缶22の稜線部24aを押圧しても、ほとんど膨張しない部分を押圧することになるため、効率よく外装缶22の膨張を抑止できない。また、外装缶22の稜線部24a、特に封口体23の近傍に位置する稜線部24aに過度な力がかかると、封口体23と外装缶22の溶接部分に亀裂が入ったり、溶接が剥がれたりするおそれがある。
【0041】
上記実施形態では、バインドバー6で締結した際に、セパレータ3Aの押圧部32が、外装缶22の幅広面24の中央部分を主に押圧するように構成されているので、膨張の変化が大きい幅広面24の中央部24bを押圧することができ、効率よく外装缶22の膨張を抑制できる。加えて、この構成では、封口体23等に負荷がかかりにくくなっているので、封口体23と外装缶22の溶接部分に亀裂が入ったり、溶接が剥がれたりすることを防止でき、より安全な電源装置を提供することができる。
【0042】
図9に示すセパレータ3(3B)は、絶縁部31が封口体23近傍の外装缶22端面より上方へ突出するように延設されている。上述した通り、電源装置1に冷却機構を備えた場合、周囲との温度差によって、外装缶22の表面に結露水が付着することがある。特に、外装缶22を金属で形成した場合、この結露水の付着は顕著となる。図9に示すセパレータ3Bは、隣接する角形電池2の出力端子21の間に、絶縁部31が位置するように構成されているため、例えば、外装缶22に結露水が付着しても、結露水を介して隣接する角形電池2が接触することはなく、隣接する角形電池2の短絡を防止できるようになっている。従って、図9に示すセパレータ3Bを備えた電源装置1は、セパレータを角形電池2の膨張を効率よく防止できる形状としながら、絶縁層31により、結露水による短絡を防止することができる。
【0043】
図10乃至図13は、さらに効率よく外装缶22の幅広面24を押圧する押圧部32の形状を説明するためのものである。図10乃至図13のセパレータ3において、押圧部32は、中央に位置する頂点部32aと、周縁に位置する周縁部32bを有しており、頂点部32aから周縁部32bにかけてなだらかに傾斜した傾斜面33が形成されている。この構成によると、締結される力に応じて、セパレータ3の押圧部32と、外装缶22の幅広面24との接触面積を変化させることができる。具体的には、外装缶22がほとんど膨張していない場合、セパレータ3の押圧部32は、主に頂点部32aと幅広面24とが接触し、外装缶22が大きく膨張した場合、セパレータ3の押圧部32は、頂点部32aと周縁部32bとで幅広面24を押圧するようになっている。この時、押圧部32と外装缶22の幅広面24との接触面積は、傾斜面33の勾配に応じて変化する。例えば、傾斜面33の勾配が緩やかとなるように押圧部32を形成した場合、締結力の変化に対して、接触面積は急激に変化する。また、傾斜面33を急勾配となるように形成した場合、締結力に変化に対して、押圧部32と幅広面24との接触面積は緩やかに変化する。
【0044】
図10のセパレータ3(3C)において、押圧部32は、頂点部32aから出力端子21側に位置する周縁部32bにかけて形成される第一の傾斜面33aと、頂点部32aから底面側に位置する周縁部32bにかけて形成される第二の傾斜面33bとを有している。この構成によると、上述した通り、傾斜面33の勾配に応じて、押圧部32と幅広面24との接触面積を変化させることができるので、出力端子21側に位置する周縁部32bと、底面側に位置する周縁部32bにかかる負荷を低減させることができる。
【0045】
また、傾斜面33a及び傾斜面33bは、図11に示すように、傾斜面33aと傾斜面33bとで勾配を異ならせるように形成することもできる。図11に示されるセパレータ3(3D)は、第一の傾斜面33aよりも第二の傾斜面33bのほうが、傾斜が緩やかとなるように形成されているため、接触面積の増減が底面側に偏って変化する。換言すると、図11に示されるセパレータ3Dは、外装缶22の幅広面24の底面側を主に押圧するように構成される。この構成によると、外装缶22の出力端子21側に位置する封口体23にかかる負荷を低減することができる。
【0046】
さらに、上記実施形態では、電流遮断機構7は封口体23近傍に設けられているため、電流遮断機構7にかかる負荷を低減させることができる。特に、上記実施形態で説明した電流遮断機構7は、外装缶22の内圧に応じてダイアフラム71bが変形して出力端子21と電極体25との電気的接続を遮断する構成であるため、外力(例えば、押圧部が外装缶を押圧する押圧力等)がダイアフラム71bにかかると、ダイアフラム71bが変形するおそれがある。具体的には、外装缶22の内圧がそれほど高くないにもかかわらず、ダイアフラム71bが変形して、電流が遮断されたり、出力端子21と電極体25との電気的接続が遮断された状態の電流遮断機構7に加わる外力によって、ダイアフラム71bが変形し、再び出力端子21と電極体25とが接続されたりするおそれがある。図11に示されるセパレータ3Dの構成によると、電流遮断機構7にかかる負荷を低減できるので、電流遮断機構7の誤作動を防止するという効果も期待できる。
