説明

露光ヘッド、露光ヘッドの制御方法、画像形成装置

【課題】発光制御部および駆動部に対して別々に電力を供給する構成において、発光素子の誤発光を抑制することを可能とする技術を提供する。
【解決手段】像を担持する像担持体と、駆動信号に応じて発光する発光素子を有し、発光素子からの光により像担持体を露光する露光ヘッドと、第1の電力の供給を受けて、発光素子の発光を制御する発光制御信号を生成する発光制御部と、第2の電力の供給を受けて、発光制御信号に基づき発光素子に駆動信号を出力する駆動部と、駆動部への第2の電力の供給開始あるいは駆動部への第2の電力の供給停止を、発光制御部へ第1の電力が供給されている状態で行なう電力供給制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発光素子からの光により被露光面を露光する露光ヘッド、当該露光ヘッドの制御方法、および当該露光ヘッドを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、感光体ドラム表面等の被露光面を露光ヘッドにより露光する技術が従来から知られている。つまり、この露光ヘッドは、複数の発光素子を備えており、各発光素子からの光をスポット状に結像して被露光面を露光する。また、このような発光素子の発光を制御する構成として、例えば特許文献2に記載の電気的構成を用いることができる。同文献の電気的構成では、発光素子の発光輝度を制御する輝度データがデータ線駆動回路で生成される。また、この輝度データは画素回路に入力され、画素回路は受け取った輝度データに応じた電流信号を発光素子に入力する。そして、発光素子はこの電流信号に応じて発光する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−195963号公報
【特許文献2】特開2002−156923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、特許文献2に記載の電気的構成は、発光素子の発光を制御するための発光制御信号(輝度データ)を生成する発光制御部(データ線駆動回路)と、この発光制御信号に応じた駆動信号(電流信号)を発光素子に出力する駆動部(画素回路)とを備えている。そして、このような電気的構成を動作させるためには、当然のことながら、発光制御部および駆動部の両方に電力を供給する必要がある。
【0005】
ところで、この電力供給は、発光制御部および駆動部のそれぞれに対して別々に行われる場合がある。なぜなら、電力供給を別々に行なうことで、発光制御部および駆動部に対してそれぞれに適した電源電圧で電力供給を行なうことが可能になったり、あるいは、発光制御部への電力供給ラインと駆動部への電力供給ラインとを別々にして、発光制御部と駆動部との間での電力供給ラインを介したクロストークを抑制することが可能になったりするからである。
【0006】
しかしながら、発光制御部および駆動部に電力供給を別々に行なう構成では、駆動部への電力供給の開始あるいは停止の態様が適切でないことに起因して、発光素子が誤発光してしまう場合があった。つまり、駆動部への電力供給の開始が、発光制御部への電力供給の開始より前であると、発光制御部への電力供給が無い状態のまま駆動部へ電力が供給されることとなる。しかしながら、発光制御部への電力供給が無い状態では、発光制御信号が不定である。その結果、不定な発光制御信号に基づいて不安定な駆動信号が発光素子に出力されてしまい、発光素子が誤発光してしまう場合があった。あるいは、駆動部への電力供給の停止が、発光制御部への電力供給が停止された後であると、発光制御部への電力供給が無い状態のまま駆動部へ電力が供給される状況が発生する。その結果、先ほどと同様にして、発光素子が誤発光してしまう場合があった。そして、このような発光素子の誤発光は、発光素子の寿命低下あるいは感光体ドラム表面の劣化等の原因となるおそれがあった。
【0007】
この発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、発光制御部および駆動部に対して別々に電力を供給する構成において、発光素子の誤発光を抑制することを可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる画像形成装置は、上記目的を達成するために、像を担持する像担持体と、駆動信号に応じて発光する発光素子を有し、発光素子からの光により像担持体を露光する露光ヘッドと、第1の電力の供給を受けて、発光素子の発光を制御する発光制御信号を生成する発光制御部と、第2の電力の供給を受けて、発光制御信号に基づき発光素子に駆動信号を出力する駆動部と、駆動部への第2の電力の供給開始あるいは駆動部への第2の電力の供給停止を、発光制御部へ第1の電力が供給されている状態で行なう電力供給制御部と、を備えたことを特徴としている。
【0009】
このように構成された本発明(画像形成装置)では、発光制御部が、発光素子の発光を制御する発光制御信号を生成し、駆動部が、この発光制御信号に基づいて発光素子に駆動信号を出力する。また、発光制御部は第1の電力の供給を受けて動作し、駆動部は第2の電力の供給を受けて動作するように構成されており、発光制御部および駆動部に対して別々に電力が供給されている。そして、上述した理由により、このような構成では発光素子の誤発光が発生するおそれがあった。これに対して本発明は、駆動部への第2の電力の供給開始あるいは駆動部への第2の電力の供給停止を、発光制御部へ第1の電力が供給されている状態で行なう。これにより、発光制御部の発光制御信号が不定なままで駆動部に電力が供給されるという状況の発生を抑えて、発光素子の誤発光が抑制可能となっている。
【0010】
また、露光ヘッドの動作開始時に、発光制御部への第1の電力の供給を開始した後、電力供給制御部は、駆動部への第2の電力の供給を開始するように構成しても良い。なぜなら、このように構成することで、発光制御部の発光制御信号が定まった状態で、駆動部への第2の電力の供給を開始することができ、露光ヘッドの動作開始時における発光素子の誤発光を抑制することが可能となるからである。
【0011】
また、露光ヘッドの動作終了時に、駆動部への第2の電力の供給を停止した後、電力供給制御部は、発光制御部への第1の電力の供給を停止するように構成しても良い。なぜなら、このように構成することで、発光制御部の発光制御信号が定まった状態で、駆動部への第2の電力の供給を停止することができ、露光ヘッドの動作終了時における発光素子の誤発光を抑制することが可能となるからである。
【0012】
