説明

露光マスクの位置合わせ方法、及び薄膜素子基板の製造方法

【課題】 本発明は、同一の露光マスクにおけるアライメントマーク間の最小許容間隔を保ちつつ、対象体のアライメントマークに必要な領域を縮小することのできる露光マスクの位置合わせ方法、これを用いた薄膜素子基板の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、アライメントマークが形成された複数のホログラムマスクを用いて、アライメントマークが形成された露光対象となる対象体にパターン露光を行うに際し、両アライメントマークを用いてホログラムマスクと対象体との位置合わせを複数回行う露光マスクの位置合わせ方法で、連続する三回以上の位置合わせのうち、対象体上の3回目の位置合わせ用アライメントマークを、2回目と1回目の位置合わせ用アライメントマーク間に設けるか又は1回目の位置合わせ用アライメントマークに対して2回目の位置合わせ用アライメントマークのある側とは反対側に設けて位置合わせを行う方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラム等の露光技術を使った微細加工に関し、詳しくは、露光マスクと露光対象となる対象体との位置合わせ方法、及びその方法を用いた薄膜素子基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置のパターニングプロセスにおいて、TIR(Total Internal Reflection:全内部反射)型ホログラフィック露光技術が注目されている。この露光技術は、ホログラム露光装置を用いて、ホログラムマスクに対し所望のパターンを記録する記録工程と、このホログラムマスクに再生光を照射して半導体パターン用のフォトレジストを感光する露光工程とからなる方法が採用されている。
【0003】
記録工程では、まず半導体装置のパターンに対応したマスクパターン(元レチクル)にレーザー光の記録ビームを照射して回折光を生じさせ、ホログラムマスクの記録面に射出する。一方、ホログラムマスクの記録面に対し一定の角度でホログラムマスクの裏側から参照光を照射し、元レチクルからの回折光と干渉させる。これによってホログラムマスクの記録面に干渉パターンを生じさせこれをホログラム記録面に記録させる。
【0004】
露光工程では、元レチクルと同じ位置にホログラムマスクを置いて、記録時と反対方向から再生光である露光ビームを照射し、フォトレジストに元のパターンを再現した回折光を結像させてフォトレジストを露光する。通常、この露光工程において、ホログラムマスクは、露光の対象体となる基板側に形成されたアライメントマークとホログラムマスク側に形成されたアライメントマークとを合わせることで、基板とホログラムマスクとの位置合わせを行う。
【0005】
従来、複数のホログラムマスクを用いてパターニングを行う場合には、この複数のホログラムマスクの各々に形成された各アライメントマークに対応する位置に、各々アライメントマークが形成された基板を用いてホログラムマスクと基板との位置合わせを行っていた(非特許文献1参照)。
【0006】
したがって、基板側には、ホログラムマスクの数に対応するアライメントマークが複数必要となり、使用するホログラムマスクの数が多くなるほど、基板側のアライメントマークの数も多くなり、アライメントマークを形成するために基板上に広い面積が必要となるといった問題があった。
【0007】
このようなホログラム露光装置用ホログラムマスクに組み込むアライメントマークは、デバイス領域と別個に作成するが、作成装置の精度上、デバイス領域及び他のホログラムマスク(他のレイヤ)用のアライメントマークに対し、5mm程度の間隔を設けて作成する必要がある(図7及び図8参照)。
【0008】
ここで、図7(a)及び(b)は、ホログラム用マスクを作成するためのオリジナルCr製マスク(元レチクル)である第1層目マスク及び第2層目マスクをそれぞれ示す概略平面図である。図7(a)に示すように、第1層目マスク1は、中央部に位置する1層目デバイス領域D1と、四隅の1層目アライメントマークA1とが設けられている。また、図7(b)に示すように、第2層目マスク2は、中央部に位置する2層目デバイス領域D2と、四隅の2層目アライメントマークA2とが設けられている。A1とA2とはマーク模様が異なっている。
【0009】
