説明

電界放出陰極素子及びその製造方法

【課題】本発明は、電界放出陰極素子及びその製造方法に関するものである。
【解決手段】本発明の電界放出陰極素子は、第一カーボンナノチューブ構造体と、第二カーボンナノチューブ構造体と、を含む。前記第一カーボンナノチューブ構造体は、複数の第一カーボンナノチューブが面上に配列される。前記第二カーボンナノチューブ構造体は、複数の各行に配列された複数の第二カーボンナノチューブからなるとともに、前記第一カーボンナノチューブ構造体の表面に形成される。前記複数の第二カーボンナノチューブは、前記第一カーボンナノチューブ構造体の表面に垂直に設けられる。前記第二カーボンナノチューブ構造体の、前記第一カーボンナノチューブ構造体の表面から離れる端部は、電子放出の先端として利用される。前記複数の第二カーボンナノチューブの高さは、中間行が最も高く、前記中間行から離れる方向に沿って次第に減少している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界放出陰極素子及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(Carbon Nanotube,CNT)は、新型のカーボン材料であり、日本の研究員の飯島澄男によって1991年に発見された(非特許文献1を参照)。カーボンナノチューブは良好な導電性能、良好な化学的安定性、大きなアスペクト比(長さと直径の比)を有し、その先端の面積が理論的に最良の寸法に達するので、先端の面積が小さいほど局部の電界が集中するという理論により、カーボンナノチューブは、現在最良の電界放出陰極素子の一種である。
【0003】
特許文献1には、カーボンナノチューブエミッタの製造方法として、触媒層が形成された第一基板上に複数の第一カーボンナノチューブを成長させる第一ステップと、前記第一カーボンナノチューブを前記第一基板から分離して、溶媒に添加して分散溶液を作製する第二ステップと、前記分散溶液を第二基板に塗布し、これを所定温度でベーキングし、前記複数の第一カーボンナノチューブを前記第二基板に平行な方向に前記第二基板に固着させる第三ステップと、前記複数の第一カーボンナノチューブの表面に存在する複数のナノ触媒粒子から複数の第二カーボンナノチューブを成長させる第四ステップと、を含むことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開第2006−114494号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/248235号明細書
【特許文献3】中国特許出願公開第101284662号明細書
【特許文献4】特開第2008−297195号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Sumio Iijima、“Helical Microtubules of Graphitic Carbon”、Nature、1991年11月7日、第354巻、p.56‐58
【非特許文献2】Kaili Jiang、Qunqing Li、Shoushan Fan、“Spinning continuous carbon nanotube yarns”、Nature、2002年、第419巻、p.801
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記カーボンナノチューブエミッタにおいて、前記複数の第二カーボンナノチューブの高さは同じであるので、隣接する二つの第二カーボンナノチューブの間の電子の遮蔽効果を有する。これにより、該カーボンナノチューブエミッタを応用する場合、前記複数の第二カーボンナノチューブから均一な電子を放射することができない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明は、前記課題を解決する電界放出陰極素子及びその製造方法を提供する。
【0008】
本発明の電界放出陰極素子は、第一カーボンナノチューブ構造体と、第二カーボンナノチューブ構造体と、を含む。前記第一カーボンナノチューブ構造体は、複数の第一カーボンナノチューブが面状に配列される。前記第二カーボンナノチューブ構造体は、複数の各行に配列された複数の第二カーボンナノチューブからなるとともに、前記第一カーボンナノチューブ構造体の表面に形成される。前記複数の第二カーボンナノチューブは、前記第一カーボンナノチューブ構造体の表面に垂直に設けられる。前記第二カーボンナノチューブ構造体の、前記第一カーボンナノチューブ構造体の表面から離れる端部は、電子放出の先端として利用される。前記複数の第二カーボンナノチューブの高さは、中間行が最も高く、前記中間行から離れる方向に沿って次第に減少している。
【0009】
本発明の電界放出陰極素子の製造方法は、第一カーボンナノチューブ構造体及び基板を提供する第一ステップと、前記基板に対して前記第一カーボンナノチューブ構造体を懸架させる第二ステップと、前記第一カーボンナノチューブ構造体に電圧を印加し、温度勾配を形成する第三ステップと、前記第一カーボンナノチューブ構造体の表面に複数のカーボンナノチューブを成長し、第二カーボンナノチューブ構造体を形成させる第四ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0010】
