説明

電界放出型電子放出素子

【課題】従来の電子放出素子よりも少ない工程で製造され、単位面積あたり均一に電子を放出する電子放出素子を提供する。
【解決手段】長さ3μmを超える金属酸化物からなる突起形状が、金属酸化物面上の1mm×1mmの面積あたり5〜100000個の密度で存在し、かつ長さ3μmを超える金属酸化物からなる任意の突起形状100個の和平均長さをχ、標準偏差をσとした場合、χ≧5μm、かつχ+σ/2以上の長さを持つ突起形状の最大長さをLmax 、最小長さをLmin とした場合、1≧Lmin /Lmax ≧1/3であることを特徴とする金属酸化物からなる電界放出型電子放出素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定の突起構造を有する金属酸化物からなる電界放出型電子放出素子及びその製造方法に関する。本発明の電子放出素子は、画像・映像表示装置や照明等の光源の電子放出素子、及び微小真空管の電子放出素子として有効に利用できる。
【背景技術】
【0002】
電子放出素子としては、従来より、例えばブラウン管のような熱陰極素子が用いられてきた。しかし、熱陰極素子は、熱エネルギーによって電子を放出させるために、エネルギー効率が低いという課題がある。そのため、近年は電子放出に熱エネルギーを必要としない電界放出型電子放出素子の需要が大きくなりつつある。
電界放出型電子放出素子の一例として、図5に示す構造のアレイ状電界放出型電子放出素子が挙げられる。この冷陰極素子は、高導電率シリコン基板8上に、多数のコーン状の電子放出源31が隙間を開けて並列に配置されている。各電子放出源31は絶縁層30で分離された空洞内に配置され、この絶縁層30の上に、各電子放出源31の先端部を露出させる穴14を有する引出電極4が設けてある。この電界放出型電子放出素子では、引出電極4と電子放出源31の間に高電圧を印加することにより、電子放出源31の先端に強い電界が生じて、電子放出源31の先端から電子が放出される。
【0003】
この電界放出型電子放出素子はスピント型と称され、例えば以下のようにして製造される。まず、高導電率シリコン基板8の上に、絶縁層30となるシリコン酸化膜を形成し、その上に引出電極4となるモリブデン膜を形成する。次に、このモリブデン膜の上にホールパターンを形成し、このパターンを用いてモリブデン膜とシリコン酸化膜をエッチングする。これにより、モリブデン膜とシリコン酸化膜に、各電子放出素子の位置に対応させた穴が形成される。次に、モリブデン膜の穴の部分に、アルミニウムの犠牲層を斜め蒸着した後、モリブデンをシリコン酸化膜の穴にコーン状に蒸着する。次に、アルミニウムの犠牲層をエッチングにより除去する。
【0004】
しかしながら上記のスピント型電界放出型電子放出素子は、ここでも記述したように数多くの工程を必要とするために、生産のためには大掛かりな設備や多くのエネルギーを必要とするという課題がある。
かかる現状に鑑み、本発明者らは特許文献1に開示した方法、すなわち、有機金属熱分解法(以下「MOCVD法」と記述する。)を用いて突起形状を有する金属酸化物構造体を提案した。さらに、この金属酸化物構造体を用いて、特許文献2、3に示すような電界放出型電子放出素子を得ることを提案した。
また、針状結晶を電界放出型電子放出素子として利用した構造体が特許文献4に開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1乃至4に示された構造体を用いた電子放出素子は、電子放出素子の先端部に電界を生じさせることで電子が放出され、その結果として蛍光体を励起発光させることが記載されているものの、蛍光体が存在している部分のどの部分が励起発光しているかについては何ら開示されていない。蛍光体の存在している部分が部分的にしか励起発光していない場合、例えば画像・映像表示装置や照明等の光源及び微小真空管のような発光素子として不均一な発光しか得られないという課題があった。また、蛍光体部分全体を発光させるためにさらに高い電界を電子放出素子に生じさせると、発光効率が低下したり、電子放出素子の大きな電流を放出している部分の劣化が早まることがあるという課題もあった。いずれの場合であっても、多くの用途で適切な発光素子となり難いという課題があった。
【0006】
【特許文献1】再公表第99/57345号公報
【特許文献2】特開2000−276999号公報
【特許文献3】特開2002−274819号公報
【特許文献4】特許第2793702号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の従来技術をさらに発展させたものである。
本発明は、特定の突起構造を有する金属酸化物からなる電界放出型電子放出素子が上記課題を解決し、従来の電子放出素子よりも少ない工程で製造され、単位面積あたり均一に電子を放出する電子放出素子を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、高効率、低消費電力で均一な電界電子放出が起きる電界放出型電子放出素子について鋭意検討を行った結果、特定の構造、形状を有する突起構造が特定の分布で存在する金属酸化物構造体が上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は以下の通りのものである。
1.長さ3μmを超える金属酸化物からなる突起形状が、金属酸化物面上の1mm×1mmの面積当たり5〜100000個の密度で存在し、かつ長さ3μmを超える金属酸化物からなる任意の突起形状100個の和平均長さをχ、標準偏差をσとした場合、χ≧5μm、かつχ+σ/2以上の長さを持つ突起形状の最大長さをLmax 、最小長さをLmin とした場合、1≧Lmin /Lmax ≧1/3であることを特徴とする金属酸化物からなる電界放出型電子放出素子。
【0009】
2.長さχ+σ/2以上である金属酸化物からなる突起形状において、長さ(Lmin +Lmax )/2以上である突起形状の数が長さχ+σ/2以上である突起形状の数の1/3以上であることを特徴とする上記1.に記載の電界放出型電子放出素子。
3.長さ3μmを超える金属酸化物からなる突起形状断面の和平均円換算径が0.01〜100μmであることを特徴とする上記1.または2.に記載の電界放出型電子放出素子。
4.長さ3μmを超える金属酸化物からなる突起形状断面の円換算径に対する長さの比が1以上であることを特徴とする上記1.〜3.のいずれかに記載の電界放出型電子放出素子。
5.長さ3μmを超える金属酸化物からなる突起形状先端部の曲率半径が100nm以下であることを特徴とする上記1.〜4.のいずれかに記載の電界放出型電子放出素子。 6.突起形状の中心軸が実質的に並行であることを特徴とする上記1.〜5.のいずれかに記載の電界放出型電子放出素子。
【0010】
7.金属酸化物が金属酸化物単結晶であることを特徴とする上記1.〜6.のいずれかに記載の電界放出型電子放出素子。
8.金属酸化物中の金属が、Mg、Al、Si、Ti、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Ga、Y、Zr、In、Sn、Baの少なくとも1種類を含むことを特徴とする上記1.〜7.のいずれかに記載の電界放出型電子放出素子。
9.突起形状の少なくとも先端部が突起形状を構成する金属酸化物の仕事関数よりも小さい仕事関数を有する物質で被覆されていることを特徴とする上記1.〜8.のいずれかに記載の電界放出型電子放出素子。
10.突起形状を構成する金属酸化物の仕事関数よりも小さい仕事関数を有する物質が、アモルファス微結晶窒化炭素、微結晶窒化炭素、アモルファス炭素、微結晶炭素、ダイヤモンドの少なくとも1種類の膜であることを特徴とする上記9.に記載の電界放出型電子放出素子。
11.有機物質、無機物質、金属から選ばれる少なくとも1種類の材料で突起形状の間を固定することを特徴とする上記1.〜10.のいずれかに記載の電界放出型電子放出素子。
【0011】
