説明

露光装置、露光方法、及びデバイス製造方法。

【課題】基板上にパターンの像を良好に形成することができるマスクを提供する。
【解決手段】所定軸J周りに回転しつつ基板P上にパターンMPの像を形成するためのマスクMであって、パターンMPが形成され、所定軸J周りに配置されたパターン形成面MFと、パターン形成面MFの所定領域にパターンMPに対して所定位置関係で形成された位置情報を取得するためのマークとを備えている。前記マークは、前記パターン形成面MFの周方向に連続的もしくは断続的に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスク、基板を露光する露光装置及び露光方法、並びにデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトリソグラフィ工程で用いられる露光装置において、下記特許文献に開示されているような、円筒状又は円柱状のマスクを用いて基板を露光する露光装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−153672号公報
【特許文献2】特開平8−213305号公報
【特許文献3】特開2006−093318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
板状のマスクを用いる場合のみならず、円筒状又は円柱状のマスクを用いて基板を露光する場合においても、マスクのパターンの像で基板を良好に露光するために、マスクのパターンの位置情報を精確に取得する必要がある。そのため、円筒状又は円柱状のマスクの位置情報を精確に取得でき、そのマスクと基板との位置関係を精確に調整できる技術の案出が望まれる。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、円筒状又は円柱状のマスクのパターンの位置情報を精確に取得でき、基板上にパターンの像を良好に形成することができるマスクを提供することを目的とする。また本発明は、円筒状又は円柱状のマスクのパターンの位置情報を精確に取得でき、そのマスクのパターンの像で基板を良好に露光することができる露光装置及び露光方法、並びにその露光装置及び露光方法を用いるデバイス製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明は実施の形態に示す各図に対応付けした以下の構成を採用している。但し、各要素に付した括弧付き符号はその要素の例示に過ぎず、各要素を限定するものではない。
【0007】
本発明の第1の態様に従えば、所定軸(J)周りに回転しつつ基板(P)上にパターン(MP)の像を形成するためのマスクであって、パターン(MP)が形成され、所定軸(J)周りに配置されたパターン形成面(MF)と、パターン形成面(MF)の所定領域(MB)にパターン(MP)に対して所定位置関係で形成された位置情報を取得するためのマーク(EM、RM、EMS)と、を備えたマスク(M)が提供される。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、基板上にパターンの像を良好に形成することができる。
【0009】
本発明の第2の態様に従えば、パターン(MP)の像で基板(P)を露光する露光装置において、パターン(MP)が形成され、所定軸(J)周りに配置されたパターン形成面(MF)を有するマスク(M)を、所定軸(J)を回転軸として回転可能なマスク駆動装置(2)と、マスク(M)を介した光を検出し、検出結果に基づいて、パターン(MP)に関する位置情報を取得する検出システム(5)と、を備えた露光装置(EX)が提供される。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、基板上にパターンの像を良好に形成することができる。
【0011】
本発明の第3の態様に従えば、上記態様の露光装置(EX)を用いるデバイス製造方法が提供される。
【0012】
本発明の第3の態様によれば、パターンの像で基板を良好に露光することができる露光装置を用いてデバイスを製造することができる。
【0013】
本発明の第4の態様に従えば、パターン(MP)の像で基板(P)を露光する露光方法において、パターン(MP)が形成され、所定軸(J)周りに配置されたパターン形成面(MF)を有するマスク(M)を、所定軸(J)を回転軸として回転しつつ、パターン(MP)を露光光(EL)で照明する動作と、マスク(M)を介した光を検出し、検出結果に基づいて、パターン(MP)に関する位置情報を取得する動作と、取得した位置情報に基づいて、マスク(M)及び基板(P)の少なくとも一方の位置を調整しつつ、基板(P)上にマスク(M)を介した露光光(EL)を照射する動作と、を含む露光方法が提供される。
【0014】
本発明の第4の態様によれば、基板上にパターンの像を良好に形成することができる。
【0015】
本発明の第5の態様に従えば、上記態様の露光方法を用いるデバイス製造方法が提供される。
【0016】
本発明の第5の態様によれば、パターンの像で基板を良好に露光することができる露光方法を用いてデバイスを製造することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、パターンの像で基板を良好に露光することができる。したがって、所望の性能を有するデバイスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態に係る露光装置を示す概略構成図である。
【図2】第1実施形態の露光装置EXを示す模式図である。
【図3】第1実施形態に係るマスクを示す斜視図である。
【図4】第1実施形態に係るマスクを説明するための図であって、図4(A)は、マスクの側面の模式図、図4(B)は、マスクのパターン形成面をXY平面上に展開した図である。
【図5】第1実施形態に係る基板を保持した基板保持部材を示す平面図である。
【図6】第1実施形態に係るマスク保持部材及びマスク駆動装置の近傍を示す側断面図である。
【図7】第1実施形態に係るマスク保持部材を示す図であって、図7(A)は、マスク保持部材のXZ平面と平行な断面図、図7(B)は、マスク保持部材を+X側から見た図である。
【図8】第1実施形態に係るマスクを交換する交換システムを説明するための図であって、図8(A)は、搬送装置がマスクを搬送している状態を示す図、図8(B)は、マスク保持部材にマスクが保持された状態を示す図である。
【図9】第1実施形態に係るマスクの位置情報を取得可能な第1検出システムを説明するための模式図である。
【図10】第1実施形態に係るマスクのマーク形成領域を説明するための模式図であって、図10(A)は、マスクのパターン形成面の一部をXY平面上に展開した図、図10(B)は、図10(A)のマーク形成領域の一部を拡大した図である。
【図11】第1実施形態に係るエンコーダシステムの一例を示す模式図である。
【図12】第1実施形態に係る回転開始位置マークが形成されているマスクパターン形成面の近傍をXY平面上に展開した図である。
【図13】第1実施形態に係る基板の位置情報を取得可能な第2検出システムを説明するための模式図である。
【図14】第1実施形態に係る露光方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【図15】第1実施形態に係る露光装置の動作の一例を説明するための模式図である。
【図16】第1実施形態に係る露光装置の動作の一例を説明するための模式図である。
【図17】第1実施形態に係る露光装置の動作の一例を説明するための模式図である。
【図18】第2実施形態に係るマスクのパターン形成面の一部をXY平面上に展開した図である。
【図19】第3実施形態に係るマスクのパターン形成面の一部をXY平面上に展開した図である。
【図20】第3実施形態の露光装置EXを示す模式図である。
【図21】第4実施形態に係るマスク保持部材及び検出システムを説明するための模式図である。
【図22】第5実施形態に係るマスク及び検出システムを説明するための模式図である。
【図23】エンコーダシステムの変形例を説明するための模式図である。
【図24】マイクロデバイスの製造工程の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。なお、以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。そして、水平面内における所定方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれに直交する方向(すなわち鉛直方向)をZ軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸周りの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。
【0020】
<第1実施形態>
第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係る露光装置EXを示す概略構成図である。図1において、露光装置EXは、パターンMPを有するマスクMを保持するマスク保持部材1と、マスクMを保持したマスク保持部材1を移動可能なマスク駆動装置2と、基板Pを保持する基板保持部材3と、基板Pを保持した基板保持部材3を移動可能な基板駆動装置4と、マスクMの位置情報及び基板Pの位置情報を取得可能な検出システム5と、マスクMのパターンMPを露光光ELで照明する照明系ILと、露光光ELで照明されたマスクMのパターンMPの像を基板P上に投影する投影光学系PLと、露光装置EX全体の動作を制御する制御装置6とを備えている。
【0021】
マスクMは、基板P上に投影されるデバイスパターンが形成されたレチクルを含む。本実施形態においては、マスクMは、円筒状である。円筒状のマスクMは、中心軸Jと、中心軸J周りに配置された外周面MFと、外周面MFの両側のそれぞれに配置された側面MSとを有している。本実施形態においては、パターンMPは、マスクMの外周面MFに形成されている。本実施形態においては、パターンMPは、マスクMの外周面MFの周方向に沿って複数形成されている。マスクMの外周面MFには、その外周面MFの周方向に沿って、パターンMPが形成されたパターン形成領域MAが設定されている。以下の説明においては、マスクMのうち、パターンMPが形成され、中心軸J周りに配置された外周面MFの少なくとも一部を適宜、パターン形成面MF、と称する。また、本実施形態においては、マスクMとして反射型のマスクを用いる。
【0022】
基板Pは、半導体ウエハ等の基材上に感光材(フォトレジスト)の膜が形成されたものを含む。本実施形態においては、基板Pは、略円板状である。基板Pは、その表面(露光面)とXY平面とが略平行となるように、基板保持部材3に保持される。基板保持部材3に保持された基板Pは、XY平面内において、略円形状である。基板P上には、パターンMPの像が形成される露光対象領域である複数のショット領域S(S1〜S26)がマトリクス状に設けられている。
【0023】
本実施形態においては、マスク駆動装置2は、例えばボイスコイルモータ及びリニアモータ等、ローレンツ力によって駆動可能なアクチュエータを含み、マスクMを保持したマスク保持部材1を、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6自由度の方向に移動可能である。
【0024】
また、本実施形態においては、基板駆動装置4は、例えばボイスコイルモータ及びリニアモータ等、ローレンツ力によって駆動可能なアクチュエータを含み、基板Pを保持した基板保持部材3を、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6自由度の方向に移動可能である。
【0025】
本実施形態においては、検出システム5は、マスクMの位置情報、ひいてはパターンMP(パターン形成領域MA)に関する位置情報を取得可能な第1検出システム5Aと、基板Pの位置情報、ひいてはショット領域Sの位置情報を取得可能な第2検出システム5Bとを含む。第1検出システム5Aは、エンコーダシステム51、及びフォーカス・レベリング検出システム52を含む。第2検出システム5Bは、レーザ干渉計システム53、フォーカス・レベリング検出システム54、及びアライメントシステム55を含む。
【0026】
本実施形態においては、エンコーダシステム51及びフォーカス・レベリング検出システム52を含む第1検出システム5Aは、マスクM(パターンMP)のX軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6自由度の方向の位置情報を取得可能である。
【0027】
また、本実施形態においては、レーザ干渉計システム53、フォーカス・レベリング検出システム54、及びアライメントシステム55を含む第2検出システム5Bは、基板P(ショット領域S)のX軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6自由度の方向の位置情報を取得可能である。
【0028】
露光装置EXは、例えばクリーンルーム内の床面FL上に設けられた第1コラムCL1、及び第1コラムCL1上に設けられた第2コラムCL2を含むボディBDを備えている。第1コラムCL1は、複数の第1支柱11と、それら第1支柱11に防振装置10を介して支持された第1定盤7とを備えている。第2コラムCL2は、第1定盤7上に設けられた複数の第2支柱12と、それら第2支柱12に防振装置13を介して支持された第2定盤8とを備えている。
【0029】
照明系ILは、パターンMPが形成されたマスクMのパターン形成面MFを露光光ELで照明する。照明系ILは、マスクMのパターン形成面MF上に所定の照明領域IAを設定可能であり、その照明領域IAに均一な照度分布で露光光ELを照射可能である。照明系ILは、光源装置から射出された露光光ELの照度を均一化するオプティカルインテグレータ、オプティカルインテグレータからの露光光ELを集光するコンデンサレンズ、リレーレンズ系、及び照明領域IAを設定する視野絞り(ブラインド機構)等を有している。照明系ILから射出される露光光ELとしては、例えば水銀ランプから射出される輝線(g線、h線、i線)及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)及びFレーザ光(波長157nm)等の真空紫外光(VUV光)などが用いられる。本実施形態においてはArFエキシマレーザ光が用いられる。
【0030】
マスク保持部材1は、パターンMPが形成され、中心軸J周りに配置されたパターン形成面MFを有する円筒状のマスクMを保持する。マスク駆動装置2は、マスクMを保持したマスク保持部材1を、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6自由度の方向に移動可能である。マスク保持部材1と、そのマスク保持部材1を移動可能なマスク駆動装置2の少なくとも一部とは、第2定盤8の上面に支持されている。マスク保持部材1は、マスクMを保持した状態で、第2定盤8上で、6自由度の方向に移動可能である。
【0031】
第2定盤8は、露光光ELを通過させるための開口8Kを有している。照明系ILから射出され、マスクMのパターン形成面MFを照明した露光光ELは、マスクMのパターン形成面MFで反射し、第2定盤2の開口8Kを通過した後、投影光学系PLに入射する。
【0032】
本実施形態においては、マスク保持部材1は、マスクMの中心軸JとX軸とがほぼ平行となるように、マスクMを保持する。したがって、マスクMがマスク保持部材1に保持された状態においては、マスクMのパターン形成面MFは、X軸とほぼ平行な軸周りに配置される。マスク駆動装置2は、マスクMを保持したマスク保持部材1を、中心軸Jを回転軸としてθX方向に回転可能であるとともに、マスクMを保持したマスク保持部材1を、6自由度の方向に移動可能である。マスク保持部材1に保持されたマスクMは、マスク駆動装置2によって、中心軸Jを回転軸として、少なくともθX方向に回転可能である。
【0033】
検出システム5の第1検出システム5Aは、パターン形成面MFの周方向(θX方向)におけるマスクMのパターンMPの位置情報、及び中心軸J方向(X軸方向)におけるマスクMのパターンMPの位置情報の少なくとも一方を取得可能なエンコーダシステム51と、中心軸Jと垂直な方向(Z軸方向)におけるマスクMのパターン形成面MFの位置情報を取得可能なフォーカス・レベリング検出システム52とを含む。制御装置6は、エンコーダシステム51及びフォーカス・レベリング検出システム52を含む第1検出システム5Aの検出結果に基づいて、マスク駆動装置2を駆動し、マスク保持部材1に保持されているマスクMの位置を制御する。
【0034】
投影光学系PLは、マスクMのパターンMPの像を所定の投影倍率βで基板Pに投影する。投影光学系PLは、複数の光学素子を有しており、それら光学素子は鏡筒15で保持されている。鏡筒15はフランジ15Fを有しており、投影光学系PLは、フランジ15Fを介して、第1定盤7に支持されている。また、第1定盤7と鏡筒15との間に防振装置を設けることができる。本実施形態の投影光学系PLは、その投影倍率が例えば1/4、1/5、1/8等の縮小系である。また、本実施形態の投影光学系PLは、マスクMのパターンMPの倒立像を基板P上に投影する。
【0035】
なお、投影光学系PLは、縮小系、等倍系、及び拡大系のいずれでもよい。また、投影光学系PLは、倒立像と正立像とのいずれを形成してもよい。また、投影光学系PLは、反射光学素子を含まない屈折系、屈折光学素子を含まない反射系、反射光学素子と屈折光学素子とを含む反射屈折系のいずれであってもよい。
【0036】
基板保持部材3は、感光材の膜を有する円板状の基板Pを保持する。基板保持部材3は、基板Pを吸着して保持する吸着機構を有している。本実施形態においては、基板保持部材3には凹部3Cが形成されており、基板Pを吸着して保持する吸着機構の少なくとも一部、及び基板Pの裏面を保持する保持面は、その凹部3Cに配置されている。また、凹部3C以外の基板保持部材3の上面3Fは、保持面(吸着機構)に保持された基板Pの表面とほぼ同じ高さ(面一)となる平坦面である。
【0037】
基板駆動装置4は、基板Pを保持した基板保持部材3を、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6自由度の方向に移動可能である。基板保持部材3と、その基板保持部材3を移動可能な基板駆動装置4の少なくとも一部とは、第3定盤9の上面に支持されている。第3定盤9は、床面FL上に防振装置14を介して支持されている。基板保持部材3は、基板Pを保持した状態で、第3定盤8上で、6自由度の方向に移動可能である。
