説明

電話装置

【課題】ハンドセット内の電池を電源として受話音声信号を磁気コイルにより外部へ送出するときの消費電力を節減する。
【解決手段】 受話音声信号は、通話制御部13から通話路スイッチ26を通り、アンプ25により増幅され、磁気コイル24から補聴器3へ送出される。受話電流検知部29で検知された受話電流が規定値以下(無音)の状態が一定時間続いたときは、スイッチ28をオフにして、電池27からアンプ25に対する電力の供給を停止し、その後、受話電流が規定値を越える状態が一定時間続いたときは、スイッチ28をオンにして、電池27からアンプ25に対する電力供給の停止を解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電話装置に関し、詳細には、補聴器のユーザの使用に好適であり、かつハンドセットの消費電力の低減が可能な電話装置に関する。
【背景技術】
【0002】
補聴器には大別して下記a〜cに示す3つのタイプがある。
a.補聴器の本体を耳の後側に引っ掛け、本体に取り付けられたイヤホンを耳の中に入れるタイプ(引っ掛け型)
b.胸ポケットにカード型の本体を入れ、本体にケーブルで接続されたイヤホンを耳の中に入れるタイプ(カード型)
c.補聴器本体を小型化し、補聴器自体を耳の中に入れるタイプ(内挿型)
【0003】
このような補聴器のユーザが電話機を使用するときには、以下のような問題がある。
引っ掛け型の場合、補聴器のマイクロホン(以下、マイクと言う)は、補聴器の装着時に耳の上部に位置する。そのため、受話器を耳に密着させると、受話音の漏れが少なくなり、補聴器のマイクに受話音が入らなくなる。このため、受話器を耳から少し離して故意に音漏れを起こす、電話機の受話音量を最大にする等、電話機の使用時に不便な思いをしている。
カード型の場合、補聴器のマイクは胸ポケット内の本体に設けられているため、補聴器のイヤホンを外し(補聴器を使用しない)、電話機の受話音量を最大にして使用する。
内挿型の場合、受話器に耳を密着させるとハウリングを起こすことがため、受話器を耳から少し離して使用し、電話機の受話音量を大きくする必要がある。
つまり、何れのタイプの補聴器も、受話音量を大きくすることで、通話の内容を周囲の人に聞かれたり、周囲の人に騒音で迷惑をかけたりするという問題がある。
【0004】
一方、このような問題を解決できる電話機として、ハンドセット内に受話器と並列に受話信号の増幅器を接続すると共に、その増幅器により駆動される受話信号磁界発生用磁気コイルを受話器の外周に巻装することにより受話音声信号(受話信号)を補聴器の誘導コイルにて受信可能にした電話機がある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭58−31647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の電話機では、増幅器及び磁気コイルにより消費される電力が大きいという問題がある。このため、ハンドセットに電池を内蔵させ、その電池を電源として増幅器及び磁気コイルを動作させるように構成した場合、電池の消耗が早くなり、長時間の通話が出来ないという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、ハンドセット内の電池を電源として受話音声信号を磁気コイルにより外部へ送出して受話を行うときの消費電力を節減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、受話音声信号をハンドセットの受話部に供給する第1の手段と、前記ハンドセットに設けられ、前記受話音声信号を磁気コイルにより外部へ送出する第2の手段と、前記ハンドセットに設けられ、前記第2の手段に動作用電力を供給する電源と、前記受話音声信号のレベルを監視する受話音声レベル監視手段と、前記受話音声信号のレベルが規定値以下の状態が所定時間継続したときに、前記第2の手段に対する電力供給を停止させる制御手段とを備えたことを特徴とする電話装置である。
請求項2の発明は、請求項1記載の電話装置において、前記第2の手段と動作と前記第1の手段の動作とを択一的に行うか又は同時に行うかを設定するための設定情報の記憶手段を備えたことを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1記載の電話装置において、前記第2の手段に対する電力供給が停止されている状態で、前記受話音声信号のレベルが規定値を越える状態が所定時間継続したときに、前記第2の手段に対する電力供給の停止を解除する手段を備えたことを特徴とする。