図8(a)及び(b)は、ホログラム用マスク(2層目マスク)におけるデバイス領域記録時とアライメントマーク記録時それぞれの工程を示す概略構成図である。図8(a)に示すように、デバイス領域記録時には、オリジナルCrマスク2の4つのアライメントマークA2を遮光板で閉じた状態にして、デバイス領域D2を介したオブジェクトビームとプリズムを介した参照ビームによってホログラムマスクに記録する。一方、図8(b)に示すように、アライメントマーク記録時には、デバイス領域D2を遮光板で閉じた状態にして、オリジナルCrマスク2の4つのアライメントマークA2を介したオブジェクトビームによってホログラムマスクに記録する。ここで作成されたホログラム用マスクでは、アライメントマークとデバイス領域との間がそれぞれ5mm程度の間隔を設けて作成されている。尚、図示しないが、当該アライメントマークと他のレイヤ用のアライメントマークとを同一マスク上に設ける場合には、両アライメントマークの間もそれぞれ5mm程度の間隔を設けて作成されることになる。
【0010】
図9は、従来の露光マスクの位置合わせ方法を説明するための概略構成図である。図9に示すように、従来は、第1層目マスク(L1)、第2層目マスク(L2)、・・・第7層目マスク(L7)のように、露光するマスクが多数の場合、同一のマスクにおけるアライメントマーク間の最小許容間隔を保持する必要性から、基板等の対象体上のアライメントマークが、AL2-1、AL3-2、AL4-3、AL5-4、AL6-5、AL7-6とそれぞれ5mm程度の間隔をあけて、1回の位置合わせ毎に同一の配置方向に向かって順次設けられていた。尚、図では、説明の便宜上、マスクを重ねて示してあるが、実際の位置合わせは、ホログラムマスクに記録された上層側マークと対象体に記録された下層側マークとの間でマスク毎に行われる。このように露光するマスクが多数に及ぶ場合には、対象体上のデバイス作成可能な領域が著しく減少する。
【非特許文献1】SID03 Digest, P-40, pp.350-353.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする問題点は、前述した従来技術における問題点である。
そこで、本発明の目的は、同一の露光マスクにおけるアライメントマーク間の最小許容間隔を保ちつつ、対象体のアライメントマークに必要な領域を縮小することのできる露光マスクの位置合わせ方法、これを用いた薄膜素子基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、下記1.に示す露光マスクの位置合わせ方法を提供することにより、前記目的を達成したものである。
【0013】
1.アライメントマークが形成された複数のホログラムマスクを用いて、アライメントマークが形成された露光対象となる対象体にパターン露光を行うに際し、両者のアライメントマークを用いて前記ホログラムマスクと前記対象体との位置合わせを複数回行う露光マスクの位置合わせ方法であって、
少なくとも連続する三回の位置合わせのうち、前記対象体上における3回目の位置合わせ用のアライメントマークを、2回目及び1回目それぞれの位置合わせ用のアライメントマークの間に設けるか又は1回目の位置合わせ用のアライメントマークに対して2回目の位置合わせ用のアライメントマークのある側とは反対側に設けて位置合わせを行うことを特徴とする露光マスクの位置合わせ方法。
【0014】
本発明によれば、同一の露光マスクにおけるアライメントマーク間の最小許容間隔を保ちつつ、対象体のアライメントマークに必要な領域を縮小することができる。
【0015】
また、本発明は、下記2.〜5.に示す発明をそれぞれ提供するものである。
【0016】
2.前記対象体上における奇数回目の位置合わせ用のアライメントマークと、偶数回目の位置合わせ用のアライメントマークとを、それぞれの配置領域に交互に設けて位置合わせを行う、前記1記載の露光マスクの位置合わせ方法。
かかる方法によれば、対象体のアライメントマークに必要な領域をより効率的に縮小することができる。
【0017】
3.アライメントマークが形成された複数のホログラムマスクを用いてパターン露光を行うホログラム露光を利用した薄膜素子基板の製造方法であって、
前記1又は2記載の露光マスクの位置合わせ方法を用いて位置合わせを行う第1工程と、
前記ホログラムマスク上から露光ビームを照射することにより、前記対象体を露光してパターニングを行う第2工程と、を含むことを特徴とする薄膜素子基板の製造方法。
【0018】
かかる方法によれば、半導体装置等のデバイスに用いられる薄膜素子基板の回路パターン形成に利用し得る領域を広げることが可能となるので、より高密度に集積化されたデバイスを提供することが可能となる。
