説明

非腐食性のストリッピングおよびクリーニング組成物

【課題】 フォトレジストのストリッピング速度を減少することなく、またプラズマエッチ残留物を除去する能力を低下することのない、広範な種類の有機ポリマー物質およびプラズマ−エッチ残留物の双方を除去するストリッピングおよびクリーニング組成物を提供する。
【解決手段】 (a)約5〜約50%の溶媒、(b)約10〜約90%のアルカノールアミン、(c)約0.1〜10%のカルボン酸タイプの腐食防止剤、および(d)約1.0〜40%の水を含有させ、非腐食性のフォトレジストストリッピングおよびクリーニング組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はある百分率の(1)選択された溶媒、(2)選択されたアルカノールアミン化合物、(3)選択された腐食防止剤、および(4)水の組み合わせを含有する非腐食性のフォトレジストストリッピングおよびクリーニング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトレジストストリッパー/プラズマエッチ残留物のクリーナーの技術では、極性溶媒もしくはアルカノールアミン化合物のいずれか、またはこれらの両方を含有する組成物に関する多くの文献に富んでいる。フォトレジストストリッパー組成物中にアルカノールアミンが存在することは、架橋されたレジストフィルムを効果的に除去するのに必須であると判断されている。しかしながら、アルカノールアミン型のフォトレジストストリッパーは、特にアルミニウム基板について、腐食に関する重大な問題を時に有する。
【0003】
腐食は、ストリッピング後の水でのすすぎにおいてアルカノールアミンによるイオン化によって部分的に惹起されるが、これはストリッピング工程の後に、残留するストリッパー溶液が基板表面および/または基板担持体上に残るであろうことによる。換言すると、ストリッパー組成物のアルカノールアミン成分はそれ自体は基板を腐食しないが、水による腐食を惹起し得る。
【0004】
この問題を解決するために、ストリッピング工程とストリッピング後の水でのすすぎとの間に、有機溶媒(例えば、イソプロピルアルコール)による中間的なすすぎ工程が用いられている。しかしながら、全体的なストリッピング操作が一層複雑化し、さらにまた追加的な溶媒廃棄物が生じるので、このような中間的なすすぎは必ずしも好ましくない。従って、アルカノールアミンを含有するストリッパーがさらに使用される場合、中間的な有機溶媒廃棄物を発生することなくこの腐食の問題を解決する必要がある。
【0005】
加えて、金属腐食の他の機序が知られている。例えば、塩化アルミニウムのような金属ハロゲン化物がプラズマ−エッチの副生物として生成する傾向がある。金属ハロゲン化物は、クリーニング過程に続いて水すすぎからの水と接触すると基板の腐食を惹起する。腐食の別な機序は、クリーニングに際してまたはクリーニング後のすすぎ過程で、特にAl−Cu−Siのような合金について認められている。この種の腐食は通常局部的に認められまた点食と称される。点食は異なる電気陰性度を有する2つの金属の間のガルバニック型の電気化学反応によって惹起されると考えられる。
【0006】
本発明は上記したすべての種類の腐食に対する解決を提供する。
さらに、バイア接触、金属パターン、および不動態化開口(passivation openings)のための非等方性プラズマエッチング過程に際して、レジストの側壁上に『側壁残留物』がしばしば付着する。フォトレジストフィルムの酸素プラズマアッシングの後、この残留物は金属酸化物となる。この残留物の除去が不完全であると、パターンの明確度および/またはバイア孔の完全な充填を妨げる。
【0007】
エッチング後の残留物、特に金属酸化物型のものを除去するために、いくつかの異なる化学操作が知られている。例えば、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)を含有するようなアルカリ性の水性現像液がアルミニウムを侵すことが知られている。従って、酸化アルミニウム残留物がTMAHによってエッチングで除去されることができる。しかしながら、Al−Si−Cuのような多金属系を伴う、エッチング後の他の種類の残留物はTMAHによってはそれほど容易に除去されることはできない。TMAHもまた、ポリシリコンプラズマエッチ法から生成する残留物に対しては有効でない。
【0008】
金属酸化物型の側壁の残留物もまた、(1)フッ化水素酸とエチレングリコールエーテルとの混合物、または(2)硝酸、酢酸およびフッ化水素酸の混合物によって除去することができる。これらの溶液は金属および酸化物の重要な層を過度に侵すのを防止するために極端なプロセス制御を必要とする。いくつかのデバイス構造体では、これらの溶液はその非選択的な侵襲機序のため有用でない。
【0009】
Wai M.Leeは、ハワイ州、Honoluluで1993年5月16〜21日に開催のInterconnects, Contact Metallization and Multilevel Metallization Symposium(183rd Spring Meeting of The Electrochemical Society)で、ヒドロキシルアミンを含有するアミン/水をベースとするストリッパー組成物はある種の側壁残留物を除去することができると述べている。ヒドロキシルアミンはストリッピング可能性をおよび/または金属腐食の防止を強化することができるが、加熱に際して安定でない。従って、著しくアルカリ性である媒体中で用いられる場合、ヒドロキシルアミンの使用は推奨されない。
従って、ヒドロキシルアミンは、フォトレジストフィルムのストリッピングまたはエッチング後の残留物のより高い温度でのクリーニングで使用するのに好適ではない。
【0010】
極性溶媒および/またはアルカノールアミン化合物を含有するフォトレジストストリッピング組成物またはプラズマエッチ残留物のクリーニング組成物を示唆する文献の例は以下の通りである。
