説明

電磁振動型ポンプ

【課題】簡単な構成でエアーの脈動による振動や騒音を防止することができる小型の電磁振動型ポンプを提供する。
【解決手段】電磁石21、および永久磁石22aを固定した振動子22を対向させて電磁石21の極性を交流電源で変更することにより振動子22を振動させてエアーを送り出すポンプ2に、ポンプ2から送り出されたエアーを一時的に貯留するタンク3が接続されている。そして、タンク室31の一壁面にエアーの吐出管33が設けられている。このタンク室31内で、吐出管33と直結するように、整流管1が設けられている。この整流管1は、筒状体11または板状体に複数個の小孔が並列して吐出管33に向って貫通するように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤフラムポンプやピストンポンプのように、電磁石を交流電圧で駆動して電磁石の極性を変化させることにより、ダイヤフラムやベローズなどを振動させてエアーを送り出す電磁振動型ポンプに関する。さらに詳しくは、電磁振動によるエアーの脈動に伴う振動や騒音を抑制し、観賞用水槽、養魚用水槽、家庭浄化槽などへのエアーの供給を静かに行うことができる電磁振動型ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
電磁振動型ポンプは、たとえば両側にダイヤフラムを有するダイヤフラムポンプを想定した電磁振動型ポンプの概要図が図9に示されるように、ポンプ51と、ポンプ51の両側から吐出されるエアーを、吐出口51aを介して合流させる合流室52および吐出口53aを経てエアーを一時的に貯留するタンク53とを備え、タンク53の1つの側壁に吐出管54が設けられている。この吐出管54にホースなどを接続して、図示しない、たとえば観賞用の水槽などにエアーを供給するように構成されている(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
この電磁振動型ポンプは、前述のように、電磁石の50Hzまたは60Hzの交番電界による極性の変化に基づき電磁石と対向して設けられる永久磁石の振動によりダイヤフラムなどを振動させ、そのダイヤフラムの振動に伴うエアーの圧縮、膨張によりエアーを送り出す構成になっている。そのため、ダイヤフラムの振動は交流電圧のサイン波形に沿って振動することになり、送り出されるエアーもサイン波形に沿って山の部分では強く、電圧が0の部分(電圧の極性が変る部分)では弱い送り出しになる。このように送り出されたエアーは、合流室52を経てタンクに一時的に貯留され、ある程度の圧力がかかるようになっているが、吐出管54からエアーが吐出されるということは、ポンプ51からエアーが吐出されることにより、その圧力でタンク53からエアーが吐出管54に押し出されることにより行われる。そのため、タンク53内に貯留されたエアーは一種の弾性体になり、吐出口53aに伝わった圧力の強弱は、タンク53内のエアー全体を1つの弾性体として吐出管54にそのまま伝わり、吐出管54には、ポンプ51からの吐出のタイミングに合せてエアーが吐出されることになる。その結果、たとえば図10に示されるように、吐出管54の吐出圧力は、電磁石の電圧の波形に合せて強いところと弱いところがある波形となり、一定の圧力にはならないで脈動する。
【0004】
このような脈動を防止する方法として、たとえば40リットル/minのポンプの場合、タンクの容量を500ml(ミリリットル)とするなど大きくするか、図11にタンク53の一例の上面を除いた斜視図が示されるように、タンク53内を仕切板531により小部屋533に仕切って、各小部屋533を順次エアーが進むように、仕切板531に切欠き部532を形成することが考えられている。
【0005】
タンクの容量の大きさを変動したときの圧力変動値を、常用圧力(ポンプの負荷で吐出するエアーの平均圧力)が12.8kPaの場合で、後述する図4の構成により測定した結果(単位mV:40mV=1kPaで変換した圧力差も併記)を表1に示す。なお、表1で、Cの場合は内径φ50mmで、長さ250mmの塩化ビニールパイプをタンクとして用い、接続のノズル径は内径φ13mm、外径φ18mmで、Dの場合は内径φ80mmで長さが400mmの塩化ビニールパイプを用いノズル径は内径φ13mm、外径φ18mmである。
【0006】
【表1】

【0007】