【0019】
4.アライメントマークが形成された複数のホログラムマスクを用いてパターン露光を行うホログラム露光を利用した薄膜素子基板の製造方法であって、
前記ホログラムマスクにアライメントマークを含む所望のパターンを記録する第1工程と、
前記1又は2記載の露光マスクの位置合わせ方法を用いて位置合わせを行う第2工程と、
前記ホログラムマスク上から露光ビームを照射することにより、前記対象体を露光してパターニングを行う第3工程と、を含むことを特徴とする薄膜素子基板の製造方法。
【0020】
かかる方法によれば、半導体装置等のデバイスに用いられる薄膜素子基板の回路パターン形成に利用し得る領域を広げることが可能となるので、より高密度に集積化されたデバイスを提供することが可能となる。
【0021】
5.前記対象体のアライメントマークが、該対象体上に最初のパターンを露光する際に形成される、前記3又は4に記載の薄膜素子基板の製造方法。
かかる方法によれば、対象体上のアライメントマークを別途形成する必要がなくなるので、作業工程を減らすことが可能となり、生産効率を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、同一の露光マスクにおけるアライメントマーク間の最小許容間隔を保ちつつ、対象体のアライメントマークに必要な領域を縮小することのできる露光マスクの位置合わせ方法が提供される。また、本発明によれば、高密度に集積化されたデバイスを形成することのできる薄膜素子基板の製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は下記実施の形態に限定されるものではない。
図1は、本実施形態に係る露光マスクの位置合わせ方法を実施するためのホログラフィック露光装置の全体構成を示す図である。
【0024】
図1に示すように、この露光装置は、主にプリズム201、ステージ220を備えるステージ装置222、第1情報処理装置230、距離測定光学系240、膜厚測定光学系250、光源260、第2情報処理装置270、露光光源280、露光光源駆動装置282、およびアライメント系290により構成される。
【0025】
ステージ装置222は、感光性材料膜212が形成された露光対象体としての被露光基板210を真空チャック等でステージ220上に保持して、上下方向(Z方向)及び水平方向(XY平面)へのステージ220の位置調整が可能に構成されている。
【0026】
光源260は、距離測定光学系240および膜厚測定光学系250の測定用光ビームを射出可能に構成されている。距離測定光学系240は、ビームスプリッタ、シリンドリカルレンズ、光センサ、誤差信号検出器等を備え、ホログラム記録面202と被露光基板上に塗布された感光性材料膜表面214との距離を調整して露光時のフォーカスを制御することが可能に構成されている。
【0027】
第1情報処理装置230は、距離測定光学系240により計測されたホログラム記録面と被露光基板上に形成された感光性材料膜表面との距離に基づいてフォーカスが適正となるようにステージ220の位置を設定するように構成されている。膜厚測定光学系250は、ビームスプリッタ、フォトデテクタ、増幅器、A/D変換器等を備え、被露光基板210上に形成された感光性材料膜212の膜厚を測定するための構成を備えている。
【0028】
第2情報処理装置270は、露光光源280から照射される露光ビームが適正な露光領域内を走査するように露光光源280を移動させるとともに、膜厚測定光学系250により出力された感光性材料膜212の膜厚の相対値に基づいて露光の光量を制御するように構成されている。
【0029】
露光光源280は、ホログラムマスク200のホログラム記録面202に露光ビームを照射可能に構成されている。露光光源駆動装置282は、この露光光源280を移動して被露光基板210上の所望の露光領域を走査して露光するように構成されている。また当該露光装置は、被露光基板210に対向する面に、所定のレチクルパターンに対応した干渉パターンが記録されているホログラムマスク200を装着したプリズム201を備えている。
【0030】
また、アライメント系290は、アライメントマークを観察するための観察手段と、観察手段から得られた情報に基づきホログラムマスク200のアライメントマークと被露光基板210のアライメントマークとの位置ずれを検出する位置ずれ検出手段とを備えている。
【0031】
