説明

電磁波吸収用粘着シート

【課題】曲面部や凹凸部を含む表面に対しても安定に接着でき、特に屋外建造物やコンクリート構造物に対して圧着するだけで、強固かつ安定な接着状態を得ることができ、しかも、電磁波吸収性能も安定に持続し得る、電磁波吸収粘着シートを提供すること。
【解決手段】分割導電膜1、電磁波吸収シート2及び電磁波反射シート3がこの順に積層された電磁波吸収用積層構造部10を有し、前記分割導電膜1の電磁波吸収シートの側とは反対側の片面1Aに保護層4が形成され、前記電磁波反射シート3の電磁波吸収シートの側とは反対側の片面3Aに気泡含有粘着剤層5が形成されてなること特徴とする電磁波吸収用粘着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は種々の表面性状の被着体に対しても安定に接着でき、特に屋外の建造物や構造体に対してもその安定な接着状態を持続し、しかも、電磁波吸収性能も安定に持続し得る、高耐久性の電磁波吸収用粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電磁波吸収体の用途拡大に伴い、多様な環境で電磁波吸収体が使用されることが増えつつある。例えば、GHz帯域の電磁波を用いた高速道路における自動料金収受システム(ETC)では、料金所ゲート天井に取り付けられた路上アンテナと、車に取り付けられた車載アンテナとの間の無線通信により車両の確認や料金の課金が行われるが、隣接レーンを走行する車両との間に通信が成立するとシステムの誤作動が生じ、また、トンネル内でも、渋滞時の混雑において、隣の車からの電磁波により、ラジオにノイズが入るなどの電磁波障害を引き起こす。このため、電磁波吸収体を料金収集所の建造物の壁や屋根に装着したり、高速道路の防音壁に装着したり、トンネルの内壁面に装着することが行われている。
【0003】
しかし、このような建造物の壁や屋根、高速道路の防音壁やトンネルの内壁面に装着する電磁波吸収体は自ずとその面積が大きくなるため、電磁波吸収体の装着作業(設置作業)は容易でない。また、電磁波吸収体はそのままでは、建造物や、防音壁、トンネルの内壁等に固定できないため、例えば、電磁波吸収体の周縁部に孔や凹部を形成する一方、建造物の壁や屋根板、防音壁、トンネルの内壁等にボルト等を打ち込んで電磁波吸収体を係止するための突起を設ける等の前処理(加工)が必要となる。従って、装着すべき対象物に圧着するだけで簡単に装着できる粘着シートタイプの電磁波吸収体であれば、電磁波吸収体の装着(設置)のためのコストや作業時間を軽減できると考えられる。しかし、従来から粘着シートタイプの電磁波吸収体の提案はあるが(例えば、特許文献1等)、いずれも、携帯電話、パソコン等の小型の電気機器類への装着を意図したものであり、屋外の建造物やコンクリート構造物等の曲面部や凹凸部を多く含む大きな面積の表面に対して圧着するだけで安定に装着できる電磁波吸収体は実現できていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−277145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明が解決しようとする課題は、曲面部や凹凸部を含む表面に対しても安定に接着でき、特に屋外建造物やコンクリート構造物に対して圧着するだけで、強固かつ安定な接着状態を得ることができ、しかも、電磁波吸収性能も安定に持続し得る、電磁波吸収用粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採る。
(1)分割導電膜、電磁波吸収シート及び電磁波反射シートがこの順に積層された電磁波吸収用積層構造部を有し、前記分割導電膜の電磁波吸収シートの側とは反対側の片面に保護層が形成され、前記電磁波反射シートの電磁波吸収シートの側とは反対側の片面に気泡含有粘着剤層が形成されてなること特徴とする電磁波吸収用粘着シート。
(2)電磁波吸収用積層構造部が、電磁波吸収シートの一方の片面に粘着剤層を介して分割導電膜を貼り合せ、電磁波吸収シートの他方の片面に粘着剤層を介して電磁波反射シートを貼り合せたものである、上記(1)記載の電磁波吸収粘着シート。
(3)粘着剤層がゲル分率が70〜90%のアクリル系粘着剤で形成されたものである、上記(2)記載の電磁波吸収用粘着シート。
(4)気泡含有粘着剤層が5〜50体積%の気泡を含有する、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の電磁波吸収用粘着シート。
(5)気泡含有粘着剤層が比重が0.1〜0.8g/cmの中空微小球状体を5〜50体積%含有する、上記(4)記載の電磁波吸収用粘着シート。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電磁波吸収粘着シートは、分割導電膜、電磁波吸収シート及び電磁波反射シートがこの順に積層された電磁波吸収用積層構造部を有しており、かかる電磁波吸収用積層構造部は、λ/4型電磁波吸収体や、λ/4型電磁波吸収体と同様の整合膜(吸収膜)及び反射膜を備え、整合膜と反射膜との間に分割導電膜が設けられたもの(所謂、「分割導電膜電磁波吸収体」)とは異なり、整合膜を持たないので、より軽量、薄型化を達成でき、柔軟性に富むものとなる。そして、かかる電磁波吸収用積層構造部の片面に形成された気泡含有粘着剤層は被着対象物の表面が曲面部や凹凸部を有していても自体がそれに追従する優れた変形性を有しているため、本発明の電磁波吸収粘着シートは、曲面部や凹凸部を多く含む表面に対しても安定に接着でき、特に屋外建造物やコンクリート構造物の表面等の曲面部や凹凸部を多く含む比較的大きな面積の表面に対しても圧着するだけで、強固かつ安定な接着状態を得ることができる。
さらに、気泡含有粘着剤層のみならず、電磁波吸収用積層構造部も柔軟性を有するため、応力緩和性に優れ、長期間安定な接着状態を持続することができる。
さらにまた、最外面に保護層を有するため、粘着シート全体が優れた耐候性及び耐高温高湿性を有し、長期間安定した電磁波吸収性能を持続する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の電磁波吸収用粘着シートの一例の模式断面図である。
【図2】粘着シートの凹凸追従性の評価方法を示す概略図(図(A)は表面側の平面図、図(B)は裏面側の平面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をその好適な実施形態に即してより詳しく説明する。
図1は本発明の電磁波吸収粘着シートの一例の模式断面図である。
本発明の電磁波吸収用粘着シート(以下、単に「粘着シート」とも略称する)は、かかる図1の例の粘着シート100に示されるように、分割導電膜1、電磁波吸収シート2及び電磁波反射シート3がこの順に積層された電磁波吸収用積層構造部10を有し、分割導電膜1の電磁波吸収シート2の側とは反対側の片面1Aに保護層4を設け、電磁波反射シート3の電磁波吸収シート2の側とは反対側の片面3Aに気泡含有粘着剤層5を形成したものである。
【0010】
保護層4の表面を電磁波の入射面とするものであり、気泡含有粘着剤層5の粘着面(露出面)5Aを、被着対象物7の表面に圧接することで、被着対象物7の表面が曲面や凹凸面であっても、気泡含有粘着剤層5がその表面形状に追従して密着して、強固かつ安定な接着状態にて被着対象物7に装着される。
【0011】
[電磁波吸収用積層構造部]
本発明の粘着シートにおける電磁波吸収用積層構造部10は、図1に示されるように、好ましくは、電磁波吸収シート2の一方の片面に粘着剤層6を介して分割導電膜1を貼り合せ、電磁波吸収シート2の他方の片面に粘着剤層6を介して電磁波反射シート3を貼り合せて構成される。かかる構成を採ることで、耐候性、被着体への接着性等の点でより有利なものとなる。
【0012】
(分割導電膜)
本発明で使用される分割導電膜(DCF=Divided Conductive Film)1とは、複数のアイランド状の導電膜部が互いに間隙を隔てて(絶縁されて)配列されたものであり、導電膜部には、種々の導電性材料を適用できる。好適には、白金、金、銀、ニッケル、クロム、アルミニウム、銅、亜鉛、タングステン、鉄などの金属が挙げられ、好ましくは銅である。
【0013】
分割導電膜1の形成方法としては、(1)基材に金属箔をラミネートしたり、真空蒸着、スパッタ法にて金属膜等の導電膜を形成した後、フォトリソ法にて導電膜を所望のパターンにパターニングして、複数のアイランド状の導電膜部を形成する方法、(2)基材の上に金属ペーストを印刷して、複数のアイランド状の導電膜部を形成する方法、(3)基材に所望のパターンに裁断した金属片を貼り付ける方法等が挙げられる。アイランド状の導電膜部の形状(平面形状)は、円形、方形、多角形、リング状、不定形などの任意の形状を選択できる。また、複数のアイランド状の導電膜部の配列は、複数のアイランド状の導電膜部の一部又は全体が、市松模様、マトリクス状、ストライプ状、水玉状などの幾何学的模様を形成する配列であっても良い。なお、上述のとおり、分割導電膜は基材上に複数の導電膜部が形成されたものであり、基材にはポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリイミド(PI)フィルム等のプラスチックフィルムが使用される。かかる基材の厚みは25〜125μm程度が好ましく、50〜100μm程度がより好ましい。これは、基材の厚みが125μmを超えると、良好なフレキシブル性が得られなくなるおそれがあり、また、コスト的にも好ましくない。一方厚みが25μm未満では、分割導電膜1の作製時及び分割導電膜1を用いて電磁波吸収用積層構造部10を作製する場合のハンドリングが低下する傾向となる。
【0014】
分割導電膜1における導電膜部の形状(平面形状)、導電膜部の厚み、隣接する導電膜部の間隙の寸法(離間距離)、導電膜部の配列形態等は、電磁波吸収性能等を考慮して決定される。具体的には、例えば、ETCでの通信不具合の防止用として使用する場合、ETCの通信周波数は5.8GHzであるので、5.8GHzの電磁波を効率よく吸収するために、一例としては、導電膜部の平面形状:一辺が4.5mm正方形、導電膜部の厚み:35μm、隣接する導電膜部の間隙の寸法(離間距離):1.7mm、導電膜部の配列形態:正方行列状とする形態が挙げられる。
【0015】
(電磁波吸収シート)
本発明で使用される電磁波吸収シート2は、樹脂及び/又はゴムからなるバインダーに、フェライト、導電性フィラー(例えば、黒鉛、カーボンブラック、金属粉、カーボンナノチューブ等)等の電磁波損失材料(以下、単に「損失材料」ともいう)を分散せしめたポリマー組成物からなるシートである。損失材料は、比重、コスト、成形性等の点から、黒鉛が好ましい。
【0016】
樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。また、ゴムとしては、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ビニリデンフルオライド系ゴム(FKM)、ビニルメチルシリコーンゴム(VMQ)等が挙げられる。樹脂及び/又はゴムは、1種を単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。樹脂の中でも、成型加工性、耐候性、コスト面等の点で、ポリオレフィン系樹脂(特にポリエチレン(PE))、アクリル系樹脂が好ましく、より好ましくは、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)である。また、ゴムは、中でも、特に耐候性に優れる点で、エチレンプロピレンゴム(EPDM)が好適に使用される。
【0017】
バインダーと損失材料の混合比は、バインダー100重量部に対して損失材料が20〜200重量部が好ましく、50〜120重量部がより好ましい。損失材料の量がかかる好適範囲より多くなったり、少なくなったりすると、電磁波吸収性能が低下するおそれがある。
【0018】
電磁波吸収シート2の厚みは分割導電膜1及び電磁波反射シート3を含む電磁波吸収用積層構造部10の全体の特性を考慮して設定され、一般的には、1.5〜5mmの範囲内で設定される。これは厚みが1.5mm未満では充分な電磁波吸収効果が得られにくい傾向になり、逆に厚みが5mmを超えるとフレキシブル性が損なわれる傾向となり、また、粘着シートの重量も重くなってしまう。
【0019】
当該電磁波吸収シートの製造方法は特に限定されず、公知の樹脂及び/又はゴムシートの製法にて製造することができる。バインダーが樹脂の場合、(1)ビーズミル等の適当な分散機にて樹脂と損失材料を有機溶媒に溶解乃至分散させて、塗工液を調製し、離型処理を施した基材上に塗工し、乾燥してシートを得る方法、(2)樹脂と損失材料をブラベンダー、ニーダー、バンバリーミキサー、二軸あるいは一軸押出機等によって混練し、得られた混練物を、押出シート成形、Tダイシート成形、カレンダー成形、ロール成形、プレス成形、インフレーション成形等によりシートに成形する方法等が好適である。なお、バインダーがゴム、若しくは、ゴムと樹脂と併用の場合は、上記(2)の方法が好適である。
【0020】
当該電磁波吸収シート2には、必要に応じて、分散剤、可塑性、表面調整剤、消泡剤、増粘防止剤、ゲル化防止剤、架橋剤、充填剤、潤滑剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤等の添加剤を添加することもできる。
【0021】
(電磁波反射シート)
本発明で使用される電磁波反射シート3は、電磁波を反射し、かつ、自体が電磁波を透過しない電磁波シールド性に優れる必要があり、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル等の金属箔が使用される。中でも、柔軟性、軽量性等の観点からアルミニウム箔が好ましい。また、金属箔は平板であっても、パンチスルーメタル、エキスパンドメタル、メッシュであってもよい。パンチスルーメタル、エキスパンドメタル、メッシュにして多数の貫孔を有する場合、貫孔の大きさは、電磁波の波長をλとすると、λ/20程度とすることが重要である。こうすることで、電磁波が貫通孔を透過することが防止される。
