説明

電離放射線硬化性樹脂組成物及びそれを用いた積層体

【課題】
本発明の目的は、防眩性、ハードコート性、密着性、特に、耐光性試験後の基材との密着性に優れた電離放射線硬化性樹脂組成物、及びそれを用いた積層体を提供することにある。
【解決手段】
トリアセチルセルロース透明基材塗布用の電離放射線硬化性樹脂組成物であって、ペンタエリスリトールテトラアクリレートとペンタエリスリトールトリアクリレートとの重量比が70:30〜97:3である電離放射線硬化性バインダー9.9〜80重量%、透光性微粒子0.1〜40重量%、及び有機溶剤19.9〜90重量%を含んでなる電離放射線硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビ、コンピューター、カーナビゲーションシステム、車載用計器盤、携帯電話等の画像表示装置として用いられる、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、ELディスプレイ、リアプロジェクションディスプレイ、CRTディスプレイ等各種ディスプレイにおいて、ディスプレイ最表面に、画像の映り込みや、光の反射を防止するために設けるなどに、特に有用な電離放射線硬化性樹脂組成物及びそれを用いた積層物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、CRT、PDP、LCD、ELD等の画像表示装置、特にPDP、LCD、ELDなどの表面がフラットな画像表示装置には、室内照明や、太陽光の入射等による、表示画面への操作者等の影の映り込みが画像の視認性を著しく妨げるという問題があった。
【0003】
この映り込みを抑えるために、シリカ等のフィラーを含むディスプレイの最表面に塗工し、表面に凸凹を形成することにより、表面に防眩効果を付与するという手法が特許文献1に記載されている(特許文献1:特開平7-294740号公報参照)。
【0004】
また、表面に有機ポリマー微粒子を混入したハードコート層を形成するという方法で、表面に防眩効果を付与するという手法が特許文献2に記載されている(特許文献2:特開平6-18706号公報参照)。さらには、有機ポリマー微粒子はシリカ微粒子等の無機フィラーと比較し、樹脂組成物と有機ポリマー微粒子の接着性が良く、鹸化処理においても界面がアルカリに侵されにくい。しかしながら、表面に有機ポリマー微粒子を混入したハードコート層は、有機ポリマー微粒子の平均粒子径が大きければハードコート層の膜厚が厚くなりハードコート性は出やすいが、平均粒子径が小さくなるとハードコート層の膜厚が薄くなりハードコート性(特に鉛筆硬度)は出にくくなる。
【0005】
ハードコート層の膜厚が薄くてもハードコート性を確保するために、樹脂組成物としてエチレン性不飽和二重結合を多数有する電離放射線硬化型を硬化させたものを使用することが多い。しかしながら、これらエチレン性不飽和二重結合を多数有する電離放射線硬化型は、硬化収縮が大きく基材との密着性が悪くなる傾向がある。さらに、防眩フィルムの信頼性試験として、耐光性試験を実施した後に基材との密着性がさらに低下するという問題がある。これは、耐光性試験にて照射される紫外線にてハードコート層の硬化がさらに進み、硬化収縮が増大し密着性が低下したと考えられる。
【0006】
トリアセチルセルロース透明基板への密着性を向上させる目的で、トリアセチルセルロース透明基材を溶解する溶剤を用いた塗布液から形成された防眩性フィルムが特許文献3及び4に記載されている。(特許文献3:特開平11-209717号公報、特許文献4:特開2002-169001号公報参照)しかしながら、単にトリアセチルセルロース透明基板を溶解する溶剤を使用しただけでは、塗工後の密着性は良好となるが、耐光性試験後の密着性が不良であったり、溶解しすぎるとハードコート性を維持できないなど満足できる手段ではなかった。
【特許文献1】特開平7-294740号公報参照
【特許文献2】特開平6-18706号公報参照
【特許文献3】特開平11-209717号公報
【特許文献4】特開2002-169001号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、防眩性、ハードコート性、密着性、特に、耐光性試験後の基材との密着性に優れた電離放射線硬化性樹脂組成物、及びそれを用いた積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、トリアセチルセルロース透明基板上に、特定の組合せの電離放射線硬化性バインダー、有機微粒子、無機微粒子、光開始剤及び有機溶剤よりなる、電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化させてなる層が、これらの欠点を解消し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