1986年10月14日にSizenskyらに付与された米国特許第4,617,251号は、(A)選択されたアミン化合物(例えば、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、およびこれらの混合物)および(B)選択された極性溶媒(例えば、N−メチル−2−ピロリジノン、テトラヒドロフルフリルアルコール、イソホロン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアジペート、ジメチルグルタレート、スルホラン、ガンマ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミドおよびこれらの混合物)を含有するポジフォトレジストストリッピング組成物を教示している。この文献にはこの組成物に水そしてまた染料または着色剤、湿潤剤、界面活性剤および発泡防止剤が添加されてよいことがさらに教示されている。
【0011】
1994年1月18日にLeeに付与された米国特許第5,279,791号は、(A)ヒドロキシルアミン(例えば、NH2OH)、(B)少なくとも1つのアルカノールアミンそして場合によ
っては(C)少なくとも1つの極性溶媒を含有する基板からレジストを除去するためのストリッピング組成物を教示している。
【0012】
J. T. Baker Inc.に譲渡されたヨーロッパ特許出願647884号は、(i)ストリッピング溶媒(例えば、N−メチル−2−ピロリジノン)、(ii)求核性アミン(例えば、モノエタノールアミン)、および(iii)サリチルアルドキシム、没食子酸、および没食子酸エステルのような還元剤を含む非水性のフォトレジストストリッパー組成物を開示している。
【0013】
J. T. Baker Inc.に譲渡されたヨーロッパ特許出願596515号は、溶媒、求核性アミン(例えば、1−アミノ−2−プロパノール、2−アミノエタノール)、および窒素非含有の弱酸を含むアルカリ性フォトレジストストリッピング組成物を開示している。
【0014】
1990年3月1日にSchulzに付与されたドイツ公開特許出願DE 3828513は、(A)非プロトン性極性溶媒(例えば、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンまたは1,3−ジメチル−テトラヒドロピリミジノン)および(B)有機塩基(例えば、アルカノールアミン)を含有するポジフォトレジストおよびネガフォトレジストストリッパー組成物を教示している。
【0015】
1989年3月28日にK. Matsumoto(Asahi Chemical)に付与された日本公開特許出願1-081949は、(A)ガンマ−ブチロラクトン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドまたはN−メチル−2−ピロリジノン、(B)アミノアルコール(例えば、N−ブチル−エタノールアミンおよびN−エチルジエタノールアミン)および(C)水を含有するポジに作用するフォトレジストストリッパー組成物を教示している。
【0016】
1992年12月4日にH.Gotoら(Texas Instruments, Japan and Kanto Chemical, Inc.)に付与された日本公開特許出願4-350660は、(A)1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、(B)ジメチルスルホキシドおよび(C)水溶性アミン(例えば、モノエタノールアミンまたは2−(2−アミノエトキシ)エタノール)からなり、水溶性アミンの量が7〜30重量%であるポジフォトレジストのためのストリッパーを教示している。
【0017】
1997年10月20日に公開にされ、Tokyo Ohka Kogyoに譲渡された日本公開特許出願7-271057は、N,N−ジエチルヒドロキシアミンを含有するポジフォトレジスト組成物を教示している。好ましい処方物はアルカノールアミン(例えば、モノエタノールアミン)、水混合性有機溶媒(例えば、N−メチル−2−ピロリジノン)、水、添加剤(例えば、ヒドロキシ芳香族化合物またはトリアゾール化合物)、またはカルボキシル基を含有する有機化合物、あるいはこれらのある種の組み合わせもまた含有した。サリチルアルコールは好ましいヒドロキシ芳香族化合物の1つである。
【0018】
日本公開特許出願7-271057は、フォトレジストストリッピング組成物またはプラズマ−エッチ残留物のクリーニング組成物に応用するために、水混合性の極性溶媒とアルカノールアミンとの混合物にカルボン酸を添加することを示唆している。しかしながら、この文献ではその所望の性能を実現するためにヒドロキシルアミン化合物、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン(DEHA)の存在が必要とされる。
【0019】
同様にヨーロッパ特許出願596515は、その処方中に溶媒、アルカノールアミンおよび窒素を含有しない弱酸の混合物を開示している。しかしながら、この組成物はある種のプラズマエッチ残留物の除去で必須である水を含有しない。
【0020】
他方、本発明のストリッピングおよびクリーニング組成物は、広範な種類の有機ポリマー物質およびプラズマ−エッチ残留物の双方を除去するのに有効である。本発明者は、フォトレジストのストリッピング速度を減少するかまたはプラズマエッチ残留物を除去する有効性を低下することなく、ある種の腐食防止剤が金属腐食を防止することができることを見いだしている。本処方物は、基板の表面の金属汚染の優れた防止、そして所望の腐食防止効果に対する材料費の有利性を含めて、様々な機能的および経済的な要件の優れたバランスを提供する。
【0021】
本発明は、ヒドロキシルアミンおよびその誘導体を含まない非腐食性のストリッピングおよびクリーニング組成物に関し、この組成物は