【0022】
当該電磁波反射シート3の厚みは、反射性能、強度等の観点から0.025mm以上であることが好ましく、0.1mm以上であることがより好ましい。また、厚みが大き過ぎると、重くなり、屈曲性も低下する傾向となるため、厚みは0.5mm以下が好ましく、0.3mm以下がより好ましい。
【0023】
(粘着剤層)
分割導電膜1と電磁波吸収シート2の貼り合せ、及び、電磁波吸収シート2と電磁波反射シート3の貼り合せに使用される粘着剤層6には、種々の感圧性粘着剤を用いることができる。例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、エポキシ系粘着剤などが挙げられる。中でも、強接着性の観点から、アクリル系粘着剤及び/又はゴム系粘着剤が好ましく、より好ましくはアクリル系粘着剤である。
【0024】
また、当該粘着剤層6のゲル分率は70〜90%(重量%)が好ましく、75〜90%がより好ましく、特に好ましくは80〜90%である。ゲル分率が70%より低くなると、良好な耐候性、耐久性等が得られにくい傾向となり、90%より高いと良好な接着性が得られにくい傾向となる。
【0025】
上記ゴム系粘着剤としては、天然ゴム、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SISブロック共重合体)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBSブロック共重合体)、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBSブロック共重合体)、スチレン−ブタジエンゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ブチルゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンターポリマー等のゴム成分をベースポリマーとするゴム系粘着剤などが挙げられる。
【0026】
上記アクリル系粘着剤としては、アクリル系ポリマーをベースポリマー(主成分)として含有する粘着剤が挙げられ、当該アクリル系ポリマーは炭素数2〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを主たるモノマー成分とするアクリル系ポリマーが好ましい。
【0027】
炭素数2〜18個のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。該アルキル(メタ)アクリレートは1種または2種以上が用いられる。
【0028】
当該アクリル系ポリマーは、モノマー成分として、前記炭素数2〜18個のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとともに、共重合性モノマーが用いられていてもよい。かかる共重合性のモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物モノマー;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スルホプロピルアクリレート等のスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等の燐酸基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等のN−置換(メタ)アクリルアミド等のアミド系モノマー;N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミド等のスクシンイミド系モノマー;酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルボン酸アミド類、スチレン、N−ビニルカプロラクタム等のビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノアクリレート系モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、2−メトキシエチルアクリレート等のアクリル酸エステル系モノマー;メチル(メタ)アクリレートやオクタデシル(メタ)アクリレート等の上記主成分をなすアルキル(メタ)アクリレートとは異なるアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環族アクリレートなどが挙げられる。中でも、ヒドロキシル基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマーが好ましく、特に好ましくはアクリル酸である。共重合性のモノマーは1種または2種以上を用いることができる。
【0029】
炭素数2〜18個のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートと共重合性モノマーとの成分比(炭素数2〜18個のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート:共重合性モノマー)は60〜99.9重量%:0.1〜40重量%が好ましく、70〜99.5重量%:0.5〜30重量%がより好ましく、80〜99重量%:1〜20重量%がさらに好ましく、90〜99重量%:1〜10重量%が特に好ましい。
【0030】
アクリル系粘着剤は、上述の炭素数2〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを主成分とする単量体混合物(すなわち、炭素数2〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートか、或いは、炭素数2〜18個のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートと共重合性モノマーの混合物)、又は、その部分重合物に、多官能(メタ)アクリレート及び重合開始剤をさら配合した重合性組成物を重合せしめた重合物であることが特に好ましい。
【0031】
重合開始剤としては、各種重合開始剤(例えば、熱重合開始剤や光重合開始剤など)を制限なく用いることができ、特に重合時間を短くすることができる点で、光重合開始剤を好適に用いることができる。
【0032】
光重合開始剤としては、特に制限されず、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤などを用いることができる。
【0033】
具体的には、ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、アニソールメチルエーテルなどが挙げられる。アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。α−ケトール系光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンなどが挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば、2−ナフタレンスルホニルクロライドなどが挙げられる。光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシムなどが挙げられる。ベンゾイン系光重合開始剤には、例えば、ベンゾインなどが含まれる。ベンジル系光重合開始剤には、例えば、ベンジルなどが含まれる。ベンゾフェノン系光重合開始剤には、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが含まれる。ケタール系光重合開始剤には、例えば、ベンジルジメチルケタールなどが含まれる。チオキサントン系光重合開始剤には、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントンなどが含まれる。
【0034】
熱重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリアン酸、アゾビスイソバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライドなどのアゾ系熱重合開始剤;ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルマレエートなどの過酸化物系熱重合開始剤;レドックス系熱重合開始剤などが挙げられる。熱重合開始剤の使用量としては、特に制限されず、従来、熱重合開始剤として利用可能な範囲であればよい。
【0035】
光重合開始剤の使用量は、炭素数2〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを主成分とする単量体混合物又はその部分重合物100重量部に対して、0.01〜5重量部(好ましくは、0.05〜3重量部)の割合で用いられる。
【0036】
光重合開始剤の活性化に際しては、活性エネルギー光線を熱発泡剤含有粘着剤組成物に照射にする。このような活性エネルギー光線としては、例えば、α線、β線、γ線、中性子線、電子線などの電離性放射線や、紫外線などが挙げられ、特に、紫外線が好適である。また、活性エネルギー光線の照射エネルギーや、その照射時間などは特に制限されず、光重合開始剤を活性化させて、モノマー成分の反応を生じさせることができればよい。
【0037】
多官能(メタ)アクリレートとしては、少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であれば、特に制限なく用いることができる。このような多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、1,2−エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、末端に(メタ)アクリロイル基を複数個有する反応性ハイパーブランチポリマー[例えば、商品名「CN2300」「CN2301」「CN2320」(SARTOMER社製)など]などが挙げられる。なお、多官能(メタ)アクリレートは、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
多官能(メタ)アクリレートの使用量は、得られる重合体のゲル分率が上述の好適範囲となるように配合される。例えば、その具体的な使用量は、その分子量や官能基数などにより異なるが、炭素数2〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを主成分とする単量体混合物又はその部分重合物100重量部に対して、0.001〜5重量部が好ましく、より好ましくは0.001〜3重量部、特に好ましくは0.01〜2重量部である。5重量部を超えると、粘着剤層の凝集力が高くなりすぎ、感圧接着力が低下する傾向となり、一方、使用量が少なすぎると(例えば、0.001重量部未満であると)、粘着剤層の凝集力が低くなり、耐候性が低下する傾向となる。
【0039】
粘着剤層6には粘着剤とともに各種添加剤が配合されていてもよい。このような添加剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤などの架橋剤;ロジン誘導体樹脂、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノール樹脂などの粘着付与剤;可塑剤;充填剤;老化防止剤;界面活性剤などが挙げられる。
【0040】
粘着剤層6の形成方法は、特に制限されないが、例えば、剥離フィルムや基材等の適当な支持体上に、粘着剤組成物を塗布し、粘着剤組成物層を形成させ、該層を、必要に応じて乾燥や硬化(熱や活性エネルギー光線による硬化)させることにより形成される。また、活性エネルギー光線による硬化(光硬化)を行う際には、光重合反応は空気中の酸素に阻害されるため、該層上に剥離フィルムや基材等の適当な支持体を貼り合せたり、また窒素雰囲気下で光硬化を行うこと等により、酸素を遮断することが好ましい。
【0041】
このようにして形成された粘着剤層6はその一方の片面のみに剥離フィルムや基材を有する場合は、他方の片面を分割導電膜1、電磁波吸収シート2又は電磁波反射シート3に貼り付けた後、一方の片面の剥離フィルムや基材を剥離して使用される。粘着剤層6がその両面に剥離フィルムや基材を有する場合は、一方の剥離フィルムや基材を剥離して露出した粘着面を分割導電膜1、電磁波吸収シート2、電磁波反射シート3に貼り付けた後、他方の剥離フィルムや基材を剥離して使用される。
【0042】
当該粘着剤層6の厚みは、外観特性やコスト、さらには接着性の点から25〜200μmが好ましく、50〜100μmがより好ましい。25μm未満では、接着性が低下する傾向となり、200μmを超えると、コストパフォーマンスが低下し、且つ、外観特性不良を起こす傾向となる。
【0043】
なお、粘着剤層6は、分割導電膜1と電磁波吸収シート2の貼り合せに使用するもの(分割導電膜1と電磁波吸収シート2の間に介在する粘着剤層)と、電磁波吸収シート2と電磁波反射シート3の貼り合せに使用するもの(電磁波吸収シート2と電磁波反射シート3の間に介在する粘着剤層)とは、基本的には同じ厚みでよいが、上記の範囲内で異なる厚みにしてもよい。
【0044】
[保護層]
本発明で使用される保護層4は、高耐久性のフィルムが使用される。
高耐久性のフィルムとしては、屋外で長期間の使用に耐えることができるフィルムとして、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンランダムポリマーなどのポリオレフィン系熱可塑性樹脂からなるフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等のポリエステル系フィルム、ウレタン系ポリマーからなるフィルム、アクリル系ポリマーとウレタンポリマーとを含む複合フィルム、フッ素系フィルム等が挙げられる。これらのフィルムはいずれか1種を単独で使用しても、2種以上を積層して積層フィルムの形態で使用してもよい。中でも、耐候性の点からフッ素系フィルムが好ましい。
