説明

静止衛星受信機の位置を決定するための方法および装置

本発明は、静止衛星アンテナを備えた静止衛星受信機の位置を衛星ペイロード信号内のレンジングパケットによって決定するための測位方法および測位装置に言及する。前記衛星ペイロード信号は、確定地球局位置にある1つまたは複数の地球局から送信され、異なる対地静止軌道位置にある1つまたは複数の衛星から、同じ静止衛星アンテナで受信されるように中継され、対応する衛星ペイロード信号内の各レンジングパケットは、そのレンジングパケットが、対応する地球局から送信された時刻についてのタイムスタンプ情報に関するものであり、その静止衛星受信機によって、受信された衛星ペイロード信号内で複数のレンジングパケットが検出され、対応するレンジングパケットの検出時刻相互間の相対的時間差が測定され、測定された相対的時間差が収集されて、測定された相対的時間差の冗長性を解決するための二次条件を用いて静止衛星受信機の位置を推定するために、確定地球局位置、タイムスタンプ情報および衛星位置情報に関連付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静止衛星アンテナを備えた静止衛星受信機の位置を衛星ペイロード信号内のレンジングパケットによって決定するための測位方法および測位装置に言及する。さらに、本発明は同報通信方法および同報通信装置に言及する。
【0002】
本発明の意味でのレンジングパケットは、衛星ペイロード信号内にあって、特殊なPIDを有し、レンジングの目的に使用される任意のパケットである。
【背景技術】
【0003】
米国特許第6864838(B2)号明細書が衛星ペイロード信号内のレンジングパケットによる、衛星用のレンジングシステムおよびレンジング方法を開示している。衛星ペイロード信号はDVB-S信号のような被変調デジタルトランスポートストリーム信号であり、これらの衛星ペイロード信号の中にタイムスタンプ情報としてレンジングパケットが挿入される。ダウンリンク部分の復号方式での衛星ペイロード信号の未知の遅延を補償するために、アップリンク部分とダウンリンク部分の両方で同一構造の復号方式を使用するように提案されている。対応する時間測定回路によってレンジングパケット内のタイムスタンプ情報が処理される前に、これらの復号方式によって、対応するレンジングパケットがアップリンク部分およびダウンリンク部分の両方に供給される。この構造は、衛星に関して精密なレンジング計算を行うために高い精度を実現することが判明している。しかし、米国特許第6864838(B2)号明細書は地球上の静止衛星受信機の測位を開示していない。
【0004】
GPS(全地球測位システム)は、地球上のあらゆる点に正確な計時およびレンジング情報を提供する定着したシステムである。GPS受信機のGPS座標を決定するための基本技術は、既知の位置にある3個の衛星を使用する三辺測量法に基づく。各衛星から受信機までの距離が測定されれば、受信機の未知の位置が決定できる。三辺測量法は理想的な事例には合うが、実際には、測定誤差を補償するため、または他の位置情報を使用するために他の構成も適用される。例えば、受信機の時計バイアスが不明な場合、受信機から4個の衛星が見える状態で四辺測量構成が使用できる。一方、正確な局所時計が使用可能な場合および他方でさらなる座標として地球表面の測地基準モデルが使用される場合、二辺測量構成が適用できるだろう。
【0005】
GPS受信機は定着したものであり、地球上の正確な測位方法を実現している。本発明は、目的によっては、GPS受信機の代わりに、より単純な受信機で十分であることを発見した。これらの目的は、例えば、静止衛星受信機が地球上に置かれなければならない場合および位置の実時間測定が必要ない場合に当てはまる。
【特許文献1】米国特許第6864838(B2)号明細書
【特許文献2】欧州特許第1030464(B1)号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、既存のシステム構成を変更する必要がない、実装が容易な静止衛星受信機用の測位方法を提供すること、および対応する測位装置を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1に記載の測位方法、請求項13に記載の測位装置、請求項11に記載の同報通信方法および請求項20に記載の同報通信装置によって解決される。
【0008】
本発明による測位方法は、静止衛星アンテナを備えた静止衛星受信機の位置を衛星ペイロード信号内のレンジングパケットによって決定するための測位方法であって、前記衛星ペイロード信号が、確定地球局位置にある1つまたは複数の地球局から送信され、異なる対地静止軌道位置にある1つまたは複数の衛星から、同じ静止衛星アンテナで受信されるように中継され、前記対地静止軌道位置が1つまたは複数の地球局によって衛星位置情報に従って制御され、対応する衛星ペイロード信号内の各レンジングパケットが、対応する地球局から前記レンジングパケットが送信された時刻についてのタイムスタンプ情報に関するものであり、その静止衛星受信機によって、受信された衛星ペイロード信号内で複数のレンジングパケットが検出され、対応するレンジングパケットの検出時刻相互間の相対的時間差が測定され、測定された相対的時間差が収集されて、測定された相対的時間差の冗長性を解決するための二次条件を用いて静止衛星受信機の位置を推定するために、確定地球局位置、タイムスタンプ情報および衛星位置情報に関連付けられる。
【0009】
本発明による測位装置は、静止衛星アンテナを備えた静止衛星受信機の位置を衛星ペイロード信号内のレンジングパケットによって決定するための測位装置であって、前記衛星ペイロード信号が、確定地球局位置にある1つまたは複数の地球局から送信され、異なる対地静止軌道位置にある1つまたは複数の衛星から、同じ静止衛星アンテナで受信されるように中継され、前記対地静止軌道位置が1つまたは複数の地球局によって衛星位置情報に従って制御され、対応する衛星ペイロード信号内の各レンジングパケットに関連付けられた、対応する地球局からそのレンジングパケットが送信された時刻についてのタイムスタンプ情報を受信するため、およびその静止衛星受信機によって受信された、前記衛星ペイロード信号内のレンジングパケットの検出時刻相互間の、静止衛星受信機内で測定された相対的時間差を受信するためのインターフェースと、測定された相対的時間差を収集し、その時間差を、測定された相対的時間差の冗長性を解決するための二次条件を用いて静止衛星受信機の位置を推定するために、確定地球局位置、タイムスタンプ情報および衛星位置情報に関連付けるための測位プロセッサを有する。
