電磁波発生素子、電磁波検出素子、時間領域分光装置
【課題】複数の部分導波路から成る光導波路を設けることで、合成した電磁波のメインローブが大きな略単一の指向性を有する電磁波発生素子等を提供する。
【解決手段】電磁波発生素子は、それぞれ誘電体10、11に挟まれ非線形光学結晶を含む複数の部分導波路101、104、107から成る光導波路を備える。複数の部分導波路101、104、107は、これらにおける光の伝播方向のなす角が2θcと略一致する様に構成される。ここで、非線形光学結晶の光に対する屈折率をn、誘電体10、11と部分導波路101、104、107との電磁波に対する実効的な比誘電率をεeffとして、θc=cos-1(n/√εeff)と定義される。
【解決手段】電磁波発生素子は、それぞれ誘電体10、11に挟まれ非線形光学結晶を含む複数の部分導波路101、104、107から成る光導波路を備える。複数の部分導波路101、104、107は、これらにおける光の伝播方向のなす角が2θcと略一致する様に構成される。ここで、非線形光学結晶の光に対する屈折率をn、誘電体10、11と部分導波路101、104、107との電磁波に対する実効的な比誘電率をεeffとして、θc=cos-1(n/√εeff)と定義される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミリ波帯からテラヘルツ波帯まで(30GHz〜30THz)の周波数領域の電磁波成分を含むテラヘルツ波などの電磁波を発生する電磁波発生素子、テラヘルツ波などの電磁波を検出する電磁波検出素子、及びそれを用いた時間領域分光装置に関する。特には、レーザ光照射により前記周波数帯のフーリエ成分を含む電磁波の発生(検出)を行う電気光学結晶を含む発生素子(検出素子)、及びそれを用いたテラヘルツ時間領域分光法(THz-TDS)によるトモグラフィ装置などに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テラヘルツ波を用いた非破壊なセンシング技術が開発されている。この周波数帯の電磁波の応用分野として、X線装置に代わる安全な透視検査装置を構成してイメージングを行う技術がある。また、物質内部の吸収スペクトルや複素誘電率を求めて分子の結合状態などの物性を調べる分光技術、キャリア濃度や移動度、導電率などの物性を調べる計測技術、生体分子の解析技術などが開発されている。テラヘルツ波の発生方法としては、非線形光学結晶を用いる方法が広く用いられている。非線形光学結晶の代表的なものとしては、LiNbOx(以後、LNとも言う)、LiTaOx、NbTaOx、KTP、DAST、ZnTe、GaSe、GaP、CdTeなどがある。テラヘルツ波の発生には二次の非線形現象を用いている。方式としては、周波数差を持つ2レーザ光の入射による差周波発生(Difference-Frequency-Generation: DFG)が知られている。また、光パラメトリック過程による単色テラヘルツ波発生、フェムト秒パルスレーザ光の照射で光整流によりテラヘルツパルスを発生する方式が知られている。
【0003】
この様な非線形光学結晶からテラヘルツ波を発生する過程として、電気光学的チェレンコフ放射が最近注目されている。これは、図9に示す様に、励起源であるレーザ光91の伝搬群速度が、発生するテラヘルツ波の伝播位相速度よりも速い場合に、衝撃波の様にテラヘルツ波92が円錐状に放出される現象である。光とテラヘルツ波の媒質(非線形光学結晶)中の屈折率の比により、放射角θcは次式で決まる。
cosθc=vTHz/vg=ng/nTHz
ここで、vg、ngは夫々励起光の群速度、群屈折率、vTHz、nTHzは夫々テラヘルツ波の位相速度、屈折率を表す。これまでに、このチェレンコフ放射現象を用いて、波面を傾斜させたフェムト秒レーザ光をLNに入射させ光整流により高強度のテラヘルツパルスを発生させるという報告がある(非特許文献1参照)。また、波面傾斜の必要をなくすために、発生するテラヘルツ波の波長よりも十分小さい厚さを持つスラブ導波路を用いて、DFG方式により単色テラヘルツ波を発生させるという報告がある(非特許文献2参照)。
【0004】
この様な非特許文献の例は、進行波励起によるテラヘルツ波発生であるため、異なる波源から発生したテラヘルツ波が放射方向で位相整合して強め合うことで取り出し効率を向上させるという提案に係る。この放射方式の特徴としては、非線形光学結晶を用いたものでは比較的高効率にできて高強度のテラヘルツ波を発生できる事、結晶特有のフォノン共鳴によるテラヘルツ領域の吸収を高周波側に選ぶことでテラヘルツ波の帯域を広くできる事などが挙げられる。これらの技術は、光伝導素子によるテラヘルツ発生に比べて発生帯域を広くでき、光整流を用いるテラヘルツパルス発生の場合にはパルス幅を狭くでき、例えばテラヘルツ時間領域分光装置に利用する場合に装置性能を向上できることが期待されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J.Opt.Soc.Am.B,vol.25,pp.B6−B19,2008.
【非特許文献2】Opt.Express,vol.17,pp.6676−6681,2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のチェレンコフ型テラヘルツ波発生素子は、光導波路を含む面内において二方向の指向性を有するものであり、使い易いとは言い難かった。本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、略単一の指向性の電磁波発生素子などを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
光源からの光を伝播させる非線形光学結晶を含み前記光より波長の長い電磁波を発生する本発明の一側面としての電磁波発生素子は、第一の誘電体及び第二の誘電体と、それぞれ前記誘電体の間に挟まれ非線形光学結晶を有する複数の部分導波路から成る光導波路を備える。そして、非線形光学結晶の光に対する屈折率をn、誘電体と部分導波路との電磁波に対する実効的な比誘電率をεeffとして、θc=cos-1(n/√εeff)と定義するとき、複数の部分導波路は、これらにおける光の伝播方向のなす角が2θcと略一致する様に構成される。また、光源からの光を伝播させる非線形光学結晶を含み前記光より波長の長い電磁波を検出する本発明の他の一側面としての電磁波検出素子も、同様な構成を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一側面としての電磁波発生素子によれば、光の伝播方向のなす角が2θcと略一致する様に構成される複数の部分導波路から成る光導波路を設けることで、合成した電磁波のメインローブが大きな略単一の指向性を達成することができる。本発明のその他の側面については、以下で説明する実施の形態で明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態1に係る電磁波発生素子の構成を示す図。
【図2】本発明の実施形態2に係る電磁波発生素子の構成を示す図。
【図3】本発明の実施形態3に係る電磁波発生素子の構成を示す図。
【図4】本発明の実施形態4に係る電磁波発生素子の構成を示す上面図。
【図5】本発明の実施形態5に係るテラヘルツ時間領域分光装置の構成を示す図。
【図6】本発明の実施形態6に係る電磁波発生素子の構成を示す立面図。
【図7】本発明の実施形態7に係るテラヘルツ時間領域分光装置の構成を示す図。
【図8】本発明の実施例1に係る電磁波発生素子の構成を示す図。
【図9】電気光学的チェレンコフ放射の原理を示す図。
【図10】本発明の実施形態8に係る電磁波検出素子の構成を示す図。
【図11】本発明の実施形態8に係る電磁波検出素子の検出方式の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一側面としての電磁波発生素子及び他の一側面としての電磁波検出素子は、光の伝播方向のなす角が上記2θcと略一致する様に構成される部分導波路の組を含む複数の部分導波路から成る光導波路を設けることを特徴とする。こうした考え方に基づき、本発明の電磁波発生素子、電磁波検出素子は、上述した課題を解決するための手段のところで述べた様な基本的な構成を有する。
【0011】
以下、図を用いて本発明の実施形態ないし実施例を説明する。
(実施形態1)
実施形態1に係る電磁波発生素子について、図1を用いて説明する。図1(a)は、本実施形態に係る電磁波発生素子を表す上面図である。図1(b)は、立面図である。本実施形態は、非線形光学結晶で構成された部分光導波路と、これらを接続する屈曲部とを備えて構成される。本実施形態において、部分光導波路101は、光が伝播すると、円錐状に指向性を持つ。図1(a)の面内では二方向に指向性102が現れる。電磁波がチェレンコフ放射される方向は、部分光導波路101における光の伝播方向から、後述するθcだけの角度をなす。部分光導波路104は、部分光導波路101とは略2θcだけの角度をなす。やはり、光が伝播すると、円錐状に指向性を持ち、面内では二方向に指向性105を持つ。こちらも、電磁波がチェレンコフ放射される方向は、部分光導波路104における光の伝播方向からθcだけの角度をなす。屈曲部103は、部分光導波路101を伝播する光を略2θcだけ方向を変え、部分光導波路107へ導く。部分光導波路107は、部分光導波路101とは略2θcだけの角度をなし、やはり、光が伝播すると、面内では二方向に指向性108を持つ。こちらも、電磁波がチェレンコフ放射される方向は、光導波路107における光の伝播方向からθcだけの角度をなす。屈曲部106についても同様である。
【0012】
このような構造において、各部分導波路の互いに方向の揃った放射は強め合い、素子全体の指向性におけるメインローブ111に寄与する。方向の揃っていない放射は弱め合い、完全に相殺できない分はサイドローブ112となる。ゆえに、素子全体としては略単一の指向性を持ち、同図の左方向から導波路の入射端へ励起光を導入すると、同図の右方向に電磁波を放射する。以上が、本発明の電磁波発生素子がメインローブの大きな略単一の指向性を有するしくみである。本実施形態では、互いに略2θcの角度をなす部分導波路が菱形を構成することによって単一の指向性を有する構造が達成される。
【0013】
