説明

電線保持構造及び電線ホルダ

【課題】電線に回転力が生じた場合であっても安定的に保持可能な電線保持構造及び電線ホルダを提供する。
【解決手段】電線保持構造において保持される電線25は、芯線25aとこの芯線25aを被覆する絶縁被覆25bとを備えると共に端部に端子金具が接続されるものである。電線保持構造では、端子金具をコネクタハウジング内に収容した状態で電線25を保持する構成をなしており、電線25の絶縁被覆25bの周囲に接合される第2被覆部50と、第2被覆部50の周囲に配される環状の電線保持部33を備えた電線ホルダ30とを有している。そして、電線保持部33の内壁部には第2被覆部50に食い込む突起部37が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線保持構造及び電線ホルダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電線の保持構造として例えば特許文献1のようなものが提供されている。この特許文献1の技術は、シールドコネクタに係るものであり、外周が絶縁用の樹脂被覆で覆われた電線に接続された端子金具を後方からハウジング内に挿入するとともに、金属製のシールドシェルをハウジングの外周に取り付けている。さらに、ハウジングの後端部にはゴム栓が嵌合されており、このゴム栓を抜け止めするためのゴム栓ホルダが電線を保持する電線ホルダとして機能している。
【特許文献1】特開2005−129356公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような電線ホルダが設けられることにより、電線が安定的に保持され、例えばハウジングの外部で電線が屈曲されるような事態が生じたとしてもその影響が端子金具に及びにくくなる。しかしながら、特許文献1の構成では、ハウジング外部において電線に回転力が生じた場合にその回転力を抑えることが難しく、電線に形状的な癖がある場合等、ハウジング外において電線に回転力が生じてしまうと端子金具への影響が避けられない。
【0004】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、電線に回転力が生じた場合であっても安定的に保持可能な構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、
芯線とこの芯線を被覆する絶縁被覆とを備えると共に端部に端子金具が接続され、その端子金具がコネクタハウジング内に収容されるように配される電線を保持する電線保持構造であって、
前記絶縁被覆の周囲に配される環状の電線保持部を有すると共に当該電線保持部の内壁部に前記絶縁被覆に食い込む突起部が形成された電線ホルダを備えたことを特徴とする。
【0006】
請求項2の発明は、
芯線とこの芯線を被覆する絶縁被覆とを備えると共に端部に端子金具が接続され、その端子金具がコネクタハウジング内に収容されるように配される電線を保持する電線保持構造であって、
前記電線の前記絶縁被覆の周囲に接合される第2被覆部と、
前記第2被覆部の周囲に配される環状の電線保持部を有すると共に当該電線保持部の内壁部に前記第2被覆部に食い込む突起部が形成された電線ホルダと、
を備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明は、請求項2に記載の電線保持構造において、
前記第2被覆部は、熱収縮性のチューブ部材からなることを特徴とする。
【0008】
請求項4の発明は、請求項2又は請求項3に記載の電線保持構造において、
前記電線に貫通される構成をなし、かつその貫通状態で前記コネクタハウジング内のキャビティを閉塞する防水パッキンを備え、
前記電線ホルダは、前記防水パッキンの外側において前記電線を保持することを特徴とする。
【0009】
請求項5の発明は、請求項4に記載の電線保持構造において、
前記電線ホルダは、前記防水パッキンを前記キャビティの外側から支持した状態で前記コネクタハウジングに固定されることを特徴とする。
【0010】
請求項6の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の電線保持構造において、
前記突起部は、先端が尖鋭に構成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項7の発明は、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の電線保持構造において、