本実施形態では、観察手段としての顕微鏡292は、ホログラムマスク200を介して、被露光基板210上に形成されたアライメントマークを観察するためのものである。顕微鏡292は、観察されたアライメントマークの画像を取り込むための例えばCCDカメラ等の画像取込み装置を備えている。顕微鏡292により観察され、画像取り込み装置により取り込まれたホログラムマスク200のアライメントマークと被露光基板210のアライメントマークの画像は、画像信号に変換され、位置ずれ検出手段としての位置ずれ検出装置294に送られる。
【0032】
位置ずれ検出装置294は、画像信号からホログラムマスク200側のアライメントマークと被露光基板210側のアライメントマークの特徴点を抽出し、特徴点間の距離を算出するものである。例えば、被露光基板210上に十字状のアライメントマークが形成され、ホログラムマスク200側にX字状のアライメントマークが形成されている場合において、特徴点として、例えば十字の交点及びX字の交点を各々抽出し、当該交点間の距離を算出する。この算出された距離情報を第1情報処理装置230に送信する。
【0033】
第1情報処理装置230は、また、このアライメント間の距離(アライメントずれ量)が減少するように、ステージ装置222をXY方向に移動させ被露光基板210の位置を設定するようにも構成されている。これにより、ホログラムマスク200と被露光基板210との位置合わせが可能となる。
【0034】
そして、ホログラムマスク200と被露光基板210との位置合わせは、図2に示すように行う。図2に示すように、本実施形態においては、ホログラムマスク200が、被露光基板210上のパターニング対象となる第1層目の露光に使用するマスク(第1層目用マスクと称する、以下同様)(L1)、第2層目用マスク(L2)、第3層目用マスク、・・・第7層目マスク(L7)のように、複数からなる。
【0035】
先ず、第1層目用マスク(L1)の所定の領域に下層側マーク用のアライメントマークLA1を設けておく。これにより、被露光基板210上の第1層目パターニングの露光を行う際、被露光基板210上のデバイス領域以外の所定の領域にLA1に対応するアライメントマーク(下層側マーク)も併せて形成される。次に用いる第2層目用マスク(L2)には、当該第2層目用マスク自体が被露光基板210と位置合わせを行うためのアライメントマーク(上層側マーク)UA2と、第3層目用マスク(L3)が被露光基板210と位置合わせを行うための下層側マーク用のアライメントマークLA2とを一定の間隔をあけて設けておく。そして、先に形成された被露光基板210上のLA1に対応したアライメントマークと、第2層目用マスク上のUA2とを照合させることで、第1回目の位置合わせを行う。
【0036】
第2層目用マスクと被露光基板210との位置合わせ後には、被露光基板210上の第2層目パターニングの露光により、被露光基板210上のデバイス領域以外の所定の領域にLA2に対応するアライメントマーク(下層側マーク)も併せて形成される。このとき、第1回目の位置合わせを行った被露光基板210上のアライメントマークは、UA2の露光によって米字のマークAL2-1となる。次に用いる第3層目用マスク(L3)には、当該第3層目用マスク自体が被露光基板210と位置合わせを行うためのアライメントマーク(上層側マーク)UA3と、第4層目用マスク(L4)が被露光基板210と位置合わせを行うための下層側マーク用のアライメントマークLA3とを一定の間隔をあけて所定の位置に設ける。即ち、本実施形態では、LA3は、先に形成された被露光基板210上のマークAL2-1の直ぐ近傍に下層側マークが形成されるような位置に設ける。そして、先に形成された被露光基板210上のLA2に対応したアライメントマークと、第3層目用マスク上のUA3とを照合させることで、第2回目の位置合わせを行う。
【0037】
第3層目用マスクと被露光基板210との位置合わせ後には、被露光基板210上の第3層目パターニングの露光により、被露光基板210上のデバイス領域以外の所定の領域にLA3に対応するアライメントマーク(下層側マーク)も併せて形成される。このとき、第2回目の位置合わせを行った被露光基板210上のアライメントマークは、UA3の露光によって米字のマークAL3-2となる。次に用いる第4層目用マスク(L4)にも、第3層目用マスク(L3)と同様に、当該第4層目用マスク自体が被露光基板210と位置合わせを行うためのアライメントマーク(上層側マーク)UA4と、第4層目用マスク(L4)が被露光基板210と位置合わせを行うための下層側マーク用のアライメントマークLA4とを一定の間隔をあけて所定の位置に設ける。即ち、本実施形態では、LA4は、先に形成された被露光基板210上のマークAL3-2の直ぐ近傍に下層側マークが形成されるような位置に設ける。そして、先に形成された被露光基板210上のLA3に対応したアライメントマークと、第4層目用マスク上のUA4とを照合させることで、第3回目の位置合わせを行う。