さらに、チェレンコフ放射を達成するため、光導波路を光が伝播する速度vgと、テラヘルツ波などの放射される電磁波の位相速度vTHzの関係が、vg>vTHzを満たす必要がある。これは、cos-1(vTHz/vg)が実数の解を持たなければならない要請による。本発明では、テラヘルツ波や遠赤外光、中赤外光など、光より波長の長い電磁波をチェレンコフ放射させる。したがって、放射される電磁波は光と比較すると空間的な広がりがある。こうした空間的な広がりの違いを利用して、電磁波の位相速度が遅くなる様に、本実施形態では図1(b)の様に光導波路を上下でサンドイッチする第一の誘電体と第二の誘電体10、11を備える。このとき、電磁波は、誘電体10、11の誘電率を強く感じ、これらの実効的な比誘電率εeffによってθcが決められる。つまり、次式で表される。
cosθc=ng/√εeff(すなわち、θc=cos-1(ng/√εeff))
【0014】
図1(b)の光導波路の厚さが薄い極限において、実効的な比誘電率εeffは、近似的には誘電体10、11の誘電率ε10、ε11の平均で表してよく、次式で表される。
εeff≒(ε10+ε11)/2
誘電体10、11における誘電率の偏りは、図1(b)の放射方向を若干上下させる。これは、誘電体11の誘電率が誘電体10より大きいとき、電磁波モードの分布が誘電体11に偏るためである。ここでは、第一の誘電体10は非線形光学結晶を支持する基板であって、比誘電率が基板の比誘電率より大きい第二の誘電体11が選ばれる。しかしながら、誘電体10の誘電損失が誘電体11より大きい場合、この性質を利用して誘電損失を避けることができる。もちろん、誘電損失が同程度なら誘電体10、11は同じ誘電体材料10を用いてもよく、この場合はεeff=ε10である。光導波路が典型的なシングルモード導波路となる様に選択されたときは、光導波路の寸法は高々数μm程度の厚さとなる。テラヘルツ波の波長はこれと比較しても十分に大きいことから、テラヘルツ放射の際にこの近似式がよく成り立つ。
【0015】
誘電体材料10の選択例としては、背景技術のところで述べた非線形光学結晶LNの近赤外領域における屈折率(群屈折率ng)は2程度である。したがって、誘電率(比誘電率)が4程度かそれ以上の誘電体材料を用いればcos-1(ng/√εeff)が実数解を持ち、チェレンコフ放射が達成される。テラヘルツ波の場合、誘電体材料には、例えば、SiやGeを用いてもよいし、半絶縁性半導体基板などを用いてもよい。
【0016】
誘電体10、11に挟まれた光導波路以外の不図示である領域は、例えば、誘電体を充填したり、空気であったりしてもよい。光閉じ込めの行うために、光導波路を構成する非線形光学結晶より低い屈折率の材料であればよい。例えば、LNより屈折率の低い、屈折率1.5程度のBCB(ベンゾシクロブテン)やポリイミドを用いてもよい。
【0017】
また、これまでは誘電体10、11の厚さが厚い極限を考えていたが、次の条件の下に、ある限度までは薄くしてもよい。すなわち、厚さが薄くなって、放射される電磁波の空間的な広がりが誘電体10、11の厚さより大きくなると、外側の空気を感じて有効誘電率(実効的な比誘電率)εeffが小さくなる。このとき、√εeffがngより小さくなりすぎると、cos-1(ng/√εeff)が実数解を持たなくなり、チェレンコフ放射が達成されなくなる。よって、こうしたことが起こらないという条件の下に、上記厚さを薄くしてもよい。ここで、放射される電磁波の空間的な広がりとは、誘電体材料10内の電磁波の等価波長(λ0/√ε10)の程度と考えればよい(λ0は真空中の電磁波の波長、ε10は誘電体材料の比誘電率)。
【0018】
(実施形態2)
実施形態2に係る電磁波発生素子について、図2を用いて説明する。図2(a)は、本実施形態に係る電磁波発生素子を表す上面図である。図2(b)は、立面図である。本実施形態の場合、部分光導波路は屈曲部203、206によって一本に接続されている。したがって、外部からの光の入射端が一箇所であり、光結合が容易である。その他は、第一の実施形態と構造上変わりなく、図2(a)の様に部分光導波路204は、部分光導波路201とは略2θcだけの角度をなし、部分光導波路207は、部分光導波路204とは略2θcだけの角度をなす。各部分光導波路において、光が伝播すると、円錐状に指向性202、205、208を持ち、方向の揃っている放射は強め合い、素子全体の指向性におけるメインローブ211に寄与する。ゆえに、素子全体としては略単一の指向性を持つ。完全に相殺できない分はサイドローブ212となる。本実施形態では、略2θcの角度をなす部分導波路が波形を構成することによって略単一の指向性を有する構造が達成される。本実施形態でも、図2(b)の様に光導波路を上下でサンドイッチする誘電体20、21を備える。
【0019】
本実施形態や実施形態1では、同構造を左右方向に延長することもできるため、光導波路を伝播する光と光導波路を構成する非線形光学結晶との相互作用長を容易に延長することができる。励起光を電磁波(RF)に変換する光−RF変換効率が上がるため、光−RF変換効率を必要とする装置、アプリケーションにとって望ましい実施形態となる。
【0020】
(実施形態3)
実施形態3に係る電磁波発生素子について、図3を用いて説明する。図3(a)は、本実施形態に係る電磁波発生素子を表す上面図である。図3(b)は、立面図である。本実施形態の場合、屈曲部がないため、曲げによる光損失が生じないことが利点である。その他は、実施形態1と構造上変わりなく、図3(a)の様に部分光導波路303は、部分光導波路301とは略2θcだけの角度をなす。各部分光導波路において、光が伝播すると、円錐状に指向性302、304を持ち、方向の揃っている放射は強め合い、素子全体の指向性におけるメインローブ311に寄与する。ゆえに、素子全体としては略単一の指向性を持ち、電磁波を同図の右方向に放射する。完全に相殺できない分はサイドローブ312となる。本実施形態は、略2θcの角度をなす部分導波路がV形状を構成することによって略単一の指向性を有する構造が達成される。本実施形態でも、図3(b)の様に光導波路を上下でサンドイッチする誘電体30、31を備える。
【0021】
本実施形態は、光と電磁波がコリニアではないため、これらの分離が容易である。光とRFの分離を必要とするような装置、アプリケーションにとっては、望ましい実施形態となる。
【0022】
(実施形態4)
これまでの実施形態において、電磁波発生素子の導波路の入射端が二箇所ある場合は位相の揃った二つの光ビーム、または、スポットの大きい一つの光ビームで二箇所を同時に励起するなどの必要があった。これに対して、導波路の入射端が一箇所で、光導波路上にY分岐400を備えた電磁波発生素子が図4の素子である。Y分岐400は、光の波長や偏光方向に無依存であり、シングルモード/マルチモード光導波路で利用できる分岐としてよく知られている。もちろん、マッハツェンダー型などを用いてもよい。これを用いれば、さらに、菱形の中に複数の小さな菱形の光導波路を備えるような構造や、V型の中に複数の小さなV型の光導波路を備えるような構造も実現することができる。
【0023】
また、これまでに述べてはいなかったが、チェレンコフ放射は、非線形光学結晶401、402の二次の非線形係数(d係数)に由来する。したがって、電磁波の指向性を合成するためには、各結晶におけるd係数の方向に注意する必要がある。さらに正確には、d係数はテンソルであり、例えばd係数dil(エル)におけるiの指し示す方向について注意する必要がある。一つの光ビームで非線形光学結晶401、402を励起するような本実施形態では、単純には、全ての非線形光学結晶におけるd係数が、図4の面に垂直な方向に向いていると好ましい。
【0024】
これまでに述べた電磁波発生素子の光励起には、短パルスレーザ光を用いてもよい。この場合、光整流により光よりも波長の長い広帯域な電磁パルスを発生させることができる。また、光パラメトリック過程による単色テラヘルツ波発生を用いてもよい。もちろん、二つの波長の異なるレーザ光を入射させ、差周波に相当する、光よりも波長の長い単一周波数の電磁波を発生させることもできる。ここでは、周波数の異なる2レーザ光を入射した場合、その2レーザ光の差周波数に応じた周期を有する非線形分極が生じる。また、非線形光学結晶では、レーザ光の入射によりエネルギー状態が励起し、元のエネルギー状態に戻る際にエネルギー波が放射される。非線形光学結晶が非線形分極している場合、その分極の周波数に対応するエネルギー波が放射され、テラヘルツ波の周波数を有して分極しているとき、非線形光学結晶からテラヘルツ波が放射される。なお、本実施形態や実施形態3において、隔たった二つの部分導波路に二つの光ビームを同時に入射させれば、導波路の入射端と終端とを逆にすることもできる。また、上記実施形態の構造は、可能である範囲で、組み合わせることもできる。例えば、実施形態1の左半分の構造に本実施形態の構造を適用して両者を組み合わせることもできる。
【0025】
(実施形態5)
上述の素子を電磁波発生素子として用いて構成したテラヘルツ時間領域分光システム(THz-TDS)によるトモグラフィックイメージング装置の例を図5(a)に示す。ここでは、励起光源として光ファイバを含むフェムト秒レーザ51を用い、分岐器52を介してファイバ53及びファイバ54から出力を取り出す。典型的には、中心波長1.55μmでパルス幅20fs、繰り返し周波数50MHzのものを用いたが、波長は1.06μm帯などでもよく、パルス幅、繰り返し周波数はこれらの値に限らない。また、出力段のファイバ53、54は、最終段の高次ソリトン圧縮のための高非線形ファイバや、テラヘルツ発生器及び検出器までに至る光学素子等による分散を補償するためのプリチャープを行う分散ファイバを含んでいてもよい。これらは偏波保持ファイバであることが望ましい。
【0026】
テラヘルツ波発生側のファイバ53からの出力は、前述した本発明によるチェレンコフ放射型素子50の導波路に結合させる。その際、ファイバ先端にセルフォックレンズを集積化させたり、先端を加工したピッグテール型としたりして、出力が素子50の導波路の開口数以下になる様に構成して結合効率を上げることが望ましい。勿論、レンズ(不図示)を用いて空間結合にしてもよい。これらの場合に、それぞれの端部に無反射コーティングを施せば、フレネルロスの低減、不要な干渉ノイズの低減につながる。若しくは、ファイバ53と素子50の導波路のNA及びモードフィールド径が近くなる様に設計すれば、突き当てによる直接結合(バットカップリング)として接着してもよい。この場合は、接着剤を適切に選ぶことで、反射による悪影響を低減することができる。なお、前段のファイバ53やファイバレーザ51で、偏波保持でないファイバ部分が含まれる場合、インライン型の偏波コントローラによりチェレンコフ放射型素子50への入射光の偏波を安定化させることが望ましい。ただし、励起光源はファイバレーザに限るものではなく、その場合には偏波の安定化などのための対策は軽減される。