前記突起部は前記電線保持部の内壁部に複数設けられており、
その複数の突起部は、前記電線の周方向に沿った当該電線の回転方向のうちの第1の回転方向側に突出する第1方向側突起部と、前記第1の回転方向側とは反対の第2の回転方向側に突出する第2方向側突起部とを有することを特徴とする。
【0012】
請求項8の発明は、
芯線とこの芯線を被覆する絶縁被覆とを備えると共に端部に端子金具が接続され、その端子金具がコネクタハウジング内に収容されるように配される電線を保持する電線ホルダであって、
前記絶縁被覆の周囲に配され、内壁部に前記絶縁被覆に食い込む突起部が形成された環状の電線保持部を有することを特徴とする。
【0013】
請求項9の発明は、
芯線とこの芯線を被覆する絶縁被覆とを備えると共に端部に端子金具が接続され、その端子金具がコネクタハウジング内に収容されるように配される電線を保持する電線ホルダであって、
前記絶縁被覆の周囲に第2被覆部が接合された前記電線に対して当該第2被覆部の周囲に配され、内壁部に前記第2被覆部に食い込む突起部が形成された環状の電線保持部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
<請求項1、8の発明>
請求項1、8の発明によれば、コネクタハウジングの外部で電線に回転力が生じた場合であっても、絶縁被覆に突起部が食い込んでいるため電線保持部の内壁部に対して電線が滑らず、外部にて生じた回転力がコネクタハウジング内に伝達されることを電線保持部によって抑えることができる。
【0015】
<請求項2、9の発明>
請求項2、9の発明によれば、コネクタハウジングの外部で電線に回転力が生じた場合であっても、絶縁被覆に接合される第2被覆部に突起部が食い込んでいるため電線が電線保持部に対して相対的に回転しにくくなり、電線の回転力がコネクタハウジング内に伝達されることを抑えることができる。また、絶縁被覆に第2被覆部を接合してその第2被覆部に突起部を食い込ませるようにしているため、突起部の食い込みによって絶縁被覆の電気的性能が低下しにくい構成となる。
【0016】
<請求項3の発明>
請求項3の発明によれば、第2被覆部が、熱収縮性のチューブ部材によって構成されているため、絶縁被覆の周囲に第2被覆部を強固に接合しやすい好適例となる。
【0017】
<請求項4の発明>
請求項4の発明によれば、絶縁被覆に第2被覆部を接合してその第2被覆部に突起部を食い込ませるようにしているため、防水パッキンの外側の電線保持部付近において電線の電気的性能が安定的に維持される。従って、防水パッキンの外側において回転力を受けつつ不具合なく電線を保持できるようになる。
【0018】
<請求項5の発明>
請求項5の発明によれば、電線ホルダが防水パッキンをキャビティの外側から支持した状態でコネクタハウジングに固定されるようになっている。従って、電線ホルダが防水パッキンの支持機能と回転力抑制可能な電線保持機能とを共に果たすこととなり、部品点数を抑えつつ高機能化を実現できる。
【0019】
<請求項6の発明>
請求項6の発明によれば、突起部の先端が尖鋭に構成されているため、電線ホルダを組み付ける際に電線保持部を電線に押し付ける押圧力を小さくすることができる。
【0020】
<請求項7の発明>
請求項7の発明によれば、電線の第1の回転方向側に突出する第1方向側突起部と、第1の回転方向側とは反対の第2の回転方向側に突出する第2方向側突起部とが設けられているため、電線がどちらの回転方向に回転しようとしてもその回転が強固に抑えられることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図面を参照して説明する。
(1.全体構成)
図1は、実施形態1に係る電線保持構造1を用いたシールドコネクタAを概念的に例示する断面図であり、図2は、電線保持構造1に用いる電線ホルダ30の平面図である。また、図3は、その電線ホルダ30の背面図であり、図4は、図3の一部を拡大して示す拡大図である。なお、図1では、突起部37を省略して示している。
【0022】
本実施形態に係る電線保持構造1を用いたシールドコネクタAは、合成樹脂製のコネクタハウジング10と、このコネクタハウジング10に挿入される3つ(本実施形態では3つであるが、2つ又は4つ以上でもよい)の端子金具20とを備えている。コネクタハウジング10の内部には、前後方向に貫通する3つの円形断面のキャビティ11が左右(水平方向)に一定ピッチで並列して形成されている。各キャビティ11内には、夫々、端子金具20が後方から挿入され、ランス12により抜止されている。