【0038】
第5層目マスク(L5)と被露光基板210による第4回目の位置合わせ、第6層目マスク(L6)と被露光基板210による第5回目の位置合わせ、第7層目マスク(L7)と被露光基板210による第6回目の位置合わせについても、前記第2回目及び第3回目の位置合わせと同様の手順により行うことができる。このようにして、第6回目の位置合わせを行った後、被露光基板210上の第7層目パターニングの露光により、被露光基板210上のデバイス領域以外の所定の領域には、図2に示すように、米字のマークAL2-1、AL3-2、AL4-3、AL5-4、AL6-5及びAL7-6が密接に形成されることになる。即ち、同一のホログラムマスク200上における二のアライメントマーク間の最小許容間隔よりも小さい間隔で形成することができる。このように、本実施形態によれば、被露光基板210のアライメントマークに必要な領域を縮小することができる。
【0039】
また、本実施形態では、前述の第1回目〜第6回目の位置合わせにおいて、被露光基板210上における第1回目、第3回目及び第5回目である奇数回目の位置合わせ用のアライメントマーク(図2に示すAL2-1、AL4-3、AL6-5に相当する位置の十字の下層側マーク)と、第2回目、第4回目及び第6回目である偶数回目の位置合わせ用のアライメントマーク(図2に示すAL3-2、AL5-4、AL7-6に相当する位置の十字の下層側マーク)とを、それぞれの配置領域、即ち図2では位置合わせ用のアライメントマークを形成すべき領域の中央から右側領域と左側領域とに交互に設けて位置合わせを行っている。このため、被露光基板210のアライメントマークに必要な領域の縮小化を効率よく行うことができる。
【0040】
本実施形態では、例えば、連続する第1、第2及び第3回目の位置合わせにおいて、被露光基板210における第3回目の位置合わせ用のアライメントマーク(AL4-3に相当する位置の十字の下層側マーク)を、第1回目の位置合わせ用のアライメントマーク(AL2-1に相当する位置の十字の下層側マーク)に対して第2回目の位置合わせ用のアライメントマーク(AL3-2に相当する位置の十字の下層側マーク)のある側とは反対側に設けて位置合わせを行っているが、第2回目及び第1回目それぞれの位置合わせ用のアライメントマーク(AL3-2及びAL2-1それぞれに相当する位置の十字の下層側マーク)の間(図2ではAL5-4、AL7-6のある位置)に設けて位置合わせを行うこともできる。
【0041】
また、例えば、連続する第2、第3及び第4回目の位置合わせにおいて、被露光基板210における第4回目の位置合わせ用のアライメントマーク(AL5-4に相当する位置の十字の下層側マーク)を、第3回目及び第2回目それぞれの位置合わせ用のアライメントマーク(AL4-3及びAL3-2それぞれに相当する位置の十字の下層側マーク)の間に設けて位置合わせを行っているが、第2回目の位置合わせ用のアライメントマーク(AL3-2に相当する位置の十字の下層側マーク)に対して第3回目の位置合わせ用のアライメントマーク(AL4-3に相当する位置の十字の下層側マーク)のある側とは反対側(図2ではAL3-2より左側のマークのない位置)に設けて位置合わせを行うこともできる。
【0042】
本発明においては、少なくとも連続する三回の位置合わせのうち、被露光基板における3回目の位置合わせ用のアライメントマークを、2回目及び1回目それぞれの位置合わせ用のアライメントマークの間に設けるか又は1回目の位置合わせ用のアライメントマークに対して2回目の位置合わせ用のアライメントマークのある側とは反対側に設けて位置合わせを行う限り、前記の形態に制限されない。
【0043】
尚、図2では、説明の便宜上、複数のホログラムマスク200を層状に重ねて示してあるが、実際の位置合わせは、ホログラムマスク200に記録された上層側マークと被露光基板210に記録された下層側マークとの間でホログラムマスク200毎に行われる。このように露光するホログラムマスク200が多数に及ぶ場合でも、同一の当該ホログラムマスク200上のアライメントマーク間の最小許容間隔を保持しつつ、対象体である被露光基板210上のデバイス作成可能な領域が減少することがない。
【0044】
