説明

電磁弁及びパイロット式電磁弁

【課題】弁体と弁座とのシール性を高めながら、弁体及び弁座の耐久性を保ち、電磁駆動部の大型化を回避する電磁弁を提供する。
【解決手段】プランジャ5のガイド孔51と、プランジャばね8を内挿する縦孔52との間に透孔53を設け、プランジャばね8とパイロット弁体6との間に透孔53を介して伝達金具7を設ける。プランジャばね8のばね力を、電磁駆動部3の通電遮断時のプランジャ5の復帰用の力とするとともに、パイロット弁体6がパイロット弁座45に着座したときは、伝達金具7を介してプランジャばね8のばね力をパイロット弁体6のみに作用させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プランジャばねの付勢力とこれに抗する電磁コイルの吸引力によりプランジャを駆動し、プランジャに連結される弁体を弁座に対して接離させるようにした電磁弁に関し、詳細には弁体を弁座から離間させるときに弁体をキック動作させるようにした電磁弁及び該電磁弁をパイロット弁として備えたパイロット式電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁弁において弁体を弁座から離間させるとき弁体及びプランジャをキック動作させるものとして、例えば、特開2001−41340号公報(特許文献1)に開示されたものがある。この電磁弁は、電磁コイルへの通電により吸引子を励磁してプランジャを吸引し、プランジャ先端に保持された弁体を弁座から離間して弁開状態とするものである。また電磁コイルを非通電とすることによりプランジャばねのばね力によりプランジャを弁座側に駆動して弁体を弁座に着座させて弁閉状態とするものである。さらに、弁閉状態では、プランジャばねのばね力と弁体の上部に作用する流体の圧力により弁体の着座状態が保持される。
【0003】
また、弁体はプランジャに対して移動方向に僅かに遊び(間隙)を持って保持されており、これにより、弁閉状態から弁開状態にするとき、電磁コイルに通電した直後は弁体は、弁体の上部に作用する流体の圧力により弁座に着座した状態で、まずプランジャだけが移動し、プランジャが吸引子に近づくことにより吸引子による吸引力が充分大きくなった時点で、プランジャが弁体の下部に当接して弁体を引き上げるようにして弁座から離間させる。このような動きがキック動作である。
【0004】
また、電磁弁において、弁閉状態時の弁体と弁座とのシール性を高めるために、弁体を付勢する負荷ばねを用いたものが特開昭50−91038号公報(特許文献2)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−41340号公報
【特許文献2】特開昭50−91038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の電磁弁においては、弁閉状態時にプランジャが弁体に接触しており、プランジャばねの付勢力がプランジャを介して弁体に及ぶようにされているため、弁体と弁座とのシール性は良くなっている。しかし、弁座に対して、プランジャの自重も作用することになり、弁体や弁座の変形を招いて耐久性が低下するという問題がある。
【0007】
なお、特許文献2の電磁弁においては、負荷ばねの付勢力が弁体に常時及ぶようにされており、弁閉状態時に負荷ばねの付勢力により弁体と弁座とのシール性を高めることができる。しかし、この負荷ばねのように、弁体に対して付勢力が常時作用するようにすると、弁体を弁座から離間させるためには、より大きな力が必要になり、電磁駆動部の大型化を招くという問題がある。
【0008】
本発明は、上述の如き問題点を解消するためになされたものであり、電磁弁において、弁体と弁座とのシール性を高めながら、弁体及び弁座の耐久性を保ち、電磁駆動部の大型化を回避することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の電磁弁は、弁座に対向して軸線方向に移動可能に配置された弁体と、プランジャばねにより前記弁座側に付勢されるとともに前記弁体を保持するプランジャと、前記プランジャを軸線方向に駆動する電磁駆動部とを備え、前記弁体が前記プランジャに形成されたガイド孔内で該プランジャに対して軸線方向に移