従来の技術と比べて、本発明の電界放出陰極素子において、複数の第二カーボンナノチューブの高さは中間行が最も高く、前記中間行から離れる方向に沿って次第に減少しているので、隣接する二つの第二カーボンナノチューブの間の電子の遮蔽効果を減少することができる。これにより、該電界放出陰極素子は、均一な電子を放射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1に係る電界放出陰極装置の構造を示す図である。
【図2】図1のII‐IIに沿って切断した断面図である。
【図3】本発明の実施例1に係る電界放出陰極素子における第一カーボンナノチューブ構造体の走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】図3中のカーボンナノチューブフィルムのカーボンナノチューブセグメントの構造を示す図である。
【図5】本発明の実施例1に係る電界放出陰極素子において、基板に対して懸架された第一カーボンナノチューブ構造体を示す図である。
【図6】本発明の実施例1に係る電界放出陰極素子の製造工程のフローチャートである。
【図7】本発明の実施例1に係る電界放出陰極素子の製造装置を示す図である。
【図8】本発明の実施例2に係る電界放出陰極素子の構造を示す図である。
【図9】図8のVIII‐VIIIに沿って切断した断面図である。
【図10】本発明の実施例2に係る電界放出陰極素子において、一つのパターニングされた第一カーボンナノチューブ構造体の構造を示す図である。
【図11】本発明の実施例2に係る電界放出陰極素子において、別のパターニングされた第一カーボンナノチューブ構造体の構造を示す図である。
【図12】本発明の実施例1に係る電界放出陰極素子において、基板に対して懸架された第一カーボンナノチューブ構造体を示す図である。
【図13】本発明の実施例2に係る電界放出陰極素子の製造装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0013】
(実施例1)
図1及び図2を参照すると、本実施例は、電界放出陰極素子200を提供する。前記電界放出陰極素子200は、第一カーボンナノチューブ構造体212及び第二カーボンナノチューブ構造体214を含む。前記第二カーボンナノチューブ構造体214は、前記複数の第二カーボンナノチューブ214aからなる。前記第一カーボンナノチューブ構造体212の表面に形成される。前記複数の第二カーボンナノチューブは、前記第一カーボンナノチューブ構造体の表面に垂直に設けられ、前記第一カーボンナノチューブ構造体212に電気的に接続されている。
【0014】
前記第一カーボンナノチューブ構造体212は、複数の第一カーボンナノチューブ212aからなる。前記複数の第一カーボンナノチューブ212aは、前記第一カーボンナノチューブ構造体212の表面に平行している。前記カーボンナノチューブ構造体212には、前記複数のカーボンナノチューブ212aが配向し又は配向せずに配置されている。前記複数のカーボンナノチューブ212aの配列方式により、前記カーボンナノチューブ構造体212は非配向型のカーボンナノチューブ構造体及び配向型のカーボンナノチューブ構造体に分類される。非配向型のカーボンナノチューブ構造体では、カーボンナノチューブが異なる方向に沿って配置され、又は絡み合っている。配向型のカーボンナノチューブ構造体では、前記複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列している。
【0015】
前記第一カーボンナノチューブ構造体212は、自立構造を有するものである。ここで、自立構造とは、支持体材を利用せず、前記カーボンナノチューブ構造体212を独立して利用することができる形態のことである。即ち、前記カーボンナノチューブ構造体212を対向する両側から支持して、前記カーボンナノチューブ構造体212の構造を変化させずに、前記第一カーボンナノチューブ構造体212を懸架させることができることを意味する。前記カーボンナノチューブ構造体212は、分子間力で接続されて均一に配列された複数のカーボンナノチューブからなる。
【0016】
前記第一カーボンナノチューブ構造体212は、ドローン構造カーボンナノチューブフィルム(特許文献2を参照)、綿毛構造カーボンナノチューブフィルム(特許文献3を参照)、プレシッド構造カーボンナノチューブフィルム(特許文献4を参照)、またはスプレー法、コーティング法、堆積法によって形成されたカーボンナノチューブフィルムからなる。本実施例において、前記第一カーボンナノチューブ構造体212は、ドローン構造カーボンナノチューブフィルム243aからなる。
【0017】