【0038】
本実施形態においては、基板保持部材3は、基板Pの表面(露光面)とXY平面とがほぼ平行となるように、基板Pを保持する。基板駆動装置4は、基板Pを保持した基板保持部材3を、少なくとも所定の一次元方向に移動可能である。基板保持部材3に保持された基板Pは、基板駆動装置4によって、少なくとも所定の一次元方向に移動可能である。
【0039】
検出システム5の第2検出システム5Bは、X軸、Y軸、及びθZ方向における基板Pを保持した基板保持部材3(ひいては基板P)の位置情報を取得可能なレーザ干渉計システム53と、Z軸、θX、及びθY方向における基板保持部材3に保持されている基板Pの表面の面位置情報を取得可能なフォーカス・レベリング検出システム54とを含む。制御装置6は、レーザ干渉計システム53及びフォーカス・レベリング検出システム54を含む第2検出システム5Bの検出結果に基づいて、基板駆動装置4を駆動し、基板保持部材3に保持されている基板Pの位置を制御する。
【0040】
また、本実施形態においては、露光装置EXは、基板P上に形成されたアライメントマークAM等を検出するオフアクシス方式のアライメントシステム55を備えている。アライメントシステム55の少なくとも一部は、投影光学系PLの先端の近傍に配置されている。本実施形態のアライメントシステム55は、例えば特開平4−65603号公報(対応する米国特許5,493,403)に開示されているような、基板P上の感光材を感光させないブロードバンドな検出光を対象マーク(基板P上に形成されたアライメントマークAM等)に照射し、その対象マークからの反射光によって受光面に結像された対象マークの像と指標(アライメントシステム55内に設けられた指標板上の指標マーク)の像とをCCD等の撮像素子を用いて撮像し、それらの撮像信号を画像処理することでマークの位置を計測するFIA(Field Image Alignment)方式のアライメントシステムを採用する。
【0041】
図2は、本実施形態の露光装置EXを示す模式図である。本実施形態の露光装置EXは、マスクMと基板Pとをそれぞれ所定の走査方向に同期移動しつつ、マスクMのパターンMPの像を基板P上に投影する走査型露光装置(いわゆるスキャニングステッパ)である。本実施形態においては、基板Pの走査方向(同期移動方向)をY軸方向とし、マスクMの走査方向(同期移動方向)をθX方向とする。
【0042】
露光装置EXは、マスク駆動装置2及び基板駆動装置4のそれぞれを用いて、マスクMのθX方向への移動(回転)と同期して、基板PをY軸方向に移動しつつ、マスクMのパターンMPの像を投影光学系PLを介して基板P上に投影する。露光装置EXは、基板Pのショット領域Sを投影光学系PLの投影領域ARに対してY軸方向に移動するとともに、その基板PのY軸方向への移動と同期して、照明系ILの照明領域IAに対してマスクMのパターン形成面MFを中心軸Jを回転軸としてθX方向に移動(回転)しつつ、照明領域IAを露光光ELで照明し、投影光学系PLを介して投影領域ARに露光光ELを照射することによって、投影領域ARに形成されるパターンMPの像で基板P上のショット領域Sを露光する。
【0043】
上述のように、本実施形態においては、投影光学系PLは、マスクMのパターンMPの倒立像を基板P上に投影する。基板Pのショット領域SにマスクMのパターンMPの像を投影する際、図2の矢印で示すように、制御装置6は、例えば基板Pの−Y方向への移動と同期して、マスクMをY軸からZ軸へ向かう向き(+X方向からマスクMを見た場合、反時計回り)に回転する。以下の説明において、Y軸からZ軸へ向かう向き(+X方向からマスクMを見た場合、反時計回り)への回転方向を適宜、+θX方向、と称し、その逆方向を適宜、−θX方向、と称する。
【0044】
図2に示すように、本実施形態においては、照明系ILは、マスクMと投影光学系PLとの間に配置された反射光学素子18を備えている。また、本実施形態においては、照明系ILは、反射光学素子18に対して光源装置側に配置され、露光光ELを反射光学素子18に導く第1シリンドリカルレンズ17と、第1シリンドリカルレンズ17によって反射光学素子18に導かれ、その反射光学素子18で反射した露光光ELが入射されるとともに、その露光光ELをマスクMのパターン形成面MFに導く第2シリンドリカルレンズ19とを備えている。
【0045】
第1シリンドリカルレンズ17は、照明系ILの視野絞り等によって設定された露光光ELの断面形状を補正する。反射光学素子18は、第1シリンドリカルレンズ17からの露光光ELを反射し、露光光ELの光路の向きを変える。第2シリンドリカルレンズ19は、反射光学素子18からの露光光ELの断面形状を補正する。
【0046】
本実施形態においては、第1シリンドリカルレンズ17及び第2シリンドリカルレンズ19を含む照明系ILは、マスクMのパターン形成面MF上における照明領域IAを、X軸方向を長手方向とするスリット状(矩形状)に設定する。また本実施形態においては、照明系ILは、円筒状のマスクMのパターン形成面MFの最下部BTを露光光ELで照明する。
【0047】
上述したように、本実施形態においては、マスクMとして反射型のマスクを用いる。照明系ILによってパターン形成面MFに照射され、そのパターン形成面MFで反射した露光光ELが、投影光学系PLを介して基板P上に照射される。マスクMのパターンMPの像は、投影光学系PLを介して基板P上に形成される。制御装置6は、マスクMのパターンMPの像を基板P上に投影してその基板Pを露光するために、マスク駆動装置2を用いて、マスクMを中心軸Jを回転軸として回転しつつ、照明系ILを用いて、マスクMのパターン形成面MFに露光光ELを照射する。
【0048】
次に、マスクMについて説明する。図3は、マスクMを示す斜視図、図4(A)は、マスクMのパターン形成面MFの模式図、図4(B)は、マスクMのパターン形成面MFをXY平面上に展開した図である。
【0049】
図3に示すように、マスクMは、円筒状である。マスクMは、パターンMPが形成され、中心軸J周りに配置されたパターン形成面MFを有する。図3において、中心軸Jは、X軸と平行である。マスクMは、マスク駆動装置2の駆動によって、中心軸Jを回転軸として、θX方向に回転可能である。
【0050】
円筒状のマスクMは、内部空間MKと、その内部空間MKと外部空間とを接続するように内部空間MKの両側(+X側及び−X側)に形成された開口MKaとを備えている。円筒状のマスクMは、パターン形成面MFの両側のそれぞれに側面MSを有している。マスクMの側面MSは、YZ平面内において略円環状であり、開口MKaを囲むように配置されている。図3において、マスクMの側面MSは、YZ平面とほぼ平行である。本実施形態においては、マスクMは、内部空間MKを有した中空構造であるので、マスクMの軽量化を図ることができる。
【0051】
パターンMPは、パターン形成面MFの周方向に沿って複数形成されている。マスクMのパターン形成面MFには、そのパターン形成面MFの周方向に沿って、パターンMPが形成されるパターン形成領域MAが複数設けられている。そして、複数のパターン形成領域MAのそれぞれに、基板Pに投影されるべきパターンMPが形成されている。
【0052】
パターン形成面MFをXY平面上に展開したときの、そのパターン形成面MFに形成されているパターンMPの形状は、投影光学系PLを介して基板P上に形成されるパターンMPの像の形状と相似である。本実施形態においては、パターン形成領域MAには、一例として、文字「F」の形状を有するパターンMPが形成されている。
【0053】
また、図4(B)に示すように、本実施形態においては、照明系ILの照明領域IAは、X軸方向を長手方向とするスリット状に設定されている。
【0054】
マスクMは、石英等のガラス材料、又はセラミックス(低膨張セラミックス)等によって形成された円筒状の基材上に、例えばクロム(Cr)等からなる金属膜を用いて所定のパターンMPを形成したものである。
【0055】
また、本実施形態においては、マスクMのパターン形成面MFの中心軸J方向(X軸方向)の一端側(+X側)及び他端側(−X側)のそれぞれにおけるパターン形成領域MAの外側には、検出システム5によって検出されるマークが形成されたマーク形成領域MBが配置されている。なお、図面を見やすくするため、図3及び図4にはマークを図示していない。
【0056】
図3に示すように、マスクMは、パターン形成面MFを覆うように円筒状に形成されたペリクル100と、ペリクル100を支持する支持部材(ペリクル枠)101とを備えている。支持部材101は、マスクMのパターン形成面(外周面)MFの中心軸J方向(X軸方向)の一端側及び他端側のそれぞれにおけるマーク形成領域MBの外側の所定領域において、中心軸Jを囲むようにパターン形成面(外周面)MFの周方向に沿って形成されている。支持部材101に支持されたペリクル100と、マスクMのパターン形成面MFとは離れている。
【0057】
本実施形態においては、支持部材101は円環状の部材である。支持部材101は、例えばポリ四フッ化エチレン等、柔軟性(可撓性)を有する材料で形成されており、曲面であるパターン形成面MFに良好に接続することができる。支持部材101は、マスクMのパターン形成面MFの中心軸J方向(X軸方向)の一端側及び他端側のそれぞれにおけるマーク形成領域MBの外側の所定領域において、マスクMのパターン形成面MFに接続されている。
【0058】
本実施形態においては、パターン形成面MFを覆うようにペリクル100が設けられているので、パターン形成面MFに対する異物の付着を抑制し、パターン形成面MFを保護することができる。
【0059】
図5は、基板保持部材3の平面図である。図5に示すように、基板P上には、露光対象領域である複数のショット領域S(S1〜S26)がマトリクス状に設けられているとともに、各ショット領域S1〜S26のそれぞれに対応するように複数のアライメントマークAMが設けられている。また、図5に示すように、本実施形態においては、投影光学系PLの投影領域ARは、X軸方向を長手方向とするスリット状に設定されている。また、基板Pは、XY平面内において、略円形状である。
【0060】
基板Pのショット領域S1〜S26のそれぞれを露光するとき、制御装置6は、図5中、例えば矢印y1で示すように、投影光学系PLの投影領域ARと基板Pとを相対的に移動しつつ、投影領域ARに露光光ELを照射することによって、基板P上に露光光ELを照射する。制御装置6は、投影領域ARが基板Pに対して矢印y1に沿って移動するように、基板駆動装置4を用いて、基板保持部材3の動作を制御する。
【0061】
また、基板保持部材3の上面の所定位置には、上述のアライメントシステム55で検出される基準マークFMが形成されている。また、投影光学系PLの像面側(光射出面側)に配置可能な基板保持部材3の上面において、基準マークFMに対して所定位置には、開口56Kが形成されている。そして、この開口56Kの下方(−Z方向)には、投影光学系PL及び開口56Kを介した光を受光可能な受光装置56の少なくとも一部が配置されている。本実施形態においては、受光装置56は、例えば特開2002−14005号公報(対応する米国特許出願公開第2002/0041377号明細書)等に開示されているような、空間像計測器を含む。
【0062】
本実施形態においては、パターン形成面MFにおけるマスクMの直径をD、基板Pの走査方向(本実施形態においてはY軸方向)における基板Pの最大の長さをL、投影光学系PLの投影倍率をβ、円周率をπとしたとき、
D ≧ (β×L)/π …(1)
の条件が満足されている。本実施形態においては、(1)式の条件を満足するように、基板Pの最大の長さL及び投影光学系PLの投影倍率βに応じて、パターン形成面MFにおけるマスクMの直径Dが定められている。
【0063】
ここで、上述したように、本実施形態においては、基板Pは、XY平面内において、略円形状である。本実施形態においては、基板Pの走査方向(Y軸方向)における基板Pの最大の長さLは、基板Pの直径である。
【0064】
また、図5に示したように、基板P上には、マスクMのパターンMPの像が投影されるショット領域Sが、少なくとも基板Pの走査方向(Y軸方向)に沿って複数設けられている。そして、マスクMのパターンMPは、パターン形成面MFの周方向に沿って、少なくとも基板Pの走査方向(Y軸方向)におけるショット領域Sの最大数だけ形成されている。
【0065】
本実施形態においては、図5に示したように、4つのショット領域S1〜S4がY軸方向に沿って設けられ、6つのショット領域S5〜S10がY軸方向に沿って設けられ、6つのショット領域S11〜S16がY軸方向に沿って設けられ、6つのショット領域S17〜S22がY軸方向に沿って設けられ、4つのショット領域S23〜S26がY軸方向に沿って設けられている。したがって、本実施形態においては、Y軸方向におけるショット領域Sの最大数は、6である。そして、マスクMのパターンMPが形成されたパターン形成領域MAは、パターン形成面MFの周方向に沿って、6つ形成されている。
【0066】
次に、マスク保持部材1及びマスク駆動装置2について説明する。図6は、マスク保持部材1及びマスク駆動装置2の近傍の側断面図である。図6において、露光装置EXは、マスクMを保持するマスク保持部材1と、マスクMを保持したマスク保持部材1を移動可能なマスク駆動装置2とを備えている。マスク保持部材1及びマスク駆動装置2の少なくとも一部は、第2定盤8上に設けられている。
【0067】
また、露光装置EXは、マスクMを保持するマスク保持部材1を、中心軸Jを回転軸として回転可能に支持する軸部材20と、軸部材20を回転可能に支持する支持部材21とを備えている。支持部材21は、略筒状の部材である。
【0068】
マスク保持部材1は、軸部材20の少なくとも一部を配置するための孔16を有している。孔16は、少なくとも−X側に開口16Kaを有している。本実施形態においては、孔16は、マスク保持部材1の一部をX軸方向に貫通するように形成され、孔16の両側(+X側及び−X側)のそれぞれに開口16Ka、16Kbが形成されている。
【0069】
マスク保持部材1は、軸部材20の一端側(+X側)に配置されている。また、露光装置EXは、軸部材20の他端側(−X側)に配置された錘部材22を有している。錘部材22は、軸部材20の他端に接続されている。軸部材20と錘部材22とは一体である。
軸部材20を回転可能に支持する支持部材21は、マスク保持部材1と錘部材22との間に配置されている。支持部材21は、ベース部材23の上面に支持されている。支持部材21は、ベース部材23の上面に接続されている。支持部材21とベース部材23とは一体である。支持部材21を支持するベース部材23は、防振装置24を介して、第2定盤8の上面に支持されている。防振装置24は、マスク保持部材1の移動に伴う振動を抑えることができる。防振装置24は、ローレンツ力によって駆動可能なアクチュエータと、エアマウント等のダンパ機構とを含む。
【0070】
マスク保持部材1は、パターンMPが形成され、中心軸J周りに配置されたパターン形成面MFを有する円筒状のマスクMの側面MSを着脱可能に保持する。マスク保持部材1は、マスクMの側面MSを吸着可能な吸着機構25を有する。
【0071】
マスク保持部材1は、−X側のマスクMの側面MSと対向するように配置され、そのマスクMの−X側の側面MSを着脱可能に保持する保持面26を備えている。吸着機構25は、マスクMの側面MSを保持面26に吸着可能である。マスク保持部材1の保持面26は、後述する基材27の第1面27A、ピン部材29の端面、第1周壁部材30の端面、及び第2周壁部材31の端面を含む。
【0072】
図7は、マスク保持部材1を示す図であって、図7(A)は、マスク保持部材1のXZ平面と平行な断面図、図7(B)は、マスク保持部材1を+X側から見た図である。マスク保持部材1は、基材27と、基材27上に形成され、マスクMの側面MSを支持可能なピン部材29と、基材27上に形成され、マスクMの側面MSの外縁領域と対向可能な第1周壁部材30と、基材27上に形成され、マスクMの側面MSの内縁領域(開口MKaの近傍の領域)と対向可能な第2周壁部材31と、基材27上に形成され、気体を吸引可能な吸引口32を備えている。
【0073】
マスク保持部材1の基材27は、マスクMに応じた形状を有している。上述のように、本実施形態においては、マスクMの側面MSは、YZ平面内において略円環状である。マスクMの側面MSと対向可能な基材27の第1面27Aは、マスクMの側面MSに対応するように、YZ平面内において略円環状に形成されている。本実施形態においては、基材27の第1面27Aは、+X側を向いている。保持面26は、基材27の第1面27A側に配置されている。
【0074】
また、本実施形態においては、マスク保持部材1は、保持面26よりも+X側に突出するように形成された突出部28を有している。突出部28は、基材27のYZ平面内における中央部分と接続されている。軸部材20を配置するための孔16は、基材27及び突出部28をX軸方向に貫通するように形成されている。突出部28の少なくとも一部は、保持面26に保持されたマスクMの内部空間MKに配置可能である。
【0075】
第1周壁部材30は、基材27の第1面27Aの外縁領域に形成されている。第1周壁部材30は、マスクMの側面MSの外形に応じて略円環状に形成されている。第1周壁部材30は、マスクMの側面MSの外径よりも僅かに小さい外径を有している。第1周壁部材30は、マスク保持部材1に保持されるマスクMの側面MSの外縁領域と対向可能な端面を有している。第1周壁部材30の端面は、平坦であって、所定の幅を有している。
【0076】
第2周壁部材31は、基材27の第1面27Aの内縁領域に形成されている。第2周壁部材31は、マスクMの側面MSの開口MKaに応じて略円環状に形成されている。第2周壁部材31は、マスクMの側面MSに囲まれた開口MKaの外径よりも僅かに大きい外径を有している。第2周壁部材31は、マスク保持部材1に保持されるマスクMの側面MSの内縁領域と対向可能な端面を有している。第2周壁部材31の端面は、平坦であって、所定の幅を有している。
【0077】
ピン部材29は、基材27の第1面27Aに複数に形成されている。第1周壁部材30は、第2周壁部材31を囲むように配置されており、ピン部材29は、第1周壁部材30と第2周壁部材31との間における基材27の第1面27Aにおいて、複数一様に配置されている。ピン部材29のそれぞれは、マスクMの側面MSと対向可能な端面を有している。ピン部材29の端面は、平坦である。複数のピン部材29の端面のそれぞれは、X軸方向においてほぼ同じ位置に設けられている。