動可能に保持され、前記プランジャを軸線方向に移動する過程で該プランジャの弁座側の係合部を前記弁体の被係合部に係合させて、該弁体を前記弁座から離間させるようにした電磁弁において、前記プランジャの中心に前記軸線方向に縦孔が形成されるとともに、該縦孔の底部から前記弁体側に貫通する透孔が形成され、前記縦孔内に前記プランジャばねが内挿されるとともに、前記透孔内に前記縦孔側から前記弁体側に突出可能な伝達部が挿通され、前記弁体の前記プランジャばね側端部は前記プランジャに対して常時離間されており、弁閉状態で、前記プランジャばねの付勢力を前記伝達部を介して前記弁体に伝達するようにしたことを特徴とする。
【0010】
請求項2のパイロット式電磁弁は、請求項1に記載の電磁弁をパイロット弁として備えるとともに、円柱形状の弁室内に軸線方向に移動可能に配設されたピストン弁と、前記軸線上で前記ピストン弁に対向配置された主弁座とを備え、請求項1の前記弁座が前記ピストン弁に形成されたパイロット弁座であり、請求項1の前記弁体が前記弁室内で前記パイロット弁座に対向配置されたパイロット弁体であるパイロット式電磁弁であって、前記弁室内の前記パイロット弁体側の前記ピストン弁に対する背空間が前記ピストン弁の周囲を介して高圧の一次側に連通され、前記主弁座の主弁ポートが低圧の二次側に連通され、前記パイロット弁体が前記パイロット弁座を閉状態とした後、前記背空間の高圧により前記ピストン弁を前記主弁座に着座させ、前記パイロット弁体を前記パイロット弁座から離間させて前記背空間を前記パイロット弁座のパイロットポートを介して二次側に導通して一次側の高圧により前記ピストン弁を前記主弁座から離間するよう構成され、前記ピストン弁が前記主弁座に着座した後、前記パイロット弁体の前記プランジャばね側端部と前記プランジャとの離間状態を維持したまま、前記プランジャが前記ピストン弁に当接するようにしたことを特徴とする。
【0011】
請求項3のパイロット式電磁弁は、請求項2に記載のパイロット式電磁弁であって、前記弁室は前記主弁座側に前記ピストン弁が挿通される開口部を有し、前記ピストン弁と前記開口部の周囲とに、前記ピストン弁が前記主弁座から所定距離離間したときに当接するストッパ機構を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項4のパイロット式電磁弁は、請求項3に記載のパイロット式電磁弁であって、前記ストッパ機構を構成するフランジ部と、前記弁室を形成するとともに前記ピストン弁を収容する筒状の大径部と、前記プランジャを収容する筒状の小径部とを有するケース体が、ステンレス板のプレス加工により一体成型されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の電磁弁によれば、プランジャの縦孔内にプランジャばねが内挿され、透孔を介して伝達部が弁体側に突出し、弁体のプランジャばね側端部がプランジャに対して常時離間され、弁閉状態で、伝達部が弁体に当接してプランジャばねの付勢力により弁体を弁座側に押圧するので、弁体と弁座とのシール性が高まる。また、弁開とするときは、プランジャが移動するとき伝達部がプランジャの透孔の底部に軸線方向で係合し、この伝達部が弁体から離間するので、プランジャが所定距離だけ移動してプランジャの係合部が弁体の被係合部に係合して弁体を弁座から離間させるとき(キック動作するとき)、プランジャばねの付勢力は弁体に作用しないので、電磁駆動部の大型化を必要としない。
【0014】
請求項2のパイロット式電磁弁によれば、パイロット式電磁弁において、請求項1と同様の効果が得られる。
【0015】
請求項3のパイロット式電磁弁によれば、請求項2の効果に加えて、ピストン弁が開状態となるときストッパ機構によりピストン弁が確実に停止するので、パイロット弁体がパイロット弁座に当接しないようにすることができ、パイロット弁座の劣化を防止できる。
【0016】
請求項4のパイロット式電磁弁によれば、請求項3の効果に加えて、ケース体がステンレス板で一体成型されているので、ケース体を金属部材の切削等により形成するよりも、軽量化とコスト低減が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態のパイロット式電磁弁の非通電時の縦断面図である。