【0023】
端子金具20の後端部には、芯線25aの外周を絶縁用の樹脂被覆25bで包囲してなる電線25が圧着により接続されている。電線25の円形をなす樹脂被覆25bの外周には円筒形の防水パッキン27が液密状に外嵌され、この防水パッキン27の外周がキャビティ11の内周に対して液密状に密着されており、この防水パッキン27により、電線25の外周とキャビティ11の内周との間が防水されている。
【0024】
また、コネクタハウジング10の後端部には電線ホルダ30が取り付けられている。電線ホルダ30は、電線25を保持する機能を有すると共に、キャビティ11内の防水パッキン27が後方へ離脱するのを規制するため防水パッキン支持機能をも有している。電線25は、この電線ホルダ30を貫通して後方へ導出されている。尚、電線ホルダ30については、後に詳述する。
【0025】
かかるコネクタハウジング10は、機器40(例えば、電気自動車のインバータ装置、モータなど)のシールドケース41の取付孔42に嵌合され、コネクタハウジング10の前端から突出した端子金具20のタブ20aがシールドケース41内の図示しない機器側端子に接続されている。
【0026】
3本の電線25は、金属細線をメッシュ状に編み込んだ筒状をなすシールド部材15によって包囲され、このシールド部材15によって3本の電線25が一括してシールドされている。シールド部材15の端末部には金属製の横長長円形(リング状)をなすシールドシェル16が固着されている。シールドシェル16は、内リング17と外リング18との二重筒構造であり、内リング17と外リング18との間にシールド部材15の端末部が挟み付けられてカシメ付けにより固着されている。
【0027】
このシールドシェル16には、内リング17の前端部のフランジ部17aと外リング18の前端縁との間で挟まれることによりシールドシェル16と一体化されたブラケット19が組み付けられている。かかるシールドシェル16は、ブラケット19をシールドケース41に固定することにより、シールドケース41に対して導通可能に組み付けられており、この組付け状態では、シールドケース41の取付孔42に嵌合されているコネクタハウジング10の外周の拡径部13にブラケット19の前面が当接し、この当接によってコネクタハウジング10の取付孔42からの離脱が規制されている。
【0028】
(2.電線ホルダ)
電線保持構造1は、上述のように端子金具20がコネクタハウジング10内に収容されるように配される電線25を保持する構造とされており、その電線25の絶縁被覆25bの周囲に配される環状の電線保持部33を備えた電線ホルダ30を有している。
【0029】
この電線ホルダ30は、図2、図3に示すように、上下対称をなす一対の半割体31の左端同士をヒンジ32により連結した単一部品からなる。上側の半割体31には、各電線25(樹脂被覆25b)の外周に対応する半円形の半円部33aが、夫々、左右に3つ並べて形成されている。3つの半円部33aは平板状の連結部35aを介して連なっている。
【0030】
また、下側の半割体31も同様に各電線25(樹脂被覆25b)の外周に対応する半円形の半円部33bが、夫々、左右に3つ並べて形成されている。3つの半円部33bは平板状の連結部35bを介して連なっている。これら上側の半円部33a及び下側の半円部33bによって環状の電線保持部33(図5も参照)が構成されている。
【0031】
半割体31同士を合体させた状態では、図5のように、連結部35a、35b同士が面接触状態に密着し、また、上側の半円部33aと下側の半円部33bとによって電線25の外周に対応又は密着する電線保持部33が構成される。なお、半割体31同士を合体させる方法は、係合などであってもよく、接着や連結部材による連結などであってもよい。
【0032】
かかる電線ホルダ30は、その半円部33a、33bの外面に突成した抜止め突起30aをコネクタハウジング10の抜止孔14に係止させることにより、コネクタハウジング10に対して離脱規制状態に組み付けられている。
【0033】
さらに本実施形態では、電線25の絶縁被覆25bの周囲に第2被覆部50が接合されている。この第2被覆部50は、樹脂材料によって構成されるものであり、より詳しくは熱収縮性の材料からなるチューブ部材によって構成されている。なお、熱収縮性の材料としては公知の様々な樹脂材料を適用できるが、例えば、PP(ポリプロピレン)、PVC(塩化ビニール)などを用いることができ、これら以外であっても勿論よい。この第2被覆部50と電線25の絶縁被覆25bは接着剤によって一体的に接合されている。
【0034】
