説明

非水系二次電池

【課題】バリや粉末等がセパレータを突き破った際に短絡による異常な発熱を防止できる安全性に優れた非水系二次電池を提供すること。
【解決手段】本発明の非水系二次電池は、巻回電極体の正極11は、金属箔からなる集電体12の両面に活物質合剤層14が配置されているとともに一部に金属箔が露出した部分を有し、この正極11が前記金属が露出した部分とともにセパレータ23を介して負極17と対向しており、金属箔が露出した部分のうち、セパレータ23を介して負極17と対向している部分に金属箔よりも電子導電性が低く、かつ非絶縁性の材料からなる保護層16を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系二次電池に関し、特にバリや粉末等がセパレータを突き破った際に短絡による異常な発熱を防止できる安全性に優れた非水系二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯型の電子機器や、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)などの急速な普及に伴い、それに使用される電池への要求仕様は、年々厳しくなり、特に小型・軽量化、高容量・高出力でサイクル特性が優れ、性能の安定したものが要求されている。そして、二次電池分野では他の電池に比べて高エネルギー密度であるリチウムイオン電池に代表される非水系二次電池が注目され、このリチウム非水系二次電池の占める割合は二次電池市場において大きな伸びを示している。
【0003】
このリチウム非水系二次電池は、例えば巻回電極群を備えるリチウム非水系二次電池においては、細長いシート状の銅箔等からなる負極芯体(集電体)の両面に負極用活物質合剤を被膜状に塗布した負極と、細長いシート状のアルミニウム箔等からなる正極芯体の両面に正極用活物質合剤を被膜状に塗布した正極との間に、微多孔性のポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム或いはそれらの積層フィルム等からなるセパレータを配置し、負極及び正極をセパレータにより互いに絶縁した状態で円柱状又は楕円形状に巻回した後、角型電池の場合は更に巻回電極体を押し潰して偏平状に形成し、負極及び正極の各所定部分にそれぞれ負極タブ及び正極タブを接続して所定形状の外装内に収納した構成を有している。
【0004】
また、積層電極群を備えるリチウム非水系二次電池においては、シート状の銅箔等からなる負極芯体の片面ないし両面に負極用活物質合剤を被膜状に塗布した負極と、シート状のアルミニウム箔等からなる正極芯体の両面に正極用活物質合剤を被膜状に塗布した正極との間に、微多孔性のポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム或いはそれらの積層フィルム等からなるセパレータを配置し、負極及び正極をセパレータにより互いに絶縁した状態で多数積層して積層電極群を形成し、それぞれの負極及び正極の各所定部分に形成された正極タブ同士及び負極タブ同士をそれぞれ並列に接続して所定形状の外装内に収納した構成を有している。
【0005】
ところで、リチウムイオン電池に代表される非水系二次電池においては、充電時に正極活物質から放出されたリチウムイオンを負極活物質に円滑に吸蔵させるために、負極合剤層は必ず正極合剤塗布部を越えてセパレータを介して対向していなければならない。従って、非水系二次電池には、正極の活物質未塗布部分、すなわち金属箔からなる集電体の一部が露出している部分が、セパレータを介して負極と対向した構造が少なからず存在する。
【0006】
このような一方の電極の金属箔からなる集電体の一部が露出している部分がセパレータを介して他方の電極と対向した構造を有する場合、落下や振動などにより電極の一部や電極から剥離した粉末がセパレータを貫通して短絡した際に大きな電流が流れ、発熱を引き起こす可能性がある。また、上述のような巻回電極群ないしは積層電極群の作製に際しては、負極材及び正極材から所定の負極及び正極が切り出されるが、その際に負極及び正極の切断端部、すなわち金属箔からなる集電体の切断端部にバリが発生することがあり、このバリにより隣接するセパレータが突き破られ、このバリを介して負極と正極とが電気的に導通して短絡回路が形成されることがある。この場合においても短絡回路により、電池はその使用中に異常な熱を発生し、容量低下を招き、しかも電池寿命を短くする原因にもなっていた。
【0007】
そのため、例えば、下記特許文献1及び2には、正極、セパレータ、負極のうち少なくとも正極リードに対向する部分の負極に、正極と負極とをセパレータを介在させて重ねた状態で形成される電極巻回体の作製時に、負極を位置決めし、電極巻回体が形成される際に正極との短絡の原因となる正極側及び/又は負極側に生じているバリの高さよりも厚い所定の絶縁テープを、位置決めされた負極の少なくとも一方の面における正極との短絡想定位置に貼着させた非水系二次電池が開示されている。
【0008】
また、下記特許文献3には、例えば巻回電極体の正負両極の金属が露出した突出部の根本部分の両面に絶縁性樹脂からなる絶縁層を形成することによりセパレータの軸長方向の巻ズレに起因して正負両極の非突出端部が露出しても、絶縁層の存在により正負両極の突出部の根本部分との間の短絡を防止するとともに、電極板の打ち抜き等に起因するバリによる短絡を防止するようにした非水系二次電池が開示されている。
【0009】
ここで、この下記特許文献3に開示されている巻回電極群を備えた非水系二次電池の一例を図12〜図13を用いて説明する。なお、図12は下記特許文献3に開示されている巻回電極群を備えた非水系二次電池全体の断面斜視図であり、図13は図12の巻回電極群を概略的に示す断面模式図である。
【0010】
この巻回電極群を備えた非水系二次電池50は、図12に示すように、両端に正電極端子51及び負電極端子52をもつ芯棒53と、正極板54、負極板55及び二枚のセパレータ56からなる巻回電極体57と、ケース58とから構成されている。芯棒53は、巻回電極体57の巻回軸芯であり、巻回軸長方向の両端に互いに背向してケース58から突出して外部に電力を供給する正負一対の正電極端子51及び負電極端子52を有する。すなわち芯棒53は、正電極端子51と、負電極端子52と、両電極端子51、52の間に介在し両電極端子51、52を絶縁して連結する絶縁性の連結ピン59とから構成されており、この連結ピン59が両電極端子51、52に嵌合して両電極端子51、52を連結している。
