説明

電解加工方法および基板処理方法

【課題】ダマシーン法による基板上の配線形成において、微細な凹凸を有する基板上の金属膜の表面を低い加工圧力で平坦化することができ、かつ金属膜をその全面に亘って均一な加工速度で加工することができる電解加工方法を提供する。
【解決手段】給電電極31と加工電極32とをテーブル12上に配置し、給電電極31と加工電極32の間に絶縁体36を配置し、金属膜6が給電電極31および加工電極32に対向するように基板Wを絶縁体36に接触させ、第1の電解液および第2の電解液を、絶縁体36により電気的に絶縁させた状態で給電電極31と基板Wとの間、および加工電極32と基板Wとの間にそれぞれ供給し、給電電極31と加工電極32との間に電圧を印加し、基板キャリアー11とテーブル12を相対運動させて基板W上の金属膜6の電解加工を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解加工方法および基板処理方法に係り、特に半導体ウエハ等の基板の表面に形成された金属膜を除去し平坦化する電解加工方法および基板処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体ウエハ等の基板上に回路を形成するための配線材料として、アルミニウムまたはアルミニウム合金に代えて、電気抵抗率が低くエレクトロマイグレーション耐性が高い銅(Cu)を用いる動きが顕著になっている。この種の銅配線は、基板の表面に設けた微細凹みの内部に銅を埋め込むことによって一般に形成される。この銅配線を形成する方法としては、化学気相成長法(CVD)、スパッタリングおよびめっきといった手法があるが、いずれにしても、基板のほぼ全表面に銅を成膜して、化学機械的研磨(CMP)により不要の銅を除去するようにしている。
【0003】
図1A乃至図1Cは、この種の銅配線基板Wの一製造例を工程順に示すものである。図1Aに示すように、半導体素子が形成された半導体基材1上の導電層1aの上にSiOからなる酸化膜やLow−k材膜などの絶縁膜2が堆積され、リソグラフィ・エッチング技術によりコンタクトホール3と配線溝4が形成される。これらの上にTaN等からなるバリア膜5、さらにその上に電解めっきの給電層としてのシード層7がスパッタリングやCVD等により形成される。
【0004】
そして、基板Wの表面に銅めっきを施すことで、図1Bに示すように、半導体基材1のコンタクトホール3および配線溝4内に銅を充填するとともに、絶縁膜2上に銅膜6を堆積する。その後、化学機械的研磨(CMP)により、絶縁膜2上の余剰な銅膜6、シード層7およびバリア膜5を除去して、コンタクトホール3および配線溝4内に充填させた銅膜6の表面と絶縁膜2の表面とをほぼ同一平面にする。これにより、図1Cに示すように銅膜6からなる配線が形成される。
【0005】
最近ではあらゆる機器の構成要素において微細化かつ高精度化が進み、サブミクロン領域での物作りが一般的となるにつれて、加工法自体が材料の特性に与える影響は益々大きくなっている。このような状況下においては、従来の機械加工のように、工具が被加工物を物理的に除去していく加工方法では、加工によって被加工物に多くの欠陥を生み出してしまうため、被加工物の特性が劣化してしまう。したがって、いかに材料の特性を損なうことなく加工を行うことができるかが問題となってくる。
【0006】
この問題を解決する手段として開発された特殊加工法に、化学研磨や電解加工、電解研磨がある。これらの加工方法は、従来の物理的な加工とは対照的に、化学的溶解反応を起こすことによって、除去加工等を行うものである。したがって、塑性変形による加工変質層や転位等の欠陥は発生せず、上述の材料の特性を損なわずに加工を行うといった課題が達成される。
【0007】
例えば、CMP工程は、一般にかなり複雑な操作が必要で、制御も複雑となり、加工時間もかなり長い。さらに、スラリー(研磨液)を使用するため研磨後の基板の後洗浄を十分に行う必要があるばかりでなく、スラリーや洗浄液の廃液処理のための負荷が大きい等の課題がある。このため、CMP自体を省略もしくはこの負荷を軽減することが強く求められていた。また、特に今後、層間絶縁膜も誘電率の小さいLow−k材に変わると予想され、そのLow−k材は、機械的強度が弱くCMPによるストレスに耐えられなくなる。したがって、基板にストレスを与えることなく、平坦化できるようにしたプロセスが望まれている。
【0008】
一般に、CMP工程では、500nm/min程度の研磨速度(Removal Rate)が必要であり、この研磨速度を実現するためには研磨圧力(研磨対象物の研磨面に対する押圧力)を増大(例えば350kPa)させる必要がある。
【0009】
ここで、CMP工程の研磨速度は下記のプレストンの式に従うとされている。
RR=kPV
RR:研磨速度(m/s)
k:定数(Pa−1
P:研磨圧力(Pa)
V:研磨面と研磨対象物との相対速度(m/s)
【0010】
すなわち、所望の研磨速度RRを確保するために、研磨圧力Pや相対速度Vを増大して研磨を行うことを余儀なくされていた。この結果、配線表面にスクラッチやケミカルダメージを生じ易くなるという問題が生じていた。また、ディシングやリセスといった配線の痩せも生じ易くなり、配線の抵抗値が増大したり配線の欠陥により信頼性が損なわれたりする問題が発生していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、ダマシーン法による基板上の配線形成において、微細な凹凸を有する基板上の金属膜の表面を低い加工圧力で平坦化することができ、かつ金属膜をその全面に亘って均一な加工速度で加工することができる電解加工方法および基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような課題を解決するために、本発明の一態様は、表面に金属膜が形成された基板を加工する電解加工方法であって、少なくとも1つの給電電極と少なくとも1つの加工電極とをテーブルの上に配置し、前記給電電極と前記加工電極との間に絶縁体を配置し、前記金属膜が前記給電電極および前記加工電極に対向するように基板キャリアーにより基板を保持し、前記基板を前記絶縁体に接触させ、第1の電解液および第2の電解液を、前記絶縁体により電気的に絶縁させた状態で前記給電電極と基板との間、および前記加工電極と基板との間にそれぞれ供給し、前記給電電極と前記加工電極との間に電圧を印加し、前記基板キャリアーと前記テーブルとを相対運動させて基板上の金属膜の電解加工を行うことを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、次のようにして電解加工が行われる。すなわち、給電電極側の第1の電解液と加工電極側の第2の電解液とは絶縁体によって電気的に絶縁されているため、電流は基板上の金属膜を通って給電電極から加工電極に流れる。このとき、基板上の金属膜の電位は、第1の電解液によって給電電極の電位と実質的に等しくなる。一方、第2の電解液を介して金属膜には電子が供給される。その結果、加工電極側では、供給される電子によって金属膜がイオン化して溶出し、さらに金属膜の表面は第2の電解液の中で錯体を形成する。この状態で、絶縁体と基板とを相対運動させることにより、金属膜の凸部上の錯体が絶縁体によって選択的に除去されて金属膜の表面が平坦化される。
【0014】
このように、本発明によれば、絶縁体により第1の電解液と第2の電解液とが電気的に絶縁されるので、基板上の金属膜(被加工物)への給電を確実に行うことができ、かつ加工電極に対向する金属膜の部位の電解加工を確実に行うことができる。その結果、加工圧力を低くすることが可能になるため、基板へのダメージを抑制しつつ所望の加工速度が確保でき、スループットの向上を図ることができる。
【0015】
ここで、本発明を用いた基板の加工工程を図2A乃至図2Dに示す。図2Aに示すように、半導体基材1上の導電層1aの上に堆積した絶縁膜2にコンタクトホール3と配線溝4が形成され、これらの上にバリア膜5、さらにその上にシード層7が形成される。そして、基板Wの表面に銅めっきを施すことで、図2Bに示すように、コンタクトホール3および配線溝4内に銅を充填するとともに、絶縁膜2上に銅膜6を堆積する。その後、図2Cに示すように、本発明に係る電解加工方法により、金属膜6をバリア層5近傍まで低加工圧力(例えば70kPa)で除去し、金属膜6の表面に形成された凹凸を除去する。そして、電解加工の後、残りの金属膜6、バリア層5、およびシード層7をCMP装置により低圧でゆっくりした加工速度で除去する。このように、本発明によれば、CMP装置による加工時間を短くすることができ、基板に与える負荷を低減させることができる。
