説明

電解洗浄装置

【課題】本発明は、筒状の洗浄対象物であっても、洗浄対象面を損傷させることなく好適に電解洗浄を行うことができる電解洗浄装置を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に係る電解洗浄装置は、電解洗浄液を収容する洗浄槽2内において、陰陽一対の電極10,20間に洗浄対象物60を配置するとともに、これら一対の電極10,20及び洗浄対象物60を電解洗浄液中に浸漬して通電し、電解洗浄を行う電解洗浄装置であって、前記洗浄対象物60は、洗浄対象部位61を外周側に有する筒状体であり、前記一対の電極10,20のうちの一方の電極10が前記洗浄対象物60を保持して該洗浄対象物60と電気的に接続し、前記一対の電極10,20のうちの他方の電極20が洗浄対象部位61と間隔をあけて配置され、且つ、前記洗浄対象部位61の少なくとも一部と対向するような構成となることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解洗浄液を収容する洗浄槽内において、陰陽一対の電極間に洗浄対象物を配置するとともに、これら一対の電極及び洗浄対象物を電解洗浄液中に浸漬して通電し、電解洗浄を行う電解洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電解洗浄液を収容する洗浄槽内において、陰陽一対の電極間に洗浄対象物を配置するとともに、前記一対の電極及び洗浄対象物を電解洗浄液中に浸漬して通電し、電解洗浄を行う電解洗浄装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この特許文献1に係る電解洗浄装置は、前記一対の電極のうちの一方の電極として機能する金属製のカゴに洗浄対象物を置き、且つ、前記一対の電極のうちの他方の電極を洗浄対象物の上方に間隔をあけて配置するものである。
【0004】
このような電解洗浄装置は、成型用の凹凸が一端面に形成された金型等の洗浄対象物を洗浄するのに好適に用いられるものである。かかる洗浄対象物は、前記凹凸が形成された一端面を洗浄すべく、洗浄対象部位としての一端面が前記他方の電極と対向して配置され、前記洗浄対象部位とは反対側端面が金属製のカゴに接触する状態となる。
【0005】
ところで、近年、成型用の凹凸が一端面に形成された金型以外にも、ロール状スタンパーのような外周面に成型用の凹凸が形成された筒状の金型が存在し、こういった筒状を有する金型を洗浄したいという要望が高まりつつある。
【0006】
なお、このような筒状を有する金型は、一般的に、液晶表示装置等において照明用面光源素子として使用されるバックライト等に使用されるプリズムシート、拡散シート及びプロジェクションテレビやマイクロフィルムリーダー等の表示画面として用いられる投写スクリーンに使用されるレンチキュラーレンズシート等の光学シートを製造するのに用いられるものである(例えば、特許文献2)。また、このような筒状を有する金型は、該金型を回転させつつ、成型用の凹凸が形成された外周面によって例えば樹脂等の成型対象物の成型を行うものである。
【0007】
【特許文献1】特許3532604号公報
【特許文献2】特開2002−086461号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述したような筒状を有する金型を洗浄する場合には、従来の金属製のカゴに洗浄対象物を置くタイプの電解洗浄装置では、以下に挙げるような種々の問題があった。
【0009】
第一に、上述のような筒状を有する金型は、その外周面に成型用の凹凸が形成されるものであるから、かかる外周面を直接電極(上述の場合では、金属製のカゴ)に接触させるのは好ましいことではない。
【0010】
第二に、電解洗浄を効率よく行うためには洗浄対象物と電極とを十分に接触させる必要があるが、筒状を有する洗浄対象物では、その接触面積を十分に確保することができない。即ち、筒状の洗浄対象物をその高さ方向に沿って立てた状態で金属製のカゴに配置した場合には、洗浄対象物の縁の部分のみしか金属製のカゴと接触させることができない。また、筒状を有する洗浄対象物を横倒しにした状態で金属製のカゴに配置した場合には、洗浄対象物が円筒形状のものであれば、接触する箇所が洗浄対象物の高さ方向に沿う直線状の部分のみとなってしまう。
【0011】
これでは、通電量が足りず、電解洗浄を効率よく行うことができない。加えて、電極との接触面積が小さいと電流が局所的に流れてしまい、過電流によって洗浄対象物を損傷してしまいかねない。
【0012】
そこで、本発明は、筒状の洗浄対象物であっても、洗浄対象部位を損傷させることなく好適に電解洗浄を行うことができる電解洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る電解洗浄装置は、電解洗浄液を収容する洗浄槽内において、陰陽一対の電極間に洗浄対象物を配置するとともに、これら一対の電極及び洗浄対象物を電解洗浄液中に浸漬して通電し、電解洗浄を行う電解洗浄装置であって、前記洗浄対象物は、洗浄対象部位を外周側に有する筒状体であり、前記一対の電極のうちの他方の電極が前記洗浄対象部位と間隔をあけて配置され、且つ、前記洗浄対象部位の少なくとも一部と対向するような構成となることを特徴とする。
【0014】
上記構成からなる電解洗浄装置によれば、前記一方の電極が前記洗浄対象物を保持し、且つ、他方の電極が前記洗浄対象部位と間隔をあけて配置されるため、洗浄対象部位に電極などを直接接触させることなく電解洗浄を行うことができる。
【0015】
また、前記電解洗浄装置は、前記一方の電極を陰極、前記他方の電極を陽極とする構成が好ましい。
【0016】
このようにすれば、洗浄対象物が陰極と電気的に接続されるため、洗浄対象物が陰極電解されることとなり、洗浄対象物を溶解させたり磨耗させることなく洗浄を行うことができる。特に、前記洗浄対象物がロール状スタンパーなどの金型である場合には、洗浄対象部位には微細な凹凸パターンが形成されているため、洗浄対象物を溶解させたり磨耗させることなく洗浄を行うことができる陰極電解が好ましい。
【0017】
また、前記一方の電極は、前記洗浄対象物に内周側から接触する構成が好ましい。
【0018】
このようにすれば、洗浄対象物の外周側の洗浄対象部位に前記一方の電極を接触させないようにしつつも、確実に前記洗浄対象物と電気的に接続することができる。
【0019】
また、前記一方の電極は、前記洗浄対象物の内周面に付勢状態で圧接する複数の接触部を備えて構成されるものが好ましい。
【0020】
このようにすれば、洗浄対象物が複数箇所において電気的に接続されるため、洗浄対象物の部位ごとの通電量の差を小さくして、洗浄むらの発生を好適に抑制することができる。
【0021】
また、前記一方の電極は、前記筒状の洗浄対象物の高さ方向に沿って配置される軸部を備え、前記複数の接触部は、前記軸部から突出させて設けられる構成が好ましい。
【0022】
このようにすれば、上述のような複数の接触部を有する一方の電極を容易に作製することができる。
【0023】
また、このような一方の電極としては、前記接触部は、前記洗浄対象物の内周面に接触する接触体と、該接触体を先端側で支持し基端側を前記軸部に固定される弾性変形可能な支持体とを備えて構成されるものが考えられる。
【0024】
また、前記接触体は、少なくとも前記洗浄対象物の内周面と接触する部位が、前記洗浄対象物の内径よりも大きい曲率で湾曲する湾曲形状を有する構成が好ましい。
【0025】
このようにすれば、前記接触体と洗浄対象物の内周面とが沿う状態となるため、電流が局所的に流れるのを好適に防止することができる。
【0026】
また、前記一方の電極は、前記軸部の軸線方向両端部を電極支持部材に着脱可能に支持される構成が好ましい。
【0027】
このようにすれば、電解洗浄の際に前記洗浄対象物を一方の電極に装着してから電極支持部材に設置し、電解洗浄の完了後に前記洗浄対象物を一方の電極ごと電極支持部材から取り外せばよい。従って、洗浄対象物を一方の電極に対して着脱する作業を容易に行うことができる。
【0028】
また、前記他方の電極は、前記洗浄対象物を囲むように配置される構成が好ましい。
【0029】
このようにすれば、他方の電極と洗浄対象部位とが広い範囲に亘って対向する状態となるため、電解洗浄を効率よく行うことができる。
【0030】
また、前記他方の電極は、前記洗浄対象物を囲む周方向において複数の電極部に分けて設けられ、且つ、前記洗浄対象物を囲む周方向における所定の箇所を中心に開閉可能に構成されるものが好ましい。
【0031】
このようにすれば、前記洗浄対象物を他方の電極に対して着脱する際には、他方の電極を開放し、該開放された部分から前記洗浄対象物を出し入れすればよいため、洗浄対象物を電解洗浄装置に容易にセットすることができる。
【0032】
また、前記他方の電極は、前記洗浄対象物の洗浄対象部位に対向して配置される複数の電極部材と、該複数の電極部材を着脱可能に支持するフレーム部材とを備えて構成されるものが好ましい。
【0033】
このようにすれば、洗浄対象物のサイズに合わせて電極部材を交換したり、電極部材が損傷した場合等に交換したりすることが容易となる。
【0034】
また、前記電極部材は、前記洗浄対象物の洗浄対象部位からの距離を調節可能に前記フレーム部材に取り付けられる構成が好ましい。
【0035】
このようにすれば、筒状の洗浄対象物の高さ方向に直交する方向(洗浄対象物が円筒状の場合における径方向)のサイズに応じて前記洗浄対象部位からの距離を調整でき、様々なサイズの洗浄対象物を好適に洗浄することができる。
【0036】
また、前記電極部材は、平坦な板状あるいは湾曲した板状を有する電極体を備え、該電極体には、両面間を連通する空間部が形成される構成が好ましい。
【0037】
このようにすれば、電解洗浄の際に発生する気体が前記貫通孔を通って抜けるため、電極体より鉛直方向下方で気体が発生したとしても、上昇してきた気体を該電極体が溜めてしまうことなく好適に逃がすことができる。
【0038】
また、前記他方の電極は、前記洗浄対象物を囲む全周のうち少なくとも一部の領域を開放して構成されるものであってもよい。
【0039】
このような他方の電極であれば、前記洗浄対象物を他方の電極に対して着脱する際には、他方の電極を開放する操作等を特に行うことなく、開放されている部分から前記洗浄対象物を出し入れすればよいため、洗浄対象物を電解洗浄装置に容易にセットすることができる。
【0040】
また、前記電解洗浄装置は、前記電解洗浄液を超音波振動させる超音波発生器を備える構成が好ましい。
【0041】
このようにすれば、電解洗浄液が超音波振動することにより洗浄対象物に付着した汚れの剥離を促進することができる。
【0042】
また、前記電解洗浄装置は、前記電解洗浄液を洗浄槽から排出し、夾雑物を除去し、再度洗浄槽内に投入する循環機構を備える構成が好ましい。
【0043】
このようにすれば、電解洗浄液を常時清浄な状態に維持することができ、電解洗浄を効果的に行うことができる。
【0044】
また、前記電解洗浄装置は、前記電解洗浄液を加熱する加熱装置を備える構成が好ましい。
【0045】
このようにすれば、電解洗浄液の温度を上昇させると通電量が増加するため、電解洗浄を活性化することができる。また、電解洗浄液の温度を上昇させると洗浄対象物に付着した汚れの膨潤を促進させることができる。従って、洗浄をより効果的に行うことができる。
【発明の効果】
【0046】
以上のように、本発明に係る電解洗浄装置によれば、筒状の洗浄対象物であっても、洗浄対象部位を損傷させることなく好適に電解洗浄を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
<第一実施形態>
以下に、本発明に係る電解洗浄装置の第一実施形態について説明する。
【0048】