ところで、画像形成装置の異常を検出する検出部を備えるように、画像形成装置を構成することがある。そして、このような画像形成装置においては、少なくとも異常が解消するまでは、発光素子を消灯させておくことが好適である。なぜなら、発光素子が発光し続けることで、発光素子の寿命短縮や像担持体の劣化等の問題が引き起こされるおそれがあるからである。そこで、電力供給制御部は、検出部が異常を検出すると、駆動部への第2の電力の供給を停止するとともに、発光制御部への第1の電力の供給を継続するように第1の電力の供給を制御するように構成しても良い。なぜなら、検出部が異常を検出すると、駆動部への第2の電力の供給が停止されるため、異常検出中に発光素子を消灯させておくことができるからである。しかも、駆動部への第2の電力の供給停止は、発光制御部へ第1の電力が供給された状態で実行されるため、駆動部への第2の電力の供給停止に伴なう発光素子の誤発光を抑制することが可能となっている。さらには、異常検出後も、発光制御部への第1の電力の供給は継続されているため、異常が解消された際には、駆動部への第2の電力の供給を開始するだけで、直ちに露光ヘッドは動作を開始できる。
【0013】
また、本発明にかかる露光ヘッドは、上記目的を達成するために、駆動信号に応じて発光する発光素子と、第1の電力の供給を受けて、発光素子の発光を制御する発光制御信号を生成する発光制御部と、第2の電力の供給を受けて、発光制御信号に基づき発光素子に駆動信号を出力する駆動部と、駆動部への第2の電力の供給開始あるいは駆動部への第2の電力の供給停止を、発光制御部へ第1の電力が供給されている状態で行なう電力供給制御部と、を備えたことを特徴としている。
【0014】
このように構成された本発明(露光ヘッド)では、発光制御部が、発光素子の発光を制御する発光制御信号を生成し、駆動部が、この発光制御信号に基づいて発光素子に駆動信号を出力する。また、発光制御部は第1の電力の供給を受けて動作し、駆動部は第2の電力の供給を受けて動作するように構成されており、発光制御部および駆動部に対して別々に電力が供給されている。そして、上述した理由によりこのような構成では、発光素子の誤発光が発生するおそれがあった。これに対して本発明は、駆動部への第2の電力の供給開始あるいは駆動部への第2の電力の供給停止を、発光制御部へ第1の電力が供給されている状態で行なう。これにより、発光制御部の発光制御信号が不定なままで駆動部に電力が供給されるという状況の発生を抑えて、発光素子の誤発光が抑制可能となっている。
【0015】
なお、発光素子が駆動信号に応じた光量で発光する露光ヘッドに対しては、本発明を適用することが特に好適である。つまり、このような露光ヘッドでは、発光制御信号が不定となったために、駆動信号が非常に大きな値を有する場合があった。そして、このような場合、発光素子が最大光量で発光して、発光素子の寿命が著しく縮んでしまうおそれがあった。これに対して、本発明を適用することで、発光素子の最大光量での発光を抑制して、発光素子の寿命短縮を抑制することが可能となる。
【0016】
発光素子が有機EL素子である露光ヘッドに対しては、特に本発明を適用することが好適である。なぜなら、有機EL素子は、発光を繰り返すことで劣化するため、上述のような誤発光を抑制して長寿命化を図ることが好適であるからである。
【0017】
また、本発明にかかる露光ヘッドの制御方法は、上記目的を達成するために、駆動信号に応じて発光する発光素子に対して駆動信号を発光制御信号に基づいて出力する駆動部への電力供給の開始あるいは停止を、発光制御信号を生成する発光制御部へ電力が供給されている状態で行なうことを特徴としている。
【0018】
このように構成された本発明(露光ヘッドの制御方法)は、駆動部への電力供給の開始あるいは停止を、発光制御信号を生成する発光制御部へ電力が供給されている状態で行なう。これにより、発光制御部の発光制御信号が不定なままで駆動部に電力が供給されるという状況の発生を抑えて、発光素子の誤発光が抑制可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図。
【図2】図1の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図。
【図3】ラインヘッドの構造を示す斜視図。
【図4】ラインヘッドの構造を示す部分断面図。
【図5】ヘッド基板の裏面の構成を示す平面図。
【図6】図2の電気的構成の部分的な詳細を示すブロック図。
【図7】駆動回路の構成を示す図。
【図8】第1実施形態での電源管理を示すタイミングチャート。
【図9】第2実施形態での電源管理を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
第1実施形態
図1は本発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図である。図2は図1の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。この装置は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の4色のトナーを重ね合わせてカラー画像を形成するカラーモードと、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成するモノクロモードとを選択的に実行可能な画像形成装置である。この画像形成装置では、ホストコンピュータなどの外部装置から画像形成指令がCPUやメモリーなどを有するメインコントローラーMCに与えられると、このメインコントローラーMCがエンジンコントローラーECに制御信号を与え、これに基づき、エンジンコントローラーECがエンジン部EGおよびヘッドコントローラーHCなど装置各部を制御して所定の画像形成動作を実行し、複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどの記録材たるシートに画像形成指令に対応する画像を形成する。
【0021】
この実施形態にかかる画像形成装置が有するハウジング本体3内には、電源回路基板(ヘッド用電源回路100を含む)、メインコントローラーMC、エンジンコントローラーECおよびヘッドコントローラーHCを内蔵する電装品ボックス5が設けられている。また、画像形成ユニット2、転写ベルトユニット8および給紙ユニット7もハウジング本体3内に配設されている。また、図1においてハウジング本体3内右側には、二次転写ユニット12、定着ユニット13およびシート案内部材15が配設されている。なお、給紙ユニット7は、ハウジング本体3に対して着脱自在に構成されている。そして、該給紙ユニット7および転写ベルトユニット8については、それぞれ取り外して修理または交換を行うことが可能な構成になっている。
【0022】
画像形成ユニット2は、複数の異なる色の画像を形成する4個の画像形成ステーション2Y(イエロー用)、2M(マゼンタ用)、2C(シアン用)および2K(ブラック用)を備えている。なお、図1においては、画像形成ユニット2の各画像形成ステーションは構成が互いに同一のため、図示の便宜上一部の画像形成ステーションのみに符号を付し、他の画像形成ステーションについては符号を省略する。