【図2】実施形態のパイロット式電磁弁の通電開始時の第1の動作を示す図である。
【図3】実施形態のパイロット式電磁弁の通電開始時の第2の動作を示す図である。
【図4】実施形態のパイロット式電磁弁の通電の遮断開始時の第1の動作を示す図である。
【図5】実施形態のパイロット式電磁弁の通電の遮断開始時の第2の動作を示す図である。
【図6】実施形態のパイロット式電磁弁のシリンダケースの斜視図である。
【図7】本発明の実施形態の直動式電磁弁の非通電時の縦断面図である。
【図8】実施形態におけるプランジャばねと伝達部の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明のパイロット式電磁弁及び直動式電磁弁の実施形態を図面を参照して説明する。図1は実施形態のパイロット式電磁弁の非通電時の縦断面図、図2は通電開始時の第1の動作を示す図、図3は通電開始時の第2の動作を示す図、図4は通電の遮断開始時の第1の動作を示す図、図5は通電の遮断開始時の第2の動作を示す図である。この実施形態のパイロット式電磁弁は請求項2に対応する。なお、このパイロット式電磁弁は図1の状態で配置されるものであり、以下の説明における「上下」の概念は図1の図面における上下に対応する。この実施形態のパイロット式電磁弁は、例えば冷媒等の流体が流入する高圧の一次側継手11と流体が流出する二次側継手12を一体に形成した金属製の本体部1と、この本体部1に取り付けられたシリンダケース2と、シリンダケース2の上部に設けられた電磁駆動部3とを有している。
【0019】
本体部1には、一次側継手11と二次側継手12との間に隔壁13が形成され、隔壁13の上端側には主弁座14が形成されている。主弁座14には円形開口をなす主弁ポート14aが形成されている。また、主弁座14とシリンダケース1との間には、薄型の円形空間15が形成されており、弁開状態時にはこの円形空間15及び主弁ポート14aを介して一次側継手11と二次側継手12とが導通される。
【0020】
シリンダケース2は、図6に示すように、軸線Lを回転中心とする筒状の回転体の形状をしており、ドーナツ盤状のフランジ部21と、円筒形状の大径部22と、円筒形状の小径部23を一体に形成したものである。このシリンダケース2はステンレス板のプレス加工により形成されている。図1に示すように、フランジ部21は、本体部1の円形空間15の外周の環状の凹部内にOリング16を介して嵌め込まれ、大径部22の外周に嵌合する止め金具17によりフランジ部21を押さえるようにして、シリンダケース2が本体部1に取り付けられている。
【0021】
シリンダケース2の大径部22内には真鍮製のピストン弁4が内挿されている。ピストン弁4は、外形が略円柱形状のピストン部41とその下端周囲に形成されたフランジ部42とを有している。また、ピストン弁4の下端には主弁座14に対向するように環状のシール部材43が取り付けられており、このシール部材43はピストン弁4が主弁座14に着座したときに、主弁ポート14aを閉じる。また、ピストン部41には上部に開口する嵌合孔44が形成され、この嵌合孔44の中程の側面はすり鉢状のテーパ面44aとなっている。嵌合孔44の底部には中心にパイロットポート45aを有するパイロット弁座45が取り付けられており、パイロットポート45aは導通路46を介して二次側継手12に導通されている。なお、ピストン弁4とシリンダケース2の大径部22との間にはクリアランスが設けられ、このクリアランスを介して一次側継手11側の流体が嵌合孔44に流入可能となっている。なお、この嵌合孔44及び大径部22の内部空間がピストン弁4に対する「背空間」である。
【0022】
シリンダケース2の小径部23内には磁性体からなるプランジャ5が内挿されている。小径部23はプランジャチューブの役割をし、プランジャ5は小径部23及び大径部22内で軸線L方向(上下方向)に摺動可能に配設されている。プランジャ5の軸線L上には、中程から下方に向けて円筒形状のガイド孔51が形成されるとともに、中程から上方に向けて縦孔52が形成されている。さらに、縦孔52からガイド孔51に貫通する透孔53が形成されている。この透孔53の径は縦孔52の径より小さくなっている。
【0023】