【0011】
巻回電極体57は、帯状の正極板54及び負極板55と、両電極端子51、52の間にそれぞれ介在して両電極板54、55とともに巻かれている二枚の帯状のセパレータ56とからなる。正極板54は、突出部60を形成する帯状のアルミニウム箔からなる集電板61と、この集電板61の両面の矩形の領域に塗布されたリチウムマンガン酸化物等の正極活物質層62とからなる。同様に負極板55は、突出部63を形成する帯状の銅箔からなる集電板64と、この集電板64の両面の矩形の領域に塗布されたカーボン等の負極活物質層65とからなる。
【0012】
正極板54の突出部60と負極板55の突出部63とは、巻回軸長方向に対して互いに反対側に突出して形成されている。両突出部60、63には、活物質62、65が塗布されておらず、集電板61、64の金属箔部分が露出している。すなわち、活物質62、65は、正極板54及び負極板55の集電板61、64のうち、それぞれセパレータ56によって分離される矩形の領域にしか塗布されていない。両突出部60、63は、それぞれ、内周面及び外周面の根本部分に所定の幅で配設された短絡防止層である絶縁層66、67をもつ。絶縁層66、67は、電解液に対して不溶性の樹脂であるポリエチレンをホットメルト法で薄く塗布して形成されている。
【0013】
それゆえ、図13に示すように、正負両極板54、55の突出部60、63はそれぞれ他方の極の非突出部68、69との間にセパレータ56が挟まっており、一方の極の突出部60、63と他方の極の非突出部68、69との間は、セパレータ56によって絶縁されているが、それだけではなく、絶縁層66、67によっても絶縁されている。従って、巻回工程において巻ズレが起こり、セパレータ56が一方の極の突出部60、63と他方の極の非突出部68、69との間から外れてしまった場合にも、絶縁層66、67の存在により両電極板54、55の間の短絡は防止され、更には、正極板の側端部に打ち抜きによるバリが生じていても正負両極板54、55の間での短絡は防止されるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平10−241737号公報(段落[0018]〜[0027]、[0040]〜[0050]、図1、図5、図7)
【特許文献2】特開2002−042881号公報(第3頁右欄〜第4頁左欄、図8)
【特許文献3】特開2001−093583号公報(特許請求の範囲、段落[0154]〜[0173]、[0275]〜[0276]、図1〜図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述のような従来例によれば、一応正極及び負極の作製時に生じたバリによる問題点は十分に解決することができる。しかし、短絡防止層として絶縁層を用いると、上記のようにセパレータを突き破った状態でも短絡していなければ充放電が可能であるから、その状態で長期にわたり電池を使用し続けると、損傷した部分が起点になってセパレータが破膜して大きな短絡を引き起こし、電池が異常な発熱を生じる問題があった。
【0016】
本願の発明者等は、上述のようなバリや電極から剥離した粉末などがセパレータを突き破った状態ではあるが短絡していない状態となった非水系二次電池の安全性を確保し得る構成につき種々実験を重ねた結果、このような状態となった場合には絶縁性を維持するよりもむしろ穏やかな放電を引き起こすことができれば、異常な発熱を避けながら、電池電圧の低下によって機器側で電池の異常を検知することができること、及び、最終的には電池が完全に放電してしまうために非水系二次電池の安全性を確保できることに気付いた。そして、このようなバリや粉末などがセパレータを突き破った状態ではあるが短絡していない状態となった場合に穏やかな放電を引き起こすことができる構成として、上述の従来例の非水系二次電池で採用されている短絡防止層である絶縁層に換えて、集電体よりも電子導電性が低いが非絶縁性材料を保護層として採用すれば解決し得ることを見出した。
【0017】
一方、EV、HEV用途の非水系二次電池では、大電流負荷特性を良好にするため、単位面積あたりの活物質合剤塗布量を少なくして厚さを薄くし、多層に積層ないしは長尺の電極を何層にも巻回した電極群を使用することが行われている。このような電極群の積層ズレないしは巻回ズレを自動的に検出するためには、従来から使用されているX線透過像で検出しても、X線透過量が少なく、電極群の積層ズレないし巻回ズレの検出が困難である。加えて、上述のような保護層を形成した電極群の積層ズレないし巻回ズレの検出は、活物質合剤層、保護層及び集電体の3者間のそれぞれの境界を検出する必要があるため、従来から使用されているX線透過像で検出する方法では更に識別困難となってしまう。
【0018】
本願の発明者等は、このような保護層を形成することにより非水系二次電池の安全性を確保するだけでなく、活物質合剤層、保護層及び集電体の3者間のそれぞれの境界を検出できるようにして電極群の積層ズレないし巻回ズレの検出ができるようにするため、保護層の構成材料及び検出手段について更に検討を重ねた結果、保護層に添加される導電性材料としての炭素材料の粒径(比表面積)を変えることにより、光学センサを用いて画像処理を行うことで容易に活物質合剤層、保護層及び集電体の3者間のそれぞれの境界を検出することができることを見出した。
【0019】
すなわち、本発明は、非水系二次電池において、バリや粉末等がセパレータを突き破った際に穏やかな放電を引き起こすことにより短絡による異常な発熱を防止でき、その電池を使用している機器側で電池の異常を検知することができ、しかも、最終的には電池を完全に放電させてその電池を使用している機器が作動しないようにすることができる安全性に優れた非水系二次電池を供給することを目的とする。
【0020】
更に、本発明は、非水系二次電池において、バリ等がセパレータを突き破った際に穏やかな放電を引き起こすことにより短絡による異常な発熱を防止でき、その電池を使用している機器側で電池の異常を検知することができ、しかも、最終的には電池を完全に放電させてその電池を使用している機器が作動しないようにすることができるとともに、製造時に自動的に電極群の積層ズレないし巻回ズレを検出することができる、生産性及び安全性に優れた非水系二次電池を供給することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の上記目的を達成するため、請求項1に記載の非水系二次電池の発明は、