第一実施形態に係る電解洗浄装置は、図1に示すような外観を有し、筐体1と、該筐体1の上部に配置され、電解洗浄液を収容する洗浄槽2と、電解洗浄液中に浸漬する態様で洗浄槽2の内部に配置される陽極(+)及び陰極(−)からなる電極3(図2に示す一対の電極10,20)と、これら電極3に給電する電源(図示しない)を備える。なお、前記電極3に対しては、前記電源から直流電流が供給される。
【0049】
該電解洗浄装置は、図2にも示されるように、一対の電極10,20間に洗浄対象物60を配置するとともに、これら一対の電極10,20及び洗浄対象物60を電解洗浄液中に浸漬して通電し、電解洗浄を行う電解洗浄装置である。以下では、電解洗浄装置自体の構成について概略的な説明を行う。
【0050】
前記電解洗浄装置には、電解洗浄以外にも前記電解洗浄液を超音波振動させて洗浄対象物の超音波洗浄を行うための超音波発生器7が備えられている。該超音波発生器7は、前記洗浄槽2の下方に設けられる。超音波洗浄は、電解洗浄と同時に又は交互に行うことができるが、電解洗浄と同時に行われるのが好ましい。また、前記電解洗浄装置は、前記電解洗浄液を加熱する加熱装置(図示しない)を備える構成が好ましい。
【0051】
さらに、前記電解洗浄装置は、電解洗浄液を洗浄槽から排出し、夾雑物を除去し、再度洗浄槽内に投入する循環機構(図示しない)を備える。ここで、循環機構について具体的に説明する。前記洗浄槽2は、底部分から電解洗浄液が供給されるように構成されており、洗浄槽2が満杯となると、所定の高さ位置に設けられた排出部2aから電解洗浄液がオーバーフローするようになっている。前記電解洗浄装置には、オーバーフローした電解洗浄液が流入するオーバーフロー槽6が洗浄槽2に連設されている。電解洗浄の際には、洗浄対象物60から剥離した付着物などの夾雑物や泡が発生するものであるが、電解洗浄液をオーバーフローさせることで、これら夾雑物や泡も電解洗浄液とともに洗浄槽2から排出される。オーバーフロー槽6に流入した電解洗浄液は、例えば濾過等の周知の方法によって浄化処理され、浄化された電解洗浄液は再度前記洗浄槽2に供給される。
【0052】
次に、前記電解洗浄装置によって洗浄される洗浄対象物60について説明する。前記洗浄対象物60は、図3に示すように、洗浄対象部位61を外周側に有する筒状体であり、特にロール状スタンパーのような図3(A)に示すような円筒状の金型が想定される。かかる円筒状を有する金型は、一般的に、液晶表示装置等において照明用面光源素子として使用されるバックライト等に使用されるプリズムシート、拡散シート及びプロジェクションテレビやマイクロフィルムリーダー等の表示画面として用いられる投写スクリーンに使用されるレンチキュラーレンズシート等の光学シートを製造するのに用いられるものである。ところで、実施例に用いた洗浄対象物60の大きさは、筒の高さ寸法が約100〜230mmで、高さ方向に直交する方向のサイズ(円筒状の洗浄対象物の直径)が約80〜100mmである。また、その厚みは、約0.3〜2.0mmである。
【0053】
なお、洗浄対象物60としては、上述のような金型以外にも、メッキ対象物や搬送ローラーなどが考えられる。また、洗浄対象物60としては、円筒状のものに限られず、図3(B)〜(D)に示すような角筒状を有するものも考えられ、具体的には、断面四角形状(又は略四角形状)のものや、断面六角形状(又は略六角形状)や断面八角形状(又は略八角形状)のものが考えられる。ただし、以下では、洗浄対象物60が円筒状である場合(特に、ロール状スタンパーである場合)を例に説明する。
【0054】
さて、前記一対の電極10,20について詳細に説明する。洗浄対象物60がロール状スタンパーである場合、洗浄対象部位61には微細な凹凸パターンが形成されている。このため、洗浄対象物60を溶解させたり磨耗させることなく洗浄を行うことができる陰極電解が好ましい。従って、一対の電極10,20のうち前記一方の電極10が陰極(−)とされ、前記他方の電極が陽極(+)とされる。即ち、前記一方の電極10は、前記電源のマイナス極(−)側に接続され、他方の電極20は、電源のプラス極(+)側に接続される。
【0055】
次に、図4及び図5に基づいて、前記一方の電極10について説明する。該一方の電極10は、図4及び図5に示すように、前記洗浄対象物60を保持して該洗浄対象物60と電気的に接続する。また、前記一方の電極10は、前記洗浄対象物60の内周側に配置される。そして、前記一方の電極10は、前記洗浄対象物60に内周側から接触し、該洗浄対象物60を直接保持するものである。さらに、前記一方の電極10は、前記洗浄対象物60の内周面62に圧接する。
【0056】
また、図5によく示されるように、前記一方の電極10は、前記洗浄対象物60の内周面62に付勢状態で圧接する複数の接触部11,11…を備えて構成される。具体的には、各接触部11は、最も外方に位置する部位が所定の径の仮想的な筒の外周上に位置するように設けられる。即ち、前記複数の接触部11は、前記仮想的な筒の高さ方向に沿う中心線に沿い、且つ該中心線からの径方向距離が同等となるように配置される。
【0057】
また、前記仮想的な筒の径は前記筒状の洗浄対象物60の内径以上となるように設定される。従って、洗浄対象物60を一方の電極10に装着すると、前記一方の電極10は、前記洗浄対象物60の中で径方向に圧縮された状態となる。このため、洗浄対象物60が前記一方の電極10に保持されると、各接触部11が弾性変形し、前記洗浄対象物60の内周面(若しくは、内壁)に圧接する状態となる。また、一方の電極10の中心は、該一方の電極10に保持される筒状の洗浄対象物60の中心と一致した状態となる。
【0058】
具体的には、前記一方の電極10は、前記筒状を有する洗浄対象物60の高さ方向に沿って配置される軸部12を備え、前記複数の接触部11,11…は、前記軸部12から突出させて設けられる。該軸部12は、具体的には金属製の棒状体であり、弾性変形可能な接触部11に比べて容易に変形することがないような高い剛性を有する。前記軸部12は、その軸線Lが前記一方の電極10の中心部に位置するように配置される。また、前記軸部12は、前記洗浄対象物60の高さ寸法よりも長く形成される。
【0059】
また、前記接触部11は、前記洗浄対象物60の内周面に接触する接触体13と、該接触体13を先端側で支持し基端側を前記軸部12に固定される弾性変形可能な支持体14とを備えて構成される。該接触体13は、少なくとも前記洗浄対象物60の内周面62と接触する部位が、前記洗浄対象物60の内径よりも大きい曲率で湾曲する湾曲形状を有する。具体的には金属製の球状体であり、例えばベアリングのボールが用いられる。
【0060】
また、前記軸部12は、前記洗浄対象物60の中心部に配置される。そして、前記各接触体13,13…は、前記軸部12の軸線Lから径方向に同等の距離離間した位置に配置される。前記支持体14は、具体的には金属製の棒状体であり、前記軸部12に比べて細く形成される。また、該支持体14は、前記軸部12から突出する態様で設けられる。
【0061】
具体的には、前記支持体14は、前記接触体13が配置される軸線方向位置とは異なる位置で前記軸部12に固定される。そして、前記支持体14は、中間部分が曲った形状を有し、前記軸部12から該軸部12の径方向に沿って立ち上がる縦部位14aと、該縦部位14aの先端から前記軸線方向に沿って延びる横部位14bとで構成される。
【0062】
また、前記接触体13に対して付勢力を加えるべく、該接触体13を支持する支持体14が固定される軸線方向位置よりも近い位置に、付勢体15が取り付けられる。具体的には、前記付勢体15は、前記接触体13が設けられる軸線方向位置及び周方向位置の同一位置に配置される。即ち、前記付勢体15は、前記接触体13と前記軸部12との間に設けられ、接触体13に対して軸部12の径方向外方に向かう付勢力を作用させる。また、前記付勢体15は、前記接触体13及び軸部12の両方に連結される。より具体的には、前記付勢体15としては、いわゆるコイルバネが用いられる。
【0063】
さらに、前記付勢体15は、前記軸部12に固定される台座16に保持される(若しくは、嵌め込まれる)。これにより、付勢体15の伸縮方向が規制され、前記接触体13を径方向外方に向かって好適に付勢することができる。なお、前記支持体14と付勢体15とは、弾性変形して付勢力(若しくは、復元力)を作用させるという同一の機能をともに有する。このため、前記支持体14を第一の弾性支持体とし、前記付勢体15を第二の弾性支持体として特定することもできる。
【0064】
ところで、前記電解洗浄装置は、前記一方の電極10を支持した状態で該一方の電極10を前記電源と電気的に接続する図6に示すような電極支持部材30を備え、前記一方の電極10は、前記軸部12の軸線方向両端部を電極支持部材30に着脱可能に支持される。次に、図2、図6及び図7に基づいて、該一方の電極10を着脱可能に支持する構造について説明する。
【0065】
前記電極支持部材30は、前記電解洗浄装置に対して動かないように固定される固定部31と、前記一方の電極10を着脱可能に保持する保持部32とを備える。また、前記固定部31は、電解洗浄液よりも上方位置に配置され、具体的には、前記洗浄槽2の縁に係止される(図2参照)。一方、前記保持部32は、電解洗浄液に浸漬される位置(即ち、液面より下方の位置)に配置される。このため、固定部31と保持部32との間の本体部33は、長尺に形成される。
【0066】
さらに、前記電極支持部材30は、少なくとも前記固定部31及び保持部32を除いて絶縁性素材34で被膜され、具体的には、前記本体部33の一部が絶縁性素材34で被膜される。また、前記固定部31は、前記電源と接続される端子としての機能をも有し、前記電源とは、適当な電気コード4等を用いて接続される(図2参照)。
【0067】
前記保持部32は、前記軸部12を鉛直方向下方で受け止める部位であり、具体的には、鉛直方向上方に向かって二股に分岐した側面視略V字状を有する。さらに、前記電極支持部材30は、前記保持部32に保持された電極支持部材30が(例えば、電解洗浄液中で浮き上がるなどして)脱落するのを防止する脱落防止部35を備える。前記脱落防止部35は、具体的には、前記二股に分岐した保持部32によって画定される空間を鉛直方向上方から閉塞する開閉体である。
【0068】
なお、一方の電極10の素材としては、鉄(Fe;より具体的には、ステンレス、鋼)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)が用いられる。
【0069】
前記洗浄対象物60を一方の電極10に装着する際には、前記筒状を有する洗浄対象物60の高さ方向両端側から前記一方の電極10を挿通させ、前記一方の電極10(具体的には、軸部12)の両端部を前記洗浄対象物60の両端側から突出させる状態とする。
【0070】
次に、前記一対の電極10,20のうちの他方の電極20について、図2、及び、図8〜図12を用いて説明する。該他方の電極20は、図2に示すように、前記洗浄対象部位61と間隔をあけて配置され、且つ、前記洗浄対象部位61と対向するように配置される。また、前記他方の電極20は、前記洗浄対象物60を囲むように配置される。なお、他方の電極20と前記洗浄対象部位61との間隔は、約20〜40mmに設定されるのが好適である。
【0071】
具体的には、前記他方の電極20は、前記洗浄対象物60を全周に亘って囲むように設けられる。また、図9に示すように、前記他方の電極20は、前記筒状の洗浄対象物60を収容する収容空間Sを有し、該収容空間Sは、前記筒状の洗浄対象物60に対応して筒状に画定される。具体的には、該他方の電極20は、前記洗浄対象物と同心に配置される。即ち、前記筒状の収容空間Sが前記一方の電極10と同心となるように配置される。従って、他方の電極20は、前記収容空間Sが前記一方の電極10の軸部12と同心となるように配置され、該一方の電極10に保持される筒状の洗浄対象物60とも同心となるように配置されることとなる。