このように、タンクの容量を大きくすれば、ポンプ51からの吐出圧力の差はタンク53内の圧縮されたエアーにより吸収されて、吐出管54では、脈動が小さくなり、余り脈動による振動や騒音の影響はなくなる。また、タンク53内を仕切板531により小部屋に仕切れば、小部屋533をいくつも経由することにより、吐出圧力に差があっても、順次打ち消され、吐出管54に到る頃には、その圧力差が小さくなり、図10に示されるような圧力差は減少し、脈動を抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実用新案登録第3161068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述のように、タンクの容量を、たとえば500ml程度に大きくすると、脈動をかなり抑えることができるが、電磁振動型ポンプ自体が大きくなり、ポンプの容積を小さくすることが望まれている近年の小型化の要求に逆行することになる。また、前述の仕切板によりタンクを小部屋に分割すれば、比較的小型で脈動を抑えることができるが、たとえばタンクの容量を1/2程度にしようとすると、仕切板を形成するのが困難となり、コストアップになるだけではなく、脈動の抑制も十分でなくなり、観賞用水槽や家庭用浄化槽などにエアーを供給する際に振動や騒音が生じ、不快感を与えるという問題がある。
【0010】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、簡単な構成でエアーの脈動による振動や騒音を抑制することができる小型の電磁振動型ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の電磁振動型ポンプは、電磁石、および永久磁石を固定した振動子を対向させて前記電磁石の極性を交流電源で変更することにより前記振動子を振動させてエアーを送り出すポンプと、前記ポンプから送り出されたエアーを一時的に貯留するタンクと、前記タンクの一壁面に設けられ、エアーを吐出する吐出管とを有する電磁振動型ポンプであって、前記タンク内で、前記吐出管と直結するように、整流管が設けられ、該整流管は、複数個の小孔が並列して前記吐出管に向って貫通するように設けられている。
【0012】
前記整流管に設けられる小孔が、該小孔の直径Dと該小孔の長さLとの関係で10≦L/D≦30であるように形成されることが、脈動を抑制するのに、とくに都合がよい。
【0013】
前記タンクが、前記ポンプとホースを介して接続される外付けタンク、またはポンプと一体的に形成された小型タンクおよび該小型タンクとホースにより接続される外付けタンクとからなり、該外付けタンクに前記整流管が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数個の小孔が並列して設けられた整流管が、タンク内に吐出されたエアーが通過するように吐出管の前に設けられているため、ポンプの圧力で押し出されて、その押圧力に大小があるエアーによりタンク内に貯留されたエアーに伝達しても、押圧力に大小を有するエアーが整流管の各小孔に分離して侵入し、小孔をそれぞれ別個に吐出管に向って進むことにより、整流管のそれぞれの小孔を通過したエアーは、それぞれその押圧力が変化し、結果的に圧力変化は圧縮されて吐出管に達するエアー全体の脈動は小さくなる。
【0015】
また、この小孔の長さLに対する孔径D(L/D)が大きい程、押圧力の平均化に好ましいが、この値が余り大きくなると、圧力損失が大きくなって吐出するエアーの流量が低下する。この際、たとえば40リットル/minの流量を吐出する電磁振動型ポンプでは、一般的には、その流量が10%以上低下してはいけないとされており、L/Dが10〜30であることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の電磁振動型ポンプの一実施形態であるダイヤフラム型ポンプの一例を示す概略断面説明図である。
【図2】本発明の電磁振動型ポンプの整流管の例を示す説明図である。
【図3】本発明の電磁振動型ポンプの整流管の他の例を示す説明図である。
【図4】吐出管から一定距離における流体圧力の測定装置の概略を示すブロック図である。
【図5】本発明の整流管を用いた場合の脈動が抑制される原理を説明する図である。
【図6】本発明の整流管を用いた場合の騒音を測定する装置の概要を示す図である。
【図7】図1に示される本発明の電磁ポンプの騒音を、従来の280mlで仕切板のないタンクを付けた構造の電磁振動型ポンプの騒音と対比して示す図である。