【0027】
発生した電磁波は、図5(a)に示した周知のTHz-TDS法による構成によって検出される。すなわち、放物面鏡56aによって平行ビームにしてビームスプリッタ55で分岐し、一方は、放物面鏡56bを介してサンプルに照射する。サンプルから反射された電磁波は放物面鏡56cで集光され、光伝導素子による検出器58に到達し受信される。光伝導素子は、典型的には低温成長GaAsにダイポールアンテナを形成したものを用い、光源51が1.55μmであれば、不図示のSHG結晶を用いて倍波を生成して検出器58のプローブ光とする。このとき、パルス形状を維持するために、0.1mm程度の厚さのPPLN(周期的極性反転リチウムナイオベイト)を用いることが望ましい。光源51が1μm帯の場合には、InGaAs単層或いはMQWで構成した光伝導素子の検出器58において、倍波を生成することなく、基本波をプローブ光に利用することが可能である。本装置では、信号取得部61が、検出器58からの検出信号を増幅器63介して取得する。そして、データ処理・出力部62では、PCなどを用いて遅延部である光学遅延器57を移動させながら電磁波信号波形を取得する様になっている。遅延部は、発生手段である素子50における電磁波発生時と検出手段である検出器58における電磁波検出時との間の遅延時間を調整できれば、どの様なものでもよい。以上に述べた様に、本装置は、電磁波を発生するための本発明の電磁波発生素子を含む発生手段と、発生手段から放射された電磁波を検出するための検出手段と、遅延部を備える。そして、この装置は、検出手段が、発生手段から放射されサンプルで反射されて来た電磁波を検出し、サンプルからの反射光を分析することでサンプルの内部構造をイメージングするトモグラフィ装置として構成されている。
【0028】
図5(a)に図示の系では、測定対象であるサンプルからの反射波と照射電磁波は同軸であり、ビームスプリッタ55の存在で電磁波のパワーは半減する。よって、図5(b)の様にミラー56の数を増やして非同軸の構成にし、サンプルへの入射角が90度でなくなるものの、電磁波のパワーを増やす様にしてもよい。
【0029】
本装置を用いて、サンプルの内部に材料の不連続部があれば、取得する信号において、不連続部に相当する時間位置に反射エコーパルスが現れ、サンプルを1次元でスキャンすれば断層像が得られ、2次元スキャンすれば3次元像を得ることができる。非線形光学結晶を用いた電磁波発生素子50で、上記の如く構成したことで、指向性が略単一となりその分、アンテナ利得も向上する。結果としてS/N比を向上させられる。従って、従来のものと比較して、より微小な信号でも検出可能となり、例えばトモグラフィではサンプルの深さ方向の浸透厚さを増大することができる。また、モノパルスで300fs以下の比較的細いテラヘルツパルスを得ることができるので、奥行き分解能を向上させられる。更に、ファイバを用いた励起レーザを照射手段とできるので、装置の小型、低コスト化が可能となる。
【0030】
(実施形態6)
これまでの実施形態では、電磁波発生素子60の導波路の終端は、そこから出る光がノイズ源にならない様に、粗面にするなどによって光を外部に取り出したりしている。これに対して、終端部から出射される光を制御するための構造が図6である。
【0031】
図6(a)は終端部にコーティング610を施した素子60例を示しており、例えば、光減衰させるためのコーティングとしてはブラックポリエチレンフィルムを用いることができる。この際、素子の終端から発生する電磁波の発生に影響を与えない様に、コーティング610の厚さは材料中の電磁波の等価波長の十分の一程度以下、つまり例えば数μm以下程度にすると望ましい。波長の1/10のサイズの構造体は一般的にはその波長の電磁波に対して反射、散乱、屈折などの影響が無視できるとみなされる。このコーティングとしては、光に対するARコートやHRコートとした例も考えられるし、放射される電磁波を制御するコーティングであってもよい。例えば、Geフィルムは、光を遮断しつつ、テラヘルツ波の電磁波を制御するコーティングにすることができる。
【0032】
図6(b)は斜めカット620を行った例を示しており、例えば、光導波路と空気の屈折角、誘電体と空気の屈折角の違いを利用して光と電磁波を分散させることができる。この際、放射される電磁波がP偏波であれば、カット面620の法線からの屈折角がブリュースター角θB=tan-1(√εeff/1)を構成するようなカットを選択することができる。これにより、ARコートよりも広い帯域に渡ってフレネル損失を低減できる。
【0033】
(実施形態7)
これまでの実施形態に対して、実施形態7では、終端部にARコーティングなどの処理を施して、終端部から出射される光をプローブ光として再利用する。すなわち、本実施形態では、電磁波発生素子70の導波路終端部からの光を、放物面鏡の穴79によって光軸を分離し、検出手段へのプローブ光として利用する。放物面鏡の穴79の径を最小化にするためには、光ビーム径に対応する様な不図示の小さなレンズを用いてもよい。遅延部77は、電磁波発生素子70の導波路への光の到達時間と検出手段へのプローブ光の到達時間との間の遅延時間を調整する。
【0034】
図7は、図5(a)と同様にTHz-TDS方式のトモグラフィ装置を示す図であって、電気システム部は省略してある。図5(a)の実施形態と異なる点は、ファイバ分岐部を備えず、ファイバを含む励起レーザ71の出力を全て電磁波発生素子70に入射していることである。電磁波発生素子70から発生したテラヘルツ波は、実施形態5と同様に放物面鏡、ハーフミラー75を通してサンプルに照射される。サンプルからの反射光はテラヘルツ検出部78に入射し、信号取得が行われる。一方、電磁波発生素子70を伝搬したレーザ光の一部は、終端より再び出射し、放物面鏡の穴79、遅延部77を通して検出部78のプローブ光として利用される。この様な形態にした場合、励起レーザ光の分岐部を必要としないので構成点数を減らすことができると共に、効率良く励起レーザ71のパワーを利用することができる。励起用のレーザ光源71としては、フェムト秒レーザ光に限ることはない。Nd:YAGレーザ励起のKTP-OPO(Optical-Parametric-Oscillator)光源(これは二波長の光を出力する)や、二台の波長可変レーザダイオードを用いることもできる。波長可変によって差周波の周波数を変化させることができるため、放射されるテラヘルツ波の周波数変調をすることもできる。
【0035】
(実施形態8)
実施形態8に係る電磁波検出素子について、図10を用いて説明する。図10(a)は、本実施形態に係る電磁波検出素子を表す上面図である。図10(b)は、立面図である。本実施形態は、実施形態1と同様に、電気光学結晶で構成された部分光導波路101、104、107とこれらを接続する屈曲部103、106を備えて構成され、逆過程により電磁波を検出する例を示すものである。ここで用いる一次電気光学効果のための電気光学結晶は、二次の非線形性を持つものであり、一般に実用的な電気光学結晶と二次の非線形性を持つ非線形光学結晶はほぼ等価である。
【0036】
実施形態1では、図10の左方向から光導波路の入射端へ励起光を導入すると同図の右方向に電磁波(例えばテラヘルツ波)を放射する。本実施形態では、その逆過程により電磁波(例えばテラヘルツ波)を検出する。すなわち、同図の右方向から電磁波(例えばテラヘルツ波)を入射し、且つ同図の右方向から光導波路の入射端へプローブ光を導入すると、プローブ光が変調される。
【0037】
光伝播状態検出手段1010はプローブ光の伝播状態を検出するためのもので、一例としては、電気光学結晶における一次のポッケルス効果による偏光状態を、外部の偏光素子1001および光検出素子1002、1003によって検出する。具体的には、光導波路の出射端からのプローブ光をウォラストンプリズム1001で偏光成分に応じて分離し、二つの光検出器1002、1003の差動増幅により、S/N比を向上させて検出することができる。こうした本実施形態の構成を用いることによって、電磁波の電界振幅を検出することができる。尚、電磁波(例えばテラヘルツ波)が入射されていないときの自然複屈折の補償のためにλ/4板などの位相補償板(不図示)を出射端と偏光素子1001との間に追加してもよい。さらには、こうした光伝播状態検出手段1010を光導波路上に集積してもよい。
【0038】
ここでは、電磁波(例えばテラヘルツ波)の検出の仕方としては、結合した電磁波による一次電気光学効果で光の偏光状態が変化するのを検出する方式について述べた。しかし、これに限ることはなく、光の伝播状態の変化として、導波路を伝播する光の位相及び強度変化を検出する方式や、光導波路を伝播する光の周波数と結合した電磁波の周波数の差周波の光信号を検出する、光のビート信号を検出する方式も考えられる。その一例を示す。
【0039】
本実施形態は、第一の電磁波(EM−wave1、あるいはEM1)を検出しつつ、第二の電磁波(EM−wave2、あるいはEM2)の発生する素子でもある。ここで第一の電磁波と第二の電磁波のスペクトラムνEM1、νEM2は同じものでもよいし、異なるものであってもよい。いずれにせよ本実施形態では、図11(a)、(b)のように第一の電磁波と第二の電磁波の波面が略一致する領域がつくられるため、光導波路を伝播するプローブ光にνEM1-νEM2の周波数成分を重畳させることができる。この際、光導波路における二次の非線形効果より、プローブ光にこうした成分がミキシングされる。例えば、2レーザ光による周波数ν1、ν2のプローブ光に、こうした成分がミキシングされる様子を図11(c)に示す。この場合、ν1の側波帯には、ν1±(νEM1-νEM2)の成分1102、1104、ν2の側波帯には、ν2±(νEM1-νEM2)の成分1101、1103が出現する。したがって、光スペクトラムアナライザなどによってν1、ν2とその側波帯を観測することによって、第一の電磁波を検出することが可能である。さらには、光導波路における一次の非線形効果より、第二の電磁波は第一の電磁波によって変調されるため、第二の電磁波を観測することによって第一の電磁波を検出することも可能である。