【0008】
(作用)
請求項1の発明によれば、第1の手段により受話音声信号をハンドセットの受話部に供給し、第2の手段により受話音声信号をハンドセットの磁気コイルにより外部へ送出し、受話音声信号のレベルが規定値以下の状態が所定時間継続したときに、ハンドセット内の電源から第2の手段に対する電力供給を停止する。
請求項2の発明によれば、受話音声信号をハンドセットの受話部に供給することと、磁気コイルから外部へ送出することとを択一的に行うか、又は同時に行うかを設定することができる。
請求項3の発明によれば、ハンドセット内の電源から第2の手段に対する電力供給が停止されている状態で受話音声信号のレベルが規定値を越える状態が所定時間継続したときに、その電力供給の停止を解除する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、受話音声信号のレベルが規定値以下(通話中の無音)の状態が所定時間継続したときは、受話音声信号をハンドセットの磁気コイルにより外部へ送出する手段に対し、ハンドセット内の電源から電力を供給しないので、磁気コイルを用いた受話時の消費電力を節減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施形態の電話装置の構成を示す図である。
この電話装置は、電話装置本体(以下、本体と言う)1及びハンドセット2からなる。本体1は、この電話装置全体の制御等を行う制御部(CPU)11と、電話回線4に接続されており、電話回線の閉結、開放等を行う外線インタフェース部12と、外線インタフェース部12とハンドセット2との間の接続制御等を行う通話制御部13と、制御部11が各種動作を行うときに使用するプログラムが記憶されたROM、制御部11が各種動作を行うときのワークエリアとなるRAM、各種データを記憶するためのEEPROM等からなる記憶部14と、数字キー、機能キー等からなるキー入力部15とを備えている。
【0011】
ハンドセット2は、このハンドセット2全体の制御等を行う制御部(CPU)21と、音声を音声信号に変換するマイク及びその音声信号を増幅するアンプからなるマイク部22と、受話音声信号を増幅するアンプ及びその出力を音声に変換するスピーカからなるスピーカ部(受話部)23と、受話音声信号に対応する磁界を外部へ放出する磁気コイル24と、受話音声信号を増幅して磁気コイル24に供給するアンプ25と、制御部21の制御に従って、通話制御部13とマイク部22、スピーカ部23、及びアンプ25との間の音声信号伝送路(送話パス、受話パス)を断続するための通話路スイッチ26と、ハンドセット2内の所要の部分に動作用電力を供給するための電源である電池27と、制御部21の制御に従って開閉(オン/オフ)され、電池27からアンプ25に対する動作用電力の供給をオン/オフするスイッチ28と、受話音声信号のレベルを検知する受話電流検知部29と、受話音声信号を磁気コイル24から外部へ送出するか否かの設定情報、及び受話音声信号を磁気コイル24から外部へ送出するとき、同時にハンドセット2のスピーカ部23に供給するか否かの設定情報が記憶される設定情報記憶部30とを備えている。ここで、電池27は一次電池でも二次電池でもよい。二次電池の場合は、ハンドセット2を本体1の所定の部位に載せたときに、本体1から充電されるように構成する。また、制御部(CPU)21と本体1の制御部(CPU)11とは信号線により接続され、データ通信が可能である。
【0012】
補聴器3は、ハンドセット2の磁気コイル24から送出される受話音声信号に対応する磁界から電磁誘導により受話音声信号を再生する磁気コイルと、その受話音声信号を音声に変換して出力するイヤホンとを備えている。
【0013】
以上の構成を有する電話装置の動作について説明する。
図2は着信時又は発信時にオフフックされたときの制御部21の処理を示すフローチャートである。ユーザがハンドセット2を取り上げると、図示されていないフックスイッチが閉じることで制御部21によりオフフックが検出され、図2に示す処理がスタートする。
【0014】
