説明

電鋳殻表装プラスチック成型品及びその製造方法

【課題】本発明は、電鋳殻により肉厚に表装した趣味性の高いプラスチック成型品の提供にある。
【解決手段】一般プラスチック射出成形用金型のキャビテイの全部又はキャビテイの特定キャビテイを用いて成形された表装用電鋳殻を再び元の成形用金型のキャビテイの全部又は特定キャビテイに収容配置し、該成形用金型にプラスチックを射出して表面に表装用電鋳殻を一体に成形してなる電鋳殻表装プラスチック成型品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電鋳殻により肉厚に表装した趣味性の高いプラスチック成型品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、趣味性の高い商品、例えば、プラスチックを金型に射出して各部品を連通して成型し、この成型品を分割し、組立て完成するプラモデルに人気がある。
【0003】
特許文献1(特開平08−108245)には、模型の全体を金属により鋳造する方法として、硬質樹脂製模型にセキ、湯道、湯口等を取付ける型組立工程と、型組立体の表面上に鋳造用石こう及び/又はセラミックス粉末の集合体よりなる鋳型を形成する鋳型形成工程と、鋳型中の型組立体を、有機溶剤を用いて溶解除去する型溶出工程と、型組立体の除去された鋳型を焼成する焼成工程と、焼成した鋳型内に金属溶湯を注入する溶湯工程と、型バラシして鋳造品を取出す型バラシ工程とからなる精密鋳造法が提案されている。
特許文献2(特開平05−131593号公報)には、(a)貼り付けられたフイルムまたはコーティングされたフイルム、(b)金属薄膜又は金属蒸着膜、(c)無色又は着色された低温熱可塑性プラスチックからなるプラスチックプレート、及び必要に応じて、(d)前記(b)と(c)との間の接着層、この順序で積層されたプラスチックモデリングプレート及びそれを成形するための鋳型を包装材料中に包装したプラモデルキットが提案されている。
特許文献3(2000−082784号公報)には、モデル1に凹凸模様付シート8を貼り付ける工程と、凹凸模様付シート8の表面に導電被膜を形成する工程と、凹凸模様付シート8が付いたモデル1を電鋳液に直接浸けて導電被膜上に電鋳を行うことにより電鋳殻11を形成する電鋳殻形成工程とを含む成形金型用電鋳殻の製造方法が提案されている。
特許文献4(特開平06−192883号公報)には、模型1の表面に所定の処理により膨張可能なプラスチック微小球体3を多数含む導電層2を形成する第1の工程と、前記プラスチック微小体3を所定の処理によって膨張させて該球体表面に存在する導電層2aを断裂させる第2の工程と、この模型1に電鋳処理を施して電鋳殻4を形成する第3の工程と、前記電鋳殻4中のプラスチック微小体3を溶剤等で除去して多孔性の電鋳殻4を得る第4の工程とからなる電鋳成形型の製造方法が提案されている。
【特許文献1】特開平08−108245号公報
【特許文献2】特開平05−131593号公報
【特許文献3】特開2000−082784号公報
【特許文献4】特開平06−192883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記プラモデルは、全体がプラスチックにより構成されるから、表面にプラスチックにある特有のくすんだ光(輝度)があり、安物のイメージがあった。また、部品を蒸着し、金属の外観を呈するものがあるが、電鋳殻と同等の光沢を発生させることはできなく、購入者の本物嗜好を満足することができなかった。
しかるに、従来の前記特許文献1の全体を電鋳殻による鋳造では、全体を一度に鋳造するものは良いが、部品毎に鋳造することは、高価となり、また、その組立は弾性体でないから弾着することができず、接着とねじ着となり組立は容易ではない。
従来の特許文献2〜4では、電鋳殻を利用する成形用金型の製造方法に関しては提案されているが、電鋳方法により成型した電鋳殻を表面に一体に表装したプラスチック成形体による商品の提案は、なかった。
本発明は、従来のプラスチック成形品の安物感を払拭し、本物嗜好者も満足させる金属部材で一体に表装し、真実の素材がもつ高級感を商品に発現し、また、部材の主要部に合成樹脂材を従来通り利用することにより組立て容易性を生かす画期的な組立プラモデルキット、高度に施飾された美術商品等を広範囲に提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一般プラスチック射出成形用金型のキャビテイの全部又はキャビテイの特定キャビテイを用いて成形された表装用電鋳殻を再び元の成形用金型のキャビテイの全部又は特定キャビテイに収容配置し、該成形用金型にプラスチックを射出して表面に表装用電鋳殻を一体に成形してなる電鋳殻表装プラスチック成型品にある。
