説明

非水電解質電池

【課題】電極合剤の体積密度が高く、外装材としてラミネートフィルムを用いた場合でも、電池の変形を抑制することができ、優れた電池特性を得られる非水電解質電池を提供する。
【解決手段】外装フィルムの内部に配置される正極13と負極14とがセパレータ15および高分子化合物層16を介して対向している。負極14は、負極合剤層14bの体積密度が1.70g/cm3以上1.90g/cm3以下である。負極合剤層14bは、平均粒径25μm以上35μm以下の球状黒鉛と平均粒径が8μm以上22μm以下の非球状黒鉛とを混合した混合粒子を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、非水電解質電池に関する。さらに詳しくは、正極と負極とがセパレータを介して対向して配置された非水電解質電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラ一体型VTR(Video Tape Recorder)、携帯電話あるいは携帯用コンピューターなどのポータブル電子機器が多く登場し、その小型軽量化が図られている。それに伴い、電子機器のポータブル電源として、電池、特に二次電池の開発が活発に進められている。
【0003】
二次電池の中でも、リチウムイオン二次電池は、高いエネルギー密度を実現できるものとして注目されている。リチウムイオン二次電池では、外装材としてアルミニウムや鉄などの金属製の電池缶の換わりに、ラミネートフィルムなどを使用することによって、更なる電池の小型化や軽量化、薄型化が進められている。リチウムイオン二次電池の用途は、幅広くなり、更なる高エネルギー密度化が求められている。
【0004】
リチウムイオン二次電池の更なる高エネルギー化を実現するために、電極合剤の体積密度が高まりつつある。例えば、特許文献1には、異なる球状の炭素質材料を用いることで、エネルギー密度を向上する技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−323895号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電極合剤の体積密度が高いリチウムイオン二次電池では、充放電の際に電極が膨張と収縮とを繰り返すことによる変化も大きいので、外装材としてラミネートフィルムを用いたリチウムイオン二次電池では、ラミネートフィルムの剛性が、金属製のケースに比べると弱いため、電池内部の圧力変化による電池の変形を抑制することができない。
【0007】
一旦、電極が変形すると、電極とセパレータとの間隔が広がるため、セルの厚みも増加してしまう。また、電極が変形することで、電極とセパレータとの間隔が広がってしまうため、充放電サイクルに伴い容量劣化も大きくなってしまう。
【0008】
したがって、この発明の目的は、電極合剤層の体積密度が高く、外装材としてラミネートフィルムを用いた場合でも、電池の変形を抑制することができ、優れた電池特性を得られる非水電解質電池を提供することにある。また、この発明の他の目的は、電極合剤層の体積密度を高くすることで、エネルギー密度を高くした非水電解質電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、
この発明は、正極と負極とがセパレータを介して対向しており、
負極は、充放電処理前の負極合剤層の体積密度が1.70g/cm3以上1.90g/cm3以下であり、
負極合剤層は、平均粒径が25μm以上35μm以下の球状黒鉛と平均粒径が8μm以上22μm以下の非球状黒鉛とを混合した混合粒子を含むこと
を特徴とする非水電解質電池である。
【0010】
この発明では、充放電処理前の負極合剤層の体積密度が1.70g/cm3以上1.90g/cm3以下である高体積密度の負極に、平均粒径が25μm以上35μm以下の球状黒鉛と平均粒径が8μm以上22μm以下の非球状黒鉛とを混合した混合粒子を含むようにしたので、優れた電池特性を得ることができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、電極合剤層の体積密度が高く、外装材としてラミネートフィルムを用いた場合でも、電池の変形を抑制することができ、優れた電池特性を得ることができる。また、この発明によれば、電極合剤層の体積密度を高くできるため、エネルギー密度の高いセルを作製できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。まず、この発明の一実施形態による非水電解質電池の構成例について、図1および図2を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、この発明の一実施形態による非水電解質電池の一構成例を示す斜視図である。この非水電解質電池は、例えば、非水電解質二次電池である。この非水電解質電池は、正極リード11および負極リード12が取り付けられた巻回電極体10をフィルム状の外装部材1の内部に収納した構成とされており、扁平型の形状を有するものである。
