非水電解質電池及び電池パック
【課題】集電体の切れが抑制され、エネルギー密度の向上を図ることが可能な非水電解質電池を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、外装部材1と、外装部材1内に収容され、正極3及び負極4を含む電極群2とを備えた非水電解質電池が提供される。少なくとも正極3または負極4の一方は、第1の電極部と、第2の電極部とを有する。第1の電極部は、第1の金属基板と、第1の金属基板の少なくとも一部に形成された活物質含有部とを含む。第2の電極部は、第2の金属基板と、第2の金属基板の少なくとも一部に形成された活物質含有部とを含む。第1の金属基板は、第2の金属基板よりも引張り強度が大きい。第1の電極部の一部は、第2の電極部の一部よりも電極群のより外側に配置されている。
【解決手段】実施形態によれば、外装部材1と、外装部材1内に収容され、正極3及び負極4を含む電極群2とを備えた非水電解質電池が提供される。少なくとも正極3または負極4の一方は、第1の電極部と、第2の電極部とを有する。第1の電極部は、第1の金属基板と、第1の金属基板の少なくとも一部に形成された活物質含有部とを含む。第2の電極部は、第2の金属基板と、第2の金属基板の少なくとも一部に形成された活物質含有部とを含む。第1の金属基板は、第2の金属基板よりも引張り強度が大きい。第1の電極部の一部は、第2の電極部の一部よりも電極群のより外側に配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、非水電解質電池及び電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池のような電気自動車やハイブリッド電気自動車への適用が進むにつれ、更なる高エネルギー密度化が必要とされている。
【0003】
一般的に非水電解質電池の正極及び負極は、アルミニウム、銅等の金属箔上に、活物質を含むスラリーを塗工することにより得られたものが用いられる。高エネルギー密度化のためには、上記金属箔を薄くし、電極の低体積化、軽量化する必要がある。しかしながら、上記金属箔を薄くすると、電極の強度が低下し、切れが生じやすくなるという問題がある。特に、電極群における集電タブ取り付け部となる最外層に位置する電極は、他の部分と比べて応力がかかりやすく、切れが生じて電池容量の低下や、内部抵抗の増大等が生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−110171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実施形態は、集電体の切れが抑制され、エネルギー密度の向上を図ることが可能な非水電解質電池と、この非水電解質電池を備えた電池パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、外装部材と、外装部材内に収容され、正極及び負極を含む電極群とを備えた非水電解質電池が提供される。少なくとも正極または負極の一方は、第1の電極部と、第2の電極部とを有する。第1の電極部は、第1の金属基板と、第1の金属基板の少なくとも一部に形成された活物質含有部とを含む。第2の電極部は、第2の金属基板と、第2の金属基板の少なくとも一部に形成された活物質含有部とを含む。第1の金属基板は、第2の金属基板よりも引張り強度が大きい。第1の電極部の一部は、第2の電極部の一部よりも電極群のより外側に配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態に係る非水電解質電池の断面図。
【図2】図1の非水電解質電池に用いられる正極を示す平面図。
【図3】図1の非水電解質電池に用いられる絶縁部材と正極端子を示す斜視図。
【図4】第1の実施形態に係る非水電解質電池の電極群の断面図。
【図5】第2の実施形態に係る非水電解質電池の電極群の断面図。
【図6】第3の実施形態に係る非水電解質電池の断面図。
【図7】第4の実施形態に係る非水電解質電池の電極群の断面図。
【図8】第5の実施形態に係る非水電解質電池の電極群の展開斜視図。
【図9】第5の実施形態に係る非水電解質電池の電極群の斜視図。
【図10】第5の実施形態に係る非水電解質電池の電極群の要部を示す断面図。
【図11】第5の実施形態に係る非水電解質電池の電極群の要部を示す断面図。
【図12】第6の実施形態に係る非水電解質電池の断面図。
【図13】図12の非水電解質電池に用いられる端子を示す斜視図。
【図14】第7の実施形態に係る電池パックの分解斜視図。
【図15】第7の実施形態に係る電池パックの電気回路を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
第1の実施形態によれば、外装部材と、外装部材内に収容され、正極及び負極を含む電極群とを備えた非水電解質電池が提供される。電極群は、正極と負極とがその間にセパレータを介在させながら交互に積層された積層型電極群である。第1の電極部及び第2の電極部を有する電極が負極の実施形態である。
【0010】
図1に示すように、外装部材1は、中空の略直方体形状をなし、例えば金属材料から形成されている。金属材料は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金等を挙げることができる。電極群2は、外装部材1内に収容されている。電極群2は、正極3と負極4との間にセパレータ5を介在したものが順に積み重ねられた(スタックされた)ものである。電極群2の両方の最外層は、セパレータ5からなる。正極3は、正極集電体3aと、正極集電体3aの両側に保持された層状の正極活物質含有部3bとを含む。図2に示すように、正極集電体3aは、正極3の一方の短辺から帯状に引き出され、引き出された部分は正極タブ6として機能する。
【0011】
負極4は、第1の負極部4Aと、第2の負極部4Bとを有する。第1の負極部4Aは、最外層のセパレータ5と接している。第1の負極部4Aは、第2の負極部4Bよりも電極群のより外側に配置されている。よって、第1の負極部4Aは、第2の負極部4Bよりも外装部材の近くに配置されている。
【0012】
第1の負極部4Aは、集電体としての第1の金属基板4cと、第1の金属基板4cの両側に保持された層状の負極活物質含有部4bとを含む。第2の負極部4Bは、集電体としての第2の金属基板4dと、第2の金属基板4dの両側に保持された層状の負極活物質含有部4bとを含む。第1の金属基板4c及び第2の金属基板4dは、それぞれ、負極4の一方の短辺から帯状に引き出され、引き出された部分は負極タブ7として機能する。正極タブ6は、電極群2の一方の短辺からそれぞれ引き出され、かつ負極タブ7は、電極群2の他方の短辺からそれぞれ引き出されている。第1の金属基板4cの引張り強度は、第2の金属基板4dの引張り強度よりも大きい。
【0013】
外装部材1の互いに対向する両側面には、貫通孔が形成されている。2つの貫通孔それぞれに、絶縁部材8が配置されている。図3に示すように、絶縁部材8は、中央付近にスリット8aを有する略直方体形状のブロックからなる。正極端子9は、矩形状の頭部9aと、頭部9aから延出した矩形柱状の軸部9bとを有する。正極端子9の頭部9aは、外装部材1の外側に突出した絶縁部材8上に配置されている。また、正極端子9の軸部9bは、絶縁部材8のスリット8aを貫通し、外装部材1の内側に突出している。一方、図1に示すように、負極端子10は、矩形状の頭部10aと、頭部10aから延出した矩形柱状の軸部10bとを有する。負極端子10の頭部10aは、外装部材1の外側に突出した絶縁部材8上に配置されている。また、負極端子10の軸部10bは、絶縁部材8のスリット8aを貫通し、外装部材1の内側に突出している。正極端子9及び負極端子10は、導電性材料から形成することができる。導電性材料には、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅等を挙げることができる。
【0014】
複数枚ある正極タブ6は、積層され、積層されたものが正極端子9の軸部9bに溶接されている。また、複数枚ある負極タブ7についても、積層され、積層されたものが負極端子10の軸部10bに溶接されている。溶接は、例えば、抵抗溶接、超音波溶接等を挙げることができる。なお、非水電解質は、電極群2に保持されている。
【0015】
なお、図1では、集電体の両側に活物質含有部が形成されているが、これに限定されるものではなく、集電体の金属基板の片側のみに活物質含有部が形成されていても良い。また、図1では、最外層のセパレータ5と接する負極のみを第1の負極部4Aとしたが、これに限定されるものではない。例えば、図4に示されるように、第2の負極部4Bの一部を第1の負極部4Aに変更することができる。
【0016】
以下、非水電解質電池に含まれる各部材を説明する。
【0017】
1)負極4
負極4は、第1の負極部4Aと、第2の負極部4Bとを有する。
【0018】
引張り強度は、JIS B7721(2009年)の引張試験機を使用し、試験温度が25℃で、試験片の幅が10mmで、上下固定部間の距離が50mmで、かつ引張速度が10mm/min以下の条件で試験片が破断するまでの強さを測定することにより得られるものである。
【0019】
第1の負極部4Aの第1の金属基板4cの引張り強度を第2の負極部4Bの第2の金属基板4dよりも大きくする理由について説明する。積層型電極群2の端面から延出された複数枚の負極タブ7をまとめて一つの負極端子10に溶接すると、電極群2の最外層付近の負極の負極タブ7に大きな引張力が加わる。第1の負極部4Aの一部が第2の負極部4Bの一部よりも電極群のより外側に配置されていても、第1の金属基板の引張り強度4cが第2の金属基板4dの引張り強度以下であると、負極タブ7を負極端子10に溶接する際に負極タブ7に加わる引張力で電極群2の最外層付近の金属基板が破断する。第1の金属基板4cの引張り強度を第2の金属基板4dの引張り強度よりも大きくすることによって、負極タブ7を負極端子10に溶接する際の金属基板の破断を抑えることができる。
【0020】
第1,第2の金属基板4c,4dの引張強度は以下の(1)式の関係を満たすことが望ましい。
【0021】
X2×1.5≦X1 (1)
但し、X1は第1の金属基板4cの引張強度(N/mm)で、X2は第2の金属基板4dの引張強度(N/mm)である。
【0022】
第1,第2の金属基板4c,4dの引張強度が(1)式の関係を満足することによって、金属基板の破断を抑制する効果を高めることができ、金属基板を2種類使用することによるプロセスコストアップを超えるメリットを得ることができる。
【0023】
第1,第2の金属基板4c,4dの引張強度は、金属基板に使用する材料を変更することによって調節することが好ましい。金属基板の引張強度は、例えば、金属基板の厚さあるいは開口率を変更することによっても調整可能である。しかしながら、金属基板を厚くすることにより引張強度を高めると、金属基板の厚い部分に形成される活物質含有部の厚さを薄くする必要があるため、高いエネルギー密度を得られない恐れがある。また、金属基板の開口率を高めることにより引張強度を低くすると、金属基板として金属箔を用いた場合に金属基板の強度が著しく低下し、負極の作製が困難になる。
【0024】
第2の金属基板4dとしてアルミニウムを主成分とするものを使用した場合、第1の金属基板4cとしてアルミニウム合金もしくは銅を主成分として含むものを使用することができる。また、第2の金属基板4dとしてアルミニウム合金を主成分とするものを使用した場合、第1の金属基板4cとして銅を主成分として含むものを使用することができる。銅は、アルミニウムよりもせん断応力が強いため、第1の金属基板4cに用いるのに好適なものである。ここで、主成分とは、構成元素のうち99質量パーセント以上含まれる元素をいう。
【0025】
アルミニウムは、1000番系アルミニウム(JIS呼称1000番台)であることが望ましい。アルミニウム合金には、例えば、JIS呼称2000番台、3000番台、4000番台、5000番台、6000番台、7000番台の合金を使用することができる。アルミニウム合金は、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu及びSiよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素を含むことが好ましい。
【0026】
第1,第2金属基板4c,4dの厚さは、10μm以上50μm以下にすることができる。より好ましい範囲は、20μm以上50μm以下である。第1,第2金属基板4c,4dの厚さは、第1の金属基板の引張り強度が第2の金属基板の引張り強度よりも大きくなるように、金属基板に使用する材料の種類に応じて調整することができる。
【0027】
負極タブ7は、第1,第2金属基板4c,4dと同様な材料から形成される。
【0028】
負極活物質含有部に含まれる負極活物質は、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、合金などが挙げられる。負極活物質は、リチウム吸蔵放出電位が1.0V(vs. Li/Li+)以上貴であることが望ましい。金属基板がアルミニウムもしくはアルミニウム合金を含む場合に、例えば、1.0V(vs. Li/Li+)よりも卑な電位でリチウムを吸蔵する炭素質物などを用いると、金属基板が電気化学的に不安定になる恐れがある。負極活物質のリチウム吸蔵放出電位は、電池電圧を高くするために3V(vs. Li/Li+)よりも卑であることが好ましい。
【0029】
リチウム吸蔵放出電位が1.0V(vs. Li/Li+)以上貴な負極活物質は、チタン含有金属酸化物であることが好ましい。チタン含有金属酸化物は、1.5V(vs. Li/Li+)近傍でリチウムを吸蔵するため、アルミニウムもしくはアルミニウム合金を含む金属基板の溶解を回避することができる。
【0030】
チタン含有金属酸化物の例には、例えば、立方晶系スピネル型Li4+xTi5O12(0≦x≦3)及び斜方晶系ラムスデライト型Li2+yTi3O7(yは0≦y≦3)のようなリチウムチタン酸化物、リチウムチタン酸化物の構成元素の一部を異種元素で置換したリチウムチタン複合酸化物が含まれる。充放電サイクル寿命の観点からは、リチウム吸蔵・放出による格子体積変化が小さい立方晶系スピネル型のリチウムチタン酸化物が好ましい。
【0031】
負極活物質の他の例には、リチウム吸蔵放出電位が1〜2V(vs. Li/Li+)である、LixNb2O5(0≦x≦2)及びLixNbO3(0≦x≦1)のようなリチウムニオブ複合酸化物、リチウム吸蔵放出電位が2〜3V(vs. Li/Li+)であるLixMoO3(0≦x≦1)のようなリチウムモリブデン複合酸化物、リチウム吸蔵放出電位が1.8V(vs. Li/Li+)であるLixFeS2(0≦x≦4)のようなリチウム鉄複合硫化物等が含まれる。
【0032】
また、負極活物質として、TiO2のようなチタン酸化物、又は、TiとP、V、Sn、Cu、Ni、Co及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含有する金属複合酸化物を用いることもできる。これらの酸化物は、初回の充電時にリチウムを吸蔵してリチウムチタン複合酸化物となる。TiO2は、単斜晶系β型(ブロンズ型、或いはTiO2(B)とも言われる)で熱処理温度が300〜500℃の低結晶性のものが好ましい。
【0033】
TiとP、V、Sn、Cu、Ni、Co及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素を含有する金属複合酸化物の例には、例えば、TiO2−P2O5、TiO2−V2O5、TiO2−P2O5−SnO2、TiO2−P2O5−MeO(MeはCu、Ni、Co及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素)が含まれる。この金属複合酸化物は、結晶相とアモルファス相が共存もしくは、アモルファス相単独で存在したミクロ構造であることが好ましい。このようなミクロ構造であることによりサイクル性能が大幅に向上することができる。
【0034】
負極活物質には、上記で挙げられた活物質を単独で用いてもよいが、混合して用いてもよい。
【0035】
負極活物質含有部に含まれる他の成分は、結着剤、導電剤等が挙げられる。