【0078】
本実施形態においては、ピン部材29の端面と第1周壁部材30の端面と第2周壁部材31の端面とは、X軸方向においてほぼ同じ位置に設けられている。すなわち、複数のピン部材29の端面、第1周壁部材30の端面、及び第2周壁部材31の端面は、ほぼ同一平面上(YZ平面上)に位置しており、面一となっている。ピン部材29の端面、第1周壁部材30の端面、及び第2周壁部材31の端面は、マスクMの側面MSに接触可能である。図6に示すように、ピン部材29の端面、第1周壁部材30の端面、及び第2周壁部材31の端面のそれぞれとマスクMの側面MSとが接触することにより、マスクMの−X側には、マスクMの側面MSと第1周壁部材30と第2周壁部材31と基材27とで囲まれた空間33が形成される。
【0079】
吸引口32は、マスクMを吸着して保持するためのものである。吸引口32は、第1周壁部材30と第2周壁部材31との間における基材27の第1面27Aにおいて、複数の所定位置のそれぞれに形成されている。吸引口32は、基材27の第1面27Aのうち、ピン部材29以外の複数の所定位置にそれぞれ設けられている。
【0080】
マスクMの側面MSを吸着可能な吸着機構25は、基材27の第1面27Aに形成された吸引口32と、その吸引口32を介して気体を吸引可能な真空系等を含む吸引装置34とを含む。図7(A)に示すように、吸引装置34は、マスク保持部材1の外部に設けられており、吸引口32のそれぞれは、流路35を介して吸引装置34と接続されている。
吸引口32のそれぞれと吸引装置34とを接続する流路35の少なくとも一部は、基材27の内部に形成されている。
【0081】
吸引装置34は、マスクMの側面MSと第1周壁部材30と第2周壁部材31と基材27とで囲まれた空間33を負圧化することができる。すなわち、吸引装置34は、吸引口32を介して空間33の気体を吸引することによって、空間33の圧力を、空間33の外側の空間の圧力(例えば大気圧)よりも低下させることができる。本実施形態においては、マスク保持部材1は、ピン部材29を有しており、いわゆるピンチャック機構を有する。
【0082】
制御装置6は、吸着機構25の吸引装置34を駆動し、空間33の気体を吸引して、この空間33を負圧にすることによって、マスクMを、ピン部材29の端面、第1周壁部材30の端面、及び第2周壁部材31の端面を含む保持面26で吸着して保持する。
【0083】
また、制御装置6は、吸引装置34を含む吸着機構25を制御して、吸着機構25によるマスクMの吸着を解除することにより、マスクMを保持面26から離すことができる。
【0084】
このように、本実施形態においては、制御装置6は、マスク保持部材1に設けられた吸着機構25を制御することによって、マスクMをマスク保持部材1の保持面26に取り付けたり、マスクMをマスク保持部材1の保持面26から取り外したりすることができる。
【0085】
なお、本実施形態においては、吸着機構25は、マスクMを真空吸着する真空吸着機構を備えているが、静電気の力を用いた静電吸着機構を備えていてもよい。静電吸着機構によっても、マスク保持部材1は、マスクMを着脱可能に保持することができる。
【0086】
図6に示すように、軸部材20の少なくとも一部は、マスク保持部材1の孔(内部空間)16に配置可能である。軸部材20の+X側の端は、マスク保持部材1の保持面26よりも+X側に配置される。また、軸部材20の外面と、マスク保持部材1(突出部28)の孔16の内面とは対向する。そして、マスク保持部材1のうち、保持面26よりも+X側に配置された軸部材20及びマスク保持部材1(突出部28)の少なくとも一部は、保持面26に保持されたマスクMの内部空間MKに配置可能である。
【0087】
また、本実施形態においては、マスク保持部材1の保持面26に保持されたマスクMと、そのマスクMの内部空間MKに配置されたマスク保持部材1(突出部28)及び軸部材20とは離れている。
【0088】
図6に示すように、露光装置EXは、マスク保持部材1と軸部材20との間に形成された第1気体軸受36と、軸部材20と支持部材21との間に形成された第2気体軸受37及び第3気体軸受38とを有する。
【0089】
上述のように、突出部28を含むマスク保持部材1は、軸部材20の外面と対向する内面を有している。孔16は、XY平面内において円形状であり、軸部材20のうち、少なくとも孔16の内側に配置される部分も、XY平面内において円形状である。軸部材20のうち、孔16の内側に配置される部分の外径は、孔16の内径よりも僅かに小さい。マスク保持部材1の内面と軸部材20の外面との間には、所定の間隔(第1ギャップ)G1が形成される。
【0090】
第1気体軸受36は、マスク保持部材1の内面と、軸部材20の外面との間に形成されている。マスク保持部材1は、第1気体軸受36によって、軸部材20に対して非接触支持される。第1気体軸受36によって、マスク保持部材1の内面と軸部材20の外面との間隔(第1ギャップ)G1が略一定に維持される。軸部材20は、マスク保持部材1を、中心軸Jを回転軸として回転可能に支持する。
【0091】
本実施形態においては、第1気体軸受36によって、第1ギャップG1が略一定に維持されており、軸部材20に対するマスク保持部材1のY軸、Z軸、θY、及びθZ方向に関する移動が規制される。マスク保持部材1は、軸部材20に対して、X軸、及びθX方向のみに移動可能である。
【0092】
支持部材21は、略筒状の部材である。支持部材21は、軸部材20の少なくとも一部を配置可能な孔(内部空間)39を有している。孔39は、支持部材21をX軸方向に貫通するように形成されている。軸部材20の少なくとも一部は、筒状の支持部材21の孔39の内側に配置される。
【0093】
支持部材21は、軸部材20の外面と対向する内面を有している。孔39は、XY平面内において円形状であり、軸部材20のうち、少なくとも孔39の内側に配置される部分も、XY平面内において円形状である。そして、軸部材20のうち、孔39の内側に配置される部分の外径は、孔39の内径よりも僅かに小さい。支持部材21の内面と軸部材20の外面との間には、所定の間隔(第2ギャップ)G2が形成される。
【0094】
第2気体軸受37は、支持部材21の内面と、軸部材20の外面との間に形成されている。軸部材20は、第2気体軸受37によって、支持部材21に対して非接触支持される。第2気体軸受37によって、支持部材21の内面と軸部材20の外面との間隔(第2ギャップ)G2が略一定に維持される。支持部材21は、軸部材20を、中心軸Jを回転軸として回転可能に支持する。
【0095】
支持部材21は、+X側を向く第1側面21Aと、−X側を向く第2側面21Bとを有している。第1側面21A及び第2側面21Bのそれぞれは、平坦である。軸部材20は、支持部材21の+X側の第1側面21Aと対向する対向面41Aを有する第1フランジ41と、支持部材21の−X側の第2側面21Bと対向する対向面42Aを有する第2フランジ42とを有している。第1側面21A、第2側面21B、対向面41A、対向面42Aのそれぞれは、YZ平面とほぼ平行である。そして、第1側面21Aと第2側面21BとのX軸方向における距離は、第1フランジ41の対向面41Aと第2フランジ42の対向面42AとのX軸方向における距離よりも僅かに小さい。第1側面21Aと対向面41Aとの間には、所定の間隔(第3ギャップ)G3が形成され、第2側面21Bと対向面42Aとの間には、所定の間隔(第4ギャップ)G4が形成される。
【0096】
第3気体軸受38は、支持部材21の第1側面21Aと第1フランジ41の対向面41Aとの間、及び支持部材21の第2側面21Bと第2フランジ42の対向面42Aとの間のそれぞれに形成されている。第3気体軸受38によって、支持部材21の第1側面21Aと第1フランジ41の対向面41Aとの間隔(第3ギャップ)G3が略一定に維持されるとともに、支持部材21の第2側面21Bと第2フランジ42の対向面42Aとの間隔(第4ギャップ)G4が略一定に維持される。
【0097】
本実施形態においては、第2気体軸受37及び第3気体軸受38によって、第2ギャップG2、第3ギャップG3、及び第4ギャップG4のそれぞれが略一定に維持される。そして、本実施形態においては、第2気体軸受37及び第3気体軸受38によって、支持部材21に対する軸部材20のX軸、Y軸、Z軸、θY、及びθZ方向に関する移動が規制される。軸部材20は、支持部材21に対して、θX方向のみに移動可能(回転可能)である。
【0098】
上述のように、本実施形態においては、露光装置EXは、マスクMを保持したマスク保持部材1を中心軸Jを回転軸としてθX方向に回転可能であるとともに、マスクMを保持したマスク保持部材1を6自由度の方向に移動可能なマスク駆動装置2を備えている。マスク駆動装置2は、マスク保持部材1を少なくとも回転方向(θX方向)に移動可能な第1駆動機構61と、軸部材20を所定方向に移動可能な第2駆動機構62とを含む。
【0099】
第1駆動機構61は、マスク保持部材1側に取り付けられた可動子61Aと、軸部材20側に取り付けられた固定子61Bとを有し、マスク保持部材1を少なくとも回転方向(θX方向)に移動する。第1駆動機構61は、ローレンツ力で駆動する回転モータを含む。本実施形態においては、第1駆動機構61の可動子61Aは、マグネットユニットを有し、固定子61Bは、コイルユニットを有する。
【0100】
本実施形態においては、可動子61Aは、マスク保持部材1の基材27の第2面27Bに取り付けられている。基材27の第2面27Bは、第1面27Aとは反対側の面であって、−X側を向いている。また、本実施形態においては、軸部材20は、基材27の第2面27Bと対向する対向面43Aを有する第3フランジ43を有しており、固定子61Bは、第3フランジ43の対向面43Aに取り付けられている。第2面27B及び対向面43Aのそれぞれは、YZ平面とほぼ平行である。第2面27Bと対向面43Aとの間には、所定の間隔(第5ギャップ)G5が形成される。
【0101】
固定子61Bは、中心軸Jを囲むように対向面43Aに配置された複数のコイル(コイル列)を含む。可動子61Aは、コイルの配列方向と同方向に極性が交互に変化するように、中心軸Lを囲むように第2面27Bに配置された複数の磁石(磁石列)を含む。
【0102】
制御装置6は、固定子61Bの複数のコイルに、正弦波状の三相交流を供給する。これにより、コイルの配列方向、すなわち、中心軸J周りの回転方向(θX方向)に推力が発生する。制御装置6は、コイル列と磁石列との相対位置に応じて三相交流を供給するコイルを切り替えることにより、コイルの配列方向に沿ってコイル列と磁石列との相対位置を連続的に変化させることができる。可動子61Bの磁石列によって形成される磁界がコイルの配列方向に沿ってコイルの配列周期で正弦波状に変化することによって、コイル列に三相交流を印加するとコイルの配列方向に一定の推力が発生する。
【0103】
制御装置6は、可動子61A及び固定子61Bを含む第1駆動機構61を制御することによって、マスク保持部材1を、中心軸J周りの回転方向(θX方向)に回転可能である。また、制御装置6は、第1駆動機構61を制御することによって、可動子61Aと固定子61BとのX軸方向における距離を調整することができる。制御装置6は、例えば固定子61Bのコイルに供給する電力を調整することによって、軸部材20の第3フランジ43の対向面43Aとマスク保持部材1の基材27の第2面27BとのX軸方向における間隔(第5ギャップ)G5を調整することができる。
【0104】
すなわち、制御装置6は、第1駆動機構61を制御することによって、軸部材20(第3フランジ43)に対してマスク保持部材1(基材27)をX軸方向に移動することができ、軸部材20に対するマスク保持部材1のX軸方向における位置を調整することができる。
【0105】
このように、本実施形態においては、マスク駆動装置2の第1駆動機構61は、マスクMを保持するマスク保持部材1を中心軸J周りの回転方向(θX方向)に移動可能であるとともに、中心軸J方向(X軸方向)に移動可能である。
【0106】
第2駆動機構62は、ベース部材23(支持部材21)側に取り付けられた可動子62Aと、第2定盤8側に取り付けられた固定子62Bとを有し、ベース部材23及びそのベース部材23と一体の支持部材21を、所定方向に移動可能である。第2駆動機構62は、ローレンツ力で駆動するボイスコイルモータを含む。本実施形態においては、第2駆動機構62の可動子62Aは、マグネットユニットを有し、固定子62Bは、コイルユニットを有する。
【0107】
本実施形態においては、可動子62Aは、ベース部材23の複数の所定位置のそれぞれに取り付けられている。固定子62Bは、第2定盤8の複数の所定位置のそれぞれに、可動子62Aと対応するように取り付けられている。本実施形態においては、可動子62Aは、ベース部材23の少なくとも6箇所のそれぞれに取り付けられ、固定子62Bは、可動子62Aのそれぞれに対応するように、第2定盤8の6箇所のそれぞれに取り付けられている。なお、図6においては、可動子62A及びその可動子62Aに対応する固定子62Bが2つずつ示されており、残りの可動子62A及び固定子62Bの図示は省略してある。
【0108】
制御装置6は、複数の可動子62A及び固定子62Bを含む第2駆動機構62を制御することによって、ベース部材23及びそのベース部材23と一体の支持部材21を、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6自由度の方向に移動可能である。
【0109】
また、上述したように、軸部材20は、支持部材21に対して、θZ方向のみに移動可能(回転可能)であり、第2気体軸受37及び第3気体軸受38によって、支持部材21に対する軸部材20のX軸、Y軸、Z軸、θY、及びθZ方向に関する移動は規制される。したがって、ベース部材23及び支持部材21のX軸、Y軸、Z軸、θY、及びθZ方向への移動に伴って、軸部材20も、X軸、Y軸、Z軸、θY、及びθZ方向に移動する。換言すれば、軸部材20と支持部材21(ベース部材23)とは、X軸、Y軸、Z軸、θY、及びθZ方向に関して一緒に移動する。
【0110】
第2駆動機構62は、支持部材21を所定方向に移動することによって、支持部材21を軸部材20と一緒に所定方向に移動可能である。したがって、制御装置6は、第2駆動機構62を制御して、支持部材21を移動することによって、軸部材20を支持部材21と一緒に、θX方向以外の方向、すなわちX軸、Y軸、Z軸、θY、及びθZ方向に移動することができる。
【0111】
また、上述したように、マスク保持部材1は、軸部材20に対して、X軸、及びθX方向のみに移動可能であり、第1気体軸受36によって、軸部材20に対するマスク保持部材1のY軸、Z軸、θY、及びθZ方向に関する移動は規制される。したがって、軸部材20のY軸、Z軸、θY、及びθZ方向への移動に伴って、マスク保持部材1も、Y軸、Z軸、θY、及びθZ方向に移動する。換言すれば、マスク保持部材1と軸部材20とは、Y軸、Z軸、θY、及びθZ方向に関して一緒に移動する。
【0112】
したがって、第2駆動機構62は、支持部材21を軸部材20と一緒にY軸、Z軸、θY、及びθZ方向に移動することによって、マスク保持部材1を軸部材20と一緒にY軸、Z軸、θY、及びθZ方向に移動することができる。また、制御装置6は、第1駆動機構61を用いて第5ギャップG5を調整しつつ(例えば一定値に維持しつつ)、第2駆動機構62を用いて支持部材21を軸部材20と一緒に移動することによって、マスク保持部材1と軸部材20とを、X軸、Y軸、Z軸、θY、及びθZ方向に関して一緒に移動可能である。
【0113】
そして、制御装置6は、第1駆動機構61及び第2駆動機構62を含むマスク駆動装置2を制御することによって、マスクMを保持するマスク保持部材1をX軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6自由度の方向に移動可能である。制御装置6は、マスク駆動装置2を制御することによって、マスク保持部材1の6自由度の方向の位置を調整可能であり、そのマスク保持部材1に保持されたマスクM、ひいてはパターンMPの6自由度の方向の位置を調整可能である。
【0114】
本実施形態においては、マスク駆動装置2は、ローレンツ力で駆動するコイルユニットとマグネットユニットとを有し、それらコイルユニットとマグネットユニットとは非接触状態で駆動する。これにより、マスク保持部材1を移動するマスク駆動装置2による振動の発生が抑制されている。
【0115】
また、本実施形態においては、露光装置EXは、マスク保持部材1の移動に伴う振動を抑える防振装置24を備えており、マスク保持部材1の移動に伴う振動は、防振装置24によって抑制される。本実施形態においては、防振装置24は、ローレンツ力によって駆動可能なアクチュエータを有する第2駆動機構62の少なくとも一部と、エアマウント等のダンパ機構とを含む。上述のように、第2駆動機構62は、ベース部材23(支持部材21)の6自由度の方向に関する位置を調整可能な複数のアクチュエータを備えており、不図示の加速度センサ(又は変位センサ)の検出結果に基づいて、アクチュエータを駆動することによって、マスク保持部材1の所定方向(6自由度の方向)の移動に伴う振動を抑えることができる。例えば、制御装置6は、加速度センサ(又は変位センサ)で第2定盤8の加速度(又は変位)を検出し、その検出結果に基づいて、マスク保持部材1の移動に伴う第2定盤8の振動を抑えるように、防振装置24を制御する。これにより、制御装置6は、ボディBD、投影光学系PL等の固有振動数の励起を抑え、振動を抑制できる。
【0116】
また、本実施形態においては、防振装置24は、マスク保持部材1のθX方向への回転に伴う慣性力の反力を吸収するカウンタマス46を含む。本実施形態においては、カウンタマス46は、軸部材20及びその軸部材20に接続された錘部材22を含む。
【0117】
軸部材20を含むカウンタマス46は、マスクMの回転に伴う慣性力の反力によって、運動量保存側に従って、そのマスクMとは反対方向に回転する。例えば、マスクMを保持したマスク保持部材1が、マスク駆動装置2の第1駆動機構61による駆動によって、+θX方向に回転した場合、そのマスク保持部材1に対して非接触状態の軸部材20を含むカウンタマス46は、−θX方向に回転する。これにより、マスク保持部材1及びマスクMの回転時に励起される振動を抑えることができる。