【0045】
(ポリオレフィン系熱可塑性樹脂フィルム)
ポリオレフィン系熱可塑性樹脂フィルムには、炭素原子数4〜12のα−オレフィンを含む重合体を主成分とするものや、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体等のフィルムが挙げられる。
【0046】
具体的には、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテンなどのオレフィン重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・1− オクテン共重合体、エチレン・プロピレン・ブテン共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のフィルムが挙げられる。
【0047】
(ポリエステル系フィルム)
ポリエステル系フィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルムなどが挙げられる。
【0048】
(ウレタン系ポリマーフィルム)
ウレタン系ポリマーからなるフィルムとしては、ジイソシアネートとジオールまたはジアミン類を反応させて得られる、主鎖にウレタン結合を有する各種ウレタン系ポリマーからなるフィルムが挙げられる。
【0049】
(フッ素系フィルム)
フッ素系フィルムとしては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニールエーテルの共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)、ポリビニルフルオライド(PVF)等のフィルムが挙げられる。
【0050】
(複合フィルム)
アクリル系ポリマーとウレタンポリマーとからなる複合フィルムは、高強度および高破断伸びを両立しつつ、曲面における柔軟性および耐水性を有する複合フィルムである。
【0051】
<複合フィルム用アクリル系ポリマー>
複合フィルムに含まれるアクリル系ポリマーは、モノマー成分として、(メタ)アクリル酸系モノマーと、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が0℃以上の単官能(メタ)アクリル系モノマーとを少なくとも含むアクリル系コポリマー(以下、「アクリル成分」ともいう)を用いてなる。なお、アクリル成分は、モノマー成分として、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が0℃未満の単官能(メタ)アクリル系モノマーをさらに含む態様が好ましい。
【0052】
複合フィルムにおいて、(メタ)アクリル酸系モノマーとは、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーであり、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられる。これらの中では特にアクリル酸が好ましい。この(メタ)アクリル酸系モノマーの含有量は、アクリル成分中、1重量%以上、15重量%以下であり、2重量%以上、10重量%以下であることが好ましい。(メタ)アクリル酸系モノマーの含有量が1重量%未満では、反応に長時間を要し、フィルム化することが非常に困難であり、また、フィルムの強度が十分でない問題が生じる場合がある。(メタ)アクリル酸系モノマーの含有量が15重量%を超える場合には、フィルムの吸水率が大きくなり、耐水性に問題が生じる場合がある。(メタ)アクリル酸系モノマーはウレタン成分、アクリル成分との相溶性に大きく影響するものであり、極めて重要な機能を有する必須構成要素である。
【0053】
複合フィルムにおいて、Tgが0℃以上の単官能(メタ)アクリル系モノマーとしては、アクリロイルモルホリン、イソボルニルアクリレート及びジシクロペンタニルアクリレートからなる群のうち少なくとも1つを用いることが好ましく、アクリロイルモルホリン及び/又はイソボルニルアクリレート、或いは、アクリロイルモルホリン及び/又はジシクロペンタニルアクリレートがより好ましく、イソボルニルアクリレートが特に好ましい。
【0054】
Tgが0℃以上の単官能(メタ)アクリル系モノマーの含有量は、アクリル成分中、20重量%以上、99重量%以下であることが好ましく、30重量%以上、98重量%以下であることが更に好ましい。かかる単官能(メタ)アクリル系モノマーの含有量が20重量%未満では、フィルムの強度が十分でないという問題が生じることがあり、99重量%を超えると、フィルムの剛性が上がりすぎて脆くなる場合がある。
【0055】
複合フィルムにおいて、Tgが0℃未満の単官能(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソブチル、2−メトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を併用することができる。
【0056】
複合フィルムにおいて、Tgが0℃未満の単官能(メタ)アクリル系モノマーとして、アクリル酸n−ブチルを用いることが特に好ましい。Tgが0℃未満の単官能(メタ)アクリル系モノマーは含有されていなくてもよい(含有量が0重量%)が、含有されている場合の含有量は、アクリル成分中、0重量%より多く、50重量%以下であることが好ましく、0重量%より多く、45重量%以下であることが更に好ましい。この単官能(メタ)アクリル系モノマーの含有量が50重量%を超える場合には、フィルムの強度が十分でない問題が生じることがある。
【0057】
(メタ)アクリル系モノマーは、ウレタンとの相溶性、放射線等の光硬化時の重合性や、得られる高分子量体の特性を考慮して、種類、組合せ、使用量等が適宜決定される。
【0058】
複合フィルムにおいて、上記(メタ)アクリル系モノマーとともに、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸のモノ又はジエステル及びその誘導体、N−メチロールアクリルアミド、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、イミドアクリレート、N−ビニルピロリドン、オリゴエステルアクリレート、ε−カプロラクトンアクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロドデカトリエンアクリレート、メトキシエチルアクリレート等のモノマーを共重合してもよい。なお、これら共重合されるモノマーの種類や使用量は、複合フィルムの特性等を考慮して適宜決定される。
【0059】
また、特性を損なわない範囲内で他の多官能モノマーを添加することもできる。多官能モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート等を挙げることができる。特に好ましくは、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートである。
【0060】
多官能モノマーはアクリル系モノマー100重量部に対して、1重量部以上、20重量部以下の範囲で含有させることができる。多官能モノマーの含有量が1重量部以上であれば、複合フィルムの凝集力は十分であり、20重量部以下であれば、弾性率が高くなりすぎることがなく、被着体表面の凹凸に追従することができる。
【0061】
<複合フィルム用ウレタンポリマー>
複合フィルムに使用するウレタンポリマー(以下、「ウレタン成分」ともいう)は、ジオールとジイソシアネートとを反応させて得られる。ジオールの水酸基とイソシアネートとの反応には、一般的には触媒が用いられるが、ジブチルチンジラウレート、オクトエ酸錫のような環境負荷が生じる触媒を用いなくても反応を促進させることができる。
【0062】
低分子量のジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、へキサメチレングリコール等の2価のアルコールが挙げられる。
【0063】
また、高分子量のジオールとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等を付加重合して得られるポリエーテルポリオール、あるいは上述の2価のアルコール、1,4−ブタンジオール、1,6−へキサンジオール等のアルコールとアジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の2価の塩基酸との重縮合物からなるポリエステルポリオールや、アクリルポリオール、カーボネートポリオール、エポキシポリオール、カプロラクトンポリオール等が挙げられる。これらの中では、例えば、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリアルキレンカーボネートジオール(PCD)等が好ましく使用される。
【0064】
アクリルポリオールとしては水酸基を有するモノマーの共重合体の他、水酸基含有物とアクリル系モノマーとの共重合体等が挙げられる。エポキシポリオールとしてはアミン変性エポキシ樹脂等がある。
【0065】
複合フィルムにおいては、上記ジオールを、アクリル系モノマーへの溶解性、イソシアネートとの反応性等を考慮して、単独あるいは併用して使用することができる。強度を必要とする場合には、低分子量ジオールによるウレタンハードセグメント量を増加させると効果的である。伸びを重視する場合には、分子量の大きなジオールを単独で使用することが好ましい。また、ポリエーテルポリオールは、一般的に、安価で耐水性が良好であり、ポリエステルポリオールは、強度が高い。本発明においては、用途や目的に応じて、ポリオールの種類や量を自由に選択することができ、また、塗布する基材等の特性、イソシアネートとの反応性、アクリルとの相溶性などの観点からもポリオールの種類、分子量や使用量を適宜選択することができる。
【0066】
≪ウレタンポリマー用のジイソシアネート≫
ジイソシアネートとしては芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネート、これらのジイソシアネートの二量体、三量体等が挙げられる。芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ナフチレンジイソシアネート(NDI)、フエニレンジイソシアネート(PPDI)、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、メチルシクロへキサンジイソシアネート(水素化TDI)、ジシクロへキシルメタンジイソシアネート(水素化MDI)、シクロへキサンジイソシアネート(水素化PPDI)、ビス(イソシアナートメチル)シクロへキサン(水素化XDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、へキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ブタンジイソシアネート、2,4−トリメチルへキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルへキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。また、これらの二量体、三量体や、ポリフェニルメタンジイソシアネートが用いられる。三量体としては、イソシアヌレート型、ビューレット型、アロファネート型等が挙げられ、適宜、使用することができる。
【0067】
これらの中では、特に、メチルシクロへキサンジイソシアネート(水素化TDI)、ジシクロへキシルメタンジイソシアネート(水素化MDI) 、シクロへキサンジイソシアネート(水素化PPDI)、ビス(イソシアナートメチル)シクロへキサン(水素化XDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、へキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ブタンジイソシアネート、2,4−トリメチルへキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルへキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族、脂環族系のジイソシアネートが好ましく使用される。ベンゼン環を含む芳香族系のジイソシアネートを使用すると、光反応によって共役構造を有する着色物質が生成しやすいため好ましくないからであり、本発明においては、ベンゼン環を含まない、難黄変型、無黄変型の脂肪族、脂環族系のジイソシアネートが好適に使用される。
【0068】
これらのジイソシアネート類は単独あるいは併用で使用することができる。複合フィルムが適用される(塗布等される)支持体等の特性、アクリル系モノマーへの溶解性、水酸基との反応性などの観点から、ジイソシアネートの種類、組合せ等を適宜選択すればよい。
【0069】
また、ウレタンポリマーは、へキサメチレンジイソシアネート(HDI)、水添トリレンジイソシアネート(HTDI)、水添4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、および、水添キシレンジイソシアネート(HXDI)からなる群から選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネートを用いて形成されることが好ましく、水添キシレンジイソシアネートが特に好ましい。
【0070】
