説明

非水性酸素系液状漂白剤組成物

本発明は、固体状の過酸化物を、無水の非極性有機溶媒、非イオン性界面活性剤及び陰イオン性界面活性剤の含量が調節された液体に分散させることによって得られる新規の非水性酸素系液状漂白剤組成物に関する。当該組成物は、粘度の高いペースト状又はゲル状の懸濁液の形態を取る。前記組成物は、有効酸素の損失がなく、アルカリpHの範囲で漂白力及び洗浄力に優れ、保管中に粘度の変化や相分離が生じない等、化学的/物理的に安定しており、多目的に、例えば、衣類の漂白及び染みの除去、台所及び浴室の掃除、等に利用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[3] 本発明は、非水性酸素系液状漂白剤組成物に関する。より詳細には、アルカリpHの範囲で漂白力及び洗浄力に優れ、貯蔵中、その優れた化学的、物理的安定性ゆえに、有効酸素の損失がほとんどなく、粘度の変化や相分離が生じない非水性酸素系液状漂白剤組成物に関する。本発明の非水性酸素系液状漂白剤組成物は、衣類の漂白及び染みの除去や、台所及び浴室の掃除に利用することができる。
【背景技術】
【0002】
[6] 現在市販されている漂白剤は、大きく塩素系漂白剤と酸素系漂白剤とに分けられる。
【0003】
[7] 英国特許第2229460号明細書には、次亜塩素酸ナトリウムを主成分とする塩素系漂白剤が開示されている。塩素系漂白剤は、漂白力は強いが、カラー衣類を変色させたり、繊維構造を破壊したりという短所がある。更に、使用時に人体に有害な塩素の存在により不快臭を発生するという短所がある。
【0004】
[8] 一方、酸素系漂白剤は、塩素系漂白剤が有する上述のような短所がないため、最近その使用量が増加している。このような酸素系漂白剤は、形態によって大きく液体漂白剤と粉末漂白剤とに分けられる。
【0005】
[9] 現在市販されている酸素系漂白剤の大部分は、過炭酸ソーダ(sodium carbonate peroxyhydrate)又は過ホウ酸ソーダを使用した粉末漂白剤であるが、これらは、常温の水、特に冷水に溶けにくいという短所がある。更に、粉末漂白剤を製造する際、各固体成分間の均一な混合が難しく、粉塵が発生し、更に、染みに対する部分漂白が難しいという短所がある。
【0006】
[10] 従って、消費者は、その使いやすさのため、液体漂白剤を粉末漂白剤製品より選り好む傾向がある。液体漂白剤は粉末漂白剤より計量が容易であり、水に素早く溶け、粉塵を発生せず、保管中に粉末漂白剤でしばしば見られる固化現象がないという長所がある。
【0007】
[11] 米国特許第6235699号、第5929012号及び第4900468号明細書には、過酸化水素を使用する液体漂白剤が開示されている。過酸化水素を利用したこの液体漂白剤は、保管中に、過酸化水素の分解により、保管容器が膨張したり、漂白力が減少したりという問題がある。更に、過酸化水素を安定化させるためには、漂白剤溶液のpHを酸性に維持しなければならないが、このような低いpH下では漂白力及び洗浄力が著しく低下する。
【0008】
[12] 米国特許第3499844号及び第4130501号明細書には、液体漂白剤の化学的安定度を高めるために洗浄組成物の粘度を高める方法が開示されている。しかし、この方法は、漂白剤のpHが酸性の場合に漂白力及び洗浄力が著しく低下するという問題があり、更に、保管中に過酸化水素の分解により組成物の粘度が変化し、商品化が難しいという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
[15] そこで、本発明の目的は、ペースト状又はゲル状の非水性酸素系液状漂白剤組成物を提供することにある。
【0010】
[16] 本発明の別の目的は、無水で非極性の水混和性有機溶媒と、種類/含量が調節された界面活性剤と、を含む液体に、一定範囲の粒子サイズの固体状の過酸化物を分散させることで得られる非水性酸素系液状漂白剤組成物を提供することにある。
【0011】
[17] 本発明の更に別の目的は、化学的安定性に優れ、有効酸素の損失が少なく、また、物理的安定性に優れ、粘度の変化や、液体相−固体相の分離が生じない非水性酸素系液状漂白剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[20] 上記目的を達成するために、本発明は、固体状の過酸化物0.1〜85重量%、非水性有機溶媒10〜80重量%、陰イオン性界面活性剤0.1〜10重量%、非イオン性界面活性剤0.1〜10重量%、及び安定剤0.01〜15重量%を含む非水性酸素系液状漂白剤組成物であって、粘度が500〜5000000cps(25℃)の範囲にある懸濁液をなしていることを特徴とする非水性酸素系液状漂白剤組成物を提供する。