【0010】
本発明は、放送衛星システム内で静止衛星受信機の位置を特定することを可能にする。1923年のテレビの誕生以降、テレビの原理の核は変化していない。放送事業者が番組を決定し、視聴者は番組に影響力を持たない。しかし、双方向TV(iTV)と呼ばれる新しく登場してきた技術は、ユーザが番組の流れを操作すること、さらには実際の放送に生で参加することすらできるようにした。これらのシステムは、地上または衛星バックチャネルを使用してユーザデータを双方向サービスの提供者に送り返す。iTVの一般的な用途は双方向型広告、ホームショッピング、ビデオオンデマンド(VoD)、スポーツくじ、およびゲームである。
【0011】
本発明は、ユーザサイドで最小の追加設置が行われると、既存の衛星放送システムに費用効率の高い位置測定構造を実現する。商用衛星テレビ受信機に追加ハードウェア部品が必要なGPSシステムとは対照的に、本発明は、ユーザの既存の静止衛星アンテナを利用する方法を提案する。原理は、衛星が異なる対地静止軌道位置にあって、衛星間の間隔が十分に狭く衛星が共存しており、そのため、共存する衛星のダウンリンク信号が静止衛星受信機の同じ静止衛星アンテナによって受信できる到着の時間差を測定することである。今日、衛星は、使用可能な軌道スロットおよび限定された周波数スペクトルの最適な使用を可能にするために単一対地静止軌道スロット内に共存している。地上のユーザには、共存する衛星は、大きい容量を持つ単一の衛星として見える。共存する衛星間の干渉は、直交に極性化され、および/または異なる周波数スペクトルを有する信号を衛星から送信させることにより、回避される。
【0012】
通常、対地静止軌道位置からの衛星ペイロード信号を受信するための静止衛星アンテナは、1つの対地静止軌道スロットからの衛星ペイロード信号を受信することができる1つの低雑音ブロックダウンコンバータ(LNB(low-noise block downconverter))を備えた衛星ディッシュアンテナである。本発明は、0.1°またはさらにそれ以下の狭さの1つの対地静止軌道スロット内のこれらの対地静止軌道位置間の解決を可能にする。
【0013】
しかし、異なる対地静止軌道スロットからの衛星ペイロード信号を受信できるようにディッシュアンテナの異なる焦点に取り付けられた2つ以上のLNBを有する衛星ディッシュアンテナも使用可能である。これらの衛星ディッシュアンテナは、対地静止軌道位置相互間の空間がより大きいために、測定された相対的時間差のより良い解決を実現する発明に従って使用されることも可能である。
【0014】
本発明についてさらに認識すべきことは、異なる衛星位置から発信される2つの衛星ペイロード信号の対応するレンジングパケットの検出時刻の相対的時間差が測定されるという事実である。したがって、静止衛星受信機が絶対GPS時間を知ることは必要なく、2つの異なる衛星ペイロード信号内の2つのレンジングパケットの2つの連続した検出の持続時間が、一方の衛星ペイロード信号から他方の衛星ペイロード信号への必要な切替えに起因する約1秒であって、200μsの範囲内にある前記相対的時間差の測定を行うための正確で安定した時計を提供することが必要なだけである。これにより、静止衛星受信機内の高価な時間測定機器の取付けを抑制することができる。それどころか、測定の測定との間に、衛星ペイロード信号から抽出できる基準周波数に合わせて静止衛星受信機の局所オシレータの周波数を調整することが可能である。そのような基準周波数は、例えば、MPEGデータストリームのPCR値によって与えられる。衛星ペイロード信号からそのような基準周波数を抽出するための対応する装置および方法が、例えば、欧州特許第1030464(B1)号明細書で開示されている。
【0015】
測定された相対的時間差は、静止衛星受信機の位置を後で推定するために収集される。十分な相対的時間差が収集され終わるとすぐに、相対的時間差は、連立方程式内で、システム内で使用可能な他の情報(1つまたは複数の地球局の確定地球局位置、各レンジングパケットが対応する地球局から送信された時刻に関するタイムスタンプ情報、および対応するレンジングパケットが中継された対応する衛星位置に関する衛星位置情報)に関連付けられる。結果は、過剰決定されるが、測定された相対的時間差の冗長性を解決するための二次条件を用いて解決できる連立方程式である。
【0016】
本発明のさらなる態様によると、衛星ペイロード信号は、1つまたは複数の地球局によって送信されるDVB-Sデータストリームである。したがって、衛星受信機の既存のDVB-Sフロントエンドを使用することができ、同時に、レンジングパケットによって占有されるデータ帯域は無視できるほどに小さく、従来のDVB-Sデータストリームに影響を与えることはない。
【0017】
本発明のさらなる態様によると、1つまたは複数の衛星の異なる対地静止軌道位置を参照するために1つまたは複数の衛星の動きが使用される。そのため、原則的には、衛星受信機で必要な全位置情報を準備するには1つの衛星で十分である。しかし、好ましい態様によると、対地静止軌道スロット内に少なくとも2つの衛星が共存しており、そのことにより、1つの相対的時間差の1つの測定値の情報は即時に提供されることが可能である。前記2つの衛星の少なくとも1つの位置が変化するやいなや、新たな相対的時間差をさらに測定することができる。同じことは3つ以上の衛星からなる構成にも当てはまり、この場合には、相対的時間差の必要な測定値を得るために、対応する衛星ペイロード信号間で適切な方法で衛星を切り替えることができる。さらに、静止衛星受信機の位置の1つの未知変数を減らすために、さらなる位置情報として地球の測地モデルを使用することができる。
【0018】
レンジングパケットは、対応する確定地球局位置、タイムスタンプ情報および衛星位置情報にあいまいでなく関連付けられたパケットシーケンス情報によって特定できる。
【0019】
本発明のさらなる態様によると、衛星受信機の位置の推定は前記衛星受信機で行われ、その目的のためにレンジングパケットは、パケットシーケンス情報に加えて、必要なタイムスタンプ情報および必要な衛星位置情報を搬送する。
【0020】
本発明の他の態様によると、1つの地球局が設置されており、衛星受信機の位置の推定は前記地球局で行われる。この目的のために、測定された相対的時間差が、対応するパケットシーケンス情報と共に静止衛星受信機から前記地球局に戻される。一般的に、衛星受信機の位置を推定する手順が特定の場所または位置と結びつけられることはなく、すべての必要な情報がこの目的に適したいずれかの場所に送信され終わるとすぐに、その場所で行うことができることは言うまでもない。