長尺状の正極と長尺状の負極とがセパレータを介して巻回された巻回電極群を有し、
前記正極は、金属箔からなる集電体の両面に活物質合剤層が配置されているとともに、長手方向に沿った少なくとも一方の端部に前記金属箔が露出した部分を有する非水系二次電池であって、
前記金属箔が露出した部分のうち、前記セパレータを介して前記負極と対向している部分に、前記金属箔よりも電子導電性が低く、かつ非絶縁性の材料からなる保護層が、前記正極の長手方向に沿って形成されていることを特徴とする。
【0022】
本発明においては、非水系二次電池が、長尺状の正極と長尺状の負極とがセパレータを介して巻回された巻回電極群を有し、前記正極は、金属箔からなる集電体の両面に活物質合剤層が配置されているとともに、長手方向に沿った少なくとも一方の端部に前記金属箔が露出した部分を有するものであること、前記保護層は前記金属箔よりも電子導電性が低く、かつ非絶縁性の材料からなることが必須である。この保護層の電子導電性が前記金属箔の電子導電性と同じかあるいはそれよりも電子導電性が良好であると、実質的に正極と負極を直接短絡した場合と同様に大電流が流れてしまい、電池は異常発熱してしまうので、所期の効果が奏されない。
【0023】
また、本発明においては、非水系溶媒系電解質を構成する非水系溶媒(有機溶媒)としては、カーボネート類、ラクトン類、エーテル類、エステル類などを使用することができ、これら溶媒の2種類以上を混合して用いることもできる。これらの中ではカーボネート類、ラクトン類、エーテル類、ケトン類、エステル類などが好ましく、カーボネート類がさらに好適に用いられる。
【0024】
具体例としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)、シクロペンタノン、スルホラン、3−メチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホラン、3−メチル−1,3オキサゾリジン−2−オン、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、エチルブチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、酢酸メチル、酢酸エチル、1,4−ジオキサンなどを挙げることができる。
【0025】
同じく電解質としては、過塩素酸リチウム(LiClO)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、ホウフッ化リチウム(LiBF)、六フッ化砒酸リチウム(LiAsF)、トリフルオロメチルスルホン酸リチウム(LiCFSO)、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム〔LiN(CFSO〕などのリチウム塩が挙げられる。中でもLiPF、LiBFを用いるのが好ましく、前記非水系溶媒に対する溶解量は、0.5〜2.0モル/Lとするのが好ましい。
【0026】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の非水系二次電池において、前記保護層は、前記正極における前記活物質合剤層の形成部と非形成部の境界部に沿って形成されていることを特徴とする。
【0027】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の非水系二次電池において、前記負極は、長手方向に沿った少なくとも一方の端部に金属箔が露出した部分を有し、前記巻回電極群の一方の端部には前記正極の金属箔が露出した部分が位置し、前記巻回電極群の他方の端部には前記負極の金属箔が露出した部分が位置していることを特徴とする。
【0028】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の非水系二次電池において、前記正極の金属箔からなる集電体がアルミニウムもしくはアルミニウムを主体とする合金からなることを特徴とする。
【0029】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の非水系二次電池において、前記正極の活物質合剤層が金属酸化物を含むことを特徴とする。
【0030】
この金属酸化物としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出することが可能なLixMO(但し、MはCo、Ni、Mnの少なくとも1種である)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物、すなわち、LiCoO、LiNiO、LiNiyCo1−y(y=0.01〜0.99)、Li0.5MnO、LiMnO、LiCoMnNi(x+y+z=1)などが一種単独もしくは複数種を混合して用いられる。
【0031】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の非水系二次電池において、前記負極は炭素を主体とする活物質合剤層を備えていることを特徴とする。この場合、上記炭素を主体とする活物質としては、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、コークス、ガラス状炭素、炭素繊維、またはこれらの焼成体の一種あるいは複数種混合したものを使用できる。
【0032】
また、請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の非水系二次電池において、前記炭素を主体とする活物質合剤層は、金属箔からなる集電体の少なくとも片面に配置されていることを特徴とする。
【0033】
また、請求項8に記載の発明は、請求項5に記載の非水系二次電池において、前記負極の金属箔からなる集電体は、銅もしくは銅を主体とする合金からなることを特徴とする。
【0034】
また、請求項9に記載の発明は、請求項5に記載の非水系二次電池において、前記負極の金属箔からなる集電体は、NiもしくはNiを主体とする合金からなることを特徴とする。