【0040】
また、本検出素子を用いて、これまでの実施形態で説明したようなTHz-TDS装置およびトモグラフィ装置を構築することができる。その際の発生素子は、本発明のようなチェレンコフ型の位相整合方式を使用した素子でもよいし、従来の光伝導素子等を用いた発生素子など、何でもよい。
【0041】
(実施例1)
実施形態1に対応するより具体的な実施例1を説明する。本実施例に係る電磁波発生素子について、図8を用いて説明する。図8(a)は、本実施例に係る電磁波発生素子を表す上面図である。図8(b)は、立面図である。
【0042】
本実施例は、ZnTe/CdZnTeによる部分リッジ導波路801、804、807と、これらを接続する屈曲部803、806を備え、図8(a)における菱形を構成する。部分リッジ導波路804の光の伝播経路に沿った長さは例えば200μm、屈曲部806の曲げ半径は比較的損失の小さい20μmを選択するが、もちろんこれに限ることはない。本実施例のような場合、屈曲部の影響を除けば基本的にはメインローブ811の半値角(図示の指向性における最大パワーの半分のパワーの部分が張る角度)は光導波路の長さに依らない。屈曲部の影響を低減し半値角を鋭くするためには曲げ半径に比べて光導波路の長さを大きくすればよく、これらは設計事項である。こうした本実施例は、半絶縁性GaAs基板80上の半導体ヘテロ構造ZnTe(8040)/CdZnTe(8041)によって構成される。非線形光学結晶ZnTeの二次の非線形係数d14は100pm/V程度と比較的大きく、1.06μm帯や800nm帯においても好ましい。本実施例では、このような波長帯の光励起に対応し、ZnTe(高屈折率層)の屈折率はng=2.8を用いる。光導波路を挟み込む図8(b)における誘電体81は誘電体80と同じく、半絶縁性GaAs基板を用いる。また、誘電体80、81に挟まれた光導波路以外の領域は、低誘電率、低誘電損失である誘電体BCB809を充填する。尚、このCdZnTe層(低屈折率層)8041の厚さは、光が伝播する際のクラッドとして機能するのに十分厚く、かつGaAs層80、81との間でテラヘルツ波の多重反射や損失の影響が無視できる程度に薄いことが望ましい。前者に関しては、ZnTe層8040をコアとしCdZnTe層8041をクラッドとした導波路において、GaAs層80、81との界面での光強度がコア領域の光強度の1/e2(eは自然対数の底)以下になるような厚さ以上であることが望ましい。後者については、放射する最も周波数の高いさ最大周波数のテラヘルツ波のCdZnTe層8041における等価波長λeqに対して、1/10程度の厚さ以下になっていることが望ましい。
【0043】
θcは、ZnTe8040の屈折率ng=2.8と、半絶縁性GaAs基板80、81のテラヘルツ波に対する比誘電率ε80=ε81=12.9とを利用して、次式のように設計される。
θc=38.8deg=cos-1(ng/√εeff)
正確には1.06μm帯の屈折率ng=2.77を用いると39.5deg、800nm帯の屈折率ng=2.85を用いると37.5degとの設計になる。しかし、実際には、有限な幅のリッジ導波路における放射パターン802、805、808の有限な半値角(図示の放射パターンにおける最大パワーの半分のパワーの部分が張る角度)によって、有効桁が二桁もあれば十分な設計となる。本実施例も実施形態1と同様で、方向の揃っているテラヘルツ放射は強め合い、素子全体の指向性におけるメインローブ811に寄与する。完全に相殺できない分はサイドローブ812となる。ゆえに、素子全体としては略単一の指向性を持ち、テラヘルツ波を同図の右方向に放射することができる。
【0044】
また、別の設計例として、基板80、81の厚さを60μmまで薄くして、√εeffを小さくしてもよい。電磁波の空間的な広がりと基板厚さとの大小関係によって生じる低域のカットオフや分散によってチェレンコフ放射の帯域が狭くなるが、θcが小さくなることで屈曲部806における曲げ損失を低減することができる。ここでは、例えば、1THzの電磁波モードを計算した例を示す。図8(b)に、同時に、電磁波の電界の二乗の分布の計算結果も描画している。この場合、θcは、ZnTeの屈折率ng=2.8と、上記構造において計算された1THz電磁波モードの等価屈折率neq=3.04とを利用して、次式のように設計される。
θc=23deg=cos-1(ng/neq)
ここで、実効誘電率εeffは等価屈折率neqの二乗とみなしてよく、実効誘電率は、当業者には良く知られたこのような計算からも求められる。この設計例は、二つの異なる発振周波数ν1、ν2を持つレーザ光を入射させ、差周波ν1-ν2=1THzのような単色のテラヘルツ波を発生させる際に有効である。
【0045】
こうした構造は、厚さ525μmの半絶縁性GaAs基板80上に分子線エピタキシー法(MBE)などを用いて半導体へテロ構造ZnTe/CdZnTeを形成してから作製する。ただし、各部分導波路の図8(a)の面内に垂直な方向の非線形係数d14がゼロにならない様に面方位は、例えば、(110)や(111)を用いる。結晶成長は、基板側から、厚さ2μmのCdZnTe8041、厚さ2μmのZnTe8040、厚さ2μmのCdZnTe8041の順に行い、ステップインデクス(SI)型の光導波路をエピタキシャル成長する。その後、SiO2などをマスクにしてエッチングによって幅5μmの部分リッジ導波路804を形成する。この幅は狭いほど理想的である。シングルモード伝播を実現するような幅の程度が好ましく、幅を狭くするほど上記放射パターンの半値角を小さくすることができる。エッチングはブロムメタノール溶液などによるウェットエッチングあるいはドライエッチングを用いてもよい。部分リッジ導波路以外の領域にはBCBを塗布するなどして平坦化し、最後に、半絶縁性GaAs基板81を貼り付けて本実施例の構造は完成する。基板80、81を薄くする構造は、研磨などを用いればよい。
【0046】
以上、本発明の好ましい実施形態や実施例について説明したが、本発明はこれらの実施形態や実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0047】
10、11・・・誘電体、101、104、107・・・部分導波路、102、105、108・・・部分導波路の放射パターン、111・・・素子全体の放射パターンのメインローブ、112・・・素子全体の放射パターンのサイドローブ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミリ波帯からテラヘルツ波帯まで(30GHz〜30THz)の周波数領域の電磁波成分を含むテラヘルツ波などの電磁波を発生する電磁波発生素子、テラヘルツ波などの電磁波を検出する電磁波検出素子、及びそれを用いた時間領域分光装置に関する。特には、レーザ光照射により前記周波数帯のフーリエ成分を含む電磁波の発生(検出)を行う電気光学結晶を含む発生素子(検出素子)、及びそれを用いたテラヘルツ時間領域分光法(THz-TDS)によるトモグラフィ装置などに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テラヘルツ波を用いた非破壊なセンシング技術が開発されている。この周波数帯の電磁波の応用分野として、X線装置に代わる安全な透視検査装置を構成してイメージングを行う技術がある。また、物質内部の吸収スペクトルや複素誘電率を求めて分子の結合状態などの物性を調べる分光技術、キャリア濃度や移動度、導電率などの物性を調べる計測技術、生体分子の解析技術などが開発されている。テラヘルツ波の発生方法としては、非線形光学結晶を用いる方法が広く用いられている。非線形光学結晶の代表的なものとしては、LiNbOx(以後、LNとも言う)、LiTaOx、NbTaOx、KTP、DAST、ZnTe、GaSe、GaP、CdTeなどがある。テラヘルツ波の発生には二次の非線形現象を用いている。方式としては、周波数差を持つ2レーザ光の入射による差周波発生(Difference-Frequency-Generation: DFG)が知られている。また、光パラメトリック過程による単色テラヘルツ波発生、フェムト秒パルスレーザ光の照射で光整流によりテラヘルツパルスを発生する方式が知られている。
【0003】
この様な非線形光学結晶からテラヘルツ波を発生する過程として、電気光学的チェレンコフ放射が最近注目されている。これは、図9に示す様に、励起源であるレーザ光91の伝搬群速度が、発生するテラヘルツ波の伝播位相速度よりも速い場合に、衝撃波の様にテラヘルツ波92が円錐状に放出される現象である。光とテラヘルツ波の媒質(非線形光学結晶)中の屈折率の比により、放射角θcは次式で決まる。
cosθc=vTHz/vg=ng/nTHz
ここで、vg、ngは夫々励起光の群速度、群屈折率、vTHz、nTHzは夫々テラヘルツ波の位相速度、屈折率を表す。これまでに、このチェレンコフ放射現象を用いて、波面を傾斜させたフェムト秒レーザ光をLNに入射させ光整流により高強度のテラヘルツパルスを発生させるという報告がある(非特許文献1参照)。また、波面傾斜の必要をなくすために、発生するテラヘルツ波の波長よりも十分小さい厚さを持つスラブ導波路を用いて、DFG方式により単色テラヘルツ波を発生させるという報告がある(非特許文献2参照)。
【0004】
この様な非特許文献の例は、進行波励起によるテラヘルツ波発生であるため、異なる波源から発生したテラヘルツ波が放射方向で位相整合して強め合うことで取り出し効率を向上させるという提案に係る。この放射方式の特徴としては、非線形光学結晶を用いたものでは比較的高効率にできて高強度のテラヘルツ波を発生できる事、結晶特有のフォノン共鳴によるテラヘルツ領域の吸収を高周波側に選ぶことでテラヘルツ波の帯域を広くできる事などが挙げられる。これらの技術は、光伝導素子によるテラヘルツ発生に比べて発生帯域を広くでき、光整流を用いるテラヘルツパルス発生の場合にはパルス幅を狭くでき、例えばテラヘルツ時間領域分光装置に利用する場合に装置性能を向上できることが期待されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J.Opt.Soc.Am.B,vol.25,pp.B6−B19,2008.