【0021】
本発明のさらなる態様によると、静止衛星受信機の位置を推定するための二次条件が少なくとも平均平方アルゴリズムに基づいている。本発明によると、収集されたデータの量が未知の変数を超えるので、結果の連立方程式は過剰決定される。この冗長性は、単一収集データに関して推定された答えの誤差変動が最小化されるべきであるという条件によって解決することができる。対応する答えは、アルゴリズムに新しいデータを連続して与える再帰アルゴリズムによって繰り返し見つけることができ、または、収集されたデータの1つのデータブロックに関して、結果の連立方程式を解くことにより見つけることができる。
【0022】
本発明のさらなる態様によると、静止衛星受信機の位置推定を向上させるために基準値が使用され、前記基準値は、既知の位置を有し、衛星ペイロード信号を受信する1つまたは複数の基準受信機によって提供される。
【0023】
基準受信機は地上局内に置かれていてもよいし、それ以外のいずれかに置かれていてもよいが、その基準受信機は、基準受信機がGPS時間および周波数ソースに接続されている場合はレンジングパケットの受信時間を測定することを可能にし、基準受信機が自走オシレータを備えているだけの場合は、2つの連続したレンジングパケットの時間差を測定することを可能にする。原理は、これらの測定結果を、対応する地球局、対応する衛星および基準受信機自体の既知の位置に基づいて入手できる理論値と比較することである。このようにして補償される遅延は、例えば、地球局内の今でも未知の遅延、衛星トランスポンダ内の未知の遅延などである。
【0024】
前述したとおり、本発明は双方向TV環境で位置に基づいたサービスを提供することを可能にする。
【0025】
したがって、本発明による他の方法は、複数の衛星ペイロード信号を地球局から少なくとも1つの衛星を経て複数の静止衛星受信機に同報通信するための同報通信方法であり、各衛星ペイロード信号のペイロードは、上述の測位方法によって決定される前記複数の静止衛星受信機のそれぞれの位置に従って制御される。
【0026】
さらに、本発明による他の装置は、複数の衛星ペイロード信号を地球局から少なくとも1つの衛星を経て複数の静止衛星受信機に同報通信するための同報通信装置であり、各衛星ペイロード信号のペイロードは、上述の測位装置によって決定される前記複数の静止衛星受信機のそれぞれの位置に従って制御される。
【0027】
各衛星ペイロード信号のペイロードは、ペイロードを送信する前に地球局でペイロードに挿入される対応するマーカによって、静止衛星受信機の位置に従って制御されることが可能である。ペイロードは、すべてのペイロードがすべての静止衛星受信機によって受信されることができるように同報通信されるが、各静止衛星受信機に、受信されたペイロードのサブセットをマーカに応じて、したがって推定された位置に応じて選択することを可能にするフィルタが備えられている。
【0028】
他の可能性は、少なくとも1つの衛星に複数のスポットビームアンテナを取り付けることであり、その場合、ペイロードを送信する前に地球局でペイロードに挿入される対応するマーカが、少なくとも1つの衛星が、受信されたペイロードのサブセットをマーカに応じて、したがって推定された位置に応じてスポットビームアンテナに切り替えることを可能にする。
【0029】
結局は、静止衛星受信機にスポットビーム構成とフィルタ機能を組み合わせて導入することも可能である。
【0030】
次に、本発明を、例を挙げて添付の図面を参照しながら説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図1は、本発明による衛星放送システムのアップリンク部分を示している。アップリンク部分の仕事は、アップリンクとして衛星ペイロード信号を与え、前記衛星ペイロード信号にレンジングパケットを挿入することである。単方向の衛星ペイロード信号に対処できることに加えて、衛星は、双方向通信を行うための機能を備えることもできる。これは、本発明の用途である双方向TV(iTV)を扱うときに特に重要である。
【0032】
衛星ペイロード信号は、例えば、DVB-Sタイプの衛星ペイロード信号が可能である。各レンジングパケットがパケットシーケンス情報を有しており、タイムスタンプ情報および衛星位置情報に関連付けられている。位置推定が静止衛星受信機で行われる場合、レンジングパケットでパケットシーケンス情報、タイムスタンプ情報および衛星位置情報が搬送される。一方、位置推定が地球局で行われる場合、各レンジングパケットは、地球局に記憶されている対応するタイムスタンプ情報および衛星位置情報に関連付けられたパケットシーケンス情報のみを搬送することで十分である。
【0033】
パケットシーケンス情報は、通常のDVB-S衛星ペイロード信号の連続カウンタに対応しているが、パケットシーケンス情報が、特定の静止衛星受信機の位置推定の1つの手順内でカウンタの最大値に到達せず、あいまいにならないように拡張される。
【0034】
タイムスタンプ情報は、各レンジングパケットに対して、そのレンジングパケットがアップリンク局から送信された時刻に対応するタイムスタンプを提供する。
【0035】
衛星位置情報は、レンジングパケットがアップリンク局から送信された時刻のレンジングパケットの送信先の衛星の位置に対応する。この衛星位置情報は、衛星の位置を制御する対応する地球局で使用可能である。
【0036】
挿入されるレンジングパケットはレンジングパケット生成器101によって生成され、レンジング情報挿入102に送られ、そこで、レンジングパケットのペイロードが処理される。したがって、レンジング情報挿入102で、対応するパケットのパケットシーケンス情報が挿入される。さらに、以前のレンジングパケットのタイムスタンプ情報もレンジング情報挿入102に存在しており、現在のレンジングパケットに挿入される。測定に2つ以上の衛星が関与する場合、対応するそれぞれの衛星に対して並行して送信された以前のレンジングパケットのすべての使用可能なタイムスタンプ情報が現在のレンジングパケットに挿入され、そのため、静止衛星受信機は、これらのタイムスタンプ情報の中から、位置推定に必要な1つを自由に選択できる。
【0037】
このようにして変更されたレンジングパケットがMUXマトリックス103に送られる。MUXマトリックス103は種々のデータソースを組み合わせて、それらを1つの衛星ペイロード信号にまとめる。アップリンク104およびアップリンク105からなるアップリンク機器の後、衛星ペイロード信号はスプリッタ114および115で分割される。衛星ペイロード信号116、117がアンテナ110、111を介して衛星112、113に送信され、衛星ペイロード信号118、119がブロックダウンコンバータ106、107によって送信周波数から、より低い中間周波数に変換され、送信時間測定システム108、109に供給される。