次に、図3乃至図6を参照しながら本実施形態の薄膜素子基板の製造方法について説明する。
【0045】
まず、第1のパターニング(最初のパターニング)を行う。
図3(A)に示すように、プリズム201に貼り合わせられたホログラムマスク200aのホログラム記録面202に、例えばCr製の第1の原版マスク300(元レチクルともいう)を用いて第1のレチクルパターンに対応する干渉縞を記録する。第1のレチクルパターンには、少なくとも目的とする薄膜素子基板における薄膜素子を含む薄膜回路に対応するパターンが含まれる。
【0046】
具体的には、記録ビームL1(物体光)を第1の原版マスク300に照射して第1の原版マスク300を経た回折光をホログラムマスク200aのホログラム記録面202に射出する。この第1の原版マスク300を介した記録ビームL1と、ホログラム記録面202の他方面側からプリズム201を透過させて照射した参照光L2とを干渉させる。これにより、ホログラム記録面202に所望のパターンの干渉縞が記録される。
【0047】
図3(B)は、第1の干渉縞パターン310が形成されたホログラムマスク200aの一例を示す図である。図3(B)に示すように、第1の干渉縞パターン310には、薄膜回路を構成する第1の回路パターンに対応する干渉縞パターン312及びアライメントマークとなる干渉縞パターンP11、P21、P31、P41が含まれる。
【0048】
次に、図4(A)に示すように、原版マスク300が配置されていた位置に、原版マスク300の代わりに第1の感光性材料膜212aが形成された被露光基板210を配置する。その後、再生光である露光ビームL3を、図3(A)における参照光L2の入射側と反対の方向(参照光L2の出射側)から、プリズム201を介してホログラム記録面202に照射し、被露光基板210上に形成された第1の感光性材料膜212aを露光する。なお、この際、露光ビームL3の入射側にプリズム201の斜面が向くようにプリズム201の方向を変えてホログラムマスク200aをプリズム201に付け替える。これにより、ホログラム記録面202に記録された第1の干渉縞パターン310に対応するパターン314が被露光基板210上に形成される。
【0049】
図4(B)に、第1の干渉縞パターン310により形成されるパターン314の一例を示す。図4(B)に示すように、ホログラムマスク200aの干渉縞パターンP11、P21、P31、P41に対応するアライメントマークA1〜A4及び干渉縞パターン312に対応する第1の回路パターン316が形成される。その後、必要な現像やエッチング処理がなされて第1のパターニングが終了する。
【0050】
次に、第2のパターニングを行う際には、ホログラムマスクのアライメントマークの位置を所定の間隔をあけて形成する以外は、第1のパターニングと同様に行う。
【0051】
次に、第2のパターニングを行う。
図5(A)に示すように、プリズム201に貼り合わせられたホログラムマスク200bのホログラム記録面202に、例えばCr製の第2の原版マスク302を用いて第2のレチクルパターンに対応する干渉縞を記録する。第2のレチクルパターンには、少なくとも薄膜素子基板における薄膜素子を含む薄膜回路に対応するパターンが含まれる。干渉縞を記録する工程は、図3(A)の工程と同様の方法、即ち、物体光L1と参照光L2の照射により行われる。この際、他のホログラムマスクと被露光基板210との位置合わせを行うためのアライメントマークP13、P23も形成される。また、この干渉縞を記録する工程とは別に、物体光L1のみを照射することにより、ホログラムマスク200bのホログラム記録面202に、アライメントマークP12、P22、P32、P42を形成する。ここで形成されるアライメントマークP12〜P42とP13、P23は、その目的を異にしている。即ち、前者は第1のパターニングに対してアライメントマークを行うための上層側のマークであるのに対し、後者はいわゆる第3層目のホログラムマスクとアライメントマークを行う下層側のマークとなる。両者は、図8に示す方法と同様な方法でつくり分けられる。
【0052】
図5(B)は、第2の干渉縞パターン及び第2のアライメントマークが形成されたホログラムマスク200bの一例を示す図である。図5(B)に示すように、第2の干渉縞パターンには、薄膜回路を構成する第2の回路パターンに対応する干渉縞パターン320が含まれる。また、ホログラムマスク200bの四隅には、このホログラムマスク200bと被露光基板210との位置合わせを行うためのアライメントマークP12、P22、P32、P42、P13、P23が所定の位置に形成される。