12.Li、Be、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Sr、Y、Zr、Nb、Pd、Cd、In、Sn、Sb、Ba、W、Pb、Bi、Thからなる金属群の中から選ばれる少なくとも1種類の金属のβ−ジケトン、エチレンジアミン、ピペリジン、ピピラジン、シクロヘキサンジアミン、テトラアザシクロテトラデカン、エチレンジアミンテトラ酢酸、エチレンビス(グアニド)、エチレンビス(サリチルアミン)、テトラエチレングリコール、アミノエタノール、グリシン、トリグリシン、ナフチリジン、フェナントロリン、ペンタンジアミン、ピリジン、サリチルアルデヒド、サリチリデンアミン、ポルフィリン、チオ尿素から選ばれる配位子を配位してなる金属錯体、該金属群から選ばれる金属に、アルコキシド基、カルボニル基、カルボキシル基、アルキル基、アルケニル基、フェニルあるいはアルキルフェニル基、オレフィン基、アリール基、シクロブタジエン基をはじめとする共役ジエン基、シクロペンタジエニル基をはじめとするジエニル基、トリエン基、アレーン基、シクロヘプタトリエニル基をはじめとするトリエニル基などから選ばれる1種以上が結合してなる有機金属化合物及びそれらのハロゲン化物の中から選ばれる金属化合物を加熱して濃度1重量%以上の金属化合物気体にする工程(1)と、
該金属化合物気体を、空気中で基板上に吹きつけて突起形状を有する金属酸化物とする工程(2)と、
を経る電子放出素子の製造方法であって、金属化合物気体を空気中に放出する界面の温度をT1 、開口部界面の断面中心部において配管の末端と基板の間隔の1/2における温度をT2 、基板の温度をT3 とした場合、T1 <T2 <T3 であることを特徴とする上記1.〜11.のいずれかに記載の電界放出型電子放出素子の製造方法。
【0012】
13.金属化合物気体を含む配管中の水分圧が200Pa未満であることを特徴とする上記12.に記載の電界放出型電子放出素子の製造方法。
14.金属化合物がβ−ジケトンを配位子として含む金属錯体、金属アルコキシド、アルキル金属の少なくとも1種であることを特徴とする上記12.または13.に記載の電界放出型電子放出素子の製造方法。
15.上記1.〜11.のいずれかに記載の電界放出型電子放出素子を有する発光装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電界放出型電子放出素子は、製造が容易で、さらに本発明の電界放出型電子放出素子は、単位面積あたり均一に低消費電力で電子を放出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の電界放出型電子放出素子は、長さ3μmを超える金属酸化物からなる突起形状が、金属酸化物面上の1mm×1mmの面積当たり5〜100000個の密度で存在する突起形状を有する金属酸化物からなる。
長さ3μm以下の突起形状は、微細であるために、電界放出型電子放出素子としての用途では、突起形状の存在密度にかかわらず突起形状としての効果を発現しない。また、該突起形状を有する金属酸化物を製造する本発明の好ましい方法を用いた場合、長さ3μm以下の微小な突起形状が数多く形成される場合がある。長さ3μm以下の微小な突起形状は極めて密に形成されることが多く、電界放出型電子放出素子としての用途では実質的に平面としてしか作用しない。従って、本発明では長さ3μmを超える突起形状を構造因子として規定する。
【0015】
本発明の突起形状の長さとは、突起形状が基板面上から突起形状の頂点までの長さを示す。
長さ3μmを超える金属酸化物からなる突起形状の密度は、金属酸化物面上の1mm×1mmの面積当たり5〜100000個であることを特徴とし、好ましくは50〜70000個であり、さらに好ましくは250〜40000個である。長さ3μmを超える金属酸化物からなる突起形状の密度が金属酸化物面上の1mm×1mmの面積当たり5個未満の場合、電子放出素子の存在する部分から面状に均一に発光するだけの電界電子放出を得ることが困難である。長さ3μmを超える金属酸化物からなる突起形状の密度が金属酸化物面上の1mm×1mmの面積当たり100000個を超えた場合、各々の突起形状先端に電界を生じさせ難くなり、特に面状に均一な電界電子放出を得ることが困難である。
長さ3μmを超える金属酸化物からなる突起形状の密度を算出する母集団範囲としては、100μm四方における長さ3μmを超える金属酸化物からなる突起形状数、または長さ3μmを超える金属酸化物からなる突起形状10個を含む任意の長さを持つ正方形の範囲のいずれか範囲の大きい方を用いる。
【0016】
本発明の電界放出型電子放出素子は、長さ3μmを超える金属酸化物からなる任意の突起形状100個の和平均長さをχとした場合、χ≧5μmである金属酸化物からなることをまた特徴とし、好ましくはχ≧7μm、さらに好ましくはχ≧10μmである。
突起形状の和平均長さが5μm未満の場合、各々の突起形状先端に電界を生じさせにくくなり、電界電子放出を得ることが困難である。また、電界電子放出が得られた場合であっても、電子放出素子の存在する部分から面状に均一に発光するだけの電界電子放出を得ることが困難である。和平均長さの上限は使用する用途によって異なり特に限定はない。突起形状の耐久性と突起形状を形成する時間の観点から、χ≦1000μmが好ましい。さらに好ましくはχ≦500μmであり、特に好ましくはχ≦100μmである。
【0017】
本発明の電界放出型電子放出素子は、長さ3μmを超える金属酸化物からなる任意の突起形状100個の和平均長さをχ、標準偏差をσとした場合、χ+σ/2以上の長さを持つ突起形状の最大長さをLmax 、最小長さをLmin とした場合、1≧Lmin /Lmax ≧1/3である金属酸化物からなることもまた特徴とする。Lmin /Lmax <1/3の場合、Lmax の突起形状周辺のみで電界電子放出が起き、電子放出素子の存在する部分から面状に均一に発光するだけの電界電子放出を得ることが困難である。なお、Lmin /Lmax の上限は1であることは自明である。
【0018】
本発明の電界放出型電子放出素子は、電子素子という性格上、少なくとも電界放出型電子放出素子の一部表面は導電性を有する。突起形状を有する金属酸化物自体が導電性を有していても、突起形状を有する絶縁性の金属酸化物に導電性を有する物質を被覆及び/または塗布したもの、突起形状を有する導電性の金属酸化物に導電性を有する物質を被覆及び/または塗布したものであってもいずれでもよい。勿論、電界放出型電子放出素子の一部表面が導電性を有してさえいれば、通常公知のいずれの方法であっても突起形状を有する金属酸化物に導電性を付与してよい。
【0019】
本発明の導電性とは、比抵抗値10Ω・cm以下が好ましい。比抵抗値が10Ω・cmを超えていても、電界放出による電子放出が起きれば差し支えない。電子放出が電界放出によるかどうかは、例えば電子放出素子に生じる電界(E)と電子放出素子が放出する単位面積あたりの電流値(I)を用いて、1/Eを横軸、ln(I/E2 )を縦軸とした二次元プロット(Fowler−Nordheimプロット)を行い、右下がりの直線関係にあるかどうかで確認することができる。
【0020】
本発明の電界放出型電子放出素子は、長さ3μmを超える金属酸化物からなる任意の突起形状100個の和平均長さをχ、標準偏差をσとした場合、長さχ+σ/2以上である突起形状において、長さ(Lmin +Lmax )/2以上である突起形状の数が長さχ+σ/2以上である突起形状の数の1/3以上であることを特徴とする金属酸化物からなるものも電子放出素子の存在する部分から面状に均一に発光するだけの電界電子放出が得られるのでまた好ましい。さらに好ましくは長さχ+σ/2以上である突起形状において、長さ(Lmin +Lmax )/2以上である突起形状の数が長さχ+σ/2以上である突起形状の数の1/2以上である。
【0021】