【0035】
また、請求項10に記載の発明は、請求項5に記載の非水系二次電池において、前記負極の金属箔からなる集電体は、ステンレススチールからなることを特徴とする。
【0036】
また、請求項11に記載の発明は、請求項1〜10のいずれかに記載の非水系二次電池において、前記保護層は、絶縁性高分子物質と、電子伝導性の炭素、半導体材料、電導性酸化物からなる群から選択された少なくとも1つの材料の粉末を分散させたものであることを特徴とする。
【0037】
また、請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の非水系二次電池において、前記絶縁性高分子物質は、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフッ化ビニリデンからなる群から選択された少なくとも一種であることを特徴とする。
【0038】
また、請求項13に記載の発明は、請求項1〜10のいずれかに記載の非水系二次電池において、前記保護層は、絶縁性高分子物質と、電子伝導性の炭素、半導体材料、電導性酸化物からなる群から選択された少なくとも1つの材料と、充填剤とを分散させたものであることを特徴とする。
【0039】
また、請求項14に記載の発明は、請求項13に記載の非水系二次電池において、前記充填剤は、ポリイミド粉末、アルミナ粉末からなる群から選択された少なくとも一種であることを特徴とする。
【0040】
また、請求項15に記載の発明は、請求項14に記載の非水系二次電池において、前記炭素の粉末は、比表面積が40m/g以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0041】
本発明は上記の構成を備えることにより以下に述べるような優れた効果を奏する。すなわち、請求項1〜3の発明によれば、負極の端部に形成されたバリや電極から剥離した粉末等がセパレータを突き破って正極と接触することがあっても、このバリ等は最初に正極に設けられた保護層に接触するから、電池を穏やかに放電させることで電池の異常な発熱を回避すると共に、電池電圧低下によって電池の異常を機器側に検出させることができるようになる。特に、巻回電極群を備えた非水系二次電池では、集電体端面の多くの部分から電流経路を得ることができるようになり、高出力の電池とするのに好適な構成になる。また、その一方、この構成では巻回方向に沿って長い範囲で金属が露出しており、またバリ等による短絡が生じる可能性が高い構成であることから、本発明の保護層を有することが、特に効果的である。
【0042】
また、請求項4の発明によれば、アルミニウムもしくはアルミニウムを主体とする合金は、従来からリチウムイオン電池等の非水系二次電池の正極の集電体として汎用的に使用されているものであって、従来の非水系二次電池の場合と同様の安定した特性の正極が得られる。
【0043】
また、請求項5の発明によれば、金属酸化物は従来からリチウムイオン電池等の非水系二次電池の正極活物質として汎用的に使用されているものであって、充電電位が高い非水系二次電池が得られる。
【0044】
また、請求項6の発明によれば、負極活物質としての炭素質材料は、リチウム金属やリチウム合金に匹敵する放電電位を有しながらも、デンドライトが成長することがないために安全性が高く、さらに初期効率に優れ、電位平坦性も良好であり、また、エネルギー密度も高いという優れた効果を奏する非水系二次電池が得られる。
【0045】
また、請求項7の発明によれば、負極としては炭素を主体とする活物質合剤層を金属箔の両面に設けたものだけでなく片面に設けたものも任意に選択して使用し得るので、電池設計の自由度が増加する。
【0046】
また、請求項8〜10の発明によれば、銅もしくは銅を主体とする合金(請求項8)、NiもしくはNiを主体とする合金(請求項9)、ステンレススチール(請求項10)の金属箔からなる負極の集電体は、従来からリチウムイオン電池等の非水系二次電池の炭素を主体とする負極活物質用の集電体と汎用的に使用されているものであって、安定した負極特性を備える非水系二次電池が得られる。
【0047】
また、請求項11〜12の発明によれば、絶縁性高分子物質中に電子導電性の炭素、半導体材料、電導性酸化物等の無機材料の粉末を分散させたものからなるので、容易に集電体を構成する金属よりも電子導電性が低く、かつ非絶縁性の材料からなる保護層を形成することができる。特に絶縁性高分子物質として、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフッ化ビニリデンからなる群から選択された少なくとも一種とすることにより、非絶縁性の材料からなる保護層を特に効果的に形成することができる。
【0048】
更に、請求項13〜14の発明によれば、保護層が、絶縁性高分子物質と、絶縁性高分子物質に導電性を与える炭素材料と、充填剤とを使用したため、乾燥後の保護層、活物質合剤層及び集電体の間に色の相違が生じるので、光学センサにより活物質合剤層と集電体との間及び保護層と活物質合剤との間の境界を明確に検出できるようになり、非水系二次電池の製造時に光学センサ及び画像処理装置を用いて極板群の積層ズレないし巻回ズレを自動的に検出できるようになるから、非水系二次電池の製造効率が向上する。特に充填剤として、ポリイミド粉末、アルミナ粉末からなる群から選択された少なくとも一種とすることにより、保護層を効果的に着色することが可能となり、活物質合剤層と集電体との間及び保護層と活物質合剤との間の境界をより明確に検出できる。
【0049】
また、請求項15の発明によれば、炭素材料の比表面積を40m/g以下とすることにより、保護層と活物質合剤との境界を光学センサによって確実に検出することができる。これは、炭素材料の比表面積が40m/gを越えると、保護層の色と活物質合剤の色が同じ黒色となってしまうため、光学センサを使用しても両者間の境界を検出し難くなるためである。また、炭素材料の比表面積が、1.5m/g未満となると、炭素材料の粒径が大きくなり、保護層の塗工性が悪くなるため、下限は1.5m/gが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】参考例1の非水系二次電池の電極サイズを示す平面図である。