本発明は、トリアセチルセルロース透明基材塗布用の電離放射線硬化性樹脂組成物であって、ペンタエリスリトールテトラアクリレートとペンタエリスリトールトリアクリレートとの重量比が70:30〜97:3である電離放射線硬化性バインダー9.9〜80重量%、透光性微粒子0.1〜40重量%、及び有機溶剤19.9〜90重量%を含んでなる電離放射線硬化性樹脂組成物に関する。
【0010】
また、本発明は、透光性微粒子が、一次粒子の平均粒子径が0.1〜10μmである有機微粒子であることを特徴とする上記電離放射線硬化性樹脂組成物に関する。
【0011】
また、本発明は、透光性微粒子が、2次粒子の平均粒子径が0.5〜3μmである無機微粒子であることを特徴とする上記電離放射線硬化性樹脂組成物に関する。
【0012】
また、本発明は、透光性微粒子が、屈折率及び/または平均粒子径の異なる2種以上を含むことを特徴とする上記電離放射線硬化性樹脂組成物に関する。
【0013】
また、本発明は、透光性微粒子が、一次粒子の平均粒子径0.1〜10μmである有機微粒子の1種または2種以上と、2次粒子の平均粒子径0.5〜3μmである無機微粒子とを含んでなることを特徴とする上記電離放射線硬化性樹脂組成物に関する。
【0014】
また、本発明は、有機溶剤が、トリアセチルセルロース透明基材を溶解または膨潤する1種以上の有機溶剤とトリアセチルセルロース透明基材を溶解または膨潤しない1種以上の有機溶剤とを含んでなる混合溶剤であることを特徴とする上記電離放射線硬化性樹脂組成物に関する。
【0015】
また、本発明は、トリアセチルセルロース透明基材を溶解または膨潤する有機溶剤が1,3−ジオキソランであり、且つ、トリアセチルセルロース透明基材を溶解または膨潤しない有機溶剤がトルエンであり、さらに前記溶剤の重量比が10:90〜40:60の範囲である上記電離放射線硬化性樹脂組成物に関する。
【0016】
また、本発明は、電離放射線硬化性樹脂組成物の不揮発分を50重量%に調整したときの粘度が、EL型回転粘度計で25℃の液体温度にて測定したときに、2〜9mPa・sであることを特徴とする上記電離放射線硬化性樹脂組成物に関する。
【0017】
また、本発明は、上記電離放射線硬化性樹脂組成物を含む樹脂組成物層をトリアセチルセルロース透明基材に上に形成してなる積層体に関する。
【0018】
また、本発明は、樹脂組成物層の厚みが、1〜20μmである上記積層体に関する。
【0019】
また、本発明は、上記電離放射線硬化性樹脂組成物をトリアセチルセルロース透明基板に塗工後、電離放射線照射することを特徴とする積層体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の電離放射線硬化性樹脂組成物は、トリアセチルセルロース透明基板上に塗布するため、特定の組合せの電離放射線硬化性化合物、有機微粒子、無機微粒子、光開始剤及び有機溶剤よりなるものである。また、トリアセチルセルロース透明基板上で前記電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化させてなる積層体は、たとえば、微細凸凹形状を形成されている防眩層を成し、耐光試験後の密着性に優れ、耐擦傷性、鉛筆硬度等の塗膜硬度に優れた防眩性フィルムとして用いることができる。このような特性に優れた防眩性フィルムは、従来両立し難かった。防眩性、ハードコート性、密着性、特に耐光性試験後の基材との密着性に優れるという顕著な効果を奏する。

【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0022】
本発明におけるトリアセチルセルロース透明基板としては、トリアセチルセルロースを溶剤に溶解することで調整されたトリアセチルセルロースドープを単層流延、複数層共流延のいずれかの流延方法により流延することにより作成されたトリアセチルセルロースフィルムを用いることが好ましい。トリアセチルセルロース透明基板の厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱い等の作業性、薄層性等の点より10〜500μm程度である。特に20〜300μmが好ましく、30〜200μmがより好ましい。
【0023】
本発明における電離放射線硬化性バインダーは、1分子中にアクリロイル基を3〜4固有し、トリアセチルセルロースフィルムとの濡れ性が、非常に良好であるペンタエリスルトールテトラアクリレートとペンタエリスルトールトリアクリレートとの混合物を主成分として用いることが好ましい。
【0024】