【0036】
導電剤は、活物質の集電性能を高め、集電体との接触抵抗を抑える。導電剤の例は、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛を含む。
【0037】
結着剤は、活物質と導電剤を結着できる。結着剤の例は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム、スチレンブタジエンゴムを含む。
【0038】
負極活物質含有部中の活物質、導電剤及び結着剤は、それぞれ70質量%以上96質量%以下、2質量%以上28質量%以下及び2質量%以上28質量%以下の割合で配合することが好ましい。導電剤の量を2質量%以上とすることにより、負極活物質含有部の集電性能を向上させ、非水電解質電池の大電流特性を向上させることができる。また、結着剤の量を2質量%以上とすることにより、負極活物質含有部と集電体の結着性を高め、サイクル特性を向上させることができる。一方、導電剤及び結着剤はそれぞれ28質量%以下にすることが高容量化を図る上で好ましい。
【0039】
負極の作製方法を説明する。活物質、導電剤及び結着剤を汎用されている溶媒に懸濁してスラリーを調製する。このスラリーを第1の金属基板に塗布し、乾燥し、その後、プレスを施すことにより第1の電極部を得る。また、このスラリーを第2の金属基板に塗布し、乾燥し、その後、プレスを施すことにより第2の電極部を得る。スラリーを調製する代わりに、活物質、導電剤及び結着剤をペレット状に形成して負極活物質含有部とし、これを第1の金属基板、第2の金属基板それぞれに形成することにより、第1の電極部、第2の電極部を得てもよい。
【0040】
2)正極
正極3は、正極集電体3aと、正極集電体3aに保持された正極活物質含有部3bとを含む。なお、図1では、正極集電体の両側に正極活物質含有部が形成されているが、これに限定されるものではなく、正極集電体の片側のみに正極活物質含有部が形成されていても良い。
【0041】
正極活物質としては、酸化物、ポリマー等が挙げられる。
【0042】
例えば、酸化物としては、Liを吸蔵した二酸化マンガン(MnO2)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、及び、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4またはLixMnO2)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2)、リチウムコバルト複合酸化物(LixCoO2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLiNi1−yCoyO2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLiMnyCo1−yO2)、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物(LixMn2−yNiyO4)、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(LixFePO4、LixFe1−yMnyPO4、LixCoPO4等)、硫酸鉄(Fe2(SO4)3)、バナジウム酸化物(例えばV2O5)等が挙げられる。
【0043】
例えば、ポリマーとしては、ポリアニリンやポリピロール等の導電性ポリマー材料、ジスルフィド系ポリマー材料等が挙げられる。その他に、イオウ(S)、フッ化カーボン等も使用できる。
【0044】
好ましい正極活物質としては、正極電圧が高いリチウムマンガン複合酸化物(LixMn2O4)、リチウムニッケル複合酸化物(LixNiO2)、リチウムコバルト複合酸化物(LixCoO2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(LixNi1−yCoyO2)、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物(LixMn2−yNiyO4)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(LixMnyCo1−yO2)、リチウムリン酸鉄(LixFePO4)等が挙げられる。なお、上記組成式中のx、yは0〜1の範囲であることが好ましい。
【0045】
正極活物質含有部に含み得る他の成分には、結着剤及び導電剤を挙げることができる。
【0046】
導電剤は、活物質の集電性能を高め、集電体との接触抵抗を抑える。導電剤の例は、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛などの炭素質物を含む。
【0047】
結着剤は、活物質と導電剤を結着させる。結着剤の例は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴムを含む。
【0048】
正極活物質含有部中の活物質、導電剤及び結着剤は、それぞれ80質量%以上95質量%以下、3質量%以上18質量%以下及び2質量%以上17質量%以下の割合で配合することが好ましい。導電剤は、3質量%以上の量にすることにより上述した効果(活物質の集電性能を高め、集電体との接触抵抗を抑える)を発揮することができる。導電剤は、18質量%以下の量にすることにより高温保存下での導電剤表面での非水電解質の分解を低減することができる。結着剤は、2質量%以上の量にすることにより十分な正極強度が得られる。結着剤は、17質量%以下の量にすることにより、正極中の絶縁材料である結着剤の配合量を減少させ、内部抵抗を減少できる。
【0049】
正極集電体は、例えばアルミニウム箔、またはMg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu及びSiよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素を含むアルミニウム合金箔であることが好ましい。
【0050】
正極タブ6は、正極集電体と同様な材料から形成される。
【0051】
正極は、例えば活物質、導電剤及び結着剤を汎用されている溶媒に懸濁してスラリーを調製し、このスラリーを集電体に塗布し、乾燥し、その後、プレスを施すことにより作製される。正極は、また活物質、導電剤及び結着剤をペレット状に形成して正極活物質含有部とし、これを集電体上に形成することにより作製されてもよい。
【0052】
3)セパレータ
セパレータは、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース、もしくはポリフッ化ビニリデン(PVdF)を含む多孔質フィルム、または合成樹脂製不織布を用いることができる。好ましい多孔質フィルムは、ポリエチレンまたはポリプロピレンを含むものである。このような多孔質フィルムは、一定温度において溶融し、電流を遮断することが可能であるために安全性を向上できる。
【0053】
4)非水電解質
非水電解質は、例えば電解質を有機溶媒に溶解することにより調製される液状非水電解質、または液状電解質と高分子材料を複合化したゲル状非水電解質を用いることができる。
【0054】
液状非水電解質は、電解質を0.5M以上2.5M以下の濃度で有機溶媒に溶解したものであることが好ましい。
【0055】
電解質の例は、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム[LiN(CF3SO2)2]のリチウム塩、またはこれらの混合物を含む。電解質は、高電位でも酸化し難いものであることが好ましく、LiPF6が最も好ましい。
【0056】
有機溶媒の例は、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ビニレンカーボネートのような環状カーボネート;ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)のような鎖状カーボネート;テトラヒドロフラン(THF)、2メチルテトラヒドロフラン(2MeTHF)、ジオキソラン(DOX)のような環状エーテル;ジメトキシエタン(DME)、ジエトエタン(DEE)のような鎖状エーテル;またはγ−ブチロラクトン(GBL)、アセトニトリル(AN)、スルホラン(SL)を含む。これらの有機溶媒は、単独または混合溶媒の形態で用いることができる。
【0057】
高分子材料の例は、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンオキサイド(PEO)を含む。
【0058】
好ましい有機溶媒は、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)及びジエチルカーボネート(DEC)からなる群のうち、少なくとも2つ以上を混合した混合溶媒、またはγ−ブチロラクトン(GBL)を含む混合溶媒である。これらの混合溶媒を用いることにより、高温特性の優れた非水電解質二次電池を得ることができる。
【0059】
5)外装部材
外装部材には、図1に示すような金属製容器を用いることができる。金属製容器の厚さは1.0mm以下にすることが好ましく、より好ましい範囲は0.5mm以下である。或いは、金属製容器の代りにラミネートフィルム製容器を用いることもできる。ラミネートフィルム製容器の厚さは、0.5mm以下にすることが望ましい。
【0060】
外装部材の形状は、図1に示す角型に限定されるものではなく、例えば、扁平型(薄型)、円筒型、コイン型、及びボタン型等にすることができる。外装部材の例には、電池寸法に応じて、例えば携帯用電子機器等に積載される小型電池用外装部材、二輪乃至四輪の自動車等に積載される大型電池用外装部材などが含まれる。
【0061】
ラミネートフィルムは、樹脂層間に金属層を介在した多層フィルムが用いられる。金属層は、軽量化のためにアルミニウム箔若しくはアルミニウム合金箔が好ましい。樹脂層は、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の高分子材料を用いることができる。ラミネートフィルムは、熱融着によりシールを行って外装部材の形状に成形することができる。
【0062】
金属製容器は、アルミニウムまたはアルミニウム合金等から作られる。アルミニウム合金は、マグネシウム、亜鉛、ケイ素等の元素を含む合金が好ましい。合金中に鉄、銅、ニッケル、クロム等の遷移金属が含まれる場合、その量は100質量ppm以下にすることが好ましい。
【0063】
以上説明した第1の実施形態によれば、第1の負極部の一部が第2の負極部の一部よりも電極群のより外側に配置され、かつ第1の負極部の第1の金属基板の引張り強度が第2の負極部の第2の金属基板の引張り強度よりも大きいため、第1の金属基板及び第2の金属基板それぞれに設けられた負極タブを負極端子に溶接する際の金属基板の破断を抑制することができる。その結果、金属基板の厚さに拘らず、金属基板の破断に起因する電池容量の低下及び内部抵抗の増大を回避することができるため、高エネルギー密度を有する非水電解質電池を実現することができる。
【0064】
(第2の実施形態)
第2の実施形態によれば、外装部材と、外装部材内に収容され、正極及び負極を含む積層型電極群とを備えた非水電解質電池が提供される。第2の実施形態は、正極及び負極の双方が第1の電極部及び第2の電極部を有すること以外は、第1の実施形態と同様な構成を有する。
【0065】
第2の実施形態に係る非水電解質電池は、例えば、図5に示す電極群を備えること以外は、図1と同様な構造にすることができる。なお、図1〜図4と同様な部材については、
同符号を付して説明を省略する。
【0066】
正極3は、第1の正極部3Aと、第2の正極部3Bとを有する。第1の正極部3Aは、第1の負極部4Aとセパレータ5を介して対向している。第1の正極部3Aは、第2の正極部3Bよりも外側に位置している。よって、第1の正極部3Aは、第2の正極部3Bよりも外装部材の近くに配置されている。第1の正極部3Aは、集電体としての第1の金属基板3cと、第1の金属基板3cの両側に保持された層状の正極活物質含有部3bとを含む。第2の正極部3Bは、集電体としての第2の金属基板3dと、第2の金属基板3dの両側に保持された層状の正極活物質含有部3bとを含む。第1の金属基板3cの引張り強度は、第2の金属基板3dの引張り強度よりも大きい。第1の金属基板3c及び第2の金属基板3dは、それぞれ、正極3の一方の短辺から帯状に引き出され、引き出された部分は正極タブ6として機能する。
【0067】
以下、正極の第1,第2の金属基板について説明する。
【0068】
正極の第1,第2の金属基板の引張り強度は、第1の実施形態で説明したのと同様な方法で測定される。
【0069】
第1の金属基板3cの引張り強度を第2の金属基板3dよりも大きくする理由について説明する。積層型電極群2の端面から延出された複数枚の正極タブ6をまとめて一つの正極端子9に溶接すると、電極群2の最外層に近い正極の正極タブに大きな引張力が加わる場合がある。このため、第1の正極部3Aの一部を第2の正極部3Bの一部よりも外側に位置させ、かつ第1の金属基板3cの引張り強度を第2の金属基板3dの引張り強度よりも大きくすることによって、正極タブ6を正極端子9に溶接する際の金属基板の破断を抑えることができる。
【0070】
第1,第2の金属基板3c,3dの引張強度は以下の(2)式の関係を満たすことが望ましい。
【0071】
Y2×1.5≦Y1 (2)
但し、Y1は第1の金属基板3cの引張強度(N/mm)で、Y2は第2の金属基板3dの引張強度(N/mm)である。
【0072】
第1,第2の金属基板3c,3dの引張強度が(2)式の関係を満足することによって、金属基板の破断を抑制する効果を高めることができ、金属基板を2種類使用することによるプロセスコストアップを超えるメリットを得ることができる。
【0073】
第1,第2の金属基板3c,3dの引張強度は、金属基板に使用する材料を変更することによって調節することが好ましい。金属基板の引張強度は、例えば、金属基板の厚さあるいは開口率を変更することによっても調整可能である。しかしながら、金属基板を厚くすることにより引張強度を高めると、金属基板の厚い部分に形成できる活物質含有部の厚さを薄くする必要があるため、高いエネルギー密度を得られない恐れがある。また、金属基板の開口率を高めることにより引張強度を低くすると、金属基板として金属箔を用いた場合に金属基板の強度が著しく低下し、正極の作製が困難になる。
【0074】
第2の金属基板3dとしてアルミニウムを主成分とするものを使用した場合、第1の金属基板3cとしてアルミニウム合金を主成分として含むものを使用することができる。ここで、アルミニウムは、1000番系アルミニウム(JIS呼称1000番台)であることが望ましい。アルミニウム合金には、例えば、JIS呼称2000番台、3000番台、4000番台、5000番台、6000番台、7000番台の合金を使用することができる。アルミニウム合金は、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu及びSiよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素を含むことが好ましい。
【0075】
第1,第2金属基板3c,3dの厚さは、10μm以上50μm以下にすることができる。より好ましい範囲は、20μm以上50μm以下である。第1,第2金属基板3c,3dの厚さは、第1の金属基板の引張り強度が第2の金属基板の引張り強度よりも大きくなるように、金属基板に使用する材料の種類に応じて調整することができる。
【0076】
以上説明した第2の実施形態によれば、第1の負極部4Aの一部が第2の負極部4Bの一部よりも外側に配置され、かつ第1の正極部3Aの一部が第2の正極部3Bの一部よりも外側に配置されている。第1の負極部4A及び第1の正極部3Aそれぞれの第1の金属基板の引張り強度が、第2の負極部4B及び第2の正極部3Bそれぞれの引張り強度よりも大きい。その結果、正極及び負極の双方において、第1の金属基板及び第2の金属基板それぞれに設けられたタブを端子に溶接する際の金属基板の破断を抑制することができる。その結果、金属基板の厚さに拘らず、金属基板の破断に起因する電池容量の低下及び内部抵抗の増大を確実に回避することができるため、高エネルギー密度を有する非水電解質電池を実現することができる。