【0023】
各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kには、それぞれの色のトナー像がその表面に形成される感光体ドラム21が設けられている。各感光体ドラム21は、その回転軸が主走査方向MD(図1の紙面に対して垂直な方向)に平行もしくは略平行となるように配置されている。また、各感光体ドラム21はそれぞれ専用の駆動モーターに接続され図中矢印D21の方向に所定速度で回転駆動される。これにより、感光体ドラム21表面が、主走査方向MDに直交もしくは略直交する副走査方向SDに搬送される。また、感光体ドラム21の周囲には、その回転方向に沿って帯電部23、ラインヘッド29、現像部25および感光体クリーナ27が配設されている。そして、これらの機能部によって帯電動作、潜像形成動作およびトナー現像動作が実行される。カラーモード実行時は、全ての画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kで形成されたトナー像を転写ベルトユニット8に設けた転写ベルト81に重ね合わせてカラー画像を形成する。また、モノクロモード実行時は、画像形成ステーション2Kのみを動作させてブラック単色画像を形成する。
【0024】
帯電部23は、その表面が弾性ゴムで構成された帯電ローラーを備えている。この帯電ローラーは帯電位置で感光体ドラム21の表面と当接して従動回転するように構成されており、感光体ドラム21の回転動作に伴って従動回転する。また、この帯電ローラーは帯電バイアス発生部(図示省略)に接続されており、帯電バイアス発生部からの帯電バイアスの給電を受けて帯電部23と感光体ドラム21が当接する帯電位置で感光体ドラム21の表面を所定の表面電位に帯電させる。
【0025】
ラインヘッド29は、その長手方向LGDが主走査方向MDに平行もしくは略平行となるように、かつ、その幅方向LTDが副走査方向SDに平行もしくは略平行となるように配置されている。ラインヘッド29は、長手方向LGDに配列された複数の発光素子を備えており、感光体ドラム21に対向配置されている。そして、これらの発光素子から、帯電部23により帯電された感光体ドラム21の表面に向けて光を照射して該表面に静電潜像を形成する。
【0026】
図3はラインヘッドの構造を示す斜視図である。同図では、ヘッド基板294の裏面側の構成が記載されており、表面側の構成は省略されている。なお、ヘッド基板294が有する2面のうち、同図上側の面を表面とし、同図下側の面を裏面とする。また、図4は、ラインヘッドの構造を示す部分断面図である。さらに、図5は、ヘッド基板の裏面の構成を示す平面図であり、ヘッド基板表面側からヘッド基板裏面を平面視した場合に相当する。
【0027】
ラインヘッド29は、その内部にガラス基板であるヘッド基板294を備えており、このガラス基板294の裏面294−tには、複数の発光素子Eが主走査方向MD(長手方向LGD)に2行千鳥で並んでいる。各発光素子Eはいわゆるボトムエミッション型の有機EL(Electro-Luminescence)素子である。さらに、ヘッド基板294の裏面294−tには、低温ポリシリコン薄膜トランジスタ(low temperature poly silicon thin film transistor:LTPS-TFT)で構成された駆動回路295が設けられている。この駆動回路295は隣接する6個の発光素子E毎に設けられており、駆動回路295と発光素子Eとは配線Weによって互いに接続されている。そして、各発光素子Eは、配線Weを介して駆動回路295から駆動電流Ie(図7)の供給を受けて、互いに同一波長の光ビームを射出する。
【0028】
発光素子Eの発光面から射出した光ビームはヘッド基板294を透過して、屈折率分布型ロッドレンズアレイ297に入射する。こうして発光素子Eから射出した光ビームが、屈折率分布型ロッドレンズアレイ297により正立等倍で結像されて、感光体ドラム21表面にスポットSPが形成される。そして、スポットSPにより露光された部分が除電されて、静電潜像が感光体ドラム21の表面に形成される。
【0029】
図1に戻って装置構成の説明を続ける。現像部25は、その表面にトナーを担持する現像ローラー251を有する。そして、現像ローラー251と電気的に接続された現像バイアス発生部(図示省略)から現像ローラー251に印加される現像バイアスによって、現像ローラー251と感光体ドラム21とが当接する現像位置において、帯電トナーが現像ローラー251から感光体ドラム21に移動してその表面に形成された静電潜像が顕像化される。
【0030】
現像位置において顕在化されたトナー像は、感光体ドラム21の回転方向D21に搬送された後、転写ベルト81と各感光体ドラム21が当接する一次転写位置TR1において転写ベルト81に一次転写される。
【0031】
また、感光体ドラム21の回転方向D21の一次転写位置TR1の下流側で且つ帯電部23の上流側に、感光体ドラム21の表面に当接して感光体クリーナ27が設けられている。この感光体クリーナ27は、感光体ドラムの表面に当接することで一次転写後に感光体ドラム21の表面に残留するトナーをクリーニング除去する。
【0032】
転写ベルトユニット8は、駆動ローラー82と、図1において駆動ローラー82の左側に配設される従動ローラー83(ブレード対向ローラー)と、これらのローラーに張架され駆動ローラー82の回転により図示矢印D81の方向(搬送方向)へ循環駆動される転写ベルト81とを備えている。また、転写ベルトユニット8は、転写ベルト81の内側に、カートリッジ装着時において各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kが有する感光体ドラム21各々に対して一対一で対向配置される、4個の一次転写ローラー85Y、85M、85Cおよび85Kを備えている。これらの一次転写ローラーは、それぞれ一次転写バイアス発生部(図示省略)と電気的に接続される。
【0033】
カラーモード実行時は、図1および図2に示すように全ての一次転写ローラー85Y、85M、85Cおよび85Kを画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2K側に位置決めすることで、転写ベルト81を画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kそれぞれが有する感光体ドラム21に押し遣り当接させて、各感光体ドラム21と転写ベルト81との間に一次転写位置TR1を形成する。そして、適当なタイミングで一次転写バイアス発生部から一次転写ローラー85Y等に一次転写バイアスを印加することで、各感光体ドラム21の表面上に形成されたトナー像を、それぞれに対応する一次転写位置TR1において転写ベルト81表面に転写する。すなわち、カラーモードにおいては、各色の単色トナー像が転写ベルト81上において互いに重ね合わされてカラー画像が形成される。