【0072】
また、前記他方の電極20は、図10及び図11に示すように、前記全周における所定の領域を開放可能に構成される。具体的には、前記他方の電極20は、前記一方の電極10及び該一方の電極10に保持される洗浄対象物60を通過させることが可能な大きさに開放される。また、前記他方の電極20は、一方の電極10及び洗浄対象物60を着脱する際や開放する操作の際の作業性を考慮して、少なくとも鉛直方向の上方側且つ電解洗浄装置の前方側の領域を開放可能とされる。
【0073】
また、前記他方の電極20は、前記洗浄対象物60を囲む周方向において複数の電極部22,23に分けて設けられ、該複数の電極部22,23は、前記洗浄対象物60を囲む全周における所定の箇所を中心に相対回転可能に構成される。これにより、前記他方の電極20は、前記洗浄対象物60を囲む周方向における所定の箇所を中心に開閉可能となる。具体的には、前記他方の電極20は、鉛直方向上方側及び下方側の二つの電極部22,23を備え、該二つの電極部22,23のうちの上方の電極部22が回転可能に設けられる。そして、前記各電極部22,23は、上下方向中間部且つ装置の後方側で回転可能に連結される。このため、前記他方の電極20は、鉛直方向の上方側且つ電解洗浄装置の前方側の領域が開放される。なお、電極部は、二つ以上設けられるものであってもよい。
【0074】
また、前記複数の電極部22,23は、それぞれ電源と同じ極性で接続される。具体的には、前記複数の電極部22,23は、鉛直方向上部及び下部で前記電源と接続される。
【0075】
前記他方の電極20は、前記洗浄対象物60の洗浄対象部位61に対向して配置される複数の電極部材24,24…と、該複数の電極部材24,24…を着脱可能に支持するフレーム部材25とを備えて構成される。該フレーム部材25は、側面視多角形状(若しくは略多角形状)を有し、該フレーム部材25の平坦部25aが上方及び下方を向くように配置される。具体的には、前記フレーム部材25は、側面視六角形状(若しくは略六角形状)を有する。また、前記電極部材24は、フレーム部材25の各平坦部25aに取り付けられる。
【0076】
前記フレーム部材25は、前記全周における所定の箇所に設けられるヒンジ部28で連結される複数のフレーム体26,27によって構成される。即ち、前記フレーム部材25は、略同一形状を有する二つのフレーム体(上方側及び下方側のフレーム体)26,27で構成される。前記電極部材24は、該フレーム体26,27に対して締結部材を用いて取り付けられる。なお、フレーム体は、二つ以上設けられるものであってもよい。
【0077】
また、前記電極部材24は、前記洗浄対象物60の洗浄対象部位61からの距離を調節可能に前記フレーム部材25に取り付けられる。具体的には、前記電極部材24は、図12に示すような調節機構29を備える。該調節機構29は、頭部に電極部材24が固定されるボルト29aと二つのナット29b,29cとを用いて前記フレーム体26,27に取り付けられる。具体的には、前記ボルト29aがフレーム体26又は27に挿通され、且つ、ボルト29aに螺合する前記二つのナット29b、29cが前記フレーム体26又は27を挟む。そして、ボルト29a上で二つのナット29b、29cを締め付ける位置を変えることにより、電極部材24とフレーム体26又は27との距離(即ち、前記洗浄対象物60の洗浄対象部位61からの距離)を調節し、これによって、前記洗浄対象物60を収容する収容空間Sの大きさを調節する(図12(A)及び(B)参照)。
【0078】
前記電極部材24は、具体的には、湾曲した板状を有する電極体24aと該電極体24aを保持する保持体24bとを備えて構成される。前記保持体24bは、前記ボルト29aの頭部を少なくとも収容可能な所定の深さの溝24cを有する。前記電極体24aは、湾曲形状を有する。また、前記電極体24aには、両面間を連通する空間部24dが形成される。また、前記電極体24aは、前記筒状の洗浄対象物60の外周面と沿うように湾曲して形成される。具体的には、前記湾曲した板状の電極体24aは、前記洗浄対象物60の外周よりも曲率が小さく設定され、即ち、洗浄対象物60の外周よりも緩やかに湾曲する。このような形状を有することにより、複数の電極部材24,24…によって形成される収容空間Sは、側面視円環状となる。
【0079】
前記空間部24dは、主に、電解洗浄の際に発生する気体(例えば、水素及び/又は酸素)を逃がす機能を有するものである。具体的には、前記板状の電極体24aは、メッシュ状(網目状)の部材を用いて構成される。ただし、前記電極体24aに空間部24dを設ける方法としては、メッシュ状の部材を用いる以外にも、板状体に一つ又は複数の貫通孔を形成するものであってもよい。また、気体を逃がす構造としては、電極体24aに空間部24dを設けるものに限定されず、気体をガイドする案内溝や勾配が形成されたものであってもよい。また、前記電極体24aは、湾曲形状に限定されず、平板状のものであってもよい。
【0080】
なお、前記電極体24aの素材としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、金(Au)、銀(Ag)あるいはそれらの合金などを用いることができるが、具体的には、チタン(Ti)の表面に白金(Pt)をメッキしたものが用いられる。
【0081】
ところで、前記他方の電極20は、図13に示すような導電部材40又は45を用いて前記電源と電気的に接続される。具体的には、前記導電部材40又は45は、前記複数の電極部22,23に対応して複数設けられる。
【0082】
前記上方側の電極部22に対応する第1の導電部材40は、図2や図8等に示すように、前記フレーム部材25(具体的には、上方側のフレーム体26)の上方を向く平坦部25aに取り付けられる。前記第1の導電部材40は、図13(A)に示すように、両端側に前記電源と接続される一対の端子部41を有し、中間部に前記上方を向く平坦部25aと接触するフレーム接触部42を有する。該フレーム接触部42は、前記フレーム部材25の平坦部25aに対応して平坦に形成される。
【0083】
また、前記端子部41は、電解洗浄液よりも上方位置に配置され、さらに、前記一方の電極10を支持する電極支持部材30の固定部31よりも上方位置に配置される。一方、前記フレーム接触部42は、電解洗浄液に浸漬される位置(即ち、液面より下方の位置)に配置される前記電極部材24に取り付けられるフレーム体26に取り付けられるものであるため、該フレーム接触部42は、電解洗浄液に浸漬される位置か、若しくは少なくとも液面の近傍位置に配置される。このため、前記端子部41とフレーム接触部42とは、該平坦なフレーム接触部42の直交方向(即ち、取付状態での鉛直方向)における高さ位置が異なるように設けられる。また、端子部41とフレーム接触部42との間の接続部43は、フレーム接触部42に対して傾斜させて設けられる。
【0084】
前記下方側の電極部23に対応する第2の導電部材45は、図2や図8等に示すように、前記フレーム部材25(具体的には、下方側のフレーム体27)の下方を向く平坦部25aに取り付けられる。前記第2の導電部材は、図13(B)に示すように、両端側に前記電源と接続される一対の端子部46を有し、中間部に前記下方を向く平坦部25aと接触するフレーム接触部47を有する。該フレーム接触部47は、前記下方を向く平坦部25aに対応して平坦に形成される。
【0085】
また、前記端子部46は、電解洗浄液よりも上方位置に配置され、さらに、前記一方の電極10を支持する電極支持部材30の固定部31よりも上方位置に配置される。一方、前記フレーム接触部47は、電解洗浄液に浸漬される位置(即ち、液面より下方の位置)に配置される。このため、前記端子部46とフレーム接触部47とは、該平坦なフレーム接触部47の直交方向(即ち、取付状態での鉛直方向)における高さ位置が異なるように設けられる。また、フレーム接触部47は、前記洗浄槽2の底面に配置され、好ましくは、前記底面に締結部材等を用いて固定される。さらに、端子部46とフレーム接触部47との間の接続部48は、前記フレーム接触部47に沿って両端側に突出する延出部位48aと延出部位48aの端部からフレーム接触部47に沿って立ち上がる立ち上がり部位48bとで構成される。
【0086】
さらに、前記第1の導電部材40の端子部41と第2の導電部材45の端子部46とは、各導電部材40,45を前記他方の電極20に取り付けた状態で重なり合うように位置設定される。そして、前記各導電部材40,45の端子部41,46は、上下に重なり合った状態で電気コード5等を用いて前記電源と接続される(図2参照)。
【0087】
なお、前記他方の電極20を開放する際には、前記第1の導電部材40の液面より上方に露出している部分(即ち、接続部43の一部若しくは端子部41)を上方に持ち上げればよい。
【0088】
<第二実施形態>
次に、本発明に係る電解洗浄装置の第二実施形態について説明する。
【0089】
第二実施形態に係る電解洗浄装置は、上記第一実施形態に係る電解洗浄装置と同様に一対の電極を備えるものであるが、上記第一実施形態に係る電解洗浄装置とは、一対の電極のうち、洗浄対象物の内周側に配置されて該洗浄対象物と電気的に接続する一方の電極の構造が異なり、即ち、図14に示すような一方の電極110を備える。その一方、一対の電極のうちの他方の電極や洗浄可能な洗浄対象物などに関しては、基本的に第一実施形態に係る電解洗浄装置と同様である。従って、以下では一方の電極110について説明し、他の構成については説明を省略する。また、共通の構成要素については、同一符号を用いる。
【0090】
第二実施形態における一方の電極110は、上記第一実施形態における一方の電極10と同様に、前記洗浄対象物60を保持して該洗浄対象物60と電気的に接続する。また、前記一方の電極110は、前記洗浄対象物60の内周側に配置される。そして、前記一方の電極110は、前記洗浄対象物60に内周側から接触し、該洗浄対象物60を直接保持するものである。さらに、前記一方の電極110は、前記洗浄対象物60の内周面62に圧接する。
【0091】
また、前記一方の電極110は、前記洗浄対象物60の内周面62に付勢状態で圧接する複数の接触部111,111…を備えて構成される。具体的には、各接触部111は、最も外方に位置する部位が所定の径の仮想的な筒の外周上に位置するように設けられる。即ち、前記複数の接触部111は、前記仮想的な筒の高さ方向に沿う中心線に沿い、且つ該中心線からの径方向距離が同等となるように配置される。
【0092】
また、前記仮想的な筒の径は前記筒状の洗浄対象物60の内径以上に設定される。従って、洗浄対象物60を一方の電極110に装着すると、前記一方の電極110は、前記洗浄対象物60の中で径方向に圧縮された状態となる。このため、洗浄対象物60が前記一方の電極110に保持されると、各接触部111が弾性変形し、前記洗浄対象物60の内周面62に圧接する状態となる。また、一方の電極110の中心は、該一方の電極110に保持される筒状の洗浄対象物60の中心と一致した状態となる。
【0093】
具体的には、前記一方の電極110は、前記筒状を有する洗浄対象物60の高さ方向に沿って配置される軸部112を備え、前記複数の接触部111,111…は、前記軸部112から突出させて設けられる。該軸部112は、具体的には金属製の棒状体であり、弾性変形可能な接触部111に比べて容易に変形することがないような高い剛性を有する。前記軸部112は、その軸線Lが前記一方の電極110の中心部に位置するように配置される。また、前記軸部112は、前記洗浄対象物60の高さ寸法よりも長く形成される。
【0094】