【非特許文献2】Opt.Express,vol.17,pp.6676−6681,2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のチェレンコフ型テラヘルツ波発生素子は、光導波路を含む面内において二方向の指向性を有するものであり、使い易いとは言い難かった。本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、略単一の指向性の電磁波発生素子などを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
光源からの光を伝播させる非線形光学結晶を含み前記光より波長の長い電磁波を発生する本発明の一側面としての電磁波発生素子は、第一の誘電体及び第二の誘電体と、それぞれ前記誘電体の間に挟まれ非線形光学結晶を有する複数の部分導波路から成る光導波路を備える。そして、非線形光学結晶の光に対する屈折率をn、誘電体と部分導波路との電磁波に対する実効的な比誘電率をεeffとして、θc=cos-1(n/√εeff)と定義するとき、複数の部分導波路は、これらにおける光の伝播方向のなす角が2θcと略一致する様に構成される。また、光源からの光を伝播させる非線形光学結晶を含み前記光より波長の長い電磁波を検出する本発明の他の一側面としての電磁波検出素子も、同様な構成を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一側面としての電磁波発生素子によれば、光の伝播方向のなす角が2θcと略一致する様に構成される複数の部分導波路から成る光導波路を設けることで、合成した電磁波のメインローブが大きな略単一の指向性を達成することができる。本発明のその他の側面については、以下で説明する実施の形態で明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態1に係る電磁波発生素子の構成を示す図。
【図2】本発明の実施形態2に係る電磁波発生素子の構成を示す図。
【図3】本発明の実施形態3に係る電磁波発生素子の構成を示す図。
【図4】本発明の実施形態4に係る電磁波発生素子の構成を示す上面図。
【図5】本発明の実施形態5に係るテラヘルツ時間領域分光装置の構成を示す図。
【図6】本発明の実施形態6に係る電磁波発生素子の構成を示す立面図。
【図7】本発明の実施形態7に係るテラヘルツ時間領域分光装置の構成を示す図。
【図8】本発明の実施例1に係る電磁波発生素子の構成を示す図。
【図9】電気光学的チェレンコフ放射の原理を示す図。
【図10】本発明の実施形態8に係る電磁波検出素子の構成を示す図。
【図11】本発明の実施形態8に係る電磁波検出素子の検出方式の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一側面としての電磁波発生素子及び他の一側面としての電磁波検出素子は、光の伝播方向のなす角が上記2θcと略一致する様に構成される部分導波路の組を含む複数の部分導波路から成る光導波路を設けることを特徴とする。こうした考え方に基づき、本発明の電磁波発生素子、電磁波検出素子は、上述した課題を解決するための手段のところで述べた様な基本的な構成を有する。
【0011】
以下、図を用いて本発明の実施形態ないし実施例を説明する。
(実施形態1)
実施形態1に係る電磁波発生素子について、図1を用いて説明する。図1(a)は、本実施形態に係る電磁波発生素子を表す上面図である。図1(b)は、立面図である。本実施形態は、非線形光学結晶で構成された部分光導波路と、これらを接続する屈曲部とを備えて構成される。本実施形態において、部分光導波路101は、光が伝播すると、円錐状に指向性を持つ。図1(a)の面内では二方向に指向性102が現れる。電磁波がチェレンコフ放射される方向は、部分光導波路101における光の伝播方向から、後述するθcだけの角度をなす。部分光導波路104は、部分光導波路101とは略2θcだけの角度をなす。やはり、光が伝播すると、円錐状に指向性を持ち、面内では二方向に指向性105を持つ。こちらも、電磁波がチェレンコフ放射される方向は、部分光導波路104における光の伝播方向からθcだけの角度をなす。屈曲部103は、部分光導波路101を伝播する光を略2θcだけ方向を変え、部分光導波路107へ導く。部分光導波路107は、部分光導波路101とは略2θcだけの角度をなし、やはり、光が伝播すると、面内では二方向に指向性108を持つ。こちらも、電磁波がチェレンコフ放射される方向は、光導波路107における光の伝播方向からθcだけの角度をなす。屈曲部106についても同様である。
【0012】
このような構造において、各部分導波路の互いに方向の揃った放射は強め合い、素子全体の指向性におけるメインローブ111に寄与する。方向の揃っていない放射は弱め合い、完全に相殺できない分はサイドローブ112となる。ゆえに、素子全体としては略単一の指向性を持ち、同図の左方向から導波路の入射端へ励起光を導入すると、同図の右方向に電磁波を放射する。以上が、本発明の電磁波発生素子がメインローブの大きな略単一の指向性を有するしくみである。本実施形態では、互いに略2θcの角度をなす部分導波路が菱形を構成することによって単一の指向性を有する構造が達成される。
【0013】
さらに、チェレンコフ放射を達成するため、光導波路を光が伝播する速度vgと、テラヘルツ波などの放射される電磁波の位相速度vTHzの関係が、vg>vTHzを満たす必要がある。これは、cos-1(vTHz/vg)が実数の解を持たなければならない要請による。本発明では、テラヘルツ波や遠赤外光、中赤外光など、光より波長の長い電磁波をチェレンコフ放射させる。したがって、放射される電磁波は光と比較すると空間的な広がりがある。こうした空間的な広がりの違いを利用して、電磁波の位相速度が遅くなる様に、本実施形態では図1(b)の様に光導波路を上下でサンドイッチする第一の誘電体と第二の誘電体10、11を備える。このとき、電磁波は、誘電体10、11の誘電率を強く感じ、これらの実効的な比誘電率εeffによってθcが決められる。つまり、次式で表される。
cosθc=ng/√εeff(すなわち、θc=cos-1(ng/√εeff))
【0014】
図1(b)の光導波路の厚さが薄い極限において、実効的な比誘電率εeffは、近似的には誘電体10、11の誘電率ε10、ε11の平均で表してよく、次式で表される。
εeff≒(ε10+ε11)/2
誘電体10、11における誘電率の偏りは、図1(b)の放射方向を若干上下させる。これは、誘電体11の誘電率が誘電体10より大きいとき、電磁波モードの分布が誘電体11に偏るためである。ここでは、第一の誘電体10は非線形光学結晶を支持する基板であって、比誘電率が基板の比誘電率より大きい第二の誘電体11が選ばれる。しかしながら、誘電体10の誘電損失が誘電体11より大きい場合、この性質を利用して誘電損失を避けることができる。もちろん、誘電損失が同程度なら誘電体10、11は同じ誘電体材料10を用いてもよく、この場合はεeff=ε10である。光導波路が典型的なシングルモード導波路となる様に選択されたときは、光導波路の寸法は高々数μm程度の厚さとなる。テラヘルツ波の波長はこれと比較しても十分に大きいことから、テラヘルツ放射の際にこの近似式がよく成り立つ。
【0015】
誘電体材料10の選択例としては、背景技術のところで述べた非線形光学結晶LNの近赤外領域における屈折率(群屈折率ng)は2程度である。したがって、誘電率(比誘電率)が4程度かそれ以上の誘電体材料を用いればcos-1(ng/√εeff)が実数解を持ち、チェレンコフ放射が達成される。テラヘルツ波の場合、誘電体材料には、例えば、SiやGeを用いてもよいし、半絶縁性半導体基板などを用いてもよい。
【0016】
誘電体10、11に挟まれた光導波路以外の不図示である領域は、例えば、誘電体を充填したり、空気であったりしてもよい。光閉じ込めの行うために、光導波路を構成する非線形光学結晶より低い屈折率の材料であればよい。例えば、LNより屈折率の低い、屈折率1.5程度のBCB(ベンゾシクロブテン)やポリイミドを用いてもよい。
【0017】
また、これまでは誘電体10、11の厚さが厚い極限を考えていたが、次の条件の下に、ある限度までは薄くしてもよい。すなわち、厚さが薄くなって、放射される電磁波の空間的な広がりが誘電体10、11の厚さより大きくなると、外側の空気を感じて有効誘電率(実効的な比誘電率)εeffが小さくなる。このとき、√εeffがngより小さくなりすぎると、cos-1(ng/√εeff)が実数解を持たなくなり、チェレンコフ放射が達成されなくなる。よって、こうしたことが起こらないという条件の下に、上記厚さを薄くしてもよい。ここで、放射される電磁波の空間的な広がりとは、誘電体材料10内の電磁波の等価波長(λ0/√ε10)の程度と考えればよい(λ0は真空中の電磁波の波長、ε10は誘電体材料の比誘電率)。
【0018】
(実施形態2)
実施形態2に係る電磁波発生素子について、図2を用いて説明する。図2(a)は、本実施形態に係る電磁波発生素子を表す上面図である。図2(b)は、立面図である。本実施形態の場合、部分光導波路は屈曲部203、206によって一本に接続されている。したがって、外部からの光の入射端が一箇所であり、光結合が容易である。その他は、第一の実施形態と構造上変わりなく、図2(a)の様に部分光導波路204は、部分光導波路201とは略2θcだけの角度をなし、部分光導波路207は、部分光導波路204とは略2θcだけの角度をなす。各部分光導波路において、光が伝播すると、円錐状に指向性202、205、208を持ち、方向の揃っている放射は強め合い、素子全体の指向性におけるメインローブ211に寄与する。ゆえに、素子全体としては略単一の指向性を持つ。完全に相殺できない分はサイドローブ212となる。本実施形態では、略2θcの角度をなす部分導波路が波形を構成することによって略単一の指向性を有する構造が達成される。本実施形態でも、図2(b)の様に光導波路を上下でサンドイッチする誘電体20、21を備える。
【0019】
本実施形態や実施形態1では、同構造を左右方向に延長することもできるため、光導波路を伝播する光と光導波路を構成する非線形光学結晶との相互作用長を容易に延長することができる。励起光を電磁波(RF)に変換する光−RF変換効率が上がるため、光−RF変換効率を必要とする装置、アプリケーションにとって望ましい実施形態となる。
【0020】
(実施形態3)
