説明

非接触ブレード振動測定装置及び方法

回転ブレード(10)で形成されたローター(3)の外周にセンサー(6,7,8,9)が配置され、信号検出ユニット(14)及び評価ユニット(13)を備えた非接触ブレード振動測定装置であって、ローターの位置及び/またはハウジングの歪みを測定するために供給される、ことを特徴とする、非接触ブレード振動測定装置。
さらに、本発明に係る方法は、非接触ブレード振動測定のために特定された方法である。本発明は、先行技術の技術的な問題を回避し、非接触ブレード振動測定のための、改良された装置及び改良された方法を提供する。特に、本発明における改良によって、ローターの半径方向への移動とハウジングの歪み(楕円変形)の測定データへの影響が回避されるようになり、すべての条件下で振動解析に対する高い振幅解析能を保つことができる。
【代表図】図1

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転ブレードで形成されたローターの外周に設置されたセンサー、信号検出ユニット、及び評価ユニットを有する非接触ブレード振動測定装置と、非接触ブレード振動測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基本的に、航空機推進用ガスタービン、または固定された工業用ガスタービンの非接触ブレード振動測定(beruhrungslose Schaufel schwingungs messung (BSSM))は、チップタイミングという名の国際的な分野における先行技術により既知である。大きな空気力学的な力が操作中のブレードに静的にかつ交互にかかり、ブレードを振動させるため、これらの測定は必要とされる。とりわけ、吸い込み構造に起因して、気流中の圧力分散がハウジングの楕円変形により生じたブレードチップとハウジングの間の空隙で変化するか、または、固定用格子が圧力分散に反応し得る。振動のこれらの要因は、エンジンハウジングと連関し、ローター軸の多様な回転スピードに起因する振動、いわゆる共振を発生させる。他のタイプの振動は、空気力学的な不安定性が引き金となって発生し、フラッタ振動及びコンプレッサーポンプの振動は、このカテゴリに属する。
【0003】
強い振動は、コンプレッサーブレードにひび割れを形成し、最終的にブレードを破損させる可能性があり、タービンエンジンの全体的な故障を引き起こしかねない。これは、特に航空交通用コンポネントにおいては致命的な結果となり得る。
【0004】
そのため、これらのタイプのエンジンの開発においてブレード振動計測がなされる。原則として、一連のエンジン製造工程での実質的な測定は可能である。既知の測定方法においては、ブレード振動は歪みゲージと遠隔トランスミッションによりモニターされ、つまり、非接触手段によってはモニターされない。しかしながら、これは設備費及び関連するコストの増加に結びつくため、非接触測定方法がより好ましいといえる。
【0005】
したがって、非接触ブレード振動測定システムは、コンプレッサーにおけるブレードチップのブレード振動をモニターするために使用され、回転ブレードの耐用年数を精度よく予測することができ、さらには同時にブレードチップとハウジングの間の半径方向にある空隙を測定することができる。
【0006】
このようなケースとして、別の測定システムが既知である。非接触ブレード振動測定のための既知の測定システムとしては、例えば、軸上コンプレッサーの回転ブレードの半径方向の空隙だけでなく、両方の振動を測定するエンジンハウジングの容量センサーがある。この場合、センサーは約700℃までの温度範囲下に設置され、すべての場面のコンプレッサーについて使用可能である。振動測定の基本的な原理は、センサー下を通過するブレードチップのランタイム測定である。その過程で、振動するブレードは、その瞬間の撓み状態によって異なる速度でセンサーを通過する。ブレードがセンサーに接近しその下を通過するとき、そのシグナルの振幅よりこの測定方法における空隙の情報が得られる。ローターステージのすべての回転ブレードの振動周波数、揺れの振幅及び半径方向の空隙は、通過時間と揺れの振幅の解析によって、決定及び解析される。
【0007】
振動測定については、ハウジング外周上の正確なセンサー配置位置を知ることが必要であり、その位置は、アイドル状態でそれぞれのセンサー位置の単純測定を行うことによって決定される。しかしながら、ハウジング軸とハウジングの歪みに関連するローター軸の半径方向の動きはエンジンが動作中の時に生じるものである。とりわけ、この要因は、たとえば、重力、エンジンの吸入部分の非対称状態、または温度の影響(ブレードバルブの開閉時に引き起こされる)が挙げられる。このような影響は、ローター側からみて有効なセンサー位置に変化をもたらすため、振動分析における妨害や誤作動を引きおこす。これは特に、ブレードチップの微小な撓みのみを引き起こす、より高い振動モードの共振を解析する場合に当てはまる。有効なセンサー位置の位置変化が、測定された振動偏差のレベルにまで達する場合、振動振幅の正確な測定は、非常に困難、またはまったく不可能である。