【0013】
[21] 本発明は更に、高粘度のペースト状又はゲル状の懸濁液の形態の、新規の非水性液状漂白組成物であって、固体状の過酸化物を、無水の非極性有機溶媒、非イオン性界面活性剤及び陰イオン性界面活性剤の含量が調節された液体に分散させることで得られる非水性液状漂白組成物を提供する。
【発明の効果】
【0014】
[24] 新規の非水性液状漂白剤組成物は次のような効果をもたらす。
【0015】
[25] 第1に、非水性液状漂白剤組成物は、衣類の漂白及び染みの除去や、台所及び浴室の掃除に利用することができる。
【0016】
[26] 第2に、非水性液状漂白剤組成物は、有効酸素の損失が少なく、アルカリpHの範囲で漂白力及び洗浄力に優れ、貯蔵中の粘度の変化や相分離が生じない等、化学的、物理的に安定している。
【0017】
[27] 第3に、非水性液状漂白剤組成物は、アルカリ条件下で漂白力及び洗浄力が増大する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[30] 以下、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
【0019】
[31] 本発明の非水性酸素系液状漂白剤組成物は、固体状の過酸化物、非水性有機溶媒、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及び安定剤を含む。非水性酸素系液状漂白剤組成物は、更に、増粘剤、充填剤、蛍光増白剤、酵素及び香料を含むことができる。
【0020】
[32] 本発明で使用される固体状の過酸化物は、過酸化水素を形成させることのできる物質であり、過炭酸塩、過ホウ酸塩、過硫酸塩、過酸化尿素及び金属過酸化物(ZnO、MnO及びCaO)からなる群から選択されるものが使用可能であるが、過炭酸塩を使用するのが最も好ましい。過炭酸塩は、炭酸ナトリウム及び過酸化水素を組み合わせることによって得られ、有効酸素の含量が高く、水に対する溶解度が高い環境親和的な化合物である。過酸化物は、平均粒子サイズが1〜700μmの範囲のものを使用することが好ましい。粒子サイズが大きいと、過酸化物の含量を増加させることができるが、大きすぎると、水に対する溶解度が落ちるため好ましくない。固体状の過酸化物の使用量は0.1〜85重量%、好ましくは1〜75重量%である。使用量が0.1重量%未満の場合、漂白剤としての効果がなく、85重量%を超過すると、物理的安定度が低下する。
【0021】
[33] 更に、前記非水性有機溶媒は、組成物の化学的/物理的安定度に大きく影響を与えるため、その選定には特に注意を傾ける必要がある。従って、非水性有機溶媒の選択は、本発明の技術構成上の重要な特徴の一つである。
【0022】
[34] 前記非水性有機溶媒としては、典型的には水混和性有機溶媒を使用するが、前記過酸化物(特に過炭酸塩)は、水に溶けると組成物の化学的安定度に悪影響を与える。従って、本発明における非水性有機溶媒としては、無水(0.5重量%未満)及び非吸湿性溶媒を選択する。
【0023】
[35] また、本発明における溶媒としては、極性の低いものが好ましい。極性の高い溶媒(例えば、エタノール、プロパノール)は、過炭酸塩等の過酸化物を溶かすことから好ましくない。更に、本発明で使用される非水性有機溶媒は、同時に使用される他の成分と反応しないものであることが好ましい。
【0024】
[36] 前記条件を充足させる非水性有機溶媒としては、ポリアルキレングリコール、多価アルコール、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、アルキルエステル及びアルキルアミドからなる群から選択される1種、又はそれらのうちの複数種の混合物が挙げられる。
【0025】
[37] 前記有機溶媒としては、分子量及び極性の低いものが好ましい。例えば、ポリエチレングリコール(分子量200〜600)、グリセロール、メチルエステル、メチルアミド及びメチルアセテートが好ましい。前記アルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、モノ−、ジ−、トリ−及びテトラアルキレングリコールモノアルキルエーテルを使用し、アルキレンとしてはC〜Cのもの、アルキルとしてはC〜Cのものを使用する。ここで、非水性有機溶媒の使用量は10〜80重量%、好ましくは20〜60重量%である。使用量が10重量%未満であるか80重量%を超過すると、物理的安定度が低下する。
【0026】
[38] 本発明における界面活性剤としては、陰イオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を使用することができる。
