説明

電磁波シールド構造

【課題】電気自動車に搭載されるモータなど機器の入力端子に、コネクタを介して、電源バッテリからのケーブルを端子金具で接続する構造部において、編組を使用することなく電磁波を遮蔽する性能を高めた電磁波シールド構造を提供する。製造コストが比較的安価であり、また生産性にも優れている。
【解決手段】電磁波シールド構造は、絶縁線心31と絶縁線心31を被覆する外被シースとを有するケーブル12と、端子とコネクタハウジングとを有するコネクタ11とが接続された電磁波シールド構造である。コネクタ11は、導電性樹脂よりなるコネクタハウジング21と、コネクタハウジング21内に一体成形された絶縁性樹脂よりなる端子保持部22と、端子保持部22に保持された端子3と、を有する。ケーブル12の外被シース32は、コネクタハウジング21に電気接続され、端子3はケーブル12の絶縁線心31に電気接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電気自動車に搭載されるモータの入出力端子や一般機器の入出力端子にケーブルの端末を接続するコネクタにおいて、電磁波を遮蔽する性能を高めた電磁波シールド構造に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピューターをはじめあらゆる電子機器が高出力、高周波領域に発展してきている。そのため、電磁放射電界強度が大きくなり、発振電磁波が各種の制御装置に誤動作等の悪影響を与えることが多くなってきている。
【0003】
そこで、この電磁波障害を有効に防止するために、各種電子機器はその外装筐体として鉄、アルミニウム等の金属を使用し、あるいはプラスチック製筐体に導電性塗装を施すなどによって導電性を保有させており、電子機器の各種のコネクタ、プラグは金属ケース等で被覆し、また機器間を結線するケーブルは線心(導線)の周りを絶縁体を介してシールド線で被覆した同軸ケーブルを使用する等の電磁シールド手段を構じて、ケーブルから発生する電磁波が他機器に影響を及ぼすことを防止し、あるいはケーブルを介して外部から電磁波の影響を受けることがないようにしている。
【0004】
例えば、電気自動車に搭載されるモータの入出力端子において、コネクタを介して電源からのケーブルを接続する接続部では、電磁波シールド構造を設けて電磁波を遮蔽するようにしている。
【0005】
例えば、特開2003−317878号公報(特許文献1)および特開2006−155986号公報(特許文献2)では、図8に示す電磁波シールド構造が採用されている。この構造は、コネクタハウジングである金属製円筒のシェル1内に端子保持部材2が設けられ、この端子保持部材2に複数本のピン端子3が保持されている。このようなコネクタに接続されるケーブル4は、銅線などの線心5aを絶縁体5bで被覆した絶縁線心5を複数本撚り合わせ、この撚り合わせた絶縁線心5の上から金属製の編組6を巻き付け、その上に最外層のシース7を被覆して構成されている。
【0006】
このシールドケーブル4の端末を皮剥ぎ処理して線心5aを露出させ、露出した線心5aを対応するピン端子3に接続している。また、ケーブル端末の外被シース7を皮剥処理して編組6を露出させ、露出した編組6の上から筒状の金属製ネット8を被せ、さらにこの金属製ネット8の上から熱収縮チューブ9を被せている。熱収縮チューブ9を加熱し、その収縮圧により金属製ネット8をシェル1とシールドケーブル4の編組6の両方にわたって密着させ、そのようにして編組6をシェル1にシールド導通させて電磁波を吸収している。
【0007】
しかし、これらの公報に開示された電磁波シールド構造では、次のような欠点ある。
【0008】
シールドケーブル4は、編組6を使用してシールドを行っているので、高価となり、また重量がかなり重くなる。また、金属製ネット8を使用してシェル1とシールドケーブル4の編組6の両方にわたって密着させているので、この接続構造も高価なものとなり、また重量がかなり重くなる。
【0009】
特開平8−22867号公報(特許文献3)には、ハウジングの内面に導電性プラスチックのモールド成形によってシールド層部Dを形成し、電磁シールドされていない状態の接続部Bから発生した電磁波をシールドすることが記載されている。
【0010】
しかし、この構成においても、編組からなるシールド線3が使用されているので、上記問題が解決されておらず、しかもカバー5、金属ケース4、端子保持部材などを組み立てる必要があるので製造コストが高くなる。
【0011】
特開2000−268922号公報(特許文献4)には、ハウジングの内面に金属板を筒状に屈曲させて形成したシールドシェル30を配置し、このシールドシェル30にケーブルのシールド層63とを接続する構成が記載されている。
【0012】
しかし、この構成においても、編組からなるシールド層63が使用されているので、上記問題が解決されておらず、しかもシールドシェル30、端子保持部材などを組み立てる必要があるので製造コストが高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2003−317878号公報
【特許文献2】特開2006−155986号公報
【特許文献3】特開平8−22867号公報
【特許文献4】特開2000−268922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
