説明

静圧気体軸受装置

【課題】 焼付きを生じ得る程度の被軸受部材と静圧気体軸受との接触を未然に防止することのできる静圧気体軸受装置及びこれに用いられる限界荷重検知装置を提供すること。
【解決手段】 静圧気体軸受装置1は、回転軸2の被軸受面3と協働して軸受隙間4を形成する軸受面5から被軸受面3に向かって噴出する高圧気体に基づく軸受隙間4における気体圧力により回転軸2を支える導電性の多孔質静圧気体軸受7と、回転軸2及び多孔質静圧気体軸受7に電気的に接続されると共に、軸受隙間4における回転軸2と多孔質静圧気体軸受7との電気的接触に基づいて回転軸2から多孔質静圧気体軸受7に加えられる負荷荷重が限界に至った旨を検知する限界荷重検知装置8と、回転軸2を回転駆動させる駆動手段9と、限界荷重検知装置8による検知に基づいて駆動手段9による回転軸2の回転駆動を制御する駆動制御手段10とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸等の被軸受部材から静圧気体軸受、特に多孔質静圧気体軸受に加えられる負荷荷重の限界を検知する限界荷重検知装置を具備した静圧気体軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の静圧気体軸受装置としては、例えば、非接触変位センサのみにより被軸受部材としての回転軸と静圧気体軸受との軸受隙間(軸受間隙)の幅の変化を検知(検出)する静圧気体軸受装置が特許文献1において提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−147225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、斯かる静圧気体軸受装置では、非接触変位センサのみにより軸受隙間の幅の変化を検知するようになっているために、非接触変位センサ周りの環境変化等の影響により非接触変位センサによる検知結果と現実の軸受隙間の幅の変化とに誤差が生じる虞があり、而して、回転軸等の被軸受部材の被軸受面と静圧気体軸受の軸受面との焼付きを生じ得る程度の接触を未然に防止することが困難である。
【0005】
本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、焼付きを生じ得る程度の被軸受部材と静圧気体軸受との接触を未然に防止することのできる静圧気体軸受装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様の静圧気体軸受装置は、導電性の被軸受部材の被軸受面と協働して軸受隙間を形成する軸受面から被軸受面に向かって噴出する高圧気体に基づく軸受隙間における気体圧力により被軸受部材を支える導電性の多孔質静圧気体軸受と、被軸受部材及び多孔質静圧気体軸受に電気的に接続されると共に、被軸受部材及び多孔質静圧気体軸受の相対的な変位による軸受隙間における被軸受部材と多孔質静圧気体軸受との電気的接触に基づいて被軸受部材から多孔質静圧気体軸受に加えられる負荷荷重が限界に至った旨を検知する限界荷重検知装置とを具備している。
【0007】
第一の態様の静圧気体軸受装置によれば、回転軸等からなる被軸受部材へのラジアル方向の意図しない過負荷により被軸受部材と多孔質静圧気体軸受とが軸受隙間において互いに接触した場合に、周囲の環境変化等の影響を受けずにこれを正確に検知することができる結果、焼付きを生じ得る程度の被軸受部材と静圧気体軸受との接触を未然に防止することができる。
【0008】
本発明の第二の態様の静圧気体軸受装置では、第一の態様の静圧気体軸受装置において、多孔質静圧気体軸受は、軸受面に開口を夫々有していると共に当該開口から高圧気体が噴出される複数の細孔と、この細孔の開口を少なくとも部分的に画成していると共に、開口から噴出する高圧気体により被軸受面に向かって突出され得るように変形可能な展延部とを有している多孔質体を具備している。
【0009】
第二の態様の静圧気体軸受装置によれば、複数の細孔の開口から噴出される高圧気体に対して展延部によりいわゆる絞り機能を発揮させ得る上に、複数の細孔の開口から噴出される高圧気体に基づいて被軸受面に向かって突出される展延部の被軸受面への電気的な接触でもって負荷荷重の限界を予め検出することができる結果、軸受面への被軸受面の全体的な接触を回避でき、而して、焼付きを生じ得る程度の被軸受部材と静圧気体軸受との接触を更に効果的に未然に防止することができる。
【0010】