【0014】
正極リード11および負極リード12は、それぞれ例えば短冊状であり、外装部材1の内部から外部に向かい例えば同一方向にそれぞれ導出されている。正極リード11は、例えばアルミニウム(Al)などの金属材料により構成されており、負極リード12は、例えばニッケル(Ni)などの金属材料により構成されている。
【0015】
外装部材1は、例えば、絶縁層、金属層および最外層をこの順に積層しラミネート加工などにより貼り合わせた構造を有するラミネートフイルムである。外装部材1は、例えば、絶縁層の側を内側として、各外縁部が融着あるいは接着剤により互いに密着されている。
【0016】
絶縁層は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレン、変性ポリプロピレンあるいはこれらの共重合体などのポリオレフィン樹脂により構成されている。水分透過性を低くすることができ、気密性に優れているからである。金属層は、箔状あるいは板状のアルミニウム、ステンレス、ニッケルあるいは鉄などにより構成されている。最外層は、例えば絶縁層と同様の樹脂により構成されていてもよいし、ナイロンなどにより構成されていてもよい。破れや突き刺しなどに対する強度を高くすることができるからである。外装部材1は、絶縁層、金属層および最外層以外の他の層を備えていてもよい。
【0017】
外装部材1と正極リード11および負極リード12との間には、正極リード11および負極リード12と、外装部材1の内側との密着性を向上させ、外気の侵入を防止するための密着フィルム2が挿入されている。密着フィルム2は、正極リード11および負極リード12に対して密着性を有する材料により構成され、例えば、正極リード11および負極リード12が上述した金属材料により構成される場合には、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂により構成されることが好ましい。
【0018】
図2は、図1に示した巻回電極体10のII−II線に沿った断面図である。巻回電極体10は、正極13と負極14とがセパレータ15およびセパレータ15の両面に設けられた高分子化合物層16を介して対向して配置されている。最外周部は、保護テープ17により保護されているのが好ましいが、無くとも可能である。
【0019】
正極13は、例えば、正極集電体13Aと、この正極集電体13Aの両面に設けられた正極合剤層13Bとを有している。正極集電体13Aは、例えば、アルミニウム箔などの金属箔により構成されている。
【0020】
正極合剤層13Bは、例えば、正極活物質として、電極反応物質であるリチウム(Li)を吸蔵および放出することが可能な正極材料のいずれか1種または2種以上含み、必要に応じて炭素材料などの導電剤、ポリフッ化ビニリデンなどの結着剤を含んでいてもよい。
【0021】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、リチウムと遷移金属とを有するリチウム複合酸化物、オリビン構造を有するリチウム金属リン酸化合物などを用いることができる。具体的には、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMn24、LiCo0.33Ni0.33Mn0.332、LiFePO4などを用いることができる。
【0022】
負極14は、例えば、正極13と同様に、負極集電体14Aと、この負極集電体14Aの両面に設けられた負極合剤層14Bとを有している。負極集電体14Aは、例えば、銅箔などの金属箔により構成されている。
【0023】
負極合剤層14Bは、例えばリチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種または2種以上を含んで構成されており、必要に応じて導電剤および結着剤を含んでいてもよい。
【0024】
負極材料としては、球状黒鉛と非球状黒鉛とを混合したものを用いる。ここで、球状黒鉛とは、人造黒鉛、天然黒鉛、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素などの炭素材料であって、形状が球状またはほぼ球状であるものをいう。非球状黒鉛とは、人造黒鉛、天然黒鉛、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素などの炭素材料であって、形状が鱗片状、繊維状、塊状のものをいう。より具体的には、例えば、球状黒鉛としては、人造黒鉛であるMCMB(メソカーボンマイクロビーズ)が挙げられ、非球状黒鉛としては、MCMBを粉砕した粉末などが挙げられる。