【0047】
図12に示されるセパレータ3(3E)は、頂点部32aから左右両側方に位置する周縁部32bにかけて、第三の傾斜面33cと第四の傾斜面33dとが形成されており、電流遮断機構7の近傍に位置する斜面が第三の傾斜面33cとする。図12に示すセパレータ3Eは、第三の傾斜面33cと第四の傾斜面33dとは同じ勾配となるように形成されている。セパレータ3Eは、水平方向において、左右対称に形成されるため、外装缶22の幅広面24を水平方向において均等に押圧するように構成することができる。図4等に示されるように、電極体25は、電極体25の軸方向を外装缶22の水平方向へ向けて、外装缶22内に封入されているため、外装缶22が均等に押圧されるように構成することで、外装缶22内に封入されている電極体25に偏った負荷がかかること等を防止することができる。
【0048】
図13に示されるセパレータ3(3F)は、第三の傾斜面33cが、第四の傾斜面33dよりも急勾配となるように形成されている。上述の通り、傾斜面33の勾配を異ならせることで、外装缶22の幅広面24を押圧する力を偏らせることができる。図13に示す実施形態では、電流遮断機構7の近傍に位置する第三の傾斜面33cを急勾配に形成することで、電流遮断機構7にかかる負荷をさらに低減するように構成することができる。
【0049】
尚、図10乃至図13に様々な形状のセパレータ3を例示したが、それぞれ組み合わせることが可能である。また、図10乃至図13に示した実施形態において、セパレータ3は、絶縁部31と押圧部32とが別部品で構成されているが、図14に例示するように、一体成型としてもよい。この構成では、絶縁部31及び押圧部32は絶縁材で成形される。絶縁材としては、比較的強度が高い絶縁性樹脂を用いることが好ましい。絶縁部31と押圧部32とが一体成型される構成とした場合、セパレータ3の生産性を高めることができる。
【0050】
さらに、上記実施形態において、傾斜面33(33a、33b、33c、33d)の傾斜は、必ずしも一定の傾斜角度を持った勾配とする必要はなく、頂点部32aから離れるにつれて、連続的に傾斜角度が変化するように、即ち、押圧部32の断面形状が円弧状となるように構成しても良い。
【0051】
また、図8乃至図14に示すセパレータ3において、絶縁部31の周縁部24aと対向する部分は、幅広面24と平行となる平坦な面に形成されているが、図17に例示するように、絶縁部31の周縁部24aと対向する部分を、押圧部32の傾斜面33に沿って傾斜した形状としても良い。セパレータ3は、生産性やコストの観点から、図14に示すように絶縁性の樹脂を用いて絶縁部31と押圧部32を一体成型することがあるが、このような場合、セパレータ3の形状が複雑になると、セパレータ3を成形するための金型も複雑になり、コストが増大するおそれがある。上述した構成によると、絶縁部31の周縁部24aと対向する部分は、押圧部32の傾斜面33に沿うように傾斜した形状となるため、セパレータ3の形状が比較的簡単な形状となり、コストの増加を抑制することができる。
【0052】
ここで、セパレータ3の形状とバインドバー6による締結力の変化について詳述する。具体的には、セパレータで外装缶22を押圧する場合における押圧力とセル幅の関係について、一般的に知られている平板状のセパレータと、図11に示した実施形態におけるセパレータ3Dとの比較を行う。
【0053】
図15乃至図16は本発明の発明者が行ったシミュレーションの結果を表すグラフで、膨張した際の外装缶22の形状と、外装缶22の変形に対する強度をインプットして、剛体の変形についてシミュレートしたものである。外装缶22の形状は、厳密に説明すると、外装缶22の開口部分から容易に電極体25を挿入できるようにするため、封口体23で閉塞する上面開口に近づくにつれて広がるように幅広面24が傾いている。このような形状であるため、外装缶22の幅寸法は、封口体側と底面側とで値が異なるが、以下の説明では、外装缶22の中央部分の幅寸法をセル幅として規定する。
【0054】
図15は、一般的な平板状のセパレータで角形電池2を押圧した際のセル幅と押圧力F(上記実施形態におけるバインドバー6の締結力)との関係を示すグラフである。具体的には、幅27mmの外装缶22が28.5mm程度まで膨張した角形電池2について検証されたものであり、縦軸を押圧力、横軸をセル幅としてプロットしている。図15から明らかなように、セル幅を元の寸法(図15では27mm)よりも縮小させように、外装缶22をセパレータで押圧すると、必要となる押圧力が急激に上昇する。