【図8】整流管の長さを変えたときの圧力変動(Δp)および風量低下の変化を示す図である。
【図9】従来の電磁振動型ポンプの概略を示す説明図である。
【図10】従来の電磁振動型ポンプで生じる脈動を説明する図である。
【図11】従来の電磁振動型ポンプで脈動を抑制する例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
つぎに、本発明の電磁振動型ポンプについて、図面を参照しながら説明する。図1には、本発明による電磁振動型ポンプの一実施形態であるダイヤフラム型電磁ポンプの概略説明図が示されている。図1において、電磁石21、および永久磁石22aを固定した振動子22を対向させて電磁石21の極性を交流電源で変化させることにより振動子22を振動させてエアーを送り出すポンプ2に、ポンプ2から送り出されたエアーを一時的に貯留するタンク3が接続されている。そして、タンク3の一壁面にエアーを吐出する吐出管33が設けられている。本発明では、このタンク3内で、吐出管33と直結するように、整流管1が設けられていることに特徴がある。この整流管1は、図2〜3に示されるように、筒状体11または板状体に複数個の小孔12が並列して吐出管33に向って貫通するように設けられている。
【0018】
整流管1は、図2(a)に示されるように、たとえばタンク3を鋳物などで製造する際に凹部を有する台座部分12の凹部12a内に複数個の小孔11aが形成されたハニカムパイプなどの筒状体11または板状体を挿入することにより、吐出管33の位置に小孔11aの部分が一致するように形成されている。そのため、この台座部分12は、アルミダイカストまたはプラスティックなどにより形成されるが、筒状体11や板状体は、シリコーンチューブやエラストマなどのプラスティック、またはアルミニウムやステンレス鋼などの金属材料を用いることができる。小孔11aの加工のしやすい材料で、腐食のしにくい材料であればよい。
【0019】
小孔11aの形状は、断面形状が円形でも、楕円形でも四角形でも、六角形の蜂の巣状でも、図2〜3に種々の例が示されるような任意の形状のものを作製することができる。また、複数個の小孔11aは、それぞれが同じ大きさのものを用いることができる。なお、図2(b)に示される例は、断面がやや楕円形状の金属パイプ11の外周部に小孔11aが周方向に沿って形成され、その中心部にエラストマなどのプラスティックに小孔11a、11bが形成されたプラスティック体11cが挿入された構造である。このような金属パイプに設けられる小孔11aと、中心部のプラスティックに設けられる小孔11aとでは、同じ大きさの小孔でも、エアーの流れ方が若干異なるため、脈動を抑制することができると共に、さらに、この例に示されるように、小孔11aとそれよりも若干大きい小孔11bとを混在させることにより、孔の大きさによりエアーの流れ方は異なり、より一層脈動を抑制することができる。この例で、前述のタンクの大きさを280ml程度にする場合、横方向の径(短径)D1は6〜8mm程度で、縦方向の径(長径)D2はφ8〜10mm程度で、長さLは、10〜30mm程度で、小孔11aの径はφ1〜1.2mm程度、小孔11bの径は、φ1〜1.2mm程度の、小孔11aと同程度にすることもできるし、それとは異ならせた大きさにすることもできる。
【0020】
図2(c)に示される例は、たとえばエラストマなどからなるt=3mm程度厚の板状体11dに小孔11aが形成された例である。このような板状体11dは、前述の筒状体11の長さLに比べて短いが、後述するように挿入効果はあり、このような板状体11dを、複数枚間隔をあけて並べるか、連続して台座部分12の凹部12aに挿入することにより、簡単に製造することができながら、円筒体11と同様の効果を得ることができる。
【0021】
図2(d)に示される例は、たとえばシリコーン樹脂などからなる円筒体11に同じ大きさの小孔11aが設けられた例であるが、図において、2本線で囲まれた部分が樹脂の部分であり、それ以外の部分は孔になっている。すなわち、円形の小孔11aが一定間隔で密集して形成され、その周囲に一定の幅でリング状の樹脂部分11eがあり、隣接するその樹脂部分11eの間隙部11fも貫通孔になっている。しかし、円形の小孔11aの部分だけが貫通孔となり、隣接する小孔11aの部分は全て樹脂部分とする構成にすることもできる。製造工程の面からは、円柱状の柱体に多数の管通孔が形成された構造の方が簡単であるが、そのような構造でも、同様の効果が得られた。
【0022】