【0025】
負極材料としては、平均粒径が25μm以上35μm以下の球状黒鉛と平均粒径が8μm以上22μm以下の非球状黒鉛とを混合したものであり、粒度分布が、D10が5μm以上11μm以下であり、D50が13μm以上25μm以下であり、D90が27μm以上45μm以下である混合粒子が好ましい。優れた特性が得られるからである。
【0026】
なお、粒度分布の測定には、レーザ回折式粒度分布測定装置((株)セイシン企業製、製品名:LMS−30)などを用いることができる。粒度分布は、体積基準の粒度分布で示す。また、例えば、D10が5μm以上11μm以下であるとは、粒度分布の累積値10%となる粒径が5μm以上11μm以下であることを示す。平均粒径は、同様にレーザ回折式粒度分布測定装置((株)セイシン企業製、製品名:LMS−30)などを用いて粒度分布を測定した場合のD50の値である。
【0027】
混合粒子としては、球状黒鉛としてMCMBと、非球状黒鉛としてのMCMBを粉砕し粉砕面を非晶質化させたMCMB粉砕品とを混合したものを用いることが好ましい。この混合粒子は、XRD(X-ray diffraction)(Rigaku社製 製品名 RINT)により混合粒子が、MCMBだけで構成されていることを確認できる。SEM(Scanning Electron Microscope)(JEOL社製 製品名 JSM−5600LV)により観察することで、球状粒子と粉砕粒子との混合粒子であることを確認できる。
【0028】
負極14は、充放電処理前の負極合剤層14Bの体積密度が、1.70g/cm3以上1.90g/cm3以下の範囲内に調整された、いわゆる高体積密度の負極を用いる。なお、出荷状態のセルでは、完全放電状態での負極合剤層14Bの体積密度は、1.50g/cm3以上1.90g/cm3以下の範囲である。完全放電状態とは、0.2Cの一定電流で3.0Vまで放電した状態をいう。出荷状態のセルには、例えば、所定電圧まで1回充電した状態のセル、セルを1度充電した後、出荷に適した電圧まで放電した状態のセル、市場に製品として流通している状態で1度も充放電を行っていないセルなどが含まれる。
【0029】
セパレータ15は、例えばポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂材料よりなる多孔質膜、セラミック製の不織布などの無機材料よりなる多孔質膜により構成されており、これら2種以上の多孔質膜が積層された構造のものを用いてもよい。
【0030】
高分子化合物層16は、均一な厚みを有し、電解液と、この電解液を保持する高分子化合物とを含有しており、いわゆるゲル状となっている。電解液は、電解質塩と、この電解質塩を溶解する溶媒とを含んでいる。電解質塩としては、例えば、LiPF6、LiClO4、LiBF4、LiN(CF3SO22、LiN(C25SO22、LiAsF6などのリチウム塩が挙げられる。電解質塩は、いずれか1種を用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0031】
溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの炭酸エステル系溶媒、1,2−ジメトキシエタン、1−エトキシ−2−メトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなどのラクトン系溶媒、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒、スルフォラン系溶媒、リン酸類、リン酸エステル溶媒、またはピロリドン類などの非水溶媒が挙げられる。溶媒は、いずれか1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0032】
また、特性を向上させるために、溶媒に、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンのような環状炭酸エステル誘導体などの添加剤を含むようにしてもよい。
【0033】
高分子化合物としては、フッ素系高分子化合物を用いる。フッ素系高分子化合物としては、フッ化ビニリデンを由来にする繰り返し単位を有する高分子化合物が挙げられる。より具体的には、例えば、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体などが挙げられる。また、その他のフッ素系高分子化合物も用いることが可能である。より具体的には、例えば、ポリテトラフルオロエチレン及びこれらの誘導体などを、単独であるいは混合して用いることができる。また、その他、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン−四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)などを、単独であるいは混合して用いることができる。