【0077】
(第3の実施形態)
第3の実施形態によれば、外装部材と、外装部材内に収容され、正極及び負極を含む積層型電極群とを備えた非水電解質電池が提供される。第3の実施形態では、第1の電極部及び第2の電極部を有する電極が正極である。
【0078】
第3の実施形態に係る電池の一例を図6に示す。図6では、図1〜図5と同様な部材について同符号を付して説明を省略する。
【0079】
正極3は、第1の正極部3Aと、第2の正極部3Bとを有する。第1の正極部3Aは、最外層のセパレータ5と接している。第1の正極部3Aは、第2の正極部3Bよりも外側に位置している。よって、第1の正極部3Aは、第2の正極部3Bよりも外装部材の近くに配置されている。また、第1の金属基板3cの引張り強度は、第2の金属基板3dの引張り強度よりも大きい。
【0080】
負極4は、負極集電体4aと、負極集電体4aの両側に保持された層状の負極活物質含有部4bとを含む。負極集電体4aは、負極4の一方の短辺から帯状に引き出され、引き出された部分は負極タブ7として機能する。負極集電体には、銅箔、アルミニウム箔またはMg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu及びSiよりなる群から選択される1種類以上の元素を含むアルミニウム合金箔等を使用することができる。
【0081】
なお、図6では、最外層のセパレータ5と接する正極のみを第1の正極部3Aとしたが、これに限定されるものではなく、第2の正極部3Bの一部を第1の正極部3Aに変更することが可能である。
【0082】
以上説明した第3の実施形態によれば、第1の正極部の一部が第2の正極部の一部よりも電極群のより外側に配置され、かつ第1の金属基板の引張り強度が第2の金属基板の引張り強度よりも大きいため、第1の金属基板及び第2の金属基板それぞれに設けられた正極タブを正極端子に溶接する際の金属基板の破断を抑制することができる。その結果、金属基板の厚さに拘らず、金属基板の破断に起因する電池容量の低下及び内部抵抗の増大を回避することができるため、高エネルギー密度を有する非水電解質電池を実現することができる。
【0083】
(第4の実施形態)
第4の実施形態によれば、外装部材と、外装部材内に収容され、正極及び負極を含む積層型電極群とを備えた非水電解質電池が提供される。第4の実施形態は、負極についても第1の電極部及び第2の電極部を有すること以外は、第3の実施形態と同様な構成を有する。
【0084】
第4の実施形態に係る非水電解質電池は、例えば、図7に示す電極群を備えること以外は、図6と同様な構造にすることができる。なお、図1〜図6と同様な部材については、
同符号を付して説明を省略する。
【0085】
正極3は、第1の正極部3Aと、第2の正極部3Bとを有する。第1の正極部3Aは、最外層のセパレータ5と接している。第1の正極部3Aは、第2の正極部3Bよりも外側に位置している。よって、第1の正極部3Aは、第2の正極部3Bよりも外装部材の近くに配置されている。また、第1の金属基板3cの引張り強度は、第2の金属基板3dの引張り強度よりも大きい。
【0086】
負極4は、第1の負極部4Aと、第2の負極部4Bとを有する。第1の負極部4Aは、第1の正極部3Aとセパレータ5を介して対向している。第1の負極部4Aは、第2の負極部4Bよりも外側に位置している。よって、第1の負極部4Aは、第2の負極部4Bよりも外装部材の近くに配置されている。第1の金属基板4cの引張り強度は、第2の金属基板4dの引張り強度よりも大きい。
【0087】
以上説明した第4の実施形態によれば、第1の負極部4Aの一部が第2の負極部4Bの一部よりも外側に配置され、かつ第1の正極部3Aの一部が第2の正極部3Bの一部よりも外側に配置されている。第1の負極部4A及び第1の正極部3Aそれぞれの第1の金属基板の引張り強度が、第2の負極部4B及び第2の正極部3Bそれぞれの引張り強度よりも大きい。その結果、正極及び負極の双方において、第1の金属基板及び第2の金属基板それぞれに設けられたタブを端子に溶接する際の金属基板の破断を抑制することができる。従って、金属基板の厚さに拘らず、金属基板の破断に起因する電池容量の低下及び内部抵抗の増大を確実に回避することができるため、高エネルギー密度を有する非水電解質電池を実現することができる。
【0088】
(第5の実施形態)
第5の実施形態によれば、外装部材と、外装部材内に収容され、正極及び負極を含む電極群とを備えた非水電解質電池が提供される。電極群は、正極と負極とセパレータとが扁平の渦巻状に捲回されたものである。正極及び負極のうち少なくとも一方は、第1の電極部と、第2の電極部とを有する。
【0089】
第5の実施形態の一例を図8〜図11を参照して説明する。図1〜図7と同様な部材は、同符号を付して説明を省略する。図8に示すように、捲回型電極群2は、正極3と負極4がその間にセパレータ5を介して偏平形状に捲回されたものである。正極3は、帯状の正極集電体3aと、正極集電体3aの長辺に平行な一端部からなる正極集電タブ11と、少なくとも正極集電タブ11を除いて正極集電体に形成された正極活物質含有部3bとを含む。一方、負極4は、帯状の負極集電体4aと、負極集電体4aの長辺に平行な一端部からなる負極集電タブ12と、少なくとも負極集電タブ12を除いて形成された負極活物質含有部4bとを含む。
【0090】
正極3、セパレータ5及び負極4は、正極集電タブ11が電極群の捲回軸方向にセパレータ5から突出し、かつ負極集電タブ12がこれと反対方向にセパレータ5から突出するよう、正極3及び負極4の位置をずらして捲回されている。このような捲回により、電極群2は、図9に示すように、渦巻状に捲回された一方の端面から正極集電タブ11が突出し、渦巻状に捲回された負極集電タブ12が他方の端面から突出している。正極集電タブ11同士は、例えば溶接によって電気的に接続されている。負極集電タブ12同士についても、例えば溶接によって電気的に接続されている。電極群2の最外層に位置しているのは、セパレータ5である。
【0091】
電極群2の最外層がセパレータ5の場合、最外層のセパレータ5と接する電極の最外周に第1の電極部を用いる。最外周以外の電極は、第2の電極部から形成しても、第1,第2の電極部の双方を用いても良い。例えば、最外層のセパレータ5と接する電極に第1の電極部、最外周よりも1周内側に第2の電極部、これよりも1周内側に第1の電極部というように、第1の電極部と第2の電極部を交互に配置することにより、第1の電極部の一部を第2の電極部の一部よりも外側に配置することができる。
【0092】
ここで、電極の最外周は、電極の巻き終わり端部と、この端部よりも1周内側の周の前記端部と対応する部分とで規定された部分である。図10は、最外層のセパレータ5と接する負極4の最外周の集電体に第1の金属基板4cを用いる例である。図10では、説明の便宜上、最外層のセパレータ5を省略している。負極4の最外周は、負極4の巻き終わり端部と、この端部よりも1周内側の周の前記端部と対応する部分とで規定された部分で、図10の矢印で示す部分である。負極4の最外周の負極集電体に第1の金属基板4cが用いられるため、最外周の負極4は第1の負極部4Aとなる。最外周以外の負極4は、負極集電体に第2の金属基板4dが用いられ、第2の負極部4Bを構成している。正極3のうち、最外周の正極の正極集電体3aに第1の金属基板3cを用い、最外周以外の正極の集電体3aに第2の金属基板3dを用いても良い。
【0093】
図10では、最外層のセパレータ5と接する電極を負極にしたが、正極にすることもできる。この場合、正極の最外周に第1の正極部を用い、最外周以外の正極は、第2の正極部のみか、第1の正極部と第2の正極部にすることができる。この場合にさらに、負極のうち、最外周の負極の負極集電体に第1の金属基板を用い、最外周以外の負極の集電体に第2の金属基板を用いても良い。
【0094】
捲回型電極群の正極及び負極の少なくとも一方の電極について、第1の電極部の一部を第2の電極部の一部よりも外側に配置した場合、捲回型電極群の電極の最内周を第1の電極部にすることができる。正負極及びセパレータを捲回する際、捲回の中心付近に位置する電極には応力がかかりやすい。電極の最内周に第1の電極部を用いることにより、捲回時に電極の集電体が破断するのを抑制することができる。ここで、電極の最内周とは、電極の巻き始め端部と、この端部よりも1周外側の周の前記端部と対応する部分とで規定された部分である。図11は、負極4を正極3よりも先に捲回して作製した電極群の中心部分の横断面図である。正極3よりも負極4が電極群の中心に近いため、負極4の最内周の集電体に第1の金属基板を用いることが望ましい。負極4の最内周は、負極4の巻き始め端部と、この端部よりも1周外側の周の前記端部と対応する部分とで規定された部分であり、図11において矢印で表示する部分である。負極4の最内周では、集電体に第1の金属基板4cが用いられ、第1の負極部4Aを構成している。負極4の最外周が正極3の最外周よりも外側に位置する場合、負極4の最外周にも第1の負極部4Aが用いられる。この場合、最内周及び最外周以外の負極の集電体に第2の金属基板4dを用い、第2の負極部4Bを構成することができる。一方、正極3の最外周が負極4の最外周よりも外側に位置する場合、最外周の正極3に第1の正極部3Aを用いる。この場合、最外周の負極には第2の負極部を用いることができる。
【0095】
図11に示すように負極4の最内周に第1の負極部4Aを用いる場合、正極3のうち最内周正極の正極集電体3aに第1の金属基板3cを用いても良い。図11では、正極よりも負極が電極群の中心に近い例を説明したが、正極の方を電極群の中心に近くすることもできる。この場合、正極の最内周を第1の正極部で構成することが望ましい。
【0096】
図10では、電極の最外周に第1の電極部を用いる例を説明したが、これに限定されず、電極の最外周より数周内側の周にも第1の電極部を用いることができる。また、図11では、電極の最内周に第1の電極部を用いる例を説明したが、これに限定されず、電極の最内周より数周外側の周にも第1の電極部を用いることができる。
【0097】
捲回型電極群は、例えば、第2の電極部と対向電極とをその間にセパレータを介して渦巻状に捲回した後、得られた捲回物を巻き芯として用い、第1の電極部と対向電極とをその間にセパレータを介して巻き付け、次いでプレス成型することにより作製される。第1の電極部と第2の電極部の電気的接続は、集電タブ同士を電気的に接続することによって得られる。
【0098】
第5の実施形態によれば、捲回型電極群において、第1の電極部の一部は第2の電極部の一部よりも外側に配置され、かつ第1の金属基板の引張り強度が第2の金属基板の引張り強度よりも大きい。その結果、第1の金属基板及び第2の金属基板それぞれに設けられたタブを端子に溶接する際の金属基板の破断を抑制することができる。従って、金属基板の厚さに拘らず、金属基板の破断に起因する電池容量の低下及び内部抵抗の増大を回避することができるため、高エネルギー密度を有する非水電解質電池を実現することができる。
【0099】
(第6の実施形態)
第6の実施形態によれば、外装部材と、外装部材内に収容され、第1〜第5の実施形態の電極群を複数備えた非水電解質電池が提供される。
【0100】
第6の実施形態に係る電池の一例を図12に示す。図12では、図1〜図11と同様な部材について同符号を付して説明を省略する。
【0101】
外装部材1内には、積層型電極群2が複数収納されている。各電極群2の最外層がセパレータ5で構成されている。最外層のセパレータ5と接する負極4は、第1の負極部4Aである。第1の負極部4Aよりも内側に位置する負極は、第2の負極部4Bである。第1の負極部4Aの第1の金属基板4cの引張り強度は、第2の負極部4Bの第2の金属基板4dの引張り強度よりも大きい。
【0102】
図13に示すように、負極端子13は、矩形状の頭部13aと、頭部13aから延出した矩形柱状の軸部13bと、軸部13bから二股に分岐したものからなる断面略コの字状の挟持部13cとを有する。また、正極端子14は、図12に示すように、矩形状の頭部14aと、頭部14aから延出した矩形柱状の軸部14bと、軸部14bから二股に分岐したものからなる断面略コの字状の挟持部14cとを有する。正極端子14及び負極端子13は、導電性材料から形成することができる。導電性材料には、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅等を挙げることができる。
【0103】
一方の電極群2の複数枚の負極タブ7が一つに積層され、負極端子13の挟持部13cに溶接されている。他方の電極群2の端面から突出した複数の負極タブ7も一つに積層され、負極端子13の挟持部13cに溶接されている。これにより、複数の電極群2の負極タブ7が一つにまとめられた状態で負極端子13と電気的に接続される。
【0104】
また、一方の電極群2の複数枚の正極タブ6が一つに積層され、正極端子14の挟持部14cに溶接されている。他方の電極群2の端面から突出した複数の正極タブ6も一つに積層され、正極端子14の挟持部14cに溶接されている。これにより、複数の電極群2の正極タブ6が一つにまとめられた状態で正極端子14と電気的に接続される。
【0105】
なお、第2の負極部4Bのうちのいずれかを第1の負極部4Aに変更することにより、第1の負極部4Aの一部を第2の負極部4Bの一部よりも外側に配置することができる。
【0106】
また、図12では、第1の実施形態の電池の電極群を用いたが、電極群はこれに限らず、第2〜第5の実施形態の電池の電極群を用いることができる。
【0107】
第6の実施形態によれば、第1〜第5の実施形態の電極群を複数備えるため、電池のエネルギー密度をより向上することができる。
【0108】
(第7の実施形態)
第7の実施形態に係る電池パックを詳細に説明する。
【0109】
電池パックは、第1〜第6の実施形態に係る非水電解質電池(即ち、単電池)を一以上有する。電池パックに複数の単電池が含まれる場合、各単電池は、電気的に直列、並列、或いは、直列と並列に接続して配置される。
【0110】
図14及び図15を参照して電池パック200を具体的に説明する。図14に示す電池パック200では、単電池21として扁平型非水電解質電池を使用している。
【0111】
複数の単電池21は、外部に延出した負極端子6及び正極端子7が同じ向きに揃えられるように積層され、粘着テープ22で締結することにより組電池23を構成している。これらの単電池21は、図15に示すように互いに電気的に直列に接続されている。
【0112】
プリント配線基板24は、負極端子6及び正極端子7が延出する単電池21側面と対向して配置されている。プリント配線基板24には、図15に示すようにサーミスタ25、保護回路26及び外部機器への通電用端子27が搭載されている。なお、組電池23と対向する保護回路基板24の面には組電池23の配線と不要な接続を回避するために絶縁板(図示せず)が取り付けられている。
【0113】
正極側リード28は、組電池23の最下層に位置する正極端子7に接続され、その先端はプリント配線基板24の正極側コネクタ29に挿入されて電気的に接続されている。負極側リード30は、組電池23の最上層に位置する負極端子6に接続され、その先端はプリント配線基板24の負極側コネクタ31に挿入されて電気的に接続されている。これらのコネクタ29、31は、プリント配線基板24に形成された配線32、33を通して保護回路26に接続されている。
【0114】
サーミスタ25は、単電池21の温度を検出するために用いられ、その検出信号は保護回路26に送信される。保護回路26は、所定の条件で保護回路26と外部機器への通電用端子27との間のプラス側配線34a及びマイナス側配線34bを遮断できる。所定の条件とは、例えばサーミスタ25の検出温度が所定温度以上になったときである。また、所定の条件とは単電池21の過充電、過放電、過電流等を検出したときである。この過充電等の検出は、個々の単電池21もしくは単電池21全体について行われる。個々の単電池21を検出する場合、電池電圧を検出してもよいし、正極電位もしくは負極電位を検出してもよい。後者の場合、個々の単電池21中に参照極として用いるリチウム電極が挿入される。図14及び図15の場合、単電池21それぞれに電圧検出のための配線35を接続し、これら配線35を通して検出信号が保護回路26に送信される。
【0115】