実施形態3に係る電磁波発生素子について、図3を用いて説明する。図3(a)は、本実施形態に係る電磁波発生素子を表す上面図である。図3(b)は、立面図である。本実施形態の場合、屈曲部がないため、曲げによる光損失が生じないことが利点である。その他は、実施形態1と構造上変わりなく、図3(a)の様に部分光導波路303は、部分光導波路301とは略2θcだけの角度をなす。各部分光導波路において、光が伝播すると、円錐状に指向性302、304を持ち、方向の揃っている放射は強め合い、素子全体の指向性におけるメインローブ311に寄与する。ゆえに、素子全体としては略単一の指向性を持ち、電磁波を同図の右方向に放射する。完全に相殺できない分はサイドローブ312となる。本実施形態は、略2θcの角度をなす部分導波路がV形状を構成することによって略単一の指向性を有する構造が達成される。本実施形態でも、図3(b)の様に光導波路を上下でサンドイッチする誘電体30、31を備える。
【0021】
本実施形態は、光と電磁波がコリニアではないため、これらの分離が容易である。光とRFの分離を必要とするような装置、アプリケーションにとっては、望ましい実施形態となる。
【0022】
(実施形態4)
これまでの実施形態において、電磁波発生素子の導波路の入射端が二箇所ある場合は位相の揃った二つの光ビーム、または、スポットの大きい一つの光ビームで二箇所を同時に励起するなどの必要があった。これに対して、導波路の入射端が一箇所で、光導波路上にY分岐400を備えた電磁波発生素子が図4の素子である。Y分岐400は、光の波長や偏光方向に無依存であり、シングルモード/マルチモード光導波路で利用できる分岐としてよく知られている。もちろん、マッハツェンダー型などを用いてもよい。これを用いれば、さらに、菱形の中に複数の小さな菱形の光導波路を備えるような構造や、V型の中に複数の小さなV型の光導波路を備えるような構造も実現することができる。
【0023】
また、これまでに述べてはいなかったが、チェレンコフ放射は、非線形光学結晶401、402の二次の非線形係数(d係数)に由来する。したがって、電磁波の指向性を合成するためには、各結晶におけるd係数の方向に注意する必要がある。さらに正確には、d係数はテンソルであり、例えばd係数dil(エル)におけるiの指し示す方向について注意する必要がある。一つの光ビームで非線形光学結晶401、402を励起するような本実施形態では、単純には、全ての非線形光学結晶におけるd係数が、図4の面に垂直な方向に向いていると好ましい。
【0024】
これまでに述べた電磁波発生素子の光励起には、短パルスレーザ光を用いてもよい。この場合、光整流により光よりも波長の長い広帯域な電磁パルスを発生させることができる。また、光パラメトリック過程による単色テラヘルツ波発生を用いてもよい。もちろん、二つの波長の異なるレーザ光を入射させ、差周波に相当する、光よりも波長の長い単一周波数の電磁波を発生させることもできる。ここでは、周波数の異なる2レーザ光を入射した場合、その2レーザ光の差周波数に応じた周期を有する非線形分極が生じる。また、非線形光学結晶では、レーザ光の入射によりエネルギー状態が励起し、元のエネルギー状態に戻る際にエネルギー波が放射される。非線形光学結晶が非線形分極している場合、その分極の周波数に対応するエネルギー波が放射され、テラヘルツ波の周波数を有して分極しているとき、非線形光学結晶からテラヘルツ波が放射される。なお、本実施形態や実施形態3において、隔たった二つの部分導波路に二つの光ビームを同時に入射させれば、導波路の入射端と終端とを逆にすることもできる。また、上記実施形態の構造は、可能である範囲で、組み合わせることもできる。例えば、実施形態1の左半分の構造に本実施形態の構造を適用して両者を組み合わせることもできる。
【0025】
(実施形態5)
上述の素子を電磁波発生素子として用いて構成したテラヘルツ時間領域分光システム(THz-TDS)によるトモグラフィックイメージング装置の例を図5(a)に示す。ここでは、励起光源として光ファイバを含むフェムト秒レーザ51を用い、分岐器52を介してファイバ53及びファイバ54から出力を取り出す。典型的には、中心波長1.55μmでパルス幅20fs、繰り返し周波数50MHzのものを用いたが、波長は1.06μm帯などでもよく、パルス幅、繰り返し周波数はこれらの値に限らない。また、出力段のファイバ53、54は、最終段の高次ソリトン圧縮のための高非線形ファイバや、テラヘルツ発生器及び検出器までに至る光学素子等による分散を補償するためのプリチャープを行う分散ファイバを含んでいてもよい。これらは偏波保持ファイバであることが望ましい。
【0026】
テラヘルツ波発生側のファイバ53からの出力は、前述した本発明によるチェレンコフ放射型素子50の導波路に結合させる。その際、ファイバ先端にセルフォックレンズを集積化させたり、先端を加工したピッグテール型としたりして、出力が素子50の導波路の開口数以下になる様に構成して結合効率を上げることが望ましい。勿論、レンズ(不図示)を用いて空間結合にしてもよい。これらの場合に、それぞれの端部に無反射コーティングを施せば、フレネルロスの低減、不要な干渉ノイズの低減につながる。若しくは、ファイバ53と素子50の導波路のNA及びモードフィールド径が近くなる様に設計すれば、突き当てによる直接結合(バットカップリング)として接着してもよい。この場合は、接着剤を適切に選ぶことで、反射による悪影響を低減することができる。なお、前段のファイバ53やファイバレーザ51で、偏波保持でないファイバ部分が含まれる場合、インライン型の偏波コントローラによりチェレンコフ放射型素子50への入射光の偏波を安定化させることが望ましい。ただし、励起光源はファイバレーザに限るものではなく、その場合には偏波の安定化などのための対策は軽減される。
【0027】
発生した電磁波は、図5(a)に示した周知のTHz-TDS法による構成によって検出される。すなわち、放物面鏡56aによって平行ビームにしてビームスプリッタ55で分岐し、一方は、放物面鏡56bを介してサンプルに照射する。サンプルから反射された電磁波は放物面鏡56cで集光され、光伝導素子による検出器58に到達し受信される。光伝導素子は、典型的には低温成長GaAsにダイポールアンテナを形成したものを用い、光源51が1.55μmであれば、不図示のSHG結晶を用いて倍波を生成して検出器58のプローブ光とする。このとき、パルス形状を維持するために、0.1mm程度の厚さのPPLN(周期的極性反転リチウムナイオベイト)を用いることが望ましい。光源51が1μm帯の場合には、InGaAs単層或いはMQWで構成した光伝導素子の検出器58において、倍波を生成することなく、基本波をプローブ光に利用することが可能である。本装置では、信号取得部61が、検出器58からの検出信号を増幅器63介して取得する。そして、データ処理・出力部62では、PCなどを用いて遅延部である光学遅延器57を移動させながら電磁波信号波形を取得する様になっている。遅延部は、発生手段である素子50における電磁波発生時と検出手段である検出器58における電磁波検出時との間の遅延時間を調整できれば、どの様なものでもよい。以上に述べた様に、本装置は、電磁波を発生するための本発明の電磁波発生素子を含む発生手段と、発生手段から放射された電磁波を検出するための検出手段と、遅延部を備える。そして、この装置は、検出手段が、発生手段から放射されサンプルで反射されて来た電磁波を検出し、サンプルからの反射光を分析することでサンプルの内部構造をイメージングするトモグラフィ装置として構成されている。
【0028】
図5(a)に図示の系では、測定対象であるサンプルからの反射波と照射電磁波は同軸であり、ビームスプリッタ55の存在で電磁波のパワーは半減する。よって、図5(b)の様にミラー56の数を増やして非同軸の構成にし、サンプルへの入射角が90度でなくなるものの、電磁波のパワーを増やす様にしてもよい。
【0029】
本装置を用いて、サンプルの内部に材料の不連続部があれば、取得する信号において、不連続部に相当する時間位置に反射エコーパルスが現れ、サンプルを1次元でスキャンすれば断層像が得られ、2次元スキャンすれば3次元像を得ることができる。非線形光学結晶を用いた電磁波発生素子50で、上記の如く構成したことで、指向性が略単一となりその分、アンテナ利得も向上する。結果としてS/N比を向上させられる。従って、従来のものと比較して、より微小な信号でも検出可能となり、例えばトモグラフィではサンプルの深さ方向の浸透厚さを増大することができる。また、モノパルスで300fs以下の比較的細いテラヘルツパルスを得ることができるので、奥行き分解能を向上させられる。更に、ファイバを用いた励起レーザを照射手段とできるので、装置の小型、低コスト化が可能となる。
【0030】
(実施形態6)
これまでの実施形態では、電磁波発生素子60の導波路の終端は、そこから出る光がノイズ源にならない様に、粗面にするなどによって光を外部に取り出したりしている。これに対して、終端部から出射される光を制御するための構造が図6である。
【0031】
図6(a)は終端部にコーティング610を施した素子60例を示しており、例えば、光減衰させるためのコーティングとしてはブラックポリエチレンフィルムを用いることができる。この際、素子の終端から発生する電磁波の発生に影響を与えない様に、コーティング610の厚さは材料中の電磁波の等価波長の十分の一程度以下、つまり例えば数μm以下程度にすると望ましい。波長の1/10のサイズの構造体は一般的にはその波長の電磁波に対して反射、散乱、屈折などの影響が無視できるとみなされる。このコーティングとしては、光に対するARコートやHRコートとした例も考えられるし、放射される電磁波を制御するコーティングであってもよい。例えば、Geフィルムは、光を遮断しつつ、テラヘルツ波の電磁波を制御するコーティングにすることができる。
【0032】
図6(b)は斜めカット620を行った例を示しており、例えば、光導波路と空気の屈折角、誘電体と空気の屈折角の違いを利用して光と電磁波を分散させることができる。この際、放射される電磁波がP偏波であれば、カット面620の法線からの屈折角がブリュースター角θB=tan-1(√εeff/1)を構成するようなカットを選択することができる。これにより、ARコートよりも広い帯域に渡ってフレネル損失を低減できる。
【0033】
(実施形態7)
これまでの実施形態に対して、実施形態7では、終端部にARコーティングなどの処理を施して、終端部から出射される光をプローブ光として再利用する。すなわち、本実施形態では、電磁波発生素子70の導波路終端部からの光を、放物面鏡の穴79によって光軸を分離し、検出手段へのプローブ光として利用する。放物面鏡の穴79の径を最小化にするためには、光ビーム径に対応する様な不図示の小さなレンズを用いてもよい。遅延部77は、電磁波発生素子70の導波路への光の到達時間と検出手段へのプローブ光の到達時間との間の遅延時間を調整する。