図3を参照すると、前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルム243aは、超配列カーボンナノチューブアレイ(非特許文献2を参照)から引き出して得られた自立構造を有するものである。単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおいて、複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って、端と端が接続されている。即ち、単一の前記カーボンナノチューブフィルム243aは、分子間力で長さ方向端部同士が接続された複数のカーボンナノチューブを含む。図3及び図4を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルム243aは、複数のカーボンナノチューブセグメント243bを含む。前記複数のカーボンナノチューブセグメント243bは、長さ方向に沿って分子間力で端と端が接続されている。それぞれのカーボンナノチューブセグメント243bは、相互に平行に、分子間力で結合された複数のカーボンナノチューブ245を含む。単一の前記カーボンナノチューブセグメント243bにおいて、前記複数のカーボンナノチューブ245の長さが同じである。前記カーボンナノチューブフィルム243aの厚さは、0.5nm〜100μmに設けられ、その幅は前記超配列カーボンナノチューブアレイの幅に関係する。
【0018】
前記第一カーボンナノチューブ構造体212は、積層された少なくとも二つの前記カーボンナノチューブフィルム243aからなることができる。この場合、隣接する前記カーボンナノチューブフィルムは、分子間力で結合されている。隣接する前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは、それぞれ0°〜90°の角度で交差している。
【0019】
前記第二カーボンナノチューブ構造体214は、複数の第二カーボンナノチューブ214aからなる。前記複数の第二カーボンナノチューブ214aは、相互に平行して複数の行に配列され、等間隔を有する。前記複数の第二カーボンナノチューブ214aの一端は、それぞれ前記第一カーボンナノチューブ構造体212の表面に垂直に接触するが、前記複数の第二カーボンナノチューブ214aの他端は、前記第一カーボンナノチューブ構造体212の表面に垂直な方向に沿って、前記第一カーボンナノチューブ構造体212の表面から離れる方向へ延伸する。
【0020】
前記第二カーボンナノチューブ構造体214は、複数の行に配列された第二カーボンナノチューブ214aからなる。同じ行の前記複数第二カーボンナノチューブ214aの高さは、同じである。同じ行において、隣接する前記第二カーボンナノチューブ214aの間の距離が同じである。前記第二カーボンナノチューブ構造体214において、前記第二カーボンナノチューブ構造体214の高さは、中間行が最も高く、前記中間行から離れる方向に沿って次第に減少している。これにより、前記第二カーボンナノチューブ構造体214の断面は三角形を形成するので、電界放出陰極素子200に用いられる場合、異なる行において、隣接する二つの第二カーボンナノチューブ214aの間の電子の遮蔽効果を減少することができ、前記電界放出陰極素子200は均一に電子を放射することができる。
【0021】
更に、前記電界放出陰極素子200は、基板220を含む。前記第一カーボンナノチューブ構造体212の、前記第二カーボンナノチューブ構造体214に隣接する表面とは反対の表面は、前記基板220の一つの表面に接触して設置されるか、または、前記基板220の一つの表面に対して懸架される。
【0022】
図5を参照すると、本実施例の前記電界放出陰極素子200は、更に、二つの導電性基体を含む。詳しくは、前記電界放出陰極素子200において、前記第一カーボンナノチューブ構造体212の、前記第二カーボンナノチューブ構造体214に隣接する表面とは反対の表面は、第一導電性基体221及び第二導電性基体222を介して、前記基板220の一つの表面に対して懸架される。前記第一導電性基体221及び第二導電性基体222は、金属、金属合金または導電性複合材料からなる。前記第一導電性基体221及び第二導電性基体222の形状は制限されず、該第一導電性基体221及び第二導電性基体222の高さは同じである。本実施例において、前記第一導電性基体221及び第二導電性基体222は、直方体である。前記第一導電性基体221と第二導電性基体222との間の距離は、実際の応用に応じて選択する。
【0023】
本実施例において、前記電界放出陰極素子200は、次の優れた点がある。第一に、前記電界放出陰極素子200の、前記第二カーボンナノチューブ構造体214の断面は三角形であるので、前記第二カーボンナノチューブ構造体214を電界放出陰極素子200に用いる場合、前記第二カーボンナノチューブ構造体214の異なる行において、隣接する二つの第二カーボンナノチューブ214aの間の電子の遮蔽効果を減少することができる。これにより、前記電界放出陰極素子200は均一に電子を放射することができる。第二に、前記電界放出陰極素子200は、熱電界電子放出装置に用いられる場合、前記第一カーボンナノチューブ構造体212に電流を流すと、該第一カーボンナノチューブ構造体212が熱を生じる。前記第一カーボンナノチューブ構造体212から生じた熱によって、前記第二カーボンナノチューブ構造体214を加熱することができる。これにより、前記第二カーボンナノチューブ構造体214の表面の不純物を除去するので、前記電界放出陰極素子200の安定性を高めることができる。