【0008】
とりわけ、共振については、前述の妨害の効果が致命的である。このような場合、特定の回転スピードで、同じ撓み状態における各回転の間、回転ブレードがセンサーを通過するため、振動の移動がエンジンハウジングの範囲にまで及ぶためである。
【0009】
これらの効果は既知のチップタイミングシステムには表れない。共振は、規則的な回転について評価される。しかしながら、前述の妨害(ハウジング軸に連関するローター軸の移動)とハウジングの歪み(特に楕円変形)が重なり、この方法において得られた測定データにおける振幅解析能または測定精度は制限される。
【0010】
ある場合には、そのように得られた完全な共鳴パスの測定データは、共鳴曲線適合により連帯して解析される。適合パラメーターとしては、他のパラメーターに加え、共鳴点における振幅と周波数も使用される。
【0011】
この方法は、センサーのある角度位置上の一定のオフセットの共鳴範囲における影響を大部分除外するが、ローター位置またはハウジング形状における共鳴に突発的な変化が生じたとき、例えば、ブリード弁の開閉によって、これが阻害または測定データのエラーとして現れる、といったことが起こり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記のような先行技術の技術的な問題を回避する目的に基づいており、非接触ブレード振動測定のための、改良された機器と改良された方法を提供するものである。特に、本発明の一つの目的は、ローターの半径方向の動きとハウジングの歪み(楕円変形)の測定データへの影響を除去することであり、もって、あらゆる条件下での振動解析における、高い振幅解析能を維持することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の特徴を備えた装置、及び請求項6に記載の特徴を有した方法により、この目的は達成される。本発明の有利な形態及びさらなる発展は、従属する請求項に示される。
【0014】
本発明は、先行技術の技術的な問題を回避し、非接触ブレード振動測定のための、改良された装置及び改良された方法を提供する。 特に、本発明における改良によって、ローターの半径方向への移動とハウジングの歪み(楕円変形)の測定データへの影響が除去されるようになり、すべての条件下で振動解析に対する高い振幅解析能を保つことができる。
【0015】
本発明に係る非接触振動測定装置は、好ましくは回転ブレード外周に配置された容量性センサーを有し、信号検出ユニット及び評価を有し、ローター位置及び/またはハウジングの歪み(楕円変形)を確定する機構を特徴的に有する。ローター位置及び/またはハウジングの歪みを確定する装置は、有利には、ハードウェア・コンポーネントまたはソフトウェア・コンポネントにより形成され得る。 この場合、間隙測定用の既存のセンサーの特性が、非接触振動測定センサーとして利用され、対応する測定結果がローター位置及び/またはハウジングの歪みを確定するために使用されると、特に有利である。これは単純でコスト効率の良い解決手段となる。選択的に、軸位置、またはハウジング上のセンサー位置を決定するために、追加の位置センサーを使用してもよい。
【0016】
ローター位置を計算するために、少なくとも3つの間隙測定用のセンサーがハウジングの外周上に分散されて配置されていなければならない。ローター位置とハウジングの歪み(いわゆる楕円変形)を計算するために、少なくとも5つ以上のセンサーを利用可能にするべきである。例えばエンジンマウントのタイプにより、楕円変形の主な方向を決定づけることが可能な場合、上記にかかわらず、4つのセンサーのみで偏心度の範囲を計算することも可能である。選択的に、ハウジングの全体的な最小の歪みを想定して、4つのセンサーのみで楕円変形を計算することができる。
【0017】
本発明における非接触ブレード振動測定方法は、ローター外周に配置されたセンサー、振動検出ユニット及び評価ユニットを有する方法であり、次のステップを特徴とする。◇
a)評価ユニットにおいて、特に信号検出ユニットの手段により、センサー信号を検出するステップと、
b)通過時間と揺れの振幅を解析するステップと、
c)半径方向の間隙を解析するステップと、
d)該当するセンサー位置における半径方向の間隙に基づいてローター位置を計算するステップと、
e)ローターに対する有効なセンサー位置を計算するステップと、
f)有効なセンサー位置に基づいて振動を解析するステップ。
【0018】