【0038】
送信時間測定システム108、109は、MUXマトリックスの確率的に生ずる遅延がこの測定で考慮に入れられないように、レンジングパケットがMUXマトリックスを渡し終えた時刻を測定することを可能にしている。レンジングパケットがアップリンク機器を離れる実際の時刻は送信時間測定システム108、109によって測定されることはできないが、スプリッタ114、115およびブロックダウンコンバータ106、107の遅延がほとんど同じである限り、送信時間測定システム108、109によって提供されるタイムスタンプ情報は、2つの衛星ペイロード信号の相対的時間差を決定するために使用されることができる。
【0039】
1つのパケットの送信時刻が送信時間測定システム108、109の1つによって決定されるや、現在のパケットはすでにアップリンク部分を離れているので、対応するタイムスタンプ情報が後続のレンジングパケットに挿入される。
【0040】
前の説明は1つの地球局のみに言及しているが、本発明によると、複数の地球局が使用できることを明記しておかなければならない。この場合には、個々の地球局間で時間および周波数同期化が行われる必要がある。いずれの場合も、地球局の地球上の正確な位置を知ることが必要である。
【0041】
衛星の位置は、地球局によっても、例えば、対応する衛星位置情報を地球局を介して衛星に送ることによっても制御される。
【0042】
図2は、本発明による静止衛星受信機の測定ボードの概略図である。測定ボード201は、DVB-S受信機202を制御しており、デジタル出力ストリーム(衛星ペイロード信号)を監視しており、シリアルポート203を介してPCと通信している。
【0043】
経済的な理由のために、測定ボードはGPS時計と時間が同期されていない。しかし、衛星ペイロード信号の受信されたDVB-Sデータストリームは、測定ボードのカウンタ204を駆動する自走オシレータを、GPS時計に関して時間オフセットのみが存在するように制御することを可能にしている。この目的のために、タイムスタンプ情報またはDVB-Sペイロードパケットの時計の参照を有する連続した着信レンジングパケットが時間の参照として使用される。2つのレンジングパケット間の時間、およびこの時間内の自走オシレータの変化が分かれば、この時間にわたる平均周波数
【0044】
【数1】

【0045】
を推定することが可能である。
【0046】
カウンタ204とGPS時計との間に時間オフセットがあるので、衛星までのレンジを直接に計算することは不可能である。しかし、2つの異なる衛星位置から発信される2つの衛星ペイロード信号内の対応するタイムスタンプ情報または対応するパケットシーケンス情報の検出時刻相互間の相対的時間差が計算されることが可能で、その場合、この時間オフセットは除去される。
【0047】
カウンタ204がパケット識別子(PID)フィルタ205によってトリガーされて、衛星ペイロード信号の中に正しいPIDを有するレンジングパケットがないか検査する。これらのレンジングパケットはFIFO206の中にラッチされる。
【0048】
2つのレンジングパケット間の相対的時間差を決定するには、2つの衛星ペイロード信号が受信されなければならない。しかし、受信機202はチューナが1つあるだけなので、2つの衛星ペイロード信号を同時に受信するのは不可能である。したがって、他方の衛星ペイロード信号に切り替わった後、2つの連続したレンジングパケットの相対的時間差のみが測定できる。しかし、システム、特に衛星位置が中間で変化しなかったと想定すると、結果は同じである。
【0049】
したがって、測定を行うには、第1の衛星からレンジングパケットが受信され、次に、受信機が第2の衛星からレンジングパケットを受信するよう変更される。この変更は、特定の数のレンジングパケット後に定期的に行われる。
【0050】
原則的には、受信機の固有の確率的遅延、衛星の動き、および周波数推定誤差が原因で起こる精度の損失がある。
【0051】
受信機の確率的遅延が誘因の誤差は、受信機の位置を推定するためのアルゴリズムを適用するときに、平均化効果によって減少させることができる。衛星の動きが分かれば、さらに、衛星の動きが原因で起こる誤差を後処理で訂正することが可能である。
【0052】
図3は、本発明の静止衛星受信機の位置を決定するための衛星放送システムを示している。アップリンク302内のレンジングパケット生成器301が、特定のPIDを有するDVB-Sレンジングパケットを供給する。これらのレンジングパケットは、図1に関連した説明で述べたとおり、DVB-S衛星ペイロード信号に挿入され、地球局303および304を介して衛星305および306に送信される。
【0053】
iTV受信機307(静止衛星受信機)の再調整を必要とせずにiTV受信機307からの見通し線内にあるためには、衛星は、同じ対地静止軌道位置内に共存する、すなわち、同じ局保持ボックス内にある必要がある。
【0054】
レンジングパケットは衛星によって中継されて静止衛星受信機307に送られる。衛星受信機307はダウンコンバータ(LNB/モノブロックのようなもの)、衛星ペイロード信号を配信するDVB-S受信機308およびレンジ差測定309から構成される。レンジ差測定309は、挿入されたレンジングパケットのレンジングパケット到着時刻(PAT)を測定し、レンジ差を算出する。
【0055】
2つのDVB-S衛星リンクの距離の差Δρmeasは次のように計算できる。図3に示す表記を使用すると、次のようになる。
dul,1 衛星1へのアップリンク経路の距離
ddl,1 衛星1からのダウンリンク経路の距離
dul,2 衛星2へのアップリンク経路の距離
ddl,2 衛星2からのダウンリンク経路の距離
【0056】
【数2】

【0057】
Δρmeasは次のように書くことができる。
【0058】
【数3】

【0059】
ここで、Δρmeasは、比例係数として光速を持つ、測定された相対的時間差に正比例する。
【0060】
相対的時間差を推定するために用いられる手法は、特定のID(PID)を有するレンジングパケットを、図1に示すように、両方の衛星リンクのDVB-S衛星ペイロード信号に挿入し、送信時間および受信時間を測定することである。送信時間および受信時間は同じ時間フレーム内で測定されないが、すなわち、オフセットが存在するが、この情報で相対的時間差が決定できる。
【0061】