また、ウレタンポリマーを形成するためのジオール成分とジイソシアネート成分の使用量は、[NCO]/[OH](当量比)が1.1以上、2.0以下であることが好ましく、1.12以上、1.60以下であることがさらに好ましく、1.15以上、1.40以下であることが特に好ましい。[NCO]/[OH](当量比)が1.1未満では、ウレタンポリマーの分子量が大きくなりすぎて、複合フィルム前駆体(シロップ溶液)の粘度が大きくなり、後続のシート化工程で作業が困難になることがある。また、[NCO]/[OH](当量比)が2.0を超えると、ウレタンポリマーの分子量が小さくなり、破断強度が低下しやすくなる。
【0071】
<複合フィルム中のアクリル成分/ウレタン成分比率>
複合フィルムを形成するアクリル成分とウレタン成分との比率は、重量比で、アクリル成分/ウレタン成分が0.25以上、4.00以下であり、好ましくは0.429以上、2.333以下であり、特に好ましくは0.538以上、1.857以下である。アクリル成分/ウレタン成分が0.25未満では、シロップ溶液の粘度が大きくなり、後続のシート化工程で作業が困難になることがある。また、アクリル成分/ウレタン成分が4.00を超えると、複合フィルム中のウレタンポリマー量が25%未満となり、引張の破断強度が低下し、実用に耐えないことがある。
【0072】
上記ウレタンポリマーに対し、水酸基含有アクリルモノマーを添加してもよい。水酸基含有アクリルモノマーを添加することにより、ウレタンプレポリマーの分子末端に(メタ)アクリロイル基を導入することができ、(メタ)アクリル系モノマーとの共重合性が付与され、ウレタン成分とアクリル成分との相溶性が高まり、破断強度などのS−S(応力−歪)特性の向上を図ることもできる。ここで使用される水酸基含有アクリルモノマーとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシへキシル(メタ)アクリレート等が用いられる。水酸基含有アクリルモノマーの使用量は、ウレタンポリマー100重量部に対して0.1〜10重量部であることが好ましく、更に好ましくは、1〜5重量部である。
【0073】
(フィルムの安定化剤)
耐候性の観点から、フィルム(複合フィルムを含む)に耐候安定剤を用いた処理を適宜行うことができる。なお、耐候安定剤を用いた処理とは、(i)耐候安定剤をフィルムの表面に塗布、転写等によってフィルムに担持させる処理、(ii)耐候安定剤をフィルムへ練り込む処理、或いは、(iii)これら(i)、(ii)の併用によって行うことができる。
【0074】
上記耐候安定剤としては、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤等が挙げられ、1種又は2種以上を使用することができる。
【0075】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤など公知の紫外線吸収剤を適宜使用することができる。紫外線吸収剤は1種又は2種以上を使用することができる。
【0076】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤として、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2H−ペンゾトリアゾール、ペンゼンプロパン酸と3−(2H−ペンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ(C〜Cの側鎖および直鎖アルキル)とのエステル化合物、オクチル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートと2−エチルへキシル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H −ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートとの混合物、2−(2H−ペンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノ−ル、2−(2H−ペンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、メチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物、2−(2H −ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−[5 −クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール、2−(2H −ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ペンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]、メチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコール300との反応生成物、2−(2H −ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ドデシル−4−メチルフェノール、2−[2−ヒドロキシ−3 −(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド−メチル)−5 −メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[6−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール]等が挙げられる。
【0077】
また、ヒドロキシフェニルトリアジン型紫外線吸収剤としては、例えば、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヒドロキシフェニルと[(C10〜C16、主としてC12〜C13のアルキルオキシ)メチル]オキシランとの反応生成物、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンと(2−エチルへキシル)−グリシド酸エステルとの反応生成物、2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(へキシル)オキシ]−フェノール、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0078】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0079】
ベンゾエート系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。
【0080】
商業的に入手可能なベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールとしてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN PS」、ベンゼンプロパン酸と3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ( C〜Cの側鎖および直鎖アルキル)とのエステル化合物としてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN 384−2」、オクチル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートと2−エチルへキシル−3−[3 −tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートとの混合物としてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN 109」、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノールとしてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN 900」、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールとしてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN 928」、メチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物としてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN 1130」、2−(2H −ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾールとしてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN P」、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノールとしてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN 326」、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノールとしてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN 328」、2−(2H −ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールとしてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN 329」、2、2’−メチレンビス[6−(2H −ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]としてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN 360」、メチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコール300との反応生成物としてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN 213」、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ドデシル−4−メチルフェノールとしてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN 571」、2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド−メチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾールとして住友化学社製の「Sumisorb250」、2,2’−メチレンビス[6−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール]としてADEKA社製の「ADKSTAB LA31」等が挙げられる。
【0081】
また、商業的に入手可能なヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5 −ヒドロキシフェニルと[(C10〜C16 、主としてC12〜C13 のアルキルオキシ)メチル]オキシランとの反応生成物としてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN 400」、2−(2, 4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンと(2−エチルへキシル)−グリシド酸エステルとの反応生成物としてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN 405」、2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジンとしてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN 460 」、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(へキシル)オキシ]−フェノールとしてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN 1577」、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジンとしてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN 479」等が挙げられる。
【0082】
商業的に入手可能なベンゾフェノン系紫外線吸収剤として、例えば、チバ・ジャパン社製の「CHIMASSORB 81」等が挙げられる。また、ベンゾエート系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートとしてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN 120」等が挙げられる。
【0083】
紫外線吸収剤の使用量は、フィルム100重量%に対して、0.1重量%以上、4.0重量%以下であることが好ましく0.5重量%以上、2.0重量%以下であることが更に好ましい。0.1重量%以上であれば、劣化や着色を引き起こす紫外光の吸収が十分であり、4.0重量%以下であれば、紫外線吸収剤自体による着色を引き起こすことがない。
【0084】
(光安定剤)
光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤、ベンゾエート系光安定剤などを挙げることができる。中でも、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)が好ましい。光安定剤は1種又は2種以上を使用することができる。
【0085】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、下記式(I)で示されるものが好ましい。