【0016】
本発明の好ましい態様は、基板上の所定の加工点が前記加工電極と前記絶縁体とを交互に通過するように前記基板キャリアーと前記テーブルとを相対運動させることを特徴とする。これにより、金属膜の表面に形成された錯体を絶縁膜によって確実に除去することができる。
【0017】
本発明の好ましい態様は、前記給電電極の上面に設けられた複数の開口部から第1の電解液を供給し、前記加工電極の上面に設けられた複数の開口部から第2の電解液を供給することを特徴とする。これにより、第1および第2の電解液を基板の金属膜に均一に供給することができる。
【0018】
本発明の好ましい態様は、前記複数の開口部を囲むように複数の堰を設けて、第1の電解液を前記給電電極の上面に溜めるとともに、第2の電解液を前記加工電極の上面に溜めることを特徴とする。これにより、第1の電解液および第2の電解液を、それぞれ給電電極および加工電極の上面に溜めることができるので、第1の電解液および第2の電解液を介して基板上の金属膜に確実に通電することができる。
【0019】
本発明の好ましい態様は、前記絶縁体は、前記給電電極および前記加工電極を覆うように配置された単一の部材であり、前記絶縁体に形成された貫通孔から該絶縁体と基板との間に電解液を供給することを特徴とする。これにより、絶縁体の上面に切れ目のない滑らかな接触面が形成される。したがって、基板上の金属膜に傷を与えてしまうことを防止することができる。また、本発明によれば、絶縁体の取り付けを容易に行うことができる。
【0020】
本発明の好ましい態様は、基板と弾性パッドから構成された前記絶縁体とを摺接させながら前記電解加工を行うことを特徴とする。これにより、基板と絶縁体(弾性パッド)との密着性を高めることができ、第1の電解液と第2の電解液との電気的絶縁を確保することができる。また、弾性パッドが基板と接触したときに基板の表面に傷が付くことを防止することができる。
【0021】
本発明の好ましい態様は、基板と固定砥粒パッドから構成された前記絶縁体とを摺接させながら前記電解加工を行うことを特徴とする。これにより、金属膜の平坦性を向上させることができる。
【0022】
本発明の好ましい態様は、前記弾性パッドは、のこぎり歯形状の断面を有する樹脂製パッドであることを特徴とする。これにより、金属膜の表面の凸部に生成した錯体などの不動態膜をパッドの凸部によって効果的に除去することができ、また、除去された不動態膜をパッドの凹部を通して排出することができる。
【0023】
本発明の好ましい態様は、前記テーブルと前記絶縁体との間に弾性体を介在させたことを特徴とする。これにより、絶縁体の基板に対する圧力を絶縁体の全面に亘って均一にすることができる。
【0024】
本発明の好ましい態様は、第1の電解液と第2の電解液とを、電気的絶縁を保ちつつ独立に循環させることを特徴とする。これにより、電解液を再利用することができるので、コストを下げることができる。
【0025】
本発明の好ましい態様は、前記第1の電解液と前記第2の電解液の主成分は同一であることを特徴とする。
【0026】
本発明の好ましい態様は、電解加工開始時における前記第1の電解液と前記第2の電解液のそれぞれの主成分は略同一の濃度であることを特徴とする。
【0027】
本発明の好ましい態様は、前記基板キャリアーと前記テーブルとの相対運動は、前記基板キャリアーの回転運動、前記基板キャリアーの揺動、および前記基板キャリアーの並進運動のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【0028】
本発明の好ましい態様は、前記基板キャリアーと前記テーブルとの相対運動は、前記テーブルのスクロール運動を含むことを特徴とする。これにより、絶縁体を基板の全面に接触させることができ、加工の面内均一性を向上させることができる。
【0029】
本発明の好ましい態様は、複数の前記給電電極と複数の前記加工電極を交互に配置したことを特徴とする。これにより、複数の給電電極から第1の電解液を介して金属膜の広い部位に給電することができ、また、複数の加工電極によって、基板上の金属膜の全面を確実に加工することができる。
【0030】
本発明の好ましい態様は、前記基板キャリアーと前記テーブルとが相対運動する距離は、前記複数の加工電極の間隔と同じか、またはそれ以上であることを特徴とする。これにより、基板上の金属膜の部分的な加工残しを防止し、金属面の全面をさらに確実に加工することができる。
【0031】
本発明の好ましい態様は、前記複数の加工電極と基板との距離を変えることにより、基板上の金属膜の厚さ分布を調整することを特徴とする。
【0032】
本発明の好ましい態様は、前記加工電極は、その長手方向に沿って一列に並ぶ複数の電極部に分割されていることを特徴とする。
【0033】
本発明の好ましい態様は、前記複数の加工電極に供給する電流の分配を制御することにより、基板上の金属膜の厚さ分布を調整することを特徴とする。これにより、電解液の供給分布や基板とテーブルの相対速度の分布等に起因した加工速度の不均一性を改善することができる。
【0034】
本発明の他の態様は、ロード/アンロードユニットから基板を取り出し、金属膜が表面に形成された基板を電解加工し、前記電解加工後、基板を洗浄して乾燥し、基板を前記ロード/アンロードユニットに戻し、前記電解加工は、少なくとも1つの給電電極と少なくとも1つの加工電極との間に配置された絶縁体に基板を接触させ、第1の電解液および第2の電解液を、前記絶縁体により電気的に絶縁させた状態で前記給電電極と基板との間、および前記加工電極と基板との間にそれぞれ供給し、前記給電電極と前記加工電極との間に電圧を印加し、前記絶縁体と基板とを相対運動させることを特徴とする基板処理方法である。
【0035】
本発明の好ましい態様は、前記電解加工後に、基板上に残っている金属膜を研磨することを特徴とする。
【0036】
本発明の好ましい態様は、前記電解研磨の前に基板上の金属膜の厚さを測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、ダマシーン法による基板上の配線形成において、微細な凹凸を有する基板上の金属膜の表面を低い加工圧力で平坦化することができ、かつ金属膜をその全面に亘って均一な加工速度で加工することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、基板の表面に形成した金属膜としての銅膜を加工する電解加工装置の例を示している。
【0039】
図3Aは、本発明第1の実施形態に係る電解加工方法を実施するための電解加工装置の一例を示す断面図であり、図3Bは、図3AのIII−III線断面図である。図3Aおよび図3Bに示すように、電解加工装置(電解研磨装置)は、上下動可能かつ水平方向に揺動自在なアーム10と、アーム10の自由端に垂設され、銅膜6が形成された表面を下向き(フェイスダウン)にして基板Wを吸着保持する円板状の基板キャリアー11と、基板キャリアー11の下方に配置される加工テーブル12とを備えている。
【0040】
アーム10は、揺動用モータ15に連結された揺動軸16の上端に取り付けられており、揺動用モータ15の駆動に伴って水平方向に揺動するようになっている。すなわち、揺動用モータ15、アーム10、および揺動軸16は基板キャリアー11を水平面内で揺動させる揺動機構(相対運動機構)17を構成している。また、この揺動軸16は、上下方向に延びるボールねじ18に連結されており、ボールねじ18に連結された上下動用モータ19の駆動に伴ってアーム10とともに上下動するようになっている。このように、ボールねじ18および上下動用モータ19は基板キャリアー11を上下動させる上下動機構20を構成している。なお、揺動軸16にエアシリンダを連結し、このエアシリンダの駆動により揺動軸16を上下動させてもよい。
【0041】
基板キャリアー11は、基板キャリアー11で保持した基板Wと加工テーブル12とを相対運動させる自転用モータ(回転機構)22にシャフト23を介して接続されており、この自転用モータ22の駆動に伴って回転(自転)するようになっている。また、上述したように、アーム10は、上下動および水平方向に揺動可能となっており、基板キャリアー11はアーム10と一体となって上下動および水平方向に揺動可能となっている。
【0042】