正極端子7及び負極端子6が突出する側面を除く組電池23の三側面には、ゴムもしくは樹脂からなる保護シート36がそれぞれ配置されている。
【0116】
組電池23は、各保護シート36及びプリント配線基板24と共に収納容器37内に収納される。すなわち、収納容器37の長辺方向の両方の内側面と短辺方向の内側面それぞれに保護シート36が配置され、短辺方向の反対側の内側面にプリント配線基板24が配置される。組電池23は、保護シート36及びプリント配線基板24で囲まれた空間内に位置する。蓋38は、収納容器37の上面に取り付けられている。
【0117】
なお、組電池23の固定には粘着テープ22に代えて、熱収縮テープを用いてもよい。この場合、組電池の両側面に保護シートを配置し、熱収縮テープを周回させた後、熱収縮テープを熱収縮させて組電池を結束させる。
【0118】
図14、図15では単電池21を直列接続した形態を示したが、電池容量を増大させるためには並列に接続しても、または直列接続と並列接続を組み合わせてもよい。組み上がった電池パックをさらに直列、並列に接続することもできる。
【0119】
第7の実施形態によれば、金属基板の破断に起因する電池容量の低下及び内部抵抗の増大が回避され、かつエネルギー密度の高い第1〜第5の実施形態のいずれかの非水電解質電池を備えることにより、電池容量の低下及び内部抵抗の増大が回避され、かつエネルギー密度の高い電池パックを提供することができる。
【0120】
なお、電池パックの態様は用途により適宜変更される。電池パックの用途は、大電流を取り出したときに優れたサイクル特性を示すものが好ましい。具体的には、デジタルカメラの電源用や、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車等の車載用が挙げられる。特に、高温特性の優れた非水電解質二次電池を用いた電池パックは車載用に好適に用いられる。
【実施例】
【0121】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。
【0122】
(実施例1)
<正極の作製>
正極活物質として、リチウムニッケル複合酸化物(LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2)粉末90質量%を用いた。導電剤として、アセチレンブラック3質量%及びグラファイト3質量%を用いた。結着剤として、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)4質量%を用いた。以上の成分をN−メチルピロリドン(NMP)に加えて混合し、スラリーを調製した。このスラリーを、表1に示す第2の金属基板Xからなる集電体の両面に長辺に平行な一端部を除いて塗布し、乾燥し、プレスすることにより、正極を得た。スラリーが未塗布で集電体が露出している一端部は、正極集電タブとして機能する。
【0123】
<負極の作製>
Li吸蔵電位が1.56V(vs. Li/Li+)である、スピネル構造を有するチタン酸リチウム(Li4Ti5O12)粉末を負極活物質として用意した。負極活物質を90質量%、導電剤としてグラファイトを7質量%、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を3質量%用いた。これらの成分と、N−メチルピロリドン(NMP)とを混合することによりスラリーを調製した。
【0124】
得られたスラリーを表1に示す第1の金属基板からなる集電体の両面に長辺に平行な一端部を除いて塗布し、乾燥した後、ロールプレスすることにより第1の負極部を得た。また、このスラリーを表1に示す第2の金属基板からなる集電体の両面に長辺に平行な一端部を除いて塗布し、乾燥した後、ロールプレスすることにより第2の負極部を得た。第1,第2の負極部において、スラリーが未塗布で集電体が露出している一端部は、負極集電タブとして機能する。
【0125】
得られた正極と第2の負極部とをその間に厚さ20μmのポリエチレン製のセパレータを介して渦巻状に捲回した。得られた捲回物に、正極と第1の負極部とをその間にセパレータを介して渦巻状に捲回した。捲回の際、正極が負極よりも先行し、かつ正極集電タブが電極群の捲回軸方向に突出し、かつ負極集電タブがこれと反対方向に突出するよう、正極及び負極の位置をずらした。捲回数は第1の負極部と第2の負極部とを合わせて50回とした。その後、プレス成形することにより図9に示す扁平型電極群を得た。得られた電極群では、最外層にセパレータが位置し、その最外層のセパレータと接するのが第1の負極部であった。負極は、最外周が第1の負極部で、最外周以外が第2の負極部であった。
【0126】
正極集電タブに正極リードを溶接し、また、負極集電タブに負極リードを溶接した後、電極群を金属製外装部材に収納した。プロピレンカーボネート(PC)及びジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒(体積比率1:2)に、電解質としてLiPF6を1mol/L溶解した。得られた非水電解液を注入した後、外装部材を封止することにより、角型非水電解質電池を製造した。
【0127】
(実施例2)
<正極の作製>
実施例1で説明したのと同様なスラリーを、表1に示す第1の金属基板Xからなる集電体の両面に長辺に平行な一端部を除いて塗布し、乾燥し、プレスすることにより、第1の正極部を得た。スラリーが未塗布で集電体が露出している一端部は、正極集電タブとして機能する。
【0128】
また、第2の正極部として、実施例1で説明したのと同様な正極を用意した。
【0129】
得られた第1の正極部と第2の負極部とをその間に実施例1と同様なセパレータを介して渦巻状に捲回した。得られた捲回物に、第2の正極部と第1の負極部とをその間にセパレータを介して渦巻状に捲回した。捲回の際、正極が負極よりも先行し、かつ正極集電タブが電極群の捲回軸方向に突出し、かつ負極集電タブがこれと反対方向に突出するよう、正極及び負極の位置をずらした。捲回数は第1の負極部と第2の負極部とを合わせて50回とした。その後、プレス成形することにより図9に示す扁平型電極群を得た。得られた電極群では、最外層にセパレータが位置し、その最外層のセパレータと接するのが第1の負極部であった。負極は、最外周が第1の負極部で、最外周以外が第2の負極部であった。正極は、巻き始め端部から5周目までが第1の正極部で、それ以外が第2の正極部であった。
【0130】
得られた電極群から実施例1と同様にして角型非水電解質電池を製造した。
【0131】
(実施例3)
第2の正極部と第2の負極部とをその間に実施例1と同様なセパレータを介して渦巻状に捲回した。得られた捲回物に、第1の正極部と第2の負極部とをその間にセパレータを介して渦巻状に捲回した。捲回の際、負極が正極よりも先行し、かつ正極集電タブが電極群の捲回軸方向に突出し、かつ負極集電タブがこれと反対方向に突出するよう、正極及び負極の位置をずらした。捲回数は第1の正極部と第2の正極部とを合わせて50回とした。その後、プレス成形することにより図9に示す扁平型電極群を得た。得られた電極群では、最外層にセパレータが位置し、その最外層のセパレータと接するのが第1の正極部であった。正極は、最外周が第1の正極部で、最外周以外が第2の正極部であった。負極には、巻き始め端部から巻き終わり端部まで第2の負極部を用いた。
【0132】
得られた電極群から実施例1と同様にして角型非水電解質電池を製造した。
【0133】
(実施例4)
第2の正極部と第1の負極部とをその間に実施例1と同様なセパレータを介して渦巻状に捲回した。得られた捲回物に、第1の正極部と第2の負極部とをその間にセパレータを介して渦巻状に捲回した。捲回の際、負極が正極よりも先行し、かつ正極集電タブが電極群の捲回軸方向に突出し、かつ負極集電タブがこれと反対方向に突出するよう、正極及び負極の位置をずらした。捲回数は第1の正極部と第2の正極部とを合わせて50回とした。その後、プレス成形することにより図9に示す扁平型電極群を得た。得られた電極群では、最外層にセパレータが位置し、その最外層のセパレータと接するのが第1の正極部であった。正極は、最外周が第1の正極部で、最外周以外が第2の正極部であった。負極には、巻き始め端部から5周目まで第1の負極部を用い、それ以外に第2の負極部を用いた。
【0134】
得られた電極群から実施例1と同様にして角型非水電解質電池を製造した。
【0135】
(比較例1)
第2の正極部と第2の負極部とをその間に実施例1と同様なセパレータを介して渦巻状に捲回した。捲回の際、正極が負極よりも先行し、かつ正極集電タブが電極群の捲回軸方向に突出し、かつ負極集電タブがこれと反対方向に突出するよう、正極及び負極の位置をずらした。その後、プレス成形することにより図9に示す扁平型電極群を得た。得られた電極群では、最外層にセパレータが位置し、その最外層のセパレータと接するのが第2の負極部であった。
【0136】
得られた電極群から実施例1と同様にして角型非水電解質電池を製造した。
【0137】
(比較例2)
第2の正極部と第2の負極部とをその間に実施例1と同様なセパレータを介して渦巻状に捲回した。捲回の際、負極が正極よりも先行し、かつ正極集電タブが電極群の捲回軸方向に突出し、かつ負極集電タブがこれと反対方向に突出するよう、正極及び負極の位置をずらした。その後、プレス成形することにより図9に示す扁平型電極群を得た。得られた電極群では、最外層にセパレータが位置し、その最外層のセパレータと接するのが第2の正極部であった。
【0138】
得られた電極群から実施例1と同様にして角型非水電解質電池を製造した。
【0139】
実施例及び比較例の電池をそれぞれ10個作製した際に、集電体に切れが生じた個数を下記表2に示す。
【表1】
【0140】
【表2】
【0141】
表2から明らかなように、比較例1及び2で作製した電極群と比べて、実施例1〜4で作製した電極群は集電体の切れが少ないことが分かる。すなわち、捲回型電極群において応力がかかり易い最外層付近に第2の電極部を偏在させることによって、集電体の切れが低減することが確認された。
【0142】
(実施例5)
<正極の作製>
実施例1で説明したのと同様なスラリーを、表1に示す第1の金属基板Xからなる集電体の両面に一端部を除いて塗布し、乾燥し、プレスし、裁断することにより、図2に示す構造の第1の正極部を得た。
【0143】
また、このスラリーを表1に示す第2の金属基板Xからなる集電体の両面に一端部を除いて塗布し、乾燥し、プレスし、裁断することにより、図2に示す構造の第2の正極部を得た。
【0144】
<負極の作製>
実施例1で説明したのと同様なスラリーを、表1に示す第1の金属基板からなる集電体の両面に一端部を除いて塗布し、乾燥し、プレスし、裁断することにより、第1の負極部を得た。
【0145】
また、このスラリーを表1に示す第2の金属基板からなる集電体の両面に一端部を除いて塗布し、乾燥し、プレスし、裁断することにより、第2の負極部を得た。
【0146】
第2の正極部と第2の負極部とをその間に実施例1と同様なセパレータを介して交互に積層し、最外層が第2の負極部である積層物を得た。得られた積層物に第1の正極部をセパレータを介して積層した後、第1の正極部の上にセパレータを重ね、図6に示す構造の積層型電極群を製造した。積層数は100とした。
【0147】
複数枚の正極集電タブを正極リードに溶接し、また、複数枚の負極集電タブを負極リードに溶接した後、電極群を金属製外装部材に収納した。実施例1で説明したのと同様な非水電解液を注入した後、外装部材を封止することにより、図6に示す構造の角型非水電解質電池を製造した。
【0148】
(実施例6)
第2の正極部と第2の負極部とをその間に実施例1と同様なセパレータを介して交互に積層し、最外層が第2の正極部である積層物を得た。得られた積層物に第1の負極部をセパレータを介して積層した後、第1の負極部の上にセパレータを重ね、図1に示す構造の積層型電極群を製造した。積層数は100とした。
【0149】
得られた積層型電極群から実施例5と同様にして図1に示す構造の角型非水電解質電池を製造した。
【0150】
(実施例7)
第1の正極部の集電体に表1に示す第1の金属基板Yを用い、第2の正極部の集電体に表1に示す第2の金属基板Yを用いること以外は、実施例5と同様にして図1に示す構造の角型非水電解質電池を製造した。
【0151】
(比較例3)
第2の正極部と第2の負極部とをその間に実施例1と同様なセパレータを介して交互に積層し、最外層が第2の負極部である積層物を得た。得られた積層物に第2の正極部をセパレータを介して積層した後、第2の正極部の上にセパレータを重ね、積層型電極群を製造した。
【0152】
得られた積層型電極群から実施例5と同様にして角型非水電解質電池を製造した。
【0153】
(比較例4)
第2の正極部と第2の負極部とをその間に実施例1と同様なセパレータを介して交互に積層し、最外層が第2の正極部である積層物を得た。得られた積層物に第2の負極部をセパレータを介して積層した後、第2の負極部の上にセパレータを重ね、積層型電極群を製造した。
【0154】
得られた積層型電極群から実施例5と同様にして角型非水電解質電池を製造した。
【0155】
実施例及び比較例の電池をそれぞれ10個作製した際に、集電体に切れが生じた個数を下記表3に示す。
【表3】
【0156】
表3から明らかなように、比較例3及び4で作製した電極群と比べて、実施例5〜7で作製した電極群は集電体の切れが少ないことが分かる。すなわち、積層型電極群の最上層及び最下層に第2の電極部を偏在させることによって、集電体の切れが低減することが確認された。
【0157】
以上述べた少なくとも一つの実施形態の非水電解質電池によれば、第1の電極部の一部が第2の電極部の一部よりも電極群のより外側に配置され、かつ第1の金属基板が第2の金属基板よりも引張り強度が大きいため、集電体の厚さに拘らず、集電体の破断を抑制することが可能となる。
【0158】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0159】
1…外装部材、2…電極群、3…正極、3A…第1の正極部、3B…第2の正極部、4…負極、4A…第1の負極部、4B…第2の負極部、3c、4c…第1の金属基板、3d,4d…第2の金属基板、5…セパレータ、6,11…正極集電タブ、7,12…負極集電タブ、8…絶縁部材、9…正極端子、10…負極端子、21…単電池、24…プリント配線基板、25…サーミスタ、26…保護回路、37…収納容器、200…電池パック。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、非水電解質電池及び電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池のような電気自動車やハイブリッド電気自動車への適用が進むにつれ、更なる高エネルギー密度化が必要とされている。
【0003】
一般的に非水電解質電池の正極及び負極は、アルミニウム、銅等の金属箔上に、活物質を含むスラリーを塗工することにより得られたものが用いられる。高エネルギー密度化のためには、上記金属箔を薄くし、電極の低体積化、軽量化する必要がある。しかしながら、上記金属箔を薄くすると、電極の強度が低下し、切れが生じやすくなるという問題がある。特に、電極群における集電タブ取り付け部となる最外層に位置する電極は、他の部分と比べて応力がかかりやすく、切れが生じて電池容量の低下や、内部抵抗の増大等が生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−110171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実施形態は、集電体の切れが抑制され、エネルギー密度の向上を図ることが可能な非水電解質電池と、この非水電解質電池を備えた電池パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、外装部材と、外装部材内に収容され、正極及び負極を含む電極群とを備えた非水電解質電池が提供される。少なくとも正極または負極の一方は、第1の電極部と、第2の電極部とを有する。第1の電極部は、第1の金属基板と、第1の金属基板の少なくとも一部に形成された活物質含有部とを含む。第2の電極部は、第2の金属基板と、第2の金属基板の少なくとも一部に形成された活物質含有部とを含む。第1の金属基板は、第2の金属基板よりも引張り強度が大きい。第1の電極部の一部は、第2の電極部の一部よりも電極群のより外側に配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態に係る非水電解質電池の断面図。