【0006】
一般プラスチック射出成形用金型のキャビテイの全部又はキャビテイの特定キャビテイ若しくは該特定キャビテイの一部を除く表面部を絶縁し、絶縁プラスチック射出成形用金型に加工する絶縁加工工程と、該絶縁プラスチック射出成形用金型を用い電鋳可能なキャビテイの全部又は特定キャビテイにおいて電鋳法により表装用電鋳殻を成形する表装用電鋳殻成形工程と、該表装用電鋳殻を前記絶縁プラスチック射出成形用金型のキャビテイから取出す表装用電鋳殻取出工程と、前記絶縁プラスチック射出成形用金型の絶縁キャビテイ及び表面部の絶縁部分を取り除き一般プラスチック射出成形用金型に復帰加工する一般プラスチック射出成形用金型復帰加工工程と、前記表面部の絶縁部分を取り除いた一般プラスチック射出成形用金型のキャビテイに前記取出した表装用電鋳殻をセットする表装用電鋳殻セット工程と、前記表装用電鋳殻をキャビテイにセットした一般プラスチック射出成形用金型にプラスチックを射出し、表面に表装用電鋳殻を一体に成形するプラスチック射出成形工程とから成形される電鋳殻表装プラスチック成型品の製造方法にある。
【0007】
前記一般プラスチック射出成形用金型の絶縁加工工程は、裏面に感圧性接着剤を有する絶縁テープによる被覆加工であってもよいものである。
【0008】
前記一般プラスチック射出成形用金型の絶縁加工工程は、絶縁塗料を吹き付け塗布してなる被覆加工であってもよいものである。
【0009】
前記絶縁表装用電鋳殻を成形する表装用電鋳殻成形工程で使用される金属素材は、ニッケルであってもよいものである。
【0010】
前記表装用電鋳殻を成形する表装用電鋳殻成形工程で使用される金属素材は、ニッケル−コバルト合金であってもよいものである。
【0011】
前記表装用電鋳殻を成形する表装用電鋳殻成形工程で使用される金属素材は、銅であってもよいものである。
【0012】
前記表装用電鋳殻を成形する表装用電鋳殻成形工程で使用される金属素材は、銅−コバルト合金であってもよいものである。
【0013】
前記表装用電鋳殻を成形する表装用電鋳殻成形工程で使用される金属素材は、銀であってもよいものである。
【0014】
前記表装用電鋳殻を成形する表装用電鋳殻成形工程で使用される金属素材は、金であってもよいものである。
【0015】
前記表装用電鋳殻は、その厚みが0.2mm〜0.8mmであってもよいものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電鋳殻表装プラスチック成型品及びその製造方法は、上記のように構成されるから、キャビテイの内面に刻設される精度の高い形状、模様を転移した表面に成形を行うことができる。
【0017】
また、形成された電鋳殻は、キャビテイ内面に適合して再セットすることができ、該電鋳殻を表面に射出される樹脂と一体に結合して樹脂が成形される。
【0018】
表面が肉厚の電鋳殻で構成されるから、素材による高級感を奏するものである。
【0019】
また、表面が肉厚の電鋳殻で構成されるから、プラスチックのみからなる製品より強度を上げることが出来る。
【0020】
部材の結合には、プラスチックが介在するので、圧力を受けると屈曲又は縮径し、圧力がなくなると元の外形戻る素材の性質を利用し、遊嵌合、固着嵌合が行え、容易に組立が出来る。
【0021】
表装用電鋳殻の成形に樹脂射出成形金型をそのまま利用できるから、金属プレス金型を起こす必要がなく、製造コストを低減し、付加価値の高いプラモデル等を安価に提供できる。
【0022】
既存の射出金型の再生活用に寄与するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
一般プラスチック射出成形用金型のキャビテイの特定キャビテイを除く表面部を裏面に感圧性接着剤を有する絶縁テープにより被覆して絶縁する絶縁加工工程と、該絶縁プラスチック射出成形用金型を用い電鋳可能な特定キャビテイにニッケルを用いて電鋳法により板厚が0.6mmの表装用電鋳殻を成形する表装用電鋳殻成形工程と、該表装用電鋳殻を前記絶縁プラスチック射出成形用金型のキャビテイから取出す表装用電鋳殻取出工程と、前記絶縁プラスチック射出成形用金型の絶縁キャビテイ及び表面部の絶縁部分を取り除き一般プラスチック射出成形用金型に復帰加工する一般プラスチック射出成形用金型復帰加工工程と、前記表面部の絶縁部分を取り除いた一般プラスチック射出成形用金型のキャビテイに前記取出した表装用電鋳殻をセットする表装用電鋳殻セット工程と、前記表装用電鋳殻をキャビテイにセットした一般プラスチック射出成形用金型にプラスチックを射出し、表面に表装用電鋳殻を一体に成形するプラスチック射出成形工程とから成形される電鋳殻表装プラスチック成型品の製造方法。