図3(e)〜図3(h)も図2(d)と同様の構成で、小孔11aの形状が異なるだけである。なお、11gも貫通孔である。このように、小孔11aの大きさや形状は任意に選択することができる。
【0023】
ポンプ2は、図1にその一例が示されるように、ケーシング(図では線だけで省略し書いてある)20a内に電磁石21が対向するように設けられ、その対向する電磁石21の間に振動子22が設けられ、その振動子22に、図1に示される例では、板状の永久磁石22aがそれぞれ電磁石と対向するように2組固定されている。この振動子22の両端には、ダイヤフラム24が固定されると共に、ダイヤフラム24の外周はケーシング20aに固着され、振動子22の左右への振動に伴ってダイヤフラム24が左右に揺れる構造になっている。ダイヤフラム24の外側には、ケーシング20aと同様に図では線だけで省略して示されているが、ポンプケーシング20bが設けられ、ポンプケーシング20b内には、ポンプ室25、吸気室26、吐出室27が形成され、吸気室26には、ポンプ室25にエアーを送り込む吸入弁26aと外部からエアーを吸入する吸入口26bとが設けられ、吐出室27には、ポンプ室25からエアーが送り込まれる吐出弁27aと合流室28にエアーを吐出する吐出口27bが形成されている。図1で左右の両ポンプ室25の吐出口27aから吐出されたエアーは、合流室28に送り出され、合流する。合流室28は、エアーを貯留するタンク31に連通口32を介して連通しており、タンク31内の圧力に応じて吐出管33からエアーを吐出できる構造になっている。
【0024】
このようにタンク31を介して吐出されるが、前述のダイヤフラム24の振動に伴う吐出によりタンク31内のエアーが押し出されるため、前述のように、ダイヤフラム24の振動に伴ってエアーは吐出され、整流管1を挿入しないと、脈動を抑制することができない。この例では、合流室28で左右の吐出室27からのエアーを集めいてタンク31に送り出す構造であるが、このような合流室28を敢えて設けないで、左右の吐出室27から直接別々にタンク31に送り出す構造にすることもできる。また、タンク31も必ずしもポンプ2と一体的に構成されないで、ホースなどにより接続して外部に外付けタンクを設ける構造にすることもできる。
【0025】
電磁石21は、図1に示される例では、E型鉄心21aの中心部21cに励磁コイル21bが巻回され、E型鉄心21aの中心部21cの先端部に励磁コイル21bの電流の向きに応じてN極またはS極の極性が現れ、E型鉄心21aの両端部21dの先端部に中心部21cの先端部と逆の極性のS極またはN極が現れる。一方、振動子22は、たとえばプラスティックまたはアルミニウムからなる棒または板状の振動軸22bのコイル巻回部分に対向する位置の近傍に永久磁石22aが固着されことにより形成されている。図1に示されるように、2個の永久磁石で極性は異なる方向になるように固着する。この構成で、励磁コイル21bに交流電圧を印加すると、交流の正側電圧と負側電圧で励磁コイル21bに流れる電流の向きが変る。そのため、E型鉄心21aの中心部21cの先端に現れる磁極は、N極とS極が交流電圧の位相に合せて交互に現れる。その結果、たとえば図1に示されるように、E型鉄心21aの中心部21cに現れる磁極がN極の位相であれば、振動子22の永久磁石22aのS極が中心側に引き寄せられ、N極は中心から遠ざかるように振動子22が動く。交流電圧の位相が逆の位相になれば、電流の向きが反転して中心部21cにS極が現れる。そのため、振動子22の永久磁石のN極が引き寄せられ、S極は遠ざかるように振動子22が移動する。なお、図1に示されるように、電磁石21および永久磁石22aの極性は、振動軸22bを挟んだ図の上部と下部とで、その極性が逆になるように構成されている。
【0026】
その結果、交流電圧の位相に応じて振動子22は振動し、たとえば図1で振動子22が右側に移動した場合、右側のポンプ室25が圧縮され、エアーが吐出弁27aを開けて吐出室27側に移動する。交流電圧の位相が変って振動子22が左側に動くと、右側のポンプ室25は広がり、圧力が下がるため、吸気室26から吸気弁26aを開けてエアーが流入する。吸気室26は、吸気口26bを介して外部からエアーが供給されるため、通常の気圧を保持する。この動作を交流電圧により繰り返すため、左右のポンプ室25から次々とエアーが送り出され、合流室28を介してタンク31に供給される。その結果、タンク室31の吐出管33に接続されるバルブ(図示せず)で制御される圧力を超えた場合に吐出管33からエアーが送り出される。本発明では、このタンク3からエアーを吐出する際に前述のような整流管1を介して吐出管33に送り出すことに特徴がある。