【0024】
図6及び図7を参照すると、前記電界放出陰極素子200の製造方法は、第一カーボンナノチューブ構造体212及び基板220を提供する第一ステップと、前記基板220に対して前記第一カーボンナノチューブ構造体212を懸架させる第二ステップと、前記第一カーボンナノチューブ構造体212に電圧を印加し、温度勾配を形成する第三ステップと、前記第一カーボンナノチューブ構造体212の表面に複数のカーボンナノチューブ214aを成長させ、第二カーボンナノチューブ構造体214を形成する第四ステップと、を含む。
【0025】
前記第一ステップにおいて、前記第一カーボンナノチューブ構造体212は、少なくとも一つのドローン構造カーボンナノチューブフィルム(drawn carbon nanotube film)からなる。前記カーボンナノチューブフィルムの製造方法は、超配列カーボンナノチューブアレイを提供するステップS21と、前記カーボンナノチューブアレイから、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルムを引き伸ばして、前記カーボンナノチューブフィルムを得るステップa22と、を含む。前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルムの製造方法は、特許文献2に掲載されている。
【0026】
更に、前記第一ステップの後に、ステップbを行うこともできる。前記ステップbにおいて、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、プラズマビーム蒸着法、電着法及びコーティング法で前記第一カーボンナノチューブ構造体212の一つの表面に触媒粒子213を均一に堆積する。
【0027】
前記第二ステップは、基板220を提供するステップc221と、間隔をあけて設置された第一導電性基体221及び第二導電性基体222を提供し、基板220の一つの表面に設置するステップc222と、前記第一カーボンナノチューブ構造体212を前記第一導電性基体221及び第二導電性基体222の、前記基板220とは反対の表面に設置し、前記第一カーボンナノチューブ構造体212の、触媒粒子213を均一に堆積した表面とは反対の表面を前記一導電性基体221及び前記第二導電性基体222に隣接させるステップc223と、を含む。
【0028】
前記ステップc221において、前記基板220は、シリコンウェハまたは表面に酸化層を有するシリコンウェハである。前記基板220の形状は、実際の応用に応じて選択する。本実施例において、前記基板220の形状は、長方形である。
【0029】
前記ステップc222において、前記第一導電性基体221と第二導電性基体222との間の距離は、2mm〜2cmである。本実施例において、前記第一導電性基体221と前記第二導電性基体222との間の距離は1cmである。
【0030】
前記ステップc223において、前記第一カーボンナノチューブ構造体212の一端を前記第一導電性基体221の、前記基板220に隣接する表面とは反対の表面に固定し、前記第一カーボンナノチューブ構造体212の前記一端に対向する他端を、前記第二導電性基体222の、前記基板220に隣接する表面とは反対の表面に固定させる。これにより、前記第一カーボンナノチューブ構造体212の、導電性基体と接触する部分以外の部分を前記基板220に対して懸架させる。前記複数の第一カーボンナノチューブ212aは、前記第一導電性基体221から前記第二導電性基体222までの方向に沿って延伸している。
【0031】
前記第三ステップにおいて、前記複数のカーボンナノチューブ214aからなる第二カーボンナノチューブ構造体214を、化学気相成長法で前記第一カーボンナノチューブ構造体212の表面に成長させる。前記化学気相成長法は、前記基板220を反応室に置いて、炭素源ガス及び保護ガスを導入するステップ231と、前記第一導電性基体221及び前記第二導電性基体222によって、前記第一カーボンナノチューブ構造体212に電圧を印加し、前記第一カーボンナノチューブ構造体212に熱を発生させ、前記第一カーボンナノチューブ構造体212から生じた熱で前記第二カーボンナノチューブ構造体214を成長させるステップ232と、を含む。
【0032】
前記ステップ231において、前記炭素源ガスは、アセチレンまたはエタンのような炭化水素ガスであり、前記保護ガスは、窒素ガス、アルゴンまたは他の不活性ガスである。
【0033】