【図2】図1の非水電解質電池に用いられる正極を示す平面図。
【図3】図1の非水電解質電池に用いられる絶縁部材と正極端子を示す斜視図。
【図4】第1の実施形態に係る非水電解質電池の電極群の断面図。
【図5】第2の実施形態に係る非水電解質電池の電極群の断面図。
【図6】第3の実施形態に係る非水電解質電池の断面図。
【図7】第4の実施形態に係る非水電解質電池の電極群の断面図。
【図8】第5の実施形態に係る非水電解質電池の電極群の展開斜視図。
【図9】第5の実施形態に係る非水電解質電池の電極群の斜視図。
【図10】第5の実施形態に係る非水電解質電池の電極群の要部を示す断面図。
【図11】第5の実施形態に係る非水電解質電池の電極群の要部を示す断面図。
【図12】第6の実施形態に係る非水電解質電池の断面図。
【図13】図12の非水電解質電池に用いられる端子を示す斜視図。
【図14】第7の実施形態に係る電池パックの分解斜視図。
【図15】第7の実施形態に係る電池パックの電気回路を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
第1の実施形態によれば、外装部材と、外装部材内に収容され、正極及び負極を含む電極群とを備えた非水電解質電池が提供される。電極群は、正極と負極とがその間にセパレータを介在させながら交互に積層された積層型電極群である。第1の電極部及び第2の電極部を有する電極が負極の実施形態である。
【0010】
図1に示すように、外装部材1は、中空の略直方体形状をなし、例えば金属材料から形成されている。金属材料は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金等を挙げることができる。電極群2は、外装部材1内に収容されている。電極群2は、正極3と負極4との間にセパレータ5を介在したものが順に積み重ねられた(スタックされた)ものである。電極群2の両方の最外層は、セパレータ5からなる。正極3は、正極集電体3aと、正極集電体3aの両側に保持された層状の正極活物質含有部3bとを含む。図2に示すように、正極集電体3aは、正極3の一方の短辺から帯状に引き出され、引き出された部分は正極タブ6として機能する。
【0011】
負極4は、第1の負極部4Aと、第2の負極部4Bとを有する。第1の負極部4Aは、最外層のセパレータ5と接している。第1の負極部4Aは、第2の負極部4Bよりも電極群のより外側に配置されている。よって、第1の負極部4Aは、第2の負極部4Bよりも外装部材の近くに配置されている。
【0012】
第1の負極部4Aは、集電体としての第1の金属基板4cと、第1の金属基板4cの両側に保持された層状の負極活物質含有部4bとを含む。第2の負極部4Bは、集電体としての第2の金属基板4dと、第2の金属基板4dの両側に保持された層状の負極活物質含有部4bとを含む。第1の金属基板4c及び第2の金属基板4dは、それぞれ、負極4の一方の短辺から帯状に引き出され、引き出された部分は負極タブ7として機能する。正極タブ6は、電極群2の一方の短辺からそれぞれ引き出され、かつ負極タブ7は、電極群2の他方の短辺からそれぞれ引き出されている。第1の金属基板4cの引張り強度は、第2の金属基板4dの引張り強度よりも大きい。
【0013】
外装部材1の互いに対向する両側面には、貫通孔が形成されている。2つの貫通孔それぞれに、絶縁部材8が配置されている。図3に示すように、絶縁部材8は、中央付近にスリット8aを有する略直方体形状のブロックからなる。正極端子9は、矩形状の頭部9aと、頭部9aから延出した矩形柱状の軸部9bとを有する。正極端子9の頭部9aは、外装部材1の外側に突出した絶縁部材8上に配置されている。また、正極端子9の軸部9bは、絶縁部材8のスリット8aを貫通し、外装部材1の内側に突出している。一方、図1に示すように、負極端子10は、矩形状の頭部10aと、頭部10aから延出した矩形柱状の軸部10bとを有する。負極端子10の頭部10aは、外装部材1の外側に突出した絶縁部材8上に配置されている。また、負極端子10の軸部10bは、絶縁部材8のスリット8aを貫通し、外装部材1の内側に突出している。正極端子9及び負極端子10は、導電性材料から形成することができる。導電性材料には、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅等を挙げることができる。
【0014】
複数枚ある正極タブ6は、積層され、積層されたものが正極端子9の軸部9bに溶接されている。また、複数枚ある負極タブ7についても、積層され、積層されたものが負極端子10の軸部10bに溶接されている。溶接は、例えば、抵抗溶接、超音波溶接等を挙げることができる。なお、非水電解質は、電極群2に保持されている。
【0015】
なお、図1では、集電体の両側に活物質含有部が形成されているが、これに限定されるものではなく、集電体の金属基板の片側のみに活物質含有部が形成されていても良い。また、図1では、最外層のセパレータ5と接する負極のみを第1の負極部4Aとしたが、これに限定されるものではない。例えば、図4に示されるように、第2の負極部4Bの一部を第1の負極部4Aに変更することができる。
【0016】
以下、非水電解質電池に含まれる各部材を説明する。
【0017】
1)負極4
負極4は、第1の負極部4Aと、第2の負極部4Bとを有する。
【0018】
引張り強度は、JIS B7721(2009年)の引張試験機を使用し、試験温度が25℃で、試験片の幅が10mmで、上下固定部間の距離が50mmで、かつ引張速度が10mm/min以下の条件で試験片が破断するまでの強さを測定することにより得られるものである。
【0019】
第1の負極部4Aの第1の金属基板4cの引張り強度を第2の負極部4Bの第2の金属基板4dよりも大きくする理由について説明する。積層型電極群2の端面から延出された複数枚の負極タブ7をまとめて一つの負極端子10に溶接すると、電極群2の最外層付近の負極の負極タブ7に大きな引張力が加わる。第1の負極部4Aの一部が第2の負極部4Bの一部よりも電極群のより外側に配置されていても、第1の金属基板の引張り強度4cが第2の金属基板4dの引張り強度以下であると、負極タブ7を負極端子10に溶接する際に負極タブ7に加わる引張力で電極群2の最外層付近の金属基板が破断する。第1の金属基板4cの引張り強度を第2の金属基板4dの引張り強度よりも大きくすることによって、負極タブ7を負極端子10に溶接する際の金属基板の破断を抑えることができる。
【0020】
第1,第2の金属基板4c,4dの引張強度は以下の(1)式の関係を満たすことが望ましい。
【0021】
X2×1.5≦X1 (1)
但し、X1は第1の金属基板4cの引張強度(N/mm)で、X2は第2の金属基板4dの引張強度(N/mm)である。
【0022】
第1,第2の金属基板4c,4dの引張強度が(1)式の関係を満足することによって、金属基板の破断を抑制する効果を高めることができ、金属基板を2種類使用することによるプロセスコストアップを超えるメリットを得ることができる。
【0023】
第1,第2の金属基板4c,4dの引張強度は、金属基板に使用する材料を変更することによって調節することが好ましい。金属基板の引張強度は、例えば、金属基板の厚さあるいは開口率を変更することによっても調整可能である。しかしながら、金属基板を厚くすることにより引張強度を高めると、金属基板の厚い部分に形成される活物質含有部の厚さを薄くする必要があるため、高いエネルギー密度を得られない恐れがある。また、金属基板の開口率を高めることにより引張強度を低くすると、金属基板として金属箔を用いた場合に金属基板の強度が著しく低下し、負極の作製が困難になる。
【0024】
第2の金属基板4dとしてアルミニウムを主成分とするものを使用した場合、第1の金属基板4cとしてアルミニウム合金もしくは銅を主成分として含むものを使用することができる。また、第2の金属基板4dとしてアルミニウム合金を主成分とするものを使用した場合、第1の金属基板4cとして銅を主成分として含むものを使用することができる。銅は、アルミニウムよりもせん断応力が強いため、第1の金属基板4cに用いるのに好適なものである。ここで、主成分とは、構成元素のうち99質量パーセント以上含まれる元素をいう。
【0025】
アルミニウムは、1000番系アルミニウム(JIS呼称1000番台)であることが望ましい。アルミニウム合金には、例えば、JIS呼称2000番台、3000番台、4000番台、5000番台、6000番台、7000番台の合金を使用することができる。アルミニウム合金は、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu及びSiよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素を含むことが好ましい。
【0026】
第1,第2金属基板4c,4dの厚さは、10μm以上50μm以下にすることができる。より好ましい範囲は、20μm以上50μm以下である。第1,第2金属基板4c,4dの厚さは、第1の金属基板の引張り強度が第2の金属基板の引張り強度よりも大きくなるように、金属基板に使用する材料の種類に応じて調整することができる。
【0027】
負極タブ7は、第1,第2金属基板4c,4dと同様な材料から形成される。
【0028】
負極活物質含有部に含まれる負極活物質は、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、合金などが挙げられる。負極活物質は、リチウム吸蔵放出電位が1.0V(vs. Li/Li+)以上貴であることが望ましい。金属基板がアルミニウムもしくはアルミニウム合金を含む場合に、例えば、1.0V(vs. Li/Li+)よりも卑な電位でリチウムを吸蔵する炭素質物などを用いると、金属基板が電気化学的に不安定になる恐れがある。負極活物質のリチウム吸蔵放出電位は、電池電圧を高くするために3V(vs. Li/Li+)よりも卑であることが好ましい。
【0029】
リチウム吸蔵放出電位が1.0V(vs. Li/Li+)以上貴な負極活物質は、チタン含有金属酸化物であることが好ましい。チタン含有金属酸化物は、1.5V(vs. Li/Li+)近傍でリチウムを吸蔵するため、アルミニウムもしくはアルミニウム合金を含む金属基板の溶解を回避することができる。
【0030】
チタン含有金属酸化物の例には、例えば、立方晶系スピネル型Li4+xTi5O12(0≦x≦3)及び斜方晶系ラムスデライト型Li2+yTi3O7(yは0≦y≦3)のようなリチウムチタン酸化物、リチウムチタン酸化物の構成元素の一部を異種元素で置換したリチウムチタン複合酸化物が含まれる。充放電サイクル寿命の観点からは、リチウム吸蔵・放出による格子体積変化が小さい立方晶系スピネル型のリチウムチタン酸化物が好ましい。
【0031】
負極活物質の他の例には、リチウム吸蔵放出電位が1〜2V(vs. Li/Li+)である、LixNb2O5(0≦x≦2)及びLixNbO3(0≦x≦1)のようなリチウムニオブ複合酸化物、リチウム吸蔵放出電位が2〜3V(vs. Li/Li+)であるLixMoO3(0≦x≦1)のようなリチウムモリブデン複合酸化物、リチウム吸蔵放出電位が1.8V(vs. Li/Li+)であるLixFeS2(0≦x≦4)のようなリチウム鉄複合硫化物等が含まれる。
【0032】
また、負極活物質として、TiO2のようなチタン酸化物、又は、TiとP、V、Sn、Cu、Ni、Co及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含有する金属複合酸化物を用いることもできる。これらの酸化物は、初回の充電時にリチウムを吸蔵してリチウムチタン複合酸化物となる。TiO2は、単斜晶系β型(ブロンズ型、或いはTiO2(B)とも言われる)で熱処理温度が300〜500℃の低結晶性のものが好ましい。
【0033】
TiとP、V、Sn、Cu、Ni、Co及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素を含有する金属複合酸化物の例には、例えば、TiO2−P2O5、TiO2−V2O5、TiO2−P2O5−SnO2、TiO2−P2O5−MeO(MeはCu、Ni、Co及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素)が含まれる。この金属複合酸化物は、結晶相とアモルファス相が共存もしくは、アモルファス相単独で存在したミクロ構造であることが好ましい。このようなミクロ構造であることによりサイクル性能が大幅に向上することができる。
【0034】
負極活物質には、上記で挙げられた活物質を単独で用いてもよいが、混合して用いてもよい。
【0035】
負極活物質含有部に含まれる他の成分は、結着剤、導電剤等が挙げられる。
【0036】
導電剤は、活物質の集電性能を高め、集電体との接触抵抗を抑える。導電剤の例は、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛を含む。
【0037】
結着剤は、活物質と導電剤を結着できる。結着剤の例は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム、スチレンブタジエンゴムを含む。
【0038】
負極活物質含有部中の活物質、導電剤及び結着剤は、それぞれ70質量%以上96質量%以下、2質量%以上28質量%以下及び2質量%以上28質量%以下の割合で配合することが好ましい。導電剤の量を2質量%以上とすることにより、負極活物質含有部の集電性能を向上させ、非水電解質電池の大電流特性を向上させることができる。また、結着剤の量を2質量%以上とすることにより、負極活物質含有部と集電体の結着性を高め、サイクル特性を向上させることができる。一方、導電剤及び結着剤はそれぞれ28質量%以下にすることが高容量化を図る上で好ましい。
【0039】
負極の作製方法を説明する。活物質、導電剤及び結着剤を汎用されている溶媒に懸濁してスラリーを調製する。このスラリーを第1の金属基板に塗布し、乾燥し、その後、プレスを施すことにより第1の電極部を得る。また、このスラリーを第2の金属基板に塗布し、乾燥し、その後、プレスを施すことにより第2の電極部を得る。スラリーを調製する代わりに、活物質、導電剤及び結着剤をペレット状に形成して負極活物質含有部とし、これを第1の金属基板、第2の金属基板それぞれに形成することにより、第1の電極部、第2の電極部を得てもよい。
【0040】
2)正極
正極3は、正極集電体3aと、正極集電体3aに保持された正極活物質含有部3bとを含む。なお、図1では、正極集電体の両側に正極活物質含有部が形成されているが、これに限定されるものではなく、正極集電体の片側のみに正極活物質含有部が形成されていても良い。
【0041】
正極活物質としては、酸化物、ポリマー等が挙げられる。
【0042】
例えば、酸化物としては、Liを吸蔵した二酸化マンガン(MnO2)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、及び、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4またはLixMnO2)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2)、リチウムコバルト複合酸化物(LixCoO2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLiNi1−yCoyO2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLiMnyCo1−yO2)、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物(LixMn2−yNiyO4)、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(LixFePO4、LixFe1−yMnyPO4、LixCoPO4等)、硫酸鉄(Fe2(SO4)3)、バナジウム酸化物(例えばV2O5)等が挙げられる。
【0043】