【0034】
図7は、図5(a)と同様にTHz-TDS方式のトモグラフィ装置を示す図であって、電気システム部は省略してある。図5(a)の実施形態と異なる点は、ファイバ分岐部を備えず、ファイバを含む励起レーザ71の出力を全て電磁波発生素子70に入射していることである。電磁波発生素子70から発生したテラヘルツ波は、実施形態5と同様に放物面鏡、ハーフミラー75を通してサンプルに照射される。サンプルからの反射光はテラヘルツ検出部78に入射し、信号取得が行われる。一方、電磁波発生素子70を伝搬したレーザ光の一部は、終端より再び出射し、放物面鏡の穴79、遅延部77を通して検出部78のプローブ光として利用される。この様な形態にした場合、励起レーザ光の分岐部を必要としないので構成点数を減らすことができると共に、効率良く励起レーザ71のパワーを利用することができる。励起用のレーザ光源71としては、フェムト秒レーザ光に限ることはない。Nd:YAGレーザ励起のKTP-OPO(Optical-Parametric-Oscillator)光源(これは二波長の光を出力する)や、二台の波長可変レーザダイオードを用いることもできる。波長可変によって差周波の周波数を変化させることができるため、放射されるテラヘルツ波の周波数変調をすることもできる。
【0035】
(実施形態8)
実施形態8に係る電磁波検出素子について、図10を用いて説明する。図10(a)は、本実施形態に係る電磁波検出素子を表す上面図である。図10(b)は、立面図である。本実施形態は、実施形態1と同様に、電気光学結晶で構成された部分光導波路101、104、107とこれらを接続する屈曲部103、106を備えて構成され、逆過程により電磁波を検出する例を示すものである。ここで用いる一次電気光学効果のための電気光学結晶は、二次の非線形性を持つものであり、一般に実用的な電気光学結晶と二次の非線形性を持つ非線形光学結晶はほぼ等価である。
【0036】
実施形態1では、図10の左方向から光導波路の入射端へ励起光を導入すると同図の右方向に電磁波(例えばテラヘルツ波)を放射する。本実施形態では、その逆過程により電磁波(例えばテラヘルツ波)を検出する。すなわち、同図の右方向から電磁波(例えばテラヘルツ波)を入射し、且つ同図の右方向から光導波路の入射端へプローブ光を導入すると、プローブ光が変調される。
【0037】
光伝播状態検出手段1010はプローブ光の伝播状態を検出するためのもので、一例としては、電気光学結晶における一次のポッケルス効果による偏光状態を、外部の偏光素子1001および光検出素子1002、1003によって検出する。具体的には、光導波路の出射端からのプローブ光をウォラストンプリズム1001で偏光成分に応じて分離し、二つの光検出器1002、1003の差動増幅により、S/N比を向上させて検出することができる。こうした本実施形態の構成を用いることによって、電磁波の電界振幅を検出することができる。尚、電磁波(例えばテラヘルツ波)が入射されていないときの自然複屈折の補償のためにλ/4板などの位相補償板(不図示)を出射端と偏光素子1001との間に追加してもよい。さらには、こうした光伝播状態検出手段1010を光導波路上に集積してもよい。
【0038】
ここでは、電磁波(例えばテラヘルツ波)の検出の仕方としては、結合した電磁波による一次電気光学効果で光の偏光状態が変化するのを検出する方式について述べた。しかし、これに限ることはなく、光の伝播状態の変化として、導波路を伝播する光の位相及び強度変化を検出する方式や、光導波路を伝播する光の周波数と結合した電磁波の周波数の差周波の光信号を検出する、光のビート信号を検出する方式も考えられる。その一例を示す。
【0039】
本実施形態は、第一の電磁波(EM−wave1、あるいはEM1)を検出しつつ、第二の電磁波(EM−wave2、あるいはEM2)の発生する素子でもある。ここで第一の電磁波と第二の電磁波のスペクトラムνEM1、νEM2は同じものでもよいし、異なるものであってもよい。いずれにせよ本実施形態では、図11(a)、(b)のように第一の電磁波と第二の電磁波の波面が略一致する領域がつくられるため、光導波路を伝播するプローブ光にνEM1-νEM2の周波数成分を重畳させることができる。この際、光導波路における二次の非線形効果より、プローブ光にこうした成分がミキシングされる。例えば、2レーザ光による周波数ν1、ν2のプローブ光に、こうした成分がミキシングされる様子を図11(c)に示す。この場合、ν1の側波帯には、ν1±(νEM1-νEM2)の成分1102、1104、ν2の側波帯には、ν2±(νEM1-νEM2)の成分1101、1103が出現する。したがって、光スペクトラムアナライザなどによってν1、ν2とその側波帯を観測することによって、第一の電磁波を検出することが可能である。さらには、光導波路における一次の非線形効果より、第二の電磁波は第一の電磁波によって変調されるため、第二の電磁波を観測することによって第一の電磁波を検出することも可能である。
【0040】
また、本検出素子を用いて、これまでの実施形態で説明したようなTHz-TDS装置およびトモグラフィ装置を構築することができる。その際の発生素子は、本発明のようなチェレンコフ型の位相整合方式を使用した素子でもよいし、従来の光伝導素子等を用いた発生素子など、何でもよい。
【0041】
(実施例1)
実施形態1に対応するより具体的な実施例1を説明する。本実施例に係る電磁波発生素子について、図8を用いて説明する。図8(a)は、本実施例に係る電磁波発生素子を表す上面図である。図8(b)は、立面図である。
【0042】
本実施例は、ZnTe/CdZnTeによる部分リッジ導波路801、804、807と、これらを接続する屈曲部803、806を備え、図8(a)における菱形を構成する。部分リッジ導波路804の光の伝播経路に沿った長さは例えば200μm、屈曲部806の曲げ半径は比較的損失の小さい20μmを選択するが、もちろんこれに限ることはない。本実施例のような場合、屈曲部の影響を除けば基本的にはメインローブ811の半値角(図示の指向性における最大パワーの半分のパワーの部分が張る角度)は光導波路の長さに依らない。屈曲部の影響を低減し半値角を鋭くするためには曲げ半径に比べて光導波路の長さを大きくすればよく、これらは設計事項である。こうした本実施例は、半絶縁性GaAs基板80上の半導体ヘテロ構造ZnTe(8040)/CdZnTe(8041)によって構成される。非線形光学結晶ZnTeの二次の非線形係数d14は100pm/V程度と比較的大きく、1.06μm帯や800nm帯においても好ましい。本実施例では、このような波長帯の光励起に対応し、ZnTe(高屈折率層)の屈折率はng=2.8を用いる。光導波路を挟み込む図8(b)における誘電体81は誘電体80と同じく、半絶縁性GaAs基板を用いる。また、誘電体80、81に挟まれた光導波路以外の領域は、低誘電率、低誘電損失である誘電体BCB809を充填する。尚、このCdZnTe層(低屈折率層)8041の厚さは、光が伝播する際のクラッドとして機能するのに十分厚く、かつGaAs層80、81との間でテラヘルツ波の多重反射や損失の影響が無視できる程度に薄いことが望ましい。前者に関しては、ZnTe層8040をコアとしCdZnTe層8041をクラッドとした導波路において、GaAs層80、81との界面での光強度がコア領域の光強度の1/e2(eは自然対数の底)以下になるような厚さ以上であることが望ましい。後者については、放射する最も周波数の高いさ最大周波数のテラヘルツ波のCdZnTe層8041における等価波長λeqに対して、1/10程度の厚さ以下になっていることが望ましい。
【0043】
θcは、ZnTe8040の屈折率ng=2.8と、半絶縁性GaAs基板80、81のテラヘルツ波に対する比誘電率ε80=ε81=12.9とを利用して、次式のように設計される。
θc=38.8deg=cos-1(ng/√εeff)
正確には1.06μm帯の屈折率ng=2.77を用いると39.5deg、800nm帯の屈折率ng=2.85を用いると37.5degとの設計になる。しかし、実際には、有限な幅のリッジ導波路における放射パターン802、805、808の有限な半値角(図示の放射パターンにおける最大パワーの半分のパワーの部分が張る角度)によって、有効桁が二桁もあれば十分な設計となる。本実施例も実施形態1と同様で、方向の揃っているテラヘルツ放射は強め合い、素子全体の指向性におけるメインローブ811に寄与する。完全に相殺できない分はサイドローブ812となる。ゆえに、素子全体としては略単一の指向性を持ち、テラヘルツ波を同図の右方向に放射することができる。
【0044】
また、別の設計例として、基板80、81の厚さを60μmまで薄くして、√εeffを小さくしてもよい。電磁波の空間的な広がりと基板厚さとの大小関係によって生じる低域のカットオフや分散によってチェレンコフ放射の帯域が狭くなるが、θcが小さくなることで屈曲部806における曲げ損失を低減することができる。ここでは、例えば、1THzの電磁波モードを計算した例を示す。図8(b)に、同時に、電磁波の電界の二乗の分布の計算結果も描画している。この場合、θcは、ZnTeの屈折率ng=2.8と、上記構造において計算された1THz電磁波モードの等価屈折率neq=3.04とを利用して、次式のように設計される。
θc=23deg=cos-1(ng/neq)
ここで、実効誘電率εeffは等価屈折率neqの二乗とみなしてよく、実効誘電率は、当業者には良く知られたこのような計算からも求められる。この設計例は、二つの異なる発振周波数ν1、ν2を持つレーザ光を入射させ、差周波ν1-ν2=1THzのような単色のテラヘルツ波を発生させる際に有効である。
【0045】
こうした構造は、厚さ525μmの半絶縁性GaAs基板80上に分子線エピタキシー法(MBE)などを用いて半導体へテロ構造ZnTe/CdZnTeを形成してから作製する。ただし、各部分導波路の図8(a)の面内に垂直な方向の非線形係数d14がゼロにならない様に面方位は、例えば、(110)や(111)を用いる。結晶成長は、基板側から、厚さ2μmのCdZnTe8041、厚さ2μmのZnTe8040、厚さ2μmのCdZnTe8041の順に行い、ステップインデクス(SI)型の光導波路をエピタキシャル成長する。その後、SiO2などをマスクにしてエッチングによって幅5μmの部分リッジ導波路804を形成する。この幅は狭いほど理想的である。シングルモード伝播を実現するような幅の程度が好ましく、幅を狭くするほど上記放射パターンの半値角を小さくすることができる。エッチングはブロムメタノール溶液などによるウェットエッチングあるいはドライエッチングを用いてもよい。部分リッジ導波路以外の領域にはBCBを塗布するなどして平坦化し、最後に、半絶縁性GaAs基板81を貼り付けて本実施例の構造は完成する。基板80、81を薄くする構造は、研磨などを用いればよい。