DVB-Sレンジングパケットを使用すると、受信側で追加機器を取り付けることなく、既存のリンク構造を使用することができ、主信号に干渉する拡散スペクトル信号のような付随信号の送信が回避される。
【0062】
既存の受信機は、主として、唯一の対地静止軌道位置を指す単一供給システムである。共存する対地静止衛星を使用することは、前記単一供給アンテナで別個の衛星からの受信を可能にするが、結果の衛星形状は貧弱である。
【0063】
方程式1は、レンジ差Δρmeasとダウンリンク位置xdlとの間の非線形の関係を示している。この方程式は、概算の基準点
【0064】
【数4】

【0065】
の近くのテーラー近似値を使用することにより線形にされることが可能である。
【0066】
【数5】

【0067】
単一レンジ差測定用の結果の線形方程式は次のとおりである。
【0068】
【数6】

【0069】
端末位置の三角測量を行うには、少なくとも3つの異なる測定が必要である。未知の変数のレベルを下げるために、ユーザ端末は地球の表面にあるものと想定され、ユーザ端末の位置は地球の測地モデルより上の特定の標高にあるものとする。使用される測地モデルは測地基準システム1980(GSR80)である。
【0070】
標高情報を追加しても、第3の方程式が不足している。十分な数の方程式を得るためには、対地静止衛星の動きを利用して、時間をかけて複数の測定を行い、異なる衛星の配置を理解する。しかし、衛星の動きは非常に小さいので、数時間の観測期間を当てることが必要であろう。このプロセスの停止基準は、静止衛星受信機の推定位置が所定の範囲内に収束したときである。つまり、推定位置が測定ごとに大幅に変化しなくなったとき、位置は十分に正確であると考えられる。
【0071】
単一値の雑音レベルさえ判明していれば、これらの停止基準は単一使用可能値に基づいても計算することが可能であって、静止衛星受信機の位置を運行推定する必要はない。システムおよび単一値の雑音レベルが判明していれば、概算アルゴリズムを実際に実行する前に、位置推定の不確実度を予測することが可能である。予測された不確実度が十分に小さい場合、測定値の収集は停止できる。
【0072】
さらに、現在の測定値に関して、共存する衛星の最適な衛星配置を見つけ出すために、位置推定の不確実度の前記予測を使用することもできる。したがって、単一軌道スロット内に3個以上の共存衛星が存在する場合、相対的時間差を測定するために、位置推定の予測不確実度が最も低い2つの衛星を常に選択することが可能である。
【0073】
結果的には、位置推定の不確実度の前記予測を使用することにより、特定の誤差範囲内の位置推定を得るための十分なデータを収集するために必要な期間を前もって概算することも可能である。
【0074】
実際の測定によると、1つの局保持ボックス内の共存衛星に基づいた位置推定の取得可能な精度は約1.5km〜3.0kmである。
【0075】
位置の推定は、方程式4に記載のとおり、複数のレンジ差測定値に基づいており、1つの連立方程式にまとめることができる。
【0076】
【数7】

【0077】
このマトリックス方程式は過剰決定され、最小平均平方誤差の意味で、可視マトリックスAの汎用擬似逆数A-を使って解決できる。
【0078】
【数8】

【0079】
最後に、位置の推定は静止衛星受信機内または地球局内のどちらでも行えることに留意されたい。第1のケースでは、レンジングパケット自体で、対応する衛星の衛星位置情報および地球局の確定位置と一緒に各レンジングパケット用のタイムスタンプ情報を送ることが必要である。このケースは、地球局への戻りチャネルを有していない受信機に適している。しかし、必要な計算を行うために、対応する受信機に追加処理電力を供給する必要がある。
【0080】
第2のケースでは、各パケットのパケットシーケンス情報が、地球局に記憶された対応するタイムスタンプ情報に関連付けられていることで十分であり、測定された相対的時間差は静止受信機から地球局へ戻される。地球局で位置計算を行うと、各静止受信機での必要な処理電力が減少し、各静止受信機での位置推定の低コスト実施を可能にする。タイムスタンプ情報を地球局に送信するために低ビットレートの戻りチャネルを備えることが必要になるだけであり、地球局では衛星位置情報が判明していて、したがって地球局で結果の計算を行うことができる。
【0081】
図1の説明で、いわゆる挿入時間が決定できて、したがって、引き続いて行われる位置の推定で挿入時間が考慮できる方法が示されているが、システム内に多少の不正確な測定値が存在する。そのような不正確な測定値には、地球局でのまだ未知の遅延、衛星トランスポンダでの未知の遅延、測定方法に応じた誤差(連続したレンジングパケットを使用する測定は静止衛星の想定に依存する(しばしば該当しない)ことが明言されている)、および衛星位置の誤差があり、これらは、挿入時間のみの検討では、ほとんど配慮できない要因である。
【0082】
この問題に取り組むために、上述のように位置決定システムに1つまたは複数の基準受信機を追加することができる。各基準受信機が結果の精度を向上させ、測定期間も短縮する。
【0083】
基準受信機は、地球上の位置が判明している固定受信機である。基準受信機は、同一衛星の異なる位置間のレンジ差および/または異なる衛星の位置を絶えず測定している。基本的な考え方は、このようにして測定された到着の遅延時間(TDOA(time delay of arrival))をTDOAの理論値と比較することであって、理論値は、地球局、衛星および基準受信機の既知の位置に基づいて得られる。
【0084】
理論上のモデルと測定値との差を算出することにより、補償値が決定できる。この補償値は、静止衛星受信機の位置を推定するときに使用することができる。このようにして、補償値に含まれる測定の不正確さは、その後の位置決定では排除される、または少なくとも軽減される。位置推定時の精度のこの向上のために、測定の必要な回数も減少する。すなわち、推定位置は、実際の位置に向かって、より早く収束する。
【0085】
各衛星受信の位置情報が(衛星受信機で、地球局で、またはその両方の位置で)判明するや、放送システム全体の機能を向上させるための様々な可能性が生ずる。以下で、これらの可能性および用途のいくつかを例を挙げて説明する。
【0086】
- 衛星ディッシュアンテナの照準の継続的監視
衛星受信機の位置が受信機自体に判明していれば、対応する衛星への最適な照準角度を受信機が計算することが可能である。対応するセンサによって、実際の照準角度が監視されて、所望の照準角度と比較されることができる。セットアップ時、または外部衝撃があった場合、実際の照準角度は、再び所望の照準角度になるように修正されることができる。
【0087】