次に、第二実施形態における一方の電極110の特徴的な構成について説明する。前記接触部111は、具体的には、弾性変形可能な線状体で構成され、接触部111は、中間部を前記軸部112から離間させた状態で両端部を前記軸部112に固定される。より具体的には、前記接触部111は、円弧状に湾曲する形状を有し、その中間部が前記洗浄対象物60の内周面62に沿うように接触する。
【0095】
さらに、前記軸部112は、該軸部112の軸線方向に沿って相対変位可能な複数の軸部材113,114を備えて構成され、前記接触部111の両端部は、それぞれ異なる軸部材113,114に固定される。また、前記軸部112は、前記接触部111の両端部が固定される二つの軸部材間の距離(即ち、接触部111の両端部が固定される軸部材113,114同士の相対的な位置)を調節可能に構成される。具体的には、前記軸部112は、前記二つの軸部材113,114間の距離を調節する調節体115を備え、該調節体115は、前記接触部111の両端部が固定される二つの軸部材113,114が離間して各軸部材113,114間の距離が調節された設定距離より大きくなるのを規制する。前記調節体115は、前記接触部111の両端部が固定される二つの軸部材113,114のうちの一方における所定の固定位置で固定可能に構成され、前記所定の固定位置で該二つの軸部材113,114のうちの一方との間に保持する他方の軸部材と干渉する干渉部材である。
【0096】
具体的には、前記軸部112は、前記複数の軸部材113,114として、軸本体113と一つ又は複数の可動体114,114とを備える。該可動体114は、前記軸本体113の長手方向に沿って変位可能に該軸本体113の長手方向端側に備えられている。より具体的には、前記軸本体113は、本体部113aと、該本体部113aの長手方向端部に設けられ該本体部113aよりも細い細軸部113bとを備える。該細軸部113bにはネジ部位が形成され、該細軸部113bが前記可動体114に対してスライド可能に挿通されるとともに、前記可動体114に挿通されて長手方向端側に突出した部位に調節体115としてのナットが螺合される。さらに具体的には、前記可動体114は、前記軸本体113の長手方向両端側に二つ備えられている。
【0097】
また、前記各接触部111は、その両端部が軸本体113と一対の可動体114,114のいずれか一方の可動体114とに固定される。例えば、ある接触部111は、一端部が左側の可動体114に固定され、他端側が軸本体113に固定される。また、他の接触部111は、一端部が軸本体113に固定され、他端側が右側の可動体114に固定される。ただし、一端部が左側の可動体114に固定され、他端側が右側の可動体114に固定されるものであってもよい。
【0098】
ところで、前記可動体114は、前記調節体115(若しくは、前記干渉部材、即ち、ナット)と前記軸本体113の本体部113aとの間で変位可能である。一方、前記軸本体113と調節体115とは、前記弾性変形可能な接触部111によって連結された状態である。従って、接触部111の自由状態(伸縮していない状態)よりも両端部間距離が小さくなるように前記調節体115と前記軸本体113の本体部113aとを近接させると、接触部111の両端部間の距離が縮まるものの全長は一定であるため、中間部が前記軸部112から離間するように接触部111が変形する。この結果、前記複数の接触部111,111によって画定される仮想的な筒が拡径(若しくは、膨径)する。
【0099】
第二実施形態における一方の電極110は、前記第一実施形態における一方の電極10と同様の方法で前記洗浄対象物60が装着される。ただし、前記第二実施形態における一方の電極110は、前記調節体115を調節して拡径させてから径方向に圧縮しつつ前記洗浄対象物60に挿通するのでもよく、前記洗浄対象物60を拡径させずに洗浄対象物60に挿通した後、前記洗浄対象物60の内周面62に接触部111が接触するように拡径させるのでもよい。
【0100】
<第三実施形態>
次に、本発明に係る電解洗浄装置の第三実施形態について説明する。
【0101】
第三実施形態に係る電解洗浄装置は、上記各実施形態に係る電解洗浄装置と同様に一対の電極を備えるものであるが、上記第一実施形態に係る電解洗浄装置とは、一対の電極のうち、洗浄対象物の内周側に配置されて該洗浄対象物と電気的に接続する一方の電極の構造が異なり、即ち、図15〜図17に示すような一方の電極210を備える。その一方、一対の電極のうちの他方の電極や洗浄可能な洗浄対象物などに関しては、基本的に各実施形態に係る電解洗浄装置と同様である。従って、以下では該一方の電極210について説明し、他の構成については説明を省略する。また、共通の構成要素については、同一符号を用いる。
【0102】
第三実施形態における一方の電極210は、上記各実施形態における一方の電極と同様に、前記洗浄対象物60を保持して該洗浄対象物60と電気的に接続する。また、前記一方の電極210は、前記洗浄対象物60の内周側に配置される。そして、前記一方の電極210は、前記洗浄対象物60に内周側から接触し、該洗浄対象物60を直接保持するものである。さらに、前記一方の電極210は、前記洗浄対象物60の内周面62に圧接する。
【0103】
また、前記一方の電極210は、前記洗浄対象物60の内周面62に付勢状態で圧接する複数の接触部211,211…を備えて構成される。具体的には、各接触部211は、最も外方に位置する部位が所定の径の仮想的な筒の外周上に位置するように設けられる。即ち、前記複数の接触部211は、前記仮想的な筒の高さ方向に沿う中心線に沿い、且つ該中心線からの径方向距離が同等となるように配置される。
【0104】
また、前記仮想的な筒の径は前記筒状の洗浄対象物60の内径以上に設定される。従って、洗浄対象物60を一方の電極210に装着すると、前記一方の電極210は、前記洗浄対象物60の中で径方向に圧縮された状態となる。このため、洗浄対象物60が前記一方の電極210に保持されると、各接触部211が前記洗浄対象物60の内周面62に圧接する状態となる。また、一方の電極210の中心は、該一方の電極210に保持される筒状の洗浄対象物60の中心と一致した状態となる。
【0105】
次に、第三実施形態における一方の電極210の特徴的な構成について説明する。前記一方の電極210は、前記洗浄対象物60の径方向に拡径若しくは縮径するように伸縮する環状バネ体212を備える。また、該環状バネ体212の外周面には、前記接触部211として、径方向外方を向く弾性体が設けられる。
【0106】
具体的には、前記一方の電極210は、前記筒状を有する洗浄対象物60の高さ方向に沿って配置される軸部213と、前記環状バネ体212の周方向一端側に固定され且つ前記軸部に対して相対変位不能に固定される一端側固定部214と、前記環状バネ体212の周方向他端側に固定され且つ前記軸部213の軸線Lを中心に前記軸部213と相対回転可能な他端側固定部215とを備え、前記一端側固定部214と他端側固定部215とが相対回転可能な状態と相対回転不能な状態とを切替可能に構成される。
【0107】
より具体的には、前記環状バネ体212は、前記軸線Lに沿って所定の長さを有する。前記一端側固定部214は、前記環状バネ体212の端部から突出するとともに、その突出部分が接続部216を介して前記軸部213と一体化される。また、前記一端側固定部214は、前記接続部216により所定の径方向位置において相対変位不能に固定される。そして、前記一端側固定部214は、前記環状バネ体212の径方向内方側に固定される。
【0108】
一方、前記他端側固定部215は、前記軸部213が内部に挿通された状態で該軸部213と相対回転可能に保持される管状体であり、前記環状バネ体212から軸線方向に沿って前記一端側固定部214とは反対方向に突出する。前記他端側固定部215は、その突出部分にフランジ状部位215aを有し、該フランジ状部位215aを回転操作可能に構成される。前記他端側固定部215は、前記軸部213に対して相対変位不能な部位(具体的には、前記接続部216)に当接可能に構成される。前記一方の電極210には、前記他端側固定部215を接続部216に押圧する押圧体217がさらに備えられる。
【0109】
具体的には、押圧体217は、前記他端側固定部215のフランジ状部位215aを押圧し、該フランジ状部位215aが押圧体217によって押圧されると、前記他端側固定部215が前記接続部216に圧接する。前記他端側固定部215のフランジ状部位215aを回転操作して前記環状バネ体212を締め付けた上で、前記フランジ状部位215aを押圧体217で圧接した場合、その状態から前記環状バネ体212が復元しようとすると、前記他端側固定部215と接続部216との間に摩擦力が作用し、前記他端側固定部215が一端側固定部214(即ち、前記軸部213)に対して相対回転不能となる。これにより、前記環状バネ体212が伸張した状態または収縮した状態が維持される。
【0110】
なお、具体的には、前記環状バネ体212は、複数層に重なるいわゆる渦巻バネである。ただし、環状バネ体は、これに限定されるものではなく、重複する部分を有さず、側面視一周に満たないものであってもよい。また、前記環状バネ体212の外周面に設けられる前記接触部211としての弾性体は、いわゆる円錐コイルバネである。そして、前記フランジ状部位215aは、前記他端側固定部215の管状部分に固着された回転操作用ナットである。さらに、前記押圧体217は、前記軸部213に形成されたネジ部位に螺合する固定用ナットである。
【0111】
<第四実施形態>
次に、本発明に係る電解洗浄装置の第四実施形態について説明する。
【0112】
第四実施形態に係る電解洗浄装置は、上記各実施形態に係る電解洗浄装置と同様に一対の電極を備えるものであるが、上記各実施形態に係る電解洗浄装置とは、一対の電極のうち、洗浄対象物の内周側に配置されて該洗浄対象物と電気的に接続する一方の電極の構造が異なり、即ち、図18及び図19に示すような一方の電極310を備える。その一方、一対の電極のうちの他方の電極や洗浄可能な洗浄対象物などに関しては、基本的に各実施形態に係る電解洗浄装置と同様である。従って、以下では一方の電極310について説明し、他の構成については説明を省略する。また、共通の構成要素については、同一符号を用いる。
【0113】
第四実施形態における一方の電極310は、上記各実施形態における一方の電極と同様に、前記洗浄対象物60を保持して該洗浄対象物60と電気的に接続する。また、前記一方の電極310は、前記洗浄対象物60の内周側に配置される。そして、前記一方の電極310は、前記洗浄対象物60に内周側から接触し、該洗浄対象物60を直接保持するものである。
【0114】
次に、第四実施形態における一方の電極310の特徴的な構成について説明する。該一方の電極310は、前記筒状の洗浄対象物60の端縁部を支持する支持部315を二つ備える。該支持部315は、洗浄対象物60を電源と電気的に接続する部位である。具体的には、前記一方の電極310は、前記筒状を有する洗浄対象物60の高さ方向に沿って配置される軸部312をさらに備え、前記支持部315は、前記軸部312に保持される。
【0115】
前記支持部315は、前記一方の電極310の軸線Lを中心にして該軸線Lに沿って縮径しつつ突出する当接部位315aを有する。また、前記二つの支持部315,315は、前記当接部位315a,315a同士を対向させた状態で配置される。具体的には、前記当接部位315aは、様々な内径を有する洗浄対象物60に広範囲に対応可能とするため、一定の角度で傾斜するテーパー状に形成される。また、前記当接部位315aは、前記軸線Lに沿う一方側の面が平坦に形成され、円錐台形状を有する。そして、前記当接部位315aの有する平坦面には、洗浄対象物60の内部に電解洗浄液を流通させるために、一つ又は複数の孔315eが設けられる。
【0116】
さらに、前記支持部315は、前記当接部位315aより基端側(即ち、前記当接部位の突出方向とは逆側)に基端部位315bを有し、該基端部位315bは、一定の径で形成される。