【0118】
例えば、マスクMを保持したマスク保持部材1を回転するために、第1駆動機構61を駆動したとき、その与えた力積をカウンタマス46の質量で除した量だけ、カウンタマス46が、マスクM及びマスク保持部材1の回転方向とは反対方向に回転する。このカウンタマス46の移動(回転)により、マスクMを保持したマスク保持部材1を移動(回転)するための、あるいはマスクMを保持したマスク保持部材1の移動後(回転後)の姿勢を保つための駆動に伴う反力が相殺される。カウンタマス46の作用により、マスクMを保持したマスク保持部材1を回転したことにより生じる振動が吸収され、その振動が第2定盤8に伝わることを抑制することができる。
【0119】
なお、本実施形態においては、第1駆動機構61の可動子61Aと固定子61Bとの物理的相互作用(電磁相互作用)によって駆動力が発生し、その可動子61Aと固定子61Bとが協働して駆動力を発生する。本実施形態においては、ローレンツ力(電磁力)によって、固定子61Bは可動子61Aと反対方向に僅かに移動する。そして、本実施形態においては、相対的な移動量が多い方の部材を、可動子、と称し、相対的な移動量が少ない方の部材を、固定子、と称する。
【0120】
また、本実施形態においては、露光装置EXは、カウンタマス46を所定量だけ変位可能に保持する保持機構47を備えている。保持機構47は、カウンタマス46を所定量だけ変位可能(回転可能)に保持し、カウンタマス46の所定量以上の回転を抑える。また、アクチュエータを含む保持機構47は、カウンタマス47の位置を調整可能である。
【0121】
本実施形態においては、保持機構47は、ローレンツ力によって駆動するボイスコイルモータ等のアクチュエータを含む。具体的には、保持機構47は、軸部材20側に取り付けられたマグネットユニットを含む可動子47Aと、第2定盤8側に取り付けられたコイルユニットを含む固定子47Bとを有する。保持機構47は、いわゆるトリムモータを含む。
【0122】
本実施形態においては、軸部材20は、第2フランジ42と錘部材22との間に形成された第4フランジ44を有しており、可動子47Aは、第2定盤8の上面と対向する第4フランジ44の下面に取り付けられている。固定子47Bは、可動子47Aに対応するように、第2定盤8の上面の所定位置に取り付けられている。可動子47A及び固定子47Bを有するボイスコイルモータを含む保持機構47は、軸部材20を含むカウンタマス46をθX方向に移動可能(回転可能)である。すなわち、固定子47Bのコイルユニットに電力が供給されると、第4フランジ44に取り付けられている可動子47Aには、θX方向への駆動力が作用する。
【0123】
上述のように、カウンタマス46は、マスクMを保持したマスク保持部材1の回転に伴う反力によって、そのマスク保持部材1とはθX方向に関して反対方向に移動(回転)する。ここで、例えば走査露光条件によっては、マスク保持部材1が+θX方向のみに移動し続ける可能性があり、その場合、カウンタマス46が、基準位置(初期位置、中立位置)から−θX方向に大きく回転し、その位置が大きくずれる可能性がある。
【0124】
カウンタマス46の軸部材20のθX方向の位置が大きくずれると、例えば、その軸部材20の一部に取り付けられている第1駆動機構61のアクチュエータ(ボイスコイルモータ)の制御性が劣化する等、制御性に影響を与える可能性がある。
【0125】
そこで、制御装置6は、カウンタマス46が基準位置から所定量以上に回転したとき、換言すれば、カウンタマス46と支持部材21(あるいはマスク保持部材1)とのθX方向の相対位置が許容値以上にずれたとき、保持機構47のボイスコイルモータを駆動し、軸部材20を含むカウンタマス46のθX方向の位置を、例えば基準位置に戻すように調整(補正)する。ここで、保持機構47のボイスコイルモータの駆動は、例えば基板交換時、第1のショット領域を露光した後とその次の第2のショット領域を露光する前との間の時等、露光動作中以外の所定のタイミングで実行可能である。
【0126】
また、本実施形態においては、保持機構47は、走査露光中(第1駆動機構61によるマスク保持部材1の回転中)においても、カウンタマス46を所定量だけ変位可能なように、駆動力を発生し、カウンタマス46を柔らかく保持している。換言すれば、保持機構47は、第1駆動機構61によるマスク保持部材1の回転中においても、カウンタマス46の所定量以上の回転を抑えることができる範囲内で、カウンタマス46を柔らかく保持するように、駆動力を発生している。
【0127】
保持機構47を設けず、カウンタマス46がθX方向に回転自在な場合、第1駆動機構61のアクチュエータによるマスク保持部材1のθX方向への推力制御を良好に行うことができなくなる可能性がある。
【0128】
そこで、本実施形態においては、走査露光中(第1駆動機構61によるマスク保持部材1の回転中)においても、保持機構46がカウンタマス46を所定量だけ変位可能な範囲内で柔らかく保持することによって、上述の不具合の発生を抑制する。
【0129】
また、走査露光開始時、あるいはキャリブレーション動作時等において、軸部材20を含むカウンタマス46のθX方向の位置を基準位置に配置したい場合がある。そのような場合、制御装置6は、保持機構47のアクチュエータを用いて、カウンタマス46のθX方向の位置を調整することができる。
【0130】
次に、マスクMを交換する交換システム64について説明する。図8は、マスクMを交換する交換システム64を示す図である。図8において、露光装置EXは、マスク保持部材1に対してマスクMを交換する交換システム64を備えている。上述のように、マスク保持部材1は、マスクMを着脱可能に保持し、制御装置6は、交換システム64を用いて、マスク保持部材1に対してマスクMを交換可能である。
【0131】
交換システム64は、マスク保持部材1に設けられ、マスクMを保持面26に対して着脱可能に吸着する吸着機構25と、マスクMをマスク保持部材1と所定位置(例えばマスクMを収容可能な収容装置)との間で搬送する搬送装置65とを含む。
【0132】
本実施形態においては、搬送装置65は、マスクMのうち、マスク保持部材1の保持面26と対向する−X側の側面MSとは反対側の+X側の側面MSを吸着して保持する保持面を有するアーム部材66を備えている。搬送装置65は、アーム部材66でマスクMの側面MSを保持して移動可能である。
【0133】
図8(A)は、搬送装置65がマスクMをマスク保持部材1に取り付けている状態(ロードしている状態)を示す図である。図8(A)に示すように、搬送装置65は、アーム部材66を用いて、マスクMの+X側の側面MSを保持した状態で、軸部材20の一端側(+X側)から、軸部材20及びマスク保持部材1の突出部28に挿入するように、マスク保持部材1に対してマスクMをロード(搬入)する。図8(B)に示すように、マスク保持部材1は、保持面26で、マスクMの−X側の側面MSを吸着して保持する。マスク保持部材1がマスクMを保持した後、搬送装置65のアーム部材66は、マスク保持部材1に保持されたマスクMから退避する。
【0134】
また、マスク保持部材1に保持されているマスクMをマスク保持部材1からアンロード(搬出)する場合には、搬送装置65のアーム部材66が、軸部材20の一端側(+X側)から、マスク保持部材1に保持されているマスクMの+X側の側面MSに接近し、マスクMの+X側の側面MSを吸着して保持する。アーム部材66がマスクMを保持すると、マスク保持部材1によるマスクMの保持が解除される。搬送装置65のアーム部材66は、マスクMを保持した状態で、軸部材20及びマスク保持部材1の突出部28からマスクMを引き抜くように、+X側に移動する。これにより、マスクMは、搬送装置65によって、マスク保持部材1から取り外される。
【0135】
このように、搬送装置65及び吸着機構25を含む交換システム64は、軸部材20の一端側(+X側)から、軸部材20及びマスク保持部材1の少なくとも一部に挿脱させるように、マスク保持部材1へのマスクMの搬入及びマスク保持部材1からのマスクMの搬出の少なくとも一方を実行可能である。
【0136】
次に、マスクMの位置情報を取得可能な第1検出システム5Aについて説明する。図9は、第1検出システム5Aを説明するための模式図である。第1検出システム5Aは、マスクMを介した光を検出し、その検出結果に基づいて、マスクMの位置情報、ひいてはパターンMPに関する位置情報を取得する。本実施形態においては、第1検出システム5Aは、エンコーダシステム51及びフォーカス・レベリング検出システム52を含む。エンコーダシステム51及びフォーカス・レベリング検出システム52を含む第1検出システム5Aは、マスクM(パターンMP)のX軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6自由度の方向の位置情報を取得可能である。
【0137】
エンコーダシステム51は、外周面(パターン形成面)MFの周方向におけるマスクMのパターンMPの位置情報、及び中心軸J方向(X軸方向)におけるマスクMのパターンMPの位置情報の少なくとも一方を取得可能である。エンコーダシステム51は、マスクMの回転量(回転角度)を検出可能である。フォーカス・レベリング検出システム52は、中心軸Jと垂直な方向(Z軸方向)におけるマスクMのパターン形成面MFの位置情報を少なくとも取得可能である。
【0138】
第1検出システム5Aのエンコーダシステム51は、パターン形成面MFのマーク形成領域MBに、パターンMPに対して所定位置関係で形成された位置検出用マークEMを介した光を検出し、その検出結果に基づいて、パターンMPに関する位置情報を取得する。
エンコーダシステム51は、光学式エンコーダを含む。
【0139】
図10(A)は、マスクMのパターン形成面MFの一部をXY平面上に展開した図、図10(B)は、図10(A)のマーク形成領域MBの一部を拡大した図である。図10に示すように、マスクMは、パターン形成面MFのマーク形成領域MBにパターンMPに対して所定位置関係で形成され、パターンMPに関する位置情報を取得するためのマークEM、RMを備えている。
【0140】
マーク形成領域MBは、マスクMのパターン形成面MFの中心軸J方向(X軸方向)の一端側(+X側)及び他端側(−X側)のそれぞれにおけるパターン形成領域MAの外側に配置されている。パターンMPが形成されたパターン形成領域MAは、中心軸Jを囲むように、パターン形成面MFの周方向に連続的に配置されており、マーク形成領域MBは、パターン形成領域MAに対応するように、中心軸Jを囲むように、パターン形成面MFの周方向に連続的に配置されている。
【0141】
マーク形成領域MBに形成されているマークは、エンコーダシステム51によって検出される位置検出用マークEMと、投影光学系PLの像面側(光射出面側)に配置される受光装置56によって検出されるアライメントマークRMとを含む。本実施形態においては、検出システム5は、受光装置56も含む。
【0142】
エンコーダシステム51によって検出される位置検出用マークEMは、パターン形成面MFの周方向(θX方向)におけるパターンMPの位置情報、及び中心軸J方向(X軸方向)におけるパターンMPの位置情報の少なくとも一方を取得するためのマークである。
制御装置6は、エンコーダシステム51を用いて、位置検出用マークEMを介した光を検出して、パターン形成面MFの周方向におけるパターンMPの位置情報、及び中心軸J方向におけるパターンMPの位置情報の少なくとも一方を取得可能である。
【0143】
受光装置56によって検出されるアライメントマークRMは、投影光学系PLを介したパターンMPの像と、投影光学系PLの像面側(光射出面側)に配置される基板P上のショット領域Sとの位置関係に関する情報を取得するためのマークである。制御装置6は、受光装置56を用いて、アライメントマークRMを介した光を検出して、パターンMPの像とショット領域Sとの位置関係に関する情報を取得可能である。
【0144】
エンコーダシステム51によって検出される位置検出用マークEMは、パターン形成面MFの周方向に連続的に形成されている。受光装置56によって検出されるアライメントマークRMは、パターン形成面MFの周方向に断続的に形成されている。マークEM、RMはそれぞれ複数形成されている。マークEM、RMは、複数のパターンMPのそれぞれに対応するように形成されている。
【0145】
エンコーダシステム51によって検出される位置検出用マークEMは、所定方向に沿って複数形成されたラインパターン(ラインアンドスペースパターン)を含む。図10(B)に示すように、位置検出用マークEMは、X軸方向を長手方向とし、パターン形成面MFの周方向(θX方向)に沿って所定ピッチで複数形成されたラインパターンと、θX方向(図10の展開図においてはY軸方向)を長手方向とし、X軸方向に沿って所定ピッチで複数形成されたラインパターンとを含む。これらラインパターンは、エンコーダシステム51によって検出されるスケール(回折格子)として機能する。
【0146】
以下の説明においては、X軸方向を長手方向とし、パターン形成面MFの周方向(θX方向)に沿って所定ピッチで複数形成されたラインパターンを含むマーク群(ライン群)を適宜、第1マークEM1、と称し、θX方向を長手方向とし、X軸方向に沿って所定ピッチで複数形成されたラインパターンを含むマーク群(ライン群)を適宜、第2マークEM2、と称する。
【0147】
第1マークEM1は、中心軸Jを囲むように、パターン形成面MFの周方向に所定ピッチで配置された複数のラインパターンを含む。第2マークEM2は、X軸方向に所定ピッチで配置され、中心軸Jを囲むようにパターン形成面MFの周方向に沿って形成された複数のラインパターンを含む。これら第1マークEM1及び第2マークEM2は、パターン形成領域MAの両側の2つのマーク形成領域MBのそれぞれに形成されている。
【0148】
図9に示すように、エンコーダシステム51は、第1マークEM1及び第2マークEM2のそれぞれに対応するように配置されている。本実施形態においては、エンコーダシステム51は、+X側のマーク形成領域MBの第2マークEM2を検出する第1エンコーダ51Aと、+X側のマーク形成領域MBの第1マークEM1を検出する第2エンコーダ51Bと、−X側のマーク形成領域MBの第1マークEM1を検出する第3エンコーダ51Cと、−X側のマーク形成領域MBの第2マークEM2を検出する第4エンコーダ51Dとを備えている。これら第1、第2、第3、第4エンコーダ51A、51B、51C、51Dは、光学式エンコーダである。
【0149】
第1エンコーダ51A及び第4エンコーダ51Dのそれぞれは、第2マークEM2を検出することによって、中心軸J方向(X軸方向)におけるマスクMの位置情報、ひいてはパターンMPの位置情報を検出することができる。第2エンコーダ51B及び第3エンコーダ51Cのそれぞれは、第1マークEM1を検出することによって、パターン形成面MFの周方向(θX方向)におけるマスクMの位置情報を検出することができる。
【0150】
第1、第2、第3、第4エンコーダ51A、51B、51C、51Dそれぞれの検出結果は、制御装置6に出力される。制御装置6は、各エンコーダ51A、51B、51C、51Dの検出結果に基づいて、マスクMのパターンMPの位置情報を取得することができる。本実施形態においては、制御装置6は、第1エンコーダ51A及び第4エンコーダ51Dの少なくとも一方の検出結果に基づいて、パターン形成面MFをXY平面上に展開した状態におけるパターンMPのX軸方向における位置情報を取得可能である。また、制御装置6は、第2エンコーダ51B及び第3エンコーダ51Cの少なくとも一方の検出結果に基づいて、パターン形成面MFをXY平面上に展開した状態におけるパターンMPのY軸方向(すなわちパターン形成面MFの周方向)における位置情報を取得可能である。また、制御装置6は、第2エンコーダ51B及び第3エンコーダ51Cの両方の検出結果に基づいて、パターン形成面MFをXY平面上に展開した状態におけるパターンMPのθZ方向における位置情報を取得可能である。
【0151】
図11は、第2エンコーダ51Bを示す模式図である。第2エンコーダ51Bは、第1マークEM1が形成されたマーク形成領域MBに検出光を投射する投光装置501と、マスクMのマーク形成領域MBに投射され、そのマスクMのマーク形成領域MBを介した検出光を受光可能な受光装置502とを備えている。本実施形態においては、第2エンコーダ51Bは、投光装置501からマーク形成領域MBに投射され、そのマーク形成領域MBで反射した検出光を受光装置502で受光する。第2エンコーダ51Bは、投光装置501よりレーザ光を第1マークEM1(回折格子)に投射し、このレーザ光を用いた干渉現象によって、第1マークEM1を検出する。
【0152】
第1マークEM1の各ラインパターンは所定ピッチで形成されており、マスクMが回転すると、投光装置501から投射される検出光の照射領域には、ライン部分と非ライン部分とが交互に配置され、受光装置502の受光状態が変動する。これにより、第2エンコーダ51Bは、受光装置502の受光結果に基づいて、マスクMの回転方向の位置(回転量、回転角度)を求めることができる。
【0153】
また、投光装置501の発光素子を複数設け、それら各発光素子による検出光の照射領域を、マーク形成領域MBの周方向において所定間隔(例えば各ラインパターンのピッチの1/4程度)で形成するとともに、各発光素子(照射領域)に対応するように、受光装置502の受光素子を複数設けることよって、第2エンコーダ51Bは、各受光素子の受光結果に基づいて、マスクMの回転方向を検出することができる。
【0154】
また、第2エンコーダ51Bは、単位時間当たりに検出した各ラインパターンの数と、既知であるラインパターンのピッチとの基づいて、マスクMの回転速度を検出することができる。
【0155】
なお、図11を用いた説明においては、第2エンコーダ51B及びその第2エンコーダ51Bに対応する第1マークEM1を例にして説明したが、第2エンコーダ51B以外の他のエンコーダ51A、51C、51D及びそれらエンコーダ51A、51C、51Dに対応する各マークEM1、EM2も同等の構成を有する。
【0156】
また、本実施形態においては、基板Pの所定の一次元方向(Y軸方向)への移動と同期して、マスクMのパターン形成面MFが中心軸Jを回転軸として回転されつつ、複数のパターンMPの像が基板P上に順次形成される。そして、本実施形態においては、マスクMは、基板Pの移動と同期してパターン形成面MFが回転する際の回転開始位置に関する情報を取得するためのマークEMSを備えている。以下の説明においては、基板Pの移動と同期してパターン形成面MFが回転する際の回転開始位置に関する情報を取得するためのマークEMSを適宜、回転開始位置マークEMS、と称する。