【0034】
さらに、転写ベルトユニット8は、ブラック用一次転写ローラー85Kの下流側で且つ駆動ローラー82の上流側に配設された下流ガイドローラー86を備える。この下流ガイドローラー86は、一次転写ローラー85Kが画像形成ステーション2Kの感光体ドラム21に当接して形成する一次転写位置TR1での一次転写ローラー85Kとブラック用感光体ドラム21(K)との共通接線上において、転写ベルト81に当接するように構成されている。
【0035】
給紙ユニット7は、シートを積層保持可能である給紙カセット77と、給紙カセット77からシートを一枚ずつ給紙するピックアップローラー79とを有する給紙部を備えている。ピックアップローラー79により給紙部から給紙されたシートは、レジストローラー対80によって給紙タイミングが調整された後、シート案内部材15に沿って、駆動ローラー82と二次転写ローラー121とが当接する二次転写位置TR2に給紙される。
【0036】
二次転写ローラー121は、転写ベルト81に対して離当接自在に設けられ、二次転写ローラー駆動機構(図示省略)により離当接駆動される。定着ユニット13は、ハロゲンヒータ等の発熱体を内蔵して回転自在な加熱ローラー131と、この加熱ローラー131を押圧付勢する加圧部132とを有している。そして、その表面に画像が二次転写されたシートは、シート案内部材15により、加熱ローラー131と加圧部132の加圧ベルト1323とで形成するニップ部に案内され、該ニップ部において所定の温度で画像が熱定着される。加圧部132は、2つのローラー1321,1322と、これらに張架される加圧ベルト1323とで構成されている。そして、加圧ベルト1323の表面のうち、2つのローラー1321,1322により張られたベルト張面を加熱ローラー131の周面に押し付けることで、加熱ローラー131と加圧ベルト1323とで形成するニップ部が広くとれるように構成されている。また、こうして定着処理を受けたシートはハウジング本体3の上面部に設けられた排紙トレイ4に搬送される。
【0037】
前記した駆動ローラー82は、転写ベルト81を図示矢印D81の方向に循環駆動するとともに、二次転写ローラー121のバックアップローラーとしての機能も兼ねている。駆動ローラー82の周面には、厚さ3mm程度、体積抵抗率が1000kΩ・cm以下のゴム層が形成されており、金属製の軸を介して接地することにより、図示を省略する二次転写バイアス発生部から二次転写ローラー121を介して供給される二次転写バイアスの導電経路としている。このように駆動ローラー82に高摩擦かつ衝撃吸収性を有するゴム層を設けることにより、二次転写位置TR2へシートが進入する際の衝撃が転写ベルト81に伝達されることに起因する画質の劣化を防止することができる。
【0038】
また、この装置では、ブレード対向ローラー83に対向してクリーナ部71が配設されている。クリーナ部71は、クリーナブレード711と廃トナーボックス713とを有する。クリーナブレード711は、その先端部を転写ベルト81を介してブレード対向ローラー83に当接することで、二次転写後に転写ベルト81に残留するトナーや紙粉等の異物を除去する。そして、このように除去された異物は、廃トナーボックス713に回収される。また、クリーナブレード711及び廃トナーボックス713は、ブレード対向ローラー83と一体的に構成されている。
【0039】
なお、この実施形態においては、各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kの感光体ドラム21、帯電部23、現像部25および感光体クリーナ27を一体的にカートリッジとしてユニット化している。そして、このカートリッジが装置本体に対し着脱可能に構成されている。また、各カートリッジには、該カートリッジに関する情報を記憶するための不揮発性メモリーがそれぞれ設けられている。そして、エンジンコントローラーECと各カートリッジとの間で無線通信が行われる。こうすることで、各カートリッジに関する情報がエンジンコントローラーECに伝達されるとともに、各メモリー内の情報が更新記憶される。これらの情報に基づき各カートリッジの使用履歴や消耗品の寿命が管理される。
【0040】
また、この実施形態では、メインコントローラーMC、ヘッドコントローラーHCおよび各ラインヘッド29がそれぞれ別ブロックとして構成され、これらは互いにシリアル通信線を介して接続されている。各ブロック間でのデータのやりとり動作について、図2および図6を参照しながら説明する。ここで、図6は、図2の電気的構成の部分的な詳細を示すブロック図である。なお、本実施形態では4色分のラインヘッド29が設けられているが、ラインヘッド29に対して設けられる電気的構成は各色で共通するので、図6では、1色のラインヘッド29に対応する電気的構成のみが示されている。
【0041】
外部装置からメインコントローラーMCに画像形成指令が与えられると、メインコントローラーMCは、エンジンコントローラーECにエンジン部EGを起動させるための制御信号を送信する。また、メインコントローラーMCに設けられた画像処理部(図示省略)が、画像形成指令に含まれる画像データに対して、フォントの生成やハーフトーンのスクリーン処理等、所定の信号処理を行って、ラインヘッド29の発光素子Eの発光/消灯を示すビデオデータVDを各トナー色毎に生成する。
【0042】
一方、制御信号を受けたエンジンコントローラーECは、エンジン部EG各部の初期化およびウォームアップを開始する。これらが完了して画像形成動作を実行可能な状態になると、エンジンコントローラーECは、各ラインヘッド29を制御するヘッドコントローラーHCに対し画像形成動作の開始のきっかけとなる同期信号Vsyncを出力する。
【0043】
同期信号Vsyncを受信した後、ヘッドコントローラーHCは、1ページ分の画像の先頭を示す垂直リクエスト信号VREQと、該画像を構成するラインのうち1ライン分のビデオデータVDを要求する水平リクエスト信号HREQとを、メインコントローラーMCに出力する。一方、メインコントローラーMCは、受信したこれらのリクエスト信号に応じてビデオデータVDをヘッドコントローラーHCに出力する。より詳しくは、メインコントローラーMCは、画像の先頭を示す垂直リクエスト信号VREQを受信した後、水平リクエスト信号HREQを受信する度に、画像の先頭部分から1ライン分ずつビデオデータVDをヘッドコントローラーHCに順次出力する。
【0044】