【0117】
また、前記支持部315は、当接部位315a,315a同士を対向させる表面側とは反対の裏面側に凹部315cを有する。該凹部は、前記当接部位315a及び基端部位315bの外形形状に対応して形成される。かかる凹部315cが形成されることにより、電解洗浄液は、孔315eを通して洗浄対象物60の内部及び外部を効果的に循環することができる。また、前記支持部315は、前記軸部312が挿通される中心部分に、前記軸線Lに沿って延びる被挿通部315dが備えられる。また、前記基端部位315bの外周面には、絶縁体316が配置される。
【0118】
前記支持部315は、具体的には、金属製の部材であり、前記軸部312として設けられる金属製の棒状体に着脱可能に取り付けられる。具体的には、前記支持部315は、前記軸部312と螺合して固定される。より具体的には、前記軸部312の外周面にはネジ部位が形成され、且つ、前記支持部315の被挿通部315dにネジ部位が形成される。
これにより、洗浄対象物60の高さに合わせて支持部315,315同士の距離を調節し、洗浄対象物60をその両端側から確実に保持できる。
【0119】
このように、第四実施形態における一方の電極310は、少なくとも支持部315により、洗浄対象物60を保持しつつ該洗浄対象物60と電気的に接続することができるものである。ただし、例えば洗浄対象物60の長さが長い場合などであっても洗浄対象物60の全部位に亘って好適に通電することができるように構成される。
【0120】
具体的には、前記一方の電極310は、図18に示すように、前記洗浄対象物60の内周面62に付勢状態で接触する複数の接触部311,311…を備えて構成される。各接触部311は、最も外方に位置する部位が所定の径の仮想的な筒の外周上に位置するように設けられる。即ち、前記複数の接触部311は、前記仮想的な筒の高さ方向に沿う中心線に沿い、且つ該中心線からの径方向距離が同等となるように配置される。
【0121】
ところで、前記接触部311は、洗浄対象物60の高さ方向中間部において該洗浄対象物60と電気的に接続する機能を主として有する。その一方、上述のとおり洗浄対象物60は少なくとも支持部315によって保持されるため、前記接触部311は、洗浄対象物60を保持する機能は必ずしも必要なく、洗浄対象物60を保持するもの(例えば第一実施形態における接触部11)に比べて、前記洗浄対象物60の内周面62に対して与える付勢力を弱く設定することができる。そのため、洗浄対象物60を一方の電極310に対して着脱する作業は、例えば第一実施形態における一方の電極10に対して着脱する場合と比較して、容易に行うことができる。
【0122】
また、前記仮想的な筒の径は前記筒状の洗浄対象物60の内径以上に設定される。従って、洗浄対象物60を一方の電極310に装着すると、前記一方の電極310は、前記洗浄対象物60の中で径方向に圧縮された状態となる。このため、洗浄対象物60が前記一方の電極310に保持されると、各接触部311が弾性変形し、前記洗浄対象物60の内周面62に圧接する状態となる。また、一方の電極310の中心は、該一方の電極310に保持される筒状の洗浄対象物60の中心と一致した状態となる。
【0123】
具体的には、前記一方の電極310は、前記筒状を有する洗浄対象物60の高さ方向に沿って配置される軸部312を備え、前記複数の接触部311,311…は、前記軸部312から突出させて設けられる。該軸部312は、具体的には金属製の棒状体であり、弾性変形可能な接触部311に比べて容易に変形することがないような高い剛性を有する。前記軸部312は、その軸線Lが前記一方の電極310の中心部に位置するように配置される。また、前記軸部312は、前記洗浄対象物60の高さ寸法よりも長く形成される。
【0124】
前記接触部311は、前記洗浄対象物60の内周面62に接触する接触体313と、該接触体313を先端側で支持し基端側を前記軸部312に固定される弾性変形可能な支持体314とを備えて構成される。該接触体313は、少なくとも前記洗浄対象物60の内周面62と接触する部位が、前記洗浄対象物60の内径よりも大きい曲率で湾曲する湾曲形状を有する。具体的には金属製の球状体である。
【0125】
また、前記各接触体313は、前記軸部312の軸線Lから径方向に同等の距離離間した位置に配置される。前記支持体314は、具体的には金属製の棒状体であり、前記軸部に比べて細く形成される。また、該支持体314は、前記軸部312から突出する態様で設けられる。
【0126】
具体的には、前記支持体314は、前記接触体313が配置される軸線方向位置とは異なる位置で前記軸部312に固定される。そして、前記支持体314は、中間部分が湾曲した形状を有する。
【0127】
<第五実施形態>
次に、本発明に係る電解洗浄装置の第五実施形態について説明する。
【0128】
第五実施形態に係る電解洗浄装置は、上記各実施形態に係る電解洗浄装置と同様に一対の電極を備えるものであるが、上記各実施形態に係る電解洗浄装置とは、一対の電極の構造及び電源と接続される構造が異なり、即ち、図20及び図21に示すような一対の電極410,420を備える。ただし、洗浄対象物などに関しては、基本的に上記各実施形態に係る電解洗浄装置と同様である。従って、以下では一対の電極の構造410,420及び電源と接続される構造について説明し、他の構成については説明を省略する。また、共通の構成要素については、同一符号を用いる。
【0129】
前記一対の電極410,420は、図20に示すように、一方の電極410と他方の電極420とが一体的に連結可能に構成される。以下では、まず、図21に基づいて、一方の電極410について説明する。
【0130】
第五実施形態における一方の電極410は、上記各実施形態における一方の電極と同様に、前記洗浄対象物60を保持して該洗浄対象物60と電気的に接続する。また、前記一方の電極410は、前記洗浄対象物60の内周側に配置される。そして、前記一方の電極410は、前記洗浄対象物60に内周側から接触し、該洗浄対象物60を直接保持するものである。さらに、前記一方の電極410は、前記洗浄対象物60の内周面62に圧接する。
【0131】
また、前記一方の電極410は、前記洗浄対象物60の内周面62に付勢状態で圧接する複数の接触部411,411…を備えて構成される。具体的には、各接触部411は、最も外方に位置する部位が所定の径の仮想的な筒の外周上に位置するように設けられる。即ち、前記複数の接触部411は、前記仮想的な筒の高さ方向に沿う中心線に沿い、且つ該中心線からの径方向距離が同等となるように配置される。
【0132】
また、前記仮想的な筒の径は前記筒状の洗浄対象物60の内径以上に設定される。従って、洗浄対象物60を一方の電極410に装着すると、前記一方の電極410は、前記洗浄対象物60の中で径方向に圧縮された状態となる。このため、洗浄対象物60が前記一方の電極410に保持されると、各接触部410が弾性変形し、前記洗浄対象物60の内周面62に圧接する状態となる。また、一方の電極410の中心は、該一方の電極410に保持される筒状の洗浄対象物60の中心と一致した状態となる。
【0133】
具体的には、前記一方の電極410は、前記筒状を有する洗浄対象物60の高さ方向に沿って配置される軸部412を備え、前記複数の接触部411,411…は、前記軸部412から突出させて設けられる。該軸部412は、具体的には金属製の棒状体であり、弾性変形可能な接触部411に比べて容易に変形することがないような高い剛性を有する。前記軸部412は、その軸線Lが前記一方の電極410の中心部に位置するように配置される。また、前記軸部412は、前記洗浄対象物60の高さ寸法よりも長く形成される。
【0134】
また、前記接触部411は、前記洗浄対象物60の内周面62に接触する接触体413と、該接触体413を先端側で支持し基端側を前記軸部412に固定される弾性変形可能な支持体414とを備えて構成される。該接触体413は、少なくとも前記洗浄対象物60の内周面62と接触する部位が、前記洗浄対象物60の内径よりも大きい曲率で湾曲する湾曲形状を有する。具体的には金属製の球状体である。
【0135】
また、前記各接触体413,413…は、前記軸部412の軸線Lから径方向に同等の距離離間した位置に配置される。前記支持体414は、具体的には金属製の棒状体であり、前記軸部412に比べて細く形成される。また、該支持体414は、前記軸部412から突出する態様で設けられる。
【0136】
具体的には、前記支持体414は、前記接触体413が配置される軸線方向位置とは異なる位置で前記軸部412に固定される。そして、前記支持体414は、直線状を有し、前記軸部412から傾斜して設けられる。
【0137】
次に、第五実施形態における一方の電極410の特徴的な構成について説明する。前記一方の電極410は、該一方の電極410を前記電源と接続する電源接続部430と一体的に設けられ、前記一方の電極410と電源接続部430とは、一体的となって一つの電極装置(以下、一方の電極装置)470を構成する。
【0138】
前記電源接続部430は、前記一方の電極410に対して複数設けられ、具体的には、前記一方の電極410の両端側にそれぞれ配置される。また、前記一方の電極装置470は、電源接続部430をそれぞれ有する二つの電極装置要素471,472を備え、これら二つの電極装置要素471,472は、電解洗浄の際には結合可能であり、洗浄対象物を着脱する際には分離可能である。具体的には、前記二つの電源接続部430,430のうち一方の電極410の一端側に配置される電源接続部430は、前記一方の電極410の一端部に対して着脱可能に取り付けられ、前記一方の電極410の他端側に配置される電源接続部430は、前記一方の電極410の他端部に一体化された状態で設けられる。
【0139】
そして、前記一方の電極410と、該一方の電極410の一端側に配置される電源接続部430とは、螺合して固定される。具体的には、前記軸部412は、内周面62にネジ部位が形成された連結孔412aを有し、且つ、前記電源接続部430は、前記軸部412の連結孔412aに挿入可能であるとともにネジ部位が形成された突出部431を有する。
【0140】
前記電源接続部430は、電源と適当な電気コード等を用いて接続される端子部432と、該端子部432と前記一方の電極410とを接続する導電部433とを備える。ところで、前記端子部432は、電解洗浄液よりも上方位置に配置される。一方、前記一方の電極410は、電解洗浄液に浸漬される位置(即ち、液面より下方の位置)に配置される。このため、前記導電部433は、長尺に形成される。なお、前記電源接続部430は、導電部433のうち少なくとも前記電解洗浄液に浸漬される部分を絶縁性素材(図示しない)で被膜される。
【0141】
次に、第五実施形態における他方の電極420について説明する。該他方の電極420は、上記各実施形態における他方の電極と同様に、洗浄対象部位61と間隔をあけて対向するように配置される。また、前記他方の電極420は、前記洗浄対象物60を囲むように配置される。
【0142】
具体的には、前記他方の電極420は、前記洗浄対象物60を全周に亘って囲むように設けられる。また、図20に示すように、前記他方の電極420は、前記筒状の洗浄対象物60を収容する収容空間Sを有し、該収容空間Sは、前記筒状の洗浄対象物60に対応して筒状に画定される。具体的には、該他方の電極420は、前記筒状の収容空間Sが前記一方の電極410と同心となるように配置される。従って、他方の電極420は、前記収容空間Sが前記一方の電極410の軸部412と同心となるように配置され、該一方の電極410に保持される筒状の洗浄対象物60とも同心となるように配置されることとなる。
【0143】