以上から、本発明の目的は、特に電気自動車に搭載されるモータなど機器の入力端子に、コネクタを介して、電源バッテリからのケーブルを端子金具で接続する構造部において、編組を使用することなく電磁波を遮蔽する性能を高めた電磁波シールド構造を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、製造コストが比較的安価であり、また生産性にも優れている電磁波シールド構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
従って、本発明は以下を提供する。
(項目1) 絶縁線心と該絶縁線心を被覆する外被シースとを有するケーブルと、端子とコネクタハウジングとを有するコネクタとが接続された電磁波シールド構造であって、該コネクタは、導電性樹脂よりなるコネクタハウジングと、該コネクタハウジング内に一体成形された絶縁性樹脂よりなる端子保持部と、該端子保持部に保持された端子と、を有し、該ケーブルの外被シースは、該コネクタハウジングに電気接続され、該端子は該ケーブルの絶縁線心に電気接続されている電磁波シールド構造。
(項目2) 前記コネクタハウジングと前記端子保持部は2色成形によって製造されている項目1に記載の電磁波シールド構造。
(項目3) 前記外被シースが、絶縁性樹脂から形成される板状の基材の片面に金属層を設けて構成されている項目1に記載の電磁波シールド構造。
(項目4) 前記外被シースが、絶縁性樹脂から形成される板状の基材の内部に金属層を設けて構成されている項目1に記載の電磁波シールド構造。
(項目5) 前記外被シースが、導電性樹脂により構成されている項目1に記載の電磁波シールド構造。
(項目6) 絶縁線心と該絶縁線心を被覆する外被シースとを有するケーブルが接続される電磁波シールド用のコネクタであって、導電性樹脂よりなるコネクタハウジングと、該コネクタハウジング内に一体成形された絶縁性樹脂よりなる端子保持部と、該端子保持部に保持された端子と、を有するコネクタ。
【発明の効果】
【0017】
本発明に使用するコネクタは、導電性樹脂よりなるコネクタハウジングと、該コネクタハウジング内に一体成形された絶縁性樹脂よりなる端子保持部と、該端子保持部に保持された端子と、を有し、ケーブルの外被シースは、該コネクタハウジングに電気接続され、該端子は該ケーブルの線心に電気接続されているので、部品点数が減り、作成コストを低減することができる。また、従来のように編組からなるシールド層を使用することがないので、比較的安価であり、軽量でもある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の電磁波シールド構造の断面図である。
【図2】外被シースの要部の断面図である。
【図3】外被シースの概略断面図である。
【図4】外被シースを作成する前の基材の要部斜視図である。
【図5】外被シースを作成する前の基材の要部斜視図である。
【図6】外被シースの他の実施形態の要部の斜視図である。
【図7】電磁波シールド構造の他の実施形態の断面図である。
【図8】従来の電磁波シールド構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
図1に示すように、本発明の電磁波シールド構造は、絶縁線心31と該絶縁線心31を被覆する外被シース32とを有するケーブル12と、端子3とコネクタハウジング21とを有するコネクタ11とが接続されているものである。絶縁線心5は、銅線などの線心を絶縁体で被覆して構成されている。
【0021】
コネクタ11は、導電性樹脂よりなるコネクタハウジング21と、該コネクタハウジング21内に一体成形された絶縁性樹脂よりなる端子保持部22と、該端子保持部22に保持された端子3と、を有する。
【0022】
コネクタハウジング21を形成する導電性樹脂としては、従来より公知のものを使用することができる。例えば、アセチレン重合体やポリピロール等の導電性高分子等を使用することができる。また、導電性繊維、導電性フィラーなどを充填した熱可塑性樹脂を使用することもでき、そのような導電性繊維としては、鉄、ステンレス、ニッケル、銅などの金属繊維、あるいは電気メッキ、化学メッキ、PVD、CVD、溶射などの方法により炭素繊維、ガラス繊維などの繊維に金属被覆したものを用いることができる。また、導電性フィラーとしては、ニッケル粉およびカーボンフリットを用いることもできる。
【0023】
導電性繊維を分散混入する樹脂としては、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリスチロール樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などエンジニアリングプラスチック及び汎用プラスチックが使用可能である。
【0024】
端子保持部22を形成する絶縁性樹脂としては、従来より公知の熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を使用することができる。例えば、上記した熱可塑性樹脂があげられる。
【0025】
コネクタハウジングの外側に絶縁層を被覆してもよい。
【0026】
コネクタハウジング21と端子保持部22は2色成形によって製造されている。例えば、コネクタ11は、次のように製造される。
【0027】