【0034】
さらに、フッ素系高分子化合物以外にも接着力がある高分子化合物を用いることができる。具体的には、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキシド、ポリメチルメタクリレート、塩化ビニル、スチレンブタジエンゴム及びこれらの誘導体などを、単独であるいは混合して用いることができる。
【0035】
高分子化合物層16は、例えば、セパレータ15上に多孔質のフッ素系高分子化合物を形成し、その後、多孔質のフッ素系高分子化合物に電解液を保持させることで形成されるものである。多孔質のフッ素系高分子化合物は、フッ素系高分子化合物をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの溶剤に溶解させた溶液を、セパレータ15の両面に塗布し、乾燥させることで形成することができる。
【0036】
高分子化合物層16は、電極とセパレータとの剥離強度が5mN/mm以上であることが好ましい。剥離強度は、例えば、接着している負極とセパレータとを剥がすように100mm/minの速度で引っ張り、そのときの剥離強度をデジタルフォースゲージ(IMADA社製)により測定できる。
【0037】
高分子化合物層16にフィラーとして、Al23、SiO2、TiO2、BN(窒化ホウ素)などの耐熱性の高い化合物を含むようにしても、接着性は維持されるため、同様の効果が得られる。
【0038】
次に、この発明の一実施形態による非水電解質電池の製造方法の一例について説明する。
【0039】
正極集電体13Aに正極合剤層13Bを形成し正極13を作製する。正極合剤層13Bは、例えば、正極活物質と、導電剤と、結着剤とを混合して、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの溶剤に分散させてペースト状としたのち、正極集電体13Aに塗布し乾燥させ、圧縮成型することにより形成する。
【0040】
負極集電体14Aに負極合剤層14Bを形成し負極14を作製する。負極合剤層14Bは、例えば、負極活物質と、結着剤とを混合して、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの溶剤に分散させてペースト状としたのち、負極集電体14Aに塗布し乾燥させ、圧縮成型することにより形成する。次に、正極集電体13Aに正極リード11を取り付けると共に、負極集電体14Aに負極リード12を取り付ける。
【0041】
フッ素系高分子化合物をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの溶剤に溶解した溶液を、セパレータ15の両面に塗布し、水などの貧溶媒中に浸した後、熱風などで乾燥させることで、セパレータ15の両面に多孔質のフッ素系高分子化合物の層を形成する。
【0042】
正極13、セパレータ15、負極14、およびセパレータ15を順に積層して巻回し、最外周部に保護テープ17を接着して巻回電極体10を形成したのち、外装部材1の間に挟み込み、減圧下、外装部材1の外周縁部の3辺を熱融着する。その際、正極リード11および負極リード12と外装部材1との間には密着フィルム2を挿入する。
【0043】
その後、これに電解液を注入して、減圧下で、残りの1辺の外周縁部を熱融着し、密封する。そして、最後にヒートプレスをすることで、一実施形態による非水電解質電池を得ることができる。なお、ヒートプレスする際の加熱により、多孔質のフッ素高分子化合物は、一部または全部がゲル状となり、高分子化合物層16が形成される。
【実施例】
【0044】
この発明の具体的な実施例について説明する。ただし、この発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0045】
(最適な負極の検討)
<サンプル1>
負極材料として、平均粒径31.7μmの球状黒鉛と、平均粒径7.2μmの非球状黒鉛とを質量比1:1で混合し、混合後の粒度分布が、D10が4.1μm、D50が10.5μm、D90が29.6μmである混合粒子を調製した。この混合粒子に、結着剤としてPVdFを加え溶剤であるNMPにより分散させたものを、Cu箔に塗布し乾燥させた。その後負極合剤層の体積密度を1.85g/cm3となるようにプレスした。体積密度が1.85g/cm3にならない場合は、近い値になるよう調整した。その結果、1.82g/cm3となるようにプレスすることにより、サンプル1の負極を作製した。
【0046】
<サンプル2>
負極材料として、平均粒径31.7μmの球状黒鉛と、平均粒径11.7μmの非球状黒鉛とを質量比1:1で混合し、混合後の粒度分布が、D10が5.5μm、D50が15.2μm、D90が31.4μmである混合粒子を調製した。負極合剤層の体積密度が1.85g/cm3となるように調製した。以上の点以外は、サンプル1と同様にして、サンプル2の負極を作製した。