次に、第五実施形態における他方の電極420の特徴的な構成について、図20を用いて説明する。該他方の電極420は、前記洗浄対象部位61と間隔をあけて配置され、且つ、前記洗浄対象部位61と対向するように配置される。また、前記他方の電極420は、前記洗浄対象物60を囲むように配置される。そして、前記他方の電極420は、前記一方の電極410に保持される洗浄対象物60を該洗浄対象物60の高さ方向全長に亘って包囲するように構成される。また、該他方の電極420には、内周側と外周側とを連通する空間部421が形成される。具体的には、前記他方の電極420は、メッシュ状(網目状)の部材を用いて構成される。これにより、電解洗浄液を出入りさせることが可能となるとともに、電解洗浄によって発生した気体を逃がすことが可能となる。
【0144】
また、前記他方の電極420は、前記一方の電極410の場合と同様に、該他方の電極420を前記電源と接続する電源接続部440と一体的に設けられ、前記他方の電極420と電源接続部440とは、一体的となって一つの電極装置(他方の電極装置)480を構成する。
【0145】
前記電源接続部440は、前記他方の電極420に対して複数設けられ、具体的には、前記他方の電極420の両端側にそれぞれ配置される。また、前記他方の電極装置480は、電源接続部440をそれぞれ有する二つの電極装置要素481,482を備え、これら二つの電極装置要素481,482は、電解洗浄の際には結合可能であり、洗浄対象物を着脱する際には分離可能である。具体的には、前記二つの電源接続部440,440のうち他方の電極420の一端側に配置される電源接続部440は、前記他方の電極420の一端部に対して着脱可能に取り付けられ、前記他方の電極420の他端側に配置される電源接続部430は、前記他方の電極420の他端部に一体化された状態で設けられる。
【0146】
前記電源接続部440は、電源と適当な電気コード等を用いて接続される端子部442と、該端子部442と前記他方の電極420とを接続する導電部443とを備える。ところで、前記端子部442は、電解洗浄液よりも上方位置に配置される。一方、前記他方の電極420は、電解洗浄液に浸漬される位置(即ち、液面より下方の位置)に配置される。このため、前記導電部443は、長尺に形成される。なお、前記電源接続部440は、導電部443のうち少なくとも前記電解洗浄液に浸漬される部分を絶縁性素材(図示しない)で被膜される。
【0147】
ところで、第五実施形態に係る電解洗浄装置では、上述したように、前記一方の電極装置470と他方の電極装置480とが一体的に連結可能に構成される。このため、前記一方の電極410と他方の電極420、及び、前記一方の電極410の電源接続部430と他方の電極420の電源接続部440とが絶縁されるように構成される。
【0148】
具体的には、前記一方の電極装置470と他方の電極装置480との間には、絶縁体が配置される。より具体的には、前記一方の電極装置470は、前記一方の電極410と該一方の電極410の電源接続部430との間に配置される絶縁性の板状部473を備える。該板状部473は、前記一方の電極410の軸線方向に直交して設けられ、前記筒状を有する他方の電極420の端縁部よりも大きく形成される。
【0149】
さらに、前記一方の電極装置470のうちの一方の電極装置要素471と他方の電極装置480のうちの一方の電極装置要素483とは、一体的に組み合わせてアセンブリ490として用いることができる。具体的には、該アセンブリ490は、一方の電極装置470のうちの一方の電源接続部430と、他方の電極装置480のうちの一方の電源接続部440とで構成され、さらに、各電源接続部430,440の間には、前記絶縁性の板状部473が配置される。
【0150】
かかる電解洗浄装置を用いて電解洗浄を行うには、まず、一方の電極装置470の前記他方の電極装置要素472に洗浄対象物60を装着し、次に、これに対して前記他方の電極装置480の他方の電極装置要素482を装着し、最後に前記アセンブリ490を一方の電極装置470前記他方の電極装置要素482と結合させる。また、電解洗浄の終了後は、上記と逆の手順で分解する。
【0151】
<第六実施形態>
次に、本発明に係る電解洗浄装置の第六実施形態について説明する。
【0152】
第六実施形態に係る電解洗浄装置は、上記各実施形態に係る電解洗浄装置と同様に一対の電極を備えるものであるが、上記各実施形態に係る電解洗浄装置とは、一対の電極のうち、洗浄対象物の内周側に配置されて該洗浄対象物と電気的に接続する一方の電極の構造が異なり、即ち、図22及び図23に示すような一方の電極510を備える。その一方、一対の電極のうちの他方の電極や洗浄可能な洗浄対象物などに関しては、基本的に第一〜第四実施形態に係る電解洗浄装置と同様である。従って、以下では一方の電極510について説明し、他の構成については説明を省略する。また、共通の構成要素については、同一符号を用いる。
【0153】
第六実施形態における一方の電極510は、上記第一〜第四実施形態における一方の電極と同様に、前記洗浄対象物60を保持して該洗浄対象物60と電気的に接続する。また、前記一方の電極510は、前記洗浄対象物60の内周側に配置される。
【0154】
具体的には、前記一方の電極510は、前記洗浄対象物60の高さ方向に沿って配置される軸部512を備え、前記洗浄対象物60の内部に充填される複数の導電体513,513…によって前記軸部512と前記洗浄対象物60とが電気的に接続される。
【0155】
また、前記一方の電極510は、前記複数の導電体513,513…が前記洗浄対象物60の内部から脱落するのを防止する脱落防止部514を備える。具体的には、前記脱落防止部514は、前記洗浄対象物60の両端開口部の位置に対応して、前記軸部512に一対設けられる。より具体的には、前記脱落防止部514は、板状を有し、前記洗浄対象物60の両端開口部の大きさと同一若しくは該両端開口部より大きく形成される。
【0156】
前記一対の脱落防止部514,514のうち少なくとも一方は、前記軸部512に対して着脱可能に設けられる。具体的には、前記脱落防止部514は、前記軸部512と螺合して固定される。より具体的には、前記軸部512の外周面にはネジ部位が形成され、且つ、前記脱落防止部514は前記軸部512に挿通可能であるとともにその挿通部分にネジ部位が形成される。また、前記脱落防止部514は、少なくとも前記洗浄対象物60の両端開口部と接触する部位が絶縁性を有する。
【0157】
具体的には、前記一方の電極510は、前記軸部512から径方向外方に突出する一つ又は複数の突出部511を有する。該突出部511は、前記洗浄対象物60の内部に充填された複数の導電体513,513…が偏ることのないよう前記洗浄対象物60の内部を仕切るものである。また、前記突出部511は、板状を有し、該板状の突出部511は、前記軸部512の軸線方向に沿って前記筒状を有する洗浄対象物60の高さ寸法以下の長さを有する。具体的には、前記突出部511は、所定の角度ごとに設けられ、例えば45度ごとに8個設けられる。また、各突出部511は、それぞれ同一の径方向寸法を有し、具体的には、前記軸部512の中心からの径方向寸法が前記洗浄対象物60の内周の半径以下に設定される。なお、複数の突出部511によって、前記洗浄対象物60の内部には複数の収容部515,515…が画定されることとなる。
【0158】
なお、前記径方向寸法が前記洗浄対象物60の内周より小さい場合には、前記一方の電極510は、複数の導電体513,513…を介して間接的に前記洗浄対象物60を保持するものとなり、また、前記軸部512及び突出部511が前記洗浄対象物60と複数の導電体513,513…を介して間接に電気的に接続することとなる。一方、前記径方向寸法が前記洗浄対象物60の内径と一致する場合には、前記一方の電極510は、前記洗浄対象物60に内周側から接触し、該洗浄対象物60を直接保持するものとなり、前記突出部511が前記洗浄対象物60と直接に電気的に接続することとなる。
【0159】
前記導電体513は、金属球であり、具体的には、直径約3mmに設定される。また、前記複数の導電体513,513…は、前記洗浄対象物60の内部に隙間なく密に充填される。なお、図22では、一方の電極510の構造を分かりやすくするために、一つの収容部515の一部のみに導電体513を表示している。
【0160】
以上のように、上記各実施形態に係る電解洗浄装置によれば、筒状の洗浄対象物であっても、洗浄対象部位を損傷させることなく好適に電解洗浄を行うことができる。
【0161】
即ち、上記各実施形態に係る電解洗浄装置によれば、前記一方の電極が前記洗浄対象物を保持し、且つ、他方の電極が前記洗浄対象部位と間隔をあけて配置されるため、洗浄対象部位に電極などを直接接触させることなく電解洗浄を行うことができる。
【0162】
また、例えば上記第一〜第五実施形態では、前記一方の電極が前記洗浄対象物に内周側から接触する。従って、洗浄対象物の外周側の洗浄対象部位に前記一方の電極を接触させないようにしつつも、確実に前記洗浄対象物と電気的に接続することができる。
【0163】
また、例えば上記第一〜第五実施形態では、前記一方の電極は、前記洗浄対象物の内周面に付勢状態で圧接する複数の接触部を備えて構成される。このようにすれば、洗浄対象物が複数箇所において電気的に接続されるため、電流分布を均一にすることができ、洗浄むらの発生を好適に抑制することができる。加えて、前記一方の電極と該洗浄対象物との接触面積が小さいと電流が極小面積に集中するために、過電流によって洗浄対象物を損傷してしまいかねないが、洗浄対象物を複数箇所において電気的に接続させることで、このような問題も発生しない。
【0164】
また、例えば上記第一、第二、第四、第五実施形態では、前記一方の電極が前記筒状の洗浄対象物の高さ方向に沿って配置される軸部を備え、前記複数の接触部は、前記軸部から突出させて設けられる。従って、上述のような複数の接触部を有する一方の電極を容易に作製することができる。
【0165】
また、例えば上記第一、第四、第五実施形態では、前記接触体は、少なくとも前記洗浄対象物の内周面と接触する部位が、前記洗浄対象物の内径よりも大きい曲率で湾曲する湾曲形状を有する。従って、前記接触体と洗浄対象物の内周面とが沿う状態となるため、電流が局所的に流れるのを好適に防止することができる。
【0166】
また、上記各実施形態では、前記軸部が前記洗浄対象物の中心部に配置される。このようにすれば、前記軸部と洗浄対象物の内周面との距離が一定となる。従って、例えば上記第一、第四、第五実施形態では、前記各接触体の弾性変形による付勢力を前記洗浄対象物の内周面に対して略均一に作用させることができる。
【0167】
また、例えば上記第一〜第四及び第六実施形態では、前記一方の電極が前記軸部の軸線方向両端部を電極支持部材に着脱可能に支持される。従って、電解洗浄の際に前記洗浄対象物を一方の電極に装着してから電極支持部材に設置し、電解洗浄の完了後に前記洗浄対象物を一方の電極ごと電極支持部材から取り外せばよい。従って、洗浄対象物を一方の電極に対して着脱する作業を容易に行うことができる。
【0168】
また、上記各実施形態では、前記他方の電極が前記洗浄対象物を囲むように配置される。従って、他方の電極と洗浄対象部位とが広い範囲に亘って対向する状態となるため、電解洗浄を効率よく行うことができる。
【0169】
また、例えば上記第一〜第四及び第六実施形態では、前記全周における所定の領域を開放可能に構成される。従って、他方の電極の開放された部分から前記洗浄対象物を出し入れすることができ、洗浄対象物を電解洗浄装置に容易にセットすることができる。
【0170】
また、上記各実施形態では、前記他方の電極が前記洗浄対象物と同心に配置される。従って、洗浄対象物と前記他方の電極との距離が一定となるため、洗浄対象物の部位ごとの通電量が略均一となり、洗浄むらの発生を抑制することができる。
【0171】