本発明で使用する電離放射線硬化性バインダーは、ペンタエリスルトールテトラアクリレートとペンタエリスルトールトリアクリレートの重量比が70:30〜97:3であることが望ましく、さらに望ましくは、85:15〜97:3であることが望ましい。
【0025】
電離放射線硬化性バインダー中のペンタエリスルトールテトラアクリレートの含有量が多くなると鉛筆硬度や耐擦傷性及び耐光性試験後の密着性に優れる反面、ペンタエリスルトールテトラアクリレートの強い結晶性により電離放射線硬化性樹脂組成物の保存中に析出が生じて問題となる。具体的には、電離放射線硬化性バインダー中のペンタエリスルトールテトラアクリレート成分が、97重量%を超えると析出を生じ、電離放射線硬化性バインダー中のペンタエリスルトールテトラアクリレート成分が、70重量%より少ないと鉛筆硬度や耐擦傷性及び耐光性試験後の密着性が問題となる。
【0026】
電離放射線硬化性バインダー中には、硬化や硬度・密着性などに影響を与えない範囲で各種の添加剤や主成分の副生成物(例えばペンタエリスリトールジアクリレート等)を共存させることができる。電離放射線硬化性バインダー中の主成分の割合としては、100〜80重量%が好ましく、さらに好ましくは100〜90重量%が好ましい。
【0027】
電離放射線硬化性バインダーの配合量は、電離放射線硬化性樹脂組成物全体量に対して9.9〜80重量%が好ましくさらに好ましくは9.9〜60重量%が好ましい。9.9重量%未満ではハードコート性の十分な塗膜が得られず、80重量%超過では透光性微粒子の含有量が少なくなり、十分な防眩性が得られず問題となる。
【0028】
本発明における透光性微粒子は、表面に凸凹を形成及び/またはコーティング層中で光を散乱して防眩性を付与するものであり、有機微粒子及び/または無機微粒子を用いることができる。また、これらの透光性微粒子は、表面凸凹や屈折率をコントロールするために2種類以上の粒子を組み合わせてもよい。透光性微粒子を2種類以上配合することで、様々な用途に要求される曇価の光制御特性に対し、任意に調整を可能とすることができる。
本発明における有機微粒子は、例えばスチレンビーズ、アクリルビーズ、スチレン-アクリルビーズ、メラミンビーズ、ベンゾグアナミンビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ、シリコーンビーズ、フッ素ビーズ、フッ化ビニリデンビーズ、塩ビビーズ、エポキシビーズ、ナイロンビーズ、フェノールビーズ、ポリウレタンビーズ等が挙げられる。これらの有機微粒子の粒子径は、一次粒子の平均粒子径が0.1〜10μmであることが好ましく、2〜6μmであることがより好ましい。一次粒子の平均粒子径が0.1μm未満では、光を散乱する効果が不足するために得られる防眩性が不十分であり、10μmを超えると防眩層内部での光の散乱効果が減少するため映像のギラツキを生じやすい。なお、一次粒子の平均粒子径は、粒子の平均粒径は、例えば、電気抵抗法で測定できる。
本発明における有機微粒子は水及び有機溶剤に不溶のものが好ましく、形状は不定形でも球状でもよい。
【0029】
有機微粒子の添加量は、電離放射線硬化性樹脂組成物全体量に対して、0.1〜40重量%が好ましく、0.1〜30重量%がさらに好ましい。0.1重量%未満では十分な防眩性が得られず、40重量%を超えると防眩性は良好だが白ぼけが出やすくなり好ましくはない。
本発明における無機微粒子としては、例えば、二酸化ケイ素粒子、二酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化アルミニウム粒子等が挙げられる。これら無機微粒子の二次粒子径の平均粒子径は、0.5〜3.0μmであることが好ましく、0.5〜2.0μmであることがより好ましい。また、これらの無機微粒子の形状は不定形でも球状でもよい。これらの無機微粒子の添加量は、電離放射線硬化性樹脂組成物全体量に対して0.1〜40重量%が好ましく、0.1〜30重量%がさらに好ましい。なお、二次粒子の平均粒子径は、例えば、電気抵抗法で測定できる。
【0030】

本発明における有機溶剤としては、例えばジブチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、1,3,5-トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン類;
蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-プチロラクトン等のエステル類;