【0047】
<サンプル3>
負極材料として、平均粒径31.7μmの球状黒鉛と、平均粒径14.1μmの非球状黒鉛とを質量比1:1で混合し、混合後の粒度分布が、D10が8.5μm、D50が21.9μm、D90が37.8μmである混合粒子を調製した。負極合剤層の体積密度が1.85g/cm3となるように調整した。以上の点以外は、サンプル1と同様にして、サンプル3の負極を作製した。
【0048】
<サンプル4>
負極材料として、平均粒径31.7μmの球状黒鉛と、平均粒径20.3μmの非球状黒鉛とを質量比1:1で混合し、混合後の粒度分布が、D10が9.7μm、D50が23.6μm、D90が41.5μmである混合粒子を調製した。負極合剤層の体積密度が1.85g/cm3となるように調整した。以上の点以外は、サンプル1と同様にして、サンプル4の負極を作製した。
【0049】
<サンプル5>
負極材料として、平均粒径42.1μmの球状黒鉛と、平均粒径7.2μmの非球状黒鉛とを質量比1:1で混合し、混合後の粒度分布が、D10が4.1μm、D50が11.6μm、D90が48.6μmである混合粒子を調製した。負極合剤層の体積密度が1.79g/cm3となるように調整した。以上の点以外は、サンプル1と同様にして、サンプル5の負極を作製した。
【0050】
<サンプル6>
負極材料として、平均粒径42.1μmの球状黒鉛と、平均粒径11.7μmの非球状黒鉛とを質量比1:1で混合し、混合後の粒度分布が、D10が5.7μm、D50が14.8μm、D90が48.7μmである混合粒子を調製した点以外は、サンプル1と同様にして、サンプル6の負極を作製した。
【0051】
<サンプル7>
負極材料として、平均粒径42.1μmの球状黒鉛と、平均粒径14.1μmの非球状黒鉛とを質量比1:1で混合し、混合後の粒度分布が、D10が7.4μm、D50が21.7μm、D90が48.8μmである混合粒子を調製した。負極合剤層の体積密度が1.82g/cm3となるように調整した。以上の点以外は、サンプル1と同様にして、サンプル7の負極を作製した。
【0052】
<サンプル8>
負極材料として、平均粒径42.1μmの球状黒鉛と、平均粒径20.3μmの非球状黒鉛とを質量比1:1で混合し、混合後の粒度分布が、D10が9.8μm、D50が24.7μm、D90が49.2μmである混合粒子を調製した。負極合剤層の体積密度が1.80g/cm3となるように調整した。以上の点以外は、サンプル1と同様にして、サンプル8の負極を作製した。
【0053】
<サンプル9>
負極材料として、平均粒径51.3μmの球状黒鉛と、平均粒径11.7μmの非球状黒鉛とを質量比1:1で混合し、混合後の粒度分布が、D10が5.7μm、D50が15.7μm、D90が57.7μmである混合粒子を調製した。負極合剤層の体積密度が1.75g/cm3となるように調整した。以上の点以外は、サンプル1と同様にして、サンプル9の負極を作製した。
【0054】
<サンプル10>
負極材料として、平均粒径51.3μmの球状黒鉛と、平均粒径14.1mの非球状黒鉛とを質量比1:1で混合し、混合後の粒度分布が、D10が7.5μm、D50が23.3μm、D90が57.8μmである混合粒子を調製した。負極合剤層の体積密度が1.73g/cm3となるように調整した。以上の点以外は、サンプル1と同様にして、サンプル10の負極を作製した。
【0055】
(容量評価)
サンプル1〜サンプル10の負極を用いて、コインセルを作製し、容量測定を行った。
【0056】
正極は、コバルト酸リチウム:ケッチェンブラック:ポリフッ化ビニリデン(PVdF)=7:2:1で混合しN−メチル−2−ピロリドン(NMP)で分散させたものをAl箔に塗布し乾燥させたものを用いた。塗布量は負極と比較し1.5倍になるよう調整した。
【0057】
正極および負極を円板状に打ち抜き、正極と負極と微孔性ポリエチレンフィルムよりなるセパレータとを、正極、セパレータ、負極の順に積層して電池缶に収納した。
【0058】
次に、この電池缶の中に、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを3:7の質量比で混合した混合溶媒に、LiPF6が1.0mol/lとなるように溶解した電解液を注入し、その後、絶縁封口ガスケットを介して電池缶をかしめることにより、コインセルを得た。
【0059】
次に、このコインセルの放電容量を、充電電流1Cの定電流定電圧充電を上限電圧4.2Vで2時間行った後、0.2Cの定電流放電を終止電圧3.0Vまで行って測定し、下記の式により求めた値で容量評価を行った。
(式)
「初回放電容量/理論容量」×100(%)
【0060】
表1に測定結果を示す。