加工テーブル12の下方には、基板キャリアー11と加工テーブル12とを相対運動させるスクロール機構25が設置されている。このスクロール機構25はスクロール用モータ26と、このスクロール用モータ26に連結されたクランクシャフト27とを備えている。クランクシャフト27の軸端は、スクロール用モータ26の回転軸から偏心した位置にあり、加工テーブル12の下面に設けられた軸受28に回転自在に係合している。加工テーブル12の下面には加工テーブル12の自転を防止する自転防止機構(図示せず)が3つ以上設けられている。このような構成により、スクロール用モータ26の駆動に伴って、加工テーブル12は、スクロール用モータ26の回転軸とクランクシャフト27の軸端との距離を半径とした、自転を行わない公転運動、いわゆるスクロール運動(並進回転運動)を行うようになっている。なお、本実施形態では加工テーブル12をスクロール運動させているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、加工テーブル12を揺動運動させたり、往復運動させるようにしてもよい。
【0043】
基板キャリアー11および加工テーブル12は絶縁材料から形成されており、これらは互いに対向するように配置されている。加工テーブル12の上面には、互いに平行に延びる溝状の浴槽30A,30Bが形成されており、これらの浴槽30A,30Bの中には、銅膜6に給電する給電電極31および銅膜6を加工する加工電極32がそれぞれ配置されている。給電電極31は電源33の陽極に接続されてアノード電極として機能し、加工電極32は電源33の陰極に接続されてカソード電極として機能する。以下、給電電極をアノード電極と、加工電極をカソード電極という。
【0044】
ここで、電極は、電解反応により酸化または溶出が一般に問題となる。このため、電極の素材として、電極に広く使用されている金属や金属化合物よりも、炭素、比較的不活性な貴金属、導電性酸化物または導電性セラミックスを使用することが好ましい。本実施形態では、アノード電極31およびカソード電極32として、下地の電極素材にチタン(Ti)を用い、その表面にめっきやコーティングで白金(Pt)を付着させ、高温で焼結して安定化と強度を保つ処理を行ったものが用いられている。このような貴金属を用いた電極は、耐食性および導電性の点で優れている。
【0045】
図3Aに示すように、アノード電極31およびカソード電極32の長手方向の長さは基板Wの直径よりも大きく設定されている。アノード電極31とカソード電極32は互いに平行に延び、アノード電極31とカソード電極32との間には隔壁35が形成されている。この隔壁35は加工テーブル12の一部位から構成されており、隔壁35、すなわち加工テーブル12は液体を浸透させない材料(非通液性材料)から形成されている。
【0046】
図3Bに示すように、加工テーブル12の上面には複数の絶縁体36が取り付けられている。これらの絶縁体36のうちの1つは隔壁35の上面に配置され、アノード電極31とカソード電極32の間に位置している。その他の絶縁体36はアノード電極31の外側およびカソード電極32の外側に配置されている。これらの絶縁体36の上面は同一平面内に位置しており、アノード電極31とカソード電極32の各上面は絶縁体36の上面よりもやや下方(例えば0.5mm程度)に位置している。したがって、上下動用モータ19を駆動させて基板キャリアー11を下降させると、図3Bに示すように、基板W上の銅膜6が絶縁体36に接触し、アノード電極31と銅膜6、およびカソード電極32と銅膜6との間には微小な隙間が形成される。このように、絶縁体36の上面は基板Wとの接触面を構成し、アノード電極31およびカソード電極32は基板W(銅膜6)と非接触に保たれる。
【0047】
アノード電極31の内部には、アノード液(第1の電解液)が流れるマニホルド(第1の流体流路)41がアノード電極31の長手方向に延びて形成されており、同様に、カソード電極32の内部には、カソード液(第2の電解液)が流れるマニホルド(第2の流体流路)42がカソード電極32の長手方向に延びて形成されている。これらのマニホルド41,42は第1供給流路51および第2供給流路52にそれぞれ接続されており、これらの第1供給流路51および第2供給流路52を通じてアノード液およびカソード液がそれぞれマニホルド41,42に供給されるようになっている。
【0048】
アノード電極31の内部にはマニホルド41に連通する複数の通液孔48が形成されている。これらの通液孔48は上下に延び、その上端はアノード電極31の上面で開口して開口部48aを構成している。アノード電極31と同様に、カソード電極32の内部にもマニホルド42に連通する複数の通液孔49が形成されている。これらの通液孔49は上下に延び、その上端はカソード電極32の上面で開口して開口部49aを構成している。このような構成により、マニホルド41に供給されたアノード液は基板Wとアノード電極31との間の隙間に供給され、マニホルド42に供給されたカソード液は基板Wとカソード電極32との間の隙間に供給される。そして、供給されたアノード液およびカソード液は、それぞれ浴槽30A,30B内に貯留される。なお、通液孔48,49の径は1〜1.5mmであることが好ましく、間隔は10〜15mmであることが好ましい。
【0049】
図3Aに示すように、浴槽30Aの底部には凹部50が形成されており、この凹部50の底部には排出孔53が形成されている。浴槽30Aは排出孔53を介して第1排出流路61に接続されており、浴槽30A内のアノード液は、第1排出流路61を通じて外部に排出されるようになっている。また、カソード電極32が配置される浴槽30Bにも凹部および排出孔(図示せず)が同様に形成されており、浴槽30Bは排出孔を介して第2排出流路62に接続されている。そして、浴槽30B内のカソード液は、第2排出流路62を通じて外部に排出されるようになっている。
【0050】
次に、上記電解加工装置によって、基板Wの表面に形成された銅膜(金属膜)6をエッチング除去する例について詳細に説明する。まず、上下動用モータ19を駆動させ、基板W上の銅膜6が絶縁体36の上面に接触するまで基板キャリアー11を下降させる。基板Wを低圧で絶縁体36に接触させた状態で、アノード電極31と基板Wとの間にアノード液を供給し、同時にカソード電極32と基板Wとの間にカソード液を供給する。その後、揺動機構17、自転用モータ(回転機構)22、およびスクロール機構25の少なくとも1つを駆動させ、これにより基板Wと加工テーブル12とを相対運動させて、絶縁体36を基板W上の銅膜6に摺接させる。そして、電源33によりアノード電極31とカソード電極32との間に電圧を印加する。
【0051】
ここで、アノード液とカソード液とは隔壁35および絶縁体36によって電気的に絶縁されているため、電流は基板W上の銅膜6を通ってアノード電極31からカソード電極32に流れる。このとき、基板W上の銅膜6の電位は、電解液であるアノード液によってアノード電極31の電位と実質的に等しくなる。一方、電解液であるカソード液を介して銅膜6には電子が供給される。その結果、カソード側では、供給される電子によって銅がイオン化して溶出し、さらに銅膜6の表面はカソード液(電解液)の中で錯体を形成する。この状態で、基板キャリアー11と加工テーブル12とを相対運動させることにより、銅膜6の所定の加工点がカソード電極32と絶縁体36とを交互に通過し、銅膜6の凸部上の錯体が絶縁体36によって選択的に除去されて銅膜6の表面が平坦化される。
【0052】
基板Wとアノード電極31との間に供給されたアノード液は浴槽30Aに貯留され、同様に、基板Wとカソード電極32との間に供給されたカソード液は浴槽30Bに貯留される。このとき、2つの浴槽30A,30Bは隔壁35と絶縁体36によって隔離されているので、浴槽30A,30B中のアノード液とカソード液とが電気的に絶縁された状態が維持される。
【0053】
なお、絶縁体36としては、弾性を有するパッドを用いることが好ましい。弾性パッドを用いることで、基板Wと絶縁体(パッド)36との密着性を高めることができ、アノード液とカソード液との混合を防止して電気的絶縁を確保することができる。また、弾性パッドを用いることによって、基板Wと接触したときに基板Wの表面に傷が付くことを防止することができる。このようなパッドの例としては、CMP装置で使用されているポリウレタン製のIC1000やPolitex(いずれもRodel社製)などが挙げられる。また、被加工面の平坦性を向上させるために、固定砥粒パッド(Fixed Abrasive Pad)を用いてもよい。なお、絶縁体の全体をパッドから構成しなくてもよく、少なくとも基板との接触面が上記パッドから構成されていればよい。
【0054】