ガイド孔51内には、略円柱形状のパイロット弁体6が内挿されている。パイロット弁体6は、下端部の小径のニードル部61を有し、このニードル部61の付け根に段部6aを有し、さらに上方に段部6bを有している。ガイド孔51の下端部にはニードル部61が挿通される環状のワッシャ54が取り付けられており、このワッシャ54と段部6bとの間にパイロット弁ばね62が圧縮して介在されている。
【0024】
透孔53には、「伝達部」としての伝達金具7が配設されている。伝達金具7は透孔53の内径より僅かに径の小さな円柱部71と、縦孔52の内径より僅かに径の小さなフランジ部72とを有している。そして、フランジ部72が縦孔52の底部52aに当接した状態で、円柱部71の下端71Aはガイド孔51内に所定量突出するよう構成されている。縦孔52内には、プランジャばね8が配設されており、このプランジャばね8は伝達金具7のフランジ部72と電磁駆動部3の吸引子31との間に圧縮して介在されている。
【0025】
電磁駆動部3はシリンダケース2の小径部23に構成されており、小径部23の上端に固定された磁性体からなる吸引子31、小径部23の外周に配置された電磁コイル32、外函33を備えている。電磁コイル32は外函33でカバーされ、外函33は上部をネジNにより吸引子31にネジ止めされている。
【0026】
以上の構成により、電磁コイル32へ通電がなされていないとき(非通電持)は図1及び図2(A) の状態にある。すなわち、磁力は発生しておらず、プランジャばね8の付勢力及びプランジャ5の自重により、プランジャ5が吸引子31から離間した位置となる。このときパイロット弁体6のニードル部61がパイロット弁座45に着座し、パイロットポート45aが弁閉状態となる。
【0027】
電磁コイル32に通電がなされると、図1及び図2(A) の状態から図3(B) の状態まで移行する。なお、図2〜図5では要部以外の符号は省略してある。まず、図2(B) のように、外函33を介して吸引子31に磁力が伝わり、プランジャ5が上昇し、プランジャ5の下端のワッシャ54がパイロット弁体6の段部6aに当接係合する。図2(C) のように、プランジャ5とパイロット弁体6が係合状態を保持して共に上昇する。このワッシャ54は「係合部」に対応し、段部6aが「被係合部」に対応する。プランジャ5の上端部5aが吸引子31に当接してプランジャ5が停止し、パイロット弁体6はパイロット弁ばね62のばね力によりさらに上昇する。このように、プランジャ5を軸線L方向に移動する過程で、ワッシャ54(係合部)をパイロット弁体6の段部6a(被係合部)に係合させて、パイロット弁体6をパイロット弁座45から離間させる動作が、キック動作である。
【0028】
次に、図3(A) のように、パイロット弁体6の上端6Aが伝達金具7の円柱部71の下端71Aに当接し、パイロット弁体6が停止する。これは、プランジャばね8のばね力のほうがパイロット弁ばね62のばね力より強く設定されているからである。これにより、パイロットポート45aが全開となり、ピストン弁4の上部の背空間(嵌合孔44内)の流体が二次継手12側に流出し、ピストン弁4の上部の圧力が低下する。これにより、図3(B) に示すように、ピストン弁4の上部の圧力と下部の圧力(一次側継手11の圧力)の圧力差により、ピストン弁4が上昇する。そして、ピストン弁4のフランジ部42がシリンダケース2のフランジ部21に当接し、ピストン弁4が停止する。すなわち、これらのフランジ部42,21はストッパ機構を構成しており、このストッパ機構により、パイロット弁体6とパイロット弁座45は接触せず、パイロット弁座45の変形等の劣化が生じない。このように、ピストン弁4により主弁ポート14aが全開となり、一次継手11から二次継手12に流体が流れる。
【0029】