前記ステップ232において、前記第一カーボンナノチューブ構造体212は、電気エネルギーを熱に転換することができる。前記第一カーボンナノチューブ構造体212に印加する電圧は、前記第一カーボンナノチューブ構造体212及び前記第一カーボンナノチューブ212aの直径に応じて変更する。本実施例において、前記第一カーボンナノチューブ構造体212に印加する電圧は40Vであり、前記第一カーボンナノチューブ212aの直径は5nmである。前記第一カーボンナノチューブ構造体212に電圧を印加する場合、前記第一導電性基体221または前記第二導電性基体222から前記第二導電性基体222または前記第一導電性基体221へ直流電流を流して、前記第一カーボンナノチューブ構造体212に熱を発生させる。前記第一カーボンナノチューブ構造体212に生じた熱で該第一カーボンナノチューブ構造体212の温度は、500〜900℃となる。前記第二カーボンナノチューブ構造体214の成長時間は30分〜60分である。
【0034】
前記第一カーボンナノチューブ構造体212を加熱する工程において、ジュール熱によって、前記第一カーボンナノチューブ構造体212の温度を次第に上昇させる。前記第一カーボンナノチューブ構造体212に生じた熱は、前記第一導電性基体221、前記第二導電性基体222及び前記第一カーボンナノチューブ構造体212の周囲へ伝達される。前記第一導電性基体221及び前記第二導電性基体222は優れた熱伝導性を有するので、前記第一導電性基体221及び前記第二導電性基体222によって前記第一導電性基体221及び前記第二導電性基体222に近い熱を急速に周囲に伝達することができる。前記第一カーボンナノチューブ構造体212の中心部の熱は、前記第一導電性基体221及び前記第二導電性基体222によって、急速に周囲に伝達されず、該第一カーボンナノチューブ構造体212の中心部の温度は、その他の部分の温度より高くなる。これにより、前記第一カーボンナノチューブ構造体212における温度は、その中心部から前記第一導電性基体221及び前記第二導電性基体222への方向に沿って次第に低下して、温度勾配が形成される。
【0035】
前記第一カーボンナノチューブ構造体212に所定の時間電圧を印加した後、前記第一カーボンナノチューブ構造体212の表面から複数の前記第二カーボンナノチューブ214aが成長され、前記第二カーボンナノチューブ構造体214が形成される。前記第一カーボンナノチューブ構造体212における温度は、その中心部から前記第一導電性基体221及び前記第二導電性基体222への方向に沿って次第に低下して、温度勾配を形成するので、前記第二カーボンナノチューブ構造体214において、複数の前記第二カーボンナノチューブ214aの高さは、前記第一カーボンナノチューブ構造体212の中心部から前記第一導電性基体221及び前記第二導電性基体222への方向に沿って次第に減少する。前記中心部における複数の第二カーボンナノチューブ214aは、他の部分における複数の第二カーボンナノチューブ214aより高い。これにより、前記第二カーボンナノチューブ構造体214の断面は三角形に形成される。
【0036】
更に、前記複数の第二カーボンナノチューブ214aの成長速度を上げるために、前記第一カーボンナノチューブ構造体212に電圧を印加する工程において、加熱装置(図示せず)で前記反応室を加熱することができる。しかしながら、前記反応室の温度は、前記第一カーボンナノチューブ構造体212の温度勾配における最低温度より低い。
【0037】
(実施例2)
図8及び図9を参照すると、本実施例の電界放出陰極素子300は、第一カーボンナノチューブ構造体312及び複数の第二カーボンナノチューブ構造体314を含む。前記電界放出陰極素子300は、実施例1の電界放出陰極素子200と比べて、次の異なる点がある。前記電界放出陰極素子300は、複数の第二カーボンナノチューブ構造体314を含む。
【0038】
単一の前記第二カーボンナノチューブ構造体314は、一行の先端を有する。単一の前記第二カーボンナノチューブ構造体314において、前記先端における複数の第二カーボンナノチューブ314aの高さは、その他の部分の複数の第二カーボンナノチューブ314aより高い。単一の前記第二カーボンナノチューブ構造体314の断面は、三角形である。それぞれ複数の前記第二カーボンナノチューブ構造体314は、一体に形成されるか、または相互に間隔をあけて配列することができ、複数の前記第二カーボンナノチューブ構造体314は、直線配列することができる。図10及び図11を参照すると、複数の前記第二カーボンナノチューブ構造体314は、所定のパターンを形成することもできる。
【0039】
更に、前記電界放出陰極素子300は、基板320を含む。前記第一カーボンナノチューブ構造体312は、前記基板320の一つの表面に設置されるか、または、前記基板320に対して懸架される。一実施例において、前記第一カーボンナノチューブ構造体312は、前記基板320の一つの表面に設置される。前記第二カーボンナノチューブ構造体314は、前記第一カーボンナノチューブ構造体312の表面に垂直であり、且つ、前記基板320に隣接する表面とは反対の表面に接触する。
【0040】
図11を参照すると、前記第一カーボンナノチューブ構造体312は、前記基板320に対して懸架される場合、前記電界放出陰極素子300は、更に、複数の間隔で設置された支持体を含む。本実施例において、前記複数の支持体は、導電性基体322である。隣接する二つの導電性基体322の間の距離は、実際の応用に応じて選択することができる。