【0157】
図12は、回転開始位置マークEMSが形成されているマスクMのパターン形成面MFの近傍をXY平面上に展開した図である。図12及び図10(B)に示すように、回転開始位置マークEMSは、マスクMのマーク形成領域MBに形成されている。回転開始位置マークEMSは、マスクMのパターン形成面MFの周方向において一箇所に形成されている。
【0158】
図12及び図9に示すように、第1検出システム5Aのエンコーダシステム51は、回転開始位置マークEMSを検出する第5エンコーダ51Sを備えている。第5エンコーダ51Sは、第1〜第4エンコーダ51A〜51Dと同等の構成を有し、回転開始位置マークEMSが形成されたマーク形成領域MBに検出光を投射する投光装置と、マスクMのマーク形成領域MBに投射され、そのマスクMのマーク形成領域MBを介した検出光を受光可能な受光装置とを備えている。
【0159】
マスクMが回転し、第5エンコーダ51Sの投光装置から投射される検出光の照射領域に回転開始位置マークEMSが配置されると、受光装置の受光状態が変動する。これにより、第5エンコーダ51Sは、受光装置の受光結果に基づいて、基板Pの移動と同期してマスクMが回転する際のマスクMの回転開始位置に関する情報を検出することができる。
【0160】
このように、第1検出システム5Aは、回転開始位置マークEMSを介した検出光を検出して、基板Pの移動と同期してマスクMが回転する際の回転開始位置に関する情報を取得可能である。制御装置6は、第5エンコーダ51Sを含む第1検出システム5Aの検出結果に基づいて、マスク駆動装置2を制御して、マスク保持部材1に保持されているマスクMの位置を、基板Pの移動と同期して回転する際の回転開始位置に設定することができる。
【0161】
本実施形態においては、回転開始位置マークEMSは、エンコーダシステム51がマスクMの回転方向における位置を検出する際の基準位置(基準マーク)として機能する。位置検出用マークEMと回転開始位置マークEMSとの位置関係は、例えば設計値等から既知である。
【0162】
第1検出システム5Aのフォーカス・レベリング検出システム52は、中心軸Jと垂直な方向(Z軸方向)におけるマスクMのパターン形成面MFの位置情報を取得可能である。フォーカス・レベリング検出システム52は、マスクMのパターン形成面MFのうち、照明系ILによって露光光ELが照射される領域(すなわち照明領域IA)における位置情報を取得可能である。上述のように、本実施形態においては、マスクMのパターン形成面MFの最下部BTが露光光ELで照明され、フォーカス・レベリング検出システム52は、その最下部BTの位置情報を取得する。
【0163】
本実施形態においては、マスクMの位置情報を取得するためのフォーカス・レベリング検出システム52は、斜入射方式のフォーカス・レベリング検出システムを含む。図9に示すように、フォーカス・レベリング検出システム52は、マスクMのパターン形成面MFに斜め方向から検出光を投射する投光装置52Aと、マスクMのパターン形成面MFに投射され、そのマスクMのパターン形成面MFで反射した検出光を受光可能な受光装置52Bとを有している。
【0164】
また、本実施形態においては、フォーカス・レベリング検出システム52は、例えば特開平11−045846号公報に開示されているように、複数の検出光(光束)を投射可能な投光装置52Aを有し、マスクMのパターン形成面MFの複数の所定位置のそれぞれに検出光を照射可能である。本実施形態においては、フォーカス・レベリング検出システム52は、投光装置52Aを用いて、マスクMのパターン形成面MFの最下部BTの近傍の複数の所定位置のそれぞれに検出光を照射する。
【0165】
フォーカス・レベリング検出システム52は、マスクMのパターン形成面MFに投光装置52Aより射出した検出光を照射するとともに、そのパターン形成面MFを介した検出光を受光装置52Bで検出し、その検出結果に基づいて、パターン形成面MFの面位置情報を取得する。
【0166】
フォーカス・レベリング検出システム52の検出結果(受光装置52Bの受光結果)は、制御装置6に出力される。制御装置6は、受光装置52Bの受光結果に基づいて、マスクMのパターンMPの位置情報(パターンMPが形成されたパターン形成面MFの位置情報)を取得することができる。本実施形態においては、制御装置6は、パターン形成面MFの最下部BT(又はその近傍)に照射された検出光を受光した受光装置52Bの受光結果に基づいて、パターン形成面MFをXY平面上に展開した状態におけるパターンMPのZ軸方向における位置情報を取得可能である。また、制御装置6は、パターン形成面MFの最下部BT(又はその近傍)を含む所定領域の複数の所定位置のそれぞれに照射された複数の検出光のそれぞれを受光した受光装置52Bの受光結果に基づいて、パターン形成面MFをXY平面上に展開した状態におけるパターンMPのθX方向における位置情報、及びθY方向における位置情報を取得することができる。
【0167】
このように、本実施形態においては、制御装置6は、エンコーダシステム51の検出結果に基づいて、パターン形成面MFをXY平面上に展開した状態におけるパターンMPのX軸、Y軸、及びθZ方向における位置情報を取得可能であり、フォーカス・レベリング検出システム52の検出結果に基づいて、パターン形成面MFをXY平面上に展開した状態におけるパターンMPのZ軸、θX、及びθY方向における位置情報を取得可能である。すなわち、本実施形態においては、エンコーダシステム51及びフォーカス・レベリング検出システム52を含む第1検出システム5Aは、パターンMPのX軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6自由度の方向の位置情報を取得可能である。
【0168】
次に、基板保持部材3及び基板駆動装置4について説明する。図13は、基板保持部材3及び基板駆動装置4の近傍を示す図である。基板駆動装置4は、エアベアリングによって第3定盤9の上面に対して非接触支持されているベース部材4Bを第3定盤9上でX軸、Y軸、及びθZ方向に移動することによって、そのベース部材4B上に搭載されている基板保持部材3をX軸、Y軸、及びθZ方向に移動可能な第1駆動系4Hと、ベース部材4Bに対して基板保持部材3をZ軸、θX、及びθY方向に移動可能な第2駆動系4Vとを備えている。
【0169】
第1駆動系4Hは、例えばリニアモータ等のアクチュエータを含み、第3定盤9に非接触支持されているベース部材4BをX軸、Y軸、及びθZ方向に駆動可能である。第2駆動系4Vは、ベース部材4Bと基板保持部材3との間に設けられた、例えばボイスコイルモータ等のアクチュエータと、各アクチュエータの駆動量を計測する不図示の計測装置(エンコーダなど)とを含む。図13に示すように、基板保持部材3は、少なくとも3つのアクチュエータによってベース部材4B上に支持されている。アクチュエータのそれぞれは、ベース部材4Bに対して基板保持部材3をZ軸方向に独立して駆動可能であり、制御装置6は、3つのアクチュエータそれぞれの駆動量を調整することによって、ベース部材4Bに対して基板保持部材3を、Z軸、θX、及びθY方向に駆動する。
【0170】
このように、第1、第2駆動系4H、4Vを含む基板駆動装置4は、基板保持部材3を、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6自由度の方向に移動可能である。制御装置6は、基板駆動装置4を制御することによって、基板保持部材3に保持された基板Pの表面のX軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6自由度の方向に関する位置を制御可能である。
【0171】
次に、基板Pの位置情報を取得可能な第2検出システム5Bについて説明する。図13において、第2検出システム5Bは、基板保持部材3に設けられた計測ミラーを用いて基板保持部材3(ひいては基板P)のX軸、Y軸、及びθZ方向に関する位置情報を取得可能なレーザ干渉計システム53と、基板保持部材3に保持されている基板Pの表面の面位置情報(Z軸、θX、及びθY方向に関する位置情報)を取得可能なフォーカス・レベリング検出システム54とを含む。フォーカス・レベリング検出システム54は、例えば特開平8−37149号公報(対応する米国特許第6,327,025号)に開示されているような、斜入射方式のフォーカス・レベリング検出システムを含み、基板Pの表面に斜め方向から検出光を投射する投光装置54Aと、基板Pの表面に投射され、その基板Pの表面で反射した検出光を受光可能な受光装置54Bとを有している。なお、フォーカス・レベリング検出システム54は、静電容量型センサを用いた方式のものを採用してもよい。
制御装置6は、レーザ干渉計システム53及びフォーカス・レベリング検出システム54を含む第2検出システム5Bの検出結果に基づいて、基板駆動装置4を駆動し、基板保持部材3に保持されている基板Pの位置を制御する。
【0172】
このように、本実施形態においては、制御装置6は、レーザ干渉計システム53の検出結果に基づいて、基板Pの表面のX軸、Y軸、及びθZ方向における位置情報を取得可能であり、フォーカス・レベリング検出システム52の検出結果に基づいて、基板Pの表面のZ軸、θX、及びθY方向における位置情報を取得可能である。すなわち、本実施形態においては、レーザ干渉計システム53及びフォーカス・レベリング検出システム54を含む第2検出システム5Bは、基板PのX軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6自由度の方向の位置情報を取得可能である。
【0173】
次に、上述した構成を有する露光装置EXを用いて基板Pを露光する方法について、図14のフローチャート図、及び図15、図16、図17の模式図を参照して説明する。
【0174】
露光シーケンスが開始され、マスクMがマスク保持部材1にロードされ、基板Pが基板保持部材3にロードされると(ステップSA1)、制御装置6は、所定の計測処理を開始する。例えば、制御装置6は、基板Pを保持した基板保持部材3に関する計測処理を開始する。
【0175】
本実施形態においては、計測処理には、アライメントシステム55を用いた検出動作が含まれる。制御装置6は、基板駆動装置4を用いて基板Pを保持した基板保持部材3をXY方向に移動し、図15に示すように、アライメントシステム55の検出領域に、基板保持部材3上の基準マークFMを配置する。そして、制御装置6は、レーザ干渉計システム53を用いて、基板保持部材3のX軸方向及びY軸方向の位置情報を計測しつつ、アライメントシステム55を用いて、基板保持部材3上に設けられた基準マークFMを検出する(ステップSA2)。
【0176】
これにより、制御装置6は、レーザ干渉計システム53によって規定される座標系内における基板保持部材3上の基準マークFMのX軸方向及びY軸方向に関する位置情報を求めることができる。
【0177】
また、制御装置6は、レーザ干渉計システム53を用いて、基板Pを保持した基板保持部材3のX軸方向及びY軸方向の位置情報を計測しつつ、図16に示すように、アライメントシステム55を用いて、基板P上に設けられた所定数のアライメントマークAMを検出する(ステップSA3)。
【0178】
これにより、制御装置6は、レーザ干渉計システム53によって規定される座標系内における各アライメントマークAMのX軸方向及びY軸方向に関する位置情報を求めることができる。
【0179】
制御装置6は、ステップSA3で求めた、基板P上の各アライメントマークAMの位置情報に基づいて、アライメントシステム55の検出基準位置に対する、基板P上の複数のショット領域S1〜S26のそれぞれの位置情報を演算処理によって求める(ステップSA4)。基板P上の複数のショット領域S1〜S26のそれぞれの位置情報を演算処理によって求める際には、例えば特開昭61−44429号公報に開示されているような、いわゆるEGA(エンハンスド・グローバル・アライメント)方式を用いて求めることができる。
【0180】
これにより、制御装置6は、アライメントシステム55を用いて、基板P上のアライメントマークAMの検出を行い、レーザ干渉計システム53で規定されるXY座標系内における基板P上に設けられた複数のショット領域S1〜S26それぞれの位置座標(配列座標)を決定することができる。すなわち、制御装置6は、レーザ干渉計システム53で規定されるXY座標系内において、アライメントシステム55の検出基準位置に対して、基板P上の各ショット領域S1〜S26がどこに位置しているのかを知ることができる。
【0181】
制御装置6は、エンコーダシステム51を用いて、マスク保持部材1に保持されたマスクMの位置情報を検出するとともに、レーザ干渉計システム53を用いて、基板Pを保持した基板保持部材3の位置情報を計測しつつ、基板保持部材3に設けられた受光装置56を用いて、マスクMに設けられているアライメントマークRMの像(投影像、空間像)を検出する(ステップSA5)。
【0182】
すなわち、制御装置6は、図17に示すように、投影光学系PLと基板保持部材3上の開口56Kとを対向させた状態で、マスクMに設けられているアライメントマークRMを露光光ELで照明する。これにより、マスクMに設けられているアライメントマークRMの空間像は、投影光学系PLを介して開口56Kを含む基板保持部材3の上面3Fに投影され、基板保持部材3に設けられている受光装置56は、マスクMに設けられているアライメントマークRMの空間像を検出することができる。
【0183】
これにより、制御装置6は、レーザ干渉計システム53によって規定される座標系内における空間像(投影像)のX軸方向及びY軸方向の位置を、基板保持部材3に設けられた受光装置56(開口56K)を用いて求めることができる。
【0184】
また、受光装置56でアライメントマークRMの空間像を計測しているときのマスクMの位置情報は、エンコーダシステム51によって検出される。エンコーダシステム51は、位置検出用マークEM(第1マークEM1)を検出することによって、基準マーク(回転開始位置マーク)RMSを基準としたアライメントマークRMの位置情報、ひいてはパターンMPの位置情報を検出する。すなわち、制御装置6は、エンコーダシステム51の検出結果に基づいて、基準マーク(回転開始位置マーク)RMSに対して、マスクM上の各パターンMPがどこに位置しているのかを知ることができる。
【0185】
マスクMのパターンMPとアライメントマークRMとは、所定の位置関係で形成されており、基板保持部材3上の基準マークFMと開口56K(受光装置56)との位置関係も既知である。また、検出システム5のエンコーダシステム51の検出値とレーザ干渉計システム53の検出値とは対応付けられている。したがって、制御装置6は、ステップSA5の検出結果に基づいて、レーザ干渉計システム53によって規定される座標系内での所定の基準位置とマスクMのパターンMPの像の投影位置との関係を導出することができる(ステップSA6)。
【0186】
制御装置6は、ステップSA4で求めた、レーザ干渉計システム53によって規定される座標系内での所定の基準位置と基板P上の各ショット領域S1〜S26との位置関係(所定の基準位置に対するショット領域S1〜S26の配列情報)、及びステップSA6で求めた、レーザ干渉計システム53によって規定される座標系内での所定の基準位置とマスクMのパターンMPの像の投影位置との関係に基づいて、レーザ干渉計システム53によって規定される座標系内でのマスクMのパターンMPの像の投影位置と、基板P上の各ショット領域S1〜S26との関係を導出する(ステップSA7)。
【0187】
このように、本実施形態においては、制御装置6は、マスクMのアライメントマークRMを介した光を受光装置56で検出して、マスクMのパターンMPの像と基板P上のショット領域S1〜S26との位置関係に関する情報を取得することができる。
【0188】
制御装置6は、基板Pの露光を開始するために、レーザ干渉計システム53を用いて、基板Pを保持した基板保持部材3の位置情報(ひいては基板P上のショット領域Sの位置情報)を計測しつつ、基板駆動装置4を用いて、基板保持部材3に保持されている基板Pを最初の露光開始位置へ移動する。本実施形態においては、制御装置6は、複数のショット領域S1〜S26のうち、第1のショット領域S1が投影領域ARの−Y側の近傍に配置されるように、基板保持部材3に保持されている基板Pを移動する。
【0189】
また、制御装置6は、基板Pの露光を開始するために、エンコーダシステム51を用いて、マスク保持部材1に保持されたマスクMの位置情報(ひいてはマスクMのパターンMPの位置情報)を計測しつつ、マスク駆動装置2を用いて、マスク保持部材1に保持されているマスクMを露光開始位置(回転開始位置)へ移動する。制御装置6は、第1検出システム5Aの第5エンコーダ51Sを用いて、回転開始位置マークEMSを介した検出光を検出して、基板Pの移動と同期してマスクMを回転する際の回転開始位置に、マスクMを移動(回転)する。本実施形態においては、制御装置6は、第5エンコーダ51Sを用いた検出結果に基づいて、複数(6つ)のパターン形成領域MAのうち、第1のパターン形成領域MAが照明領域IAの+Y側の近傍に配置されるように、マスク保持部材1に保持されているマスクMを移動する(ステップSA8)。
【0190】
また、制御装置6は、フォーカス・レベリング検出システム54の検出結果に基づいて、基板Pの表面(露光面)と投影光学系PLの像面とが所定の位置関係となるように調整する。
【0191】
また、制御装置6は、フォーカス・レベリング検出システム52の検出結果に基づいて、マスクMの最下部BTと投影光学系PLの物体面とが所定の位置関係となるように調整する。マスクMの最下部BTは、投影光学系PLに関して、基板Pの表面と光学的に共役な位置に配置される。
【0192】
制御装置6は、基板駆動装置4を制御して、基板Pの+Y方向への移動を開始するとともに、マスク駆動装置2を制御して、マスクMの−θX方向への移動(回転)を開始する。
【0193】
基板Pの+Y方向への移動速度、及びマスクMの−θX方向への回転速度(角速度)のそれぞれが一定となり、第1のショット領域S1の+Y側の端部が投影領域ARに達すると、制御装置6は、照明系ILから露光光ELを射出する。制御装置6は、マスク駆動装置2及び基板駆動装置4のそれぞれを用いて、マスクMの−θX方向への移動(回転)と同期して、基板Pを+Y方向に移動しつつ、マスクMのパターンMPを露光光ELで照明し、マスクMのパターンMPの像を投影光学系PLを介して基板P上に投影する。制御装置6は、マスクMを中心軸Jを回転軸として回転しつつ、マスクMのパターンMPを露光光ELで照明する。