【0055】
膨張した外装缶22は、主に外装缶22の幅広面24が膨出する形状となっており、膨張している外装缶を押圧する場合、外装缶22の膨出している一部分のみがセパレータによって押圧される。一方、元の寸法まで押圧された角形電池2の外装缶22は、膨張していない外装缶22の外形と同形状、あるいはほぼ同形状となっている。そのため、この状態の外装缶22をさらに押圧してセル幅を縮小させる場合、外装缶22の膨出している一部分のみを押圧する場合と比較して、セパレータと外装缶22の接触する面積が変化し、外装缶22の寸法を縮小するために必要となる押圧力が急激に上昇する。
【0056】
加えて、前述の通り、外装缶22の形状は、封口体23側に広がるように幅広面24が傾斜しているため、元の寸法まで押圧された角形電池2の外装缶22をさらに平板状のセパレータで押圧する場合、平板状のセパレータは、外装缶22の封口体23側の稜線部24aと当接する。この当接部分は、外装缶22の稜線部24aの近傍で、外装缶22の変形しにくい部分に相当するため、セパレータと外装缶22の稜線部24aが当接した状態から、さらに外装缶22の寸法を縮小する場合には、必要となる押圧力が急激に上昇する。
【0057】
図16は、上記実施形態におけるセパレータ3Dで角形電池2を押圧した際のセル幅と押圧力Fとの関係を示すグラフである。具体的には、図15と同様に、幅27mmの外装缶22が28.5mm程度まで膨張した角形電池について検証されたものであり、縦軸を押圧力、横軸をセル幅としてプロットしている。図16に示されるように、上述した実施形態のセパレータ3Dで膨張した外装缶22を押圧する場合には、一般的なセパレータを用いた図15の結果とは異なり、セル幅が27mm(元の寸法)より縮小される状態となっても、押圧力は急激に変化しない。これは、セパレータの形状をセパレータ3Dのようにすることで、セル幅が変化しても、外装缶22とセパレータ3Dとの接触する面積があまり変化しないように構成することができるためである。
【0058】
上述の通り、セパレータ3は、稜線部24aと絶縁部31の間に空隙を設けているため、外装缶22のセル幅に依らず、稜線部24a近傍がセパレータ3と当接しないように構成することができる。また、押圧部32に傾斜面を設けることで、セパレータ3と外装缶22の幅広面24との接触面積が緩やかに変化するように構成することができる。
【0059】
一方、外装缶は、製造時に寸法がばらつき、この寸法誤差を完全に無くすことはできない。外装缶22に寸法誤差が生じた場合において、外装缶22のセル幅と押圧力Fとの関係は、図15及び図16において、グラフを左右に平行移動したものに相当する。例示的には、この外装缶22の寸法誤差は、27mmの外装缶22に対して、0.1mm程度のオーダーとなる。上記実施形態の電源装置1において、角形電池2が拘束されない場合、積層されている角形電池2の脱落や、バスバー8にかかる負荷の増大など、さまざまな問題が生じる。そのため、上記実施形態のような電源装置1において、角形電池2が拘束されないという状態はさけなければならず、バインドバー6は、誤差がまったくない場合の最適値(図15及び図16において、セル幅を27mmとする際に必要となる押圧力)よりも、多少大きな力で拘束できるように構成する必要がある。
【0060】
上述の通り、平板状のセパレータで外装缶22を押圧する場合、外装缶22のセル幅に応じて、押圧力Fが大きく変化するため、外装缶22の寸法誤差の影響を受けやすい。これに対し、上記実施形態のセパレータ3の構成では、押圧力Fが急激に変化することはないので、積層される角形電池2の寸法公差による影響を、一般的な平板状のセパレータで押圧する構成と比較して少なくすることができる。そのため、バインドバー6にかかる負荷のばらつきを小さくすることができるので、バインドバー6の剛性を必要以上に高める必要はなく、例えば、バインドバー6の厚さを薄くして、電源装置1を小型化することもできる。
【0061】
而して、直方体形状の外装缶22を有する角形電池2と、押圧部32を有するセパレータ3とを交互に積層させて、電池ブロック4を形成する。電池ブロック4の積層方向両端にエンドプレート5を配設した後、エンドプレート5にバインドバー6を架設する。具体的には、治具を用いて、電池ブロック4を積層方向に加圧し、バインドバー6をエンドプレート5にネジ止め固定する。このようにバインドバー6が架設された電池ブロック4は、治具を取り外しても、バインドバー6により、積層方向に加圧された状態で締結される。締結された電池ブロック4は、電池ブロック4の寸法が規制され、電池ブロック4を構成する角形電池2の膨張の状態に応じて、締結力が変化する。
【0062】