また、上記パッドとして、図4に示すような、のこぎり歯形状の断面を有する樹脂製パッド36を用いることもできる。この場合、砥粒を含まないパッド(Abrasive Free Pad)が好適に用いられる。このような樹脂製パッドを用いることにより、銅膜6の表面の凸部に生成した錯体などの不動態膜をパッドの凸部36aによって効果的に除去することができ、除去された不動態膜を樹脂製パッド36の凹部36bを通して排出することができる。また、砥粒を含まないパッドは、固定砥粒パッドに比べて耐久性があるという利点がある。
【0055】
上記樹脂製パッドを構成する材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、フッ素樹脂(PTFE)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、フェノール樹脂(PF)、エポキシ樹脂(EP)などが挙げられる。絶縁体36を構成する素材は、それ自体が電気的絶縁性を有し、かつ連続気孔を持たない、すなわち通液性を持たないものであることが必要である。なお、図4は、凸部の間隔を50μm、高さを30μm、パッドの厚さを100μmとした例を示している。
【0056】
ここで、アノード電極31に供給されるアノード液は、該アノード液を介して基板W上の銅膜6に給電できるものであればどのような種類の電解液であってもよい。一方、カソード電極32に供給されるカソード液は、それ自体エッチング作用のある電解液である必要がある。したがって、アノード液およびカソード液としては、このような条件を満たす電解液がそれぞれ使用される。
【0057】
しかしながら、アノード液およびカソード液として同じ種類の電解液を用いることもできる。これは次の理由による。すなわち、基板Wの被加工面においてアノード液とカソード液とを絶縁体36によって完全に分離することは難しく、アノード液とカソード液とが僅かながら相互に混入して、いわゆるクロスコンタミネーションを引き起こしてしまう。そこで、このようなクロスコンタミネーションを防止する観点から、アノード液とカソード液を同じ種類の液体とすることが好ましい。アノード液とカソード液とが同じ種類の電解液であれば、クロスコンタミネーションを許容することができ、電解液の管理が容易となり、さらには電解液を長期間使用することができる。
【0058】
アノード液およびカソード液の例としては、高濃度リン酸液、HEDP(1−ヒドロキシエチリデンジホスホン酸)とNMI(N−メチルイミダゾール)を主成分として含む電解液、およびHEDPとNHOHとBTA(ベンゾトリアゾール)とを主成分として含む電解液などが挙げられる。この場合、HEDPとNHOHとBTAとを含む電解液を用いることは、平坦化性能を向上させる点で好ましい。
【0059】
このように、アノード液およびカソード液として異なる種類の電解液を用いる必要は必ずしも必要ないが、アノード液およびカソード液を電気的に絶縁する必要がある。何故ならば、アノード液およびカソード液が電気的に絶縁されていないと、アノード電極31およびカソード電極32に供給された電力が電解液を介して短絡してしまい、基板W上の銅膜6に給電できず、所望の加工ができないからである。このために、本実施形態では、アノード液が流通する経路(第1供給流路51、マニホルド41、通液孔48、浴槽30A、および第1排出流路61)とカソード液が流通する経路(第2供給流路52、マニホルド42、通液孔49、浴槽30B、および第2排出流路62)とが互いに独立して設けられている。さらに、アノード電極31とカソード電極32との間に隔壁35と絶縁体36を配置することによって、アノード液とカソード液とを分離させている。このように、本実施形態によれば、アノード液とカソード液を、電気的に絶縁された状態を保ちつつそれぞれ基板W上の銅膜6に供給することができる。
【0060】
ここで、電解加工装置の他の構成例について図5Aおよび図5Bを参照して説明する。図5Aは電解加工装置の他の構成例を示す断面図であり、図5Bは図5Aに示すV−V線断面図である。
【0061】
図5Aおよび図5Bに示すように、アノード電極31の上面には、各通液孔48の開口部48aを囲むように複数の堰58が設けられている。同様に、カソード電極32の上面にも、各通液孔49の開口部49aを囲むように複数の堰59が設けられている。このような構成によれば、通液孔48,49から吐出されたアノード液およびカソード液をアノード電極31およびカソード電極32の上面に溜めることができる。したがって、アノード液およびカソード液を介して基板W上の銅膜6に確実に通電することができ、加工効率を上げることができる。ここで、堰58,59の材質は、基板W上の銅膜6に接触しても銅膜6へダメージを与えないような軟らかいものであり、かつ電解液に侵されないものであることが必要である。例えば、フッ素ゴム(FPM)やエチレンプロピレンゴム(EPDM)を材料とするOリングを堰58,59として用いることができる。この場合、各開口部48a,49aの周囲に環状溝を形成し、Oリングをこれらの環状溝に嵌め込んでもよい。
【0062】
次に、本発明の第2の実施形態について図6を参照して説明する。図6は、本発明の第2の実施形態に係る電解加工方法を実施するための電解加工装置を示す断面図である。なお、特に説明しない本実施形態の構成および動作は上述した第1の実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。
【0063】
図6に示すように、電解加工装置は、アノード液を貯留する第1貯留タンク71と、カソード液を貯留する第2貯留タンク72とを備えている。第1貯留タンク71は、アノード電極31のマニホルド41に第1供給流路51を介して接続されており、第2貯留タンク72は、カソード電極32のマニホルド42に第2供給流路52を介して接続されている。第1供給流路51および第2供給流路52にはポンプ73がそれぞれ設けられており、これらのポンプ73により、第1貯留タンク71および第2貯留タンク72に貯留されているアノード液およびカソード液がそれぞれマニホルド41,42に送り込まれるようになっている。なお、アノード液用の第1貯留タンク71とカソード液用の第2貯留タンク72を個別に設ける理由は、電解液を介した短絡を防ぐためである。
【0064】
アノード電極31を収容する浴槽30Aは第1排出流路61を介して第1貯留タンク71に連通しており、カソード電極32を収容する浴槽30Bは第2排出流路62を介して第2貯留タンク72に連通している。第1排出流路61および第2排出流路62にはポンプ74がそれぞれ設けられており、これらのポンプ74により、浴槽30A,30Bに貯留されたアノード液およびカソード液がそれぞれ第1貯留タンク71および第2貯留タンク72に回収されるようになっている。そして、第1貯留タンク71および第2貯留タンク72に回収されたアノード液およびカソード液は、第1供給流路51および第2供給流路52を介してアノード電極31およびカソード電極32に供給され、再び基板W上の銅膜6の処理に供される。なお、このように第1排出流路61および第2排出流路62にポンプ74を設けることは、電解液(アノード液およびカソード液)の粘性が高く流動性が悪い場合に特に有効である。
【0065】
このように、本実施形態によれば、アノード液とカソード液を回収して再利用することができるので、第1の実施形態と比べて電解液(アノード液、カソード液)に要する費用を低くすることができる。また、本実施形態においても、アノード液の循環経路(第1供給流路51、マニホルド41、通液孔48、浴槽30A、第1排出流路61、第1貯留タンク71)とカソード液の循環経路(第2供給流路52、マニホルド42、通液孔49、浴槽30B、第2排出流路62、第2貯留タンク72)とが互いに独立して設けられているので、アノード液とカソード液の電気的な絶縁状態を保つことができる。
【0066】
次に、本発明の第3の実施形態について図7を参照して説明する。図7は、本発明の第3の実施形態に係る電解加工方法を実施するための電解加工装置を示す断面図である。なお、特に説明しない本実施形態の構成および動作は上述した第1の実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。
【0067】
図7に示すように、絶縁体36と加工テーブル12との間には弾性体77が配置されている。この弾性体77は加工テーブル12のほぼ上面全体を覆うように設けられている。この弾性体77を設けることによって、基板W上の銅膜6が絶縁体36に接触するときの圧力を低減させることができるとともに、絶縁体36の上面(接触面)の全体の亘って圧力分布を均一にすることができる。なお、図4に示すのこぎり歯形状の断面を有する樹脂製パッドを絶縁体36として用いる場合は、樹脂製パッドと加工テーブル12との間に弾性体77を設けることが好ましい。これにより、基板Wが樹脂製パッドの凸部に局所的に強く押圧されてしまうことが防止できる。