【0061】
【表1】

【0062】
表1に示すように、サンプル2〜サンプル4で良好な特性が得られた。
【0063】
(高分子化合物層の効果の検討)
サンプル3の負極を用いて、以下のようにしてラミネートセル(A)とラミネートセル(B)を作製した。
【0064】
<ラミネートセル(A)>
【0065】
正極は、コバルト酸リチウム:ケッチェンブラック:PVdF=7:2:1(質量比)で混合しNMPで分散させたものをAl箔両面に塗布し乾燥させたものを用いた。塗布量は負極と比較し1.5倍になるよう調整した。
【0066】
負極は、サンプル3の負極と同様、サンプル3と同様にして調製した混合粒子に、結着剤としてPVdFを加え溶剤であるNMPにより分散させたものを、Cu箔両面に塗布し乾燥後、負極合剤層の体積密度が1.85g/cm3となるようにプレスしたものを用いた。
【0067】
セパレータは微孔性ポリエチレンフィルムを用いた。このセパレータの両面にPVdFをNMPに15wt%になるよう溶解させたものを塗布し、乾燥させることで厚み5μmの多孔質のポリフッ化ビニリデンをセパレータの両面に形成した。
【0068】
以上のようにして作製した正極および負極に端子を取り付けた後、多孔性フッ素樹脂を塗布したセパレータを介して密着させた後、長手方向に巻くことで電池素子を作製した。
【0069】
作製した電池素子をラミネートフィルムによる外装部材に挟み、3辺を熱融着した。なお、外装材は、最外層から順に25μm厚のナイロンフィルムと40μm厚のアルミニウム箔と30μm厚のポリプロピレンフィルムとが積層されてなる防湿性のアルミラミネートフィルムを用いた。
【0070】
その後、これに電解液を注入して、減圧下で残り1辺を熱融着し、密封した。電解液には、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを3:7の質量比で混合した溶媒に、1mol/lの割合でLiPF6を溶解させたものを用いた。そして、鉄板に挟み70℃で3分間加熱することで、多孔質のポリフッ化ビニリデンを介して、正極および負極とセパレータとを接着させた。以上により、ラミネートセル(A)を作製した。
【0071】
<ラミネートセル(B)>
セパレータの両面に多孔質のポリフッ化ビニリデンを形成しなかった点以外は、ラミネートセル(A)と同様にして、ラミネートセル(B)を作製した。
【0072】
ラミネートセル(A)およびラミネートセル(B)について、充放電試験を行い、容量維持率および厚み増加率を測定した。
【0073】
(容量維持率の測定)
容量維持率は、充放電を1サイクル繰り返したのち、充放電を300サイクル繰り返し、1サイクル目の放電容量および300サイクル目の放電容量を測定し、下記の式により、容量維持率を測定した。
(式)
容量維持率(%)=〔「300サイクル目の放電容量」/「1サイクル目の放電容量」〕×100(%)
なお、充電は、充電電流1.0Cの定電流定電圧充電を上限電圧4.2Vで2時間行い、放電は、1.0Cの定電流放電を終止電圧3.0Vまで行った
【0074】
(厚み増加率の測定)
容量維持率の測定と同様の条件で充放電を300サイクル行った後、続いて、充電を行った際の、1サイクル目の電池の厚みおよび300サイクル目の電池の厚みを測定し、下記の式により厚み増加率を測定した。
(式)
厚み増加率(%)={[(300サイクル目の放電後の厚み)−(1サイクル目の放電後の厚み)]/(1サイクル目の放電後の厚み)}×100(%)
なお、電池の厚みは、平行に設置された2枚の板でセルを挟み、デジマチックインジケータ(Mitutoyo社製)により、測定箇所によるばらつきがでないように測定した。
【0075】
測定結果を表2に示す。
【0076】
【表2】

【0077】
表2に示すように、多孔質のポリフッ化ビニリデンをセパレータの両面に塗布して作製したラミネートセル(A)では、ラミネートセル(B)よりも良好な容量維持率および厚み増加率が得られた。なお、サンプル2およびサンプル4の負極を用いて作製したラミネートセルでも、同様の結果が得られる傾向にあると考えられる。
【0078】
(電解液組成等による効果の検証)
電解液組成の変更やさらに添加剤を加えても同様の効果が得られるか検証した。以下のラミネートセル(C)〜ラミネートセル(K)では、電解液組成の変更や添加剤を加える点以外は、ラミネートセル(A)と同様であり、電極とセパレータ間にポリフッ化ビニリデン(PVdF)による接着層を設けている。
【0079】
<ラミネートセル(C)>
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを30:70の質量比で混合した混合溶媒に、1mol/lの割合でLiPF6を溶解させた電解液を用いた点以外は、ラミネートセル(A)と同様にして、ラミネートセル(C)を作製した。
【0080】