本発明の電界放出型電子放出素子を構成する突起形状を有する金属酸化物を製造する好ましい方法を用いた場合、長さχ+σ/2以上である突起形状相互の長さ分布がLmax に近いところに最大の度数を示す場合がある。この場合も電子放出素子の存在する部分から面状に均一に発光するだけの電界電子放出が得られ好ましい。
長さχ+σ/2以上である突起形状において、長さ(Lmin +Lmax )/2以上である突起形状の数が長さχ+σ/2以上である突起形状の数の1/3未満の場合、電子放出素子の存在する部分から面状に均一に発光するだけの電界電子放出を得られない場合があり好ましくない。
【0022】
これは、以下の理由による。すなわち、電界電子放出において、アノードまたは引出電極とカソード電極との電位差をアノードまたは引出電極とカソード電極である電子放出素子先端部との距離で除したものの大きい方の値が電子放出素子に生じる電界値と見積もることができる。従って、アノードまたは引出電極とカソード電極との電位差が一定である場合、該突起形状の長さが長いものほどアノードまたは引出電極と電子放出素子先端部との距離が短くなるのでより高い電界が生じることになる。その結果、長さのより長い突起形状から優先的に電子が放出されやすくなり、電子放出素子の存在する部分から面状に均一に発光するだけの電界電子放出が得られない場合がある。
【0023】
本発明の電界放出型電子放出素子は、長さ3μmを超える金属酸化物からなる突起形状の断面の和平均円換算径が0.01〜100μmであることが好ましい。
本発明の突起形状の断面とは、突起形状の法線方向に垂直な面から突起形状を観察した場合の最大の径を持つ断面のことをいう。また、円換算径とは、例えば画像解析を始めとする従来公知の方法で断面積を計算し、得られた面積を円周率πで除した値の平方根の2倍の値で示される。
和平均円換算径を算出する母集団としては、100μm四方における長さ3μmを超える金属酸化物からなる突起形状、または長さ3μmを超える金属酸化物からなる突起形状の任意の100個のいずれか多い方を用いる。
断面の円換算径に対する長さの比(アスペクト比)は1以上が好ましく、さらに好ましくは5以上、特に好ましくは10以上である。アスペクト比は高ければ高いほど突起形状先端に電界が生じる効果が現れる。突起形状の耐久性と突起形状を形成する時間の観点からアスペクト比の上限が適宜決まる。
【0024】
突起形状の先端部は、先鋭化されている方が電界放出型電子放出素子として好適に利用でき、好ましい。具体的には曲率半径100nm以下が好ましく、40nm以下がより好ましい。ここで、曲率半径は、突起形状の凸状先端部の頂点部分を所定範囲で2次曲線に近似することにより算出される曲率半径である。以下、図4を用いて、基部が円柱状で先端部が円錐状である場合を例にとって曲率半径について説明する。
図4(a)は突起形状の斜視図であり、突起形状13は先端部13bをなす円錐の頂点Cと、基部13aをなす円錐の中心軸Oとが一致している。図4(b)は、中心軸Oに沿った平面で突起形状13を切断した面を示す図である。図4(b)には、突起形状13の外形線を示す線Eが示されるが、この線Eのうち先端部13bの頂点C(基部13aの底面円の中心点と同じ)から突起形状13の幅方向(基部13aの底面円の反対方向)両側に100nmの範囲Wにある部分E0 を、図4(c)に示すように、点Cを原点とした2次曲線に近似する。そして、この2次曲線を示す2次方程式(y=ax2 +bx+c)の2次の項の係数aを2倍した値の逆数(1/(2a))が曲率半径である。
曲率半径を算出する母集団としては、長さ3μmを超える金属酸化物からなる突起形状の任意の20個を用いる。
【0025】
本発明の長さ3μmを超える金属酸化物からなる突起形状の和平均長さは以下の方法による走査型電子顕微鏡(SEM)観察によって算出する。まず、突起形状を有する金属酸化物試料をその上側表面の中心部を通りかつ突起形状を有する金属酸化物の長手方向と平行に延びる平面に沿って切断して断面を得る。得られた断面に沿って所定の範囲をSEMで観察し、その範囲内で断面側から観察可能な複数の突起形状を有する金属酸化物の各々の側面全体が他の突起形状を有する金属酸化物によって視界が遮られない観察が可能な突起形状を有する金属酸化物のみを母集団として算出する。
【0026】
突起形状の具体例としては、棒状の場合、根元部分から先端部分まで径が変わらないもの、根元部分から先端部方向にある距離まで径が変わらないもの、根元部分の径が小さく、先端部に行くにつれ一度形が大きくなった後、再度径が減少するもの、根元部分から先端部分に行くにつれ形が少しずつ減少していくもの、先端近くのある距離から角錐または円錐または円錐台や半球のような形状を取っているもの等がある。さらに、角柱状の場合、具体的な形状は結晶構造により異なるが、金属酸化物が酸化亜鉛の場合は六角柱、酸化アルミニウムの場合は四角柱あるいは六角柱、酸化チタンの場合は四角柱であることが多い。また、それ以外の多角形を断面の形状に持つ角柱もある。
【0027】
突起形状の中心軸は相互に実質的に平行であることが好ましい。突起形状の中心軸が相互に実質的に平行であることは、SEM、X線ロッキング曲線法、φ−スキャン法等通常公知の方法によって確認することができる。
突起形状の中心軸が実質的に平行な場合、突起形状からの電界放出電子が効率よく突起形状を有する電子放出素子に対する面に到達し、励起発光する面を効率よく形成することができる。
また、突起形状が金属酸化物結晶よりなる場合は、突起形状は相互に実質的に平行に、かつ突起形状が成長している結晶軸と同一方向に成長していることが製造効率、製造安定性に優れ好ましい。さらに、金属酸化物結晶の結晶の結晶軸が同一方向にある、すなわち結晶軸方位が揃っていることが好ましく、例えば、X線ロッキング曲線法において測定される結晶軸方位のゆらぎが10度以内である好ましく、5度以内であることがさらに好ましい。
【0028】
突起形状を有する金属酸化物が単結晶であるものもまた好ましい。金属酸化物が単結晶であることは、φ−スキャン法等通常公知の方法によって確認することができる。突起形状を有する金属酸化物が単結晶である場合、金属酸化物の電気抵抗が小さくなりやすく、また均一な電界電子放出が起きやすく好ましい。
突起形状を有する金属酸化物は、金属種が、周期律表において水素を除く1族、2族、硼素を除く13族、窒素と燐を除く15族、Po及び3、4、5、6、7、8、9、10、11、12族に属する各元素からなる酸化物である。これらの中でもLi、Be、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Sr、Y、Zr、Nb、Pd、Cd、In、Sn、Sb、Ba、W、Pb、Bi、Thがより好ましく、さらにMg、Al、Si、Ti、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Ga、Y、Zr、In、Sn、Baが特に好ましい。これらの金属は単独でも使用できるし、複数種の金属を有する金属酸化物であってもよい。
【0029】
金属酸化物中の金属種、また複数種の金属を有する金属酸化物の金属比は形成された突起形状を有する金属酸化物の形態、特に突起形状の長さ分布や存在密度に影響を及ぼすことがある。
突起形状を有する金属酸化物の具体例としては、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ニオブ等公知の金属酸化物が挙げられる。また、アルミニウムドープ酸化亜鉛のように他金属原子でドーピングされた金属酸化物も挙げられる。勿論、これ以外の金属酸化物であっても差し支えない。
突起形状を有する金属酸化物は、結晶質、非晶質を問わないが、結晶質であることが相互に実質的に平行な突起形状を形成しやすく好ましい。結晶質は1種以上の単結晶であっても、多結晶であっても、結晶部と非晶部を同時に有する1種以上の半結晶性物質であっても、またこれらの混合物であってもよい。特に好ましくは単結晶である。突起形状を有する金属酸化物が単結晶である場合、金属酸化物の電気抵抗が小さくなりやすく、また均一な電界電子放出が起きやすく好ましい。