【0194】
走査露光時には、投影領域ARにマスクMの一部のパターンMPの像が投影されている状態で、投影光学系PLに対して、マスクMの最下部BTにおけるパターンMPがほぼ−Y方向に速度Vで移動するのに同期して、基板Pが+Y方向に速度β・V(βは投影倍率)で移動する。
【0195】
パターンMPは、マスクMのパターン形成面MFの周方向に沿って複数形成されており、制御装置6は、基板Pのショット領域Sを投影光学系PLの投影領域ARに対してY軸方向に移動するとともに、その基板PのY軸方向への移動と同期して、照明系ILの照明領域IAに対してマスクMのパターン形成面MFをθX方向に移動(回転)しつつ、露光光ELを照射することによって、投影領域ARに形成されるパターンMPの像で基板P上のショット領域Sを露光する。基板PのY軸方向への移動と同期して、中心軸Jを回転軸としてマスクMを回転しつつ、マスクMのパターンMPを露光光ELで照明することによって、複数のマスクMのパターンMPの像が、基板P上に順次形成される(ステップSA9)。
【0196】
制御装置6は、検出システム5の第1検出システム5Aを用いて、マスクM(パターンMP)の位置情報をモニタするとともに、第2検出システム5Bを用いて、基板P(ショット領域S)の位置情報をモニタしつつ、マスクM及び基板Pを駆動して、マスクMのパターンMPの像で基板Pを露光する。すなわち、制御装置6は、検出システム5の検出結果に基づいて、マスク駆動装置2及び基板駆動装置4を制御して、マスクMのパターンMPの像を基板P上に形成する際のマスクM及び基板Pの駆動を制御する。
【0197】
具体的には、第1検出システム5Aは、マスクMが回転している状態で、エンコーダシステム51の各エンコーダ51A〜51Dの各投光装置501よりマスクMのマーク形成領域MBに検出光を投射し、そのマスクMのマーク形成領域MBを介した検出光を各受光装置502で検出する。また、第1検出システム5Aは、マスクMが回転している状態で、フォーカス・レベリング検出システム52の投光装置52AよりマスクMのパターン形成領域MAに検出光を投射し、そのマスクMのパターン形成領域MAを介した検出光を受光装置52Bで検出する。すなわち、第1検出システム5Aは、マスクMが回転している状態で、マスクMを介した検出光を検出し、その検出結果に基づいて、マスクMのパターンMPの6自由度の方向に関する位置情報を取得する。
【0198】
制御装置6は、第1検出システム5Aを用いて、位置検出用マークEM(第1マークEM1)を検出することによって、基準マーク(回転開始位置マーク)RMSを基準とした位置検出用マークEM(第1マークEM1)の位置情報、ひいてはパターンMPの位置情報をリアルタイムに検出することができる。すなわち、制御装置6は、第1検出システム5Aの検出結果に基づいて、基準マーク(回転開始位置マーク)RMSに対して、マスクM上の各パターンMPがどこに位置しているのかをリアルタイムに知ることができる。
【0199】
また、第2検出システム5Bは、基板Pが移動している状態で、レーザ干渉計システム53より基板Pを保持した基板保持部材3の計測ミラーに検出光を投射し、その計測ミラーを介した検出光を検出する。また、第2検出システム5Bは、基板Pが移動している状態で、フォーカス・レベリング検出システム54の投光装置54Aより基板Pの表面に検出光を投射し、その基板Pの表面を介した検出光を受光装置54Bで検出する。すなわち、第2検出システム5Bは、基板Pが移動している状態で、基板Pを介した検出光を検出し、その検出結果に基づいて、基板Pのショット領域Sの6自由度の方向に関する位置情報を取得する。
【0200】
制御装置6は、第1検出システム5Aを用いて取得した、パターン形成面MFの周方向(θX方向)を含むマスクMのパターンMPの6自由度に関する位置情報に基づいて、マスクMのパターンMPの像を基板P上に形成する際のマスクMの中心軸J周り(θX方向)を含む6自由度の方向に関する駆動を制御する。
【0201】
また、制御装置6は、第2検出システム5Bを用いて取得した、基板Pのショット領域Sの6自由度に関する位置情報に基づいて、マスクMのパターンMPを基板P上に形成する際の基板Pの6自由度の方向に関する駆動を制御する。
【0202】
このように、制御装置6は、検出システム5を用いて取得したマスクM及び基板Pの6自由度の方向に関する位置情報に基づいて、マスクM及び基板Pの6自由度の方向に関する位置(マスクMと基板Pとの相対位置関係)を調整しつつ、基板P上にマスクMを介した露光光ELを照射する。
【0203】
本実施形態においては、マスクMには、パターン形成面MFの周方向に沿って6つのパターンMPが形成されているため、マスクMがほぼ60度回転すると、第1のショット領域S1の露光が終了する。
【0204】
最初に露光すべき第1のショット領域S1に対する走査露光が終了すると、制御装置6は、マスクMを保持したマスク保持部材1及び基板Pを保持した基板保持部材3それぞれの減速を行うことなく、マスクMの−θX方向への回転を継続するとともに、基板Pの+Y方向への移動を継続する。そして、制御装置6は、第1のショット領域S1の−Y側に配置されている第2のショット領域S2の露光を、第1のショット領域S1と同様に行う。
【0205】
そして、制御装置6は、マスクMを保持したマスク保持部材1及び基板Pを保持した基板保持部材3それぞれの減速を行うことなく、マスクMの−θX方向への回転を継続するとともに、基板Pの+Y方向への移動を継続し、第3のショット領域S3及び第4のショット領域S4のそれぞれを連続的に露光する。このように、本実施形態では、制御装置6は、一度の走査で、Y軸方向に配列された1列分のショット領域S1〜S4の露光を継続して実行する。
【0206】
第4のショット領域S4の露光が終了すると、制御装置6は、基板保持部材3を減速する。そして、制御装置6は、1枚の基板Pの露光が終了したかどうか、つまり基板P上の全ての露光を終えたかどうかを判断する(ステップSA10)。ここでは、第1〜第4のショット領域S1〜S4の露光のみを終えたばかりであり、他に露光すべきショット領域が残っている。
【0207】
ステップSA10において、基板P上の全ての露光を未だ終えていないと判断した場合、制御装置6は、レーザ干渉計システム53を用いて、基板Pを保持した基板保持部材3の位置情報(ひいては基板P上のショット領域Sの位置情報)を計測しつつ、基板駆動装置4を用いて、基板保持部材3に保持されている基板Pを次の露光開始位置へ移動する。
本実施形態においては、制御装置6は、複数のショット領域S1〜S26のうち、第5のショット領域S5が投影領域ARの+Y側の近傍に配置されるように、基板保持部材3に保持されている基板Pを移動する。
【0208】
また、制御装置6は、基板Pの露光を開始するために、エンコーダシステム51を用いて、マスク保持部材1に保持されたマスクMの位置情報(ひいてはマスクMのパターンMPの位置情報)を計測しつつ、マスク駆動装置2を用いて、マスク保持部材1に保持されているマスクMを露光開始位置(回転開始位置)へ移動する。制御装置6は、第1検出システム5Aの第5エンコーダ51Sを用いて、回転開始位置マークEMSを介した検出光を検出して、基板Pの移動と同期してマスクMを回転する際の回転開始位置に、マスクMを移動(回転)する。本実施形態においては、制御装置6は、複数(6つ)のパターン形成領域MAのうち、第1のパターン形成領域MAが照明領域IAの−Y側の近傍に配置されるように、マスク保持部材1に保持されているマスクMを移動する(ステップSA11)。
【0209】
本実施形態においては、制御装置6は、基板Pの露光開始位置への移動の少なくとも一部と並行して、マスクMの回転開始位置への移動を実行する。また、制御装置6は、マスクMの回転開始位置への移動中には、マスクMに対する露光光ELの照射を停止する(基板Pの露光を一旦停止する)。
【0210】
また、ここでは、第1〜第4のショット領域S1〜S4を露光するために、マスクMは、−θX方向に回転されており、第4のショット領域S4の露光が終了した後、第1〜第4のショット領域S1〜S4の露光時と同じ方向、すなわち、−θX方向への回転を継続した方が、逆方向、すなわち+θX方向に回転した場合に比べて、回転開始位置に素早く到達することができる。
【0211】
マスクM及び基板Pのそれぞれの露光開始位置への移動が完了すると、制御装置6は、マスクMを保持したマスク保持部材1の移動方向(回転方向)を逆方向に設定するとともに、基板Pを保持した基板保持部材3の移動方向を逆方向に設定する(ステップSA12)。
【0212】
そして、制御装置6は、基板駆動装置4を制御して、基板Pの−Y方向への移動を開始するとともに、マスク駆動装置2を制御して、マスクMの+θX方向への移動(回転)を開始する。
【0213】
基板Pの−Y方向への移動速度、及びマスクMの+θX方向への回転速度のそれぞれが一定となり、第5のショット領域S5の−Y側の端部が投影領域ARに達すると、制御装置6は、照明系ILから露光光ELを射出する。制御装置6は、マスクMの+θX方向への移動(回転)と同期して、基板Pを−Y方向に移動しつつ、マスクMのパターンMPを露光光ELで照明し、マスクMのパターンMPの像を投影光学系PLを介して基板P上に投影する。制御装置6は、マスクMを中心軸Jを回転軸として回転しつつ、マスクMのパターンMPを露光光ELで照明する。基板PのY軸方向への移動と同期して、中心軸Jを回転軸としてマスクMを回転しつつ、マスクMのパターンMPを露光光ELで照明することによって、複数のマスクMのパターンMPの像が、基板P上に順次形成される(ステップSA9)。
【0214】
この場合においても、制御装置6は、検出システム5を用いて取得したマスクM及び基板Pの6自由度の方向に関する位置情報に基づいて、マスクM及び基板Pの6自由度の方向に関する位置(マスクMと基板Pとの相対位置関係)を調整しつつ、基板P上にマスクMを介した露光光ELを照射する。
【0215】
第5のショット領域S5に対する走査露光が終了すると、制御装置6は、マスクMを保持したマスク保持部材1及び基板Pを保持した基板保持部材3それぞれの減速を行うことなく、マスクMの+θX方向への回転を継続するとともに、基板Pの−Y方向への移動を継続する。そして、制御装置6は、第5のショット領域S5の+Y側に配置されている第6のショット領域S6の露光を、第5のショット領域S5と同様に行う。
【0216】
そして、制御装置6は、マスクMを保持したマスク保持部材1及び基板Pを保持した基板保持部材3それぞれの減速を行うことなく、マスクMの+θX方向への回転を継続するとともに、基板Pの−Y方向への移動を継続し、第7、第8、第9、第10のショット領域S7、S8、S9、S10のそれぞれを連続的に露光する。このように、本実施形態では、制御装置6は、一度の走査で、Y軸方向に配列された1列分のショット領域S5〜S10の露光を継続して実行する。
【0217】
上述のように、本実施形態においては、マスクMのパターンMPは、パターン形成面MFの周方向に沿って、少なくとも基板Pの走査方向(Y軸方向)におけるショット領域Sの最大数(本実施形態においては6つ)だけ形成されている。したがって、制御装置6は、マスクMを360度回転(一回転)することによって、Y軸方向に並んだ1列分のショット領域S5〜S10の露光を実行することができる。
【0218】
以下同様に、制御装置6は、Y軸方向に配列された1列のショット領域S(S11〜S16、S17〜S22、S23〜S26)の露光を終える度に、マスクMの回転方向を逆方向に設定する(反転する)とともに、基板Pの移動方向を逆方向に設定して、列単位での露光処理を実行する(ステップSA9〜SA12)。
【0219】
以上の動作を繰り返し、ステップSA10において、基板P上の全ての露光を終えたと判断した場合、制御装置6は、基板保持部材3に保持されている基板Pをアンロードする(ステップSA13)。そして、制御装置6は、次に露光すべき基板Pが有るかどうかを判断する(ステップSA14)。ステップSA14において、露光すべき基板Pが有ると判断した場合、制御装置6は、ステップSA1以降の処理を繰り返す。一方、ステップSA14において、露光すべき基板Pが無いと判断した場合、制御装置6は、露光シーケンスを終了する。
【0220】
以上説明したように、本実施形態においては、円筒状のマスクMのパターン形成面(外周面)MFのマーク形成領域MBに、パターンMPに対して所定位置関係で位置検出用マークEMが形成されているので、その位置検出用マークEMを検出システム5(第1検出システム5A)で検出することによって、マスクMのパターンMPの位置情報を精確に取得することができる。したがって、その取得したパターンMPの位置情報を用いて、マスクMのパターンMPの位置の調整、マスクMと基板Pとの位置関係の調整を精確に実行することができる。したがって、基板P上にマスクMのパターンMPの像を良好に形成することができる。
【0221】
また、本実施形態においては、検出システム5は、フォーカス・レベリング検出システム52を含み、Z軸方向におけるマスクMのパターン形成面MF(パターン形成領域MA)の位置情報も取得することができる。したがって、その取得したパターンMPの位置情報を用いて、マスクMのパターンMPの位置の調整、マスクMと基板Pとの位置関係の調整を精確に実行することができ、基板P上にマスクMのパターンMPの像を良好に形成することができる。
【0222】
また、本実施形態においては、位置検出用マークEMは、パターン形成面MFの周方向に連続的に形成されており、制御装置6は、マスク駆動装置2を用いてマスクMを回転しつつ、検出システム5(第1検出システム5A)を用いて、回転している状態のマスクMのパターンMPの位置情報をリアルタイムに取得することができる。また、制御装置6は、その取得したマスクMのパターンMPの位置情報に基づいて、マスクMのパターンMPの像を基板P上に形成(投影)する際のマスクMの中心軸J回りの駆動を精確に制御することができる。
【0223】
また、本実施形態においては、マスクMには、パターンMPの像とショット領域Sとの位置関係に関する情報を取得するためのアライメントマークRMが形成されており、検出システム5を用いてアライメントマークRMを検出することによって、パターンMPの像とショット領域Sとの位置関係を精確に調整することができる。
【0224】
また、本実施形態においては、パターンMPはマスクMのパターン形成面MFに複数形成されており、マークEM、RMは、複数のパターンMPのそれぞれに対応するように形成されている。したがって、検出システム5を用いて、各パターンMPそれぞれの位置情報、及び各パターンMPの像とショット領域Sとの位置関係に関する情報を精確に取得することができる。
【0225】
また、本実施形態においては、マスクMには、回転開始位置マークEMSが形成されており、制御装置6は、検出システム5(第5エンコーダ51S)を用いて、回転開始位置マークEMSを検出することによって、マスクMの位置を、基板Pの移動と同期して回転する際の回転開始位置(回転開始状態)に設定することができる。
【0226】
また、本実施形態においては、回転開始位置マークEMSは、エンコーダシステム51がマスクMの回転方向における位置を検出する際の基準位置(基準マーク)として機能し、制御装置6は、検出システム5を用いて、位置検出用マークEM(第1マークEM1)を検出することによって、基準マーク(回転開始位置マーク)RMSを基準とした位置検出用マークEM(第1マークEM1)の位置情報、ひいてはパターンMPの位置情報を検出することができる。
【0227】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。上述の第1実施形態においては、位置検出用マークEMは、パターン形成面MFの周方向に連続的に形成されているが、第2実施形態の特徴的な部分は、位置検出用マークEMが、パターン形成面MFの周方向に断続的(離散的)に形成されている点にある。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0228】
図18は、第2実施形態に係るマスクMのパターン形成面MFの一部をXY平面上に展開した図である。図18に示すように、第2実施形態に係るマスクMのパターン形成面MFには、パターン形成面MFの周方向におけるパターンMPの位置情報を取得するためのマーク(ラインパターン)LMが、パターン形成面MFの周方向に断続的(離散的)に形成されている。すなわち、第2実施形態においては、パターン形成面MFの周方向におけるパターンMPの位置情報を取得するための第1マークEM1が、パターン形成面MFの周方向に断続的に形成された所定数のマーク(ラインパターン)LMによって構成される。
【0229】
本実施形態においては、第1マークEM1を構成するラインパターンLMは、1つのパターンMP(パターン形成領域MA)に対して、パターン形成面MFの周方向に関して3箇所の所定位置のそれぞれに形成されている。ラインパターンLMのそれぞれは、パターンMPに対して所定位置関係で形成されている。図18中、マーク形成領域MBは、パターン形成領域MAの+X側及び−X側のそれぞれに設定されており、ラインパターンLMは、1つのパターン形成領域MAに対して、一方のマーク形成領域MBの3箇所の所定位置のそれぞれに形成され、全部で6箇所に形成されている。
【0230】
また、マスクMのパターン形成面MFには、上述の第1実施形態と同様、回転開始位置マークEMSが形成されている。なお、図18においては、第2マークEM2、アライメントマークRMの図示は省略してある。
【0231】
本実施形態においては、第1検出システム5Aのエンコーダシステム51は、パターン形成面MFの周方向における複数位置でのラインパターンLMを介した光を検出し、その検出結果に基づいて取得したラインパターンLMの位置情報と、マスクMの回転速度とに基づいて、パターン形成面MFの周方向におけるパターンMPの位置情報を取得する。なお、マスクMの回転速度は、第1駆動機構61の出力から求めることができるし、マスクMの回転速度を検出可能な速度センサを設け、その速度センサの出力から求めることもできる。
【0232】