【0027】
図1に示されるポンプでは、左右両側にポンプ室25を有するダイヤフラム型の電磁ポンプであったが、ダイヤフラム型であっても左右の一方だけにダイヤフラムが設けられる場合でも、また、ダイヤフラムを用いないでベローズなどを用いたピストン方式のポンプであっても、脈動は避けられず、本発明を同様に適用することができる。
【0028】
図1に示される構造の電磁振動型ポンプで、前述の図2(b)および(c)に示される整流管1を用いた場合((b)の場合をI、(c)の場合をIIとする)の、吐出管33での脈動をエアーの圧力差Δp(最大圧力と最小圧力との差で、単位はmV)を調べることにより、従来のタンク内に仕切板を設けないで、何らの対策をしてないもの(IIIとする)の脈動の程度と比較して調べた。なお、図2(b)のハニカムチューブは、D1がφ8mmで、小孔11aの径がφ1mm、長さLが20mmの場合で、図2(c)は、厚さtが3mmの場合である。また、図2(b)の構造ではなく、図2(d)と同様の構造で、円柱体に多数の貫通孔を形成した構造のものでも、殆ど同じ結果が得られた。その結果を、表2(50Hz)および表3(60Hz)に示す。なお、この測定は、図4に示されるような構成で調べた。すなわち、図4において、電磁振動型ポンプの吐出管33に、内径φ14mmの塩化ビニール管を介して、バルブ41とマスフロー42を接続し、バルブ41の前で吐出管33からから約50mmの位置に、測定孔を形成して圧力センサ43を接続し、その圧力センサ43の出力をオシロスコープ44で測定した。なお、オシロスコープ44は、横河電機(株)製のデジタルオシロスコープDL−1640を用い、安定化電源PCR−1000LA(KIKUSUI)を介して接続し、圧力センサ43は、キーエンス社製のAP−C30(1kPa/40mVDC)を用いた。このとき、電磁振動型ポンプの駆動は、AC100Vで周波数は50Hz(表2)と60Hz(表3)の両方で行った。なお、表で、H(kPa)はバルブ41の制御によるエアーの圧力を示し、Qは、マスフローにより測定したそのときの流量を示す。
【0029】
【表2】

【0030】
【表3】

【0031】
このように脈動を抑制することができる理由としては、たとえば図5(a)に模式図が示されるように、吐出圧力に差があるエアーAが送られてきた場合、本発明の整流管Bを通過すると、小孔内にエアーが分割して送り込まれるため、それぞれの小孔内を独自の圧力で進行し、その小孔を通過した後に再度合流すると、圧力差が緩和されたエアーの流れCになるためと考えられる。一方、整流管がない図5(b)に示される場合では、ダイヤフラムの振動により送り出されるエアーはそのままタンク内に貯留されたエアーに圧力としてかかるため、タンク内のエアーが1つの弾性体として働き、連通口32に加わる強弱の強い押圧力がそのままタンク室31内のエアーを介して吐出管33に伝わるためと考えられる。
【0032】
表2および表3から明らかなように、吐出圧力(吐出エアーの圧力)が通常仕様の12.8kPaの場合のみならず、20kPaと高圧で送り出す場合でも、従来の対策を施さない場合(III)より圧力差は非常に小さくなり、脈動を抑制することができる。その結果、タンク31の大きさを280ml程度と非常に小さくしても、脈動による振動や騒音を抑制することができる。
【0033】
この状態での実際の騒音の測定を行った。すなわち、図6に示されるように、電磁振動型ポンプの吐出管33に接続したバルブ41の後ろのパイプの出口45から、1mの距離にマイク47を設置し、そのマイク47により検出した音量を、人間の耳の感覚に合せる補正値Aで表す騒音値(dBA)を騒音計48により計測した。なお、この測定では、従来のタンクのみで何も対策を施していない場合と、図2(b)に示されるハニカムチューブで、長さが40mm(他の寸法は前述の20mm長のものと同じ構造)の整流管1を用いた場合とで計測し、図7に対比して示す。なお、騒音計としてリオン社製のNL−32を用い、この場合も、バルブ41の調整により、常用時のエアーの圧力が12.8kPaの場合と、バルブが開放時それぞれについて測定した。
【0034】
図7から明らかなように、開放時でも、12.8kPaのいずれでも、また、50Hzでも60Hzのいずれでも、明らかに本発明の対策を行ったものでは、騒音値が減少している。
【0035】