例えば、ポリマーとしては、ポリアニリンやポリピロール等の導電性ポリマー材料、ジスルフィド系ポリマー材料等が挙げられる。その他に、イオウ(S)、フッ化カーボン等も使用できる。
【0044】
好ましい正極活物質としては、正極電圧が高いリチウムマンガン複合酸化物(LixMn2O4)、リチウムニッケル複合酸化物(LixNiO2)、リチウムコバルト複合酸化物(LixCoO2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(LixNi1−yCoyO2)、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物(LixMn2−yNiyO4)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(LixMnyCo1−yO2)、リチウムリン酸鉄(LixFePO4)等が挙げられる。なお、上記組成式中のx、yは0〜1の範囲であることが好ましい。
【0045】
正極活物質含有部に含み得る他の成分には、結着剤及び導電剤を挙げることができる。
【0046】
導電剤は、活物質の集電性能を高め、集電体との接触抵抗を抑える。導電剤の例は、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛などの炭素質物を含む。
【0047】
結着剤は、活物質と導電剤を結着させる。結着剤の例は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴムを含む。
【0048】
正極活物質含有部中の活物質、導電剤及び結着剤は、それぞれ80質量%以上95質量%以下、3質量%以上18質量%以下及び2質量%以上17質量%以下の割合で配合することが好ましい。導電剤は、3質量%以上の量にすることにより上述した効果(活物質の集電性能を高め、集電体との接触抵抗を抑える)を発揮することができる。導電剤は、18質量%以下の量にすることにより高温保存下での導電剤表面での非水電解質の分解を低減することができる。結着剤は、2質量%以上の量にすることにより十分な正極強度が得られる。結着剤は、17質量%以下の量にすることにより、正極中の絶縁材料である結着剤の配合量を減少させ、内部抵抗を減少できる。
【0049】
正極集電体は、例えばアルミニウム箔、またはMg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu及びSiよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素を含むアルミニウム合金箔であることが好ましい。
【0050】
正極タブ6は、正極集電体と同様な材料から形成される。
【0051】
正極は、例えば活物質、導電剤及び結着剤を汎用されている溶媒に懸濁してスラリーを調製し、このスラリーを集電体に塗布し、乾燥し、その後、プレスを施すことにより作製される。正極は、また活物質、導電剤及び結着剤をペレット状に形成して正極活物質含有部とし、これを集電体上に形成することにより作製されてもよい。
【0052】
3)セパレータ
セパレータは、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース、もしくはポリフッ化ビニリデン(PVdF)を含む多孔質フィルム、または合成樹脂製不織布を用いることができる。好ましい多孔質フィルムは、ポリエチレンまたはポリプロピレンを含むものである。このような多孔質フィルムは、一定温度において溶融し、電流を遮断することが可能であるために安全性を向上できる。
【0053】
4)非水電解質
非水電解質は、例えば電解質を有機溶媒に溶解することにより調製される液状非水電解質、または液状電解質と高分子材料を複合化したゲル状非水電解質を用いることができる。
【0054】
液状非水電解質は、電解質を0.5M以上2.5M以下の濃度で有機溶媒に溶解したものであることが好ましい。
【0055】
電解質の例は、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム[LiN(CF3SO2)2]のリチウム塩、またはこれらの混合物を含む。電解質は、高電位でも酸化し難いものであることが好ましく、LiPF6が最も好ましい。
【0056】
有機溶媒の例は、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ビニレンカーボネートのような環状カーボネート;ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)のような鎖状カーボネート;テトラヒドロフラン(THF)、2メチルテトラヒドロフラン(2MeTHF)、ジオキソラン(DOX)のような環状エーテル;ジメトキシエタン(DME)、ジエトエタン(DEE)のような鎖状エーテル;またはγ−ブチロラクトン(GBL)、アセトニトリル(AN)、スルホラン(SL)を含む。これらの有機溶媒は、単独または混合溶媒の形態で用いることができる。
【0057】
高分子材料の例は、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンオキサイド(PEO)を含む。
【0058】
好ましい有機溶媒は、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)及びジエチルカーボネート(DEC)からなる群のうち、少なくとも2つ以上を混合した混合溶媒、またはγ−ブチロラクトン(GBL)を含む混合溶媒である。これらの混合溶媒を用いることにより、高温特性の優れた非水電解質二次電池を得ることができる。
【0059】
5)外装部材
外装部材には、図1に示すような金属製容器を用いることができる。金属製容器の厚さは1.0mm以下にすることが好ましく、より好ましい範囲は0.5mm以下である。或いは、金属製容器の代りにラミネートフィルム製容器を用いることもできる。ラミネートフィルム製容器の厚さは、0.5mm以下にすることが望ましい。
【0060】
外装部材の形状は、図1に示す角型に限定されるものではなく、例えば、扁平型(薄型)、円筒型、コイン型、及びボタン型等にすることができる。外装部材の例には、電池寸法に応じて、例えば携帯用電子機器等に積載される小型電池用外装部材、二輪乃至四輪の自動車等に積載される大型電池用外装部材などが含まれる。
【0061】
ラミネートフィルムは、樹脂層間に金属層を介在した多層フィルムが用いられる。金属層は、軽量化のためにアルミニウム箔若しくはアルミニウム合金箔が好ましい。樹脂層は、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の高分子材料を用いることができる。ラミネートフィルムは、熱融着によりシールを行って外装部材の形状に成形することができる。
【0062】
金属製容器は、アルミニウムまたはアルミニウム合金等から作られる。アルミニウム合金は、マグネシウム、亜鉛、ケイ素等の元素を含む合金が好ましい。合金中に鉄、銅、ニッケル、クロム等の遷移金属が含まれる場合、その量は100質量ppm以下にすることが好ましい。
【0063】
以上説明した第1の実施形態によれば、第1の負極部の一部が第2の負極部の一部よりも電極群のより外側に配置され、かつ第1の負極部の第1の金属基板の引張り強度が第2の負極部の第2の金属基板の引張り強度よりも大きいため、第1の金属基板及び第2の金属基板それぞれに設けられた負極タブを負極端子に溶接する際の金属基板の破断を抑制することができる。その結果、金属基板の厚さに拘らず、金属基板の破断に起因する電池容量の低下及び内部抵抗の増大を回避することができるため、高エネルギー密度を有する非水電解質電池を実現することができる。
【0064】
(第2の実施形態)
第2の実施形態によれば、外装部材と、外装部材内に収容され、正極及び負極を含む積層型電極群とを備えた非水電解質電池が提供される。第2の実施形態は、正極及び負極の双方が第1の電極部及び第2の電極部を有すること以外は、第1の実施形態と同様な構成を有する。
【0065】
第2の実施形態に係る非水電解質電池は、例えば、図5に示す電極群を備えること以外は、図1と同様な構造にすることができる。なお、図1〜図4と同様な部材については、
同符号を付して説明を省略する。
【0066】
正極3は、第1の正極部3Aと、第2の正極部3Bとを有する。第1の正極部3Aは、第1の負極部4Aとセパレータ5を介して対向している。第1の正極部3Aは、第2の正極部3Bよりも外側に位置している。よって、第1の正極部3Aは、第2の正極部3Bよりも外装部材の近くに配置されている。第1の正極部3Aは、集電体としての第1の金属基板3cと、第1の金属基板3cの両側に保持された層状の正極活物質含有部3bとを含む。第2の正極部3Bは、集電体としての第2の金属基板3dと、第2の金属基板3dの両側に保持された層状の正極活物質含有部3bとを含む。第1の金属基板3cの引張り強度は、第2の金属基板3dの引張り強度よりも大きい。第1の金属基板3c及び第2の金属基板3dは、それぞれ、正極3の一方の短辺から帯状に引き出され、引き出された部分は正極タブ6として機能する。
【0067】
以下、正極の第1,第2の金属基板について説明する。
【0068】
正極の第1,第2の金属基板の引張り強度は、第1の実施形態で説明したのと同様な方法で測定される。
【0069】
第1の金属基板3cの引張り強度を第2の金属基板3dよりも大きくする理由について説明する。積層型電極群2の端面から延出された複数枚の正極タブ6をまとめて一つの正極端子9に溶接すると、電極群2の最外層に近い正極の正極タブに大きな引張力が加わる場合がある。このため、第1の正極部3Aの一部を第2の正極部3Bの一部よりも外側に位置させ、かつ第1の金属基板3cの引張り強度を第2の金属基板3dの引張り強度よりも大きくすることによって、正極タブ6を正極端子9に溶接する際の金属基板の破断を抑えることができる。
【0070】
第1,第2の金属基板3c,3dの引張強度は以下の(2)式の関係を満たすことが望ましい。
【0071】
Y2×1.5≦Y1 (2)
但し、Y1は第1の金属基板3cの引張強度(N/mm)で、Y2は第2の金属基板3dの引張強度(N/mm)である。
【0072】
第1,第2の金属基板3c,3dの引張強度が(2)式の関係を満足することによって、金属基板の破断を抑制する効果を高めることができ、金属基板を2種類使用することによるプロセスコストアップを超えるメリットを得ることができる。
【0073】
第1,第2の金属基板3c,3dの引張強度は、金属基板に使用する材料を変更することによって調節することが好ましい。金属基板の引張強度は、例えば、金属基板の厚さあるいは開口率を変更することによっても調整可能である。しかしながら、金属基板を厚くすることにより引張強度を高めると、金属基板の厚い部分に形成できる活物質含有部の厚さを薄くする必要があるため、高いエネルギー密度を得られない恐れがある。また、金属基板の開口率を高めることにより引張強度を低くすると、金属基板として金属箔を用いた場合に金属基板の強度が著しく低下し、正極の作製が困難になる。
【0074】
第2の金属基板3dとしてアルミニウムを主成分とするものを使用した場合、第1の金属基板3cとしてアルミニウム合金を主成分として含むものを使用することができる。ここで、アルミニウムは、1000番系アルミニウム(JIS呼称1000番台)であることが望ましい。アルミニウム合金には、例えば、JIS呼称2000番台、3000番台、4000番台、5000番台、6000番台、7000番台の合金を使用することができる。アルミニウム合金は、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu及びSiよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素を含むことが好ましい。
【0075】
第1,第2金属基板3c,3dの厚さは、10μm以上50μm以下にすることができる。より好ましい範囲は、20μm以上50μm以下である。第1,第2金属基板3c,3dの厚さは、第1の金属基板の引張り強度が第2の金属基板の引張り強度よりも大きくなるように、金属基板に使用する材料の種類に応じて調整することができる。
【0076】
以上説明した第2の実施形態によれば、第1の負極部4Aの一部が第2の負極部4Bの一部よりも外側に配置され、かつ第1の正極部3Aの一部が第2の正極部3Bの一部よりも外側に配置されている。第1の負極部4A及び第1の正極部3Aそれぞれの第1の金属基板の引張り強度が、第2の負極部4B及び第2の正極部3Bそれぞれの引張り強度よりも大きい。その結果、正極及び負極の双方において、第1の金属基板及び第2の金属基板それぞれに設けられたタブを端子に溶接する際の金属基板の破断を抑制することができる。その結果、金属基板の厚さに拘らず、金属基板の破断に起因する電池容量の低下及び内部抵抗の増大を確実に回避することができるため、高エネルギー密度を有する非水電解質電池を実現することができる。
【0077】
(第3の実施形態)
第3の実施形態によれば、外装部材と、外装部材内に収容され、正極及び負極を含む積層型電極群とを備えた非水電解質電池が提供される。第3の実施形態では、第1の電極部及び第2の電極部を有する電極が正極である。
【0078】
第3の実施形態に係る電池の一例を図6に示す。図6では、図1〜図5と同様な部材について同符号を付して説明を省略する。
【0079】
正極3は、第1の正極部3Aと、第2の正極部3Bとを有する。第1の正極部3Aは、最外層のセパレータ5と接している。第1の正極部3Aは、第2の正極部3Bよりも外側に位置している。よって、第1の正極部3Aは、第2の正極部3Bよりも外装部材の近くに配置されている。また、第1の金属基板3cの引張り強度は、第2の金属基板3dの引張り強度よりも大きい。
【0080】
負極4は、負極集電体4aと、負極集電体4aの両側に保持された層状の負極活物質含有部4bとを含む。負極集電体4aは、負極4の一方の短辺から帯状に引き出され、引き出された部分は負極タブ7として機能する。負極集電体には、銅箔、アルミニウム箔またはMg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu及びSiよりなる群から選択される1種類以上の元素を含むアルミニウム合金箔等を使用することができる。
【0081】
なお、図6では、最外層のセパレータ5と接する正極のみを第1の正極部3Aとしたが、これに限定されるものではなく、第2の正極部3Bの一部を第1の正極部3Aに変更することが可能である。
【0082】
以上説明した第3の実施形態によれば、第1の正極部の一部が第2の正極部の一部よりも電極群のより外側に配置され、かつ第1の金属基板の引張り強度が第2の金属基板の引張り強度よりも大きいため、第1の金属基板及び第2の金属基板それぞれに設けられた正極タブを正極端子に溶接する際の金属基板の破断を抑制することができる。その結果、金属基板の厚さに拘らず、金属基板の破断に起因する電池容量の低下及び内部抵抗の増大を回避することができるため、高エネルギー密度を有する非水電解質電池を実現することができる。
【0083】
(第4の実施形態)
第4の実施形態によれば、外装部材と、外装部材内に収容され、正極及び負極を含む積層型電極群とを備えた非水電解質電池が提供される。第4の実施形態は、負極についても第1の電極部及び第2の電極部を有すること以外は、第3の実施形態と同様な構成を有する。
【0084】
第4の実施形態に係る非水電解質電池は、例えば、図7に示す電極群を備えること以外は、図6と同様な構造にすることができる。なお、図1〜図6と同様な部材については、
同符号を付して説明を省略する。
【0085】
正極3は、第1の正極部3Aと、第2の正極部3Bとを有する。第1の正極部3Aは、最外層のセパレータ5と接している。第1の正極部3Aは、第2の正極部3Bよりも外側に位置している。よって、第1の正極部3Aは、第2の正極部3Bよりも外装部材の近くに配置されている。また、第1の金属基板3cの引張り強度は、第2の金属基板3dの引張り強度よりも大きい。
【0086】
負極4は、第1の負極部4Aと、第2の負極部4Bとを有する。第1の負極部4Aは、第1の正極部3Aとセパレータ5を介して対向している。第1の負極部4Aは、第2の負極部4Bよりも外側に位置している。よって、第1の負極部4Aは、第2の負極部4Bよりも外装部材の近くに配置されている。第1の金属基板4cの引張り強度は、第2の金属基板4dの引張り強度よりも大きい。