【0030】
突起形状を有する金属酸化物において、突起形状を除いた部分の形状は、実質的に平面及び/または曲面を有していればいずれでもよいが、厚みに対して表面積が大きい板状が好ましい。また、板状の場合には、突起を有する面の表面積が他の面と比較して最大である面であることが好ましい。
本発明の電界放出型電子放出素子は、用途によってはさらに低い電界を突起形状先端に生じさせることで電界電子放出を得ることが必要な場合がある。この場合、突起形状最先端の最表面部分をなす物質よりも低い仕事関数を有する物質をさらに被覆することもまた好ましい。さらに好ましくは、突起形状最先端をさらに被覆する物質の仕事関数が、該物質の被覆以前に突起形状最先端の最表面をなす物質の仕事関数の3/4以下であり、特に好ましくは2/3以下である。
【0031】
仕事関数を測定する方法としては、光電子放出の限界波長より求める方法、熱電子電流密度の温度依存性、熱電子電流密度の電界強度依存性、標準試料との接触電位差、より求める方法等通常公知のいずれの方法であってもよい。
突起形状を有する金属酸化物とより低い仕事関数を有する物質の組み合わせの具体例として、突起形状を有する金属酸化物が酸化亜鉛(仕事関数5.2eV)に対しては、より低い仕事関数を有する物質が窒化炭素(仕事関数2.1eV)やアモルファスカーボン(仕事関数0.7eV)等が挙げられる。
【0032】
本発明の電界放出型電子放出素子は、金属酸化物からなる突起形状が所定の密度で存在する。このため、突起形状の間に空隙が存在する。このため、使用する状況によっては使用時に変形や突起形状の折損等が起きる可能性がある。これを防ぐために、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エラストマー、シアノアクリレートのような瞬間接着剤等の有機物質、ガラス、セラミックス等の無機物質、金属等で突起形状の間を固定することもできる。突起形状の間を固定する物質としては、絶縁物が好ましい。
本発明の電界放出型電子放出素子は、基板の上に形成されてもよい。
本発明の電界放出型電子放出素子が形成される基板の部分は、基板が実質的に平面であることが突起形状の長さが揃いやすく好ましい。
【0033】
基板の材料としては、例えば、酸化アルミニウムのような金属酸化物の単結晶、半導体の単結晶、セラミック、シリコンを含む金属、ガラス、プラスチックなどが挙げられる。ガラス板やプラスチック板を使用する際は、表面が配向処理されているものが好ましい。これらの中で好ましく用いられる基板材料としては、シリコンを含む金属、金属酸化物、及びZnTe、GaP、GaAs、InP等の半導体の単結晶である。
金属酸化物や半導体の単結晶からなる基板を使用する場合には、基板の単結晶種として、その格子定数が、基板面上にエピタキシャル成長させる突起形状を有する金属酸化物の結晶種の格子定数と近いものを選択することが好ましい。格子定数の測定は、広角X線回折法等の従来公知の方法で行うことができる。
基板の材料となる単結晶種としては、突起形状を有する金属酸化物の格子定数(A)と、基板をなす単結晶種(B)との比(A/B)が、好ましくは0.8〜1.2、より好ましくは0.9〜1.1、さらに好ましくは0.95〜1.05となるものである。
基板の材料となる単結晶種として特に好ましく用いられるものは、シリコンや、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、SrTiO3 等の金属酸化物である。
【0034】
本発明の電界放出型電子放出素子を構成する突起形状を有する金属酸化物の好ましい製造方法は、以下の工程を含むことを特徴とする。
すなわち、Li、Be、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Sr、Y、Zr、Nb、Pd、Cd、In、Sn、Sb、Ba、W、Pb、Bi、Thから選ばれる少なくとも1種類の金属の金属化合物であって、該金属化合物が、配位子として、β−ジケトン、エチレンジアミン、ピペリジン、ピピラジン、シクロヘキサンジアミン、テトラアザシクロテトラデカン、エチレンジアミンテトラ酢酸、エチレンビス(グアニド)、エチレンビス(サリチルアミン)、テトラエチレングリコール、アミノエタノール、グリシン、トリグリシン、ナフチリジン、フェナントロリン、ペンタンジアミン、ピリジン、サリチルアルデヒド、サリチリデンアミン、ポルフィリン、チオ尿素から選ばれる1種以上を有する錯体、及び、アルコキシド基、カルボニル基、カルボキシル基、アルキル基、アルケニル基、フェニルあるいはアルキルフェニル基、オレフィン基、アリール基、シクロブタジエン基をはじめとする共役ジエン基、シクロペンタジエニル基をはじめとするジエニル基、トリエン基、アレーン基、シクロヘプタトリエニル基をはじめとするトリエニル基などから選ばれる1種以上を有する有機金属化合物及びそれらのハロゲン化物から選ばれる基を有する金属化合物であり、該金属化合物を加熱して1重量%以上の金属化合物気体にする工程(1)と、該金属化合物気体を、空気中で基板上に吹きつけて突起形状を有する金属酸化物とする工程(2)とからなる。
【0035】
まず、原材料である金属化合物を気体にする方法について説明する。
金属化合物を気体にする方法としては、例えば、金属化合物を蒸気圧が充分高くなる温度に加熱して気体にする方法が挙げられる。なお、本発明においては、気体にした後に得られた金属化合物の蒸気を冷却したり、金属化合物を液状で噴霧したり、金属化合物を固体の状体ですりつぶした後キャリアガスによって噴霧したり、といった、いわゆる微粒子をミスト状にして吹きつける方法でも差し支えない。
金属化合物を加熱して気体にする好ましい温度は30〜600℃であり、さらに好ましくは50〜300℃の範囲である。金属化合物を加熱する温度が600℃を超えると、本発明で好ましく用いられる金属化合物が基板に到達する前に熱分解を起こしてしまい、基板上で金属酸化物を形成しにくくなり好ましくない。
【0036】
なお、この工程では、系内に、酸素や水を存在させないか、その存在量を極めて少なくしておくことが好ましい。特に好ましくは金属化合物気体を含む配管中の水分圧が200Pa未満である。このようにしないと、金属化合物と酸素及び/または水との反応が生じ、配管につまりが生じたり、所望の形態の金属酸化物が基板上に形成されなかったりするおそれがある。但し、使用する金属化合物の酸素及び水との反応速度が極めて遅い場合には、系内に酸素や水を共存させてもよい。特に、例えばノズルの開口部面積が大きい場合やノズルの開口部が密に存在している場合のように、配管の末端部と突起形状を有する金属酸化物が形成される部分で金属化合物気体が酸素や水と十分に混合しない場合はあらかじめ系内に反応媒体である酸素や水を共存させる、または導入することが好ましい。
【0037】
系内に酸素や水を共存させる、または導入する場合は、不活性ガスをキャリアガスとして使用してもよい。特に好ましくは、金属化合物気体を含む配管中の水分圧が200Pa未満で系内に酸素のみ、または酸素と不活性ガスを共存させる、または導入することである。系内に酸素のみ、または酸素と不活性ガスを共存させる、または導入する場合、一旦酸素、または酸素と不活性ガスを乾燥させてから系内の水分圧が200Pa未満になるように共存させる、または導入することが好ましい。本発明の好ましい製造方法で使用される原材料である金属化合物には、酸素共存下で加熱されても、水共存下で加熱されても金属化合物を形成するものがある。このような金属化合物の場合、水共存下で加熱されて金属酸化物を形成する速度が酸素共存下で加熱されて金属酸化物を形成する速度よりも大幅に大きくなり、形成される金属酸化物が所望の形態を取らない場合がある。金属化合物気体と酸素や水を混合させる場所、温度、混合比率等の条件は金属化合物気体の反応性や金属化合物気体と酸素や水の濃度等に依存する。また、金属化合物気体と酸素や水を混合させる場所、温度、混合比率等の条件は形成された突起形状を有する金属酸化物の形態、特に突起形状の長さ分布や存在密度に影響を及ぼすことがある。