【実施例】
【0024】
以下、本発明の電鋳殻表装プラスチック成型品及びその製造方法を、実施例を示す図面に基づき説明すると、先ず本発明の電鋳殻表装プラスチック成型品について、その実施例の一例を示す図1により説明すると、図1は、電鋳殻表装プラモデルキット1の実施例を示す平面図であり、一般プラスチック射出成形用金型の特定キャビテイを用いて成形された表装用電鋳殻2a、2b、2cを再び元の成形用金型の特定キャビテイに収容配置し、該成形用金型にプラスチックを射出して前記表装用電鋳殻2a、2b、2cをプラスチック体3の表面に一体に成形してなる。
【0025】
次に、本発明の電鋳殻表装プラスチック成型品の製造方法について、図1及び図2〜図9により説明すると、前記実施例の電鋳殻表装プラモデルキット1を成型する一般プラスチック射出成形金型4を用い、該金型4のキャビテイ5を除く表面部6に絶縁被覆7を加工し、絶縁プラスチック射出成形用金型4aとする。前記実施例の表装用電鋳殻2a、2b、2cの場合は、利用する特定キャビテイ5a、5b、5c以外のキャビテイ5及び表面部6に絶縁被覆7を加工する。キャビテイ5の全部を利用する場合は、キャビテイ5の全部を含めた表面部6に絶縁被覆7を加工する。前記特定キャビテイ5cでは、一部において、電鋳殻を形成しないので、その一部を、図示しないが絶縁加工を施している。
【0026】
前記絶縁被覆7は、裏面に感圧性接着剤を備えた絶縁テープを表面部6に貼着して構成してもよいものである。また、表面部6に絶縁塗料を塗布して構成してもよいものである。
【0027】
前記絶縁プラスチック射出成形金型4aを電鋳槽に入れて、特定キャビテイ5a、5b、5cにおいて、電鋳法によりニッケルからなり、その厚みが0.6mmの表装用電鋳殻2a、2b、2cを成形する。この厚みは、0.2mm〜0.8mmの範囲で選択できる。
【0028】
前記表装用電鋳殻2a、2b、2cを特定キャビテイ5a、5b、5cから取出した後、該金型4aを再び電鋳槽に入れて、電鋳法によりニッケルからなる表装用電鋳殻2a、2b、2cを成形する。この工程を繰り返して表装用電鋳殻2a、2b、2cを製造する。
【0029】
次に、前記絶縁プラスチック射出成形用金型4aの特定キャビテイ分5a、5b、5c以外のキャビテイ分5及び表面部6の絶縁被覆7を取り除いて、一般プラスチック射出成形用金型4に戻して、その一般プラスチック射出成形用金型4の特定キャビテイ5a、5b、5cに前記表装用電鋳殻2a、2b、2cをセットし、それから、一般プラスチック射出成形用金型にプラスチックを射出し、表面に表装用電鋳殻2a、2b、2cを一体に成形して成形品である電鋳殻表装プラモデルキット1を製造する。
【0030】
前記電鋳法により製造する際、表装用電鋳殻2a、2b、2cを形成するニッケルをニッケル−コバルト合金、銅、銅−コバルト合金、銀、金に変えることができる。
【0031】
前記実施例は、成形品8がプラモデルキットであるが、これに外形、部品構成を限定するものではない。よって、成形品は、一般の生活用用品から趣味嗜好に係る美術品まで応用できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、従来のプラスチック成形品について、資材が持つ本物の高級感と、高度技術模様を表面に施された商品を大量生産することができ、プラモデルキット業界、美術商品業界等の関連業界の活性化に寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の電鋳殻表装プラスチック成形品をプラモデルキットに実施した実施例を示す平面図である。
【図2】同じく、図1のプラモデルキットの実施例の成形用雌金型の部分平面図である。
【図3】同じく、図2のプラモデルキットの実施例のプラスチック射出成型用雌金型において、電鋳殻を成形する特定キャビテイ以外の部分に絶縁被覆加工をした成形用雌金型の部分平面図である
【図4】図3のキャビテイで表装用電鋳殻を電鋳成形した状態を示す成形用雌金型の部分平面図である。