また、例えば上記第一〜第四及び第六実施形態では、前記他方の電極が前記洗浄対象物を囲む周方向において複数の電極部に分けて設けられ、且つ、前記洗浄対象物を囲む周方向における所定の箇所を中心に開閉可能に構成される。従って、前記洗浄対象物を他方の電極に対して着脱する際には、他方の電極を開放し、該開放された部分から前記洗浄対象物を出し入れすればよいため、洗浄対象物を電解洗浄装置に容易にセットすることができる。
【0172】
また、例えば上記第一〜第四及び第六実施形態では、前記他方の電極が鉛直方向上方側及び下方側の二つの電極部を備え、該二つの電極部のうちの上方側の電極部が回転可能に設けられる。ここで、電解洗浄装置では電解洗浄液が用いられるため、前記洗浄対象物を他方の電極に対して着脱する作業は、他方の電極より上方から行われることになる。従って、鉛直方向上方側の電極部を開放するようにすれば、前記洗浄対象物の着脱作業の作業性を向上させることができる。
【0173】
また、例えば上記第一〜第四及び第六実施形態では、前記他方の電極が前記洗浄対象物の洗浄対象部位に対向して配置される複数の電極部材と、該複数の電極部材を着脱可能に支持するフレーム部材とを備えて構成される。従って、洗浄対象物のサイズに合わせて電極部材を交換したり、電極部材が損傷した場合等に交換したりすることが容易となる。
【0174】
また、このような他方の電極では、前記フレーム部材は、前記全周における所定の箇所に設けられるヒンジ部で連結される複数のフレーム体によって構成される。従って、前記洗浄対象物を電解洗浄装置に容易にセットすべく他方の電極の全周における所定の領域を開放する際には、支持フレームを操作すればよく、洗浄対象物を電解洗浄装置により容易にセットすることができる。
【0175】
また、例えば上記第一〜第四及び第六実施形態では、前記電極部材が前記洗浄対象物の洗浄対象部位からの距離を調節可能に前記フレーム部材に取り付けられる。従って、円筒状の洗浄対象物の径方向のサイズに応じて前記洗浄対象部位からの距離を調整でき、様々なサイズの洗浄対象物を好適に洗浄することができる。
【0176】
また、例えば上記第一〜第四及び第六実施形態では、前記電極部材が湾曲した板状を有する電極体を備え、該電極体には、両面間を連通する空間部が形成される。従って、電解洗浄の際に発生する気体が前記貫通孔を通って抜けるため、電極体より鉛直方向下方で発生したとしても、上昇してきた気体を該電極体が溜めてしまうことなくことなく好適に逃がすことができる。
【0177】
また、上記各実施形態に係る電解洗浄装置は、前記電解洗浄液を超音波振動させる超音波発生器を備える。従って、電解洗浄液が超音波振動することにより洗浄対象物に付着した汚れの剥離を促進することができる。
【0178】
また、上記各実施形態に係る電解洗浄装置は、前記電解洗浄液を洗浄槽から排出し、夾雑物を除去し、再度洗浄槽内に投入する循環機構を備える。従って、電解洗浄液を常時清浄な状態に維持することができ、電解洗浄を効果的に行うことができる。
【0179】
具体的には、電解洗浄の際に電解洗浄液が洗浄対象部位に円滑に供給されないと、電解が正常に行われず、洗浄対象部位を損傷させてしまう事態が発生し得る(このような現象は、一般にアルカリ焼けとも呼ばれる)。こういった事態は、例えば他方の電極と洗浄対象部位とが近すぎた場合などに電解ガスが大量に発生し、電解洗浄液がガスに阻まれて洗浄対象部位に到達できない場合や、電解洗浄によって消耗した電解洗浄液が洗浄対象部位で滞留してしまう場合に発生し得るものである。この点、上述のように電解洗浄液を循環させるようにすれば、洗浄対象部位には清浄な電解洗浄液を常時供給することができるため、このような事態の発生を防止することができる。
【0180】
また、上記各実施形態に係る電解洗浄装置は、前記電解洗浄液を加熱する加熱装置を備える。従って、電解洗浄液の温度を上昇させると通電量が増加するため、電解洗浄を活性化することができる。また、電解洗浄液の温度を上昇させると洗浄対象物に付着した汚れの膨潤を促進させることができる。従って、洗浄をより効果的に行うことができる。
【0181】
なお、本発明に係る電解洗浄装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。具体例を以下に例示する。
【0182】
上記各実施形態に係る電解洗浄装置の説明において用いた図面は例示に過ぎず、各構成要素のサイズや設けられる個数等は、洗浄対象物のサイズや電解洗浄の実施条件等によって適宜変更することができる。一例を挙げると、前記洗浄対象物が長いものの場合には、接触部をより多く設けたものであってもよい。また、前記洗浄対象物の径が大きいものの場合には、接触部が洗浄対象物の内周面に確実に接触し得るように、前記一方の電極の軸部が太く形成されるものであってもよく、接触部を構成する前記支持体が長く形成されるものであってもよく、その両方であってもよい。
【0183】
上記各実施形態に係る電解洗浄装置の一対の電極は、電解洗浄装置に静止状態で配置されるものであったが、適当な駆動機構により回転可能に構成されるものであってもよい。このようにすれば、電解洗浄液を撹拌し、電極や洗浄対象物の洗浄対象部位に発生し得る気体を効率的に除去することができる。この場合、一方の電極のみが駆動操作されるもの、又は、他方の電極のみが駆動操作されるものでもよく、両方の電極のみがそれぞれ駆動操作されるものでもよい。さらに、かかる駆動操作は、手動又は自動で切替可能であることが好ましい。
【0184】
上記各実施形態に係る電解洗浄装置では、一方の電極は単独で用いられるものであったが、第一〜第四及び第六実施形態に係る電解洗浄装置では、一方の電極を複数直列的に連結して用いるものであってもよい。このようにすれば、軸線方向に沿う高さ寸法のある長い洗浄対象物を好適に洗浄することができる。
【0185】
上記第一、第四、第五実施形態に係る電解洗浄装置では、前記接触部は、前記洗浄対象物の内周面に接触する接触体と、該接触体を先端側で支持し基端側を前記軸部に固定される弾性変形可能な支持体とを備えて構成されるものとして説明したが、これに限定されず、例えば弾性変形可能な棒状体によって構成されるものであってもよい。
【0186】
さらに、前記接触部11も、上述のものに限定されず、図24の各図に示すような形状のものであってもよい。例えば、前記接触体13は、球状を有するものとして説明したが、これに限定されず、図24(A)〜(F)の各図に示すようなものであってもよい。同様に、前記支持体14も、図24(G)〜(K)の各図に示すようなものであってもよい。
【0187】
上記第一実施形態に係る電解洗浄装置では、前記接触体は、付勢体としてのコイルバネによって支持され、前記付勢体は、前記軸部に固定される台座に保持されるものであったが、さらに、前記接触体又は台座のいずれか一方に突起部が設けられるとともに、他方に該突起部をスライド可能に保持するガイド孔が形成され、接触体が付勢体の伸縮方向に沿ってガイドされるものであってもよい。具体的には、図25に示す接触部11’では、接触体13’としての金属球に前記突起部17が設けられ、該突起部17が台座16’に形成されたガイド孔16’aに保持されている。
【0188】
上記第一実施形態に係る電解洗浄装置では、前記接触部は、第一の弾性支持体としての前記支持体と、第二の弾性支持体としての前記付勢体を備えるものであったが、これに限定されず、前記支持体を設けることなく、接触体を先端側で支持し基端側を前記軸部に固定される弾性変形可能な支持体として、前記付勢体のみが設けられるものであってもよい。この場合には、前記付勢体が前記接触体と軸部とを電気的に接続する。
【0189】
上記第二実施形態に係る電解洗浄装置では、前記一方の電極の接触部は、具体的には、弾性変形可能な線状体で構成されるものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、図26に示すように、前記一方の電極110’の接触部111’は、前記洗浄対象物の内周面に接触する接触体116をさらに備えるものであってもよい。即ち、前記接触部111’は、前記洗浄対象物の内周面に接触する接触体116と、該接触体116を先端側で支持し基端側を前記軸部112’に固定される弾性変形可能な支持体117とを備えるものである。該接触体116は、前記線状体の中間部に取り付けられる。また、前記調節体115’として、蝶ナットが用いられる。
【0190】
上記第三実施形態に係る電解洗浄装置では、前記環状バネ体212が伸張した状態または収縮した状態を維持する方法として摩擦力を用いるものであったが、これに限定されるものではなく、前記他端側固定部と前記軸部に対して相対変位不能な部位との間に係止機構を設けるものであってもよい。該係止機構としては、例えば、前記他端側固定部及び前記相対変位不能な部位のいずれか一方に係合部が設けられ、前記他方に係合部を係止する係止部が設けられるものが考えられる。
【0191】
上記第六実施形態に係る電解洗浄装置は、一方の電極が突出部を有するものであったが、図27に示す一方の電極510’のように、軸部512’を有するものの、前記突出部を備えておらず、複数の導電体513,513…を介して間接的に前記洗浄対象物60を保持するものであってもよい。
【0192】
上記第六実施形態に係る電解洗浄装置では、前記脱落防止部が少なくとも前記洗浄対象物の両端開口部と接触する部位が絶縁性を有するものとして説明したが、前記洗浄対象物の両端開口部と接触する部位が導電性を有するものとし、即ち、脱落防止部を電極の一部として機能させるものであってもよい。さらに、前記脱落防止部は、前記洗浄対象物の両端開口部の大きさと同一若しくは該両端開口部より大きく形成されるものであったが、複数の導電体が前記洗浄対象物の内部から脱落するのを防止できるものであれば、前記洗浄対象物の両端開口部の大きさより小さく形成されるものであってもよい。例えば、前記洗浄対象物の両端開口部と脱落防止部との隙間が前記導電体のサイズよりも小さければよい。
【0193】
上記第六実施形態に係る電解洗浄装置では、脱落防止部に導電体を投入又は取出し可能な孔が形成されるものであってもよい。好ましくは、前記孔が閉塞可能に設けられ、例えば、前記孔の内周面にネジ部位が形成され、該孔にネジ部材を螺合可能とされる。
【0194】
上記第六実施形態に係る電解洗浄装置では、前記一方の電極が前記洗浄対象物と電気的に接続するのに少なくとも複数の導電体が介在するものであったが、前記突出部の径方向寸法が洗浄対象物の内周と一致するように構成される場合には、前記複数の導電体を用いることなく、かかる一方の電極のみで前記洗浄対象物と電気的に接続するものであってもよい。
【0195】
上記第一〜第四及び第六実施形態に係る電解洗浄装置では、前記他方の電極の電極部材のうち上方に位置する電極部材が水平方向に沿って配置されるものであったが、これに限定されるものではなく、上方に位置する電極部材が水平方向に対して傾斜して配置されるものであってもよい。このようにすれば、電極部材より鉛直方向下方で気体が発生したとしても、上昇してきた気体を該電極部材が上方に案内する態様で好適に逃がすことができる。
【0196】
上記第一〜第四及び第六実施形態に係る電解洗浄装置では、前記他方の電極の調節機構は、ボルトと二つのナットとを用いて構成されるものであったが、これに限定されるものではなく、前記フレーム体の内側に配置されるナットの代わりにスペーサを用いるものであってもよい。該スペーサは、電極部材とフレーム体との距離に対応して予め設定された長さを有するものであり、電極部材とフレーム体との間に挟んだ状態でフレーム体の外側に配置されるナットを締め付けることにより、前記洗浄対象物を収容する収容空間の大きさを容易に調節することができる。
【0197】