一方、電線ホルダ30は、図4、図5に示すように、環状の電線保持部33が第2被覆部50の周囲に配される構成をなしており、さらに電線保持部33の内壁部には第2被覆部50に食い込む突起部37が形成されている。この突起部37は、電線保持部33の内壁部に複数設けられており、かつ、先端が尖鋭に構成されている。
【0035】
突起部37の突出方向を説明する説明図であり、図7は、電線ホルダ30の突起部付近を拡大して示す拡大図である。複数の突起部37は、電線25の周方向に沿った当該電線25の回転方向のうちの第1の回転方向側に突出する第1方向側突起部37aと、第1の回転方向側とは反対の第2の回転方向側に突出する第2方向側突起部37bとを有している。図6に示すように、電線25の回転方向は、電線25の周縁(図6では、破線Dにて電線の周縁を示している)に沿った方向であり、図6での時計回りの向きを第1の回転方向(矢印F1参照)とし、図6での反時計回りの向きを第2の回転方向(矢印F2参照)としている。
【0036】
本実施形態における「突起部37の突出方向」は、突起部37の先端位置37fと基端の中心位置37eとを結んだ方向としている。ここで「突起部37の先端位置37f」とは、電線保持部33の円筒状の内周面38(即ち、電線保持部33の内壁面のうちの突起部37以外の面)から最も離れている位置を指す。また、「突起部37の基端の中心位置37e」とは、内周面38に沿った周方向における突起部37の基端部の中心位置を指し、突起部37の周方向の両端部37c,37dから等距離にある位置である。
【0037】
そして、この中心位置37eから先端位置37fに向かう方向が突起部37の突出方向であり、図7ではその突出方向を矢印F3にて示している。そして、突起部37の突出方向が第1の回転方向F1側に向いている図7のような場合(即ち、内周面38の半径方向F4(即ち電線25の横断面半径方向)に対して第1の回転方向側F1に傾いている場合)にはこの突起部37は第1方向側突起部37aとされ、突出方向が第2の回転方向F2側に向いている場合には第2方向側突起部37bとされる。
【0038】
また、突起部37は、一方の回転方向側(図7では、第2の回転方向F2側)に緩やかな第1傾斜面52が形成されており、他方の回転方向側(図7では、第1の回転方向F1側)に第1傾斜面52よりも内周面38に対する傾斜角度の大きい第2傾斜面53が形成されている。図6に示すように、第1方向側突起部37aと第2方向側突起部37bとでは第1傾斜面及び第2傾斜面の配置が逆となっている。
【0039】
また、突起部37の突出高さ(内周面38を含んだ円筒面から突起部37の先端までの距離)が、第2被覆部50の厚さよりも小さくされている。従って、突起部37が電線25の絶縁被覆25bまで食い込まないようになっている。
【0040】
なお、本実施形態では、図1に示すように、電線25に貫通される防水パッキン27がコネクタハウジング10に装着されており、この防水パッキン27は、電線25が貫通した状態でコネクタハウジング10内のキャビティ11を閉塞する構成をなしている。このような構成のコネクタハウジング10に対して、上述の電線ホルダ30が、防水パッキン27の外側において電線25を保持する構成をなしており、かつ防水パッキン27をキャビティ11の外側から支持した状態でコネクタハウジング10に固定されている。
【0041】
以上のように、本実施形態の構成によれば、コネクタハウジング10の外部で電線25に回転力が生じた場合であっても、絶縁被覆25bに接合される第2被覆部50に突起部37が食い込んでいるため電線25が電線保持部33に対して相対的に回転しにくくなる。従って、電線25の回転力がコネクタハウジング10内に伝達されることを抑えることができる。また、絶縁被覆25bに第2被覆部50を接合してその第2被覆部50に突起部37を食い込ませるようにしているため、突起部37の食い込みによって絶縁被覆25bの電気的性能が低下しにくい構成となる。
【0042】
また、第2被覆部50が、熱収縮性のチューブ部材によって構成されているため、絶縁被覆25bの周囲に第2被覆部50を強固に接合しやすい好適例となる。
【0043】
また、絶縁被覆25bに第2被覆部50を接合してその第2被覆部50に突起部37を食い込ませるようにしているため、防水パッキン27の外側の電線保持部33付近において電線25の電気的性能が安定的に維持される。従って、防水パッキン27の外側において回転力を受けつつ不具合なく電線25を保持できるようになる。
【0044】