【0038】
本発明で用いる空気は、必要に応じ脱水処理や酸素及び/または水を添加しても差し支えない。
原材料である金属化合物としては、酸素及び/または水と反応して目的とする金属酸化物が形成されるものを使用する。
このような金属化合物としては、上記した金属化合物であればいずれでも差し支えない。
この中でも、金属化合物がβ−ジケトンを配位子として含む金属錯体、金属アルコキシド、アルキル金属がより好ましい。β−ジケトン配位子の例としては、アセチルアセトン配位子、ジピバロイルメタナト配位子、ジイソブチリルメタナト配位子、イソブチリルピバロイルメタナト配位子、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−オクタンジオナト配位子、6−エチル−2,2−ジメチル−3,5−オクタンジオナト配位子等が挙げられる。アルコキシド基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
以上のようにして得られた金属化合物気体は、次に、所定圧力の空気が存在する雰囲気中で基板に向けて移動させ、金属化合物を酸素及び/または水と反応させて、基板上に金属酸化物として成長させる。
【0039】
金属化合物の気体はそれのみをそのまま基板面に移動させてもよいし、キャリアガスを用いて積極的に移動させ、キャリアガスとの混合状態でノズルから基板に吹きつけてもよい。この場合のキャリアガスの流量は、気化及び/または微粒子化された金属化合物の温度や基板を設置する空間の雰囲気によってその最適値が異なるが、基板の設置空間が室温、常圧雰囲気である場合には、キャリアガスの流量を、空間体積値が20/分以下になるようにすることが好ましく、5/分以下となるようにすることがさらに好ましい。ここで、空間体積値とは、キャリアガスの流量R(1分あたりの体積)と、(1)の工程で金属化合物を気体化及び/または微粒子化させる加熱槽(キャリアガスが導入される空間)の体積Vとの比(R/V)に相当する。
【0040】
キャリアガスは、原材料の金属化合物と反応しないものであれば特に限定されない。具体例としては、窒素ガスやヘリウム、ネオン、アルゴン等の不活性ガス、炭酸ガス、有機弗素ガス、あるいはヘプタン、ヘキサン等の有機物質等が挙げられる。これらのうちで、安全性、経済性の上から不活性ガスが好ましい。特に窒素ガスが経済性の面より好ましい。
キャリアガスを用いて、金属化合物をノズルから基板に吹きつける方法を採用する場合は、ノズルの吹き出し口と基板との距離を所定範囲内とすることが好ましい。この範囲は、吹き出し口の開口部の長軸(断面が長方形である場合には長辺の長さ、正方形である場合には1辺の長さ)をL、吹き出し口と基板11面との距離をKとしたときに、その比(K/L)が0.01以上1以下となるようにすることが好ましく、0.05以上0.7以下となるようにすることがより好ましく、0.1以上0.5以下となるようにすることがさらに好ましい。この比(K/L)が1を超えると、金属化合物が金属酸化物に変換される効率が低くなる。また、形成された突起形状を有する金属酸化物の形態、特に突起形状の長さ分布や存在密度に影響を及ぼすことがある。
【0041】
基板の設置空間の雰囲気は、減圧下、常圧下、あるいは加圧下のいずれでもよい。しかしながら、高度な減圧下、例えば超真空下であると、金属酸化物の成長速度が遅く、生産性に劣るため好ましくない。加圧下で実施する場合、金属酸化物の成長速度に関しては問題ないが、加圧するための設備が必要となって好ましくない。従って、基板の設置空間の雰囲気は、1.01×102 〜2.03×106 Paとすることが好ましく、1.01×104 〜1.01×106 Paとすることがより好ましく、常圧とすることが最も好ましい。
基板温度は原材料の基板面での拡散距離及び/または金属酸化物の成長速度や突起形状の長さ分布を決定する因子である。
【0042】
拡散距離によって単位面積あたりの金属酸化物結晶の数、すなわち核生成密度が決定される。一般に、基板温度が高いと核生成密度は小さくなって、単位面積あたりの金属酸化物結晶の数が小さくなる。基板温度が低いと核生成密度は大きくなって、単位面積あたりの金属酸化物結晶の数が大きくなる。
金属酸化物の成長速度によって単位面積あたりの金属酸化物、特に突起形状の長さ及び長さ分布が決定される。一般に、基板温度が高いと金属酸化物の成長速度が高くなって、突起形状の長さが長くなる。また、長さ分布も大きくなる。基板温度が低いと金属酸化物の成長速度が低くなって、突起形状の長さが短くなる。また、長さ分布も小さくなる。従って、基板温度は、必要とする突起形状の形成密度及び長さ分布に応じて設定すればよい。この基板温度としては、0℃〜800℃が好ましく、20℃〜800℃がより好ましく、100℃〜700℃の範囲がさらに好ましい。
【0043】
また、金属化合物気体が基板に至るまでの温度分布もまた原材料の基板面での拡散距離及び/または金属酸化物の成長速度や突起形状の長さ分布を決定する因子になる場合がある。好ましくは、金属化合物気体を空気中に放出する界面の温度をT1 、開口部界面の断面中心部において、配管の末端と基板の間隔の1/2における温度をT2 、基板の温度をT3 とした場合、T1 <T2 <T3 である。T1 >T3 の場合、突起形状の存在密度が高くなりすぎ好ましくない。また、成長速度が低く好ましくない。T1 >T2 <T3 の場合、突起形状の存在密度が高くなりすぎ好ましくない。また、突起形状の長さの分布が大きくなりすぎ好ましくない。
【0044】
本発明の金属化合物気体を空気中に放出する界面とは、金属化合物加熱槽や金属化合物加熱槽に接続された配管、及び該配管に接続されたノズル等、金属化合物加熱槽に接続された閉鎖系の開口部と空気中の界面部分のことをいう。
本発明の開口部界面の断面中心部とは、金属化合物加熱槽や金属化合物加熱槽に接続された配管、及び該配管に接続されたノズル等、金属化合物加熱槽に接続された閉鎖系の開口部と空気中の界面部分を基板法線方向に垂直な断面で観察した開口部面を円近似した場合の中心部、または略多角形近似した場合の重心部のことをいう。開口部が複数存在するときは、複数の開口部外周で囲まれる部分を基板法線方向に垂直な断面で観察した部分を円近似した場合の中心部、または略多角形近似した場合の重心部のことをいう。
【0045】
1 <T2 <T3 とする具体的な方法として、金属化合物加熱槽に接続された閉鎖系の開口部と基板表面の周辺を加熱する方法、金属化合物加熱槽に接続された閉鎖系の開口部と基板表面の周辺に仕切板等を設けて基板加熱の輻射熱を利用する方法、金属化合物加熱槽に配管を介して接続されたノズルが基板加熱台を覆うようにして基板加熱の輻射熱を利用する方法、及びこれらの方法を組み合わせる方法がある。勿論これ以外の方法であっても、通常公知の方法でT1 <T2 <T3 とすることができればいずれの方法でも差し支えない。
【実施例】
【0046】
本発明を実施例などに基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例などにより何ら限定されるものではない。
[実施例1]
図1に概略図を示す装置を用いた。この製造装置は、キャリアガスである窒素の供給源51と、キャリアガスの流量を調整する流量計57と、原材料である金属化合物を気化する加熱槽53a及び53bと、キャリアガスを加熱槽53a及び53bに導入する配管54と、加熱槽53a及び53bで気化された金属化合物を吹き出し口58に向かわせる配管55、59と、基板11を加熱状態で保持する基板ステージ56、さらに反応媒体である空気の供給源61と、流量を制御された空気を配管59に導入するための配管60とで構成されている。配管54には液体窒素トラップ52が設けてある。加熱槽53aと53bは直列に配置されている。流量計57にはニードルバルブ57aが設けられており、気体の入/切及び気体流量の調節ができるようになっている。液体窒素トラップ52は、窒素の供給源51から供給されたキャリアガス中に含まれる水分を除去するためのものである。