【0068】
次に、本発明の第4の実施形態について図8を参照して説明する。図8は、本発明の第4の実施形態に係る電解加工方法を実施するための電解加工装置を示す断面図である。なお、特に説明しない本実施形態の構成および動作は上述した第1の実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。
【0069】
図8に示すように、本実施形態に用いられる絶縁体36は単一の部材であり、加工テーブル12、アノード電極31、およびカソード電極32の上面を覆うように加工テーブル12に取り付けられている。絶縁体36には、アノード液およびカソード液を通過させる複数の貫通孔36cが形成されている。これらの貫通孔36cは、アノード電極31およびカソード電極32に形成された通液孔48,49の開口部48a,49aの位置に対応して形成されており、マニホルド41,42に供給されたアノード液およびカソード液が、通液孔48,49および貫通孔36cを通って基板Wの銅膜6に接触するようになっている。
【0070】
本実施形態によれば、単一の部材である絶縁体36により、切れ目のない滑らかな接触面が実現されるので、基板W上の銅膜6に傷を与えてしまうことを防止することができ、また、絶縁体36の加工テーブル12への取り付けを容易に行うことができる。さらに、絶縁体36として弾性パッドを用いた場合は、基板Wの押し付け力の分布を基板Wの全面に亘って均一とすることができる。
【0071】
なお、第1乃至第4の実施形態では、1つのアノード電極および1つのカソード電極3のみが設けられているが、複数のアノード電極および複数のカソード電極を設けてもよい。このような構成例について図9を参照して説明する。図9は、本発明の第5の実施形態に係る電解加工方法を実施するための電解加工装置を示す平面図である。なお、特に説明しない本実施形態の構成および動作は上述した第1の実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。
【0072】
図9に示すように、電解加工装置は、複数のアノード電極31と、複数のカソード電極32とを備えており、これらは並列に配置されている。これらのアノード電極31とカソード電極32は交互に配置され、それぞれ電源33の陽極および陰極に接続されている。なお、図示はしないが、それぞれのアノード電極31とカソード電極32との間には隔壁35および絶縁体36が配置されており(図3B参照)、アノード液とカソード液とが電気的に絶縁されている。
【0073】
本実施形態では、揺動機構に代えて、並進機構80が設けられている。この並進機構80は、アーム10が取り付けられる可動フレーム81と、可動フレーム81を貫通するボールねじ82と、このボールねじ82を回転させる往復動用モータ83とを備えている。ボールねじ82は水平方向に延び、かつアノード電極31およびカソード電極32の配列方向に沿って延びている。このような構成により、往復動用モータ83の駆動に伴って、可動フレーム81およびアーム10が往復移動し、これにより基板キャリアー11がアノード電極31およびカソード電極32の配列方向(アノード電極31とカソード電極32の長手方向と垂直な方向)に沿って往復移動(スキャン移動)する。この場合、基板キャリアー11と加工テーブル12とが相対運動する距離は、カソード極間32の間隔と同じか、またはそれ以上であることが好ましい。
【0074】
また、可動フレーム81の上部には上下動用モータ85が設置されており、この上下動用モータ85には上下方向に延びるボールねじ(図示せず)が連結されている。このボールねじにはアーム10の端部が取り付けられており、上下動用モータ85の駆動に伴ってアーム10がボールねじを介して上下動するようになっている。なお、アノード電極31、カソード電極32、および絶縁体36から構成される矩形状の加工部90の大きさは、基板Wの直径よりも一回り大きく設定されている。
【0075】
このような構成を有する本実施形態によれば、複数のアノード電極31(給電電極)からアノード液を介して非接触で基板の広い部位に給電することができる。また、複数のカソード電極(加工電極)32と複数の絶縁体36とによって、基板W上の銅膜6の全面を確実に加工することができる。
【0076】
ここで、加工速度を変えるために、カソード電極32と基板Wとの距離を調整する距離調整機構を設けてもよい。このような構成例について図10を参照して説明する。図10は本発明の第6の実施形態に係る電解加工方法を実施するための電解加工装置を示す断面図である。なお、特に説明しない本実施形態の構成および動作は上述した第5の実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。
【0077】
図10に示すように、各カソード電極32は支持アーム92にそれぞれ支持されており、これらの支持アーム92はL字アーム94を介して距離調整機構95にそれぞれ連結されている。この距離調整機構95は、L字アーム94が固定される可動フレーム96と、可動フレーム96を貫通するボールねじ97と、ボールねじ97を回転させる距離調整用モータ98とを備えている。距離調整用モータ98がボールねじ97を回転させると、可動フレーム96が上下動し、これに伴い、L字アーム94および支持アーム92とともにカソード電極32が上下動する。カソード電極32は、支持アーム92に支持された状態で浴槽30Bの内部に配置され、浴槽30B内で上下動するようになっている。この実施形態では、浴槽30Bの底部は平坦となっており、底部に形成された排出孔を介してカソード液が第2排出流路62に流れ込むようになっている。
【0078】
なお、図10には1つの支持アーム92、1つのL字アーム94、および1つの距離調整機構95のみが記載されているが、各カソード電極32に対応して複数の支持アーム92、L字アーム94、および距離調整機構95が設けられている。すなわち、それぞれのカソード電極32は独立に上下動可能となっており、銅膜6の厚さ分布に応じてカソード電極32と基板Wとの距離を変えることができる。例えば、銅膜6の厚い部分に対応するカソード電極32と基板Wとの距離を小さくし、銅膜6の薄い部分に対応するカソード電極32と基板Wとの距離を大きくすることで、基板Wの全面に亘って均一な膜厚を得ることができる。また、総てのカソード電極32を基板Wに近づければ、全体的な加工速度を上げることができる。なお、第5および第6の実施形態では、基板キャリアー11を往復移動(並進運動)させる並進機構が採用されているが、これに代えて図3Aに示すような揺動機構を採用してもよい。
【0079】
次に、本発明の第7の実施形態について図11Aおよび図11Bを参照して説明する。図11Aは本発明の第7の実施形態に係る電解加工方法を実施するための電解加工装置を示す断面図であり、図11Bはアノード電極31とカソード電極32を上から見たときの平面図である。なお、特に説明しない本実施形態の構成および動作は上述した第1の実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。
【0080】
図11Aおよび図11Bに示すように、それぞれのカソード電極32は、その長手方向に沿った位置で複数の電極部99に分割され、これらの電極部99はカソード電極32の長手方向に沿って一列に配列されている。それぞれの電極部99の下部には、電極部99と基板Wとの距離を調整する距離調整機構100が設けられている。なお、本実施形態では、距離調整機構100として圧電素子(圧電アクチュエータ)が用いられている。
【0081】
各電極部99の内部には、第1の実施形態と同様に、マニホルド42と、このマニホルド42に連通する複数の通液孔49がそれぞれ形成されている。隣接するマニホルド42は弾性チューブ101を介して連通しており、第2供給流路52から供給されたカソード液は、弾性チューブ101を介して各マニホルド42に供給されるようになっている。弾性チューブ101は、隣接する電極部99同士が互いの動きを阻害することなく上下動できる程度に変形自在であることが好ましい。なお、図示はしないが、本実施形態においても、それぞれのアノード電極31とカソード電極32との間には隔壁35および絶縁体36が配置されており(図3B参照)、アノード液とカソード液とが電気的に絶縁されている。
【0082】