以上の電源装置1は、車載用の電源として利用できる。電源装置を搭載する車両としては、エンジンとモータのみで走駆するハイブリッド自動車やプラグインハイブリッド自動車、またはモータのみで走行する電気自動車等の電動車両があり、これらの車両の電源として使用される。
【0063】
また、車両用の電源装置のほかに、コンピュータサーバのラックに搭載可能なバックアップ電源装置、携帯電話等の無線基地局用のバックアップ電源装置、家庭内用、工場用の蓄電用電源、街路灯の電源等、太陽電池と組み合わせた蓄電装置、信号機等のバックアップ電源用等の用途にも適宜利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、電源装置に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 電源装置
2 角形電池
21 出力端子
22 外装缶
23 封口体
24 幅広面
24a 稜線部
24b 中央部
25 電極体
251 正極
252 負極
253 絶縁シート
26 電極集電部材
3 セパレータ
31 絶縁部
32 押圧部
32a 頂点部
32b 周縁部
33 傾斜面
33a 第一の傾斜面
33b 第二の傾斜面
33c 第三の傾斜面
33d 第四の傾斜面
4 電池ブロック
5 エンドプレート
6 バインドバー
7 電流遮断機構
71 導通部
71a 接続金属
71b ダイアフラム
72 インナーケース
8 バスバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平な直方体形状の外装缶を有し、該外装缶の幅広面を対向させて配設される複数の電池セルと、各電池セルの間に配設されるセパレータと、前記電池セルを加圧した状態で、前記電池セル及び前記セパレータを締結する締結具とを備え、
前記外装缶の幅広面は、幅広面の周縁に位置する稜線部と、幅広面の中央に位置する中央部とを含み、
前記セパレータは、隣接する前記電池セルを絶縁する絶縁部と、前記幅広面の中央部と対応する位置に形成され、前記中央部を押圧する押圧部とを有する電源装置。
【請求項2】
請求項1記載の電源装置において、
前記外装缶は、上面を開口した有底の収納ケースであり、
前記電池セルは、前記外装缶内に配設される電極体と、前記外装缶の開口を閉塞する封口体と、該封口体に立設され、前記電極体と電気的に接続される出力端子とを有し、
前記セパレータは、前記封口体の近傍に位置する前記稜線部と前記絶縁部との間に空隙を設けるように構成される電源装置。
【請求項3】
請求項2記載の電源装置において、
前記絶縁部は、前記外装缶の前記封口体側の端面よりも上方に延設される電源装置。
【請求項4】
請求項2に記載の電源装置において、前記電池セルは、前記外装缶内の内圧が高くなった際に、前記出力端子と前記電極体とを電気的に遮断する電流遮断機構を有し、該電流遮断機構は、前記封口体近傍に配置される電源装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれかに記載の電源装置において、
前記押圧部は、前記押圧部の中央に位置する頂点部と、頂点部の周縁に位置する周縁部とを有すると共に、
前記頂点部から上側に位置する前記周縁部にかけて形成される第一の傾斜面と、前記頂点部から下側に位置する前記周縁部にかけて形成される第二の傾斜面とを有する電源装置。
【請求項6】
請求項5記載の電源装置において、前記第一の傾斜面が、前記第二の傾斜面より、緩やかな勾配となるように形成される電源装置。
【請求項7】
請求項5記載の電源装置において、
前記電極体は、正極及び負極の積層体を巻取体に巻装して形成されると共に、前記巻取体の軸方向を、幅広面と平行で、且つ前記外装缶の左右側面方向に向けて、前記外装缶内に配設され、
前記押圧部は、前記頂点部から側方に位置する前記周縁部にかけて形成される第三の傾斜面及び第四の傾斜面とを有し、
さらに、前記押圧部は、前記第三の傾斜面が、前記第四の傾斜面と勾配が等しくなるように形成される電源装置。
【請求項8】
請求項5記載の電源装置において、
前記電流遮断機構は、前記出力端子の一方に設けられ、
前記押圧部は、前記頂点部から側方に位置する前記周縁部にかけて形成される第三の傾斜面及び第四の傾斜面とを有すると共に、
前記第三の傾斜面は、前記電流遮断機構と近接する位置に形成され、
さらに、前記押圧部は、前記第三の傾斜面が、前記第四の傾斜面よりも、急勾配となるように形成される電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−97888(P2013−97888A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237006(P2011−237006)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】