【0046】
以上、本発明の好ましい実施形態や実施例について説明したが、本発明はこれらの実施形態や実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0047】
10、11・・・誘電体、101、104、107・・・部分導波路、102、105、108・・・部分導波路の放射パターン、111・・・素子全体の放射パターンのメインローブ、112・・・素子全体の放射パターンのサイドローブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を伝播させる非線形光学結晶を含み前記光より波長の長い電磁波を発生する電磁波発生素子であって、
第一の誘電体及び第二の誘電体と、
それぞれ前記誘電体の間に挟まれ前記非線形光学結晶を有する複数の部分導波路から成る光導波路と、
を備え、
前記非線形光学結晶の前記光に対する屈折率をng、前記第一の誘電体と第二の誘電体と部分導波路との前記電磁波に対する実効的な比誘電率をεeffとして、θc=cos-1(ng/√εeff)とするとき、
前記複数の部分導波路は、該複数の部分導波路における前記光の伝播方向のなす角が2θcと一致する様に構成されることを特徴とする電磁波発生素子。
【請求項2】
前記光導波路は、二つの前記部分導波路を接続する屈曲部を含むことを特徴とする請求項1に記載の電磁波発生素子。
【請求項3】
前記光導波路は、二つの前記部分導波路に繋がるY分岐を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁波発生素子。
【請求項4】
前記θc=cos-1(ng/√εeff)が実数解を持つように前記第一の誘電体及び第二の誘電体の厚さが調整されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の電磁波発生素子。
【請求項5】
前記第一の誘電体は前記非線形光学結晶を支持する基板であって、
前記第二の誘電体は、比誘電率が前記基板の比誘電率と等しいか大きい誘電体が選ばれることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の電磁波発生素子
【請求項6】
前記光導波路は、前記伝播する光に対してコアとなる高屈折率層とクラッドとなる低屈折率層を含み、
前記低屈折率層の少なくとも1つは、前記高屈折率層と前記誘電体にそれぞれ接して挟まれ、かつその厚さdは、前記光導波路を伝播する光のコアにおける光強度の1/e2(eは自然対数の底)になる厚みをa、前記電磁波の最大周波数における前記低屈折率層での等価波長をλeqとしたとき、
a<d<λeq/10
を満たすことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の電磁波発生素子。
【請求項7】
電磁波を発生するための発生手段と、
前記発生手段から放射された電磁波を検出するための検出手段と、
前記発生手段における電磁波発生時と前記検出手段における電磁波検出時との間の遅延時間を調整するための遅延部と、
を備えた時間領域分光装置であって、
前記発生手段が、請求項1乃至6の何れか1項に記載の電磁波発生素子を含むことを特徴とする時間領域分光装置。
【請求項8】
光源からの光を伝播させる非線形光学結晶を含み前記光より波長の長い電磁波を検出する電磁波検出素子であって、
第一の誘電体及び第二の誘電体と、
それぞれ前記誘電体の間に挟まれ前記非線形光学結晶を有する複数の部分導波路から成る光導波路と、
を備え、
前記非線形光学結晶の前記光に対する屈折率をng、前記第一の誘電体と第二の誘電体と部分導波路との前記電磁波に対する実効的な比誘電率をεeffとして、θc=cos-1(ng/√εeff)とするとき、
前記複数の部分導波路は、該複数の部分導波路における前記光の伝播方向のなす角が2θcと一致する様に構成されることを特徴とする電磁波検出素子。
【請求項9】
前記光導波路を伝播する光の伝播状態を検出する光伝播状態検出手段を更に備えることを特徴とする請求項8に記載の電磁波検出素子。
【請求項10】
前記伝播状態検出手段は、偏光素子と光検出素子とを有することを特徴とする請求項9に記載の電磁波検出素子。
【請求項11】
電磁波を発生するための発生手段と、
前記発生手段から放射された電磁波を検出するための検出手段と、
前記発生手段における電磁波発生時と前記検出手段における電磁波検出時との間の遅延時間を調整するための遅延部と、
を備えた時間領域分光装置であって、
前記検出手段が、請求項8乃至10の何れか1項に記載の電磁波検出素子を含むことを特徴とする時間領域分光装置。
【請求項12】
前記検出手段は、前記発生手段から放射されサンプルで反射されて来た電磁波を検出し、前記サンプルからの反射光を分析することでサンプルの内部構造をイメージングするトモグラフィ装置として構成されていることを特徴とする請求項7又は11に記載の時間領域分光装置。
【請求項13】
前記電磁波発生素子の導波路終端部からの光を前記検出手段へのプローブ光として利用し、
前記遅延部は、前記電磁波発生素子の導波路への前記光の到達時間と前記検出手段への前記プローブ光の到達時間との間の遅延時間を調整することを特徴とする請求項7に記載の時間領域分光装置。
【請求項1】
光源からの光を伝播させる非線形光学結晶を含み前記光より波長の長い電磁波を発生する電磁波発生素子であって、
第一の誘電体及び第二の誘電体と、
それぞれ前記誘電体の間に挟まれ前記非線形光学結晶を有する複数の部分導波路から成る光導波路と、
を備え、
前記非線形光学結晶の前記光に対する屈折率をng、前記第一の誘電体と第二の誘電体と部分導波路との前記電磁波に対する実効的な比誘電率をεeffとして、θc=cos-1(ng/√εeff)とするとき、
前記複数の部分導波路は、該複数の部分導波路における前記光の伝播方向のなす角が2θcと一致する様に構成されることを特徴とする電磁波発生素子。
【請求項2】
前記光導波路は、二つの前記部分導波路を接続する屈曲部を含むことを特徴とする請求項1に記載の電磁波発生素子。
【請求項3】
前記光導波路は、二つの前記部分導波路に繋がるY分岐を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁波発生素子。
【請求項4】
前記θc=cos-1(ng/√εeff)が実数解を持つように前記第一の誘電体及び第二の誘電体の厚さが調整されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の電磁波発生素子。
【請求項5】
前記第一の誘電体は前記非線形光学結晶を支持する基板であって、
前記第二の誘電体は、比誘電率が前記基板の比誘電率と等しいか大きい誘電体が選ばれることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の電磁波発生素子
【請求項6】
前記光導波路は、前記伝播する光に対してコアとなる高屈折率層とクラッドとなる低屈折率層を含み、
前記低屈折率層の少なくとも1つは、前記高屈折率層と前記誘電体にそれぞれ接して挟まれ、かつその厚さdは、前記光導波路を伝播する光のコアにおける光強度の1/e2(eは自然対数の底)になる厚みをa、前記電磁波の最大周波数における前記低屈折率層での等価波長をλeqとしたとき、
a<d<λeq/10
を満たすことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の電磁波発生素子。
【請求項7】
電磁波を発生するための発生手段と、
前記発生手段から放射された電磁波を検出するための検出手段と、
前記発生手段における電磁波発生時と前記検出手段における電磁波検出時との間の遅延時間を調整するための遅延部と、
を備えた時間領域分光装置であって、
前記発生手段が、請求項1乃至6の何れか1項に記載の電磁波発生素子を含むことを特徴とする時間領域分光装置。
【請求項8】
光源からの光を伝播させる非線形光学結晶を含み前記光より波長の長い電磁波を検出する電磁波検出素子であって、
第一の誘電体及び第二の誘電体と、
それぞれ前記誘電体の間に挟まれ前記非線形光学結晶を有する複数の部分導波路から成る光導波路と、
を備え、
前記非線形光学結晶の前記光に対する屈折率をng、前記第一の誘電体と第二の誘電体と部分導波路との前記電磁波に対する実効的な比誘電率をεeffとして、θc=cos-1(ng/√εeff)とするとき、
前記複数の部分導波路は、該複数の部分導波路における前記光の伝播方向のなす角が2θcと一致する様に構成されることを特徴とする電磁波検出素子。
【請求項9】
前記光導波路を伝播する光の伝播状態を検出する光伝播状態検出手段を更に備えることを特徴とする請求項8に記載の電磁波検出素子。
【請求項10】
前記伝播状態検出手段は、偏光素子と光検出素子とを有することを特徴とする請求項9に記載の電磁波検出素子。
【請求項11】
電磁波を発生するための発生手段と、
前記発生手段から放射された電磁波を検出するための検出手段と、
前記発生手段における電磁波発生時と前記検出手段における電磁波検出時との間の遅延時間を調整するための遅延部と、
を備えた時間領域分光装置であって、
前記検出手段が、請求項8乃至10の何れか1項に記載の電磁波検出素子を含むことを特徴とする時間領域分光装置。
【請求項12】
前記検出手段は、前記発生手段から放射されサンプルで反射されて来た電磁波を検出し、前記サンプルからの反射光を分析することでサンプルの内部構造をイメージングするトモグラフィ装置として構成されていることを特徴とする請求項7又は11に記載の時間領域分光装置。
【請求項13】
前記電磁波発生素子の導波路終端部からの光を前記検出手段へのプローブ光として利用し、
前記遅延部は、前記電磁波発生素子の導波路への前記光の到達時間と前記検出手段への前記プローブ光の到達時間との間の遅延時間を調整することを特徴とする請求項7に記載の時間領域分光装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−68620(P2012−68620A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161411(P2011−161411)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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