それぞれの電極部99は配線を介して電源33および制御部(後述する)に接続されており、制御部によって各電極部99の電流密度が独立して変えられるようになっている。したがって、銅膜6の厚さ分布に応じて、電極部99の電流密度および電極部99と基板Wとの距離を変えることができ、基板Wの全面に亘って均一な膜厚を得ることができる。例えば、銅膜6の厚い部分に対応する電極部99の電流密度を大きくし、銅膜6の薄い部分に対応する電極部99の電流密度を小さくすることで、基板Wの全面に亘って均一な膜厚を得ることができる。また、電解加工後にCMP加工を行う場合は、CMPの加工特性を考慮し、銅膜6の外周部を厚めに残すようにすることもできる。このように、本実施形態によれば、基板のプロファイル(膜厚分布)を精密にコントロールすることが可能となる。
【0083】
なお、今まで述べた実施形態は適宜組み合わせることができる。例えば、図4に示すのこぎり歯形状の断面を有する樹脂製パッドを、第2乃至第7の実施形態における電解加工装置に用いてもよく、また、第1貯留タンク71および第2貯留タンク72を第3乃至第7の実施形態に組み込んでもよい。
【0084】
次に、上述した電解加工装置を備えた基板処理システムについて図12を参照して説明する。図12は、電解加工装置が組み込まれた基板処理システムを示す平面図である。なお、この基板処理システムに組み込まれる電解加工ユニットとして、上記第7の実施形態に係る電解加工装置が用いられている。しかしながら、この基板処理システムに用いられる電解加工装置は第7の実施形態のものに限られず、第1乃至第6のいずれの電解加工装置を用いてもよい。
【0085】
図12に示すように、基板処理システムは、基板(例えば半導体ウエハ)の搬入および搬出を行う2基のロード/アンロードユニット105と、基板上の銅膜(金属膜)をエッチング除去する電解加工ユニット(電解加工装置)106と、基板上の銅膜を化学機械的に研磨するCMPユニット(Chemical Mechanical Polishing unit)107と、研磨後の基板を洗浄して乾燥させる洗浄ユニット108と、基板を搬送する搬送ロボット109および搬送ユニット110とを備えている。
【0086】
また、この基板処理システムは、電解加工ユニット106に電解液(アノード液およびカソード液を)を供給する電解液供給ユニット111と、電解液を管理する電解液管理ユニット112と、CMPユニット107に研磨液を供給する研磨液供給ユニット113と、基板を反転させる反転機114と、基板上の膜厚を測定する膜厚測定ユニット(膜厚モニター)115と、この基板処理システムの動作を制御する制御部116とを備えている。上述した、基板処理システムの総ての構成要素は、矩形状のフレーム117内に配置されている。
【0087】
ロード/アンロードユニット105上にはカセット(図示せず)がそれぞれ載置されており、これらのカセット内には、複数の基板が被加工面(銅膜が形成されている面)が上を向くように収容されている。搬送ロボット109は、水平面内で屈折自在な関節アーム109aを有しており、それぞれ上下に2つの把持部をドライフィンガーとウェットフィンガーとして使い分けている。ロード/アンロードユニット105、膜厚測定ユニット115、反転機114、および洗浄ユニット108は、搬送ロボット109の関節アーム109aが到達可能な位置に配置されており、搬送ロボット109はこれらのユニットの間で基板を搬送する。
【0088】
膜厚測定ユニット115は、加工前の基板の膜厚分布を測定し、制御部116は、測定された膜厚分布に基づいてCMPユニット107や電解加工ユニット106の加工速度を制御するようになっている。また、膜厚測定ユニット115は、加工の終点を検知する終点検知装置としても用いることができる。なお、膜厚測定ユニット115としては、渦電流を利用した渦電流式膜厚測定器が好適に使用される。
【0089】
反転機114と、CMPユニット107と、電解加工ユニット106との間の基板の搬送は、搬送ユニット110によって行われる。この搬送ユニット110は、図3Aに示す揺動機構17と上下動機構20により構成されている。すなわち、搬送ユニット110は、基板キャリアー11が取り付けられたアーム10と、揺動用モータ15と、揺動軸16と、ボールねじ18と、上下動用モータ19とを備えている(図3A参照)。基板キャリアー11は、基板を保持したまま揺動軸16を中心に回転し、これにより基板が、反転機114、CMPユニット107、および電解加工ユニット106の間で搬送される。このように、搬送ユニット110は、基板を基板キャリアー11から離脱させることなく基板を搬送することができるので、スループットを向上させることができる。
【0090】
電解加工ユニット106は、送液ライン120により電解液供給ユニット111に接続されている。この送液ライン120は、第1供給流路51、第2供給流路52、第1排出流路61、および第2排出流路62(図6参照)を備えている。すなわち、電解加工ユニット106のアノード電極31およびカソード電極32には、電解液供給ユニット111からアノード液およびカソード液が送液ライン120の第1供給流路51および第2供給流路52を介してそれぞれ供給されるようになっている。また、電解加工ユニット106に供給されたアノード液およびカソード液は、送液ライン120の第1排出流路61および第2排出流路62を介して電解液供給ユニット111に回収されるようになっている。この場合も、アノード液の循環流路とカソード液の循環流路は互いに独立に設けられており、アノード液とカソード液との電気的絶縁が保たれている。なお、この基板処理システムでは、アノード液およびカソード液として同一種の電解液を用いている。
【0091】
ここで、電解加工の速度は、一般に、電解液の温度に依存する。具体的には、電解液の温度が高いと、加工速度が大きくなる傾向にある。したがって、電解加工の安定化のためには、電解液を適度な温度に管理する必要がある。また、電解液の成分が消費されると、好ましいpHや電気伝導率を維持することができなくなる。通常、良好な電解加工を行うためには数十mS/cmの電気伝導率を維持する必要があり、これが大きく変化すると、微細な配線パターンを加工する上で望ましい選択性が得られない。さらに、電解液を循環させながら一定期間使用すると、除去した金属成分の濃度が高くなり、電解液に金属が析出して基板の被加工面へダメージを与えてしまう。
【0092】
このような理由から、電解液の管理は極めて重要であり、このために本基板処理システムは電解液管理ユニット112を備えている。この電解液管理ユニット112は、電解液の温度、電気伝導率、pH、および含有金属(銅)濃度の少なくとも1つの要素に基づいて電解液の管理を行うようになっている。
【0093】
本実施形態では、電解加工ユニット106に隣接してコンディショニングユニット121が配置されている。このコンディショニングユニット121を設ける理由は次の通りである。すなわち、電解加工ユニット106では、基板上の銅膜に生成した錯体を絶縁体が擦り取るため、絶縁体の上面には錯体などの生成物が経時的に堆積する。一方、加工の安定性や加工の面内均一性を常に良好に維持するためには、絶縁体の接触面(上面)の状態を常に一定に保つことが望まれる。そこで、絶縁体の上面に堆積した生成物を除去するために、絶縁体の接触面をコンディショニングするコンディショニングユニット121が設けられている。このコンディショニングユニット121は、絶縁体の接触面をコンディショニングするコンディショナー122と、このコンディショナー122を揺動させる揺動機構123とを備えている。揺動機構123はアーム124を有し、このアーム124の先端にコンディショナー122が回転自在に取り付けられている。本実施形態では、コンディショナー122として、自身の軸心を中心として回転する円筒状のブラシが用いられている。なお、ブラシに代えて洗浄液を絶縁体の接触面に向けて噴射するスプレーを用いてもよい。
【0094】
図12に示すように、電解加工が行われている間は、コンディショナー122は電解加工ユニット106の側方に位置している。そして、電解加工が終了して基板が電解加工ユニット106から搬出されると、揺動機構123はアーム124を揺動させて、コンディショナー122を絶縁体36の上方のコンディショニング位置まで移動させる。次に、揺動機構123はコンディショナー122を下降させて絶縁体36の接触面に接触させ、同時に図示しない自転用モータを駆動してコンディショナー122を回転(自転)させる。この状態でコンディショナー122を揺動させることにより絶縁体36の接触面のコンディショニングを行う。コンディショニング終了後は、コンディショナー122の回転を停止させ、その後、コンディショナー122を上昇させ、アーム124を揺動させて、コンディショナー122を元の位置に戻す。
【0095】