【0027】
[39] 前記陰イオン性界面活性剤は、下記化学式1で表される直鎖型アルキルベンゼンスルホン酸塩、下記化学式2で表される脂肪酸塩、下記化学式3で表される直鎖型アルキルスルホン酸塩、下記化学式4で表されるαオレフィンスルホン酸塩、及びそれらの混合物、からなる群から選択される。
【0028】
[40] (化学式1)
−C−SO
[42] (化学式2)
−CH−COOX
[44] (化学式3)
−CH−SO
[46] (化学式4)
−CH=CHCH−SO
【0029】
[48] 化学式1〜4において、RはC〜C15のアルキル鎖であり、RはC11〜C16のアルキル鎖であり、RはC11〜C18アルキル鎖であり、Xはアルカリ金属である。
【0030】
[49] 陰イオン性界面活性剤の使用量は0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%である。使用量が0.1重量%未満の場合、洗浄力が落ち、10重量%を超過すると、組成物の物理的安定度が低下する。
【0031】
[50] 前記非イオン性界面活性剤は、下記化学式5で表される脂肪酸アルコールポリオキシエチレングリコール、下記化学式6で表される脂肪酸ポリオキシエチレングリコール、下記化学式7で表されるアルキルフェニルポリオキシエチレングリコール、及びそれらの混合物、からなる群から選択される。
【0032】
[51] (化学式5)
−CH−(OCHCH−OH
[53] (化学式6)
−CO−(OCHCH−OH
[55] (化学式7)
−C−(OCHCH−OH
【0033】
[57] 化学式5〜7において、nは5〜25の整数であり、RはC11〜C18のアルキル鎖である。
【0034】
[58] 非イオン性界面活性剤の使用量は0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%である。使用量が0.1重量%未満の場合、洗浄力が落ち、10重量%を超過すると、組成物の物理的安定度が低下する。
【0035】
[59] 更に、陰イオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤の使用量及び比率は、組成物の化学的/物理的安定度に影響を与えるため、技術構成上の非常に重要な特徴の一つである。
【0036】
[60] 本発明の非水性酸素系液状漂白剤組成物において、陰イオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤の重量比は3:1〜1:3である。界面活性剤の重量比が前記範囲を外れると、組成物の物理的安定度が低下する。界面活性剤の使用量は0.2〜20重量%、好ましくは1〜10重量%である。
【0037】
[61] 前記安定剤としては、過酸化物安定剤、流動学的安定剤(rheological stabilizer)及びそれらの混合物を使用することができる。より詳細には、過酸化物安定剤0.01〜10重量%、流動学的安定剤0.01〜5重量%、又は過酸化物安定剤0.01〜10重量%と流動学的安定剤0.01〜5重量%との混合物を使用することができる。
【0038】
[62] 前記過酸化物安定剤(キレート剤)としては、有機酸、有機酸の塩、及びアミノポリホスホン酸塩(amino polyphosphonate)化合物、からなる群から選択される少なくとも1種を使用する。有機酸は、クエン酸、ジピコリン酸及びグルコン酸からなる群から選択することができる。アミノポリホスホン酸塩化合物は、ヒドロキシエチレンジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸塩)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸塩)及びアミノトリ(メチレンホスホン酸塩)からなる群から選択することができる。特に、無水の安定剤がより効果的である。安定剤の使用量は0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。使用量が0.01重量%未満の場合、組成物の化学的安定度が低下し、5重量%を超過すると、化学的安定度の上昇効果がなくなる。現在市販されている安定剤としては、Solutia社のDequestTMシリーズが挙げられる。
【0039】
[63] 前記流動学的安定剤は、保管中、ペースト状又はゲル状の懸濁液組成物の粘度を維持するために使用される。流動学的安定剤は、安息香酸、安息香酸の誘導体、及び芳香族化合物(現在市販されている、Noveon社のOXY−RITE100TM)、からなる群から選択される。流動学的安定剤の使用量は0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%である。