- 拡張された条件付きアクセスおよび拡張された認証
ペイTVチャネルによってはユーザのログインが必要なものがあり、これは、ユーザが地球局に登録されていることを意味する。ユーザの位置が判明していると、ログイン時にそのユーザが正しい位置にいるかを検査することができる。その位置が、登録されている位置ではない場合、ログインは拒否されることが可能である。
【0088】
- 市場調査
衛星受信機の既知の位置は、現在、TVコンテンツを視聴している視聴者の空間情報を入手するために使用できる。
【0089】
- TVまたは双方向TVでの位置ベースのサービス
所定の地域のユーザのみが対応するTVコンテンツを受信できるようにTVコンテンツの地域放送を提供することが可能である。これは、地域広告、地域ニュース、または自動言語選択のような多様な新規用途を展開する。1組の特定の地域を信頼するTVコンテンツのローカル権利(フットボールの試合を放映する権利など)の管理を行うことが可能である。本発明は、対応するコンテンツに関して権利が取得されていない地域では、TVコンテンツの受信を抑制することを可能にする。他の用途には、スポーツくじまたは賭け事のような、特定の地域でのみ許されるTVコンテンツを地域別に規制するサービスがある。双方向TVの場合、近傍の人達とのチャットルームを提供すること、またはオンラインショッピングができる選ばれたローカルショップを紹介することが可能である。
【0090】
位置ベースのサービスの技術的実現はすでに周知である。例えば、スポットビーム構成が使用できる、ローカルPIDフィルタ処理が適用できる、またはその両方の組合せが可能である。
【0091】
スポットビーム構成の場合、複数のスポットビームを有する衛星トランスポンダを備えること、または衛星間リンクを有する複数の衛星を備えることが必要である。地球局は各衛星受信機の位置を知っており、各受信機の位置に応じてコンテンツの経路を決定する。各ペイロードのDVBトランスポートストリームが、ダウンリンク上のどのスポットビームにペイロードが送信されなければならないかに関する情報を有している。次いで、衛星トランスポンダは、この情報に応じて、アップリンクの受信ペイロードを様々なスポットビームに切り替える。特定の衛星受信機を覆うフットプリントを有するすべてのスポットビームがペイロードを前記衛星受信機に送信する。しかし、前記衛星受信機は、他のスポットビームのペイロードを受信することはできない。
【0092】
他の可能性は、各衛星受信機内でローカルPIDフィルタ処理を適用することである。この目的のために、各衛星受信機は、ダウンリンクから前記衛星受信機の地域鍵に対応するペイロードのみを選別するフィルタを有する。この鍵は衛星受信機の位置に依存し、導入およびセットアップ時に衛星受信機内にシステムによって永久に記憶されることが可能である。例えば、衛星のフットプリントは地理上のセクタに分割されることができる。各衛星受信機は、これらのセクタに関して使用可能な情報も有しており、受信機自体の位置に応じて、その受信機のどのセクタに置かれているかを決定する。TVコンテンツの送信時、各ペイロードは、そのペイロードはどのセクタで受信されることが可能であるかのような情報を有し、その衛星受信機は、ダウンリンクから、受信機のセクタに対応するペイロードのみを選別するフィルタを有する。
【0093】
地域鍵は対応するローカル情報と共に地球局にも認識され、地球局は、位置ベースのサービス用の適切な鍵と共にアップリンクの各ペイロードを供給する。新しい送信が開始される前に、衛星受信機内の地域鍵が地球局によって更新されることも可能である。この目的のために、各衛星受信機は固有のIDによってアドレス指定可能であり、地球局は、コンテンツを送信する前に、対応する鍵と共に保全許可信号を送る。保全許可信号は、衛星受信機が信号の解読を行えるように暗号化コードであってもよい。
【0094】
図4〜図6は、本発明による位置推定を向上させるための3つの異なるタイプの基準受信機を示している。これらの受信機は、導入コスト、結果の精度および必要な工数が異なる。
【0095】
図4は、本発明による位置推定を向上させるための第1のタイプの基準受信機を示している。このタイプの基準受信機420は、地球局422の送信時間測定システム408および409に同期させられる受信時間測定システム421を使用して、両方の衛星412および413用に実際のレンジ測定を行う。
【0096】
基準受信機420のセットアップは、LNB423を備えた標準ディッシュアンテナ、電力スプリッタ424、受信時間測定システム421、およびPC425からなる。
【0097】
LNB423からのIF信号は、電力スプリッタ424を介して受信時間測定システム421の両方のレンジング受信機(RR1、RR2)に供給される。
【0098】
受信時間測定システム421は、アップリンク局422でレンジングパケット生成401によって生成されたレンジングパケットの受信時間を測定するために、地球局422と同じ時間および周波数ソース426を使用する。したがって、基準受信機420は、地球局422で直接に位置付けることができる。PC425は、基準受信機420のデータおよびアップリンク局422のタイムスタンプ情報を収集している。
【0099】
アップリンク時間および受信時間が判明すれば、両方の衛星412および413とのレンジおよびレンジ差を算出することが可能である。衛星412および413の既知の位置を考察すれば、測定されたレンジ差と理論上のレンジ差との差を算出することができる。
【0100】
アップリンク時間および受信時間を測定することにより、両方の衛星412および413への距離ならびにそれぞれのレンジ差を非常に正確に算出することが可能である。これらの測定値を理論上のモデルと比較することにより、上述したような様々な要因によって引き起こされる補償値が決定されることができる。衛星の天体暦およびその補間を検査することも可能である。
【0101】
図5は、本発明による位置推定を向上させるための第2のタイプの基準受信機を示している。このタイプは、両方の衛星502および503用または1つの衛星の2つの位置用の擬似レンジ測定値を適用するために個別GPS時間および周波数ソース501を使用している。個別GPS時間および周波数ソース501が使用されるために、地球局内に基準受信機を置く必要はない。しかし、アップリンク局の時計とこのローカル基準受信機との間に同期誤差があるので、結果の精度は、図4の第1のタイプの精度ほど高くない。
【0102】
図2について説明されたように、測定ボード504は、信号が受信機、この場合はDVB-S受信機505を通過すると、レンジングパケットからアップリンクタイムスタンプを抽出するために使用される。