制御部21は、オフフックを検出すると、設定情報記憶部30の記憶内容を参照して、磁気コイル24をオンにする設定がなされているか否かを判定する(ステップS1)。ユーザは、磁気コイル24をオンにして、通話制御部13からの受話音声信号を補聴器3へ送信したいときは、予めキー入力部10を用いて設定操作を行っておく。この設定情報は、制御部11により検出されて制御部21に通知され、制御部21により設定情報記憶部30に記憶されるので、その記憶内容を参照することで、上記設定の有無を判定できる。磁気コイル24をオンにする設定がなされていない場合は(ステップS1でNO)、通話路スイッチ26を制御して、通話制御部13とマイク部22との間を送話パスで接続すると共に、通話制御部13とスピーカ部22との間を受話パスで接続する(ステップS2)。この場合、通常の通話処理が行われ、磁気コイル24から補聴器3へ受話音声信号は供給されない。
【0015】
磁気コイル24をオンにする設定がなされていた場合は(ステップS1でYES)、スピーカ部23をオンにする設定がなされているか否かを判定する(ステップS3)。ユーザは、磁気コイル24をオンにして、通話制御部13からの受話音声信号を補聴器3へ送信するとき、同時にスピーカ部23からも受話音声を出力するか否かを予めキー入力部10を用いて設定し、設定情報記憶部30に記憶しておく。
【0016】
スピーカ部23をオンにする設定がなされていた場合は(ステップS3でYES)、スイッチ28を閉じて、電池27からアンプ25に動作用電力を供給すると共に、通話路スイッチ26を制御して、通話制御部13とマイク部22との間を送話パスで接続すると共に、通話制御部13とスピーカ部22及びアンプ25との間を受話パスで接続する(ステップS4)。この場合、受話音声信号は、磁気コイル24から補聴器3へ送信されると共に、スピーカ部23にも供給される。従って、補聴器3のユーザはイヤホンから出力される受話音声を聞くことができ、周囲の人もスピーカ部22から受話音声を聞くことができる。補聴器3のユーザが発声した音声はマイク部22で音声信号とされ、電話回線4を介して接続相手先へ送出される。
【0017】
スピーカ部23をオンにする設定がなされていなかった場合は(ステップS3でNO)、スイッチ28を閉じて、電池27からアンプ25に動作用電力を供給すると共に、通話路スイッチ26を制御して、通話制御部13とマイク部22との間を送話パスで接続すると共に、通話制御部13とアンプ25との間を受話パスで接続する(ステップS5)。この場合、受話音声信号は、磁気コイル24から補聴器3へ送信されるが、スピーカ部23には供給されない。従って、補聴器3のユーザはイヤホンから出力される受話音声を聞くことができるが、周囲の人には受話音声は聞こえない。補聴器3のユーザが発声した音声はマイク部22で音声信号とされ、電話回線4を介して接続相手先へ送出される。
【0018】
ステップS4又はS5の実行により磁気コイル24を用いた通話状態へ移行したら、通話電流検知部29の出力である受話音声信号のレベルを監視する(ステップS6)。そのレベルが規定値以下(無音状態)である場合は(ステップS7でYES)、その規定値以下の状態が一定時間(ここでは100ms)続いているか否かを判断する(ステップS8)。そして、100ms続いているときは(ステップS8でYES)、スピーカ部23をオンにする設定がなされているか否かを判定する(ステップS9)。
【0019】
スピーカ部23をオンにする設定がなされていた場合は(ステップS9でYES)、通話路スイッチ26を制御して、磁気コイル24と通話制御部13との間の受話パスを切断すると共に、スイッチ28を開いて、アンプ25に対する電池27からの電力供給を停止させる(ステップS10)。この結果、アンプ25に動作用電力が供給されなくなる。このとき、受話パスはスピーカ部23と通話制御部13との間のみとなる。
【0020】
スピーカ部23をオンにする設定がなされていなかった場合は(ステップS9でNO)、通話路スイッチ26を制御して、通話制御部13とアンプ25との間の受話パスを切断すると共に、通話制御部13とスピーカ部23との間の受話パスを接続し、かつスイッチ28を開いて、アンプ25に対する電池27からの電力供給を停止させる(ステップS11)。この結果、アンプ25に動作用電力が供給されなくなる。このときも、受話パスはスピーカ部23と通話制御部13との間のみとなる。
【0021】