<ラミネートセル(D)>
エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とを30:70の質量比で混合した混合溶媒に、1mol/lの割合でLiPF6を溶解させた電解液を用いた点以外は、ラミネートセル(A)と同様にして、ラミネートセル(D)を作製した。
【0081】
<ラミネートセル(E)>
エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とプロピレンカーボネート(PC)とを25:70:5の質量比で混合した混合溶媒に、1mol/lの割合でLiPF6を溶解させた電解液を用いた点以外は、ラミネートセル(A)と同様にして、ラミネートセル(E)を作製した。
【0082】
<ラミネートセル(F)>
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とプロピレンカーボネート(PC)とを25:70:5の質量比で混合した混合溶媒に、1mol/lの割合でLiPF6を溶解させた電解液を用いた点以外は、ラミネートセル(A)と同様にして、ラミネートセル(F)を作製した。
【0083】
<ラミネートセル(G)>
エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを30:70の質量比で混合した混合溶媒に対して4‐フルオロ‐1,3‐ジオキソラン‐2‐オン(FEC)を1.0wt%加え、1mol/lの割合でLiPF6を溶解させた電解液を用いた点以外は、ラミネートセル(A)と同様にして、ラミネートセル(G)を作製した。
【0084】
<ラミネートセル(H)>
エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とプロピレンカーボネート(PC)とを25:70:5の質量比で混合した混合溶媒に対して4‐フルオロ‐1,3‐ジオキソラン‐2‐オン(FEC)を1.0wt%加え、1mol/lの割合でLiPF6を溶解させた電解液を用いた点以外は、ラミネートセル(A)と同様にして、ラミネートセル(H)を作製した。
【0085】
<ラミネートセル(I)>
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とプロピレンカーボネート(PC)とを25:70:5の質量比で混合した混合溶媒に対して4‐フルオロ‐1,3‐ジオキソラン‐2‐オン(FEC)を1.0wt%加え、1mol/lの割合でLiPF6を溶解させた電解液を用いた点以外は、ラミネートセル(A)と同様にして、ラミネートセル(I)を作製した。
【0086】
<ラミネートセル(J)>
エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを30:35:35の質量比で混合した混合溶媒に対して、1mol/lの割合でLiPF6を溶解させた電解液を用いた点以外は、ラミネートセル(A)と同様にして、ラミネートセル(J)を作製した。
【0087】
<ラミネートセル(K)>
エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを30:35:35の質量比で混合した混合溶媒に対して4‐フルオロ‐1,3‐ジオキソラン‐2‐オン(FEC)を1.0wt%加え、1mol/lの割合でLiPF6を溶解させた電解液を用いた点以外は、ラミネートセル(A)と同様にして、ラミネートセル(K)を作製した。
【0088】
作製したラミネートセル(C)〜ラミネートセル(K)について、ラミネートセル(A)と同様に300サイクル後の容量維持率および厚み増加率を測定した。
【0089】
ラミネートセル(C)〜ラミネートセル(K)およびラミネートセル(A)の測定結果を表3に示す。
【0090】
【表3】

【0091】
表3に示すように、様々な電解液組成においても適応でき良好な結果が得られた。また、4‐フルオロ‐1,3‐ジオキソラン‐2‐オン(FEC)のような添加剤と併用することにより、さらに特性が向上する可能性があることを確認できた。4‐フルオロ‐1,3‐ジオキソラン‐2‐オン(FEC)を添加して膨れが抑制されたのは、初回充電時に、負極表面上に皮膜を形成し、充電負極表面での電解液の分解(ガス発生)を抑制するからである。なお、厚み増加率が9%以下の場合、容量維持率70%以上が見込める。
【0092】
(充放電による負極体積密度の変化)
<試験例>
負極は、サンプル3の負極と同様、サンプル3と同様にして調製した混合粒子に、結着剤としてPVdFを加え溶剤であるNMPにより分散させたものを、Cu箔両面に塗布し乾燥後、負極合剤層の体積密度が1.80g/cm3となるようにプレスしたものを用いた。この負極を用いて、ラミネートセル(A)と同様にして、ラミネートセルを作製した。
【0093】