【0040】
[64] 前記増粘剤は、高い物理的安定度を有する懸濁液を製造するために使用される。増粘剤は、脂肪酸、架橋されたアクリル共重合体、コロイダルシリカ、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、及びそれらの混合物、からなる群から選択される。
【0041】
[65] 前記脂肪酸は、炭素数10〜18の飽和又は不飽和脂肪酸から選択される少なくとも2種の混合物であり、好ましくは、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸及びパルミチン酸から選択される少なくとも2種の混合物である。脂肪酸の使用量は0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜1.5重量%である。
【0042】
[66] 前記架橋されたアクリル共重合体としては、0.75〜1.5%のポリアリルスクロース(polyallilsucrose)で架橋されたアクリル酸共重合体を使用することができる。架橋されたアクリル共重合体の使用量は0.01〜1.5重量%、好ましくは0.2〜1重量%である。
【0043】
[67] 前記コロイダルシリカとしては、表面積が200□/gであり、平均粒子サイズが10〜12□である親水性ヒュームドシリカ、又は表面積が100□/gであり、平均粒子サイズが10〜20□である疎水性ヒュームドシリカを使用することができる。コロイダルシリカの使用量は0.01〜5重量%、好ましくは1〜3重量%である。現在市販されている増粘剤としては、Noveon社のCarbopol 676、934、937、940、941;Degussa社のAerosil 200;Cabot社のCabosil fumed silicaが挙げられる。
【0044】
[68] 本発明の非水性酸素系液状漂白剤組成物は、充填剤がなくても、化学的に安定した懸濁剤を形成することができるが、必要に応じて、原材料(builder)及び水分吸収剤の役割を果たす充填剤を使用することもできる。充填剤は、炭酸ナトリウム(NaCO)、重炭酸ナトリウム(NaHCO)、硫酸ナトリウム(NaSO)及びそれら混合物から選択される。充填剤の使用量は0.1〜85重量%、好ましくは0.5〜70重量%である。使用量が0.1重量%未満の場合、組成物の化学的安定度が低下し、85重量%を超過すると、物理的安定度が低下する。
【0045】
[69] 金属物質(例えば、鉄、マンガン、銅、クロム)は、過酸化物の分解を促進し、組成物の化学的安定度を低下させるため、金属物質を組成物の成分として含有させ、又は組成物の製造中に導入するのは好ましくない。当業界で通常使用される、酸化防止剤、着色剤、蛍光増白剤、沈殿防止剤、洗浄酵素、香料等の様々な成分を少量含有させることもできる。これらの少量成分の総使用量は0.01〜2重量%である。
【0046】
[70] 前述した通り、本発明の非水性酸素系液状漂白剤組成物は、粘度が500〜5000000cps(剪断速度21/sec、25℃)のペースト状又はゲル状の非水性懸濁液であり、過酸化水素を生成する過酸化物、水混和性有機溶媒、界面活性剤、過酸化物安定剤(キレート剤)、流動学的安定剤、増粘剤及び充填剤を含む。組成物は更に、添加剤として、少量の蛍光増白剤、酵素及び香料を含むことができる。また、組成物の水分含量は1.0重量%未満、好ましくは0.5重量%未満である。組成物は、保管中も物理的、化学的に安定しており、使用が容易であり、衣類の損傷なしに染みを洗浄・除去することができ、台所、浴室、換気口等の殺菌・洗浄にも利用することができる。
【実施例】
【0047】
[72] 以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。但し、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
【0048】
〔実施例1〜14及び比較例1〜6〕
[74] 漂白組成物を製造するために、3−ブレードプロペラ攪拌器及び冷却装置を具備した1Lガラス反応器に、有機溶媒及び非イオン性界面活性剤を入れた後、攪拌器で攪拌した。600rpm以上で攪拌しながら、増粘剤、陰イオン性界面活性剤、過酸化物安定剤、流動学的安定剤及び蛍光増白剤を、有機溶媒及び非イオン性界面活性剤の混合液に添加して溶解させ、1時間後、混合液に充填剤を添加した。この時、過酸化物安定剤は、種類によっては溶解されないこともある。
【0049】