【図2】参考例1の非水系二次電池の概略構成を示す外装を透視した平面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】参考例1の非水系二次電池の電池挙動の時間変化を示すグラフである。
【図5】比較例1の非水系二次電池の電池挙動の時間変化を示すグラフである。
【図6】比較例2の非水系二次電池の電池挙動の時間変化を示すグラフである。
【図7】参考例1の非水系二次電池の別の電池挙動の時間変化を示すグラフである。
【図8】比較例2の非水系二次電池の別の電池挙動の時間変化を示すグラフである。
【図9】参考例6の非水系二次電池の断面図である。
【図10】実施例1の非水系二次電池の電極部分の部分拡大断面図である。
【図11】実施例1の非水系二次電池を縦方向に切断して示す斜視図である。
【図12】従来の巻回電極群を備えた非水系二次電池全体の断面斜視図である。
【図13】図12の巻回電極群を概略的に示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本願発明を実施するための最良の形態を参考例、実施例及び比較例を用いて詳細に説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための非水系二次電池を例示するものであって、本発明をこの実施例に特定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。
【0052】
[参考例1]
まず、参考例1で使用した非水系二次電池の作製方法について、図1〜図3を参照しながら説明する。なお、図1は参考例1の非水系二次電池の電極サイズを示す平面図であり、図2は参考例1の非水系二次電池の概略構成を示す外装を透視した平面図であり、また、図3は図2のA−A線断面図である。
【0053】
〔正極の作製〕
正極11は次のようにして作製した。まず、リチウム、ニッケル、コバルト、マンガンからなる複合酸化物からなる正極活物質94質量%をアセチレンブラック、グラファイト等の炭素粉末3質量%と、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)よりなる結着剤3質量%とを混合し、得られた混合物にN−メチルピロリドン(NMP)を加えて混練して活物質合剤スラリーを作製した。これらの活物質合剤スラリーを厚さが20μmのアルミニウム箔からなる正極集電体12の片面に、電極の端部にはアルミニウム箔の露出部13ができるようにして、均一に塗付して活物質層14を塗布した正極板を形成した。この後、活物質層14を塗布した正極板を乾燥機中に通過させて、スラリー作製時に必要であった有機溶剤を除去して乾燥させた。乾燥後、この乾燥正極板をロールプレス機により圧延して、厚みが0.06mmの正極板とした。
【0054】
次いで、活物質塗布部と露出部の境界15から5.5mmの間隔をあけてアルミニウム箔露出部13上にマスキングテープを施し、活物質塗布部とマスキングテープとの間を、N−メチルピロリドンを溶媒としてポリイミドと比表面積が70m/gの炭素粉末の質量比が1:1になるよう混合したスラリーを塗布し、乾燥して保護層16を設けた。このようにして作製された電極を寸法55.5mm×70mmに切り出し、幅9mmの帯状のアルミニウム箔露出部13と幅5.5mmの帯状の保護層16を設けた正極11を得た。この保護層16は表面抵抗計でアルミニウム箔よりも抵抗が大きいことを確認した。
【0055】
〔負極の作製〕
負極17は次のようにして作製した。まず、黒鉛粉末98質量%、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンゴムをそれぞれ1質量%混合し、水を加えて混練してスラリーを作製した。このスラリーを厚さ12μmの銅箔からなる負極集電体18の片面に、電極の端部には銅箔の露出部19ができるように均一に塗布して負極活物質層20を塗布した負極板を得た。この後、活物質層20を塗布した負極板を乾燥機中に通過させて、スラリー作製時に必要であった有機溶剤を除去して乾燥させた。乾燥後、この乾燥負極板をロールプレス機により圧延して、厚みが0.05mmの負極板とした。次いで、得られた電極を寸法55.5mm×70mmに切り出し、図1に示すように幅9mmの帯状の銅箔露出部19を設けた負極17を得た。
【0056】
〔電解液の作製〕
エチレンカーボネートとジエチルカーボネ一卜を体積比3:7で混合した溶媒に対し、LiPFを1モル/Lとなるように溶解して電解液とした。
【0057】
〔電池の作製〕
正極のアルミニウム箔露出部13にアルミニウム集電タブ21、負極の銅箔露出部19にニッケル集電タブ22をそれぞれ接続し、正極と負極と厚さ0.022mmのポリエチレン製多孔質セパレータ23を重ねてラミネートフィルム外装体24中に挿入し、アルミニウム集電タブ21及びニッケル集電タブ22の導出部にそれぞれ薄いシール材25を介して封止するとともに他の二方向も封止し、残り一方向を注液口とした注液前電池を作製した。この注液前電池を真空中で乾燥した後、アルゴン雰囲気中のドライボックス中で前記電解液を注液し、加圧減圧を行なって気泡の除去及び電解液の浸透を行なった後に注液口を封止した。完成した電池10の構造は、図2及び図3に示すとおりである。
【0058】
得られた電池10を、25℃において、50mAの定電流で電池電圧が4.2Vになるまで定電流充電を行い、電池電圧が4.2Vに達した後は4.2Vの定電圧で2時間充電を行った。そして、この充電した電池のラミネートケースの一部を切り開き、負極17と正極11の保護層16が重なっている領域(図2の符号26で示す破線丸印の部分)のセパレータを3mmφ切り取り、負極裏面側から1mmφのアルミナ棒で突いて保護層16と負極17を接触させた。その際の電池表面温度と電圧を測定し、電池挙動を確認した。この電池挙動の時間変化を図4に示し、試験開始5分後の電池電圧及び温度上昇結果を下記表1に示した。
【0059】
[比較例1]