その他、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、酢酸イソブチル、メチルイソブチルケトン、2-オクタノン、2-ペンタノン、2-ヘキサノン、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、2-メトキシ酢酸メチル、2-エトキシ酢酸メチル、2-エトキシ酢酸エチル、2-エトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシエタノール、2-プロポキシエタノール、2-ブトキシエタノール、1,2-ジアセトキシアセトン、アセチルアセトン、ジアセトンアルコール、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これら溶剤の添加量は、電離放射線硬化性樹脂組成物全体量に対して、19.9〜90重量%が好ましく、19.9〜80重量%がさらに好ましい。
【0031】
本発明におけるトリアセチルセルロース透明基材を溶解または膨順する有機溶剤としては、例えば、ジブチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、1,3,5-トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン類;蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-プチロラクトン等のエステル類;その他、2-メトキシ酢酸メチル、2-エトキシ酢酸メチル、2-エトキシ酢酸エチル、2-エトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシエタノール、2-プロポキシエタノール、2-ブトキシエタノール、1,2-ジアセトキシアセトン、アセチルアセトン、ジアセトンアルコール、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等が挙げられる。これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
トリアセチルセルロース透明基材を溶解または膨潤しない有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、酢酸イソブチル、メチルイソブチルケトン、2-オクタノン、2-ペンタノン、2-ヘキサノン、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられるがこれらに限定するものではない。これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
本発明におけるトリアセチルセルロース透明基材を溶解または膨順する有機溶剤の混合溶媒とするときは、全体の10〜40重量%が好ましい。混合溶剤中のトリアセチルセルロース透明基材を溶解または膨順する有機溶剤の混合重量比が10重量%未満であると密着性の維持が満足できなくなりやすい、溶剤中のトリアセチルセルロース透明基材を溶解または膨順する有機溶剤の混合比混合重量比が40重量%を超えると鉛筆硬度の低下を招きやすい。
【0034】
さらに、塗工時の蒸発速度などの塗工適正とトリアセチルセルロース透明基材への溶解膨潤性のバランスを考慮すると、混合溶剤としては、トリアセチルセルロース透明基材を溶解または膨順する有機溶剤としては1,3-ジオキソラン、トリアセチルセルロース透明基材を溶解または膨順しない有機溶剤としてはトルエン、との組合せであることが好ましい。
【0035】
電離放射線硬化性化合物の不揮発分を50重量%に調整したときの粘度が、EL型回転粘度計で25℃の液体温度にて測定したときに、2〜9mPa・sである場合に、ベースフィルム基材に電離放射線硬化性化合物中の電離放射線硬化性バインダーが前記混合溶剤と共にベースフィルム基材にしみ込み易くなり、よりベースフィルム基材に対する密着性が向上するため、耐光性試験後の密着性も良好となる。
【0036】
当該粘度が、2mPa・s未満ではトリアセチルセルロース透明基材に対するしみ込みが多くなり、防眩層の膜厚が薄くなりすぎるため十分なハードコート性が得られにくい。また、9mPa・sを超えるとトリアセチルセルロース透明基材に対するしみ込みが少なく、耐光性試験後の密着性が不十分となりやすい。
【0037】
本発明の樹脂組成物を電離放射線で硬化させる場合には、通常、光重合開始剤を添加する。光重合開始剤の種類は特に制限はなく、例えばアセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、アントアキノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類等が挙げられる。具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2,4,6-トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド、ミヒラーズケトン、N,N-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、チオキサン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等が挙げられ、これらの光重合開始剤は2種以上を適宜併用することもできる。これらの光重合開始剤の使用量は、電離放射線硬化性化合物に対して、0.1〜20重量%であり、好ましくは1〜10重量%である。