さらに、電線ホルダ30が防水パッキン27をキャビティ11の外側から支持した状態でコネクタハウジング10に固定されるようになっている。従って、電線ホルダ30が防水パッキン27の支持機能と回転力抑制可能な電線保持機能とを共に果たすこととなり、部品点数を抑えつつ高機能化を実現できる。
【0045】
また、突起部37の先端が尖鋭に構成されているため、第2被覆部50に対して突起部37が食い込みやすく、電線ホルダ30を組み付ける際に電線保持部33を電線25に押し付ける押圧力を小さくすることができる。
【0046】
また、電線25の第1の回転方向F1側に突出する第1方向側突起部37aと、第1の回転方向F1側とは反対の第2の回転方向F2側に突出する第2方向側突起部37bとが設けられているため、電線25がどちらの回転方向に回転しようとしてもその回転が強固に抑えられることとなる。
【0047】
<実施形態2>
実施形態2について、図8、図9を参照して説明する。図8は、実施形態2に係る電線保持構造を用いたシールドコネクタ概念的に例示する断面図である。図9は、実施形態2の電線ホルダの要部を拡大して示す拡大図であり、図4の変形例を示すものである。なお、図8では、突起部137を省略して示している。本実施形態では、電線ホルダ30、防水パッキン27の形状及び第2被覆部50が設けられていない点以外は実施形態1と同一である。よって同一の部分については実施形態1と同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0048】
本実施形態に係る電線保持構造1も、図8、図9のように、芯線25aとこの芯線25aを被覆する絶縁被覆25bとを備える電線25が保持対象とされ、この電線25の端部には実施形態1と同様にコネクタハウジング10内に収容される端子金具20が接続されている。さらに、実施形態2に係る電線保持構造1でも電線25を保持する電線ホルダ30が設けられており、この電線ホルダ30により、端子金具20をコネクタハウジング10内に収容した状態で電線25を保持するように構成されている。
【0049】
実施形態2に係る電線ホルダ30には、絶縁被覆25bの周囲に配される環状の電線保持部33が設けられている。この電線保持部33は、絶縁被覆25bを直接支持するように構成されており、電線保持部33の内壁部には絶縁被覆25bに食い込む突起部137が形成されている。なお、実施形態1と同様に、コネクタハウジング10のキャビティ11は、防水パッキン27によって閉塞されており、この防水パッキン27を電線ホルダ20が支持している。なお、本実施形態の防水パッキン27は、実施形態1のものよりも小径の電線挿通孔が形成されており電線25に直接嵌合する構成をなしている。
【0050】
電線保持部33の内周面38は、実施形態1の構成よりも小径とされ、電線25の絶縁被覆25bよりもやや大径とされている。また、突起部137の突出高さは、絶縁被覆25bの厚さよりも小さくされており、より詳しくは、絶縁被覆25bの厚さの半分以下とされている。また、突起部137の突出方向は、内周面38の半径方向(即ち、電線25の軸半径方向)とされている。なお、このようにせずに、実施形態1のように突起部137の突出方向を内周面の半径方向に対して傾かせてもよい。
【0051】
また、本実施形態では、電線25の絶縁被覆25bの円筒状の表面に対して突起部137を押し付けることにより、この突起部137を絶縁被覆25bに食い込ませるようにしているが、絶縁被覆25bに予め突起部137を挿入するための穴を形成しておくようにしてもよい。
【0052】
実施形態2の構成によれば、絶縁被覆25bに突起部37が直接食い込んでいるため、電線保持部33の内壁部に対して電線25が滑らず、外部にて生じた回転力がコネクタハウジング10内に伝達されることを電線保持部33によって抑えることができる。
【0053】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0054】
(1)実施形態2では、先端が尖鋭でない(具体的には平坦に構成される)突起部137を例示したが、実施形態1と同様に突起部137の先端を尖鋭に構成してもよい。逆に、実施形態1の突起部37の先端を尖鋭でない構成としてもよい。
【0055】
(2)実施形態1では、第1方向側突起部と第2方向側突起部とを設けたが、突起部が全て同じ方向側に突出していてもよい。また、突起部が全て電線の中心側に向けて突出していてもよい(即ち、全ての突起部が円筒状の内周面38の半径方向に突出していてもよい)。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施形態1に係る電線保持構造を用いたシールドコネクタ概念的に例示する断面図