【0047】
本実施例では、窒素の供給源として圧縮窒素ボンベ(水分圧1.4Pa以下、富士アセチレン(株)製)を用いた。また、空気の供給源61は、空気をコンプレッサー(図示しない)で7.07×105 Paに加圧してエアードライヤー(図示しない)で−40℃に冷却して空気中の水分を除去している。このときの空気中の水分圧は3.4Paであった。
吹き出し口58に入る前に、キャリアガスと原料気体は配管59の部分で混合される。配管59の先端部には所定形状の吹き出し口58が接続してあり、この吹き出し口58の開口部58aは、配管59からの気体が、基板11上の金属酸化物12を形成する面全体に吹き出されるように形成されている。また、配管54、55、59及び吹き出し口58(図1中、三重線、二重線で記載されている部分)はリボンヒーターで加熱されている。なお、実施例1では、吹き出し口58は内径80mmφ、高さ46mm、厚さ10mmの中空の円錐状物を用いた。円錐の頂点部分に配管59との接合部があり、円錐の底面(円をなす部分)に開口部58aが形成されている。吹き出し口58の開口部58aは1mmφの穴が中心間距離2mmで千鳥に配置されている。穴の配置されている部分の範囲は、最も外側の穴の中心相互の距離で20mm四方である。
【0048】
加熱槽53aにAl(C5 7 2 3 を仕込み、104℃に加熱した。加熱槽53bにZn(C5 7 2 2 を仕込み、108℃に加熱した。吹き出し口58を200℃に加熱した。この温度をT1 とする。
吹き出し口58の開口部58aの穴の配置されている部分の中央部に基板11としてn−Si(100)基板((株)SUMCO製、比抵抗率≦0.1Ω・cm、25mm角)を配置した。なお、基板11には15mm角の正方形の開口部を持つ厚さ0.5mmの石英板をマスクとして配置し、金属酸化物12の形成部位を決めた。石英板は開口部の中心部を吹き出し口58の開口部58aの穴の配置されている部分の中心部に一致させ、さらに石英板の開口部の辺と吹き出し口58の開口部58aの最も外側の穴の中心からなる線が相互に平行になるように配置した。基板11は基板ステージ56により650℃になるように加熱した。この温度をT3 とする。吹き出し口58の開口部58aの穴の配置されている部分の中心部において、吹き出し口58の開口部58aの末端と基板11の間隔の1/2における温度(T2 )は245℃であった。
【0049】
加熱槽53aに2.5dm3 /分の流量で乾燥窒素ガスを導入した。同時に、吹き出し口58に接続している配管59内に2.5dm3 /分の流量で乾燥空気を導入した。吹きつけ開始から60分後、得られた金属酸化物12を基板11ごと取り外した。
得られた金属酸化物12について、図2に示すような回路を形成して電界放出特性及び発光特性の評価を行った。
導電性膜D2で被覆されたベース板G2の導電性膜側に金属酸化物12が形成された基板11が接触、導通するように取りつけた。
導電性膜D2上にアルミナからなる区画部材6bを介して、ステンレス製メッシュからなる引出電極4を取りつけた。導電性膜D2と引出電極4の間隔は250μmであり、導電性膜D2と引出電極4は電気的に絶縁されている。引出電極4を構成するステンレス製メッシュは0.3mm角の正方形の穴が0.5mm間隔で開けられている。この0.3mm角の正方形の穴が突起形状の先端部を露出させる穴14になる。
【0050】
図1に概略図を示した装置を用いて、以下の手順で透明導電性膜D1が被覆された石英基板G1の透明導電性膜側に蛍光体Hを形成した。
石英基板G1の透明導電性膜D1が形成された側を吹き出し口58に向けて置き、650℃に加熱する。加熱槽53b内にY(C11192 3 、(C11192 =ジピバロイルメタナト、以下「DPM」と記載する。)とEu(DPM)3 を2/1の重量比で仕込み、220℃に加熱する。加熱槽53a、配管55及び吹き出し口58はリボンヒーターで230℃に加熱されている。
【0051】
吹き出し口58の開口部58aの穴の配置されている部分の中央部に透明導電性膜D1が被覆された石英基板G1(25mm角)を配置した。なお、透明導電性膜D1が被覆された石英基板G1には15mm角の正方形の開口部を持つ厚さ0.5mmの石英板をマスクとして配置し、蛍光体Hの形成部位を決めた。石英板は開口部の中心部を吹き出し口58の開口部58aの穴の配置されている部分の中心部に一致させ、さらに石英板の開口部の辺と吹き出し口58の開口部58aの最も外側の穴の中心からなる線が相互に平行になるように配置した。透明導電性膜D1が被覆された石英基板G1は基板ステージ56により700℃になるように加熱した。
この状態で、窒素の供給源51から配管54内に1.2dm3 /分の流量で窒素を導入することにより、金属化合物の気体と窒素ガスとの混合気体を、配管55を介して吹き出し口58から石英基板G1の透明導電性膜D1上に50分間吹きつけて蛍光体Hを形成する。これにより、蛍光体HとしてY2 3 :Euが形成される。また、この際、吹き出し口58に空気は導入しなかった。
【0052】
引出電極4上にアルミナからなる区画部材6aを介して、蛍光体H及び透明導電性膜D1が被覆された石英基板G1を取りつけた。この際、蛍光体Hが形成された面は引出電極4側に向いている。また、蛍光体Hが形成された部分は、突起形状を有する金属酸化物12が形成された部分と垂直方向から観察して合致するように配置されている。透明導電性膜D1と引出電極4の間隔は10mmであり、透明導電性膜D1と引出電極4は電気的に絶縁されている。
こうして作製された構造物を真空チャンバー内に入れた。この際、透明導電性膜D1は真空チャンバーの端子(図示しない)を通じて電圧計を有する可変直流電源B2の+側に、引出電極4は真空チャンバーの端子(図示しない)を通じて電圧計を有する可変直流電源B1の+側に接続した。また、導電性膜D2には真空チャンバーの端子(図示しない)を通じて電流計Aを接続した後、電圧計を有する可変直流電源B1及びB2の−極側及びアースに接続した。電流計Aで示される電流値が電子放出素子から放出される電子の値となる(カソード電流値)。図2において、点線から左側の部分が真空チャンバー内に、点線から右側の部分が真空チャンバー外に存在していることになる。また、真空チャンバーの上面部分はガラスになっており、蛍光体H及び透明導電性膜D1が被覆された石英基板G1はその上面部から発光状態を観察できるようになっている。
【0053】
真空チャンバーを密閉後、真空チャンバー内部を7×10-6〜7×10-5Paになるように排気を行った。直流可変電源B2を3000Vに固定した。直流可変電源B1は、500Vから安定したカソード電流値が得られるまで毎分50Vの割合で昇圧した。その後、100〜150μA/cm2 の安定したカソード電流値を示す電圧値、または安定したカソード電流値を示す約2500〜3000Vのいずれか低い電圧値を示すように直流可変電源B1の電圧を調整した。このときの電流値を表1記載のカソード電流とした。
蛍光体Hの垂直方向から、蛍光体Hが発光している部分の面積を目視観察した。この際、蛍光体Hが存在している面と同寸法の15mm×15mmの範囲に縦横1mm刻みで格子が描かれている透明板を介し、発光している部分と発光していない部分を区別することで発光面積比を算出して、表1に示した。
【0054】
電界放出特性及び発光特性の評価終了後、真空チャンバーから金属酸化物12を基板11ごと取り出した。取り出された金属酸化物12は基板11ごとスパッタリングにより導電性物質として金を金属酸化物上に蒸着した後、中央部で基板11ごと2つに分割した。SEMを用いて、一つの試料は断面方向から観察して突起形状各々の長さ、突起形状の曲率半径を測定した。もう一つの試料は平面方向から観察して突起形状の存在密度、突起形状各々の円換算径を測定した。本発明記載の方法で、測定された突起形状各々の長さ、突起形状各々の曲率半径、突起形状各々の円換算径を母集団として、長さ3μmを超える金属酸化物からなる任意の突起形状100個の和平均長さ(χ)、標準偏差(σ)、存在密度、円換算径、曲率半径を算出して、表1に示した。さらに、同じ母集団からχ≧5μm、かつχ+σ/2以上の長さを持つ突起形状の本数及び最大長さLmax 、最小長さLmin を観察し、Lmin /Lmax を算出して、表1に示した。