また、ヘッドコントローラーHCはビデオデータVDをラインヘッド29内部の制御回路200に転送し、制御回路200はこのビデオデータVDに基づいて駆動回路295の発光素子駆動を制御する。なお、図5等に示したように、複数の発光素子Eは一直線状ではなくて千鳥状に主走査方向MDに並んでいる。したがって、1ライン分のビデオデータVDをそのまま制御回路200に転送すると、本来一直線状に形成されるべきライン潜像が、千鳥状に形成されてしまう。そこで、この実施形態のヘッドコントローラーHCは、発光素子Eの配置態様に応じて、ビデオデータVDの転送順序を並び替えている。
【0045】
制御回路200には演算処理部210が設けられており、制御回路200での動作はこの演算処理部210の制御を受けて実行される。さらに、制御回路200には、メモリー220、光量データ生成部230およびドライバーIC240とが設けられている。メモリー220には各発光素子Eの光量補正値が記憶されており、光量データ生成部230はこの光量補正値に基づいてビデオデータVDを補正して、光量データSdを生成する。つまり、発光素子Eの特性は一定の範囲内でばらつくため、ビデオデータVDが示す値そのままで発光素子Eを発光させると、発光素子Eの光量値が所望の値とならない場合がある。そこで、ラインヘッド29は、補正したビデオデータVD(つまり、光量データSd)で発光素子Eを発光させることとしている。このとき、発光素子Eを発光させる光量データSdは、発光素子Eの発光を示すビデオデータVDの値を補正して求められる一方、発光素子Eを消灯させる光量データSdは、発光素子Eの消灯を示すビデオデータVDの値をそのまま用いても良い。なお、光量補正値は、画像形成装置の起動時にヘッドコントローラーHCにより生成されてメモリー220に予め転送されている。
【0046】
こうして求められた光量データSdは、ドライバーIC240に入力される。ドライバーIC240は複数の出力ポートを有しており、各出力ポートに対して例えば8bitのデータを入力することで、この8bitデータに対応する電圧の光量データSdを各出力ポートから出力することができる。また、ドライバーIC240は、この光量データの出力動作を時分割で繰り返す。これにより、出力ポート数の整数倍の個数の発光素子Eに対応する容量CP(図7)への書き込みが可能となる。このように、ドライバーIC240は多数のD/Aコンバーターの集まりとして機能する。そして、ドライバーIC240は、この光量データSdと、この光量データSdの容量CPへの時分割書き込みタイミングを示すゲート信号Sgとを駆動回路295に出力する。
【0047】
図7は駆動回路が備える構成を示す図である。なお、上述したとおりこの実施形態では、6個の発光素子Eに対して1個の駆動回路295が設けられているため、1個の駆動回路295内には、6個の発光素子Eそれぞれを駆動するための回路が設けられている。ただし、図7では便宜上、1個の発光素子Eと当該発光素子を駆動する回路のみが、1個の駆動回路295内に示されている。
【0048】
駆動回路295には、光量データSdが入力されるデータ端子dataと、このデータ端子dataへの入力信号(光量データSd)が書き込まれる容量CPとが、発光素子E毎に設けられている。さらに、駆動回路295には、ゲート信号Sgが入力されるゲート端子W_gateが設けられている。つまり、時分割によって容量CPへのデータ書き込みを行なうために、駆動回路295には、書き込み対象となる容量CPを特定するためのゲート端子W_gateが設けられており、ゲート信号Sgが与える時分割タイミングで容量CPへの書き込みが行なわれるように構成されている。駆動回路295の具体的構成は次のとおりである。
【0049】
駆動回路295には、低温ポリシリコン薄膜トランジスタである第1のトランジスタTr1が設けられている。そして、この第1のトランジスタTr1のソースにはデータ端子dataが接続される一方、第1のトランジスタTr1のドレインには容量CPの一端が接続されている(なお、容量CPの他端は駆動回路用電源電圧Velに接続されている)。さらに、第1のトランジスタTr1のゲートにはゲート端子W_gateが接続されており、ゲート端子W_gateへの入力信号により第1のトランジスタTr1のオン/オフ制御が可能となっている。したがって、ゲート端子W_gateにオン信号が入力されている間に、データ端子dataに入力された光量データSdが容量CPに書き込まれる一方、ゲート端子W_gateにオフ信号が入力されている間は、データ端子dataの電圧値に関係なく書き込み済みの光量データSdが容量CPに保持され続ける。なお、この書き込み動作は一定の周期で繰り返し行なわれるが、容量CPは十分に大きいため、書き込み動作それぞれの間における容量CPの電圧変化は実質的に無い。
【0050】
また、駆動回路295は、低温ポリシリコン薄膜トランジスタである第2のトランジスタTr2をさらに備えている。第2のトランジスタTr2のソースは駆動回路用電源電圧Velに接続されるとともに、第2のトランジスタTr2のドレインは配線Weによって発光素子E(のアノード側)に接続されている。また、第2のトランジスタTr2のゲートには上記容量CPの一端が接続されており、第2のトランジスタTr2は容量CPの電圧値に応じた駆動電流Ieをドレインより出力する。したがって、容量CPに駆動電圧が保持されている間は、第2のトランジスタTr2が駆動電流Ieを発光素子Eに供給するため、発光素子Eは駆動電流Ieに応じた光量で発光する。一方で、容量CPに消灯電圧が保持されている間は、第2のトランジスタTr2は発光素子Eへの駆動電流Ieの供給を遮断するため、発光素子Eは消灯する。
【0051】
なお、発光素子Eである有機EL素子に印加される電圧(駆動電圧)は、駆動回路用電源電圧Velと、発光素子Eのカソード側に接続された電圧Vctとの電位差に依存する。この有機EL素子は一般的な無機のLED(Light Emitting Diode)に比べて抵抗が大きいため、駆動電圧は6〜16[V]程度必要である。さらに、様々な余裕を見込むと20[V]以上の駆動電圧が必要となる場合もある。また、このような高駆動電圧を、TFTの耐圧が満たさないときは、電圧Vctを0[V]ではなくマイナス電圧とすることもある。
【0052】
また、図2、図6に示すように、この実施形態ではヘッド用電源回路100が設けられている。このヘッド用電源回路100は、4色のラインヘッド29について共通化されている(図2)。ヘッド用電源回路100の内部には、主電源Vm、ヘッドコントローラー用電力発生部110、制御回路用電力発生部120および駆動回路用電力発生部130が設けられている。これらヘッドコントローラー用電力発生部110、制御回路用電力発生部120および駆動回路用電力発生部130はいずれも主電源Vmに接続されている。
【0053】