【0086】
【化1】

【0087】
(式中、R11はアルキレン基、アルキル基、エーテル基であり、R12 、R13、R14、R15、R16 、R17 は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい、アルキル基、アルコキシ基である。)
【0088】
商業的に入手可能なヒンダードアミン光安定剤としては、例えば、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物である光安定剤として、「TINUVIN 622」(チバ・ジャパン社製)、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物とN,N’,N’’,N’’’−テトラキス−(4 , 6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミンとの1対1の反応生成物である光安定剤として「TINUVIN 119」(チバ・ジャパン社製)、ジブチルアミン・1,3−トリアジン・N, N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−へキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物である光安定剤として「TINUVIN 2020」(チバ・ジャパン社製)、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}へキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]である光安定剤として、「TINUVIN 944」(チバ・ジャパン社製)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートとメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケートとの混合物である光安定剤として「TINUVIN 765」(チバ・ジャパン社製)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートである光安定剤として「TINUVIN 770」(チバ・ジャパン社製)、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1 −(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル(1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシド)とオクタンとの反応生成物である光安定剤として「TINUVIN 123 」(チバ・ジャパン社製)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネートである光安定剤として「TINUVIN 144」(チバ・ジャパン社製)、シクロへキサンと過酸化N−ブチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジンアミン−2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの反応生成物と2−アミノエタノールとの反応生成物である光安定剤として「TINUVIN 152」(チバ・ジャパン社製)、ビス(1,2,2,6, 6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートとメチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケートとの混合物である光安定剤として「TINUVIN 292」(チバ・ジャパン社製)等が挙げられる。
【0089】
光安定剤の使用量は、フィルム100重量%に対して、0.1重量%以上、4.0重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以上、2.0重量%以下であることが更に好ましい。光安定剤の使用量が0.1重量%以上であれば、劣化防止機能が十分発現し、4.0重量%以下であれば、光安定剤自体による着色を引き起こすことがない。
【0090】
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系加工熱安定剤、ラクトン系加工熱安定剤、イオウ系耐熱安定剤など公知の酸化防止剤を使用することができる。酸化防止剤は1種又は2種以上を使用することができる。
【0091】
酸化防止剤の使用量は、フィルム100重量%に対して、3重量%以下が好ましく、より好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.01〜0.5重量%である。
【0092】
また、本発明の効果を損なわない充填剤、顔料、着色剤、難燃剤、帯電防止剤などを本発明の効果を阻害しない範囲内で添加することができる。これらの添加剤は、その種類に応じて通常の量で用いられる。
【0093】
本発明において、保護層を構成するフィルムには、汚染防止効果を有する表面処理を施すことができる。例えば、フィルムの表面にフルオロエチレンビニルエーテル共重合体からなるコート層(表面処理層)を形成する。フルオロエチレンビニルエーテル共重合体は、フルオロエチレン単位とビニルエーテル単位とを交互に有する下記式(II)で示されるものが好ましい。
【0094】
【化2】

【0095】
式(II)中、Xはフッ素原子、塩素原子または臭素原子を表し、Rは水素原子またはC〜C10のアルキル基を表し、RはC〜C16のアルキル基を表し、RはC〜C16のアルキレン基を表す。なお、mおよびnはそれぞれ整数である。
【0096】
フルオロエチレンビニルエーテル交互共重合体の重量平均分子量は、1,000〜2,000,000で、好ましくは、5,000〜1,000,000で、さらに好ましくは、10,000〜500,000である。本発明において、上記式(II)中のmおよびnは、フルオロエチレンビニルエーテル交互共重合体の重量平均分子量が1,000〜2,000,000となる範囲で選択される。
【0097】
フルオロエチレンビニルエーテル交互共重合体の重量平均分子量は、GPC法により測定することができる。すなわち、フルオロエチレンビニルエーテル交互共重合体を、THF溶液を用いて2.0g/Lとなるように調整した後、12時間静置する。その後、この溶液を0.45μmメンブレンフィルターで濾過し、分析装置として東ソー(株)製の「HLC−8120GPC」を用い、下記測定条件下で、ろ液についてGPC 測定を行う。
測定条件:
カラム TSKgel GMH−H(S)×2
カラムサイズ 7.8mmI.D.×300mm
溶離液 THF
流量 0.5mL/min
検出器 RI
カラム温度 40℃
注入量 100μL
【0098】
なお、コート層の厚みは、2〜50μmであることが好ましく、より好ましくは5〜40μmであり、更に好ましくは8〜30μmである。コート層の厚みが2μm未満では、ピンホールなど、コート層が形成されない欠陥部位が発生しやすく、またコート層の特性が充分に発揮できない場合がある。また50μmを超えると、コート層の物性が複合フィルムの物性を低下させてしまう場合がある。
【0099】
(複合フィルムとコート層の架橋)
コート層はフィルムと架橋されていて架橋点を有する態様とするのが好ましい。架橋点を有する構造は、例えば、コート層を構成する成分と複合フィルムを構成する成分とが結合して架橋点を形成することにより得られる。例えば、コート層の形成に使用したイソシアネートに残存イソシアネート基が存在していれば、この残存イソシアネート基が、複合フィルムのウレタンポリマー・アクリル系モノマー混合物の水酸基と反応して架橋点を形成することができる。あるいは、コート層の形成に使用されるフルオロエチレンビニルエーテル交互共重合体の水酸基が残存しているならば、複合フィルム用塗布液に存在しているイソシアネート基と反応して架橋点を形成することができる。したがって、複合フィルム用塗布液を塗布した時に、コート層には残存イソシアネート基あるいは残存水酸基が反応しうる状態で存在していることが必要である。また、コート層の架橋反応が完全に完了する前に複合フィルム用塗布液を塗布することが好ましい。
【0100】
このようにコート層と複合フィルムとが架橋構造を形成していれば、コート層と複合フィルム間に優れた接着性が発現し、コート層は複合フィルムに対して優れた接着性を長期間保持し続けることができる。したがって、保護フィルムの位置決めのためにアプリケーションシートが貼付されたとしても、アプリケーションシートの剥離の際にコート層が剥がれたりすることがない。
【0101】
コート層と複合フィルムとが架橋構造を形成するためには、コート層はフルオロエチレンビニルエーテル交互共重合体を用いて成ることが必要であり、かつ、複合フィルムとしてアクリル系ポリマーとウレタンポリマーとを含有することが必要である。
【0102】
架橋構造の形成方法は特に限定されないが、例えば、コート層を塗布、乾燥、硬化させた後、コート層表面が半硬化状態で複合フィルム用塗布液を塗布して架橋点を形成する。また、コート層表面が完全に硬化した状態でも残存イソシアネート基が反応しうる状態であれば、この上に複合フィルム用塗布液を塗布して架橋点を形成することができる。従って、架橋点が形成されるようにコート層および複合フィルムの形成に使用される成分の種類や使用量等を調整すればよい。例えば、残存イソシアネート基が反応しうる状態であれば、24時間以内に複合フィルム用塗布液を塗布して光硬化反応させることにより架橋構造を形成することができる。また、残存イソシアネート基が反応しうる状態であって、5℃程度で保存されていれば、5日間以内に複合フィルム用塗布液を塗布して光硬化反応させることにより架橋構造を形成することができる。なお、イソシアネート架橋剤に、予め水酸基含有モノマーを反応させておけば、50℃で1週間以上保存した後でも残存イソシアネート基が反応しうる状態にすることができる。
【0103】
(コート層の製造)
フルオロエチレンビニルエーテル交互重合体を溶媒に溶解させ、これに多官能イソシアネートを添加してコート層用塗布液を形成し、この溶液を用いてコート層を形成する。例えば、剥離処理されたポリエチレンフィルム上にこの溶液を塗布し、乾燥させてコート層を形成する。このコート層の上に、ウレタンポリマーおよびアクリル系モノマーを含有する混合物(複合フィルム用塗布液)を塗布し、紫外線等を照射することにより、コート層が複合フィルムに架橋された(複合フィルムがコート層に架橋された)構造の積層体を得ることができる。
【0104】
また、水酸基含有モノマーと多官能イソシアネートとを反応させた後、フルオロエチレンビニルエーテル交互重合体を添加し、この溶液を用いてコート層を形成する。例えば、この溶液を剥離処理されたPETフィルムの上に塗布し、乾燥させてコート層を形成する。このコート層の上に、アクリル系モノマーおよびウレタンポリマーを含有する複合フィルム用塗布液を塗布し、紫外線等を照射して硬化させることにより、コート層が複合フィルムに架橋された(複合フィルムがコート層に架橋された)構造の積層体を得ることができる。
【0105】
上記多官能イソシアネートは、イソシアネート基を分子内に2個以上有するものである多官能イソシアネートとしては、例えば、水添キシリレンジイソシアネート、へキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイシシアネート、エチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、トリメチルへキサメチレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の2官能イソシアネート、デスモジュールN3200(住化バイエルウレタン(株)製)、コロネートL,HL,HX(日本ポリウレタン(株)製)、タケネートD−140N,D−127,D−110N(三井化学ポリウレタン(株)製)等の3官能イソシアネートなどが挙げられる。本発明においては、これらの多官能イソシアネートを単独で、または2種以上併用することができる。
【0106】
水酸基含有モノマーと多官能イソシアネートとを反応させる場合、水酸基含有モノマーの水酸基のモル数[OH]と、多官能イソシアネートのイソシアネート基のモル数[NCO]との比率([OH]/[NCO])は、0.05〜0.5、好ましくは、0.05〜0.4、さらに好ましくは、0.05〜0.3である。
【0107】
上記水酸基含有モノマーは、分子内に水酸基を1個以上有し、また、分子内に(メタ)アクリル基を1個以上有するものである。水酸基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、1,4−シクロへキサンジメタノールモノアクリレート、1,4−シクロへキサンジメタノールモノメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ペンタエリスリトールアクリレートなどが挙げられる。本発明においては、これらの水酸基含有モノマーを単独で、または2種以上を併用することができる。
【0108】
本発明において、保護層4の厚みは、特に限定されないが、好ましくは5〜100μmである。なお、ここでいう「厚み」は、保護層がフィルム単体で構成される場合はフィルムの厚み、フィルム表面に耐候安定剤による表面処理層(コート層)及び/又は汚染防止用の表面処理層(コート層)が形成される場合はフィルムと表面処理層(コート層)の総厚みである。保護層の厚みは100μmを超えると、目的の電磁波吸収用粘着シートの重量増大やコスト高が懸念される傾向となり、5μm未満では、紫外線吸収量が増加し、目的の電磁波吸収用粘着シートの耐久性、耐候性等が低下する傾向となる。
【0109】