次に、電磁コイル32への通電が絶たれると、図4(A) の状態から図5(B) の状態まで移行する。まず、図4(B) のように、吸引子31の磁力が無くなくなって、プランジャ5がプランジャばね8の付勢力と自重により下降し、パイロット弁体6のニードル部61がピストン弁4のパイロット弁座45に着座(接触)し、パイロット弁ポート45aが全閉状態となるので、ピストン弁4の上部の背空間(嵌合孔44内)の圧力が増加する。次に、図4(C) のように、パイロット弁体6の着座状態を保ったまま、プランジャ5とピストン弁4が一体となって下降する。このとき、プランジャ5とピストン弁4とは接触していない。次に、図5(A) のように、ピストン弁4が主弁座14に着座(接触)し、ピストン弁4が停止し、図5(B) のように、プランジャ5は自重により穏やかに下降する。そして、プランジャ5の下端部がピストン弁4のテーパ面44aに当接し、プランジャ5が停止する。このように、プランジャ5の自重と、下降運動による荷重がピストン弁4へ伝わり、パイロット弁座45に荷重が伝わることがない。このとき、プランジャ5のガイド孔51の上端51Aとパイロット弁体6の上端6Aは離間しており、プランジャ5の自重がパイロット弁体6に伝達されることはない。また、伝達金具7のフランジ部72は縦孔52の底部52aから離間しており、プランジャばね8の付勢力は伝達金具7を介してパイロット弁体6に伝わる。したがって、ニードル部61とパイロット弁座45とのシール性が高まり、確実に弁閉状態を保持できる。
【0030】
以上の実施形態のパイロット式電磁弁のプランジャ5、パイロット弁体6、伝達金具7及びプランジャばね8の構成、作用効果を直動式電磁弁にも適用できる。図7は実施形態の直動式電磁弁の非通電時の縦断面図であり、図1と同様な要素には同符号を付記して詳細な説明は省略する。この実施形態の直動式電磁弁は請求項1に対応する。この直動式電磁弁の本体部10には弁室10Aが形成されるとともに、一次側継手101と二次側継手102が取り付けられている。また、弁室10Aの底部には、弁座103が形成され、この弁座103の中心に弁ポート103aが形成されている。そして、一次側継手101は弁室10Aに連通され、二次側継手102は弁ポート103aを介して弁室10Aに連通可能となっている。
【0031】
また、本体部10にはプランジャチューブ20が取り付けられ、このプランジャチューブ20内にプランジャ5が挿通され、このプランジャ5のガイド孔51内に弁体6が挿通されている。なお、この弁体6はパイロット弁体ではないが、前記実施形態と同構造であり、弁体6、ニードル部61及び弁バネ62は図1と同符号を用いている。弁本体10の弁室10Aの中程の側面はすり鉢状のテーパ面10aとなっており、このテーパ面10aは前記実施形態のテーパ面44aに相当する。
【0032】
以上の構成により、電磁コイル32へ通電がなされていないとき(非通電持)は、プランジャャばね8の付勢力及びプランジャ5の自重により、プランジャ5が吸引子31から離間する。そして、弁体6のニードル部61が弁座103に着座し、弁ポート103aが弁閉状態となる。電磁コイル32に通電がなされると、プランジャ5が上昇し、プランジャ5の下端のワッシャ54が弁体6の段部6aに当接係合し、プランジャ5と弁体6が係合状態を保持して共に上昇する。そして、プランジャ5の上端部5aが吸引子31に当接してプランジャ5が停止する。弁体6は弁ばね62のばね力によりさらに上昇し、弁体6の上端6Aが伝達金具7の円柱部71の下端71Aに当接し、弁体6が停止する。これにより、弁ポート103aが全開となり、弁室10Aの流体が二次継手102側に流出する。
【0033】
次に、電磁コイル32への通電が絶たれると、プランジャ5がプランジャばね8の付勢力と自重により下降し、弁体6のニードル部61が弁座103に着座(接触)し、弁ポート103aが全閉状態となり、さらに、プランジャ5は自重により穏やかに下降する。そして、プランジャ5の下端部が弁本体10のテーパ面10aに当接し、プランジャ5が停止する。この実施形態でも、プランジャ5の自重と、下降運動による荷重は弁本体10へ伝わり、弁座103に荷重が伝わることがない。このとき、プランジャ5のガイド孔51の上端51Aと弁体6の上端6Aは離間しており、プランジャ5の自重が弁体6に伝達されることはない。また、伝達金具7のフランジ部72は縦孔52の底部52aから離間しており、プランジャばね8の付勢力は伝達金具7を介して弁体6に伝わる。したがって、ニードル部61と弁座103とのシール性が高まり、確実に弁閉状態を保持できる。
【0034】