本発明の第三の態様の静圧気体軸受装置では、第二の態様の静圧気体軸受装置において、多孔質体は、軸受面で露出している金属部分及び無機質部分を具備しており、展延部は金属部分からなる。
【0011】
第三の態様の静圧気体軸受装置によれば、例えば、被軸受面に対面する多孔質体の面を研削加工した際に展延される金属部分を展延部としてそのまま用いることができる。
【0012】
本発明の第四の態様の静圧気体軸受装置では、第三の態様の静圧気体軸受装置において、軸受面で露出している金属部分は無機質部分で分断されている。
【0013】
本発明の第五の態様の静圧気体軸受装置では、第三又は第四の態様の静圧気体軸受装置において、金属部分は、錫、燐及び銅のうちの少なくとも一つを含んでおり、無機質部分は、黒鉛、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、フッ化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素及び炭化ケイ素のうちの少なくとも一つを含んでいる。
【0014】
本発明の第六の態様の第五の態様の静圧気体軸受装置では、第五の態様の静圧気体軸受装置において、金属部分は、更に、ニッケル、クロム及びマンガンのうちの少なくとも一つを含んでいる。
【0015】
本発明の第七の態様の静圧気体軸受装置では、第二から第六のいずれかの態様の静圧気体軸受装置において、多孔質静圧気体軸受は、多孔質体が焼結された裏金を更に具備している。
【0016】
本発明の第八の態様の静圧気体軸受装置では、第二から第七のいずれかの態様の静圧気体軸受装置において、限界荷重検知装置は、被軸受面と展延部との電気的な接触に基づいて、被軸受部材から多孔質静圧気体軸受に加えられる負荷荷重が限界に至った旨の検知信号を生成するようになっている。
【0017】
本発明の第九の態様の静圧気体軸受装置は、第一から第八のいずれかの態様の静圧気体軸受装置において、限界荷重検知装置による検知に基づいて軸受隙間における気体圧力を制御する気体圧力制御手段を更に具備している。
【0018】
第九の態様の静圧気体軸受装置によれば、限界荷重検知装置により負荷荷重が限界に至った旨を検知した際に、気体圧力制御手段により軸受隙間における気体圧力を制御する結果、作業停止等の甚大な影響を及ぼす被軸受部材の駆動停止等を行わなくても、焼付きを生じ得る程度の被軸受部材と静圧気体軸受との接触を更に効果的に未然に防止することができる。
【0019】
本発明の第十の態様の静圧気体軸受装置では、第九の態様の静圧気体軸受装置において、気体圧力制御手段は、限界荷重検知装置による検知に基づいて軸受隙間における気体圧力を増圧又は減圧させるようになっている。
【0020】
本発明の第十一の態様の静圧気体軸受装置では、第九又は第十の態様の静圧気体軸受装置において、気体圧力制御手段は、限界荷重検知装置による検知の回数が予め設定した設定回数に至った場合に、軸受隙間における気体圧力を制御するようになっている。
【0021】
本発明の第十二の態様の静圧気体軸受装置では、第十一の態様の静圧気体軸受装置において、気体圧力制御手段は、限界荷重検知装置による検知の回数が予め設定した設定時間内に設定回数に至った場合に、軸受隙間における気体圧力を制御するようになっている。
【0022】
第十一又は第十二の態様の静圧気体軸受装置によれば、偶発的であって瞬時的な被軸受部材と多孔質静圧気体軸受との電気的接触に応答する無駄な気体圧力の制御を回避できる。
【0023】
本発明の第十三の態様の静圧気体軸受装置は、第一から第十二のいずれかの態様の静圧気体軸受装置において、被軸受部材を駆動させる駆動手段と、限界荷重検知装置による検知に基づいて駆動手段による被軸受部材の駆動を制御する駆動制御手段とを更に具備している。
【0024】
第十三の態様の静圧気体軸受装置によれば、限界荷重検知装置により負荷荷重が限界に至った旨を検知した際に、駆動制御手段により被軸受部材の駆動を制御する結果、焼付きを生じ得る程度の被軸受部材と静圧気体軸受との接触を更に効果的に未然に防止することができる。
【0025】
本発明の第十四の態様の静圧気体軸受装置では、第十三の態様の静圧気体軸受装置において、駆動制御手段は、限界荷重検知装置による検知に基づいて駆動手段による被軸受部材の駆動を停止させるようになっている。
【0026】
本発明の第十五の態様の静圧気体軸受装置では、第十三又は第十四の態様の静圧気体軸受装置において、駆動制御手段は、限界荷重検知装置による検知の回数が予め設定した設定回数に至った場合に、駆動手段による被軸受部材の駆動を制御するようになっている。