[75] 10分間攪拌した後、粉末形態の過酸化物及び酵素を混合溶液に徐々に投入し、更に30分〜1時間攪拌した。泡の形成により攪拌が困難な場合は、真空下で混合液を攪拌して泡を除去した。反応器内部の温度が35℃を超えると、冷却装置を用いて系の温度を下げた。必要に応じて、これらの工程の後に香料を添加することもできる。
【0050】
[76] 実施例1〜7及び比較例1〜3で使用された組成成分及び使用量を下記表1に、実施例8〜14及び比較例4〜6で使用された組成成分及び使用量を下記表2に示す。
【0051】
〔実験例1:化学的及び物理的安定度の測定〕
(化学的安定度の測定)
[79] 実施例1〜14及び比較例1〜6で製造された漂白剤組成物を、50℃で1ヶ月間保管した後、過マンガン酸カリウム(KMnO)を用いる滴定法で有効酸素の損失を計算して、化学的安定度を測定した。結果を下記表1及び2に示す。有効酸素の損失が10%未満(安定度が90%超)の場合、安定していると判定した。
【0052】
(物理的安定度の測定)
[81] 実施例1〜14及び比較例1〜6で製造された漂白剤組成物を、100mLメスシリンダーに入れ、常温で1ヶ月間保管した後、相分離の程度を測定した。更に、凍結−融解サイクル(−4℃/40℃)条件下で1ヶ月間保管した後、相分離の程度を測定した。結果を下記表1及び2に示す。
【0053】
[82] 化学組成物が物理的に安定しているということは、化学組成物において相分離が発生しないことを意味する。100mLメスシリンダーにおいて、相分離により生じた上清を、シリンダーの目盛りを読むことにより測定した。結果を下記表1及び2に示す。表中の上清の値が小さいほど、物理的安定度は高い。
【0054】
【表1−1】

【0055】
【表1−2】

【0056】
[85] 表1に示されている通り、溶媒としてPEG400を使用した実施例1の組成物と比較して、PEG200を使用した比較例1の組成物では、相分離の発生が見られ、また、有効酸素の損失が大きく、化学的安定度が低い。更に、溶媒としてPEG400及び無水エタノールを使用した比較例2の組成物でも、物理的及び化学的安定度が微弱である。
【0057】
[86] 充填剤として炭酸ナトリウム及び硫酸ナトリウムを使用した実施例2の組成物は、実施例1の組成物と比較して、化学的安定度及び漂白力に優れている。増粘剤としてCarbomerを使用した実施例3の組成物は、優れた安定度を示している。また、増粘剤を使用しなかった実施例4〜7の組成物も、増粘剤を使用した実施例1〜3及び実施例5〜6の組成物と同程度に良好な物理的及び化学的安定度を示している。他方、漂白活性化剤を使用した比較例3の組成物は、漂白力は強いものの、化学的安定度は微弱である。
【0058】
[87] 平均粒子サイズが620μmの過炭酸塩を使用した実施例5の組成物、並びに過炭酸塩3重量%及び充填剤(炭酸ナトリウム及び硫酸ナトリウム)60重量%を使用した実施例6の組成物は、良好な物理的及び化学的安定度を示している。過酸化物として過ホウ酸塩を使用した実施例7の組成物もまた、良好な物理的及び化学的安定度を示している。
【0059】
【表2−1】

【0060】
【表2−2】

【0061】
[89] 表2に示されている通り、PEG400を使用した実施例8〜14の組成物と比較して、溶媒としてPEG200を使用した比較例4の組成物では、相分離の発生が見られ、また、有効酸素の損失が大きい。これは、物理的及び化学的安定度が微弱であることを意味する。更に、PEG400及び無水エタノールを共に使用した比較例5の組成物でも、物理的及び化学的安定度が微弱である。
【0062】
[90] 増粘剤を使用しなかった実施例8、12及び14の組成物は、増粘剤を使用しなかった実施例9〜11及び13の組成物と同程度の物理的安定度を示している。他方、漂白活性化剤であるTAEDを使用した比較例6の組成物は、漂白力は強いものの、物理的及び化学的安定度は微弱である。
【0063】
[91] 平均粒子サイズが620μmの過炭酸塩を使用した実施例12の組成物、並びに過炭酸塩3重量%及び充填剤(炭酸ナトリウム及び硫酸ナトリウム)60重量%を使用した実施例13の組成物は、良好な物理的及び化学的安定度を示している。過酸化物として過ホウ酸塩を使用した実施例14の組成物もまた、良好な物理的及び化学的安定度を示している。
【0064】
〔実験例2:漂白力テスト〕
[93] 洗浄力測定器(Terg−O−tometer)に、水(20℃、硬度:50CaCOppm)、実施例1、4、8及び11で製造された本発明の漂白剤組成物、並びに市販の粉末漂白剤1g/Lを各々添加した。ここに、赤ワイン(EMPA 114)、コーヒー(wfk BC−2)、唐辛子(wfk 10P)、茶(wfk BC−3)等の標準汚染布(5cm×5cm)、各10枚を10分間洗浄した後、水道水で3分間濯ぎ、室温で乾燥させた。布の洗浄前後の白色度を色度計で測定し、下記数式1のクベルカ・ムンク(Kubellka−Munk)式を用いて漂白力を計算した。結果を下記表3に示す。