CMPユニット107は、上面に研磨布などの研磨パッド130を貼付して研磨面を構成する研磨テーブル131を備えている。研磨テーブル131は、図示しないモータにより、その軸心を中心として回転するようになっている。このCMPユニット107は次のように動作する。まず、基板キャリアー11と研磨テーブル131とをそれぞれ自転させ、研磨液供給ユニット113から研磨液を研磨テーブル131の研磨面に供給する。そして、基板キャリアー11を下降させて基板を所定の圧力で研磨面に押圧する。研磨液供給ユニット113から供給される研磨液には、例えばアルカリ溶液にシリカ等の微粒子からなる砥粒を懸濁したスラリーが用いられ、アルカリによる化学的研磨作用と、砥粒による機械的研磨作用との複合作用である化学的・機械的研磨によって基板が平坦かつ鏡面状に研磨される。
【0096】
洗浄ユニット108は、基板を略水平に保持して高速で回転させる基板保持部(例えばスピンチャック)を有している。この洗浄ユニット108では、まず、基板を回転させた状態で該基板の表面に純水(DIW)等の洗浄液が供給されて洗浄工程(リンス工程)が行われる。この洗浄工程後の基板の表面には、洗浄液が付着して残留しているので、その洗浄液を除去するために基板を高速で回転させ、遠心力で洗浄液を除去する乾燥工程(スピン乾燥工程)が行われる。
【0097】
次に上記構成を有する基板処理システムの動作について図13および図14を参照して説明する。図13は図12に示す基板処理システムの動作の流れを示す図であり、図14は、図12に示す電解加工ユニットの動作の流れを示す図である。
【0098】
図13に示すように、まず、銅膜(金属膜)が表面に形成された1枚の基板を、ロード/アンロードユニット105のカセットから搬送ロボット109により取り出す(ステップ1)。基板は膜厚測定ユニット115に搬送され、ここで基板の表面に形成された銅膜の複数の加工点における膜厚が測定される(ステップ2)。膜厚測定ユニット115の測定結果は制御部116に送られ、制御部116により加工前のプロファイル(加工前の膜厚分布)が取得される。このプロファイルは電解加工ユニット106およびCMPユニット107の制御に利用される。その後、基板は搬送ロボット109により反転機114に搬送され、反転機114により銅膜が形成された表面が下を向くように反転させられる(ステップ3)。
【0099】
次に、搬送ユニット110が稼働して基板キャリアー11を反転機114まで移動させ、基板を基板キャリアー11に保持させる。そして、搬送ユニット110により基板を反転機114から電解加工ユニット106まで移動させ、電解加工ユニット106により基板を加工する(ステップ4)。
【0100】
電解加工ユニット106では次のようにして電解加工が行われる。まず、図14に示すように、上下動用モータ19(図3A参照)により基板キャリアー11を下降させて基板Wを絶縁体36に接触させる(ステップ1´)。この状態で電解液供給ユニット111からアノード電極31と基板Wとの間にアノード液を供給し、同時にカソード電極32と基板Wとの間にカソード液を供給する(ステップ2´)。その後、スクロール機構25を駆動させ、加工テーブル12をスクロール運動させる(ステップ3´)。そして、アノード電極31とカソード電極32との間に電圧を印加し(ステップ4´)、この状態で、揺動機構17を駆動させて基板キャリアー11を反復揺動させる。(ステップ5´)。このようにして基板キャリアー11と加工テーブル12とを相対的に往復移動させることにより、銅膜の総ての部位がカソード電極32と絶縁体36とを交互に通過し、絶縁体36によって銅膜の凸部の錯体が選択的に除去される。
【0101】
所定の加工時間経過後、アノード電極31とカソード電極32への電圧の印加を停止し、基板Wと加工テーブル12との相対運動を停止し、アノード液およびカソード液の供給を停止し、これにより電解加工を終了させる(ステップ6´)。そして、基板キャリアー11を上昇させて基板Wを絶縁体36から離間させ、搬送ユニット110により基板Wを基板キャリアー11とともにCMPユニット107に搬送する(ステップ7´)。このとき、絶縁体36の上面に存在する錯体などの残渣を除去するために、コンディショニングユニット121を稼働させて絶縁体36の上面(接触面)のコンディショニングを行う(ステップ8´)。
【0102】
CMPユニット107では、研磨テーブル131が図示しないモータに駆動されて回転し、同時に基板キャリアー11が自転用モータ22(図3A参照)に駆動されて基板とともに回転する。研磨テーブル131の上面(研磨面)には研磨液供給ユニット113から研磨液が供給され、この状態で基板キャリアー11が下降し、基板の被研磨面を研磨テーブル131の研磨面に押し付ける。基板は、研磨液の存在下で研磨面と摺接し、これによって基板の表面が平坦に研磨される(図13のステップ5)。このようにして、銅膜やバリア層などが除去され、基板の表面に銅配線(金属配線)が形成される(図2D参照)。
【0103】
CMP加工の終了後、基板キャリアー11が上昇して基板を研磨テーブル131から離間させ、さらに搬送ユニット110が揺動して基板を反転機114に搬送する(ステップ6)。反転機114は基板を反転させて被加工面を上に向かせる。そして、搬送ロボット109が基板を受け取り、基板を洗浄ユニット108に搬送し、ここで基板を洗浄する(ステップ7)。
【0104】
洗浄ユニット108では、基板保持部が搬送ロボット109から基板を受け取り、基板を水平面内で回転させる。そして、回転する基板の表面に洗浄液が噴射されて基板上に残留する砥粒などの研磨残渣が除去される。その後、基板保持部によって基板を高速で回転させて基板上の洗浄液を除去し、これにより基板を乾燥させる。洗浄後、基板は、必要に応じて、膜厚測定ユニット115に搬送され、ここで所望の加工結果が得られているか否かが確認される(ステップ8)。その後、基板は搬送ロボット109によりロード/アンロードユニット105のカセットに戻される(ステップ9)。このように、本実施形態に係る基板処理システムによれば、ドライな状態で搬入された基板を加工し、ドライな状態でロード/アンロードユニット105のカセットに戻す、いわゆるドライイン−ドライアウトを実現することができる。
【0105】
ここで、電解加工ユニット106における各プロセス条件を以下に示す。なお、カッコ内の数値はプロセス条件の一例を示している。
・カソード電極間隔: 40〜80mm (50mm)
・絶縁体の材料: IC1000、その他 (IC1000)
・押し付け荷重: 0.25〜2.0psi (1.0psi)
・電流密度: 10〜100mA/cm2 (10,55,100mA/cm2
・電解液供給流量: 100〜500ml/min (500ml/min)
・基板キャリアーの移動速度(スキャン速度):4〜16mm/s (10mm/s)
・基板回転速度: 0〜20min-1 (0min-1
・基板インデックス角度: 45°/scan (45°/scan)
・テーブルスクロール半径: 10mm (10mm)
・テーブルスクロール速度: 50〜200min-1 (200min-1
・プロセス時間: 80second (80second)
・電解液: リン酸、HEDP等 (85%リン酸)
【0106】
なお、カッコ内数値の条件下で得られた実験結果を図15に示す。図15はカソード電極の電流密度と加工速度(Removal Rate)との関係を示すグラフである。図15において、縦軸は加工速度を示し、横軸は基板の周方向に配列した加工点(49点)を表している。ここで、基板インデックス回転とは、テーブルが一往復するごとに基板を所定角度(例えば45°)だけ一定の方向に回転させる運動をいう。原則的に、基板キャリアーの動きは、基板を経常的に回転させない場合(基板回転速度=0min−1)は基板にインデックス回転の動きをさせ、基板を経常的に回転させる場合(基板回転速度>0min−1)は基板をインデックス回転させないようにする。
【0107】
図15から分かるように、電流密度が高いほど加工速度が高い。また、図15から、加工速度が低いほど均一な加工レートが得られることが分かる。このように、電流密度が大きいと加工速度は大きくなるものの、被加工面が荒れるため、電流密度は加工速度と加工の均一性とを勘案して決められるべきである。なお、基板の移動速度(スキャン速度)、テーブルのスクロール速度、および電解液供給流量と面荒れとの相関関係は殆ど無かった。
【0108】
上述したように、本発明によれば、給電電極と加工電極との間に絶縁体を介在させることにより、基板上の金属膜への給電を確実に行うことができ、かつ加工電極に対向する金属膜の部位の電解加工を確実に行うことができる。したがって、加工圧力を低くすることが可能になるため、基板へのダメージを抑制しつつ所望の加工速度が確保でき、スループットの向上を図ることができる。