また、250μmから突起形状の長さ3μmを超える金属酸化物からなる任意の突起形状100個の和平均長さ(χ)(μm)を減じた値で表1記載のカソード電流が得られた直流可変電源B1の電圧を除した。この値を引出電界として、表1に示した。
【0055】
[実施例2]
金属酸化物12を形成する時間を180分とした以外は実施例1と同じ方法で金属酸化物12を形成し、電界放出特性及び発光特性の評価を行った。結果を表1に示した。
[実施例3]
加熱槽53aの温度を96℃とした以外は、実施例2と同じ方法で金属酸化物12を形成し、実施例1と同じ方法で電界放出特性及び発光特性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0056】
[実施例4]
空気流量を3.0dm3 /分とした以外は実施例2と同じ方法で金属酸化物12を形成し、実施例1と同じ方法で電界放出特性及び発光特性の評価を行った。結果を表1に示した。
[実施例5]
加熱槽53aの温度を107℃とし、加熱槽53bの温度を121℃とした。さらに、窒素流量及び空気流量を4.0dm3 /分とし、基板11の温度を700℃とした以外は実施例1と同じ方法で金属酸化物12を形成し、電界放出特性及び発光特性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0057】
[実施例6]
実施例2と同じ方法で金属酸化物12を形成した。得られた金属酸化物12上に、基板11ごと図3に示す装置(マイクロ波プラズマCVD装置)を用いてアモルファス窒化炭素を形成した。
このマイクロ波プラズマCVD装置は、プラズマを生じさせる気体としてのアルゴンの供給源71と、プラズマを生じさせる気体の流量を調整する流量計81、プラズマを生じさせる気体中の水分を除去するP2 5 トラップ70、プラズマを生じさせる気体をチャンバー75に導入する配管73、プラズマを生じさせる気体にマイクロ波を印加することによってプラズマを発生させるマイクロ波発生装置76を有する。また、窒化炭素膜を形成する原料は原材料供給源72で気化され、水分を除去するP2 5 トラップ70を通って配管74の吹き出し口80からチャンバー75内に設けた基板ステージ上の基板11に吹きつけられる。このとき、吹き出し口80から放出される原材料は、Arプラズマによって分解され、基板11上の金属酸化物12上にアモルファスまたは微結晶窒化炭素膜が形成される。チャンバー75は、メカニカルブースター77及びロータリーポンプ78に接続され、チャンバー内の圧力が10Paになるように設定されている。マイクロ波は周波数2.45GHz、100Wになるように設定されている。
【0058】
金属酸化物12の表面にアモルファス窒化炭素を形成するに先立って、平面基板上にアモルファス窒化炭素を形成し、仕事関数を測定した。
30mm角のn−Si(100)基板をマイクロ波プラズマCVD装置の試料ステージに置いた。
窒化炭素の原料として、CH3 CN0.5gを原料供給槽72内で室温(23℃)で気化させ、P2 5 トラップ70で水分を除去し、チャンバー75に導入して、金属酸化物12の上から5mmの間隔で配置した吹き出し口80から100℃に加熱されたn−Si(100)基板の表面に吹きつけた。一方、プラズマを生じさせる気体として流量100sccmでArガスを供給し、このArガスにマイクロ波発生装置76によりマイクロ波を印加することで発生させたプラズマにより、n−Si(100)基板に吹きつける原料ガスを分解させて、n−Si(100)基板の表面にアモルファス窒化炭素を形成した。得られたアモルファス窒化炭素が形成されたn−Si(100)基板を取り出し、ケルビン法により仕事関数を算出した。形成されたアモルファス窒化炭素の仕事関数は2.1eVであった。
【0059】
次いで、金属酸化物12の表面にアモルファス窒化炭素を形成した。さきに得られた金属酸化物12は基板11ごとマイクロ波プラズマCVD装置の試料ステージに置いた。
窒化炭素の原料として、CH3 CN0.5gを原料供給槽72内で室温(23℃)で気化させ、P2 5 トラップ70で水分を除去し、チャンバー75に導入して、金属酸化物12の上から5mmの間隔で配置した吹き出し口80から100℃に加熱された基板11に形成された金属酸化物12の表面に吹きつけた。一方、プラズマを生じさせる気体として流量100sccmでArガスを供給し、このArガスにマイクロ波発生装置76によりマイクロ波を印加することで発生させたプラズマにより、基板11に形成された金属酸化物12に吹きつける原料ガスを分解させて、基板11に形成された金属酸化物12の表面にアモルファス窒化炭素を形成した。
得られたアモルファス窒化炭素が形成された金属酸化物12は基板11ごと実施例1と同じ方法で電界放出特性及び発光特性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0060】
[実施例7]
実施例2と同じ方法で金属酸化物12を形成した。取り出された金属酸化物12は基板11ごとスパッタリングにより導電性物質として金を金属酸化物上に蒸着した後、実施例1と同じ方法で電界放出特性及び発光特性の評価を行った。結果を表1に示した。
[比較例1]
加熱槽53bの温度を121℃にし、基板11は基板ステージ56により670℃になるように加熱した。また、金属酸化物12を形成する時間を30分とした以外は実施例1と同じ方法で金属酸化物12の形成、電界放出特性及び発光特性の評価を行った。結果を表2に示した。
【0061】
[比較例2]
乾燥空気に通じる流量計57に設けられたニードルバルブ57aを閉じ、配管59に乾燥空気を導入せずに120分間金属酸化物12を形成した。これ以外は実施例1と同じ方法で金属酸化物12の形成、電界放出特性及び発光特性の評価を行った。結果を表2に示した。
[比較例3]
加熱槽53aにAl(C5 7 2 3 を入れずに150℃に加熱し、加熱槽53bの温度を121℃に加熱した。また、金属酸化物12を形成する時間を60分とした以外は実施例1と同じ方法で金属酸化物12の形成、電界放出特性及び発光特性の評価を行った。結果を表2に示した。
【0062】
[比較例4]
吹き出し口58として平面方向に90mm×20mm、高さ50mmのステンレス製直方体内部に四角錐台の中空部を形成したものを用いた。四角錐台の中空部は、ステンレス製直方体上面中央部に5mm角、ステンレス製直方体底面中央部に90mm×0.5mmの穴が形成されており、四角錐台上面をなす穴と底面をなす穴は各々相対する角の頂点が直線で結ばれている。ステンレス製直方体上面中央部に形成された5mm角の穴部分で配管59に接続され、ステンレス製直方体底面中央部に形成された90mm×0.5mmの穴が開口部58aとなる。金属酸化物12を形成する時間を60分とした以外は実施例1と同じ方法で金属酸化物12の形成、電界放出特性及び発光特性の評価を行った。結果を表2に示した。
【0063】
[比較例5]
比較例3と同じ方法で金属酸化物12を形成した。得られた金属酸化物12は基板11ごと実施例5と同じ方法でアモルファス窒化炭素を形成した。実施例1と同じ方法で電界放出特性及び発光特性の評価を行った。結果を表2に示した。
[比較例6]
比較例3と同じ方法で金属酸化物12を形成した。取り出された金属酸化物12は基板11ごとスパッタリングにより導電性物質として金を金属酸化物上に蒸着した後、実施例1と同じ方法で電界放出特性及び発光特性の評価を行った。結果を表2に示した。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明により、単位面積あたり均一に低消費電力で電子を放出できる電界放出型電子放出素子が得られる。この電界放出型電子放出素子は、画像・映像表示装置や照明及び微小真空管等の従来公知の光源の電界放出型電子放出素子として有効に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】突起形状を有する金属酸化物の製造装置を示す概略構成図である。