【0027】
本発明の第十六の態様の静圧気体軸受装置では、第十五の態様の静圧気体軸受装置において、駆動制御手段は、限界荷重検知装置による検知の回数が予め設定した設定時間内に設定回数に至った場合に、駆動手段による被軸受部材の駆動を制御するようになっている。
【0028】
第十五又は第十六の態様の静圧気体軸受装置によれば、第十一又は第十二の態様のそれと同様に、偶発的であって瞬時的な被軸受部材と多孔質静圧気体軸受との電気的接触に応答する無駄な被軸受部材の駆動の制御を回避できる。
【0029】
本発明では、被軸受部材の変位に基づく軸受隙間の幅又は当該幅の変化を検出する検出手段を限界荷重検知装置に加えて更に具備していてもよく、斯かる検出手段の検出結果に基づいて軸受隙間における気体圧力を増圧若しくは減圧させ又は被軸受部材の駆動を制御することにより被軸受部材のより精確な作動を実現し得る。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、焼付きを生じ得る程度の被軸受部材と静圧気体軸受との接触を未然に防止することのできる静圧気体軸受装置を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は本発明の実施の形態の例の説明図である。
【図2】図2は図1に示す例の主に多孔質静圧気体軸受の斜視説明図である。
【図3】図3は図1に示す例の一部拡大説明図である。
【図4】図4は図1に示す例の一部拡大動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に、本発明の実施の形態の例を、図に示す好ましい例に基づいて更に詳細に説明する。尚、本発明はこれらの例に何等限定されないのである。
【実施例】
【0033】
図1から図4において、本例の静圧気体軸受装置1は、導電性の被軸受部材としての回転軸2の被軸受面3と協働して軸受隙間4を形成する軸受面5から被軸受面3に向かって噴出する高圧気体(高圧空気)に基づく軸受隙間4における気体圧力により回転軸2を支える導電性の多孔質静圧気体軸受7と、回転軸2及び多孔質静圧気体軸受7に電気的に接続されると共に、回転軸2及び多孔質静圧気体軸受7の相対的な変位による軸受隙間4における回転軸2と多孔質静圧気体軸受7との電気的接触に基づいて回転軸2から多孔質静圧気体軸受7に加えられる負荷荷重が限界に至った旨を検知する限界荷重検知装置8と、回転軸2を駆動、本例では回転駆動させる駆動手段9と、限界荷重検知装置8による検知に基づいて駆動手段9による回転軸2の回転駆動を制御する駆動制御手段10とを具備している。
【0034】
回転軸2は、金属製の円柱状又は円筒状部材からなり、被軸受面3は、回転軸2の外周面からなる。回転軸2は、少なくとも被軸受面3が導電性を有していればよく、例えば、回転軸2の外周面以外の部位が導電性を有していない部材から構成されていてもよい。
【0035】
駆動手段9は、本例では、電動モータ11と、電動モータ11の出力回転軸と回転軸2の一端とを連結している連結機構12とを具備しており、電動モータ11の作動により連結機構12を介して回転軸2を回転させるようになっている。
【0036】
多孔質静圧気体軸受7は、多孔質体としての多孔質金属焼結体15と、多孔質金属焼結体15が嵌装された裏金16とを具備している。
【0037】
多孔質金属焼結体15は、円筒形状を有しており、多孔質金属焼結体15の円筒状の内周面は、軸受面(ラジアル軸受面)5として構成されている。多孔質金属焼結体15は、軸受面5に開口13を夫々有していると共に開口13から高圧気体が噴出される複数、本例では多数の細孔14と、細孔14の開口13を少なくとも部分的に画成していると共に、開口13から噴出する高圧気体により被軸受面3に向かって突出され得るように変形可能な展延部18とを具備している。軸受面5における展延部18は、開口13を絞っているもの、開口13を塞いでいるもの及び無機質部分22で分断されているもの等からなる。展延部18は、高圧気体供給源(図示せず)から多孔質静圧気体軸受7に対して高圧気体が供給されていない場合には、被軸受面3に向かって突出していない状態又は高圧気体の供給時と比較して被軸受面3に向かってあまり突出していない状態であってもよい。高圧気体の開口13からの噴出に基づいて被軸受面3に向かって突出する展延部18の突出長L1は、3μm程度から5μm程度である。軸受隙間4は、本例では約10μm程度の幅L2を有している。