【0038】
本発明で使用される紫外線硬化型樹脂組成物には、さらに光増感剤、レベリング剤、チキソトロピー剤等を含有することができる。
【0039】
光増感剤としては、例えばn-ブチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ポリ-n-ブリルホスフィン等が挙げられ、これらの光増感剤は2種以上を適宜併用することもできる。
【0040】
本発明の積層体は、トリアセチルセルロース透明基板上に電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布後、電離放射線硬化させてなる。
【0041】
本発明における電離放射線硬化性樹脂組成物をトリアセチルセルロース透明基板上に塗布して積層体を形成する方法としては、電離放射線硬化性樹脂組成物をバーコーティング、ブレードコーティング、スピンコーティング、リバースコーティング、ダイティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、マイクログラビアコーティング、リップコーティング、エアーナイフコーティング、ディッピング法等の塗工方法でトリアセチルセルロース透明基板に塗工した後、必要に応じ溶剤を乾燥させ、さらに電離放射線を照射することにより、塗工した電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化させることによって形成される。
【0042】
架橋硬化させる電離放射線としては、紫外線、電子線、可視光、X線、γ線等の活性エネルギー線が挙げられる。
【0043】
例えば、前記紫外線としては、キセノンランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ等の光源から発せられる紫外線を用いることができる。このようにして形成される防眩層の膜厚はハードコート性を保有していれば特に限定されないが、通常1〜20μm、好ましくは3〜7μmの厚みとする。
【0044】
トリアセチルセルロース透明基板上に、本発明における電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化させてなる防眩層の微細凸凹形状の表面に、画面表示のコントラストや白ぼけをさらに改善する方法として、前記防眩層の屈折率よりも低い屈折率の低屈折率層を設けることもできる。これら低屈折率層には、例えば、ポリシロキサン構造を有するものが用いられ、好ましくはフッ素含有ポリシロキサン構造を有するものである。このような低屈折率層は、例えばフッ素含有アルコキシシランにより形成することができる。低屈折率層の厚さは0.05〜0.15μmとするのが好ましい。低屈折率層は適宜な方法にて防眩層の表面に形成することができる。形成方法としては、積層体の形成と同様の方法を使用できる。
【0045】
このようにして、トリアセチルセルロース透明基材上に表面に微細な凹凸を有する防眩層を形成することにより作成された本発明の積層体は、全光線透過率85%以上、かつ、ヘイズ値3.0〜60.0%の光学特性を有していることが好ましく、また、全光線透過率90%以上、ヘイズ値4.0〜45.0%の光学特性を有していることがさらに好ましい。全光線透過率は85%を下回ると、コントラストの高い画像表示ができなくなる。ヘイズ値は3.0%未満となると、充分な防眩性が得られず、また60.0%を超えると、白ぼけが出やすくなるため好ましくない。
【0046】
また、前記積層体である防眩性フィルムのトリアセチルセルロース透明基材には、光学素子を接着することができる。光学素子としては、偏光板、位相差板、楕円偏光板、光学補償付き偏光板等が挙げられ、これらは積層体として用いることができる。光学素子の接着は、接着に応じてアクリル系、ゴム系、シリコーン系等の粘着剤やホットメルト系接着剤などの透明性や耐候性等に優れる適宜な接着層を用いることができる。
【0047】