【図2】電界放出特性を測定するための装置の概略構成図である。
【図3】マイクロ波プラズマCVD装置を示す概略構成図である。
【図4】突起物先端部の曲率半径を説明するための図である。
【図5】従来のアレイ状電界放射冷陰極(電界放出型電子放出素子)の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0068】
A 電流計
B1 直流可変電源
B2 直流可変電源
D1 透明導電性膜
D2 導電性膜
H 蛍光体
G1 石英基板
G2 ベース板
4 引出電極
6a 区画部材
6b 区画部材
8 高導電率シリコン基板
11 基板
12 突起形状を有する金属酸化物
13 突起形状
13a 基部
13b 先端部
14 先端部を露出させる穴
30 絶縁層
31 電子放出源
51 窒素供給源
52 液体窒素トラップ
53a 加熱槽
53b 加熱槽
54 配管
55 配管
56 基板ステージ
57 流量計
57a ニードルバルブ
58 吹き出し口
58a 開口部
59 配管
60 配管
61 空気供給源
70 P2 5 トラップ
71 アルゴン供給源
72 原材料供給源
73 配管
74 配管
75 チャンバー
76 マイクロ波発生装置
77 メカニカルブースター
78 ロータリーポンプ
79 ニードルバルブ
80 吹き出し口
81 流量計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ3μmを超える金属酸化物からなる突起形状が、金属酸化物面上の1mm×1mmの面積当たり5〜100000個の密度で存在し、かつ長さ3μmを超える金属酸化物からなる任意の突起形状100個の和平均長さをχ、標準偏差をσとした場合、χ≧5μm、かつχ+σ/2以上の長さを持つ突起形状の最大長さをLmax 、最小長さをLmin とした場合、1≧Lmin /Lmax ≧1/3であることを特徴とする金属酸化物からなる電界放出型電子放出素子。
【請求項2】
長さχ+σ/2以上である金属酸化物からなる突起形状において、長さ(Lmin +Lmax )/2以上である突起形状の数が長さχ+σ/2以上である突起形状の数の1/3以上であることを特徴とする請求項1に記載の電界放出型電子放出素子。
【請求項3】
長さ3μmを超える金属酸化物からなる突起形状断面の和平均円換算径が0.01〜100μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の電界放出型電子放出素子。
【請求項4】
長さ3μmを超える金属酸化物からなる突起形状断面の円換算径に対する長さの比が1以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電界放出型電子放出素子。
【請求項5】
長さ3μmを超える金属酸化物からなる突起形状先端部の曲率半径が100nm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電界放出型電子放出素子。
【請求項6】
突起形状の中心軸が実質的に並行であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電界放出型電子放出素子。
【請求項7】
金属酸化物が金属酸化物単結晶であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電界放出型電子放出素子。
【請求項8】
金属酸化物中の金属が、Mg、Al、Si、Ti、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Ga、Y、Zr、In、Sn、Baの少なくとも1種類を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の電界放出型電子放出素子。
【請求項9】
突起形状の少なくとも先端部が突起形状を構成する金属酸化物の仕事関数よりも小さい仕事関数を有する物質で被覆されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の電界放出型電子放出素子。
【請求項10】
突起形状を構成する金属酸化物の仕事関数よりも小さい仕事関数を有する物質が、アモルファス微結晶窒化炭素、微結晶窒化炭素、アモルファス炭素、微結晶炭素、ダイヤモンドの少なくとも1種類の膜であることを特徴とする請求項9に記載の電界放出型電子放出素子。
【請求項11】
有機物質、無機物質、金属から選ばれる少なくとも1種類の材料で突起形状の間を固定することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の電界放出型電子放出素子。
【請求項12】
Li、Be、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Sr、Y、Zr、Nb、Pd、Cd、In、Sn、Sb、Ba、W、Pb、Bi、Thからなる金属群の中から選ばれる少なくとも1種類の金属のβ−ジケトン、エチレンジアミン、ピペリジン、ピピラジン、シクロヘキサンジアミン、テトラアザシクロテトラデカン、エチレンジアミンテトラ酢酸、エチレンビス(グアニド)、エチレンビス(サリチルアミン)、テトラエチレングリコール、アミノエタノール、グリシン、トリグリシン、ナフチリジン、フェナントロリン、ペンタンジアミン、ピリジン、サリチルアルデヒド、サリチリデンアミン、ポルフィリン、チオ尿素から選ばれる配位子を配位してなる金属錯体、該金属群から選ばれる金属に、アルコキシド基、カルボニル基、カルボキシル基、アルキル基、アルケニル基、フェニルあるいはアルキルフェニル基、オレフィン基、アリール基、シクロブタジエン基をはじめとする共役ジエン基、シクロペンタジエニル基をはじめとするジエニル基、トリエン基、アレーン基、シクロヘプタトリエニル基をはじめとするトリエニル基などから選ばれる1種以上が結合してなる有機金属化合物及びそれらのハロゲン化物の中から選ばれる金属化合物を加熱して濃度1重量%以上の金属化合物気体にする工程(1)と、
該金属化合物気体を、空気中で基板上に吹きつけて突起形状を有する金属酸化物とする工程(2)と、
を経る電界放出型電子放出素子の製造方法であって、金属化合物気体を空気中に放出する界面の温度をT1 、開口部界面の断面中心部において配管の末端と基板の間隔の1/2における温度をT2 、基板の温度をT3 とした場合、T1 <T2 <T3 であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の電界放出型電子放出素子の製造方法。
【請求項13】
金属化合物気体を含む配管中の水分圧が200Pa未満であることを特徴とする請求項12に記載の電界放出型電子放出素子の製造方法。
【請求項14】
金属化合物が、β−ジケトンを配位子として含む金属錯体、金属アルコキシド、アルキル金属の少なくとも1種であることを特徴とする請求項12または13に記載の電界放出型電子放出素子の製造方法。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれかに記載の電界放出型電子放出素子を有する発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−16281(P2009−16281A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−179160(P2007−179160)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】