【0103】
基準受信機は、LNB506を備えた標準ディッシュアンテナ、電力スプリッタ507、受信時間測定システム508、GPS時間および周波数ソース501、DVB-S受信機505、測定ボード504およびPC509からなる。
【0104】
LNB506のL帯域信号は電力スプリッタ507を介して受信時間測定システム508の両方のレンジング受信機および測定ボード504を備えた受信機505に配信される。GPS時間および周波数ソース501は、受信時間測定システム508用の時間および周波数基準を配信し、PC509はすべてのデータを収集している。
【0105】
レンジング受信機は、アップリンク側のレンジングパケット生成によって生成されるレンジングパケットの受信時間を測定している。測定ボード504を備えたDVB-S受信機505は、レンジングパケットを受信しており、レンジングパケットのペイロード中の、アップリンク側でレンジングパケット生成によって挿入されたアップリンクタイムスタンプ情報を読み出す。
【0106】
アップリンク時間および受信時間は非同期時計で測定されるが、両方の衛星502および503への擬似レンジおよび擬似レンジ差が算出できる。注目すべきは、それでもシステムの結果の精度が極めて良いことである。
【0107】
結果をシステムの理論上のモデルと比較することにより、やはり補償値が決定できる。結果的には、衛星の天体暦およびその補間が検証できる。
【0108】
図6は、本発明による位置推定を向上させるための第3のタイプの基準受信機を示している。このタイプは、両方の衛星603および604または1つの衛星の2つの位置の擬似レンジ差を測定するために測定ボード602を備えたDVB-S受信機601を使用している。図2について説明されたように、測定ボード602がこの目的に使用される。
【0109】
この基準受信機は、本発明による静止衛星受信機と同じ手法を使用している。この基準受信機は、測定ボード602内の内部自走時計で2つの連続したレンジングパケットの時間差を測定している。レンジングパケットのアップリンク時間は、擬似レンジ差を算出するためにレンジングパケットのペイロードから抽出される。
【0110】
このようなシステムの精度は、基準受信機の中の確率的遅延および時間離散化雑音のために制限されるということは前に説明した。しかし、より長い測定期間を検討し、より安定したオシレータを使用することにより、測定結果の向上が得られる。
【0111】
この基準受信機は、LNB605を備えた標準ディッシュアンテナ、測定ボード602を備えたDVB-S受信機601、安定オシレータ(XCO)606およびPC607からなる。
【0112】
第1および第2のタイプの基準受信機と比較すると、補償値を決定するときの精度は第3のタイプの方が低い。しかし、この手法は、補償係数を仮にも入手するための、より安い方法を表している。第3のタイプの基準受信機は、任意の既知の位置に置くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明による衛星放送システムのアップリンク部分を示す図である。
【図2】本発明による静止衛星受信機の測定ボードの概略を示す図である。
【図3】本発明による静止衛星受信機の位置を決定する衛星放送システムを示す図である。
【図4】本発明による位置推定を向上させるための第1のタイプの基準受信機を示す図である。
【図5】本発明による位置推定を向上させるための第2のタイプの基準受信機を示す図である。
【図6】本発明による位置推定を向上させるための第3のタイプの基準受信機を示す図である。
【符号の説明】
【0114】
101,401 レンジングパケット生成
102 レンジング情報挿入
103 MUXマトリックス
104,105,302 アップリンク
106,107 ブロックダウンコンバータ
108,109 送信時間測定システム
110,111 アンテナ
112,113,305,306,412,413,502,503 衛星
114,115 スプリッタ
116〜119 衛星ペイロード信号
201,504,602 測定ボード
202,308,505,601 DVB-S受信機
203 シリアルポート
204 カウンタ
205 パケット識別子(PID)フィルタ
206 FIFO
301 レンジングパケット生成器
303,304 地球局
307 iTV受信機(静止衛星受信機)
309 レンジ差測定
408,409 送信時間測定システム
420 基準受信機
421 受信時間測定システム
422 地球局、アップリンク局
423,506 低雑音ブロックダウンコンバータ(LNB)
424,507 電力スプリッタ
425,509,607 PC
426 時間および周波数ソース
501 個別GPS時間および周波数ソース
605 LNB
606 安定オシレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星ペイロード信号内にあるレンジングパケットによって静止衛星アンテナを備えた静止衛星受信機の位置を決定するための測位方法であって、
前記衛星ペイロード信号が、確定地球局位置にある1つまたは複数の地球局から送信され、異なる対地静止軌道位置にある1つまたは複数の衛星から、同じ静止衛星アンテナで受信されるように中継され、前記対地静止軌道位置が1つまたは複数の地球局によって衛星位置情報に従って制御され、
対応する前記衛星ペイロード信号内の各レンジングパケットが、対応する前記地球局から前記レンジングパケットが送信された時刻についてのタイムスタンプ情報に関するものであり、
前記静止衛星受信機によって、前記受信された衛星ペイロード信号内で複数のレンジングパケットが検出され、対応する前記レンジングパケットの検出時刻相互間の相対的時間差が測定され、前記測定された相対的時間差が収集されて、前記測定された相対的時間差の冗長性を解決するための二次条件を用いて前記静止衛星受信機の位置を推定するために、前記確定地球局位置、前記タイムスタンプ情報および前記衛星位置情報に関連付けられる
ことを特徴とする測位方法。
【請求項2】
前記衛星ペイロード信号が、前記1つまたは複数の地球局によって送信されるDVB-Sデータストリームである、請求項1に記載の測位方法。
【請求項3】
前記1つまたは複数の衛星の異なる対地静止軌道位置を参照するために前記1つまたは複数の衛星の動きが使用される、請求項1または2に記載の測位方法。
【請求項4】
対地静止軌道スロット内に少なくとも2つの衛星が共存する、請求項1から3のいずれか一項に記載の測位方法。
【請求項5】
地球の測地モデルが追加位置情報として使用される、請求項1から4のいずれか一項に記載の測位方法。