【0087】
以上説明した第4の実施形態によれば、第1の負極部4Aの一部が第2の負極部4Bの一部よりも外側に配置され、かつ第1の正極部3Aの一部が第2の正極部3Bの一部よりも外側に配置されている。第1の負極部4A及び第1の正極部3Aそれぞれの第1の金属基板の引張り強度が、第2の負極部4B及び第2の正極部3Bそれぞれの引張り強度よりも大きい。その結果、正極及び負極の双方において、第1の金属基板及び第2の金属基板それぞれに設けられたタブを端子に溶接する際の金属基板の破断を抑制することができる。従って、金属基板の厚さに拘らず、金属基板の破断に起因する電池容量の低下及び内部抵抗の増大を確実に回避することができるため、高エネルギー密度を有する非水電解質電池を実現することができる。
【0088】
(第5の実施形態)
第5の実施形態によれば、外装部材と、外装部材内に収容され、正極及び負極を含む電極群とを備えた非水電解質電池が提供される。電極群は、正極と負極とセパレータとが扁平の渦巻状に捲回されたものである。正極及び負極のうち少なくとも一方は、第1の電極部と、第2の電極部とを有する。
【0089】
第5の実施形態の一例を図8〜図11を参照して説明する。図1〜図7と同様な部材は、同符号を付して説明を省略する。図8に示すように、捲回型電極群2は、正極3と負極4がその間にセパレータ5を介して偏平形状に捲回されたものである。正極3は、帯状の正極集電体3aと、正極集電体3aの長辺に平行な一端部からなる正極集電タブ11と、少なくとも正極集電タブ11を除いて正極集電体に形成された正極活物質含有部3bとを含む。一方、負極4は、帯状の負極集電体4aと、負極集電体4aの長辺に平行な一端部からなる負極集電タブ12と、少なくとも負極集電タブ12を除いて形成された負極活物質含有部4bとを含む。
【0090】
正極3、セパレータ5及び負極4は、正極集電タブ11が電極群の捲回軸方向にセパレータ5から突出し、かつ負極集電タブ12がこれと反対方向にセパレータ5から突出するよう、正極3及び負極4の位置をずらして捲回されている。このような捲回により、電極群2は、図9に示すように、渦巻状に捲回された一方の端面から正極集電タブ11が突出し、渦巻状に捲回された負極集電タブ12が他方の端面から突出している。正極集電タブ11同士は、例えば溶接によって電気的に接続されている。負極集電タブ12同士についても、例えば溶接によって電気的に接続されている。電極群2の最外層に位置しているのは、セパレータ5である。
【0091】
電極群2の最外層がセパレータ5の場合、最外層のセパレータ5と接する電極の最外周に第1の電極部を用いる。最外周以外の電極は、第2の電極部から形成しても、第1,第2の電極部の双方を用いても良い。例えば、最外層のセパレータ5と接する電極に第1の電極部、最外周よりも1周内側に第2の電極部、これよりも1周内側に第1の電極部というように、第1の電極部と第2の電極部を交互に配置することにより、第1の電極部の一部を第2の電極部の一部よりも外側に配置することができる。
【0092】
ここで、電極の最外周は、電極の巻き終わり端部と、この端部よりも1周内側の周の前記端部と対応する部分とで規定された部分である。図10は、最外層のセパレータ5と接する負極4の最外周の集電体に第1の金属基板4cを用いる例である。図10では、説明の便宜上、最外層のセパレータ5を省略している。負極4の最外周は、負極4の巻き終わり端部と、この端部よりも1周内側の周の前記端部と対応する部分とで規定された部分で、図10の矢印で示す部分である。負極4の最外周の負極集電体に第1の金属基板4cが用いられるため、最外周の負極4は第1の負極部4Aとなる。最外周以外の負極4は、負極集電体に第2の金属基板4dが用いられ、第2の負極部4Bを構成している。正極3のうち、最外周の正極の正極集電体3aに第1の金属基板3cを用い、最外周以外の正極の集電体3aに第2の金属基板3dを用いても良い。
【0093】
図10では、最外層のセパレータ5と接する電極を負極にしたが、正極にすることもできる。この場合、正極の最外周に第1の正極部を用い、最外周以外の正極は、第2の正極部のみか、第1の正極部と第2の正極部にすることができる。この場合にさらに、負極のうち、最外周の負極の負極集電体に第1の金属基板を用い、最外周以外の負極の集電体に第2の金属基板を用いても良い。
【0094】
捲回型電極群の正極及び負極の少なくとも一方の電極について、第1の電極部の一部を第2の電極部の一部よりも外側に配置した場合、捲回型電極群の電極の最内周を第1の電極部にすることができる。正負極及びセパレータを捲回する際、捲回の中心付近に位置する電極には応力がかかりやすい。電極の最内周に第1の電極部を用いることにより、捲回時に電極の集電体が破断するのを抑制することができる。ここで、電極の最内周とは、電極の巻き始め端部と、この端部よりも1周外側の周の前記端部と対応する部分とで規定された部分である。図11は、負極4を正極3よりも先に捲回して作製した電極群の中心部分の横断面図である。正極3よりも負極4が電極群の中心に近いため、負極4の最内周の集電体に第1の金属基板を用いることが望ましい。負極4の最内周は、負極4の巻き始め端部と、この端部よりも1周外側の周の前記端部と対応する部分とで規定された部分であり、図11において矢印で表示する部分である。負極4の最内周では、集電体に第1の金属基板4cが用いられ、第1の負極部4Aを構成している。負極4の最外周が正極3の最外周よりも外側に位置する場合、負極4の最外周にも第1の負極部4Aが用いられる。この場合、最内周及び最外周以外の負極の集電体に第2の金属基板4dを用い、第2の負極部4Bを構成することができる。一方、正極3の最外周が負極4の最外周よりも外側に位置する場合、最外周の正極3に第1の正極部3Aを用いる。この場合、最外周の負極には第2の負極部を用いることができる。
【0095】
図11に示すように負極4の最内周に第1の負極部4Aを用いる場合、正極3のうち最内周正極の正極集電体3aに第1の金属基板3cを用いても良い。図11では、正極よりも負極が電極群の中心に近い例を説明したが、正極の方を電極群の中心に近くすることもできる。この場合、正極の最内周を第1の正極部で構成することが望ましい。
【0096】
図10では、電極の最外周に第1の電極部を用いる例を説明したが、これに限定されず、電極の最外周より数周内側の周にも第1の電極部を用いることができる。また、図11では、電極の最内周に第1の電極部を用いる例を説明したが、これに限定されず、電極の最内周より数周外側の周にも第1の電極部を用いることができる。
【0097】
捲回型電極群は、例えば、第2の電極部と対向電極とをその間にセパレータを介して渦巻状に捲回した後、得られた捲回物を巻き芯として用い、第1の電極部と対向電極とをその間にセパレータを介して巻き付け、次いでプレス成型することにより作製される。第1の電極部と第2の電極部の電気的接続は、集電タブ同士を電気的に接続することによって得られる。
【0098】
第5の実施形態によれば、捲回型電極群において、第1の電極部の一部は第2の電極部の一部よりも外側に配置され、かつ第1の金属基板の引張り強度が第2の金属基板の引張り強度よりも大きい。その結果、第1の金属基板及び第2の金属基板それぞれに設けられたタブを端子に溶接する際の金属基板の破断を抑制することができる。従って、金属基板の厚さに拘らず、金属基板の破断に起因する電池容量の低下及び内部抵抗の増大を回避することができるため、高エネルギー密度を有する非水電解質電池を実現することができる。
【0099】
(第6の実施形態)
第6の実施形態によれば、外装部材と、外装部材内に収容され、第1〜第5の実施形態の電極群を複数備えた非水電解質電池が提供される。
【0100】
第6の実施形態に係る電池の一例を図12に示す。図12では、図1〜図11と同様な部材について同符号を付して説明を省略する。
【0101】
外装部材1内には、積層型電極群2が複数収納されている。各電極群2の最外層がセパレータ5で構成されている。最外層のセパレータ5と接する負極4は、第1の負極部4Aである。第1の負極部4Aよりも内側に位置する負極は、第2の負極部4Bである。第1の負極部4Aの第1の金属基板4cの引張り強度は、第2の負極部4Bの第2の金属基板4dの引張り強度よりも大きい。
【0102】
図13に示すように、負極端子13は、矩形状の頭部13aと、頭部13aから延出した矩形柱状の軸部13bと、軸部13bから二股に分岐したものからなる断面略コの字状の挟持部13cとを有する。また、正極端子14は、図12に示すように、矩形状の頭部14aと、頭部14aから延出した矩形柱状の軸部14bと、軸部14bから二股に分岐したものからなる断面略コの字状の挟持部14cとを有する。正極端子14及び負極端子13は、導電性材料から形成することができる。導電性材料には、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅等を挙げることができる。
【0103】
一方の電極群2の複数枚の負極タブ7が一つに積層され、負極端子13の挟持部13cに溶接されている。他方の電極群2の端面から突出した複数の負極タブ7も一つに積層され、負極端子13の挟持部13cに溶接されている。これにより、複数の電極群2の負極タブ7が一つにまとめられた状態で負極端子13と電気的に接続される。
【0104】
また、一方の電極群2の複数枚の正極タブ6が一つに積層され、正極端子14の挟持部14cに溶接されている。他方の電極群2の端面から突出した複数の正極タブ6も一つに積層され、正極端子14の挟持部14cに溶接されている。これにより、複数の電極群2の正極タブ6が一つにまとめられた状態で正極端子14と電気的に接続される。
【0105】
なお、第2の負極部4Bのうちのいずれかを第1の負極部4Aに変更することにより、第1の負極部4Aの一部を第2の負極部4Bの一部よりも外側に配置することができる。
【0106】
また、図12では、第1の実施形態の電池の電極群を用いたが、電極群はこれに限らず、第2〜第5の実施形態の電池の電極群を用いることができる。
【0107】
第6の実施形態によれば、第1〜第5の実施形態の電極群を複数備えるため、電池のエネルギー密度をより向上することができる。
【0108】
(第7の実施形態)
第7の実施形態に係る電池パックを詳細に説明する。
【0109】
電池パックは、第1〜第6の実施形態に係る非水電解質電池(即ち、単電池)を一以上有する。電池パックに複数の単電池が含まれる場合、各単電池は、電気的に直列、並列、或いは、直列と並列に接続して配置される。
【0110】
図14及び図15を参照して電池パック200を具体的に説明する。図14に示す電池パック200では、単電池21として扁平型非水電解質電池を使用している。
【0111】
複数の単電池21は、外部に延出した負極端子6及び正極端子7が同じ向きに揃えられるように積層され、粘着テープ22で締結することにより組電池23を構成している。これらの単電池21は、図15に示すように互いに電気的に直列に接続されている。
【0112】
プリント配線基板24は、負極端子6及び正極端子7が延出する単電池21側面と対向して配置されている。プリント配線基板24には、図15に示すようにサーミスタ25、保護回路26及び外部機器への通電用端子27が搭載されている。なお、組電池23と対向する保護回路基板24の面には組電池23の配線と不要な接続を回避するために絶縁板(図示せず)が取り付けられている。
【0113】
正極側リード28は、組電池23の最下層に位置する正極端子7に接続され、その先端はプリント配線基板24の正極側コネクタ29に挿入されて電気的に接続されている。負極側リード30は、組電池23の最上層に位置する負極端子6に接続され、その先端はプリント配線基板24の負極側コネクタ31に挿入されて電気的に接続されている。これらのコネクタ29、31は、プリント配線基板24に形成された配線32、33を通して保護回路26に接続されている。
【0114】
サーミスタ25は、単電池21の温度を検出するために用いられ、その検出信号は保護回路26に送信される。保護回路26は、所定の条件で保護回路26と外部機器への通電用端子27との間のプラス側配線34a及びマイナス側配線34bを遮断できる。所定の条件とは、例えばサーミスタ25の検出温度が所定温度以上になったときである。また、所定の条件とは単電池21の過充電、過放電、過電流等を検出したときである。この過充電等の検出は、個々の単電池21もしくは単電池21全体について行われる。個々の単電池21を検出する場合、電池電圧を検出してもよいし、正極電位もしくは負極電位を検出してもよい。後者の場合、個々の単電池21中に参照極として用いるリチウム電極が挿入される。図14及び図15の場合、単電池21それぞれに電圧検出のための配線35を接続し、これら配線35を通して検出信号が保護回路26に送信される。
【0115】
正極端子7及び負極端子6が突出する側面を除く組電池23の三側面には、ゴムもしくは樹脂からなる保護シート36がそれぞれ配置されている。
【0116】
組電池23は、各保護シート36及びプリント配線基板24と共に収納容器37内に収納される。すなわち、収納容器37の長辺方向の両方の内側面と短辺方向の内側面それぞれに保護シート36が配置され、短辺方向の反対側の内側面にプリント配線基板24が配置される。組電池23は、保護シート36及びプリント配線基板24で囲まれた空間内に位置する。蓋38は、収納容器37の上面に取り付けられている。
【0117】
なお、組電池23の固定には粘着テープ22に代えて、熱収縮テープを用いてもよい。この場合、組電池の両側面に保護シートを配置し、熱収縮テープを周回させた後、熱収縮テープを熱収縮させて組電池を結束させる。
【0118】
図14、図15では単電池21を直列接続した形態を示したが、電池容量を増大させるためには並列に接続しても、または直列接続と並列接続を組み合わせてもよい。組み上がった電池パックをさらに直列、並列に接続することもできる。
【0119】
第7の実施形態によれば、金属基板の破断に起因する電池容量の低下及び内部抵抗の増大が回避され、かつエネルギー密度の高い第1〜第5の実施形態のいずれかの非水電解質電池を備えることにより、電池容量の低下及び内部抵抗の増大が回避され、かつエネルギー密度の高い電池パックを提供することができる。
【0120】
なお、電池パックの態様は用途により適宜変更される。電池パックの用途は、大電流を取り出したときに優れたサイクル特性を示すものが好ましい。具体的には、デジタルカメラの電源用や、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車等の車載用が挙げられる。特に、高温特性の優れた非水電解質二次電池を用いた電池パックは車載用に好適に用いられる。
【実施例】
【0121】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。
【0122】
(実施例1)
<正極の作製>
正極活物質として、リチウムニッケル複合酸化物(LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2)粉末90質量%を用いた。導電剤として、アセチレンブラック3質量%及びグラファイト3質量%を用いた。結着剤として、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)4質量%を用いた。以上の成分をN−メチルピロリドン(NMP)に加えて混合し、スラリーを調製した。このスラリーを、表1に示す第2の金属基板Xからなる集電体の両面に長辺に平行な一端部を除いて塗布し、乾燥し、プレスすることにより、正極を得た。スラリーが未塗布で集電体が露出している一端部は、正極集電タブとして機能する。
【0123】
<負極の作製>
Li吸蔵電位が1.56V(vs. Li/Li+)である、スピネル構造を有するチタン酸リチウム(Li4Ti5O12)粉末を負極活物質として用意した。負極活物質を90質量%、導電剤としてグラファイトを7質量%、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を3質量%用いた。これらの成分と、N−メチルピロリドン(NMP)とを混合することによりスラリーを調製した。