【0109】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1A】銅配線基板の一製造例を工程順に示す図である。
【図1B】銅配線基板の一製造例を工程順に示す図である。
【図1C】銅配線基板の一製造例を工程順に示す図である。
【図2A】本発明を利用した銅配線基板の一製造例を工程順に示す図である。
【図2B】本発明を利用した銅配線基板の一製造例を工程順に示す図である。
【図2C】本発明を利用した銅配線基板の一製造例を工程順に示す図である。
【図2D】本発明を利用した銅配線基板の一製造例を工程順に示す図である。
【図3A】本発明第1の実施形態に係る電解加工方法を実施するための電解加工装置の一例を示す断面図である。
【図3B】図3Aに示すIII−III線断面図である。
【図4】図3Aおよび図3Bに示す電解加工装置に用いられる絶縁体の一例を示す斜視図である。
【図5A】電解加工装置の他の構成例を示す断面図である。
【図5B】図5Aに示すV−V線断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る電解加工方法を実施するための電解加工装置を示す断面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る電解加工方法を実施するための電解加工装置を示す断面図である。
【図8】本発明の第4の実施形態に係る電解加工方法を実施するための電解加工装置を示す断面図である。
【図9】本発明の第5の実施形態に係る電解加工方法を実施するための電解加工装置を示す平面図である。
【図10】本発明の第6の実施形態に係る電解加工方法を実施するための電解加工装置を示す断面図である。
【図11A】本発明の第7の実施形態に係る電解加工方法を実施するための電解加工装置を示す断面図である。
【図11B】アノード電極とカソード電極を上から見たときの平面図である。
【図12】電解加工装置が組み込まれた基板処理システムを示す平面図である。
【図13】図12に示す基板処理システムの動作の流れを示す図である。
【図14】図12に示す電解加工ユニットによって行われる動作の流れを示す図である。
【図15】カソード電極の電流密度と加工速度(Removal Rate)との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0111】
W 基板
6 銅膜
10 アーム
11 基板キャリアー
12 加工テーブル
17 揺動機構
20 上下動機構
25 スクロール機構
31 給電電極
32 加工電極
36 絶縁体
36c 貫通孔
48a,49a 開口部
58 堰
105 ロード/アンロードユニット
106 電解加工ユニット(電解加工装置)
107 CMPユニット
108 洗浄ユニット
109 搬送ロボット
110 搬送ユニット
111 電解液供給ユニット
112 電解液管理ユニット
113 研磨液供給ユニット
114 反転機
115 膜厚測定ユニット
116 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に金属膜が形成された基板を加工する電解加工方法であって、
少なくとも1つの給電電極と少なくとも1つの加工電極とをテーブルの上に配置し、
前記給電電極と前記加工電極との間に絶縁体を配置し、
前記金属膜が前記給電電極および前記加工電極に対向するように基板キャリアーにより基板を保持し、
前記基板を前記絶縁体に接触させ、
第1の電解液および第2の電解液を、前記絶縁体により電気的に絶縁させた状態で前記給電電極と基板との間、および前記加工電極と基板との間にそれぞれ供給し、
前記給電電極と前記加工電極との間に電圧を印加し、
前記基板キャリアーと前記テーブルとを相対運動させて基板上の金属膜の電解加工を行うことを特徴とする電解加工方法。
【請求項2】
基板上の所定の加工点が前記加工電極と前記絶縁体とを交互に通過するように前記基板キャリアーと前記テーブルとを相対運動させることを特徴とする請求項1に記載の電解加工方法。
【請求項3】
前記給電電極の上面に設けられた複数の開口部から第1の電解液を供給し、前記加工電極の上面に設けられた複数の開口部から第2の電解液を供給することを特徴とする請求項1に記載の電解加工方法。
【請求項4】
前記複数の開口部を囲むように複数の堰を設けて、第1の電解液を前記給電電極の上面に溜めるとともに、第2の電解液を前記加工電極の上面に溜めることを特徴とする請求項3に記載の電解加工方法。
【請求項5】
前記絶縁体は、前記給電電極および前記加工電極を覆うように配置された単一の部材であり、前記絶縁体に形成された貫通孔から該絶縁体と基板との間に電解液を供給することを特徴とする請求項1に記載の電解加工方法。
【請求項6】
基板と弾性パッドから構成された前記絶縁体とを摺接させながら前記電解加工を行うことを特徴とする請求項1に記載の電解加工方法。
【請求項7】
基板と固定砥粒パッドから構成された前記絶縁体とを摺接させながら前記電解加工を行うことを特徴とする請求項1に記載の電解加工方法。
【請求項8】
前記弾性パッドは、のこぎり歯形状の断面を有する樹脂製パッドであることを特徴とする請求項6に記載の電解加工方法。
【請求項9】
前記テーブルと前記絶縁体との間に弾性体を介在させたことを特徴とする請求項1に記載の電解加工方法。
【請求項10】
第1の電解液と第2の電解液とを、電気的絶縁を保ちつつ独立に循環させることを特徴とする請求項1に記載の電解加工方法。
【請求項11】
前記第1の電解液と前記第2の電解液の主成分は同一であることを特徴とする請求項1に記載の電解加工方法。
【請求項12】
電解加工開始時における前記第1の電解液と前記第2の電解液のそれぞれの主成分は略同一の濃度であることを特徴とする請求項11に記載の電解加工方法。
【請求項13】
前記基板キャリアーと前記テーブルとの相対運動は、前記基板キャリアーの回転運動、前記基板キャリアーの揺動、および前記基板キャリアーの並進運動のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の電解加工方法。
【請求項14】
前記基板キャリアーと前記テーブルとの相対運動は、前記テーブルのスクロール運動を含むことを特徴とする請求項1に記載の電解加工方法。
【請求項15】
複数の前記給電電極と複数の前記加工電極を交互に配置したことを特徴とする請求項1に記載の電解加工方法。
【請求項16】
前記基板キャリアーと前記テーブルとが相対運動する距離は、前記複数の加工電極の間隔と同じか、またはそれ以上であることを特徴とする請求項15に記載の電解加工方法。
【請求項17】
前記複数の加工電極と基板との距離を変えることにより、基板上の金属膜の厚さ分布を調整することを特徴とする請求項15に記載の電解加工方法。
【請求項18】
前記加工電極は、その長手方向に沿って一列に並ぶ複数の電極部に分割されていることを特徴とする請求項1に記載の電解加工方法。
【請求項19】
前記複数の加工電極に供給する電流の分配を制御することにより、基板上の金属膜の厚さ分布を調整することを特徴とする請求項18に記載の電解加工方法。
【請求項20】
ロード/アンロードユニットから基板を取り出し、
金属膜が表面に形成された基板を電解加工し、
前記電解加工後、基板を洗浄して乾燥し、
基板を前記ロード/アンロードユニットに戻し、
前記電解加工は、
少なくとも1つの給電電極と少なくとも1つの加工電極との間に配置された絶縁体に基板を接触させ、
第1の電解液および第2の電解液を、前記絶縁体により電気的に絶縁させた状態で前記給電電極と基板との間、および前記加工電極と基板との間にそれぞれ供給し、
前記給電電極と前記加工電極との間に電圧を印加し、
前記絶縁体と基板とを相対運動させることを特徴とする基板処理方法。
【請求項21】
前記電解加工後に、基板上に残っている金属膜を研磨することを特徴とする請求項20に記載の基板処理方法。
【請求項22】
前記電解研磨の前に基板上の金属膜の厚さを測定することを特徴とする請求項20に記載の基板処理方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−51374(P2007−51374A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−219820(P2006−219820)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】