制御装置6は、第1検出システム5Aのエンコーダシステム51を用いて、第1マークEM1(ラインパターンLM)を検出することによって、回転開始位置マーク(基準マーク)RMSを基準としたラインパターンLMの位置情報、ひいてはパターンMPの位置情報を検出することができる。すなわち、制御装置6は、検出システム5の検出結果に基づいて、回転開始位置マーク(基準マーク)RMSに対して、マスクM上の各パターンMPがどこに位置しているのかを知ることができる。
【0233】
本実施形態においては、ラインパターンLMは断続的に形成されており、マスクMが回転している状態でエンコーダシステム51を用いてパターンMPの位置情報を検出する際、エンコーダシステム51の投光装置がラインパターンLMどうしの間に検出光を投射している期間においては、エンコーダシステム51は、ラインパターンLMを検出しない。
【0234】
本実施形態においては、エンコーダシステム51がラインパターンLMを検出しない期間であっても、制御装置6は、エンコーダシステム51によってラインパターンLMを検出したときのタイミング(時刻)と、マスクMの回転速度とに基づいて、基準マークRMSに対するパターンMPの位置情報を推定することができる。すなわち、エンコーダシステム51がラインパターンLMを検出しない期間においては、制御装置6は、マスクMの回転速度を用いてマスクMの位置を補間しつつ、マスクMのパターンMPの位置情報を推定する。そして、制御装置6は、その推定したマスクMのパターンMPの位置情報に基づいて、マスクMのパターンMPの像を基板P上に形成する際のマスクMの中心軸J回りの駆動を制御する。
【0235】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について説明する。上述の第1、第2実施形態においては、検出システム5からの検出光(露光光ELとは別の光)が位置検出用マークEMに照射されているが、第3実施形態の特徴的な部分は、露光光ELを位置検出用マークEMに照射し、その位置検出用マークEMを介した露光光ELを用いて、マスクMのパターンMPの位置情報を取得する点にある。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0236】
図19は、第3実施形態に係るマスクMのパターン形成面MFの一部をXY平面上に展開した図である。図19に示すように、第3実施形態に係るマスクMのパターン形成面MFには、パターン形成面MFの周方向におけるパターンMPの位置情報を取得するためのマークEM3が、パターン形成面MFの周方向に断続的(離散的)に形成されている。本実施形態においては、マークEM3は、パターン形成領域MAの所定領域に、パターンMPに対して所定位置関係で形成されている。本実施形態においては、マークEM3は、パターン形成領域MAの+X側の端部(エッジ)及び−X側の端部(エッジ)のそれぞれにおいて、マスクMのパターン形成面MFの周方向に沿って複数形成されている。マークEM3は、照明系ILの照明領域IAの内側に配置されるように形成されている。すなわち、マークEM3は、照明系ILからの露光光ELで照明される。
【0237】
図20は、本実施形態に係る露光装置EXを示す模式図である。本実施形態においては、検出システム5は、マスクM及び投影光学系PLの一部を介した露光光ELを受光可能な受光装置57を備えている。本実施形態の投影光学系PLは、ビームスプリッタBSを有しており、照明系ILによってマスクMに照射され、そのマスクMを介して投影光学系PLに入射した露光光ELは、ビームスプリッタBSによって分離される。ビームスプリッタBSによって分離された露光光ELの一部は、基板Pに導かれ、別の一部は、投影光学系PLの外側に配置された検出システム5の受光装置57の受光面57Aに導かれる。
【0238】
受光装置57の受光面57Aは、投影光学系PLの物体面、及び像面と光学的に共役な位置(又はその近傍)に配置されている。すなわち、受光装置57の受光面57Aは、露光光ELが照射されるマスクMのパターン形成面MFの最下部BT、及び基板Pの表面と光学的に共役な位置(又はその近傍)に配置されている。
【0239】
基板Pを露光するために、制御装置6は、基板PのY軸方向への移動と同期して、マスクMをθX方向に回転しつつ、マスクMを露光光ELで照明する。マスクMを介した露光光ELの一部は、ビームスプリッタBSを含む投影光学系PLを介して基板P上に導かれ、基板P上にパターンMPの像を形成する。一方、マスクMを介した露光光ELの一部は、ビームスプリッタBSを含む投影光学系PLを介して受光装置57に導かれ、受光装置57の受光面57A上にマークEM3の像を形成する。なお、基板P上には、パターンMPの像ととともにマークEM3の像も形成され、受光装置57の受光面57A上には、マークEM3の像ととともにパターンMPの像も形成される。
【0240】
上述のように、マークEM3は、マスクMのパターン形成面MFに、そのパターン形成面MFの周方向に沿って複数形成されている。したがって、基板Pのショット領域Sを露光するために、マスクMを回転したとき、照明領域IAには、複数のマークEM3のそれぞれが順次配置される。検出システム5の受光装置57は、マスクMが回転しているときに、受光面57A上に形成されるマークEM3の像の位置情報を順次取得する。受光装置57は、指標マークを有しており、マークEM3の像と指標マークの像とをCCD等の撮像素子を用いて撮像し、それらの撮像信号を画像処理することで、マークEM3の位置情報を取得する。制御装置6は、マークEM3の位置情報に基づいて、そのマークEM3に対して所定位置関係で形成されているパターンMPの位置情報を取得することができる。
【0241】
また、マークEM3は、パターン形成面MFの周方向に沿って断続的に形成されており、マスクMの回転中において、受光装置57がマークEM3を検出しない期間が発生するが、上述の第2実施形態とほぼ同様、制御装置6は、受光装置57によってマークEM3を検出したときのタイミング(時刻)と、マスクMの回転速度とに基づいて、パターンMPの位置情報を推定することができる。すなわち、受光装置57がマークEM3を検出しない期間においては、制御装置6は、マスクMの回転速度を用いてマスクMの位置を補間しつつ、マスクMのパターンMPの位置情報を推定する。そして、制御装置6は、その推定したマスクMのパターンMPの位置情報に基づいて、マスクMのパターンMPの像を基板P上に形成する際のマスクMの中心軸J回りの駆動を制御する。
【0242】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態について説明する。第4実施形態の特徴的な部分は、マスク保持部材1を介した光の検出結果に基づいて、マスクMのパターンMPの位置情報を取得する点にある。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0243】
図21は、第4実施形態に係るマスク保持部材1及び検出システム5(第1検出システム5A)を説明するための模式図である。本実施形態の第1検出システム5Aのエンコーダシステム51は、マスクMを保持するマスク保持部材1を介した光を検出可能な第6エンコーダ51E及び第7エンコーダ51Tを備えている。第6、第7エンコーダ51E、51Tは、上述の第1〜第5エンコーダ51A〜51D、51Sと同等の構成を有する。
【0244】
マスク保持部材1のうち、中心軸J周りに配置された外周面1Fには、マスク保持部材1の外周面1Fの周方向(θX方向)における位置情報を取得するための位置検出用マークEM’が形成されている。位置検出用マークEM’は、エンコーダシステム51の第6エンコーダ51Eによって検出される。
【0245】
位置検出用マークEM’は、外周面1Fの周方向に連続的に形成されている。位置検出用マークEM’は、所定方向に沿って複数形成されたラインパターン(ラインアンドスペースパターン)を含む。位置検出用マークEM’は、X軸方向を長手方向とし、中心軸Jを囲むように、外周面1Fの周方向(θX方向)に沿って所定ピッチで複数形成されたラインパターンを含む。これらラインパターンは、エンコーダシステム51によって検出されるスケール(回折格子)として機能する。
【0246】
エンコーダシステム51の第6エンコーダ51Eは、位置検出用マークEM’を検出した検出結果に基づいて、マスクMを保持したマスク保持部材1の回転方向(θX方向)の位置情報を検出することができる。
【0247】
なお、位置検出用マークEM’をX軸方向に関して複数設け、それら複数の位置検出用マークEM’のそれぞれをエンコーダで検出することによって、エンコーダシステム51は、それら各エンコーダの検出結果に基づいて、外周面1FをXY平面上に展開した状態における外周面1FのX軸方向、Y軸方向(すなわち外周面1Fの周方向)、及びθZ方向における位置情報を取得可能である。
【0248】
また、マスク保持部材1の外周面1Fの所定位置には、エンコーダシステム51がマスク保持部材1の回転方向における位置を検出する際の基準位置として機能する基準マークEMS’が形成されている。基準マークEMS’は、マスク保持部材1の外周面1Fの周方向において一箇所に形成されている。マスク保持部材1の基準マークEMS’は、エンコーダシステム51の第7エンコーダ51Tによって検出される。
【0249】
マスク保持部材1が回転し、第7エンコーダ51Tの投光装置から投射される検出光の照射領域に基準マークEMS’が配置されると、受光装置の受光状態が変動する。制御装置6は、第7エンコーダ51Tにより基準マークEMS’を検出した検出結果に基づいて、マスク駆動装置2を制御して、マスクMを保持したマスク保持部材1の位置を、例えば基板Pの移動と同期してマスクMを回転する際の回転開始位置に設定することができる。
【0250】
また、上述の第1〜第3実施形態と同様、マスクMのパターン形成面MFのマーク形成領域MBには、基準マークEMSが形成されており、エンコーダシステム51は、そのマスクMの基準マークEMSを検出するための第5エンコーダ51Sを備えている。
【0251】
本実施形態においては、制御装置6は、第1検出システム5A(エンコーダシステム51)の第6、第7エンコーダ51E、51Tよりマスク保持部材1に投射され、そのマスク保持部材1を介した検出光の検出結果と、エンコーダシステム51の第5エンコーダ51SよりマスクMに投射され、そのマスクMを介した検出光の検出結果とに基づいて、マスク保持部材1とマスクMとの位置関係に関する情報を取得し、その取得した情報とマスク保持部材1を介した検出光の検出結果とに基づいて、マスクMのパターンMPの位置情報を取得し、その取得したパターンMPの位置情報に基づいて、マスクMのパターンMPの像を基板P上に形成する際のマスクMの中心軸J周りの駆動を制御する。
【0252】
本実施形態においては、制御装置6は、第7エンコーダ51T及び第5エンコーダ51Sを用いて、マスク保持部材1に形成された基準マークEMS’を介した検出光と、マスクMに形成された基準マークEMSを介した検出光とのそれぞれを検出することによって、マスク保持部材1とマスクMとの位置関係に関する情報を取得し、その取得した位置情報と、マスク保持部材1の基準マークEMS’を介した検出光の検出結果とに基づいて、マスクMのパターンMPの位置情報を取得する。
【0253】
具体的には、交換システム64を用いてマスクMをマスク保持部材1にロードした後、基板Pの露光を開始する前に、制御装置6は、第1検出システム5Aの第6エンコーダ51Eを用いてマスク保持部材1の位置検出用マークEM’を検出しつつ、第7エンコーダ51Tを用いてマスク保持部材1の基準マークEMS’を検出するとともに、第5エンコーダ51Sを用いてマスクMの基準マークEMSを検出する。これにより、制御装置6は、マスク保持部材1の基準マークEMS’とマスクMの基準マークEMSとの回転方向に関する位置関係、ひいてはマスク保持部材1とマスクM(パターンMP)との回転方向に関する位置関係を取得することができる。
【0254】
上述のように、マスク保持部材1の基準マークEMS’は、エンコーダシステム51がマスク保持部材1の位置検出用マークEM’を用いてマスク保持部材1の回転方向における位置を検出する際の基準位置として機能する。また、マスクMの基準マークEMSは、マスクMの各パターンMPに対して所定位置関係で形成されている。また、上述のように、マスク保持部材1とマスクMのパターンMPとの回転方向に関する位置関係が、基準マークEMS、EMS’を検出することによって予め取得される。したがって、制御装置6は、マスクMをマスク保持部材1にロードし、基準マークEMS、EMS’を検出することによってマスク保持部材1とマスクMのパターンMPとの回転方向に関する位置関係に関する情報を取得した後においては、第7エンコーダ51Tを用いてマスク保持部材1の基準マークEMS’を検出することによって、マスク保持部材1の基準マークRMS’に対して、マスクM上の各パターンMPがどこに位置しているのかを知ることができる。
【0255】
そして、制御装置6は、基板Pの露光を開始するために、第1検出システム5Aの第7エンコーダ51Tを用いて、基準マークEMS’を介した検出光を検出して、基板Pの移動と同期してマスクMを回転する際の回転開始位置に、マスクMを移動(回転)する。マスク保持部材1の基準マークEMS’とマスクMの基準マーク(回転開始位置マーク)EMSとの位置関係は、既に取得されているので、制御装置6は、第7エンコーダ51Tの検出結果に基づいて、マスクMを回転開始位置に配置可能である。
【0256】
そして、制御装置6は、エンコーダシステム51の第6エンコーダ51Eを用いて、マスク保持部材1の位置検出用マークEM’を検出して、マスク保持部材1の位置情報をモニタしつつ、マスク駆動装置2を制御して、マスクMを保持したマスク保持部材1を回転しながら、マスクMを露光光ELで照明する。また、制御装置6は、マスクMの回転と同期して、第2検出システム5Bを用いて基板Pの位置情報をモニタしつつ、基板駆動装置4を制御して、基板Pを保持した基板保持部材3を移動しながら、基板P上にマスクMを介した露光光ELを照射する。マスク保持部材1に形成されたマークEM’、EMS’と、マスクMにパターンMPに対して所定位置関係で形成されたマークEMSとは関連付けられており、制御装置6は、第6エンコーダ51Eを用いて、マスク保持部材1の位置情報をモニタすることによって、マスクMのパターンMPの位置情報を取得することができる。
【0257】
なお、本実施形態においては、マスク保持部材1に位置検出用マークEM’、基準マークEMS’が形成されているが、位置検出用マークEM’、基準マークEMS’等が形成される部材は、マスクMと所定位置関係に配置される所定の部材であれば、マスク保持部材1に限られない。
【0258】
<第5実施形態>
次に、第5実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0259】
上述の各実施形態においては、マスクMのパターンMPの位置情報を取得するためのマークEM、RM、EMS等は、外周面MFの所定領域に形成されているが、これらマークの少なくとも一部が、外周面MF以外の部分に形成されてもよい。
【0260】
図22は、第5実施形態に係るマスクM及び検出システム5(第1検出システム5A)を説明するための模式図である。上述の各実施形態と同様、マスクMの外周面MFには、その外周面MFの周方向に沿ってパターンMPが複数形成されている。そして、マスクMは、−X側の側面MSをマスク保持部材1に保持される。上述の各実施形態と同様、制御装置6は、基板PのY軸方向への移動と同期して、中心軸Jを回転軸としてマスクMを回転しつつ、複数のパターンMPの像を基板P上に順次形成する。
【0261】
本実施形態においては、マスクMのうち、マスク保持部材1と対向する−X側の側面MSとは反対側の+X側の側面に、パターンMPの回転方向(θX方向)における位置情報を取得するための位置検出用マークEMが形成されている。位置検出用マークEMは、マスクMの+X側の側面MSの所定領域(本実施形態においては側面MSの周縁領域)において、外周面MFに形成されているパターンMPに対して所定位置関係で中心軸J周りに複数形成されたラインパターン(マーク)を含む。各ラインパターンは、側面MSにおいて、中心軸Jから放射方向に沿うように形成されている。これらラインパターンは、エンコーダシステム51によって検出されるスケール(回折格子)として機能する。
【0262】
第1検出システム5Aのエンコーダシステム51は、マスクMの側面MSの所定領域においてパターンMPに対して所定位置関係で中心軸J周りに複数形成された位置検出用マークEMのラインパターンを検出可能な第8エンコーダ51Fを備えている。第8エンコーダ51Fは、上述の第1〜第7エンコーダと同等の構成を有する。
【0263】
また、マスクMの外周面MFのマーク形成領域MBには、上述の各実施形態と同様、回転開始位置マーク(基準マーク)EMSが形成されており、第1検出システム5Aのエンコーダシステム51は、その回転開始位置マークEMSを検出可能な第5エンコーダ51Sを備えている。
【0264】
回転開始位置マークEMSと位置検出用マークEMとの位置関係は既知であり、回転開始位置マークEMSは、エンコーダシステム51がマスクMの回転方向における位置を検出する際の基準位置(基準マーク)として機能する。制御装置6は、エンコーダシステム51の第8エンコーダ51Fを用いて、位置検出用マークEMを検出することによって、回転開始位置マークRMSを基準とした位置検出用マークEMの位置情報、ひいてはパターンMPの位置情報を検出することができる。
【0265】
制御装置6は、第8エンコーダ51Fを含むエンコーダシステム51を用いて位置検出用マークEMを介した検出光を検出して、マスクMが回転する際のパターンMPの位置情報を取得しつつ(モニタしつつ)、マスクMのパターンMPの像を基板P上に形成する際のマスクMの中心軸J周りの駆動を制御する。
【0266】
なお、上述の第1〜第5実施形態においては、エンコーダシステム51の各エンコーダが、被検出面(マスクMの外周面MF、マスク保持部材1の外周面1F等)に検出光を投射し、その被検出面で反射した検出光を受光することによって位置情報を取得する反射型エンコーダである場合を例にして説明したが、例えば図23に示すように、マスクMの外周面MFに対して検出光を投射する投光装置501’と、外周面MFを挟んで投光装置501’と対向するように配置され、外周面MFを透過した検出光を受光する受光装置502’とを備えた透過型エンコーダであってもよい。マスクMは円筒状であり、投光装置501’及び受光装置502’のいずれか一方をマスクMの内部空間MKに配置し、他方を外部空間に配置することができる。