【0124】
得られたスラリーを表1に示す第1の金属基板からなる集電体の両面に長辺に平行な一端部を除いて塗布し、乾燥した後、ロールプレスすることにより第1の負極部を得た。また、このスラリーを表1に示す第2の金属基板からなる集電体の両面に長辺に平行な一端部を除いて塗布し、乾燥した後、ロールプレスすることにより第2の負極部を得た。第1,第2の負極部において、スラリーが未塗布で集電体が露出している一端部は、負極集電タブとして機能する。
【0125】
得られた正極と第2の負極部とをその間に厚さ20μmのポリエチレン製のセパレータを介して渦巻状に捲回した。得られた捲回物に、正極と第1の負極部とをその間にセパレータを介して渦巻状に捲回した。捲回の際、正極が負極よりも先行し、かつ正極集電タブが電極群の捲回軸方向に突出し、かつ負極集電タブがこれと反対方向に突出するよう、正極及び負極の位置をずらした。捲回数は第1の負極部と第2の負極部とを合わせて50回とした。その後、プレス成形することにより図9に示す扁平型電極群を得た。得られた電極群では、最外層にセパレータが位置し、その最外層のセパレータと接するのが第1の負極部であった。負極は、最外周が第1の負極部で、最外周以外が第2の負極部であった。
【0126】
正極集電タブに正極リードを溶接し、また、負極集電タブに負極リードを溶接した後、電極群を金属製外装部材に収納した。プロピレンカーボネート(PC)及びジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒(体積比率1:2)に、電解質としてLiPF6を1mol/L溶解した。得られた非水電解液を注入した後、外装部材を封止することにより、角型非水電解質電池を製造した。
【0127】
(実施例2)
<正極の作製>
実施例1で説明したのと同様なスラリーを、表1に示す第1の金属基板Xからなる集電体の両面に長辺に平行な一端部を除いて塗布し、乾燥し、プレスすることにより、第1の正極部を得た。スラリーが未塗布で集電体が露出している一端部は、正極集電タブとして機能する。
【0128】
また、第2の正極部として、実施例1で説明したのと同様な正極を用意した。
【0129】
得られた第1の正極部と第2の負極部とをその間に実施例1と同様なセパレータを介して渦巻状に捲回した。得られた捲回物に、第2の正極部と第1の負極部とをその間にセパレータを介して渦巻状に捲回した。捲回の際、正極が負極よりも先行し、かつ正極集電タブが電極群の捲回軸方向に突出し、かつ負極集電タブがこれと反対方向に突出するよう、正極及び負極の位置をずらした。捲回数は第1の負極部と第2の負極部とを合わせて50回とした。その後、プレス成形することにより図9に示す扁平型電極群を得た。得られた電極群では、最外層にセパレータが位置し、その最外層のセパレータと接するのが第1の負極部であった。負極は、最外周が第1の負極部で、最外周以外が第2の負極部であった。正極は、巻き始め端部から5周目までが第1の正極部で、それ以外が第2の正極部であった。
【0130】
得られた電極群から実施例1と同様にして角型非水電解質電池を製造した。
【0131】
(実施例3)
第2の正極部と第2の負極部とをその間に実施例1と同様なセパレータを介して渦巻状に捲回した。得られた捲回物に、第1の正極部と第2の負極部とをその間にセパレータを介して渦巻状に捲回した。捲回の際、負極が正極よりも先行し、かつ正極集電タブが電極群の捲回軸方向に突出し、かつ負極集電タブがこれと反対方向に突出するよう、正極及び負極の位置をずらした。捲回数は第1の正極部と第2の正極部とを合わせて50回とした。その後、プレス成形することにより図9に示す扁平型電極群を得た。得られた電極群では、最外層にセパレータが位置し、その最外層のセパレータと接するのが第1の正極部であった。正極は、最外周が第1の正極部で、最外周以外が第2の正極部であった。負極には、巻き始め端部から巻き終わり端部まで第2の負極部を用いた。
【0132】
得られた電極群から実施例1と同様にして角型非水電解質電池を製造した。
【0133】
(実施例4)
第2の正極部と第1の負極部とをその間に実施例1と同様なセパレータを介して渦巻状に捲回した。得られた捲回物に、第1の正極部と第2の負極部とをその間にセパレータを介して渦巻状に捲回した。捲回の際、負極が正極よりも先行し、かつ正極集電タブが電極群の捲回軸方向に突出し、かつ負極集電タブがこれと反対方向に突出するよう、正極及び負極の位置をずらした。捲回数は第1の正極部と第2の正極部とを合わせて50回とした。その後、プレス成形することにより図9に示す扁平型電極群を得た。得られた電極群では、最外層にセパレータが位置し、その最外層のセパレータと接するのが第1の正極部であった。正極は、最外周が第1の正極部で、最外周以外が第2の正極部であった。負極には、巻き始め端部から5周目まで第1の負極部を用い、それ以外に第2の負極部を用いた。
【0134】
得られた電極群から実施例1と同様にして角型非水電解質電池を製造した。
【0135】
(比較例1)
第2の正極部と第2の負極部とをその間に実施例1と同様なセパレータを介して渦巻状に捲回した。捲回の際、正極が負極よりも先行し、かつ正極集電タブが電極群の捲回軸方向に突出し、かつ負極集電タブがこれと反対方向に突出するよう、正極及び負極の位置をずらした。その後、プレス成形することにより図9に示す扁平型電極群を得た。得られた電極群では、最外層にセパレータが位置し、その最外層のセパレータと接するのが第2の負極部であった。
【0136】
得られた電極群から実施例1と同様にして角型非水電解質電池を製造した。
【0137】
(比較例2)
第2の正極部と第2の負極部とをその間に実施例1と同様なセパレータを介して渦巻状に捲回した。捲回の際、負極が正極よりも先行し、かつ正極集電タブが電極群の捲回軸方向に突出し、かつ負極集電タブがこれと反対方向に突出するよう、正極及び負極の位置をずらした。その後、プレス成形することにより図9に示す扁平型電極群を得た。得られた電極群では、最外層にセパレータが位置し、その最外層のセパレータと接するのが第2の正極部であった。
【0138】
得られた電極群から実施例1と同様にして角型非水電解質電池を製造した。
【0139】
実施例及び比較例の電池をそれぞれ10個作製した際に、集電体に切れが生じた個数を下記表2に示す。
【表1】
【0140】
【表2】
【0141】
表2から明らかなように、比較例1及び2で作製した電極群と比べて、実施例1〜4で作製した電極群は集電体の切れが少ないことが分かる。すなわち、捲回型電極群において応力がかかり易い最外層付近に第2の電極部を偏在させることによって、集電体の切れが低減することが確認された。
【0142】
(実施例5)
<正極の作製>
実施例1で説明したのと同様なスラリーを、表1に示す第1の金属基板Xからなる集電体の両面に一端部を除いて塗布し、乾燥し、プレスし、裁断することにより、図2に示す構造の第1の正極部を得た。
【0143】
また、このスラリーを表1に示す第2の金属基板Xからなる集電体の両面に一端部を除いて塗布し、乾燥し、プレスし、裁断することにより、図2に示す構造の第2の正極部を得た。
【0144】
<負極の作製>
実施例1で説明したのと同様なスラリーを、表1に示す第1の金属基板からなる集電体の両面に一端部を除いて塗布し、乾燥し、プレスし、裁断することにより、第1の負極部を得た。
【0145】
また、このスラリーを表1に示す第2の金属基板からなる集電体の両面に一端部を除いて塗布し、乾燥し、プレスし、裁断することにより、第2の負極部を得た。
【0146】
第2の正極部と第2の負極部とをその間に実施例1と同様なセパレータを介して交互に積層し、最外層が第2の負極部である積層物を得た。得られた積層物に第1の正極部をセパレータを介して積層した後、第1の正極部の上にセパレータを重ね、図6に示す構造の積層型電極群を製造した。積層数は100とした。
【0147】
複数枚の正極集電タブを正極リードに溶接し、また、複数枚の負極集電タブを負極リードに溶接した後、電極群を金属製外装部材に収納した。実施例1で説明したのと同様な非水電解液を注入した後、外装部材を封止することにより、図6に示す構造の角型非水電解質電池を製造した。
【0148】
(実施例6)
第2の正極部と第2の負極部とをその間に実施例1と同様なセパレータを介して交互に積層し、最外層が第2の正極部である積層物を得た。得られた積層物に第1の負極部をセパレータを介して積層した後、第1の負極部の上にセパレータを重ね、図1に示す構造の積層型電極群を製造した。積層数は100とした。
【0149】
得られた積層型電極群から実施例5と同様にして図1に示す構造の角型非水電解質電池を製造した。
【0150】
(実施例7)
第1の正極部の集電体に表1に示す第1の金属基板Yを用い、第2の正極部の集電体に表1に示す第2の金属基板Yを用いること以外は、実施例5と同様にして図1に示す構造の角型非水電解質電池を製造した。
【0151】
(比較例3)
第2の正極部と第2の負極部とをその間に実施例1と同様なセパレータを介して交互に積層し、最外層が第2の負極部である積層物を得た。得られた積層物に第2の正極部をセパレータを介して積層した後、第2の正極部の上にセパレータを重ね、積層型電極群を製造した。
【0152】
得られた積層型電極群から実施例5と同様にして角型非水電解質電池を製造した。
【0153】
(比較例4)
第2の正極部と第2の負極部とをその間に実施例1と同様なセパレータを介して交互に積層し、最外層が第2の正極部である積層物を得た。得られた積層物に第2の負極部をセパレータを介して積層した後、第2の負極部の上にセパレータを重ね、積層型電極群を製造した。
【0154】
得られた積層型電極群から実施例5と同様にして角型非水電解質電池を製造した。
【0155】
実施例及び比較例の電池をそれぞれ10個作製した際に、集電体に切れが生じた個数を下記表3に示す。
【表3】
【0156】
表3から明らかなように、比較例3及び4で作製した電極群と比べて、実施例5〜7で作製した電極群は集電体の切れが少ないことが分かる。すなわち、積層型電極群の最上層及び最下層に第2の電極部を偏在させることによって、集電体の切れが低減することが確認された。
【0157】
以上述べた少なくとも一つの実施形態の非水電解質電池によれば、第1の電極部の一部が第2の電極部の一部よりも電極群のより外側に配置され、かつ第1の金属基板が第2の金属基板よりも引張り強度が大きいため、集電体の厚さに拘らず、集電体の破断を抑制することが可能となる。
【0158】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0159】
1…外装部材、2…電極群、3…正極、3A…第1の正極部、3B…第2の正極部、4…負極、4A…第1の負極部、4B…第2の負極部、3c、4c…第1の金属基板、3d,4d…第2の金属基板、5…セパレータ、6,11…正極集電タブ、7,12…負極集電タブ、8…絶縁部材、9…正極端子、10…負極端子、21…単電池、24…プリント配線基板、25…サーミスタ、26…保護回路、37…収納容器、200…電池パック。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装部材と、前記外装部材内に収容され、正極及び負極を含む電極群とを備えた非水電解質電池であって、
少なくとも前記正極または前記負極の一方は、第1の金属基板及び前記第1の金属基板の少なくとも一部に形成された活物質含有部を含む第1の電極部と、第2の金属基板及び前記第2の金属基板の少なくとも一部に形成された活物質含有部を含む第2の電極部とを有し、
前記第1の金属基板は、前記第2の金属基板よりも引張り強度が大きく、
前記第1の電極部の一部は、前記第2の電極部の一部よりも前記電極群のより外側に配置されていることを特徴とする非水電解質電池。
【請求項2】
前記負極が前記第1の電極部及び前記第2の電極部を有し、前記負極の前記第1の電極部及び前記第2の電極部双方の前記活物質含有部は、リチウム吸蔵電位が0.4V以上(vs.Li/Li+)の負極活物質を含むことを特徴とする請求項1に記載の非水電解質電池。
【請求項3】
前記負極活物質は、リチウムチタン酸化物及びリチウムチタン複合酸化物のうちの少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項2に記載の非水電解質電池。
【請求項4】
前記負極の前記第1の電極部の前記第1の金属基板は銅またはアルミニウム合金を含み、かつ前記負極の前記第2の電極部の前記第2の金属基板はアルミニウムを含むことを特徴とする請求項2または3のいずれか1項に記載の非水電解質電池。
【請求項5】
前記第1の電極部の前記一部を構成する前記第1の金属基板は、前記活物質含有部が非形成の箇所に第1の集電タブを有し、
前記第2の電極部の前記一部を構成する前記第2の金属基板は、前記活物質含有部が非形成の箇所に第2の集電タブを有し、
前記第1の集電タブを前記第2の集電タブに接合することにより前記第1の電極部が前記第2の電極部と電気的に接続されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の非水電解質電池。
【請求項6】
前記電極群が少なくとも一以上前記外装部材内に収納されている請求項1乃至5のいずれか1項に記載の非水電解質電池。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の非水電解質電池を一以上備えることを特徴とする電池パック。
【請求項1】
外装部材と、前記外装部材内に収容され、正極及び負極を含む電極群とを備えた非水電解質電池であって、
少なくとも前記正極または前記負極の一方は、第1の金属基板及び前記第1の金属基板の少なくとも一部に形成された活物質含有部を含む第1の電極部と、第2の金属基板及び前記第2の金属基板の少なくとも一部に形成された活物質含有部を含む第2の電極部とを有し、
前記第1の金属基板は、前記第2の金属基板よりも引張り強度が大きく、
前記第1の電極部の一部は、前記第2の電極部の一部よりも前記電極群のより外側に配置されていることを特徴とする非水電解質電池。
【請求項2】
前記負極が前記第1の電極部及び前記第2の電極部を有し、前記負極の前記第1の電極部及び前記第2の電極部双方の前記活物質含有部は、リチウム吸蔵電位が0.4V以上(vs.Li/Li+)の負極活物質を含むことを特徴とする請求項1に記載の非水電解質電池。
【請求項3】
前記負極活物質は、リチウムチタン酸化物及びリチウムチタン複合酸化物のうちの少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項2に記載の非水電解質電池。
【請求項4】
前記負極の前記第1の電極部の前記第1の金属基板は銅またはアルミニウム合金を含み、かつ前記負極の前記第2の電極部の前記第2の金属基板はアルミニウムを含むことを特徴とする請求項2または3のいずれか1項に記載の非水電解質電池。
【請求項5】
前記第1の電極部の前記一部を構成する前記第1の金属基板は、前記活物質含有部が非形成の箇所に第1の集電タブを有し、
前記第2の電極部の前記一部を構成する前記第2の金属基板は、前記活物質含有部が非形成の箇所に第2の集電タブを有し、
前記第1の集電タブを前記第2の集電タブに接合することにより前記第1の電極部が前記第2の電極部と電気的に接続されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の非水電解質電池。
【請求項6】
前記電極群が少なくとも一以上前記外装部材内に収納されている請求項1乃至5のいずれか1項に記載の非水電解質電池。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の非水電解質電池を一以上備えることを特徴とする電池パック。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−54950(P2013−54950A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192933(P2011−192933)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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