【0038】
多孔質金属焼結体15の外周面29には環状凹所30が形成されており、裏金16の内周面31によって蓋された環状凹所30は、多孔質金属焼結体15の細孔14へ高圧気体を供給する環状供給路32を形成している。
【0039】
多孔質金属焼結体15は、導電性を有する金属部分21及び無機質部分22を具備している。軸受面5で露出している金属部分21は、軸受面5で露出している無機質部分22で分断されている。展延部18は、軸受面4で露出している金属部分21からなる。
【0040】
金属部分21は、本例では、錫、燐、銅及びニッケルからなるが、例えば、錫、燐及び銅のうちの少なくとも一つを含んで構成されていてもよく、また、錫、燐及び銅のうちの少なくとも一つに加えて、ニッケル、クロム及びマンガンのうちの少なくとも一つを更に含んで構成されていてもよい。
【0041】
無機質部分22は、本例では、黒鉛からなるが、例えば、黒鉛、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、フッ化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素及び炭化ケイ素のうちの少なくとも一つを含んで構成されていてもよい。
【0042】
裏金16は、多孔質金属焼結体15が内部に嵌装された金属製の剛性の円筒体からなるり、環状供給路32に連通すると共にねじが切られた貫通孔33を具備しており、貫通孔33に気体供給プラグが取付けられるようになっている。裏金16の内周面31がぴったりと多孔質金属焼結体15の外周面29に接触していることにより、細孔14の外周面29における開口が封止されている。
【0043】
多孔質静圧気体軸受7において、貫通孔33に供給された高圧気体は環状供給路32に供給され、環状供給路32に供給された高圧気体は、多孔質金属焼結体15の細孔14を介して開口13から噴出されて、軸受面5と被軸受面3との間の軸受隙間4に高圧気体膜を形成し、而して、多孔質静圧気体軸受7は、被軸受面3を有した回転軸2をラジアル方向において高圧気体膜を介して回転自在に支持する。
【0044】
限界荷重検知装置8は、被軸受面3と展延部18との図4に示すような電気的な接触(短絡)を検出して、この検出により回転軸2から多孔質静圧気体軸受7に加えられる負荷荷重が限界に至った旨の検知信号を生成し、この検知信号を駆動制御手段10に送出するようになっている。
【0045】
駆動制御手段10は、例えば、マイクロコンピュータ等により具体化され、限界荷重検知装置8からの検知信号を受け取ると、駆動手段9による回転軸2の回転駆動を制御するようになっている。
【0046】
駆動制御手段10は、限界荷重検知装置8からの検知信号に基づいて回転軸2の単位時間当たりの回転数を低下させるように電動モータ11の作動を制御するようになっていてもよく、また、限界荷重検知装置8による検知に基づいて回転軸2の回転を停止させるように電動モータ11の作動を制御するようになっていてもよい。
【0047】
駆動制御手段10は、限界荷重検知装置8からの検知信号の回数が予め設定した設定時間内に設定回数に至った場合に、駆動手段9による回転軸2の回転駆動を制御するようになっていても、斯かる設定時間を設けずに、限界荷重検知装置8からの検知信号の回数が予め設定した設定回数に至った場合に、駆動手段9による回転軸2の回転駆動を制御するようになっていてもよい。
【0048】
静圧気体軸受装置1は、例えば、軸受隙間4における気体圧力により回転軸2を回転自在に支持している場合に、ラジアル方向の過負荷により回転軸2がラジアル方向に変位されて展延部18が被軸受面3に展延部18以外の軸受面5の部位よりも先に電気的に接触すると、限界荷重検知装置8により検知信号が生成され、生成された検知信号に基づき駆動制御手段10による制御を行うようになっている。
【0049】
導電性の回転軸2の被軸受面3と協働して軸受隙間4を形成する軸受面5から被軸受面3に向かって噴出する高圧気体に基づく軸受隙間4における気体圧力により回転軸2を支える導電性の多孔質静圧気体軸受7と、回転軸2及び多孔質静圧気体軸受7に電気的に接続されていると共に、回転軸2及び多孔質静圧気体軸受7の相対的な変位による軸受隙間4における回転軸2と多孔質静圧気体軸受7との電気的接触に基づいて回転軸2から多孔質静圧気体軸受7に加えられる負荷荷重が限界に至った旨を検知する限界荷重検知装置8とを具備している以上の静圧気体軸受装置1によれば、回転軸2にラジアル方向の意図しない過大負荷が生じ、回転軸2と多孔質静圧気体軸受7とが軸受隙間4において互いに電気的に接触した場合に、周囲の環境変化等の影響を受けずにこれを正確に検知することができ、而して、焼付きを生じ得る程度の回転軸2と多孔質静圧気体軸受7との接触を未然に防止することができる。