本発明に係る方法において、センサー信号は、例えば、アナログ測定信号をデジタル信号に変換する信号検出カードを介して、直接評価ユニットに読みとられ、そこで適したハードウェア及び/またはソフトウェアにより、通過時間と振幅が解析される。その後、半径方向の間隙と回転ブレードの振動に関する解析が行われる。
【0019】
評価用ソフトウェアを使用して、センサー位置に存在する半径方向の間隙から、ローター軸の位置とハウジングの歪みを連続的に計算することが可能である。ローターに対する「有効なセンサー位置は、これらのデータから計算することができる。また、これらから、理論上のセンサー位置のための修正値が同様に決定づけられる。これらの修正またはセンサーのこの「トラッキング」は、振動解析と同時に行われ、センサー位置は、ポイント移動に要する時間を介して、または回転速度を介して追跡され得る。その結果、ハウジング軸に連関したローター軸の動き、及びハウジングの歪みによる影響を回避することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のこれらの手段により、共振の解析における振幅の解析能は、実質的に改善され得る。特に、リアルタイムの解析においては、一定の回転速度の場合であったとしても、振動振幅は直ちに示されるべきである。それは、先行技術から知られる共鳴曲線適合においては不可能だからである。
【0021】
発明を改良するための追加の手段は、図に基づく発明の好ましい実施例とともに、下記により詳細にする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】非接触ブレード振動測定の有効なセンサー位置の軌道を示す概略図である。
【図2】本発明における非接触ブレード振動測定の基本原理を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1において示された部分的概略図は、本発明の、統合された半径方向の間隙の解析を介した場合の非接触ブレード振動測定において、有効なセンサー位置の軌道を示す。
【0024】
この接続では、4つの容量性センサー6,7,8,9が、コンプレッサーハウジング2の外周上に分散されて配置されている。センサー6,7,8,9は、例えば、ハウジングジャケットのネジ山つき掘削孔にネジで止められることによって搭載される。
【0025】
さらに、図1は、コンプレッサーハウジング2の中心に位置するハウジング軸4とローター軸5を開示している。二つの軸4,5は、この典型的な実施形態においては連携せず、したがって、お互いに相殺し合う関係にある。回転ブレードで形成されたローター3の外周はハウジング2内の破線の曲線によって示される。
【0026】
図示例においては、第1のセンサー6は、ハウジング2の内壁とローター3の回転ブレードのブレードチップとの間隙d1を測定するために使用される。 第2のセンサー7は間隙d2を測定するために使用され、第3のセンサー8は間隙d3を測定するために使用され、第4のセンサー9は間隙d4を測定するために使用される。間隙d2,d3,d4はハウジング2の内壁とローター3の回転ブレードのブレードチップとの間隙である。図示例においては、間隙d1,d2,d3,d4の幅が一様ではないことが明らかである。そのため、間隙測定のみによって、この例においては、ローター軸のオフセット位置に起因する偏心度を確定することができる。
【0027】
ハウジング外周上の第1のセンサー6と第2のセンサー7との間には、円弧セグメント 12がある。このプロセスにおいて、第1のセンサー6がブレードチップ間隙d1を確定し、第2のセンサー7がブレードチップ距離d2を確定する。ブレードチップの円弧セグメント 12’はこれらの間隙測定により確定され、それは図1中で破線として示される。
【0028】
対応する円弧セグメント 23’, 34’, 41’は、対応するセンサーの位置7,8,9,6の関係によって同様に確定される。
【0029】
これは、円弧セグメント 12’, 23’, 34’及び 41’によって形成される円の中心位置にローター軸5の位置が移動することを許容する。このように形成される円の半径は、図1中に破線で示されるように、ローター5につながる。 このように、第1のセンサー6、第2のセンサー7、第3のセンサー8及び第4のセンサー9の位置は補正値を伴って設定され、その位置は「トラッキング」される。対応するアルゴリズムの使用によって、ハウジングの歪みや楕円変形が4つのセンサー6,7,8,9のみによって計算可能である。
【0030】
図2は、本発明における非接触ブレード振動測定の基本原理を示した概略図であり、回転ブレード10で形成された回転ディスク11の1/4だけが図2中に示されている。
【0031】