上記各実施形態に係る電解洗浄装置では、前記他方の電極は、前記洗浄対象物60を囲むように(具体的には、前記洗浄対象物60を全周に亘って囲むように)配置されるものであったが、本発明に係る電解洗浄装置は、一対の電極のうちの他方の電極が前記洗浄対象部位の少なくとも一部と間隔をあけて対向するように配置されることによって目的とする作用効果を奏することができるため、例えば、他方の電極が前記洗浄対象部位の一部のみと対向するように配置されるものであってもよい。このような構成であっても、洗浄対象部位のうち他方の電極と対向する部分を電解洗浄することができる。
【0198】
従って、前記他方の電極は、前記洗浄対象物を囲む全周のうち少なくとも一部の領域を開放して構成されるものであってもよい。このような他方の電極であれば、前記洗浄対象物を他方の電極に対して着脱する際には、他方の電極を開放する操作等を特に行うことなく、開放されている部分から前記洗浄対象物を出し入れすればよいため、洗浄対象物を電解洗浄装置に容易にセットすることができる。
【0199】
なお、前記他方の電極が前記洗浄対象部位の一部と間隔をあけて対向するように配置されるものや、前記洗浄対象物を囲む全周のうち少なくとも一部の領域を開放して構成されるものである場合には、洗浄対象物を洗浄対象部位の全周に亘って均一に電解洗浄するために、上述したように、一対の電極が駆動機構により回転可能に構成されるものであることが特に好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0200】
【図1】本発明の第一実施形態に係る電解洗浄装置の全体図を示す。
【図2】同実施形態に係る電解洗浄装置の電極の斜視図を示す。
【図3】同実施形態に係る電解洗浄装置の洗浄対象物の斜視図を示す。
【図4】同実施形態に係る電解洗浄装置の一対の電極のうちの一方の電極の斜視図を示す。
【図5】同実施形態に係る電解洗浄装置の一方の電極の側面図を示す。
【図6】同実施形態に係る電解洗浄装置の一方の電極を電極支持部材に支持させた状態の斜視図を示す。
【図7】同実施形態に係る電解洗浄装置の一方の電極を支持する電極支持部材の斜視図を示す。
【図8】同実施形態に係る電解洗浄装置の一対の電極のうちの他方の電極の斜視図を示す。
【図9】同実施形態に係る電解洗浄装置の他方の電極の側面図を示す。
【図10】同実施形態に係る電解洗浄装置の他方の電極の全周における所定の領域を開放した状態の斜視図を示す。
【図11】同実施形態に係る電解洗浄装置の他方の電極の全周における所定の領域を開放した状態の側面図を示す。
【図12】同実施形態に係る電解洗浄装置の他方の電極の側面図を示し、(A)は収容空間を広げた場合、(B)は収容空間を狭めた場合を示す。
【図13】同実施形態に係る電解洗浄装置の他方の電極を支持する電極支持部材の斜視図を示し、(A)は上方側の電極部に対応する第1の導電部材、(B)は下方側の電極部に対応する第2の導電部材を示す。
【図14】本発明の第二実施形態に係る電解洗浄装置の電極を示す図であって、(A)は、全体図を示し、(B)は、分解正面図を示す。
【図15】本発明の第三実施形態に係る電解洗浄装置の一対の電極のうちの一方の電極の斜視図を示す。
【図16】同実施形態に係る電解洗浄装置の一方の電極の正面図を示す。
【図17】同実施形態に係る電解洗浄装置の一方の電極の側面図を示す。
【図18】本発明の第四実施形態に係る電解洗浄装置の一対の電極のうちの一方の電極の正面図を示す。
【図19】同実施形態に係る電解洗浄装置の一方の電極の支持部を示し、(A)は断面側面図を示し、(B)は正面図を示す。
【図20】本発明の第五実施形態に係る電解洗浄装置の一対の電極装置の分解斜視図を示す。
【図21】(A)は、同実施形態に係る電解洗浄装置の一対の電極装置のうちの一方の電極装置の分解斜視図を示し、(B)は、一方の電極装置に洗浄対象物を装着した状態の分解斜視図を示す。
【図22】本発明の第六実施形態に係る電解洗浄装置の一対の電極装置のうちの一方の電極の分解斜視図を示す。
【図23】同実施形態に係る電解洗浄装置の一方の電極の収容部に複数の導電体が充填された状態の断面図を示す。
【図24】本発明の他の実施形態に係る電解洗浄装置の一対の電極のうちの一方の電極に用いられる接触部の変形例を示す図であって、(A)〜(F)は斜視図を示し、(G)〜(K)は正面図を示す。
【図25】本発明の他の実施形態に係る電解洗浄装置の一対の電極のうちの一方の電極に用いられる接触体の変形例の全体図を示す。
【図26】本発明の第二実施形態に係る電解洗浄装置の一方の電極の変形例の全体図を示す。
【図27】本発明の第六実施形態に係る電解洗浄装置の一方の電極の変形例の分解斜視図を示す。
【符号の説明】
【0201】
1…筐体、2…洗浄槽、2a…排出部、3…電極、4…電気コード、5…電気コード、6…オーバーフロー槽、7…超音波発生器、10…一方の電極、11…接触部、12…軸部、13…接触体、14…支持体、14a…縦部位、14b…横部位、15…付勢体、16…台座、11’…接触部、13’…接触体、15’…付勢体、16’…台座、16’…ガイド孔、17…突起部、20…他方の電極、22…電極部、23…電極部、24a…電極体、24b…保持体、24c…溝、24d…空間部、25…フレーム部材、25a…平坦部、26…フレーム体、27…フレーム体、28…ヒンジ部、29…電極部材、29a…ボルト、29b…ナット、29c…ナット、30…電極支持部材、31…固定部、32…保持部、33…本体部、34…絶縁性素材、35…脱落防止部、40…導電部材、41…端子部、42…フレーム接触部、43…接続部、45…導電部材、46…端子部、47…フレーム接触部、48…接続部、48a…延出部位、48b…立ち上がり部位、60…洗浄対象物、61…洗浄対象部位、62…内周面、62…洗浄対象物、62…内周面、110…一方の電極、111…接触部、112…軸部、113…軸本体、113a…本体部、113b…細軸部、114…可動体、115…調節体、111’…接触部、112’…軸部、113’…軸本体、114’…可動体、115’…調節体、116…接触体、117…支持体、210…一方の電極、211…接触部、212…環状バネ体、213…軸部、214…一端側固定部、215…他端側固定部、215a…フランジ状部位、216…接続部、217…押圧体、310…一方の電極、311…接触部、312…軸部、313…接触体、314…支持体、315…支持部、315a…当接部位、315b…基端部位、315c…凹部、315d…被挿通部、315e…孔、316…絶縁体、410…一方の電極、411…接触部、412…軸部、412a…連結孔、413…接触体、414…支持体、420…他方の電極、421…空間部、430…電源接続部、431…突出部、432…端子部、433…導電部、440…電源接続部、442…端子部、443…導電部、470…電極装置、471…電極装置要素、472…電極装置要素、473…板状部、480…電極装置、481…電極装置要素、482…電極装置要素、490…アセンブリ、510…一方の電極、511…突出部、512…軸部、513…導電体、514…脱落防止部、515…収容部、510’…一方の電極、L…軸線、S…収容空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解洗浄液を収容する洗浄槽内において、陰陽一対の電極間に洗浄対象物を配置するとともに、これら一対の電極及び洗浄対象物を電解洗浄液中に浸漬して通電し、電解洗浄を行う電解洗浄装置であって、
前記洗浄対象物は、洗浄対象部位を外周側に有する筒状体であり、
前記一対の電極のうちの一方の電極が前記洗浄対象物を保持して該洗浄対象物と電気的に接続し、
前記一対の電極のうちの他方の電極が前記洗浄対象部位と間隔をあけて配置され、且つ、前記洗浄対象部位の少なくとも一部と対向するような構成となることを特徴とする電解洗浄装置。
【請求項2】
前記一方の電極を陰極、前記他方の電極を陽極とすることを特徴とする請求項1に記載の電解洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄対象物をロール状スタンパーとする請求項1又は2に記載の電解洗浄装置。
【請求項4】
前記一方の電極は、前記洗浄対象物に内周側から接触することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電解洗浄装置。
【請求項5】
前記一方の電極は、前記洗浄対象物の内周面に付勢状態で圧接する複数の接触部を備えて構成されることを特徴とする請求項1から4に記載の電解洗浄装置。
【請求項6】
前記一方の電極は、前記筒状の洗浄対象物の高さ方向に沿って配置される軸部を備え、前記複数の接触部は、前記軸部から突出させて設けられることを特徴とする請求項5に記載の電解洗浄装置。
【請求項7】
前記接触部は、前記洗浄対象物の内周面に接触する接触体と、該接触体を先端側で支持し基端側を前記軸部に固定される弾性変形可能な支持体とを備えて構成されることを特徴とする請求項5及び6に記載の電解洗浄装置。
【請求項8】
前記接触体は、少なくとも前記洗浄対象物の内周面と接触する部位が、前記洗浄対象物の内径よりも大きい曲率で湾曲する湾曲形状を有することを特徴とする請求項7に記載の電解洗浄装置。
【請求項9】
前記一方の電極は、前記軸部の軸線方向両端部を電極支持部材に着脱可能に支持されることを特徴とする請求項4から8のいずれか一項に記載の電解洗浄装置。
【請求項10】
前記他方の電極は、前記洗浄対象物を囲むように配置されることを特徴とする請求項1に記載の電解洗浄装置。
【請求項11】
前記他方の電極は、前記洗浄対象物を囲む周方向において複数の電極部に分けて設けられ、且つ、前記洗浄対象物を囲む周方向における所定の箇所を中心に開閉可能に構成されることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の電解洗浄装置。
【請求項12】
前記他方の電極は、前記洗浄対象物の洗浄対象部位に対向して配置される複数の電極部材と、該複数の電極部材を着脱可能に支持するフレーム部材とを備えて構成されることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の電解洗浄装置。
【請求項13】
前記電極部材は、前記洗浄対象物の洗浄対象部位からの距離を調節可能に前記フレーム部材に取り付けられることを特徴とする請求項12に記載の電解洗浄装置。
【請求項14】
前記電極部材は、平坦な板状あるいは湾曲した板状を有する電極体を備え、該電極体には、両面間を連通する空間部が形成されることを特徴とする請求項12又は13に記載の電解洗浄装置。
【請求項15】
前記他方の電極は、前記洗浄対象物を囲む全周のうち少なくとも一部の領域を開放して構成されることを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載の電解洗浄装置。
【請求項16】
前記電解洗浄液を超音波振動させる超音波発生器を備えることを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載の電解洗浄装置。
【請求項17】
前記電解洗浄液を洗浄槽から排出し、夾雑物を除去し、再度洗浄槽内に投入する循環機構を備えることを特徴とする請求項1から16のいずれか一項に記載の電解洗浄装置。
【請求項18】
前記電解洗浄液を加熱する加熱装置を備えることを特徴とする請求項1から17のいずれか一項に記載の電解洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2008−229552(P2008−229552A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−75181(P2007−75181)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(593047415)ソマックス株式会社 (8)
【Fターム(参考)】