【0050】
静圧気体軸受装置1によれば、多孔質静圧気体軸受7が、軸受面5に開口13を夫々有していると共に開口13から高圧気体が噴出される多数の細孔14と、細孔14の開口13を少なくとも部分的に画成していると共に、開口13から噴出する高圧気体により被軸受面3に向かって突出され得るように変形可能な展延部18とを有している多孔質金属焼結体15を具備しているために、複数の細孔14の開口13から噴出される高圧気体に対して展延部18によりいわゆる絞り機能を発揮させ得る上に、複数の細孔14の開口13から噴出される高圧気体に基づいて被軸受面3に向かって突出される展延部18の被軸受面3への電気的な接触でもって負荷荷重の限界を予め検出することができる結果、軸受面5への被軸受面3の全体的な接触を回避でき、而して、焼付きを生じ得る程度の回転軸2と多孔質静圧気体軸受7との接触を更に効果的に未然に防止することができる。
【0051】
静圧気体軸受装置1によれば、多孔質金属焼結体15が、軸受面5で露出している金属部分21及び無機質部分22を具備しており、展延部18は、金属部分21からなるために、例えば、被軸受面3に対面する多孔質金属焼結体15の面(内周面)を研削加工した際に展延される金属部分21を、開口13を少なくとも部分的に画成していると共に開口13から噴出される高圧気体を受けて突出され得る展延部18としてそのまま構成し得る。
【0052】
静圧気体軸受装置1によれば、限界荷重検知装置8により負荷荷重が限界に至った旨を検知した際に、駆動制御手段9により回転軸2の回転駆動を制御する結果、焼付きを生じ得る程度の回転軸2と静圧気体軸受7との接触を更に効果的に未然に防止することができる。
【0053】
静圧気体軸受装置1は、駆動制御手段10に代えて又はこれに加えて、限界荷重検知装置8による検知に基づいて軸受隙間4における気体圧力を増圧又は減圧させるように制御するマイクロコンピュータ等からなる気体圧力制御手段(図示せず)を具備していてもよく、斯かる気体圧力制御手段は、限界荷重検知装置8による検知の回数が予め設定した設定回数に至った場合に、軸受隙間4における気体圧力を制御するようになっていてもよく、また、限界荷重検知装置8による検知の回数が予め設定した設定時間内に設定回数に至った場合に、軸受隙間4における気体圧力を制御するようになっていてもよい。斯かる気体圧力制御手段を具備している場合には、作業停止等の甚大な影響を及ぼす回転軸2の回転駆動停止等を行わなくても、焼付きを生じ得る程度の回転軸2と静圧気体軸受7との接触を更に効果的に未然に防止することができる。
【0054】
また、静圧気体軸受装置1は、上述の構成に加えて、軸受隙間4の幅L2又は幅L2の変化を検出する検出手段(図示せず)を更に具備していてもよく、斯かる場合には、検出手段による検出に基づいて軸受隙間4における気体圧力を増圧又は減圧させる手段を更に具備していてもよい。検出手段は、例えば、光学式、静電容量式又は渦電流式等の非接触センサからなっていてもよい。
【0055】
上記の静圧気体軸受装置1では回転軸2をラジアル方向に関して支持するように構成したが、これに代えて又はこれと共に回転軸2をスラスト方向に関して支持するように静圧気体軸受装置を構成してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 静圧気体軸受装置
2 回転軸
3 被軸受面
4 軸受隙間
5 軸受面
7 多孔質静圧気体軸受
8 限界荷重検知装置
9 駆動手段
10 制御手段
13 開口
14 細孔
18 展延部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の被軸受部材の被軸受面と協働して軸受隙間を形成する軸受面から被軸受面に向かって噴出する高圧気体に基づく軸受隙間における気体圧力により被軸受部材を支える導電性の多孔質静圧気体軸受と、被軸受部材及び多孔質静圧気体軸受に電気的に接続されると共に、被軸受部材及び多孔質静圧気体軸受の相対的な変位による軸受隙間における被軸受部材と多孔質静圧気体軸受との電気的接触に基づいて被軸受部材から多孔質静圧気体軸受に加えられる負荷荷重が限界に至った旨を検知する限界荷重検知装置とを具備している静圧気体軸受装置。