ヘッドコントローラー用電力発生部110は、主電源Vmから生成したコントローラー用電源電圧VcrをヘッドコントローラーHCに供給し、ヘッドコントローラーHCはこの電力供給により動作可能となっている。なお、ヘッドコントローラーHCは略ロジック回路で構成されているため、コントローラー用電源電圧Vcrは1〜5V程度の低電圧でよい。
【0054】
制御回路用電力発生部120は、主電源Vmから生成した制御回路用電源電圧Vccをラインヘッド29の制御回路200に供給し、制御回路200はこの電力供給により動作可能となっている。なお、制御回路200が有するドライバーIC240の出力段はアナログ回路で構成されているため、制御回路用電源電圧Vccはある程度の高電圧である必要がある。ただし、ドライバーIC240のその他の部分、演算処理部210、メモリー220および光量データ生成部のロジック回路に対しては、制御回路用電源電圧Vccをより低電圧に変換してから供給する等の変更は適宜可能である。
【0055】
駆動回路用電力発生部130は、主電源Vmから生成した駆動回路用電源電圧Velをラインヘッド29の駆動回路295に供給し、駆動回路295はこの電力供給により動作可能となっている。なお、駆動回路用電源電圧Velは、発光素子Eに十分な駆動電圧を印加できるだけの高電圧である。
【0056】
このように、第1実施形態では、ヘッドコントローラーHC、制御回路200(発光制御部)への電力供給と、駆動回路295(駆動部)への電力供給を別々に行なっている。したがって、ヘッドコントローラーHC、制御回路200への電力供給が無くて光量データSdが不定の状態のまま、駆動回路295への電力が供給されることに起因して発光素子Eが誤発光してしまう場合があった。そこで、第1実施形態では、次のような電源管理を実行している。
【0057】
図8は、第1実施形態での電源管理を示すタイミングチャートであり、特に、画像形成装置の起動時および動作終了時におけるラインヘッドの電源管理を示している。なお、同図上段のグラフは電源電圧Vhc/Vccの供給状態を示しており、横軸が時間[t]を表し、縦軸が電源電圧Vhc/Vccの電圧[V]を表している。また、同図下段のグラフは電源電圧Velの供給状態を示しており、横軸が時間[t]を表し、縦軸が電源電圧Velの電圧[V]を表している。
【0058】
画像形成装置の電源が投入されると、エンジンコントローラーECはCPUの初期化処理を行った後に、帯電部23、現像部25等の各ユニットの初期化と動作状態確認を行なう。ヘッドコントローラーHCは、これに対応してラインヘッド29の初期化を行なう。そして、かかる初期化動作を実行可能とするために、時刻t11に、ヘッド用電源回路100はヘッドコントローラー用電源電圧Vhcおよび制御回路用電源電圧Vccの供給を開始する。これにより、ヘッドコントローラーHCおよび制御回路200が電力供給を受けて動作可能となる。このとき、ドライバーIC240は、全発光素子Eが消灯するような光量データSd(全発光素子消灯データ)を出力する。
【0059】
続いて、ヘッドコントローラーHCおよび制御回路200の起動に要する時間を経た時刻t12に、ヘッド用電源回路100は駆動回路用電源電圧Velの供給を開始する。これにより、駆動回路295が電力供給を受けて動作可能となる。また、上述のとおり、ドライバーIC240は全発光素子消灯データを出力しているため、駆動回路295の起動前後を通じて全発光素子Eは消灯している。その後、ヘッドコントローラーHCは、ラインヘッド29内の不揮発性メモリーから光量補正値を読み出して、制御回路200のメモリー220に転送する。こうしてラインヘッド29の動作が開始される。
【0060】
上述の起動処理が完了すると、画像形成装置は外部からの画像形成指令に応じて印刷動作を実行可能となる。具体的には、エンジンコントローラーECが、装置各部を駆動するモーター、ソレノイドなどの動力源を制御しつつ、帯電部23、現像部25、一次転写位置TR1に印加されるバイアス電圧の制御および定着ユニット13の加熱ローラー131の温度管理を行うことで、印刷動作が実行される。一方、画像形成装置の電源が切られて画像形成装置の動作を終了する場合は、次のようなラインヘッド29の電源管理が実行される。
【0061】
つまり、時刻t13に、ヘッド用電源回路100が駆動回路用電源電圧Velの供給を停止する。これにより、駆動回路295は電力供給が遮断されて動作不能となり、全発光素子Eが消灯状態となる。続いて時刻t14に、ヘッド用電源回路100はヘッドコントローラー用電源電圧Vhcおよび制御回路用電源電圧Vccの供給を停止する。これにより、ヘッドコントローラーHCおよび制御回路200は、電力供給が遮断されて動作不能となる。こうしてラインヘッド29の動作が終了される。
【0062】
以上のように、第1実施形態では、駆動回路295への電力供給の開始あるいは停止を、ヘッドコントローラーHCおよび制御回路200へ電力が供給されている状態で行なっている。これにより、光量データSdが不定なままで駆動回路295に電力が供給されるという状況の発生を抑えて、発光素子Eの誤発光が抑制可能となっている。
【0063】
また、第1実施形態では、ラインヘッド29の動作開始時には、ヘッド用電源回路100は、ヘッドコントローラーHCおよび制御回路200への電力供給を開始した後で、駆動回路295への電力供給を開始している。したがって、光量データSdが定まった状態で、駆動回路295への電力供給を開始することができ、ラインヘッド29の動作開始時における発光素子Eの誤発光を抑制することが可能となっている。
【0064】
また、第1実施形態では、ラインヘッド29の動作終了時には、ヘッド用電源回路100は、駆動回路295への電力供給を停止した後で、ヘッドコントローラーHCおよび制御回路200への電力供給を停止している。したがって、光量データSdが定まった状態で、駆動回路295への電力供給を停止することができ、ラインヘッド29の動作終了時における発光素子Eの誤発光を抑制することが可能となっている。
【0065】
また、第1実施形態のラインヘッド29のように、発光素子Eが駆動電流Ieの大きさに応じた光量で発光するラインヘッド29に対しては、本発明を適用して発光素子Eの誤発光を抑制することが特に好適である。つまり、このようなラインヘッド29では、光量データSdが不定となったために、駆動電流Ieが非常に大きな値を有する場合があった。そして、このような場合、発光素子Eが最大光量で発光して、発光素子Eの寿命が縮んだり、あるいは感光体ドラム21表面が著しく劣化してしまったりするおそれがあった。これに対して、第1実施形態は、発光素子Eの最大光量での発光を抑制して、発光素子Eの寿命短縮や感光体ドラム21表面の劣化を抑制することが可能となっており、好適である。
【0066】