【0053】
次に、図6(A)に示すように、原版マスク302が配置されていた位置に、原版マスク302の代わりに第1の回路パターン上に第2の感光性材料膜212bを形成した被露光基板210を配置する。その後、露光ビームL3を、図5(A)における参照光L2と反対の方向(参照光L3の出射側)から、プリズム201を介してホログラム記録面202に照射し、第2の感光性材料膜212bを露光する。なお、この際も同様に、露光ビームL3の入射側にプリズム201の斜面が向くようにプリズム201の方向を変えてホログラムマスク200bをプリズム201に付け替える。
【0054】
本工程についてより具体的に説明する。
まず、第2の感光性材料膜212bが形成された被露光基板210とホログラムマスク200bとの位置合わせを、被露光基板210上に形成されたアライメントマークA1〜A4とホログラムマスク200bに形成されたアライメントマークP12、P22、P32、P42(図5(B))とを重ね合わせることにより行う。具体的には、図1に示したように、ホログラムマスク200bと被露光基板210を所定位置に設置した後、各アライメントマークが観察される位置に設置された顕微鏡292によりプリズム201の垂直面を介してホログラムマスク200bと被露光基板210のアライメントマークの重なり画像を取り込む。顕微鏡292において取り込んだ画像を画像信号として、位置ずれ検出装置294に送信し、アライメントマークの重なり画像から特徴点を抽出する。例えば、アライメントマークA1の十字の交点とアライメントマークP12のX字の交点の位置を抽出し、この交点間の距離を算出する。この距離情報を第1情報処理装置230に送り、この距離が減少するように、ステージ装置222を駆動してホログラムマスク200bと被露光基板210との位置合わせを行う。
【0055】
その後、露光ビームL3をホログラム記録面202に照射する。感光性材料膜212bには、ホログラムマスク200bのアライメントマークP12、P22、P32、P42、P13、P23に対応するアライメントマークが、ホログラム記録面202上に記録された干渉縞パターン320に対応する第2の回路パターン324と併せて形成されることになる(図6(B))。その後、必要な現像やエッチング処理がなされて第2のパターニングが終了する。
【0056】
そして、前述した位置合わせ方法(図2参照)を採用し、図5及び図6に記載の工程を繰り返して、第3のパターニング、第4のパターニング、・・・、を行うことにより、本実施形態に係る薄膜素子基板を製造することができる。
【0057】
本発明に係る薄膜素子基板の製造方法は、例えば、EL表示装置や液晶表示装置などの電気光学装置における各画素を構成する画素回路や、当該画素回路を制御するドライバ(集積回路)の形成等に適用することができる。また、このような電気光学装置の製造以外にも、種々のデバイス製造に適用することが可能である。例えば、FeRAM(ferroelectric RAM)、SRAM、DRAM、NOR型RAM、NAND型RAM、浮遊ゲート型不揮発メモリ、マグネティックRAM(MRAM)など各種のメモリ製造が可能である。また、この他、薄膜トランジスタ(TFT)を使用して集積化したセンサ、CPUを搭載したバンクカード等にも利用可能である。さらに、マイクロ波を用いた非接触型の通信システムにおいて、微小な回路チップ(ICチップ)を搭載した安価なタグを製造する場合にも適用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、同一の露光マスクにおけるアライメントマーク間の最小許容間隔を保ちつつ、対象体のアライメントマークに必要な領域を縮小することのできる露光マスクの位置合わせ方法、及び高密度に集積化されたデバイスを形成することのできる薄膜素子基板の製造方法として、産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1は、本実施形態に係る露光マスクの位置合わせ方法を実施するためのホログラフィック露光装置の全体構成を示す図である。
【図2】図2は、本実施形態に係る露光マスクの位置合わせ方法を説明するための図である。
【図3】図3は、本実施形態に係る薄膜素子基板の製造方法を説明するための図である。
【図4】図4は、本実施形態に係る薄膜素子基板の製造方法を説明するための図である。
【図5】図5は、本実施形態に係る薄膜素子基板の製造方法を説明するための図である。
【図6】図6は、本実施形態に係る薄膜素子基板の製造方法を説明するための図である。