比較例1の非水系二次電池は、正極の作製手順において、参考例1で保護層を設けた部分をアルミニウム箔のままとした以外は参考例1と同じ手順で電池を作製した。そして、得られた電池を25℃において、50mAの定電流で電池電圧が4.2Vになるまで定電流充電を行い、電池電圧が4.2Vに達した後は4.2Vの定電圧で2時間充電を行った。そして、この充電した電池のラミネートケースの一部を切り開き、負極と正極のアルミニウム箔露出部が重なっている領域(図2の符号26で示す破線丸印に対応する部分)のセパレータを3mmφ切り取り、負極裏面側から1mmφのアルミナ棒で突いてアルミニウム箔露出部と負極を接触させた。その際の電池表面温度と電圧を測定し、電池挙動を確認した。この電池挙動の時間変化を図5に示し、試験開始5分後の電池電圧及び温度上昇結果を参考例1の結果とまとめて下記表1に示した。
【0060】
[比較例2]
比較例2の非水系二次電池は、正極の作製手順において、参考例1の保護層の構成を変えた以外は参考例1と同じ手順で電池を作製した。保護層は、参考例1で作製した保護層に変えて、N−メチルピロリドンを溶媒としてポリイミドのみを混合したスラリーを塗布して絶縁層を設けた。この絶縁層は、実質的に上記特許文献3に開示されている絶縁層と同様のものである。
【0061】
得られた電池を25℃において、50mAの定電流で電池電圧が4.2Vになるまで定電流充電を行い、電池電圧が4.2Vに達した後は4.2Vの定電圧で2時間充電を行った。そして、この充電した電池のラミネートケースの一部を切り開き、負極と正極の保護層が重なっている領域(図2の符号26で示す破線丸印に対応する部分)のセパレータを3mmφ切り取り、負極裏面側から1mmφのアルミナ棒で突き刺して保護層と負極を接触させた。その際の電池表面温度と電圧を測定し、電池挙動を確認した。この電池挙動の時間変化を図6に示し、試験開始5分後の電池電圧及び温度上昇結果を参考例1の結果とまとめて下記表1に示した。
【0062】
【表1】

【0063】
表1及び図4〜図6に示した結果から以下のことが分かる。すなわち、参考例1の非水系二次電池では短絡時に時間とともに穏やかな電圧低下を示すのに対して、比較例1の非水系二次電池では、短絡時に急激に0.1Vまで電圧が低下し、また、電池表面の温度が4℃上昇した。従って、本発明に従う保護層を設けた場合、短絡による急激な温度上昇を抑えつつ、電池を穏やかに放電させることができた。
【0064】
一方、比較例2の非水系二次電池の場合は、保護層が絶縁層のため、負極と正極の絶縁層が接触して絶縁層に傷が着いても変化が認められなかったので、図6に示したように5分(300秒)で測定を中止した。この比較例2の非水系二次電池は、セパレータに傷や破断が生じても電池が充放電できる状態である。
【0065】
この状態で落下、振動等によってセパレータの破断の進行と電極の変形、あるいは破断したセパレータに面した絶縁層の脱落によって、正極集電体と負極が接触して短絡した場合、比較例1のような大きな短絡を生じる可能性がある。そこで、上述の試験を行った直後の参考例1及び比較例2の非水系二次電池について、上記のような状況を想定して試験開始1時間後にセパレータの3mmφの穴をあけた箇所周辺の保護層(参考例1)あるいは絶縁層(比較例2)を5mmφ剥離して、正極集電体と負極とを負極裏面側から1mmφのアルミナ棒で突いて接触させ電池を短絡させた。その際の電池表面温度と電圧を測定し、電池挙動を確認した。この電池挙動の時間変化を図7(参考例1)及び図8(比較例2)に示し、試験開始5分後の電池電圧及び温度上昇結果をまとめて下記表2に示した。
【0066】
【表2】

【0067】
表2に示した結果から次のことがわかる。すなわち、参考例1の非水系二次電池では短絡させても電池温度上昇が認められなかったが、比較例2の非水系二次電池では短絡後4℃の温度上昇が認められた。このことは、参考例1の非水系二次電池で使用されている保護層の電子導電性は正極集電体であるアルミニウム箔の電子導電性よりも小さいから、一旦バリ等によってセパレータに穴ないしは傷が生じると参考例1の非水系二次電池は穏やかに放電し続けるため電池電圧が徐々に低下している(表1及び図4参照)ため、この状態で落下、振動等によって、セパレータの破断の進行と電極の変形、あるいは破断したセパレータに面した保護層の脱落によって正極集電体と負極が直接接触して短絡しても、もはや大きな電流は流れることがないために電池表面温度の上昇は見られなかったことを意味する。この電池電圧の低下は容易に検知できるため、参考例1の非水系二次電池を使用している機器側では容易に電池の異常を検知することができる。
【0068】
これに対し、比較例2の電池では一旦バリ等によってセパレータに穴ないしは傷が生じても、図6に示したように、電池が充放電できる状態であって、電池電圧は低下せず、一見正常に動作する。しかしながら、この状態で落下、振動等によって、セパレータの破断の進行と電極の変形、あるいは破断したセパレータに面した保護層の脱落によって正極集電体と負極が直接接触して短絡すると、大電流が流れてしまうため、電池の表面温度が上昇してしまう。したがって、絶縁層を使用した比較例2の非水系二次電池ではセパレータに穴ないしは傷が生じたことを電池の正極と負極が短絡するまで検知し得ないが、正極集電体よりも電子導電性が低くかつ非絶縁性の保護層を使用した参考例1の非水系二次電池は、電池電圧の低下に基いて電池の正極と負極が短絡する前にセパレータに穴ないしは傷が生じたことを検知することができるため、安全性に優れた非水系二次電池が得られる。
【0069】
上述の参考例1では、非絶縁性の保護層形成材料のうち導電性粒子として比表面積が70m/gと大きいアセチレンブラックからなる炭素材料を使用した例を示したが、この参考例1の非絶縁性の保護層は安全性確保という観点では良好な効果を奏するにしても、乾燥後の保護層と活物質合剤層との色が実質的に同じ黒色となってしまうため、光学センサを使用しても保護層と活物質合剤層との間の境界の検出が困難となってしまう。そこで、以下の参考例2〜5では、保護層形成材料の物性を種々変えることにより、光学センサによって保護層と活物質合剤層との間の境界の検知状態、及び、保護層と集電体との間の境界の検知状態について確認を行った。
【0070】
[参考例2]
リチウム、ニッケル、コバルト、マンガンの複合酸化物からなる正極活物質94質量%をアセチレンブラック、グラファイト等の炭素粉末3質量%と、PVdFよりなる結着剤3質量%とを混合し、得られた混合物にNMPを加えて混練して活物質合剤スラリーを作製した。これらの活物質合剤スラリーを厚さが20μmのアルミニウム箔からなる正極集電体12の片面に、電極の端部にはアルミニウム箔の露出部13ができるようにして、均一に塗付して活物質層14を塗布した正極板を形成した。この後、活物質層14を塗布した正極板を乾燥機中に通過させて、スラリー作製時に必要であった有機溶剤を除去して乾燥させた。乾燥後、この乾燥正極板をロールプレス機により圧延して、厚みが0.06mmの正極板11とした。