また、第1実施形態のラインヘッド29のように、発光素子Eが有機EL素子であるラインヘッド29に対しては、特に本発明を適用して、発光素子Eの誤発光を抑制することが好適である。なぜなら、有機EL素子は、発光を繰り返すことで劣化するため、上述のような誤発光を抑制して長寿命化を図ることが好適であるからである。
【0067】
また、上述のラインヘッド29のように、ゲート信号Sgをゲート端子W_gateに印加して時分割書き込みを行なう構成では、ヘッドコントローラーHCおよび制御回路200への電力供給が停止されると、光量データSdのみならずゲート信号Sgも不定となってしまうため、駆動電流Ieが極めて不安定になる傾向にあった。これに対して、第1実施形態では、ヘッド用電源回路100は、ヘッドコントローラーHCおよび制御回路200への電力供給を開始した後で、駆動回路295への電力供給を開始している。したがって、光量データSdおよびゲート信号Sgの両方が定まった状態で、駆動回路295への電力供給を開始することができ、ラインヘッド29の動作開始時における発光素子Eの誤発光を抑制することが可能となっている。
【0068】
また、第1実施形態は、駆動回路295を低温ポリシリコン薄膜トランジスタにより形成した構成しており、好適である。なぜなら、この低温ポリシリコン薄膜トランジスタは、電子移動度が高く有機EL素子(発光素子E)を駆動するのに適しているという利点を有するからである。
【0069】
また、第1実施形態は、各種電源電圧Vhc、Vcc、Velを1つの主電源Vmから生成する構成を備えている。したがって、単一の電源Vmを用意すれば足りるため、ヘッド用電源回路100の構成および電源配線を簡素化し、ひいては画像形成装置のコストダウンを図ることが可能となっている。
【0070】
第2実施形態
第1実施形態では特に説明しなかったが、この画像形成装置は、ジャム検出センサーSC1、用紙サイズ検出センサーSC2、定着温度センサーSC3等の各種センサーを備えている(図6)。ジャム検出センサーSC1は用紙の詰まり(異常)を検出するセンサーであり、ジャム検出センサーSC1が用紙詰まりを検出すると、エンジンコントローラーECは用紙詰まりが解消するまで印刷動作を中断する。また、用紙サイズ検出センサーSC2は給紙カセット77の用紙サイズを検出するセンサーであり、用紙サイズ検出センサーが用紙サイズの異常を検出すると、エンジンコントローラーECは用紙サイズ異常が解消するまで印刷動作を中断する。また、定着温度センサーSC3は定着ユニット13の加熱ローラー131の温度を検出するセンサーであり、定着温度センサーSC3が温度異常(特に、過度に高温となっている状態)を検出すると、エンジンコントローラーECは加熱ローラー131の温度異常が解消するまで印刷動作を中断する。
【0071】
ところで、このような画像形成装置では、上述のような異常を検出した後も発光素子Eが発光し続けることで、種々の問題が引き起こされるおそれがあった。例えば、異常検出後も発光素子Eが発光し続けることで、発光素子Eの寿命短縮や感光体ドラム21表面の劣化等の問題が引き起こされるおそれがある。また、異常検出後も発光を続ける発光素子Eにより露光された部分がトナー現像されて、感光体ドラム21表面に不要なトナー像が形成されると、用紙が供給されない状態でトナー像が二次転写位置TR2に到達して、二次転写ローラー121等の二次転写ユニット12の各部が汚染されてしまう場合も考えられる。したがって、上述のような異常が検出された場合は、少なくとも異常が解消するまでは、ラインヘッド29の全発光素子Eを消灯させておくことが好適である。そこで、第2実施形態では、異常が検出された場合は、次のようなラインヘッド29の電源管理が実行される。
【0072】
図9は、第2実施形態での電源管理を示すタイミングチャートであり、特に、画像形成装置の異常が検出された場合におけるラインヘッドの電源管理を示している。なお、同図上段のグラフは異常検出中にhigh信号(ハイ信号)となる異常検出フラグの状態を示しており、横軸が時間[t]を表し、縦軸が異常検出フラグを表している。また、同図中段のグラフは電源電圧Vhc/Vccの供給状態を示しており、横軸が時間[t]を表し、縦軸が電源電圧Vhc/Vccの電圧[V]を表している。また、同図下段のグラフは電源電圧Velの供給状態を示しており、横軸が時間[t]を表し、縦軸が電源電圧Velの電圧[V]を表している。
【0073】
同図に例示した状況では、時刻t21に、エンジンコントローラーECがハイ信号の異常検出フラグをヘッド用電源回路100に出力している。この異常検出フラグを受け取ったヘッド用電源回路100は、時刻t22に駆動回路用電源電圧Velの供給を停止する。これにより、駆動回路295は電力供給が遮断されて動作不能となり、全発光素子Eが消灯状態となる。そして、時刻t23に異常が解消して異常検出フラグがlow信号(ロー信号)となると、続く時刻t24にヘッド用電源回路100は駆動回路用電源電圧Velの供給を開始する。これにより、駆動回路295は電力供給が開始されて動作可能となる。また、図9に示す期間中、ヘッドコントローラー用電源電圧Vhcおよび制御回路用電源電圧Vccは、ヘッドコントローラーHCおよび制御回路200に継続して供給されている。
【0074】
以上のように第2実施形態では、センサーSC1〜SC3およびエンジンコントローラーECが画像形成装置の異常を検出すると、ヘッド用電源回路100は、駆動回路295への電力供給を停止する。したがって、異常検出中は全発光素子Eを消灯させておくことが可能となっている。しかも、この駆動回路295への電力供給の停止は、ヘッドコントローラーHCおよび制御回路200へ電力が供給された状態で実行されるため、駆動回路295への電力供給停止に伴なう発光素子Eの誤発光を抑制することが可能となっている。さらには、異常検出後も、ヘッドコントローラーHCおよび制御回路200への電力供給は継続されるため、異常が解消された際には、駆動回路295への電力供給を開始するだけで、直ちにラインヘッド29は露光動作を開始できる。
【0075】
その他
このように、上記実施形態では、感光体ドラム21が本発明の「像担持体」に相当し、駆動電流Ieが本発明の「駆動信号」に相当し、ラインヘッド29が本発明の「露光ヘッド」に相当している。また、ヘッドコントローラーHCおよび制御回路200が協働して本発明の「発光制御部」として機能し、ビデオデータVDあるいは光量データSdが本発明の「発光制御信号」に相当し、ヘッドコントローラー用電力発生部110および制御回路用電力発生部120が生成する電力が本発明の「第1の電力」に相当している。また、駆動回路295が本発明の「駆動部」に相当し、駆動回路用電力発生部130が生成する電力が本発明の「第2の電力」に相当している。また、ヘッド用電源回路100が本発明の「電力供給制御部」に相当し、エンジンコントローラーECおよびセンサーSC1〜SC3が協働して本発明の「検出部」として機能している。