まず、絶縁性樹脂および導電性樹脂を用意し、多色成形機、例えば二色成形機を用いて、絶縁性樹脂を成形金型内に射出して端子3とともにインサート成形する。次に、成形二次側において、導電性樹脂を成形金型内に射出してコネクタハウジング21を成形する。
【0028】
上記ケーブル12の外被シース32は、該コネクタハウジング21に電気接続され、該端子3は該ケーブル12の絶縁線心31に電気接続されている。
【0029】
外被シース32をコネクタハウジング21に電気接続するには、図1に示したように、外被シース32の外側にバンド14を配置して締め付けることにより、外被シース32の露出した導電部35とコネクタハウジング21とを電気接続してもよく、あるいは従来より公知の接続方法、例えば、導電性接着剤を用いてもよい。導電部35は、外被シース32の端部にまで露出させてもよく、外被シース32の全周に形成してもよい。
【0030】
外被シース32としては、例えば、図2〜5に示すものがあげられる。
【0031】
この外被シース32は、絶縁性樹脂で形成した板状の基材33の厚み方向の中心部に銅箔などからなる金属層34を設けて構成されている。この板状の外被シース32の片面に樹脂の一部を剥離して導電部35が露出している。板状の外被シース32は、例えば、幅寸法10cm程度、長さ寸法1m程度とすることができる。幅方向の端部に係合部36が形成され、図3に示すように、板状の外被シース32を丸め、一方側の端部を係合部36に係合させることにより、円筒状の外被シース32を作成することができる。
【0032】
外被シース32の外面に、凹凸部37を形成して、その屈曲性を高めるのが好ましい(図2)。また、外被シース32を蛇腹状に構成してもよい。
【0033】
また、外被シース32の形状は円筒状に限定されず、図6に示すように、断面が矩形状となるように巻いてもよい。この場合、外被シース32の幅方向の一方側端部に係止部38が形成され、他方側端部にその係止部38が係止し得る突起39が形成されている。この実施形態では、外被シース32が蛇腹状になっている。
【0034】
外被シース32は、絶縁性樹脂で形成される板状の基材の片面(または両面)に金属層を設けて構成してもよい。金属層としては、銅箔、アルミ箔などを該基材の片面に積層することにより形成してもよく、あるいは金属メッキ、金属蒸着、導電性塗料などにより金属層を形成してもよい。
【0035】
外被シース32は、導電性樹脂により構成してもよい。導電性樹脂としては、上記コネクタハウジング21を製造するために用いた導電性樹脂を使用することができる。
【0036】
図7に示すように、外被シース32の外径を変化させてもよい。この実施形態では、外被シース32は、絶縁性樹脂で形成される板状の基材40の内面に金属層15を設けて構成され、金属層15がコネクタハウジング21と電気接続されている。
【0037】
本発明で使用するコネクタ11は、例えば電気自動車に搭載されたモータの外板ケースに装着される。モータ外板ケースはアルミニウム(Al)など金属製でアース接地されている。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の電磁波シールド構造は、二輪車、四輪車等の機器間を接続するのに好適である。
【符号の説明】
【0039】
3 端子
11 コネクタ
12 ケーブル
21 コネクタハウジング
22 端子保持部
31 絶縁線心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁線心と該絶縁線心を被覆する外被シースとを有するケーブルと、端子とコネクタハウジングとを有するコネクタとが接続された電磁波シールド構造であって、
該コネクタは、導電性樹脂よりなるコネクタハウジングと、該コネクタハウジング内に一体成形された絶縁性樹脂よりなる端子保持部と、該端子保持部に保持された端子と、を有し、
該ケーブルの外被シースは、該コネクタハウジングに電気接続され、該端子は該ケーブルの絶縁線心に電気接続されている電磁波シールド構造。
【請求項2】
前記コネクタハウジングと前記端子保持部は2色成形によって製造されている請求項1に記載の電磁波シールド構造。
【請求項3】
前記外被シースが、絶縁性樹脂から形成される板状の基材の片面に金属層を設けて構成されている請求項1に記載の電磁波シールド構造。
【請求項4】
前記外被シースが、絶縁性樹脂から形成される板状の基材の内部に金属層を設けて構成されている請求項1に記載の電磁波シールド構造。
【請求項5】
前記外被シースが、導電性樹脂により構成されている請求項1に記載の電磁波シールド構造。
【請求項6】
絶縁線心と該絶縁線心を被覆する外被シースとを有するケーブルが接続される電磁波シールド用のコネクタであって、
導電性樹脂よりなるコネクタハウジングと、該コネクタハウジング内に一体成形された絶縁性樹脂よりなる端子保持部と、該端子保持部に保持された端子と、を有するコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−48990(P2012−48990A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190094(P2010−190094)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000225740)南部化成株式会社 (41)
【Fターム(参考)】