【請求項6】
前記衛星受信機の位置の推定が前記衛星受信機で行われ、その目的のために前記レンジングパケットが必要なタイムスタンプ情報および必要な衛星位置情報を搬送し、各レンジングパケットがパケットシーケンス情報によって特定される、請求項1から5のいずれか一項に記載の測位方法。
【請求項7】
1つの地球局が設置されており、前記衛星受信機の位置の推定は前記地球局で行われ、この目的のために、前記測定された相対的時間差が前記静止衛星受信機から前記地球局に戻され、各レンジングパケットがパケットシーケンス情報によって特定される、請求項1から5のいずれか一項に記載の測位方法。
【請求項8】
前記静止衛星受信機の位置を推定するための前記二次条件が少なくとも平均平方アルゴリズムに基づいている、請求項1から7のいずれか一項に記載の測位方法。
【請求項9】
前記静止衛星受信機の位置推定を向上させるために基準値が使用され、前記基準値が、既知の位置を有し、前記衛星ペイロード信号を受信するための1つまたは複数の基準受信機によって提供される、請求項1から8のいずれか一項に記載の測位方法。
【請求項10】
複数の衛星ペイロード信号を地球局から少なくとも1つの衛星を経て複数の静止衛星受信機に同報通信するための同報通信方法であって、
各衛星ペイロード信号のペイロードは、請求項1から9のいずれか一項に記載の測位方法によって決定される前記複数の静止衛星受信機の位置に従って制御される
ことを特徴とする同報通信方法。
【請求項11】
前記ペイロードを送信する前に、前記地球局で対応するマーカが前記ペイロードに挿入され、これにより、各静止衛星受信機が、前記マーカに応じて、したがって前記推定された位置に応じて、前記受信されたペイロードのサブセットを選択できるようになる、請求項10に記載の同報通信方法。
【請求項12】
少なくとも1つの衛星が複数のスポットビームアンテナを備えており、前記ペイロードを送信する前に、対応するマーカが前記地球局で前記ペイロードに挿入され、これにより、少なくとも1つの衛星が、前記受信されたペイロードのサブセットを前記マーカに応じて、したがって前記推定された位置に応じてスポットビームアンテナの1つに切り替えることが可能な、請求項10または11に記載の同報通信方法。
【請求項13】
衛星ペイロード信号内にあるレンジングパケットによって、静止衛星アンテナを備えた静止衛星受信機の位置を決定するための測位装置であって、前記衛星ペイロード信号が、確定地球局位置にある1つまたは複数の地球局から送信され、異なる対地静止軌道位置にある1つまたは複数の衛星から、同じ静止衛星アンテナで受信されるように中継され、前記対地静止軌道位置が前記1つまたは複数の地球局によって衛星位置情報に従って制御され、
対応する前記地球局から前記レンジングパケットが送信された時刻についての、対応する前記衛星ペイロード信号内の各レンジングパケットに関連付けられたタイムスタンプ情報を受信するため、および前記静止衛星受信機によって受信された前記衛星ペイロード信号内の前記レンジングパケットの検出時刻相互間の、前記静止衛星受信機内で測定された相対的時間差を受信するためのインターフェースと、
前記測定された相対的時間差を収集し、前記測定された相対的時間差の冗長性を解決するための二次条件を用いて前記静止衛星受信機の位置を推定するために前記相対的時間差を確定地球局位置、タイムスタンプ情報および衛星位置情報に関連付けるための測位プロセッサと
を有することを特徴とする測位装置。
【請求項14】
前記衛星ペイロード信号が1つまたは複数の地球局によって送信されるDVB-Sデータストリームである、請求項11に記載の測位装置。
【請求項15】
前記1つまたは複数の衛星の異なる対地静止軌道位置を参照するために前記1つまたは複数の衛星の動きが使用される、請求項11または12に記載の測位装置。
【請求項16】
対地静止軌道スロット内に少なくとも2つの衛星が共存する、請求項11から13のいずれか一項に記載の測位装置。
【請求項17】
地球の測地モデルが追加位置情報として使用される、請求項11から14のいずれか一項に記載の測位装置。
【請求項18】
前記静止衛星受信機の位置を推定するための前記二次条件が少なくとも平均平方アルゴリズムに基づいている、請求項11から15のいずれか一項に記載の測位装置。
【請求項19】
前記静止衛星受信機の前記位置推定を向上させるために基準値が使用され、前記基準値が、既知の位置を有し、前記衛星ペイロード信号を受信する1つまたは複数の基準受信機によって提供される、請求項11から16のいずれか一項に記載の測位装置。
【請求項20】
複数の衛星ペイロード信号を地球局から少なくとも1つの衛星を経て複数の静止衛星受信機に同報通信するための同報通信装置であって、
各衛星ペイロード信号の前記ペイロードは、請求項13から19のいずれか一項に記載の測位装置よって決定される前記複数の静止衛星受信機のそれぞれの位置に従って制御される
ことを特徴とする同報通信装置。
【請求項21】
前記ペイロードを送信する前に、前記地球局で対応するマーカが前記ペイロードに挿入され、これにより、各静止衛星受信機が、前記マーカに応じて、したがって前記推定された位置に応じて、前記受信されたペイロードのサブセットを選択できるようになる、請求項20に記載の同報通信装置。
【請求項22】
前記少なくとも1つの衛星が複数のスポットビームアンテナを備えており、前記ペイロードを送信する前に、対応するマーカが前記地球局で前記ペイロードに挿入され、これにより、前記少なくとも1つの衛星が、前記受信されたペイロードのサブセットを前記マーカに応じて、したがって前記推定された位置に応じて前記スポットビームアンテナの1つに切り替えることが可能な、請求項20または21に記載の同報通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−545144(P2008−545144A)
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519840(P2008−519840)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【国際出願番号】PCT/EP2006/006371
【国際公開番号】WO2007/003367
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(501313458)エスエーエス−アストラ エス ア (2)
【住所又は居所原語表記】L−6815 Chateau de Betzdorf Luxembourg
【Fターム(参考)】