偏光板としては、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムにヨウ素や染料等を吸着させて延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等の偏向フィルムが挙げられる。位相差板としては、前記透明基板で例示したポリマーフィルムの一軸または2軸延伸フィルムや液晶ポリマーフィルム等が挙げられる。位相差板は、2層以上の延伸フィルムから形成されていてもよい。楕円偏光板、光学補償付き偏光板は、偏光板と位相差板を積層することにより形成しうる。楕円偏光板、光学補償付き偏光板は、偏光板側の面に防眩層を形成している。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら具体例のみに限定されるものではない。なお、例中[部][%]とあるのは、それぞれ[重量部][重量%]を示す。
【0049】
[合成1] ペンタエリスリトールテトラアクリレートの合成
撹拌機、温度計、ディーンスターク装置を取り付けた反応器に、ペンタエリスリトール27.2部、アクリル酸63.4部、トルエン100部、酸性触媒パラトルエンスルホン酸3部及び重合禁止剤ハイドロキノンモノメチルエーテル0.08部を仕込んだ後、空気を吹き込みかつ撹拌しながら加熱した。7時間還流させ水14.2部を留出させた。反応終了後、反応液に10%水酸化ナトリウム水溶液50部を加え室温で撹拌した後静置し、下層(水層)を分離して、過剰量のアクリル酸を除去した。反応液を、水層が中和するまで水洗した。これを無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.028部加え、トルエンを減圧蒸留によって留去、濃縮した。この溶液を、シリカゲルカラム−移動相トルエンで処理し、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.02部加え、溶媒をトルエンで減圧蒸留した。収量61部、ガスクロマトグラフ・13C−NMRで測定したところ、ペンタエリスルトールテトラアクリレートとペンタエリスルトールトリアクリレートの重量比は99:1であった。
【0050】
ガスクロマトグラフ測定条件
装置:SHIMAZDU GCMS-QP5050A
カラム:DB−5 0.25IDmm×30m df=0.25mm
検出温度:250℃
注入温度:150℃
オーブン温度:50℃1分間保持−昇温速度10℃/min−250℃
[配合例1〜10]
表1に示される割合で合成例に示したペンタエリスリトールテトラアクリレート及び/またはアロニックスM306(東亞合成社製:ペンタエリスルトールテトラアクリレートとペンタエリスルトールトリアクリレートの重量比が35:65)を、トルエン及びまたは1,3-ジオキソランに溶解し、さらに光重合開始剤(イルガキュア184,チバガイギー社製)を5部加え、高速ディスパーにて4000rpmで5分撹拌した。
さらに、この溶液に平均粒子径3.5μm、屈折率1.525の架橋ポリスチレン-メチルメタアクリレート粒子(XX-12AE、積水化学社製)及びまたは平均粒子径2.5μm架橋メチルメタアクリレート粒子(エポスターMA1002、日本触媒社製)を加え、高速ディスパーにて4000rpmで15分撹拌し、電離放射線硬化性樹脂組成物(1)〜(10)を調製した。
【0051】
【表1】

[実施例1〜6]
厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士写真フィルム社製)に電離放射線硬化性樹脂組成物(1)〜(6)をバーコーターで塗布し、70℃〜1分で乾燥後させた。その後、窒素パージによって0.3重量%以下酸素濃度雰囲気にて、高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射量400mJ/cm2で照射して塗布層を硬化させ、厚さ5.5μmの防眩層を形成した。得られた防眩フィルムの評価結果を表2に示した。
[比較例1〜4]
実施例1〜6と同様に電離放射線硬化性樹脂組成物(7)〜(10)を塗工硬化させ、防眩層を形成した。得られた防眩フィルムの評価結果を表2に示した。
【0052】
また、実施例1〜6及び比較例1〜4の全光線透過率は、85%以上であった。測定は、ヘイズメーターNDH-2000(東京電色社製)測定装置を用いた。
【0053】
【表2】

(1)ヘイズ値:ヘイズメーターNDH-2000(東京電色社製)を用いてヘイズ値を
測定。
(2)鉛筆硬度:JIS K5400による。
(3)密着性試験:JIS K5400の碁盤目テープ法(間隔1mm)による。
(4)耐光性試験後の密着性試験:スーパーUV耐光性試験機(ダイプラーメタルウエザー、型式:KU-R5CI-A、光源:メタルハライドランプ)にて、63℃-45%RH-65mW/cm-24時間の条件にて耐光性試験を実施後、JIS K5400の碁盤目テープ法(間隔1mm)により、密着性試験を実施。
(5)耐擦傷性:スチールウール#0を用い、500g/10往復評価