このラミネートセルについて、上限電圧4.2V、4.3Vまたは4.4Vの1サイクル充放電を行い、完全放電状態の負極合剤層の体積密度を測定した。なお、充電は、充電電流1.0Cの定電流定電圧充電を4.2V、4.3Vまたは4.4Vの充電電圧で2時間行い、放電は、0.2Cの定電流放電を終止電圧3.0Vまで行った。
【0094】
測定結果を表4に示す。
【0095】
【表4】

【0096】
表4に示すように、充電電圧が上がり電極の膨張が大きくなるにしたがい、3Vまでの完全放電時に、電極は収縮しづらくなってしまうため、体積密度は小さくなる傾向にある。
【0097】
この発明は、上述したこの発明の実施形態に限定されるものでは無く、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。例えば、一実施形態による非水電解質電池は、円筒型、角型等、その形状については、特に限定されることはなく、また、薄型、大型等の種々の大きさにすることが可能である。さらに、二次電池に限らず、一次電池などの他の電池についても同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】この発明の一実施形態による非水電解質電池の構成を表す分解斜視図である。
【図2】図1で示した巻回電極体のI−I線に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0099】
1・・・外装部材
2・・・密着フィルム
10・・・巻回電極体
11・・・正極リード
12・・・負極リード
13・・・正極
13A・・・正極集電体
13B・・・正極合剤層
14・・・負極
14A・・・負極集電体
14B・・・負極合剤層
15・・・セパレータ
16・・・高分子化合物層
17・・・保護テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と負極とがセパレータを介して対向しており、
上記負極は、充放電処理前の負極合剤層の体積密度が1.70g/cm3以上1.90g/cm3以下であり、
上記負極合剤層は、平均粒径が25μm以上35μm以下の球状黒鉛と平均粒径が8μm以上22μm以下の非球状黒鉛とを混合した混合粒子を含むこと
を特徴とする非水電解質電池。
【請求項2】
上記負極と上記セパレータとの間および上記正極と上記セパレータとの間に、高分子化合物層が配置されていること
を特徴とする請求項1記載の非水電解質電池。
【請求項3】
上記高分子化合物層は、多孔質の高分子化合物により電解液が保持されたものであること
を特徴とする請求項2記載の非水電解質電池。
【請求項4】
上記高分子化合物層は、均一な厚みからなること
を特徴とする請求項3記載の非水電解質電池。
【請求項5】
上記混合粒子の粒度分布が、D10が5μm以上11μm以下であり、D50が13μm以上25μm以下であり、D90が27μm以上45μm以下であること
を特徴とする請求項1記載の非水電解質電池。
【請求項6】
上記球状黒鉛は、メソカーボンマイクロビーンズであり、
上記非球状黒鉛は、メソカーボンマイクロビーンズを粉砕した粉末であること
を特徴とする請求項1記載の非水電解質電池。
【請求項7】
上記高分子化合物層は、フッ化ビニリデンを由来にする繰り返し単位を含む高分子化合物を含むこと
を特徴とする請求項2記載の非水電解質電池。
【請求項8】
上記高分子化合物層は、フッ化ビニリデンを由来にする繰り返し単位とヘキサフルオロプロピレンを由来にする繰り返し単位とを少なくとも含む共重合体を含むこと
を特徴とする請求項2記載の非水電解質電池。
【請求項9】
上記高分子化合物層は、電極とセパレータとの接着強度が5mN/mm以上であること
を特徴とする請求項2記載の非水電解質電池。
【請求項10】
上記正極と上記負極と上記セパレータと上記高分子化合物層とを巻回して素子を形成しており、電池形状が扁平状であること
を特徴とする請求項2記載の非水電解質電池。
【請求項11】
上記素子が収納される、高分子フィルムと金属箔とから構成される防湿性ラミネートフィルムよりなる外装材を備えること
を特徴とする請求項10記載の非水電解質電池。
【請求項12】
出荷状態のセルを、0.2C定電流放電を終止電圧3.0Vまで行った状態において、上記負極合剤層の体積密度が、1.50g/cm3以上1.90g/cm3以下である
ことを特徴とする請求項1記載の非水電解質電池。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−140904(P2009−140904A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−142154(P2008−142154)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】