【0076】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、制御回路200をラインヘッド29内部に設けているが、制御回路200をラインヘッド29外部に設けても良い。この際、ヘッドコントローラーHCと制御回路200とを一体的に構成することもできる。
【0077】
あるいは、ヘッドコントローラーHCおよび制御回路200の両方を、ラインヘッド29内部に設けても良い。この際も、ヘッドコントローラーHCと制御回路200とを一体的に構成しても良い。
【0078】
また、上記実施形態では、ヘッドコントローラーHCへの電源Vhcと、制御回路200への電源Vccとが別々に構成されているが、これらの電源を共通にしても良い。
【0079】
また、上記実施形態では、ヘッド用電源回路100は、4色のラインヘッド29について共通化されている(図2)。しかしながら、各ラインヘッド29毎に、ヘッド用電源回路100を設けるように構成しても良い。このとき、各ヘッド用電源回路100を対応するラインヘッド29の内部に設けるように構成しても良い。
【0080】
また、ヘッド用電源回路が備える各電力発生部110、120、130を実際に配置する場所につていも、種々の変更が可能である。例えば、ヘッドコントローラーHCの内部に制御回路用電力発生部120および駆動回路用電力発生部130を設けて、ヘッドコントローラーHCから制御回路200および駆動回路295に電源電圧Vcc、Velを供給するように構成しても良い。あるいは、制御回路用電力発生部120および駆動回路用電力発生部130をラインヘッド29内部に配置することもできる。
【0081】
また、上記実施形態では、ビデオデータVDは、点灯か消灯かを示す2値であるとして説明したが、ビデオデータVDは階調値を有する多値データであっても良い。この場合、各発光素子Eの光量補正値と階調値とに応じた電圧値を光量データSdとして求めれば良い。
【0082】
また、画像形成装置で検出される異常も上述のものに限られず、例えば、エンジンコントローラーECが制御するモーターの回転異常や、上記種々のバイアス電圧を印加する電源の異常等を検出するように構成しても良い。
【0083】
また、上記実施形態では、発光素子Eとしてボトムエミッション型の有機EL素子が用いられているが、発光素子Eの種類はこれに限られない。
【0084】
また、上記実施形態では、複数の発光素子Eを2行千鳥状に配列していた。しかしながら、複数の発光素子Eの配列態様はこれに限られず、3行以上の千鳥配列でも良く、あるいは1列に配列しても良い。
【0085】
また、ラインヘッド29の構成も上述のものに限られず、例えば、複数の発光素子を千鳥状に配置して1個の発光素子グループを構成してさらに複数の発光素子グループを2次元的に配置した、特開2008−036937号公報、特開2008−36939号公報等に記載されているラインヘッド29を用いることもできる。
【符号の説明】
【0086】
100…ヘッド用電源回路、 110…ヘッドコントローラー用電力発生部、 120…制御回路用電力発生部、 130…駆動回路用電力発生部、 200…制御回路、 21…感光体ドラム、 210…演算処理部、 220…メモリー、 230…光量データ生成部、 29…ラインヘッド、295…駆動回路、297…屈折率分布型ロッドレンズアレイ、 CP…容量、 E…発光素子、 EC…エンジンコントローラー、 EG…エンジン部、 HC…ヘッドコントローラー、 240…ドライバーIC、 MC…メインコントローラー、 VD…ビデオデータ、 Sd…光量データ、 Sg…ゲート信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像を担持する像担持体と、
駆動信号に応じて発光する発光素子を有し、前記発光素子からの光により前記像担持体を露光する露光ヘッドと、
第1の電力の供給を受けて、前記発光素子の発光を制御する発光制御信号を生成する発光制御部と、
第2の電力の供給を受けて、前記発光制御信号に基づき前記発光素子に前記駆動信号を出力する駆動部と、
前記駆動部への前記第2の電力の供給開始あるいは前記駆動部への前記第2の電力の供給停止を、前記発光制御部へ前記第1の電力が供給されている状態で行なう電力供給制御部と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記露光ヘッドの動作開始時に、前記発光制御部への前記第1の電力の供給を開始した後、前記電力供給制御部は、前記駆動部への前記第2の電力の供給を開始する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記露光ヘッドの動作終了時に、前記駆動部への前記第2の電力の供給を停止した後、前記電力供給制御部は、前記発光制御部への前記第1の電力の供給を停止する請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
画像形成装置の異常を検出する検出部を備え、
前記電力供給制御部は、前記検出部が異常を検出すると、前記駆動部への前記第2の電力の供給を停止するとともに、前記発光制御部への前記第1の電力の供給を継続するように前記第1の電力の供給を制御する請求項1ないし3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
駆動信号に応じて発光する発光素子と、
第1の電力の供給を受けて、前記発光素子の発光を制御する発光制御信号を生成する発光制御部と、
第2の電力の供給を受けて、前記発光制御信号に基づき前記発光素子に前記駆動信号を出力する駆動部と、
前記駆動部への前記第2の電力の供給開始あるいは前記駆動部への前記第2の電力の供給停止を、前記発光制御部へ前記第1の電力が供給されている状態で行なう電力供給制御部と、
を備えたことを特徴とする露光ヘッド。
【請求項6】
前記発光素子は、前記駆動信号に応じた光量で発光する請求項5に記載の露光ヘッド。
【請求項7】
前記発光素子は、有機EL素子である請求項6に記載の露光ヘッド。
【請求項8】
駆動信号に応じて発光する発光素子に対して前記駆動信号を発光制御信号に基づいて出力する駆動部への電力供給の開始あるいは停止を、前記発光制御信号を生成する発光制御部へ電力が供給されている状態で行なうことを特徴とする露光ヘッドの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−214861(P2010−214861A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66220(P2009−66220)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】