【請求項2】
多孔質静圧気体軸受は、軸受面に開口を夫々有していると共に当該開口から高圧気体が噴出される複数の細孔と、この細孔の開口を少なくとも部分的に画成していると共に、開口から噴出する高圧気体により被軸受面に向かって突出され得るように変形可能な展延部とを有している多孔質体を具備している請求項1に記載の静圧気体軸受装置。
【請求項3】
多孔質体は、軸受面で露出している金属部分及び無機質部分を具備しており、展延部は金属部分からなる請求項2に記載の静圧気体軸受装置。
【請求項4】
軸受面で露出している金属部分は無機質部分で分断されている請求項3に記載の静圧気体軸受装置。
【請求項5】
金属部分は、錫、燐及び銅のうちの少なくとも一つを含んでおり、無機質部分は、黒鉛、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、フッ化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素及び炭化ケイ素のうちの少なくとも一つを含んでいる請求項3又は4に記載の静圧気体軸受装置。
【請求項6】
金属部分は、更に、ニッケル、クロム及びマンガンのうちの少なくとも一つを含んでいる請求項5に記載の静圧気体軸受装置。
【請求項7】
多孔質静圧気体軸受は、多孔質体が焼結された裏金を更に具備している請求項2から6のいずれか一項に記載の静圧気体軸受装置。
【請求項8】
限界荷重検知装置は、被軸受面と展延部との電気的な接触に基づいて被軸受部材から多孔質静圧気体軸受に加えられる負荷荷重が限界に至った旨の検知信号を生成するようになっている請求項2から7のいずれか一項に記載の静圧気体軸受装置。
【請求項9】
限界荷重検知装置による検知に基づいて軸受隙間における気体圧力を制御する気体圧力制御手段を更に具備している請求項1から8のいずれか一項に記載の静圧気体軸受装置。
【請求項10】
気体圧力制御手段は、限界荷重検知装置による検知に基づいて軸受隙間における気体圧力を増圧又は減圧させるようになっている請求項9に記載の静圧気体軸受装置。
【請求項11】
気体圧力制御手段は、限界荷重検知装置による検知の回数が予め設定した設定回数に至った場合に、軸受隙間における気体圧力を制御するようになっている請求項9又は10に記載の静圧気体軸受装置。
【請求項12】
気体圧力制御手段は、限界荷重検知装置による検知の回数が予め設定した設定時間内に設定回数に至った場合に、軸受隙間における気体圧力を制御するようになっている請求項11に記載の静圧気体軸受装置。
【請求項13】
被軸受部材を駆動させる駆動手段と、限界荷重検知装置による検知に基づいて駆動手段による被軸受部材の駆動を制御する駆動制御手段とを更に具備している請求項1から12のいずれか一項に記載の静圧気体軸受装置。
【請求項14】
駆動制御手段は、限界荷重検知装置による検知に基づいて駆動手段による被軸受部材の駆動を停止させるようになっている請求項13に記載の静圧気体軸受装置。
【請求項15】
駆動制御手段は、限界荷重検知装置による検知の回数が予め設定した設定回数に至った場合に、駆動手段による被軸受部材の駆動を制御するようになっている請求項13又は14に記載の静圧気体軸受装置。
【請求項16】
駆動制御手段は、限界荷重検知装置による検知の回数が予め設定した設定時間内に設定回数に至った場合に、駆動手段による被軸受部材の駆動を制御するようになっている請求項15に記載の静圧気体軸受装置。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載の静圧気体軸受装置の多孔質静圧気体軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−19425(P2010−19425A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−242213(P2009−242213)
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【分割の表示】特願2004−13367(P2004−13367)の分割
【原出願日】平成16年1月21日(2004.1.21)
【出願人】(000103644)オイレス工業株式会社 (384)
【Fターム(参考)】