以上の実施形態では、プランジャばね8と伝達部としての伝達金具7とが別部材の例を示したが、例えば図8のように、プランジャばね構造体9とすることができる。このプランジャばね構造体9は、大径のばねと小径のばねを一体に形成したものであり、大径のばねの部分がプランジャばね91であり、小径のばねの部分と大径ばねの端部が伝達部92である。このプランジャプランジャばね91は前記実施形態のプランジャばね8と同様な作用をし、伝達部92は前記実施形態の伝達金具7と同様な作用をする。
【符号の説明】
【0035】
1 本体部
2 シリンダケース
3 電磁駆動部
31 吸引子
4 ピストン弁
45 パイロット弁座
45a パイロットポート
5 プランジャ
51 ガイド孔
52 縦孔
53 透孔
54 ワッシャ(係合部)
6 パイロット弁体
61 ニードル部
6a 段部(被係合部)
7 伝達金具(伝達部)
8 プランジャばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁座に対向して軸線方向に移動可能に配置された弁体と、プランジャばねにより前記弁座側に付勢されるとともに前記弁体を保持するプランジャと、前記プランジャを軸線方向に駆動する電磁駆動部とを備え、前記弁体が前記プランジャに形成されたガイド孔内で該プランジャに対して軸線方向に移動可能に保持され、前記プランジャを軸線方向に移動する過程で該プランジャの弁座側の係合部を前記弁体の被係合部に係合させて、該弁体を前記弁座から離間させるようにした電磁弁において、
前記プランジャの中心に前記軸線方向に縦孔が形成されるとともに、該縦孔の底部から前記弁体側に貫通する透孔が形成され、
前記縦孔内に前記プランジャばねが内挿されるとともに、前記透孔内に前記縦孔側から前記弁体側に突出可能な伝達部が挿通され、
前記弁体の前記プランジャばね側端部は前記プランジャに対して常時離間されており、弁閉状態で、前記プランジャばねの付勢力を前記伝達部を介して前記弁体に伝達するようにしたことを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁弁をパイロット弁として備えるとともに、円柱形状の弁室内に軸線方向に移動可能に配設されたピストン弁と、前記軸線上で前記ピストン弁に対向配置された主弁座とを備え、請求項1の前記弁座が前記ピストン弁に形成されたパイロット弁座であり、請求項1の前記弁体が前記弁室内で前記パイロット弁座に対向配置されたパイロット弁体であるパイロット式電磁弁であって、
前記弁室内の前記パイロット弁体側の前記ピストン弁に対する背空間が前記ピストン弁の周囲を介して高圧の一次側に連通され、前記主弁座の主弁ポートが低圧の二次側に連通され、
前記パイロット弁体が前記パイロット弁座を閉状態とした後、前記背空間の高圧により前記ピストン弁を前記主弁座に着座させ、前記パイロット弁体を前記パイロット弁座から離間させて前記背空間を前記パイロット弁座のパイロットポートを介して二次側に導通して一次側の高圧により前記ピストン弁を前記主弁座から離間するよう構成され、
前記ピストン弁が前記主弁座に着座した後、前記パイロット弁体の前記プランジャばね側端部と前記プランジャとの離間状態を維持したまま、前記プランジャが前記ピストン弁に当接するようにしたことを特徴とするパイロット式電磁弁。
【請求項3】
前記弁室は前記主弁座側に前記ピストン弁が挿通される開口部を有し、前記ピストン弁と前記開口部の周囲とに、前記ピストン弁が前記主弁座から所定距離離間したときに当接するストッパ機構を備えたことを特徴とする請求項2に記載のパイロット式電磁弁。
【請求項4】
前記ストッパ機構を構成するフランジ部と、前記弁室を形成するとともに前記ピストン弁を収容する筒状の大径部と、前記プランジャを収容する筒状の小径部とを有するケース体が、ステンレスのプレス加工により一体成型されていることを特徴とする請求項3に記載のパイロット式電磁弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−154381(P2012−154381A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12525(P2011−12525)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000143949)株式会社鷺宮製作所 (253)
【Fターム(参考)】