【図7】図7(a)及び(b)は、ホログラム用マスクを作成するためのオリジナルCr製マスク(元レチクル)を示す概略平面図である。
【図8】図8(a)及び(b)は、ホログラム用マスク(2層目マスク)におけるデバイス領域記録時とアライメントマーク記録時それぞれの工程を示す概略構成図である。
【図9】図9は、従来の露光マスクの位置合わせ方法を説明するための概略構成図である。
【符号の説明】
【0060】
200,200a,200b・・・ホログラムマスク、201・・・プリズム、202・・・ホログラム記録面、210・・・被露光基板、212・・・感光性材料膜、212a・・・第1の感光性材料膜、212b・・・第2の感光性材料膜、214・・・感光性材料膜表面、220・・・ステージ、222・・・ステージ装置、230・・・第1情報処理装置、240・・・距離測定光学系、250・・・膜厚測定光学系、260・・・光源、270・・・第2情報処理装置、280・・・露光光源、282・・・露光光源駆動装置、300・・・第1の原版マスク、302・・・第2の原版マスク、310・・・第1の干渉縞パターン、312・・・干渉縞パターン、314・・・パターン、316・・・第1の回路パターン、320・・・第2の干渉縞パターン、322・・・干渉縞パターン、324・・・第2の回路パターン、A1〜A4・・・アライメントマーク、B1〜B4・・・領域、HM・・・ホログラムマスク、L・・・露光光源、L1・・・記録ビーム、L2・・・参照光、L3・・・露光ビーム、P・・・プリズム、P11,P21,P31,P41・・・干渉縞パターン、P12,P22,P32,P42・・・アライメントマーク、P1〜P4・・・アライメントマーク、LA1〜6・・・下層側マーク、UA1〜7・・・上層側マーク、AL2-1、AL3-2、AL4-3、AL5-4、AL6-5、AL7-6・・・アライメントマーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アライメントマークが形成された複数のホログラムマスクを用いて、アライメントマークが形成された露光対象となる対象体にパターン露光を行うに際し、両者のアライメントマークを用いて前記ホログラムマスクと前記対象体との位置合わせを複数回行う露光マスクの位置合わせ方法であって、
少なくとも連続する三回の位置合わせのうち、前記対象体上における3回目の位置合わせ用のアライメントマークを、2回目及び1回目それぞれの位置合わせ用のアライメントマークの間に設けるか又は1回目の位置合わせ用のアライメントマークに対して2回目の位置合わせ用のアライメントマークのある側とは反対側に設けて位置合わせを行うことを特徴とする露光マスクの位置合わせ方法。
【請求項2】
前記対象体上における奇数回目の位置合わせ用のアライメントマークと、偶数回目の位置合わせ用のアライメントマークとを、それぞれの配置領域に交互に設けて位置合わせを行う、請求項1記載の露光マスクの位置合わせ方法。
【請求項3】
アライメントマークが形成された複数のホログラムマスクを用いてパターン露光を行うホログラム露光を利用した薄膜素子基板の製造方法であって、
請求項1又は2記載の露光マスクの位置合わせ方法を用いて位置合わせを行う第1工程と、
前記ホログラムマスク上から露光ビームを照射することにより、前記対象体を露光してパターニングを行う第2工程と、を含むことを特徴とする薄膜素子基板の製造方法。
【請求項4】
アライメントマークが形成された複数のホログラムマスクを用いてパターン露光を行うホログラム露光を利用した薄膜素子基板の製造方法であって、
前記ホログラムマスクにアライメントマークを含む所望のパターンを記録する第1工程と、
請求項1又は2記載の露光マスクの位置合わせ方法を用いて位置合わせを行う第2工程と、
前記ホログラムマスク上から露光ビームを照射することにより、前記対象体を露光してパターニングを行う第3工程と、を含むことを特徴とする薄膜素子基板の製造方法。
【請求項5】
前記対象体のアライメントマークが、該対象体上に最初のパターンを露光する際に形成される、請求項3又は請求項4に記載の薄膜素子基板の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−93606(P2006−93606A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−280043(P2004−280043)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】