【0071】
次いで、NMPを溶媒としてポリイミドを20質量%含むポリイミドワニス5.0gに導電性物質として比表面積40m/gの炭素粉末0.1gを混合し、NMPを加えて全体で25.1gになるように混合した。この混合物を厚さ20μmのアルミニウム箔に50μmのギャップのドクターブレードにて均一に塗布して乾燥して保護層を作製した。このようにして作製した参考例2の正極、保護層を所定の幅に切断し、アルミニウム箔、正極活物質層及び保護層をそれぞれ光学センサを用いて境界が判別できるか否かを調査した。結果を他の参考例の結果とともに表3に纏めて示した。
【0072】
[参考例3]
参考例3では、保護材料の調合以外は参考例2と同じ手順で保護層を作製した。すなわち、NMP溶媒にPVdFを5質量%含むバインダー溶液20gにポリイミド粉末を1g、更に比表面積40m/gの炭素粉末0.1gを混合し、NMPを追加添加して全体で25.1gとなるように混合した。同様に光学センサを用いた結果を他の参考例の結果とともに表3に纏めて示した。
【0073】
[参考例4]
参考例4では、保護材料の調合以外は参考例2と同じ手順で保護層を作製した。すなわち、NMP溶媒にポリアミドイミドを21.1質量%含むバインダー溶液にポリイミド粉末を1g、比表面積40m/gの炭素粉末0.1gをそれぞれ混合し、更にNMPを追加添加して全体で25.1gとなるように混合した。同様に光学センサを用いた結果を他の参考例の結果とともに表3に纏めて示した。
【0074】
[参考例5]
参考例5では、保護材料の調合以外は参考例2と同じ手順で保護層を作製した。すなわち、NMP溶媒にポリアミドイミドを21.1質量%含むバインダー溶液にアルミナ粉末を1g、更に比表面積40m/gの炭素粉末0.1gを混合し、NMPを追加添加して全体で25.1gとなるように混合した。同様に光学センサを用いた結果を他の参考例の結果とともに表3に纏めて示した。
【0075】

【0076】
表3の結果から、比表面積が小さい(粒径が大きい)炭素材料を用いた参考例2〜5では、乾燥後の保護層の色が活物質合剤層の色とは明確に識別できるため、光学センサを用いた画像処理により容易に保護層と集電体間、保護層と活物質合剤間の境界を検出することができることが確認できた。
【0077】
なお、参考例1では炭素材料の比表面積が70m/gと大きい(粒径が小さい)ために、乾燥後の色が保護層の色と同じ黒色となってしまっており、光学センサを使用しても自動的に保護層と活物質合剤間の境界の識別することは困難であった。この炭素材料の比表面積を70m/gより徐々に小さく(徐々に粒径を大きく)すると、色調が黒色から緑色ないし灰色に変化し、比表面積が40m/g以下となると実質的に光学センサにより誤りなく保護層と活物質合剤間の境界の識別ができるようになった。
【0078】
また、保護層の色調は炭素材料だけでなく充填剤の物性によっても変化するが、少なくとも保護層内の炭素材料の比表面積は40m/g以下が好ましいことが分かった。したがって、保護層内の炭素材料としてこのような比表面積範囲内のものを使用することにより、保護層を設けたことによる非水系二次電池の安全性向上という効果に加えて、非水系二次電池の製造時に光学センサ及び画像処理装置を用いて極板群の積層ズレないし巻回ズレを自動的に検出できるようになるから、非水系二次電池の製造効率が向上するという効果も生じるようになる。
【0079】
[参考例6]
参考例1では、正極、負極がそれぞれ単層の積層電池を作製した例を示したが、本発明は特に電池の形状、構成が限定されるものではなく、複数の電極を積層させたスタック型電池や、巻回電極群を備えた円筒形電池などにも適用が可能である。参考例6としてはスタック構造の非水系二次電池10Aを作製した。この参考例6の非水系二次電池10Aの断面図を図9を用いて説明するが、図1〜図3に示した参考例1の非水系二次電池10の構成と同一の構成部分については同一の参照符号を付与してその詳細な説明は省略する。なお、図9は参考例6のスタック構造を備えた非水系二次電池の縦断面図である。
【0080】
この参考例6の非水系二次電池10Aの正極11Aは、正極集電体12の両面に正極活物質層14を設けるとともに正極集電体12の金属よりも電子導電性が低くかつ非絶縁性の保護層16も両面に設けた点以外は参考例1の正極と同様に作製した。同じく負極17Aは、負極集電体18の両面に負極活物質層20を設けた以外は参考例1の負極と同様にして作製した。そして、参考例6の非水系二次電池10Aは、この正極11A及び負極17Aをそれぞれ4組用い、同一極の集電体が同一方向に延在するようにして互いにセパレータ23により絶縁しながら積層し、正極側の集電体同士及び負極側の集電体同士を互いに集電板26ないし27により接続し、参考例1の非水系二次電池10の場合と同様にして電解液の注入及びラミネートフィルム外装体24への封入を行い、正極端子28及び負極端子29を導出することにより作製した。
【0081】
この参考例6の非水系二次電池10Aも、正極11Aの集電体12の金属が露出した部分のうち、セパレータ23を介して負極17と対向している部分に正極集電体12の金属よりも電子導電性が低く、かつ非絶縁性の材料からなる保護層16が設けられているので、参考例1の非水系二次電池の場合と同様の効果を奏する安全性に優れた非水系二次電池が得られる。
【0082】
[実施例1]
実施例1としては、巻回電極群を備える非水系二次電池10Bを作製した。この実施例1の電池の断面図を図10及び図11を用いて説明するが、図1〜図3に示した参考例1の非水系二次電池10の構成と同一の構成部分については同一の参照符号を付与してその詳細な説明は省略する。なお、図10は実施例1の非水系二次電池10Bの電極部分の部分拡大断面図であり、図11は実施例1に係る円筒形の非水系二次電池10Bを縦方向に切断して示す斜視図である。
【0083】