【図5】図3のキャビテイから取出した表装用電鋳殻単体の表面図である。
【図6】同じく、表装用電鋳殻単体の裏面図である。
【図7】(a)、(b)は、他の特定キャビャテイで成形した電鋳殻の裏面図である。
【図8】(a)、(b)は、同じく、他の特定キャビテイで成形した電鋳殻の表面図である。
【図9】図1のプラモデルキットの実施例の成型用雌金型の内面図である。
【図10】同じく、図1のプラモデルキットの実施例の成形用雌金型に前記表装用電鋳殻を嵌入セットした状態を示す内面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 電鋳殻表装プラモデルキット
2a 表装用電鋳殻
2b 表装用電鋳殻
2c 表装用電鋳殻
3 プラスチック体
4 一般プラスチック射出成形金型
4a 絶縁プラスチック射出成形用金型
5 キャビテイ
5a 特定キャビテイ
5b 特定キャビテイ
5c 特定キャビテイ
6 表面部
7 絶縁被覆

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般プラスチック射出成形用金型のキャビテイの全部又はキャビテイの特定キャビテイを用いて成形された表装用電鋳殻を再び元の成形用金型のキャビテイの全部又は特定キャビテイに収容配置し、該成形用金型にプラスチックを射出して表面に表装用電鋳殻を一体に成形してなる電鋳殻表装プラスチック成型品。
【請求項2】
一般プラスチック射出成形用金型のキャビテイの全部又はキャビテイの特定キャビテイ若しくは該特定キャビテイの一部を除く表面部を絶縁し、絶縁プラスチック射出成形用金型に加工する絶縁加工工程と、該絶縁プラスチック射出成形用金型を用い電鋳可能なキャビテイの全部又は特定キャビテイにおいて電鋳法により表装用電鋳殻を成形する表装用電鋳殻成形工程と、該表装用電鋳殻を前記絶縁プラスチック射出成形用金型のキャビテイから取出す表装用電鋳殻取出工程と、前記絶縁プラスチック射出成形用金型の絶縁キャビテイ及び表面部の絶縁部分を取り除き一般プラスチック射出成形用金型に復帰加工する一般プラスチック射出成形用金型復帰加工工程と、前記表面部の絶縁部分を取り除いた一般プラスチック射出成形用金型のキャビテイに前記取出した表装用電鋳殻をセットする表装用電鋳殻セット工程と、前記表装用電鋳殻をキャビテイにセットした一般プラスチック射出成形用金型にプラスチックを射出し、表面に表装用電鋳殻を一体に成形するプラスチック射出成形工程とから成形される、電鋳殻表装プラスチック成型品の製造方法。
【請求項3】
前記一般プラスチック射出成形用金型の絶縁加工工程は、裏面に感圧性接着剤を有する絶縁テープによる被覆加工である請求項2の電鋳殻表装プラスチック成型品の製造方法。
【請求項4】
前記一般プラスチック射出成形用金型の絶縁加工工程は、絶縁塗料を吹き付け塗布してなる被覆加工である請求項2の電鋳殻表装プラスチック成型品の製造方法。
【請求項5】
前記表装用電鋳殻成形工程で使用される金属素材がニッケルである請求項2の電鋳殻表装プラスチック成型品の製造方法。
【請求項6】
前記表装用電鋳殻成形工程で使用される金属素材がニッケル−コバルト合金である請求項2の電鋳殻表装プラスチック成型品の製造方法。
【請求項7】
前記表装用電鋳殻成形工程で使用される金属素材が銅である請求項2の電鋳殻表装プラスチック成型品の製造方法。
【請求項8】
前記表装用電鋳殻成形工程で使用される金属素材が銅−コバルト合金である請求項2の電鋳殻表装プラスチック成型品の製造方法。
【請求項9】
前記表装用電鋳殻成形工程で使用される金属素材が銀である請求項2の電鋳殻表装プラスチック成型品の製造方法。
【請求項10】
前記表装用電鋳殻成形工程で使用される金属素材が金である請求項2の電鋳殻表装プラスチック成型品の製造方法。
【請求項11】
前記表装用電鋳殻は、その厚みが0.2mm〜0.8mmである請求項2の電鋳殻表装プラスチック成型品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−260250(P2008−260250A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106430(P2007−106430)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(507122582)有限会社秋東精工 (1)
【Fターム(参考)】