【図2】電線ホルダの平面図
【図3】電線ホルダの背面図
【図4】図3の一部を拡大して示す拡大図
【図5】電線ホルダによる電線の保持状態を示す図
【図6】突起部の突出方向を説明する説明図
【図7】電線ホルダの突起部付近を拡大して示す拡大図
【図8】実施形態2に係る電線保持構造を用いたシールドコネクタ概念的に例示する断面図
【図9】図4の変形例を示すものであり、実施形態2の電線ホルダの要部を拡大して示す拡大図
【符号の説明】
【0057】
1…電線保持構造
10…コネクタハウジング
11…キャビティ
20…端子金具
25…電線
25a…芯線
25b…樹脂被覆
27…防水パッキン
30…電線ホルダ
33…電線保持部
37…突起部
37a…第1方向側突起部
37b…第2方向側突起部
50…第2被覆部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線とこの芯線を被覆する絶縁被覆とを備えると共に端部に端子金具が接続され、その端子金具がコネクタハウジング内に収容されるように配される電線を保持する電線保持構造であって、
前記絶縁被覆の周囲に配される環状の電線保持部を有すると共に当該電線保持部の内壁部に前記絶縁被覆に食い込む突起部が形成された電線ホルダを備えたことを特徴とする電線保持構造。
【請求項2】
芯線とこの芯線を被覆する絶縁被覆とを備えると共に端部に端子金具が接続され、その端子金具がコネクタハウジング内に収容されるように配される電線を保持する電線保持構造であって、
前記電線の前記絶縁被覆の周囲に接合される第2被覆部と、
前記第2被覆部の周囲に配される環状の電線保持部を有すると共に当該電線保持部の内壁部に前記第2被覆部に食い込む突起部が形成された電線ホルダと、
を備えたことを特徴とする電線保持構造。
【請求項3】
前記第2被覆部は、熱収縮性のチューブ部材からなることを特徴とする請求項2に記載の電線保持構造。
【請求項4】
前記電線に貫通される構成をなし、かつその貫通状態で前記コネクタハウジング内のキャビティを閉塞する防水パッキンを備え、
前記電線ホルダは、前記防水パッキンの外側において前記電線を保持することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の電線保持構造。
【請求項5】
前記電線ホルダは、前記防水パッキンを前記キャビティの外側から支持した状態で前記コネクタハウジングに固定されることを特徴とする請求項4に記載の電線保持構造。
【請求項6】
前記突起部は、先端が尖鋭に構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の電線保持構造。
【請求項7】
前記突起部は前記電線保持部の内壁部に複数設けられており、
その複数の突起部は、前記電線の周方向に沿った当該電線の回転方向のうちの第1の回転方向側に突出する第1方向側突起部と、前記第1の回転方向側とは反対の第2の回転方向側に突出する第2方向側突起部とを有することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の電線保持構造。
【請求項8】
芯線とこの芯線を被覆する絶縁被覆とを備えると共に端部に端子金具が接続され、その端子金具がコネクタハウジング内に収容されるように配される電線を保持する電線ホルダであって、
前記絶縁被覆の周囲に配され、内壁部に前記絶縁被覆に食い込む突起部が形成された環状の電線保持部を有することを特徴とする電線ホルダ。
【請求項9】
芯線とこの芯線を被覆する絶縁被覆とを備えると共に端部に端子金具が接続され、その端子金具がコネクタハウジング内に収容されるように配される電線を保持する電線ホルダであって、
前記絶縁被覆の周囲に第2被覆部が接合された前記電線に対して当該第2被覆部の周囲に配され、内壁部に前記第2被覆部に食い込む突起部が形成された環状の電線保持部を有することを特徴とする電線ホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−287464(P2007−287464A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−113053(P2006−113053)
【出願日】平成18年4月17日(2006.4.17)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】