保護層4はフィルムを分割導電膜1に粘着剤層を介して貼り付けられる。この粘着剤層に使用する粘着剤は特に限定されず、種々の粘着剤を使用できる。例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤等が挙げられる。また、粘着剤層は層内に不織布などの基材を挿入した形態に形成されてもよい。粘着剤層の厚みは特に限定されないが一般的には5〜300μm程度が好ましい。
【0110】
[気泡含有粘着剤層]
本発明で使用される気泡含有粘着剤層とは、気泡を含有する粘着剤より形成される粘着剤層のことであり、好ましくは気泡及び中空微小球状体を含有する粘着剤により形成される粘着剤層である。気泡含有粘着剤層は曲面や凹凸面に対する追従性を向上させて、曲面や凹凸面に対する接着性能を向上させたものであり、屋外の建造物やコンクリート構造体に対して強固かつ安定な接着状態を形成し得る。
【0111】
上記粘着剤(感圧性接着剤)としては、特に限定されず公知の粘着剤を用いることが可能であり、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、エポキシ系粘着剤などが挙げられる。上記の中でも、強接着性の観点から、アクリル系粘着剤及び/又はゴム系粘着剤が好ましく、より好ましくはアクリル系粘着剤である。
【0112】
上記ゴム系粘着剤としては、天然ゴム、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SISブロック共重合体)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBSブロック共重合体)、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBSブロック共重合体)、スチレン−ブタジエンゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ブチルゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンターポリマー等のゴム成分をベースポリマーとするゴム系粘着剤などが挙げられる。
【0113】
上記アクリル系粘着剤としては、アクリル系ポリマー[特に(メタ)アクリル酸エステルを単量体成分とするアクリル系ポリマー]をベースポリマー(主成分)として含有する粘着剤が挙げられる。該アクリル系ポリマーを構成する主たる単量体成分としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル)を好適に用いることができる。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどの(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルが挙げられる。中でも好ましくは(メタ)アクリル酸C2-14アルキルエステルであり、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸C2-10アルキルエステルである。なお、上記「(メタ)アクリル酸エステル」とは、「アクリル酸エステル」及び/又は「メタクリル酸エステル」を表し、他も同様である。
【0114】
また、上記の(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、フェニル(メタ)アクリレート等の芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。
【0115】
上記(メタ)アクリル酸エステルは単独で、又は2種以上組み合わせて使用することができる。なお、(メタ)アクリル酸エステルはアクリル系ポリマーの単量体主成分として用いられているので、(メタ)アクリル酸エステル[特に(メタ)アクリル酸アルキルエステル]の割合は、例えば、アクリル系ポリマーを調製するためのモノマー成分全量に対して60重量%以上が好ましく、より好ましくは80重量%以上である。
【0116】
上記アクリル系ポリマーでは、モノマー成分として、極性基含有単量体や多官能性単量体などの各種共重合性単量体が用いられてもよい。モノマー成分として共重合性単量体を用いることにより、例えば、被着体への接着力を向上させたり、粘着剤の凝集力を高めたりすることができる。共重合性単量体は単独で、又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0117】
前記極性基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有単量体又はその無水物(無水マレイン酸など);(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルなどの水酸基含有単量体;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有単量体;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどのアミノ基含有単量体;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのグリシジル基含有単量体;アクリロニトリルやメタアクリロニトリルなどのシアノ基含有単量体;N−ビニル−2−ピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリンの他、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール等の複素環含有ビニル系単量体;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;ビニルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基含有単量体;2−ヒドロキシエチルアクリロイルフォスフェートなどのリン酸基含有単量体;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミドなどのイミド基含有単量体;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有単量体などが挙げられる。極性基含有単量体としてはアクリル酸等のカルボキシル基含有単量体又はその無水物が好適である。
【0118】
極性基含有単量体の使用量としては、アクリル系ポリマーを形成するためのモノマー成分全量に対して30重量%以下(例えば1〜30重量%)であり、好ましくは3〜20重量%である。極性基含有単量体の使用量が30重量%を超えると、例えば、アクリル系粘着剤の凝集力が高くなりすぎ、粘着剤層の粘着性が低下するおそれがある。また、極性基含有単量体の使用量が少なすぎると(例えば1重量%未満であると)、これらの単量体の共重合の効果が得られなくなる場合がある。
【0119】
前記多官能性単量体としては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートなどが挙げられる。
【0120】
多官能性単量体の使用量としては、アクリル系ポリマーを形成するためのモノマー成分全量に対して2重量%以下(例えば、0.01〜2重量%)であり、好ましくは0.02〜1重量%である。多官能性単量体の使用量がアクリル系ポリマーを形成するためのモノマー成分全量に対して2重量%を超えると、例えば粘着剤の凝集力が高くなりすぎ、粘着性が低下するおそれがある。また、多官能性単量体の使用量が少なすぎると(例えば0.01重量%未満であると)、これらの単量体の共重合の効果が得られなくなる場合がある。
【0121】
また、極性基含有単量体や多官能性単量体以外の共重合性単量体としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類、スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物、エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレンなどのオレフィン又はジエン類;ビニルアルキルエーテルなどのビニルエーテル類;塩化ビニルなどが挙げられる。
【0122】
上記ベースポリマー(アクリル系粘着剤であればアクリル系ポリマー)の含有量は、特に限定されないが、粘着剤層の総重量に対して、80重量%以上が好ましく、より好ましくは85〜95重量%である。
【0123】
上記粘着剤には、必要に応じて、適宜な添加剤が含まれていてもよい。例えば、ベースポリマーの種類に応じて、架橋剤(例えば、ポリイソシアネート系架橋剤、シリコーン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アルキルエーテル化メラミン系架橋剤など)、粘着付与剤(例えば、ロジン誘導体樹脂、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノール樹脂などからなる常温で固体、半固体、あるいは液状のもの)、重合調整剤(ラウリルメルカプタンやチオグリコール酸など)、可塑剤、充填剤、老化防止剤、着色剤(顔料や染料など)などの適宜な添加剤を含んでもよい。なお、フッ素系界面活性剤は好ましい添加剤である。添加剤の添加量は、特に限定されないが、例えば、ベースポリマーを形成するための全モノマー[例えば、アクリル系ポリマーを形成するための全モノマー成分]100重量部に対して50重量部以下が好ましく、より好ましくは10重量部以下である。
【0124】
上記粘着剤において、上記ベースポリマーとしてのアクリル系ポリマーの調製に際しては、熱重合開始剤や光重合開始剤(光開始剤)などの重合開始剤を用いた熱や活性エネルギー光線による硬化反応を利用することができる。中でも、重合の短時間化、気泡を含有させる場合の気泡安定性などの観点から、光重合開始剤を用いた活性エネルギー光線による硬化反応(光重合)を好ましく利用することができる。上記重合開始剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0125】
上記熱重合開始剤としては、例えば、アゾ系重合開始剤[例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリアン酸、アゾビスイソバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライドなど]、過酸化物系重合開始剤(例えば、ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルマレエートなど)、レドックス系重合開始剤などが挙げられる。熱重合開始剤の使用量としては、特に制限されず、従来、熱重合開始剤として利用可能な範囲であればよい。
【0126】
上記光重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤などを用いることができる。
【0127】
具体的には、ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、アニソールメチルエーテルなどが挙げられる。アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−(t−ブチル)ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。α−ケトール系光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オンなどが挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば、2−ナフタレンスルホニルクロライドなどが挙げられる。光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシムなどが挙げられる。
【0128】
また、ベンゾイン系光重合開始剤には、例えば、ベンゾインなどが含まれる。ベンジル系光重合開始剤には、例えば、ベンジルなどが含まれる。ベンゾフェノン系光重合開始剤は、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3、3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが含まれる。ケタール系光重合開始剤には、例えば、ベンジルジメチルケタールなどが含まれる。チオキサントン系光重合開始剤には、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントンなどが含まれる。
【0129】
光重合開始剤の使用量としては、特に限定されないが、例えば、粘着剤中のベースポリマーを形成するための全モノマー成分[例えば、アクリル系ポリマーを形成するための全モノマー成分]100重量部に対して0.01〜5重量部(好ましくは0.05〜3重量部)の範囲から選択することができる。
【0130】
光重合開始剤の活性化に際しては、活性エネルギー光線を照射する。このような活性エネルギー光線としては、例えば、α線、β線、γ線、中性子線、電子線などの電離性放射線や、紫外線などが挙げられ、特に紫外線が好適である。また、活性エネルギー光線の照射エネルギーや、その照射時間などは特に限定されず、光重合開始剤を活性させて、モノマー成分の反応を生じさせることができればよい。
【0131】
気泡含有粘着剤層に混合可能な気泡量としては接着特性等を損なわない範囲で適宜選択できるが、気泡含有粘着剤層の全体積に対して通常5〜50体積%(好ましくは10〜40体積%、より好ましくは12〜30体積%、とりわけ好ましは15〜25体積%)である。気泡量が5体積%未満であると、応力緩和性が得られにくく、凹凸追従性(段差吸収性)、接着性に劣る場合がある。また、50体積%を超えると粘着剤層を貫通する気泡が形成し、接着性が劣ったり、気泡含有粘着剤層が柔らかくなりすぎる場合がある。
【0132】
気泡含有粘着剤層中に混合される気泡は、基本的には、独立気泡タイプの気泡であることが望ましいが、独立気泡タイプの気泡と連続気泡タイプの気泡とが混在していてもよい。