◎ : 非常に良好
○ : 良好
△ : やや劣る
× : 劣る
(6)防眩性:作成した防眩フィルムにルーバーなしのむき出しの蛍光灯を写し、その反射像のボケの程度を目視判定した。
【0054】
◎:蛍光灯の輪郭が全くわからない
○:蛍光灯の輪郭がわずかにわかる
△:蛍光灯はぼやけているが輪郭は識別できる
×:蛍光灯が殆どぼやけない(防眩性無し)

表2に示される結果から以下のことが明らかである。実施例1〜6の本発明で特定される防眩フィルムは、耐光試験後の密着性が良好であり、かつ防眩性、鉛筆硬度、耐擦傷性、を同時に満たす。一方、比較例1〜4は、耐光性試験後の密着性及びまたは鉛筆硬度が不足である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の積層体は、表示面に傷が付きにくく、外光の写り込みが少なく、さらに耐光性試験等における信頼性に優れるので画像表示装置に使用できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリアセチルセルロース透明基材塗布用の電離放射線硬化性樹脂組成物であって、ペンタエリスリトールテトラアクリレートとペンタエリスリトールトリアクリレートとの重量比が70:30〜97:3である電離放射線硬化性バインダー9.9〜80重量%、透光性微粒子0.1〜40重量%、及び有機溶剤19.9〜90重量%を含んでなる電離放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
透光性微粒子が、一次粒子の平均粒子径が0.1〜10μmである有機微粒子であることを特徴とする請求項1記載の電離放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
透光性微粒子が、2次粒子の平均粒子径が0.5〜3μmである無機微粒子であることを特徴とする請求項1記載の電離放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
透光性微粒子が、屈折率及び/または平均粒子径の異なる2種以上を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の電離放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
透光性微粒子が、一次粒子の平均粒子径0.1〜10μmである有機微粒子の1種または2種以上と、2次粒子の平均粒子径0.5〜3μmである無機微粒子とを含んでなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の電離放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
有機溶剤が、トリアセチルセルロース透明基材を溶解または膨潤する1種以上の有機溶剤とトリアセチルセルロース透明基材を溶解または膨潤しない1種以上の有機溶剤とを含んでなる混合溶剤であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の電離放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
トリアセチルセルロース透明基材を溶解または膨潤する有機溶剤が1,3−ジオキソランであり、且つ、トリアセチルセルロース透明基材を溶解または膨潤しない有機溶剤がトルエンであり、さらに前記溶剤の重量比が10:90〜40:60の範囲である請求項6記載の電離放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
電離放射線硬化性樹脂組成物の不揮発分を50重量%に調整したときの粘度が、EL型回転粘度計で25℃の液体温度にて測定したときに、2〜9mPa・sであることを特徴とする請求項1〜7いずれか記載の電離放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8いずれか記載の電離放射線硬化性樹脂組成物を含む樹脂組成物層をトリアセチルセルロース透明基材に上に形成してなる積層体。
【請求項10】
樹脂組成物層の厚みが、1〜20μmである請求項9記載の積層体。
【請求項11】
請求項1〜8いずれか記載の電離放射線硬化性樹脂組成物をトリアセチルセルロース透明基板に塗工後、電離放射線照射することを特徴とする積層体の製造方法。

【公開番号】特開2008−24824(P2008−24824A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−199020(P2006−199020)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】