【0267】
なお、上述の各実施形態においては、エンコーダシステム51の各エンコーダが、位置検出用マークEMを検出して、基準マークEMSに対する位置検出用マークEMの相対位置を取得する方式(インクリメンタル方式)のエンコーダである場合を例にして説明したが、例えば、パターン形成面MF等の被検出面の各位置に形成されるマーク(ライン)の構造を互いに異ならせることによって、各マークの絶対位置を取得可能な方式(アブソリュート方式)のエンコーダであってもよい。
【0268】
なお、上述の各実施形態においては、エンコーダシステム51の各エンコーダは光学式エンコーダであるが、磁気式エンコーダであってもよい。
【0269】
なお、上述の各実施形態において、円筒状(又は円柱状)のマスクMの曲率に応じて、投影光学系PLの結像特性(光学特性)を調整するようにしてもよい。例えば、使用するマスクMの曲率(直径)が変化する場合には、マスクMのパターンMPの像を基板P上に良好に露光するために、投影光学系PLに、例えば特開昭60−78454号公報、特開平11−195602号公報、国際公開第03/65428号パンフレット等に開示されているような、投影光学系PLの結像特性を調整可能な結像特性調整装置を設け、マスクMの曲率に応じて、結像特性調整装置を用いて、投影光学系PLの結像特性を調整するようにしてもよい。結像特性調整装置は、投影光学系PLを構成する複数の光学素子の一部を移動可能な光学素子駆動機構、及び投影光学系PLの鏡筒の内部に保持されている一部の光学素子どうしの間の空間の気体の圧力を調整する圧力調整機構等を含む。また、例えば、特開2005−311020号公報に開示されているように、投影光学系PLの複数の光学素子のうち、特定の光学素子に赤外光を照射することによって、投影光学系PLの結像特性を調整するようにしてもよい。また、マスクMの製造誤差等によって、マスクMの曲率が変化する可能性もあるが、その場合も、マスクMの曲率に応じて、上述のように投影光学系PLの結像特性を調整することによって、マスクMのパターンMPの像を基板P上に良好に形成することができる。
【0270】
なお、上述の各実施形態においては、マスクとして反射型のマスクを用いているが、透過型のマスクを用いてもよい。その場合、照明系ILは、例えばマスクMの最上部に露光光ELを照明する。そして、マスクMを通過し、マスクMの最下部BTを通過した露光光ELが、投影光学系PLに入射する。
【0271】
なお、上述の各実施形態においては、マスクMは円筒状であるが、円柱状であってもよい。この場合、マスク保持部材1のうち、保持面26よりも+X側に突出する突出部28、及び軸部材20の一部が省略される。
【0272】
なお、上述の各実施形態においては、パターンMPは、マスクMのパターン形成面MFの周方向に沿って複数形成されているが、例えば製造しようとするデバイス(ショット領域S)の大きさ等に応じて、必ずしもマスクMの周方向に沿って複数形成されていなくてもよい。
【0273】
なお、上述の各実施形態において、パターンMPは、マスクMの中心軸J方向(X軸方向)に沿って複数形成されていてもよい。
【0274】
なお、上述の各実施形態において、例えば国際公開第99/49504号パンフレットに開示されているような、液浸法を適用してもよい。すなわち、投影光学系PLと基板Pとの間の露光光ELの光路空間、換言すれば、投影光学系PLの先端の光学素子の像面(射出面)側の光路空間を液体で満たした状態で、基板P上に、マスクM、投影光学系PL、及び液体を介した露光光ELを照射して、マスクMのパターンMPの像を基板P上に投影するようにしてもよい。また、液浸法を適用する場合には、例えば国際公開第99/49504号パンフレットに開示されているような、基板P上の一部の領域に、投影領域ARを覆うように、投影領域ARよりも大きく且つ基板Pよりも小さい液体の液浸領域を形成する局所液浸方式を採用してもよいし、例えば特開平6−124873号公報、特開平10−303114号公報、米国特許第5,825,043号などに開示されているような露光対象の基板の表面全体が液体中に浸かっている状態で露光を行うグローバル液浸方式を採用してもよい。また、液体としては、水(純水)でもよいし、過フッ化ポリエーテル(PFPE)、フッ素系オイル等のフッ素系流体、セダー油など、水以外のものであってもよい。また、液浸法を適用する場合には、例えば国際公開第2004/019128号パンフレットに開示されているように、先端の光学素子の物体面(入射面)側の光路空間も液体で満たすようにしてもよい。
【0275】
なお、上述の各実施形態においては、露光光ELとしてArFエキシマレーザ光を用いているが、マスクMとして反射型マスクを用いる場合、露光光ELとして軟X線(EUV)を用いてもよい。反射型マスクのパターンMPは、例えば特開平7−153672号公報に開示されているように、EB露光機を用いたEB描画法に基づいて形成可能である。
反射型マスクは、石英、セラミックス等の基材上に、Mo、Si等を含む多層膜を形成し、その多層膜上に、Cr、W、Ta等を含むEUVに対して吸収性を有する吸収体パターンを形成することによって、形成可能である。
【0276】
なお、上記各実施形態の基板Pとしては、半導体デバイス製造用の半導体ウエハのみならず、ディスプレイデバイス用のガラス基板、薄膜磁気ヘッド用のセラミックウエハ、あるいは露光装置で用いられるマスクまたはレチクルの原版(合成石英、シリコンウエハ)等が適用される。
【0277】
露光装置EXとしては、マスクMの移動と同期して基板Pを移動しつつマスクMのパターンMPの像で基板Pを走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置(スキャニングステッパ)の他に、マスクMと基板Pとを静止した状態でマスクMのパターンMPの像で基板Pを一括露光し、基板Pを順次ステップ移動させるステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(ステッパ)にも適用することができる。
【0278】
さらに、ステップ・アンド・リピート方式の露光において、第1パターンと基板Pとをほぼ静止した状態で、投影光学系を用いて第1パターンの縮小像を基板P上に転写した後、第2パターンと基板Pとをほぼ静止した状態で、投影光学系を用いて第2パターンの縮小像を第1パターンと部分的に重ねて基板P上に一括露光してもよい(スティッチ方式の一括露光装置)。また、スティッチ方式の露光装置としては、基板P上で少なくとも2つのパターンを部分的に重ねて転写し、基板Pを順次移動させるステップ・アンド・スティッチ方式の露光装置にも適用できる。
【0279】
また、本発明は、特開平10−163099号公報、特開平10−214783号公報、特表2000−505958号公報などに開示されているような複数の基板ステージを備えたマルチステージ型(ツインステージ型)の露光装置にも適用できる。
【0280】
更に、例えば特開平11−135400号公報(対応国際公開第1999/23692号パンフレット)、特開2000−164504号公報(対応米国特許第6,897,963号)等に開示されているように、基板を保持する基板ステージと基準マークが形成された基準部材及び/又は各種の光電センサを搭載した計測ステージとを備えた露光装置にも本発明を適用することができる。
【0281】
露光装置EXの種類としては、基板Pに半導体素子パターンを露光する半導体素子製造用の露光装置に限られず、液晶表示素子製造用又はディスプレイ製造用の露光装置、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD)、マイクロマシン、MEMS、DNAチップ、あるいはレチクル又はマスクなどを製造するための露光装置などにも広く適用できる。
【0282】
また、例えば特表2004−519850号公報(対応米国特許第6,611,316号)に開示されているように、2つのマスクのパターンを、投影光学系を介して基板上で合成し、1回の走査露光によって基板上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置などにも本発明を適用することができる。
【0283】
以上のように、本願実施形態の露光装置EXは、本願請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
【0284】
半導体デバイス等のマイクロデバイスは、図24に示すように、マイクロデバイスの機能・性能設計を行うステップ201、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ202、デバイスの基材である基板を製造するステップ203、上述の実施形態に従って、マスクのパターンの像で基板に露光し、露光した基板を現像する基板処理(露光処理)を含む基板処理ステップ204、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程などの加工プロセスを含む)205、検査ステップ206等を経て製造される。
【符号の説明】
【0285】
1…マスク保持部材、2…マスク駆動装置、3…基板保持部材、4…基板駆動装置、5…検出システム、5A…第1検出システム、5B…第2検出システム、6…制御装置、EM…位置計測用マーク、EMS…回転開始位置マーク、EL…露光光、EX…露光装置、IL…照明系、J…中心軸、M…マスク、MA…パターン形成領域、MB…マーク形成領域、MF…パターン形成面、MP…パターン、MS…側面、P…基板、PL…投影光学系、RM…アライメントマーク、S(S1〜S26)…ショット領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定軸周りに回転しつつ基板上にパターンの像を形成するためのマスクであって、
前記パターンが形成され、前期所定軸周りに配置されたパターン形成面と、
前記パターン形成面の所定領域に前記パターンに対して所定位置関係で形成された位置情報を取得するためのマークと、を備えたマスク。
【請求項2】
前記マークは、前記パターン形成面の周方向に連続的に形成されている請求項1記載のマスク。
【請求項3】
前記マークは、前記パターン形成面の周方向に断続的に形成されている請求項1記載のマスク。
【請求項4】
前記マークは、所定方向に沿って複数形成されたラインパターンを含む請求項1〜3のいずれか一項記載のマスク。
【請求項5】
前記パターンは複数形成されており、前記マークは前記複数のパターンのそれぞれに対応するように形成されている請求項1〜4のいずれか一項記載のマスク。
【請求項6】
前記マークは、前記パターン形成面の周方向における前記パターンの位置情報、及び前記所定軸方向における前記パターンの位置情報の少なくとも一方を取得するためのマークを含む請求項1〜5のいずれか一項記載のマスク。
【請求項7】
前記周方向における前記パターンの位置情報に基づいて、前記マスクのパターンの像を前記基板上に形成する際の前記マスクの前記所定軸周りの駆動が制御される請求項6記載のマスク。
【請求項8】
前記基板上には前記パターンの像が形成されるショット領域が設けられ、
前記マークは、前記パターンの像と前記ショット領域との位置関係に関する情報を取得するためのマークを含む請求項1〜5のいずれか一項記載のマスク。
【請求項9】
前記パターンは、前記パターン形成面の周方向に沿って複数形成されており、
前記基板の所定の一次元方向への移動と同期して、前記パターン形成面が前記所定軸を回転軸として回転されつつ、前記複数のパターンの像が前記基板上に順次形成され、
前記マークは、前記基板の移動と同期して前記パターン形成面が回転する際の回転開始位置に関する情報を取得するためのマークを含む請求項1〜5のいずれか一項記載のマスク。
【請求項10】
パターンの像で基板を露光する露光装置において、
前記パターンが形成され、所定軸周りに配置されたパターン形成面を有するマスクを、前記所定軸を回転軸として回転可能なマスク駆動装置と、
前記マスクを介した光を検出し、前記検出結果に基づいて、前記パターンに関する位置情報を取得する検出システムと、を備えた露光装置。
【請求項11】
前記検出システムは、前記マスクが回転している状態で、前記光を検出する請求項10記載の露光装置。
【請求項12】
前記マスクの回転と同期して、前記基板を少なくとも所定の一次元方向に移動可能な基板駆動装置を備えた請求項10又11記載の露光装置。
【請求項13】
前記検出システムは、前記パターンの6自由度の方向の位置情報を取得する請求項10〜12のいずれか一項記載の露光装置。
【請求項14】
前記検出システムは、前記パターン形成面の所定領域に前記パターンに対して所定位置関係で形成されたマークを介した光を検出し、前記検出結果に基づいて、前記パターンに関する位置情報を取得する請求項10〜13のいずれか一項記載の露光装置。
【請求項15】
前記マークは、前記パターン形成面の周方向に連続的に形成されている請求項14記載の露光装置。
【請求項16】
前記マークは、前記パターン形成面の周方向に断続的に形成されている請求項14記載の露光装置。
【請求項17】
前記マークは、所定方向に沿って複数形成されたラインパターンを含む請求項14〜16のいずれか一項記載の露光装置。
【請求項18】
前記パターンは複数形成されており、前記マークは前記複数のパターンのそれぞれに対応するように形成されている請求項14〜17のいずれか一項記載の露光装置。
【請求項19】
前記検出システムは、前記マークを介した光を検出して、前記パターン形成面の周方向における前記パターンの位置情報、及び前記所定軸方向における前記パターンの位置情報の少なくとも一方を取得する請求項14〜18のいずれか一項記載の露光装置。
【請求項20】
前記パターンの位置情報に基づいて、前記マスクのパターンの像を前記基板上に形成する際の前記マスクの前記所定軸周りの駆動が制御される請求項19記載の露光装置。
【請求項21】
前記検出システムは、前記所定軸と垂直な方向における前記マスクの表面の位置情報を取得する請求項10記載の露光装置。
【請求項22】
前記基板上には前記パターンの像が形成されるショット領域が設けられ、
前記検出システムは、前記マークを介した光を検出して、前記パターンの像と前記ショット領域との位置関係に関する情報を取得する請求項14〜18のいずれか一項記載の露光装置。
【請求項23】
前記パターンは、前記パターン形成面の周方向に沿って複数形成されており、
前記基板の所定の一次元方向への移動と同期して、前記所定軸を回転軸として前記マスクを回転しつつ、前記複数のパターンの像が前記基板上に順次形成され、
前記検出システムは、前記マークを介した光を検出して、前記基板の移動と同期して前記マスクが回転する際の回転開始位置に関する情報を取得する請求項14〜18のいずれか一項記載の露光装置。
【請求項24】
前記検出システムは、前記パターン形成面の周方向における複数位置での前記マークを介した光を検出し、前記検出結果に基づいて取得した前記マークの位置情報と、前記マスクの回転速度情報とに基づいて、前記パターン形成面の周方向における前記パターンの位置情報を取得する請求項14〜18のいずれか一項記載の露光装置。
【請求項25】
前記検出システムは、前記マスクとは別の所定部材を介した光を検出可能であり、
前記所定部材を介した光の検出結果と前記マスクを介した光の検出結果とに基づいて、前記所定部材と前記マスクとの位置関係に関する情報を取得し、該情報と前記所定部材を介した光の検出結果とに基づいて、前記パターンの位置情報を取得する請求項10〜24のいずれか一項記載の露光装置。
【請求項26】
前記検出システムは、前記所定部材に形成された第1基準マークを介した光と前記マスクに形成された第2基準マークを介した光とのそれぞれを検出することによって、前記所定部材と前記マスクとの位置関係に関する情報を取得し、該情報と前記第1基準マークを介した光の検出結果とに基づいて、前記パターンの位置情報を取得する請求項25記載の露光装置。
【請求項27】
前記所定部材は、前記マスクを保持する保持部材を含む請求項25又は26記載の露光装置。
【請求項28】
前記パターンは、前記パターン形成面の周方向に沿って複数形成されており、
前記基板の所定の一次元方向への移動と同期して、前記所定軸を回転軸として前記マスクを回転しつつ、前記複数のパターンの像が前記基板上に順次形成され、
前記検出システムは、前記マスクの所定領域において前記パターンに対して所定位置関係で前記所定軸周りに複数形成されたマークを検出可能であり、
前記検出システムを用いて前記マークを介した光を検出して、前記マスクが回転する際の前記パターンの位置情報を取得しつつ、前記マスクのパターンの像を前記基板上に形成する際の前記マスクの前記所定軸周りの駆動及び前記基板の駆動の少なくとも一方が制御される請求項14〜18のいずれか一項記載の露光装置。
【請求項29】
前記検出システムは、エンコーダシステムを含む請求項26〜28のいずれか一項記載の露光装置。
【請求項30】
前記検出システムは、前記パターン形成面に光を照射するとともに該パターン形成面を介した前記光を検出し、前記検出結果に基づいて、前記パターン形成面の面位置情報を取得する請求項10〜29のいずれか一項記載の露光装置。
【請求項31】
請求項10〜請求項30のいずれか一項記載の露光装置を用いるデバイス製造方法。
【請求項32】
パターンの像で基板を露光する露光方法において、
前記パターンが形成され、所定軸周りに配置されたパターン形成面を有するマスクを、前記所定軸を回転軸として回転しつつ、前記パターンを露光光で照明する動作と、
前記マスクを介した光を検出し、前記検出結果に基づいて、前記パターンに関する位置情報を取得する動作と、
前記取得した位置情報に基づいて、前記マスク及び前記基板の少なくとも一方の位置を調整しつつ、前記基板上に前記マスクを介した前記露光光を照射する動作と、を含む露光方法。
【請求項33】
請求項32記載の露光方法を用いるデバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2012−248864(P2012−248864A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−160504(P2012−160504)
【出願日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【分割の表示】特願2006−254614(P2006−254614)の分割
【原出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】