この実施例1の非水系二次電池10Bの正極11Bは、短冊状の正極集電体12の両面に正極活物質層14を設けるとともに正極集電体12の金属よりも電子導電性が低くかつ非絶縁性の保護層16も両面に設けた点以外は参考例1の正極と同様に作製した。同じく負極17Bは、短冊状の負極集電体18の両面に負極活物質層20を設けた以外は参考例1の負極と同様にして作製した。
【0084】
その後、正極11Bと負極17Bとセパレータ23を介して巻回して渦巻状電極体30を作製し、この渦巻状電極体30の上下にそれぞれ集電板26及び27を配置した後、負極端子を兼ねるスチール製の円筒形の電池外装缶33の内部に収容し、負極17Bの金属露出部19を集電板27に溶接すると共に、電池外装缶33内側底部に集電板27を溶接し、正極11Bの金属露出部13を集電板26に溶接すると共に、集電板26を封口体34の底板部に溶接し、この電池外装缶33の開口部から所定の非水系電解液を注入した後、封口体34によって電池外装缶33を密閉することにより製造した。
【0085】
このような非水系二次電池は、元々電池性能や電池の信頼性が高いという優れた効果を奏するものであるが、本実施例1の非水系二次電池10Bは、正極11Bの金属が露出した部分のうち、セパレータ23を介して負極17Bと対向している部分に正極集電体12の金属よりも電子導電性が低く、かつ非絶縁性の材料からなる保護層16が設けられているので、参考例1の非水系二次電池の場合と同様の効果を奏するより安全性に優れた非水系二次電池が得られる。
【符号の説明】
【0086】
10、10A、10B 非水系二次電池
11、11A、11B 正極
12 正極集電体
13 正極の金属露出部
14 正極活物質層
15 活物質塗布部と露出部の境界
16 保護層
17、17A、17B 負極
18 負極集電体
19 負極の金属露出部
20 負極活物質層
21 正極集電タブ
22 負極集電タブ
23 セパレータ
26、27 集電板
28 正極端子
29 負極端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の正極と長尺状の負極とがセパレータを介して巻回された巻回電極群を有し、
前記正極は、金属箔からなる集電体の両面に活物質合剤層が配置されているとともに、長手方向に沿った少なくとも一方の端部に前記金属箔が露出した部分を有する非水系二次電池であって、
前記金属箔が露出した部分のうち、前記セパレータを介して前記負極と対向している部分に、前記金属箔よりも電子導電性が低く、かつ非絶縁性の材料からなる保護層が、前記正極の長手方向に沿って形成されていることを特徴とする非水系二次電池。
【請求項2】
前記保護層は、前記正極における前記活物質合剤層の形成部と非形成部の境界部に沿って形成されていることを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池。
【請求項3】
前記負極は、長手方向に沿った少なくとも一方の端部に金属箔が露出した部分を有し、
前記巻回電極群の一方の端部には前記正極の金属箔が露出した部分が位置し、前記巻回電極群の他方の端部には前記負極の金属箔が露出した部分が位置していることを特徴とする請求項1又は2に記載の非水系二次電池。
【請求項4】
前記正極の金属箔からなる集電体がアルミニウムもしくはアルミニウムを主体とする合金からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の非水系二次電池。
【請求項5】
前記正極の活物質合剤層が金属酸化物を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の非水系二次電池。
【請求項6】
前記負極は炭素を主体とする活物質合剤層を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の非水系二次電池。
【請求項7】
前記炭素を主体とする活物質合剤層は、金属箔からなる集電体の少なくとも片面に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の非水系二次電池。
【請求項8】
前記負極の金属箔からなる集電体は、銅もしくは銅を主体とする合金からなることを特徴とする請求項7に記載の非水系二次電池。
【請求項9】
前記負極の金属箔からなる集電体は、NiもしくはNiを主体とする合金からなることを特徴とする請求項7に記載の非水系二次電池。
【請求項10】
前記負極の金属箔からなる集電体は、ステンレススチールからなることを特徴とする請求項7に記載の非水系二次電池。
【請求項11】
前記保護層は、絶縁性高分子物質と、電子伝導性の炭素、半導体材料、電導性酸化物からなる群から選択された少なくとも1つの材料の粉末を分散させたものであることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の非水系二次電池。
【請求項12】
前記絶縁性高分子物質は、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフッ化ビニリデンからなる群から選択された少なくとも一種であることを特徴とする請求項11に記載の非水系二次電池。
【請求項13】
前記保護層は、絶縁性高分子物質と、電子伝導性の炭素、半導体材料、電導性酸化物からなる群から選択された少なくとも1つの材料と、充填剤とを分散させたものであることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の非水系二次電池。
【請求項14】
前記充填剤は、ポリイミド粉末、アルミナ粉末からなる群から選択された少なくとも一種であることを特徴とする請求項13に記載の非水系二次電池。
【請求項15】
前記炭素の粉末は、比表面積が40m/g以下であることを特徴とする請求項13に記載の非水系二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−234822(P2012−234822A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−155666(P2012−155666)
【出願日】平成24年7月11日(2012.7.11)
【分割の表示】特願2006−97950(P2006−97950)の分割
【原出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】