【0041】
図12を参照すると、前記電界放出陰極素子300の製造方法は、第一カーボンナノチューブ構造体312及び基板320を提供する第一ステップと、前記基板320に対して前記第一カーボンナノチューブ構造体312を懸架させる第二ステップと、前記第一カーボンナノチューブ構造体312に電圧を印加し、温度勾配を形成する第三ステップと、前記第一カーボンナノチューブ構造体312の表面に複数のカーボンナノチューブを成長させ、第二カーボンナノチューブ構造体314を形成する第四ステップと、を含む。
【0042】
実施例1における電界放出陰極素子200の製造方法と比べると、本実施例の電界放出陰極素子300の製造方法は、次の異なる点がある。前記電界放出陰極素子300において、前記基板320の一つの表面に、前記複数の間隔で設置された導電性基体322が設置される。これにより、前記第一カーボンナノチューブ構造体312の一部分は、前記複数の導電性基体322を介して、前記基板320に対して懸架される。
【0043】
前記第三ステップにおいて、前記隣接する二つの導電性基体322に電圧を印加する場合、該隣接する二つの導電性基体322の間において、その中心部の温度は、その他の部分より高い。従って、前記隣接する二つの導電性基体322の間において、前記中心部の前記複数の第二カーボンナノチューブ314aの成長速度は、その他の部分の成長速度より速い。これにより、前記隣接する二つの導電性基体322の間に、前記第二カーボンナノチューブ構造体314を形成する。各々の前記第二カーボンナノチューブ構造体314は、複数の行に配列され、中間行に位置する前記第二カーボンナノチューブ314aの高さが最も高い。前記複数の第二カーボンナノチューブ構造体314は、所定のパターンを形成することができる。
【符号の説明】
【0044】
200、300 電界放出陰極素子
212、312 第一カーボンナノチューブ構造体
213 触媒粒子
214、314 第二カーボンナノチューブ構造体
214a、314a 第二カーボンナノチューブ
214c、314c 先端
220、320 基板
221 第一導電性基体
222 第二導電性基体
243a カーボンナノチューブフィルム
243b カーボンナノチューブセグメント
245 カーボンナノチューブ
322 導電性基体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一カーボンナノチューブ構造体と、第二カーボンナノチューブ構造体と、を含む電界放出陰極素子であって、
前記第一カーボンナノチューブ構造体は、複数の第一カーボンナノチューブが面状に配列され、
前記第二カーボンナノチューブ構造体は、複数の各行に配列された複数の第二カーボンナノチューブからなるとともに、前記第一カーボンナノチューブ構造体の表面に形成され、
前記複数の第二カーボンナノチューブは、前記第一カーボンナノチューブ構造体の前記表面に垂直に設けられ、
前記第二カーボンナノチューブ構造体の、前記第一カーボンナノチューブ構造体の前記表面から離れる端部は、電子放出の先端として利用され、
前記複数の第二カーボンナノチューブの高さは、中間行が最も高く、前記中間行から離れる方向に沿って次第に減少していることを特徴とする電界放出陰極素子。
【請求項2】
第一カーボンナノチューブ構造体及び基板を提供する第一ステップと、
前記基板に対して前記第一カーボンナノチューブ構造体を懸架させる第二ステップと、
前記第一カーボンナノチューブ構造体に電圧を印加し、温度勾配を形成する第三ステップと、
前記第一カーボンナノチューブ構造体の表面に複数のカーボンナノチューブを成長させ、第二カーボンナノチューブ構造体を形成する第四ステップと、
を含むことを特徴とする電界放出陰極素子の製造方法。

【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図12】
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【図13】
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【図1】
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【図3】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−138340(P2012−138340A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225712(P2011−225712)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(598098331)ツィンファ ユニバーシティ (534)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】