受話音声信号のレベルが規定値を超えていた場合は(ステップS7でNO)、磁気コイル24の電源がオフか否か、換言すればスイッチ28が開いており、アンプ25に電力が供給されていない状態か否かを判定する(ステップS12)。磁気コイル24の電源がオフの場合は(ステップS12でYES)、受話音声信号のレベルが規定値を越えている状態が一定時間(ここでは10ms)続いているか否かを判断する(ステップS13)。そして、10ms続いているときは(ステップS13でYES)、スピーカ部23をオンにする設定がなされているか否かを判定する(ステップS14)。
【0022】
スピーカ部23をオンにする設定がなされていた場合は(ステップS14でYES)、スイッチ28を閉じて、アンプ25に対する電池27からの電力供給を行うと共に、通話路スイッチ26を制御して、アンプ25と通話制御部13との間の受話パスを接続する(ステップS15)。この結果、ステップS4にて設定された動作状態に戻り、受話音声信号は、磁気コイル24から補聴器3へ送信されると共に、スピーカ部23にも供給される。
【0023】
スピーカ部23をオンにする設定がなされていなかった場合は(ステップS14でNO)、スイッチ28を閉じて、アンプ25に対する電池27からの電力供給を行うと共に、通話路スイッチ26を制御して、通話制御部13とアンプ25との間の受話パスを接続すると共に、通話制御部13とスピーカ部23との間の受話パスを切断する(ステップS16)。この結果、ステップS5にて設定された動作状態に戻り、受話音声信号は、磁気コイル24から補聴器3のみに送信される。
【0024】
このように、本実施形態の電話装置によれば、受話音声信号を磁気コイル24から補聴器3へ送出するように動作させて通話を行っているとき、受話音声信号のレベルが規定値以下(無音)の状態が一定時間続いたときにはアンプ25に対する電力供給を停止させ、その停止状態にて受話音声信号のレベルが規定値を超える状態が一定時間続いたときにはアンプ25に対する電力供給の停止を解除するので、アンプ25における無駄な消費電力をなくし、電池27が消耗するまでの時間を延長することができる。
【0025】
なお、以上の実施形態では、本体1と、ハンドセット2との間が有線(コード)により接続されているが、無線(コードレス)接続にしてもよい。また、本体の制御部11が通話路スイッチ26、スイッチ28の少なくとも一方を制御するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態の電話装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態の電話装置がオフフックされたときの処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0027】
2・・・ハンドセット、3・・・補聴器、11,21・・・制御部、13・・・通話制御部、23・・・スピーカ部、24・・・磁気コイル、26・・・通話路スイッチ、27・・・電池、28・・・スイッチ、29・・・受話電流検知部、30・・・設定情報記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受話音声信号をハンドセットの受話部に供給する第1の手段と、
前記ハンドセットに設けられ、前記受話音声信号を磁気コイルにより外部へ送出する第2の手段と、
前記ハンドセットに設けられ、前記第2の手段に動作用電力を供給する電源と、
前記受話音声信号のレベルを監視する受話音声レベル監視手段と、
前記受話音声信号のレベルが規定値以下の状態が所定時間継続したときに、前記第2の手段に対する電力供給を停止する制御手段と
を備えたことを特徴とする電話装置。
【請求項2】
請求項1記載の電話装置において、
前記第2の手段と動作と前記第1の手段の動作とを択一的に行うか又は同時に行うかを設定するための設定情報の記憶手段を備えたことを特徴とする電話装置。
【請求項3】
請求項1記載の電話装置において、
前記第2の手段に対する電力供給が停止されている状態で、前記受話音声信号のレベルが規定値を越える状態が所定時間継続したときに、前記第2の手段に対する電力供給の停止を解除する手段を備えたことを特徴とする電話装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−235331(P2007−235331A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−52100(P2006−52100)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(304020498)サクサ株式会社 (678)
【Fターム(参考)】