さらに、整流管1の長さによる圧力変動(Δp)を調べた。この場合、前述の表2〜3で用いたハニカムチューブのままで、その長さのみを10mm、20mm、40mmにして測定をした。なお、L=20mmの場合のデータは、表2〜3と同じであるが、L=10mmと、L=20mmと、L=40mmの場合とを、対比して、それぞれ表4(50Hz)および表5(60Hz)に示す。
【0036】
【表4】

【0037】
【表5】

【0038】
表4および表5から明らかなように、長くなるほど脈動による圧力差は減少するが、それに伴い流量Qは低下することが分かる。これらの表から、吐出されるエアーの通常圧力が12.8kPaのときの圧力差Δp(mV)をLの長さを変えたときの関係が、図8(a)に示されている。図8(a)から明らかなように、整流管の長さLが長いほど整流作用は大きいが、表4および表5から明らかなように、流量Qが低下する。これは整流管1が余り長くなると、エアーの流れの抵抗が大きくなり、損失が大きくなるからであるが、この損失が大きくなると電力のロスになる。そのため、整流管を付けない場合(表2〜3)の約10%より大きくなることは好ましくない。通常圧力が12.8kPaのときの表2〜3における流量Qに対して、L=10mm、20mm、40mmの場合の風量低下の割合(%)を図8(b)に示す。この風量低下が10%程度を限界とすると、結局、L=30mm以下にする必要がある。
【0039】
その結果、10≦L/D≦30が好ましいことが分かった。すなわち、図8(a)より整流管の長さを長くするほど、脈動を抑制することができる。しかし、整流管1の長さLを余り長くすると、抵抗が大きくなり、流動損失が発生するという問題があるので、図8(b)より30mm以下が好ましい。
【0040】
前述の各例では、ポンプとタンクとを一体にしたポンプ内蔵の例であったが、前述のように、タンクを外付けにすることもできる。たとえば、図1に示される吐出口32に直接外付けタンクを接続する場合がある。このような外付けタンクにも、本発明の整流管を内蔵させることにより、同様に脈動による騒音や振動を生じさせないで、タンク容量を小さくすることができる。また、ポンプにタンクを内蔵する場合でも、そのタンクを非常に小さく(たとえば100ml程度)して、同様に外付けタンクを設ける場合もあるが、そのような場合でもその外付けタンクに本発明の整流管を設けることにより、外付けタンクを小型にしながら、脈動による騒音や振動を抑制することができる。なお、外付けタンクの材質としては、プラスティックや金属などが用いられる。
【符号の説明】
【0041】
1 整流管
2 ポンプ
3 タンク
21 電磁石
21a E型鉄心
21b 励磁コイル
22 振動子
22a 永久磁石
22b 心棒
24 ダイヤフラム
25 ポンプ室
26 吸気室
27 吐出室
31 タンク室
33 吐出管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁石、および永久磁石を固定した振動子を対向させて前記電磁石の極性を交流電源で変更することにより前記振動子を振動させてエアーを送り出すポンプと、
前記ポンプから送り出されたエアーを一時的に貯留するタンクと、
前記タンクの一壁面に設けられ、エアーを吐出する吐出管
とを有する電磁振動型ポンプであって、
前記タンク内で、前記吐出管と直結するように、整流管が設けられ、該整流管は、複数個の小孔が並列して前記吐出管に向って貫通するように設けられてなる電磁振動型ポンプ。
【請求項2】
前記整流管に設けられる小孔が、該小孔の直径Dと該小孔の長さLとの関係で10≦L/D≦30であるように形成されてなる請求項1記載の電磁振動型ポンプ。
【請求項3】
前記タンクが、前記ポンプとホースを介して接続される外付けタンク、またはポンプと一体的に形成された小型タンクおよび該小型タンクとホースにより接続される外付けタンクとからなり、該外付けタンクに前記整流管が設けられてなる請求項1または2記載の電磁振動型ポンプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−36789(P2012−36789A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176229(P2010−176229)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(390006286)株式会社テクノ高槻 (17)
【Fターム(参考)】