【0133】
また、このような気泡としては、通常、球状の形状を有しているが、いびつな形状の球状を有していてもよい。前記気泡において、その平均気泡径(直径)としては、特に限定されず、例えば、1〜1000μm(好ましくは10〜500μm、さらに好ましくは30〜300μm)の範囲から選択することができる。
【0134】
なお、気泡に含まれる気体成分(以下、「気泡を形成するガス成分」或いは「気泡形成ガス」と称する場合がある)としては、特に限定されず、窒素、二酸化炭素、アルゴンなどの不活性ガスの他、空気などの各種気体成分を用いることができる。気泡形成ガスとしては、気泡形成ガスを混合した後に、重合反応等の反応を行う場合は、その反応を阻害しないものを用いることが重要である。気泡形成ガスとしては、反応を阻害しないことや、コスト的観点などから窒素が好適である。
【0135】
気泡含有粘着剤層の構成成分の一つとして中空微小球状体を用いることにより、例えば、段差吸収性やせん断接着力を高めることができ、また、加工性を向上させることができる。中空微小球状体は1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0136】
上記中空微小球状体は、中空の無機系微小球状体であっても、中空の有機系微小球状体であってもよい。具体的には、中空の無機系微小球状体としては、例えば、中空ガラスバルーン等のガラス製の中空バルーン;中空アルミナバルーン等の金属化合物製の中空バルーン;中空セラミックバルーン等の磁器製中空バルーンなどが挙げられる。また、中空の有機系微小球状体としては、例えば中空アクリルバルーン、中空の塩化ビニリデンバルーン等の樹脂製の中空バルーンなどが挙げられる。
【0137】
中空微小球状体の平均粒径としては特に制限されないが、例えば1〜500μm(好ましくは5〜200μm、さらに好ましくは10〜100μm)の範囲から選択することができる。なお、ここでいう、平均粒径は、レーザー回折・散乱法による粒度分布測定に基づくメジアン径(体積基準)である。
【0138】
中空微小球状体の比重としては、特に限定されないが、例えば、0.1〜0.8g/cm3(好ましくは0.12〜0.5g/cm3)の範囲から選択することができる。中空微小球状体の比重が0.1g/cm3よりも小さいと、中空微小球状体を気泡含有粘着剤組成物中に配合して混合する際に、浮き上がりが大きくなり、均一に分散させること難しくなり、一方、0.8g/cm3よりも大きいと、高価になり、コストが高くなる。
【0139】
中空微小球状体の使用量としては、特に限定されず、例えば、気泡含有粘着剤層の全体積に対して5〜50容積%(体積%)、好ましくは10〜40容積%、さらに好ましくは15〜40容積%、とりわけ好ましくは20〜35容積%となるような範囲から選択することができる。中空微小球状体の使用量が5容積%未満となるような使用量であると中空微小球状体を添加した効果が小さくなる場合があり、一方、50容積%を超えるような使用量であると接着力が低下する場合がある。
【0140】
気泡含有粘着剤層を形成するための粘着剤組成物は、上記粘着剤のベースポリマーを形成するモノマー成分(例えば、(メタ)アクリル酸エステルなど)、重合開始剤、各種添加剤等を公知の手法を用いて混合することにより調製することができる。また、粘度調整などの必要に応じて、モノマー成分を一部重合させてもよい。調製方法の具体例(光重合の場合)としては、例えば、下記の手順が挙げられる。(i)ベースポリマーを形成するためのモノマー成分(例えば、(メタ)アクリル酸エステルやその他の共重合性単量体)及び光重合開始剤を混合してモノマー混合物を調製し、(ii)該モノマー混合物に対して光重合(例えば、紫外線重合)を行って、一部のモノマー成分のみが重合した組成物(シロップ)を調製する。次いで、(iii)得られたシロップに、中空微小球状体、フッ素系界面活性剤やその他の添加剤を配合する。さらに(iv)(iii)で得られた配合物に、気泡を導入して混合させることにより、気泡含有粘着剤組成物を得ることができる。なお、気泡含有粘着剤組成物の調製方法はこれに限定されるものではなく、例えば、前記シロップの調製に際して、フッ素系界面活性剤や中空微小球状体を、モノマー混合中に予め配合するなどの調製方法でもよい。
【0141】
粘着剤層中に気泡を安定的に混合して存在させる観点から、例えば上記の調製方法のように、気泡は粘着剤組成物中に最後の成分として配合し混合させることが好ましい。また、気泡を安定して混合させる観点では、気泡を混合する前の配合物(例えば、上記(iii)で得られた配合物)の粘度を高くすることが好ましい。気泡を混合する前の配合物の粘度としては、特に限定されないが、例えば、5〜50Pa・s(BH粘度計、ロータ:No.5ロータ、回転数:10rpm、測定温度:30℃)が好ましく、より好ましくは10〜40Pa・sである。粘度が5Pa・s未満では、粘度が低すぎて混合した気泡がすぐに合一して系外に抜けてしまう場合があり、50Pa・sを超えると、粘度が高すぎて粘着剤層の塗工による形成が困難となる場合がある。なお、上記粘度は、例えば、アクリルゴム、増粘性添加剤などの各種ポリマー成分を配合する方法、ベースポリマーを形成するためのモノマー成分を一部重合させる方法などにより、調整することができる。
【0142】
気泡含有粘着剤組成物の調製方法において、気泡を混合する方法としては特に限定されず、公知の気泡混合方法を利用することができる。例えば、装置の例としては、中央部に貫通孔を有する円盤上に細かい歯が多数ついたステータと、上記歯のついているステータと対向しており円盤上にステータと同様に細かい歯がついているロータとを備えた装置などが挙げられる。この装置におけるステータ上の歯とロータ上の歯との間に気泡を混合させる配合物を導入し、ロータを高速回転させながら、貫通孔を通して気泡を形成させるためのガス成分(気泡形成ガス)を導入させることにより、気泡形成ガスが細かく分散され混合された気泡含有粘着剤組成物を得ることができる。
【0143】
なお、気泡の合一を抑制又は防止するためには、気泡の混合から、粘着剤層の形成までを一連の工程として連続的に行うことが好ましい。すなわち、前述のようにして気泡を混合させて、気泡含有粘着剤組成物を調製した後、続いて、該粘着剤組成物を用いて、気泡含有粘着剤層を形成することが好ましい。
【0144】
気泡含有粘着剤層5のゲル分率は60〜90%(重量%)が好ましく、70〜80%がより好ましい。ゲル分率が60%より低くなると、架橋度が低くなり、耐候性、耐久性等が低下する傾向となり、ゲル分率が90%より高いと、架橋度が高くなり過ぎることから、耐反発性不良や接着性不良が発生しやすい傾向となる。
【0145】
図1に示されるように、本発明の電磁波吸収用粘着シートにおいて、気泡含有粘着剤層5は電磁波反射シート3の片面に形成される。従って、例えば、電磁波吸収用積層構造部10に組み込む前或いは組み込んだ後の電磁波反射シート3の片面上に、粘着剤組成物を塗布し塗布層を形成させ、該層を活性エネルギー線により硬化させる方法(直写法)によって、気泡含有粘着剤層5を形成することができる。また、剥離フィルム(セパレータ)等の適当な支持体上に、粘着剤組成物を上記と同様に塗布・硬化して気泡含有粘着剤層5を形成した後、気泡含有粘着剤層5を電磁波反射シート3上に転写する方法(転写法)などが挙げられる。
【0146】
上記気泡含有粘着剤層5の厚みとしては、特に制限されないが、50〜5000μmが好ましく、400〜2000μmがより好ましく、さらに好ましくは800〜1200μmある。厚みが50μmよりも小さいと、クッション性が低下して、段差(凹凸)に対する粘着シートの接着性が低下する場合があり、厚みが5000μmよりも大きいと、均一な厚みの粘着剤層及び/又は均一な厚みの粘着シートが得られにくい傾向となる。
【0147】
本発明の粘着シートには、使用時まで気泡含有粘着剤層5の表面(粘着面)を保護するために、剥離フィルム(セパレータ)が用いられていてもよい。上記セパレータは、該セパレータにより保護されている粘着面を利用する際に(すなわち、電磁波の反射面となる被着対象物の表面に粘着シートを貼付する際に)剥離される。
【0148】
上記セパレータとしては、慣用の剥離紙などを利用できる。具体的には、セパレータとしては、例えば、剥離処理剤による剥離処理層をセパレータ基材の少なくとも一方の表面に有するものの他、フッ素系ポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体等)からなる低接着性基材や、無極性ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂など)からなる低接着性基材などを用いることができる。
【0149】
セパレータとしては、例えば、セパレータ用基材の少なくとも一方の面に剥離処理層が形成されているセパレータを好適に用いることができる。このようなセパレータ用基材としては、ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム等)、オレフィン系樹脂フィルム(ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等)、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム(ナイロンフィルム)、レーヨンフィルムなどのプラスチック系基材フィルム(合成樹脂フィルム)や紙類(上質紙、和紙、クラフト紙、グラシン紙、合成紙、トップコート紙など)の他、これらを、ラミネートや共押し出しなどにより、複層化したもの(2〜3層の複合体)等が挙げられる。剥離処理層を構成する剥離処理剤としては、特に制限されず、例えば、シリコーン系剥離処理剤、フッ素系剥離処理剤、長鎖アルキル系剥離処理剤などを用いることができる。剥離処理剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0150】
本発明の粘着シートは、常態(23℃、50%RH)で、金属(例えば、SUS304等)、コンクリート、スレート板等に対して貼付可能である。常態で貼付可能とは、具体的には、例えば、23℃、50%RHの条件下、粘着シートの金属、コンクリート、スレート板等の平坦面に対するせん断接着力が0.5N/mm以上(剥離速度100mm/分)であることをいう。また、本発明の粘着シートは、気泡含有粘着剤層が曲面部や凹凸部に対しても追従し、曲面部や凹凸部を含む表面に対しても十分な粘着力(剥離力)で貼付される。従って、例えば、後述の凹凸追従性試験から分かるように、凹凸部を含む表面に対しても、23℃、50%RHの条件下、上記と同様の粘着力(剥離力)を達成することができる。なお、「凹凸追従性」とは、被着体表面に凹凸部がある場合も、貼付する粘着シートの粘着剤層が凹凸の形状に応じて変形し、段差部分に気泡や浮きが生じさせないことをいう。
【0151】
また、本発明の粘着シートは、その最外面に保護層が形成されており、後述の試験例からも明らかなように、極めて高い耐候性及び耐湿性を有し、屋外に長時間放置されても、変色等が生じることがなく、また、上記の十分に高い粘着力を維持することができる。また、粘着シート全体が優れた耐候性及び耐高温高湿性を有することから、長期間安定した電磁波吸収性能を得ることができる。
【実施例】
【0152】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下に記載の実施例により何ら限定されるものではない。
【0153】
後述の実施例及び比較例で作製した粘着シートの物性及び特性は次の方法で評価した。
(1)電磁波吸収性能(初期)
6面電波暗室にて、タイムドメイン法により、5.8GHzの吸収性能を評価した。吸収量が20dB以上である場合を良好(○)、20dBに満たない場合を不良(×)とした。
【0154】
(2)せん断接着力
両面粘着シート(気泡含有粘着剤層)の片面に厚さ0.4mmのアルミ板に貼り付けて裏打ちした。この裏打ちされた粘着シートを20mm幅に切断して、スレート板(JIS A 5430に準じたスレートボード:平版)に、23℃、50%RHの条件下、2kgローラーで1往復して圧着し、初期(貼り付け後30分)と、貼り付け後2000時間後のせん断接着力(N/mm)を、剥離速度100mm/分で測定した。粘着シートと被着体の圧着面積は500mm(20mm×25mm)とした。
【0155】
(3)凹凸追従性
図2(A)に示すように、透明アクリル板14上に、10mm幅のPET板15(厚み:12μm)を5mm幅の間隔で4枚並べて固定し、その上に粘着シート16(30mm×70mm)を粘着面が接するように、5kg(幅50mm)のローラーを1往復して貼り合せた。貼り合わせ直後に、裏面側(アクリル板側)から光学顕微鏡にて、粘着シート16の密着状態を観察した。図2(B)は裏面側から観察した状態の図であり、アクリル板PET板のエッジ部において、粘着シートとアクリル板が密着していない部分18の幅(8カ所の平均値)を測定し、0.1mm以下であれば、段差吸収性良好(○)、0.1mmを超える場合には、段差吸収性不良(×)と判断した。
【0156】
なお、図2(B)中の符号17は粘着シートとアクリル板が密着している部分を示し、符号19は粘着シートとアクリル板が密着していない部分の幅(測定対象)を示している。
【0157】
(4)耐候性
SUS304の板を曲げ加工して曲率半径500mmとしたコーナー部に粘着シート(20mm×50mm)を貼付し、JIS K 7350−4に準拠して、屋外曝露(愛知県豊橋市 日東電工(株)屋外曝露場、2000時間)で処理したサンプルを作製した。そして、かかるサンプルについて、以下の通り、接着性、変色及び電磁波吸収性を評価した。
【0158】
(接着性)
上記のサンプルを、目視観察し、浮き・剥離の有無を観察した。浮き・剥離がなければ耐候性良好(○)、浮き・剥離があれば耐候性不良(×)と評価した。
【0159】
(変色)
上記のサンプルを、目視観察し、変色の有無を観察した。変色がなければ耐候性良好(○)、変色があれば耐候性不良(×)と評価した。