回転センサー12は計算値との比較に使用されるものであり、ディスク11上に設置される。図2に示されるように、容量性センサー6,7は、データケーブルと信号検出ユニットを経由して評価ユニット13に接続される。
【0032】
センサー6,7,12の測定する信号は、信号検出ユニット14(例えばアナログ/デジタル変換器)を経由して評価ユニット13に送られ、そこで対応する計算ステップに通される。本形態における評価ユニット13は、特殊なハードウェアまたは特殊なソフトウェアを装備した標準的なコンピュータである。 この接続では、評価ユニットがリアルタイムで測定データを処理する能力を有していれば、より有利である。
【0033】
図2は、本発明に従って評価ユニットで実行される、個々の手順ステップをフローチャートの形で概略的に示している。
【0034】
図示されたフローチャートにおいて、まず処理ステップa)でアナログ/デジタル変換器によってデジタル化されたセンサー信号が評価ユニットで検出され、処理ステップb)で通過時間と揺れの振幅が解析される。
【0035】
その後、図1に例示されるように、処理ステップc)で半径方向の間隙が解析され、処理ステップd)でローター位置が計算され、(適切な数のセンサーで)ハウジングの楕円変形がそれぞれのセンサー位置における半径方向の間隙測定に基づいて計算される。
【0036】
最後に、処理ステップe)でローターの有効なセンサー位置が計算される。つまり、センサー位置が計算上「トラッキング」される。これらの位置に基づいて、ブレード振動はプロセスf)において解析される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転ブレード(10)で形成されたローター(3)の外周上にセンサー(6,7,8,9)が配置され、信号検出ユニット(14)及び評価ユニット(13)を備えた非接触ブレード振動測定装置であって、
ローターの位置及び/またはハウジングの歪みを測定するために設けられている、ことを特徴とする、非接触ブレード振動測定装置。
【請求項2】
外周に分散されて配置された3つのセンサー(6,7,8)は、半径方向の間隙(d1,d2,d3)を測定するために設置される、ことを特徴とする、請求項1に記載の非接触ブレード振動測定装置。
【請求項3】
外周に分散されて配置された4つ、好ましくは5つのセンサー(6,7,8,9)は、半径方向の間隙を測定するために設置される、ことを特徴とする、請求項1に記載の非接触ブレード振動測定装置。
【請求項4】
センサー(6,7,8,9)は、容量性センサーまたは光学センサーであるか、または、マイクロ波または渦電流で操作される、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の非接触ブレード振動測定装置。
【請求項5】
回転ブレード(10)で形成されたローター(3)の外周上にセンサー(6,7,8,9)が配置され、信号検出ユニット(14)及び評価ユニット(13)を備えた非接触ブレード振動測定方法であって、下記のステップを有することを特徴とする、非接触ブレード振動測定方法。
a)評価ユニットにおいて、特に信号検出ユニットの手段により、センサー信号を検出するステップと、
b)通過時間と揺れの振幅を解析するステップと、
c)半径方向の間隙を解析するステップと、
d)該当するセンサー位置における半径方向の間隙に基づいてローター位置を計算するステップと、
e)ローターに対する有効なセンサー位置を計算するステップと、
f)有効なセンサー位置に基づいて振動を解析するステップ。
【請求項6】
ステップd)において、ハウジングの歪みの計算を行う、請求項5に記載の非接触ブレード振動測定方法。
【請求項7】
ステップe)において、センサーの理論上の位置への修正値の計算を行う、請求項5または6に記載の非接触ブレード振動測定方法。
【請求項8】
ローター位置及び/またはハウジングの歪みの計算が振動解析と同じ時間周期で行う、請求項5〜7のいずれか1項に記載の非接触ブレード振動測定方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−513877(P2010−513877A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541749(P2009−541749)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【国際出願番号】PCT/DE2007/002244
【国際公開番号】WO2008/074300
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(505323725)エムティーユー エアロ エンジンズ ゲーエムベーハー (28)
【Fターム(参考)】