【0065】
[94] (数式1)
漂白率(%)=[(1−Rs)/2Rs−(1−Rb)/2Rb]/[(1−Rs)/2Rs−(1−Ro)/2Ro]×100
【0066】
[97] 数式1において、Rsは汚染布の表面反射率であり、Rbは洗浄後の布の表面反射率であり、Roは白布の表面反射率である。
【0067】
【表3】

【0068】
[99] 表3に示されている通り、実施例1、4、8及び11で製造された本発明の非水性酸素系液状漂白剤組成物は、市販の粉末漂白剤と比較して、赤ワイン、コーヒー、唐辛子及び茶の汚染に対して同等又はそれ以上の漂白力を示している。
【0069】
[100] 本発明の実施形態を説明・例示したが、様々な変更及び修飾が、添付の特許請求の範囲によってのみ制限される本発明の精神を逸脱することなく、その範囲内でなされ得ることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0070】
[103] 前述した通り、本発明の非水性酸素系液状漂白剤組成物は、液状漂白剤及び粉末漂白剤の長所を両方有する。そのような長所としては、長時間の保管中でも低温及び高温条件で有効酸素の損失が少ない、という高い化学的安定性、並びに、粘度の変化がなく、漂白剤組成物中の液体成分及び固体成分間の相分離が生じない、という高い物理的安定性が挙げられる。
【0071】
[104] 更に、本発明の非水性酸素系液状漂白剤組成物は、漂白力に優れ、低温での溶解度が高く、使用時に粉塵が発生しない、等の特徴を有し、多目的に、例えば、衣類の漂白及び染みの除去、台所及び浴室の掃除、等に利用可能である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体状の過酸化物0.1〜85重量%、非水性有機溶媒10〜80重量%、陰イオン性界面活性剤0.1〜10重量%、非イオン性界面活性剤0.1〜10重量%、及び安定剤0.01〜15重量%を含む非水性酸素系液状漂白剤組成物であって、
粘度が500〜5000000cps(25℃)であり、
前記固体状の過酸化物が液体成分中に分散された懸濁液をなしていることを特徴とする非水性酸素系液状漂白剤組成物。
【請求項2】
前記安定剤は、過酸化物安定剤、流動学的安定剤及びそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1記載の非水性酸素系液状漂白剤組成物。
【請求項3】
前記安定剤は、過酸化物安定剤0.01〜10重量%、流動学的安定剤0.01〜5重量%、又は過酸化物安定剤0.01〜10重量%と流動学的安定剤0.01〜5重量%との混合物であることを特徴とする、請求項1記載の非水性酸素系液状漂白剤組成物。
【請求項4】
増粘剤0.01〜5重量%、充填剤0.1〜85重量%、又は蛍光増白剤、酵素、香料及びそれらの混合物0.01〜2重量%を更に含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水性酸素系液状漂白剤組成物。
【請求項5】
前記過酸化物の平均粒子サイズは1〜700μmの範囲にあることを特徴とする、請求項1記載の非水性酸素系液状漂白剤組成物。
【請求項6】
前記過酸化物は、過炭酸塩、過ホウ酸塩、過硫酸塩、過酸化尿素及びそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1記載の非水性酸素系液状漂白剤組成物。
【請求項7】
前記非水性有機溶媒は、ポリアルキレングリコール、多価アルコール、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、アルキルエステル、アルキルアミド及びそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1記載の非水性酸素系液状漂白剤組成物。
【請求項8】
前記非水性有機溶媒は、分子量200〜600のポリエチレングリコール、グリセロール、メチルエステル、メチルアミド、メチルアセテート、及びC〜CアルキレングリコールモノC〜Cアルキルエーテルであることを特徴とする、請求項1又は7記載の非水性酸素系液状漂白剤組成物。
【請求項9】