【0160】
(電磁波吸収性)
6面電波暗室にて、タイムドメイン法により、5.8GHzの吸収性能を評価した。電波吸収性能が屋外曝露前(電磁波吸収性能(初期))よりも低下した場合は不良(×)、低下しない場合は良好(○)とした。
【0161】
(5)耐高温高湿性
SUS304の板を曲げ加工して曲率半径500mmとしたコーナー部に粘着シート(20mm×50mm)を貼付し、85℃、85%RHの室内環境下に2000時間放置してサンプルを作製した。かかるサンプルについて、以下の通り、接着性、変色及び電磁波吸収性を評価した。
【0162】
(接着性)
上記のサンプルを、目視観察し、浮き・剥離の有無を観察した。浮き・剥離がなければ耐高温高湿性(○)、浮き・剥離があれば耐高温高湿性(×)と評価した。
【0163】
(変色)
上記のサンプルを、目視観察し、変色の有無を観察した。変色がなければ耐高温高湿性良好(○)、変色があれば耐高温高湿性不良(×)と評価した。
【0164】
(電磁波吸収性)
6面電波暗室にて、タイムドメイン法により、5.8GHzの吸収性能を評価した。電波吸収性能が高温高湿下に放置前(電磁波吸収性能(初期))よりも低下した場合は不良(×)、低下しない場合は良好(○)とした。
【0165】
(6)ゲル分率
ゲル分率は、架橋処理直後および1週間室温(23℃)保存後に、次の方法で測定した。
粘着剤層を、5cm×5cmのサイズで剥離ライナーから剥がし、0.2μmの孔径を有する多孔性ポリテトラフルオロエチレンシート(商品名「NTF1122」日東電工社製)に包んだ後、凧糸で縛り、その際の重量を測定し、該重量を浸漬前重量とする。なお、該浸漬前重量は、粘着剤層と、ポリテトラフルオロエチレンシートと、凧糸との総重量である。また、ポリテトラフルオロエチレンシートと凧糸との重量も測定しておき、該重量を包袋重量とする。
【0166】
次に、上記の粘着剤層をポリテトラフルオロエチレンシートで包み、凧糸で縛ったものを、酢酸エチルで満たした50ml容器に入れ、室温にて1週間(7日間)放置する。その後、容器からテトラフルオロエチレンシートを取り出して、アルミニウム製カップに移し、130℃で2時間、乾燥機中で乾燥して酢酸エチルを除去した後、サンプル重量を測定し、該重量を浸漬後重量とする。そして、下記の式からゲル分率を算出する。
【0167】
ゲル分率(重量%)=(A−B)/(C−B)×100
(式中、Aは、浸漬後重量、Bは包袋重量、Cは浸漬前重量である。)
【0168】
[実施例1〜5及び比較例1、2]
1.気泡含有粘着剤層
(1)気泡含有粘着剤層A
モノマー成分として、2−エチルヘキシルアクリレート90重量部及びアクリル酸10重量部が混合されたモノマー混合物に、光重合開始剤[商品名「イルガキュア651」(チバジャパン社製)]0.05重量部と、光重合開始剤[商品名「イルガキュア184」(チバジャパン社製)]0.05重量部とを配合した後、粘度(BH粘度計、No.5ロータ、10rpm、測定温度:30℃)が約15Pa・sになるまで紫外線を照射して、一部が重合した組成物(部分重合、シロップ)を作製した。
【0169】
このシロップ100重量部に、光重合開始剤[商品名「イルガキュア651」(チバジャパン社製)]0.04重量部と、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)0.08重量部とを添加した後、さらに中空ガラスバルーン(平均粒径40μm、商品名「フジバルーンH−40」(富士シリシア化学(株)社製))を部分重合モノマーシロップ100重量部に対して、12.5重量部となるような割合で添加した。部分重合モノマーシロップ全体当たり33体積%の気泡を含有。
【0170】
中空ガラスバルーン添加後の部分重合モノマーシロップに、フッ素界面活性剤(商品名「サーフロンS−393」)(AGCセイケミカル社製)を0.7重量部添加して、中空ガラスバルーンを含有した粘着性組成物を得た。その後、中央部に貫通孔を有する円盤上に細かい歯が多数ついたステータと、上記歯のついているステータと対向しており、円盤上にステータと同様に細かい歯がついているロータとを備えた装置を用いて粘着性組成物に窒素を導入して気泡を混合した。なお、気泡は粘着性組成物の全体積に対して20体積%であった。また、この時の中空ガラスバルーンの含有割合は29体積%であった。
【0171】
気泡を含有した粘着性組成物を、セパレータの剥離処面に塗布した。セパレータとしては、片面が剥離処理されているポリエチレンテレフタレート製基材(商品名「MRN」三菱ポリエステルフィルム社製)を使用した。
【0172】
セパレータに塗布された粘着性組成物を、照度5mW/cmの紫外線(東芝(株)製「ブラックライト」)を用いて、両面から3分間照射し、粘着性組成物を硬化させて、厚さ800μmの気泡含有粘着剤層を得た。この際、光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)0.04重量部)を添加した。また、その他の添加成分として、酸化防止剤(商品名「イルガノックス1010」チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)0.5重量部)、顔料(商品名「ATDN101」(大日精化工業(株)社製)0.02重量部)、顔料分散溶媒(2−エチルヘキシルアクリレート0.18重量部)を添加した。
【0173】
(2)気泡含有粘着剤層B、C
セパレータへの粘着性組成物の塗布量を変更した以外は、上記と同様にして、厚さ400μmの気泡含有粘着剤層Bと、厚さ1200μmの気泡含有粘着剤層Cを形成した。
【0174】
2.粘着剤層
モノマー成分として、イソノニルアクリレート90重量部及びアクリル酸10重量部が混合されたモノマー混合物に、光重合開始剤[商品名「イルガキュア184」(チバ・ジャパン社製)]0.1重量部を配合した後、粘度(BH粘度計、No.5ロータ、10rpm、測定温度:30℃)が約15Pa・sになるまで紫外線を照射して、一部が重合した組成物(部分重合、シロップ)を作製した。
【0175】
このシロップ100重量部に、架橋剤として、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)を0.2重量部添加し、老化防止剤[商品名「イルガノックス1010」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)]1重量部を添加し、その後攪拌を行い、粘着剤組成物を得た。
【0176】
シリコーン系剥離剤面が表面に形成されているポリエチレンテレフタレートフィルム(剥離ライナーA1、厚み50μm)上に、厚さ50μmとなるように、上記に作成したアクリル系粘着剤を塗布し、ポリエステル系カバーセパレーター(商品名「MRN」(三菱ポリエステルフィルム社製)、厚み38μm)を積層させ、配合物表面を空気層から遮断する状態にてUVランプにて約2000mJのUV光を剥離ライナー側より、照射し、配合物を反応させることにより、粘着剤層(厚さ50μm)を得た。該粘着剤層のゲル分率は85%であった。
【0177】
3.分割導電膜
幅300mm×長さ300mm×厚み25μmのポリイミドフィルムの片面に、平面形状が縦4.5mm×横4.5mmの正方形、厚みが35μmの導電膜部(Cu膜部)が正方行列状(導電膜部間の間隙:1.7mm)に配列した分割導電膜を用意した。
【0178】
4.電磁波吸収シート
(1)電磁波吸収シートA
ビーズミルで、黒鉛(平均粒径:5μm)100重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)700重量部及びプライサーフA212(第一工業製薬製、リン酸エステル系分散剤)1重量部を分散処理した。その後、得られた分散液300重量部にポリメタクリル酸メチル(PMMA)溶液(PMMA:トルエン=20:80(重量比))200重量部を加え、混合して、塗工液を調製した。次に、この塗工液をPET製のセパレータへ塗工し、乾燥して黒鉛含有PMMAシート(厚み:20μm)を得た。この黒鉛含有PMMAシートを複数枚積層し、間隙を1.5mmに設定したスペーサーを用いて、真空熱プレス(110℃、10分)をして、厚み1.6mmの電磁波吸収シートAを作製した。
【0179】
(2)電磁波吸収シートB
2軸混練押出機を用いて、黒鉛とLDPEを押出し、ペレット(黒鉛:LDPE=40:60(重量比))を作製した。前記ペレットを押出機を用いてシート(厚み:0.3mm)に成形した。そして、この黒鉛含有LDPEシートを複数枚積層し、間隙を1.5mmに設定したスペーサーを用いて、真空熱プレス(120℃、1分)をして、厚み1.5mmの電磁波吸収シートBを作製した。
【0180】
(3)電磁波吸収シートC
加圧ニーダーで、黒鉛とEPDMを混練した。この混練物(黒鉛:EPDM=100:100(重量比))を間隙を1mmに設定したスペーサーを用いて、真空熱プレス(80℃、1分)をして、厚み1.2mmの電磁波吸収シートCを作製した。
【0181】
5.電磁波反射シート
厚み25μmのアルミニウム箔を用意した。
【0182】
6.保護層
厚み100μmのポリビニリデンフルオライド(PVdF)フィルム(アクリル系粘着剤付きPVdFフィルム(日東電工(株)製のデュラタックPF100(商品名))を用意した。
【0183】
(実施例1)
各層の材料を分割導電膜の平面サイズ(幅300mm×長さ300mm)と合わせて裁断し、保護層/分割導電膜/粘着剤層/電磁波吸収シートA(PMMA+黒鉛)/粘着剤層/電磁波反射シート/気泡含有粘着剤層Aの順に貼り合わせて、電磁波吸収用粘着シートを作製した。
【0184】
(実施例2)
気泡含有粘着剤層A(厚み800μm)を気泡含有粘着剤層B(厚み400μm)に変更した以外は実施例1と同様にして電磁波吸収用粘着シートを作製した。
【0185】
(実施例3)
気泡含有粘着剤層A(厚み800μm)を気泡含有粘着剤層C(厚み1200μm)に変更した以外は実施例1と同様にして電磁波吸収用粘着シートを作製した。
【0186】
(実施例4)
電磁波吸収シートA(PMMA+黒鉛)を電磁波吸収シートB(黒鉛+LDPE)に変更した以外は実施例1と同様にして電磁波吸収用粘着シートを作製した。
【0187】
(実施例5)
電磁波吸収シートA(PMMA+黒鉛)を電磁波吸収シートC(黒鉛+EPDM)に変更した以外は実施例1と同様にして電磁波吸収用粘着シートを作製した。
【0188】
(比較例1)
保護層を使用しなかった以外は実施例1と同様にして電磁波吸収用粘着シートを作製した。
【0189】
(比較例2)
気泡含有粘着剤層Aの代わりに、以下に記載の両面接着テープAを使用した以外は実施例1と同様にして電磁波吸収用粘着シートを作製した。
「両面接着テープA」
アクリル酸5重量部、アクリル酸ブチル95重量部及び重合溶媒としてトルエン200重量部を三つ口フラスコに投入し、窒素ガスを導入しながら2時間攪拌した。このようにして重合系内の酸素を除去した後、過酸化ベンゾイル0.1重量部を加え、80℃に昇温して6時間重合反応を行った。得られたポリマーの重量平均分子量は40万であった。このポリマーの固形分100重量部に対し、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤(商品名:コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)を2重量部配合し、十分に攪拌してアクリル系粘着剤を調製した。不織布基材として、マニラ麻99重量%にビニロンが1重量%混抄された厚さ75μm、密度0.31g/cmの不織布の両面に、上記のアクリル系粘着剤を直写方式で同じ重さとなるように塗布し、乾燥させて粘着剤層を形成し、総厚160μmの両面接着テープを作製した。
【0190】
実施例及び比較例の評価結果を表1に示す。
【0191】
【表1】

【0192】
表1から、本発明の粘着シートは、曲面部や凹凸部を含む表面に対しても安定に接着でき、屋外建造物やコンクリート構造物に対して圧着するだけで、強固かつ安定な接着状態を得ることができ、しかも、屋外や高温高湿環境下に長期間曝されても、電磁波吸収性能も安定に持続し得る、電磁波吸収粘着シートを実現できていることが分かる。
【符号の説明】
【0193】
1 分割導電膜
2 電磁波吸収シート
3 電磁波反射シート
4 保護層
5 気泡含有粘着剤層
6 粘着剤層
7 被着対象物
10 電磁波吸収用積層構造部
100 電磁波吸収用粘着シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割導電膜、電磁波吸収シート及び電磁波反射シートがこの順に積層された電磁波吸収用積層構造部を有し、前記分割導電膜の電磁波吸収シートの側とは反対側の片面に保護層が形成され、前記電磁波反射シートの電磁波吸収シートの側とは反対側の片面に気泡含有粘着剤層が形成されてなること特徴とする電磁波吸収用粘着シート。
【請求項2】
電磁波吸収用積層構造部が、電磁波吸収シートの一方の片面に粘着剤層を介して分割導電膜を貼り合せ、電磁波吸収シートの他方の片面に粘着剤層を介して電磁波反射シートを貼り合せたものである、請求項1記載の電磁波吸収粘着シート。
【請求項3】
粘着剤層がゲル分率が70〜90%のアクリル系粘着剤で形成されたものである、請求項2記載の電磁波吸収用粘着シート。
【請求項4】
気泡含有粘着剤層が5〜50体積%の気泡を含有する、請求項1〜3のいずれか1項記載の電磁波吸収用粘着シート。
【請求項5】
気泡含有粘着剤層が比重が0.1〜0.8g/cmの中空微小球状体を5〜50体積%含有する、請求項4記載の電磁波吸収用粘着シート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−249613(P2011−249613A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122123(P2010−122123)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】