前記陰イオン性界面活性剤は、下記化学式1で表される直鎖型アルキルベンゼンスルホン酸塩、下記化学式2で表される脂肪酸塩、下記化学式3で表される直鎖型アルキルスルホン酸塩、下記化学式4で表されるαオレフィンスルホン酸塩、及びそれらの混合物、からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1記載の非水性酸素系液状漂白剤組成物。
(化学式1)
−C−SO
(化学式2)
−CH−COOX
(化学式3)
−CH−SO
(化学式4)
−CH=CHCH−SO
[化学式1〜4において、RはC〜C15のアルキル鎖であり、RはC11〜C16のアルキル鎖であり、RはC11〜C18アルキル鎖であり、Xはアルカリ金属である。]
【請求項10】
前記非イオン性界面活性剤は、下記化学式5で表される脂肪酸アルコールポリオキシエチレングリコール、下記化学式6で表される脂肪酸ポリオキシエチレングリコール、下記化学式7で表されるアルキルフェニルポリオキシエチレングリコール、及びそれらの混合物、からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1記載の非水性酸素系液状漂白剤組成物。
(化学式5)
−CH−(OCHCH−OH
(化学式6)
−CO−(OCHCH−OH
(化学式7)
−C−(OCHCH−OH
[化学式5〜7において、nは5〜25の整数であり、RはC11〜C18のアルキル鎖である。]
【請求項11】
前記陰イオン性界面活性剤と前記非イオン性界面活性剤との重量比は3:1〜1:3であることを特徴とする、請求項1記載の非水性酸素系液状漂白剤組成物。
【請求項12】
前記過酸化物安定剤は、有機酸、有機酸の塩、アミノポリホスホン酸塩化合物、及びそれらの混合物、からなる群から選択されることを特徴とする、請求項2又は3記載の非水性酸素系液状漂白剤組成物。
【請求項13】
前記有機酸は、クエン酸、ジピコリン酸、グルコン酸及びそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項12記載の非水性酸素系液状漂白剤組成物。
【請求項14】
前記アミノポリホスホン酸塩化合物は、ヒドロキシエチレンジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸塩)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸塩)及びアミノトリ(メチレンホスホン酸塩)からなる群から選択されることを特徴とする、請求項12記載の非水性酸素系液状漂白剤組成物。
【請求項15】
前記流動学的安定剤は、安息香酸、安息香酸の誘導体、及びそれらの混合物、からなる群から選択されることを特徴とする、請求項2又は3記載の非水性酸素系液状漂白剤組成物。
【請求項16】
前記増粘剤は、脂肪酸、架橋されたアクリル共重合体、コロイダルシリカ、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、及びそれらの混合物、からなる群から選択されることを特徴とする、請求項4記載の非水性酸素系液状漂白剤組成物。
【請求項17】
前記脂肪酸は、飽和又は不飽和C10〜C18脂肪酸からなる群から選択される少なくとも2種の混合物であることを特徴とする、請求項16記載の非水性酸素系液状漂白剤組成物。
【請求項18】
前記架橋されたアクリル共重合体は、0.75〜1.5%のポリアリルスクロースで架橋されたアクリル酸共重合体であることを特徴とする、請求項16記載の非水性酸素系液状漂白剤組成物。
【請求項19】
前記コロイダルシリカは、表面積が200□/gであり、平均粒子サイズが10〜12□である親水性ヒュームドシリカ、又は表面積が100□/gであり、平均粒子サイズが10〜20□である疎水性ヒュームドシリカであることを特徴とする、請求項16記載の非水性酸素系液状漂白剤組成物。
【請求項20】
前記充填剤は、炭酸ナトリウム(NaCO)、重炭酸ナトリウム(NaHCO)及び硫酸ナトリウム(NaSO)から選択される1種、又はそれらのうちの複数種の混合物であることを特徴とする、請求項4記載の非水性酸素系液状漂白剤組成物。


【公表番号】特表2008−546897(P2008−546897A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519154(P2008−519154)
【出願日】平成17年9月23日(2005.9.23)
【国際出願番号】PCT/KR2005/003162
【国際公開番号】WO2007/035009
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(503188966)ディーシー ケミカル カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】