(a) N−メチル−2−ピロリジノン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、スルホラン、ジアセトンアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびこれらの混合物からなる群から選択される約5〜50%の溶媒、
(b) ジエチレングリコールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、およびこれらの混合物からなる群から選択される約10〜90%のアルカノールアミン、
(c) ギ酸、酢酸、プロピオン酸、吉草酸、イソ吉草酸、蓚酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、1,2,3−ベンゼン−トリカルボン酸、グリコール酸、乳酸、クエン酸、サリチル酸、酒石酸、グルコン酸、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、約0.1〜10%のカルボン酸タイプの腐食防止剤、および
(d) 約1〜40%の水
を含有する。
上記で百分率はすべて、ストリッピングおよびクリーニング組成物の全重量の重量百分率である。
【好ましい態様に関する説明】
【0022】
本発明での定義によると、『非腐食性』という用語は基板を徐々に損耗するあらゆる化学作用の抑制をさす。『ストリッピングおよびクリーニング組成物』という用語は、(1)基板からフォトレジスト(または他の同様な有機ポリマー物質)フィルムまたは層を除去するかまたはストリッピングすること、そして(2)基板から様々な種類のプラズマ−エッチ残留物(時にプラズマ側壁ポリマーと称される)を除去するかまたはストリッピングすることの双方が可能である組成物をさす。
【0023】
上記のとおり、本発明の非腐食性のストリッピングおよびクリーニング組成物は4つの成分、つまり1つまたはそれ以上の選択された極性溶媒、1つまたはそれ以上の選択されたアルカノールアミン化合物、1つまたはそれ以上の選択された腐食防止剤、および水を有する。これらの4つの成分はある百分率で存在しなければならない。また、本発明では、ヒドロキシルアミン化合物およびその誘導体例えば、N,N−ジエチルヒドロキシルアミンが含まれないのが好ましい。
【0024】
本発明のストリッピングおよびクリーニング組成物中で使用される溶媒には、N−メチル−2−ピロリジノン(NMP)、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリジノン(HEP)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、スルホラン、ジアセトンアルコール(DAAL)、エチレングリコール(EG)、プロピレングリコール(PG)またはこれらの組み合わせがある。NMPおよびHEPが好ましい溶媒である。これらの溶媒はいろいろな種類のフォトレジストをストリッピングするのに有効である。
【0025】
HEPはより安全でまた粘度が一層高い溶媒である一方、NMPは粘度が低い一層強力なストリッピング溶媒であるので、特に好ましいものは、HEPとNMPとの重量%での混合比が約10:90%〜90:10%であるHEPとNMPとの混合物である。一般に、ストリッピング能力はストリッパー溶液の粘度を低下することにより増加する。
【0026】
上記したように、ストリッピングおよびクリーニング組成物にはアルカノールアミンもまた含められる。望ましいアルカノールアミンには、ジエチレングリコールアミン(DEGA)、モノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン(DEA)、トリエタノールアミン(TEA)、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノールおよびこれらの混合物がある。MEAが特に好ましい。
【0027】
本発明で有用な腐食防止剤はカルボン酸化合物である。好ましいカルボン酸化合物は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、吉草酸、イソ吉草酸、蓚酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、1,2,3−ベンゼン−トリカルボン酸、グリコール酸、乳酸、クエン酸、サリチル酸、酒石酸、グルコン酸、およびこれらの組み合わせである。一層好ましいカルボン酸タイプの腐食防止剤は、乳酸、クエン酸、琥珀酸、サリチル酸、フタル酸、酒石酸、およびグルコン酸である。この部類の化合物は、特に上記したようにすべての極性溶媒、アルカノールアミンおよび水の混合物と組み合わされた場合、ストリッピング能力を低下することなく腐食を有効に防止することが分かっている。これらの化合物は、基板の表面の金属汚染の優れた防止、そして所望の腐食防止効果に対する材料費の有利性を含めて、様々な機能的および経済的な要件の優れたバランスを提供する。
決定的な第4の成分は水である。プラズマエッチ後の残留物のクリーナーとして本発明の組成物を使用する場合、水はクリーニング能力を増大する。
【0028】
本発明のストリッピングおよびクリーニング組成物中の場合による成分には水溶性の界面活性剤が含まれる。界面活性剤の例には、『POLY-TERGENT-CS-1』の商標名でNorwalk、CTのOlin Corporationによって製造される脂肪アルコールとのポリ(エチレンオキサイド)の縮合物が含まれる。
【0029】
これらの成分の好ましい量は、約8〜40%の極性溶媒、約20〜80%のアミン化合物、約1〜10%の腐食防止剤、5〜35%の水、そしてもし使用するなら0.01〜2
%の界面活性剤であり、これらはすべてストリッピングおよびクリーニング組成物の重量に基づく。これらの成分の一層好ましい量は、約10〜35%の極性溶媒、約30〜70%のアミン化合物、約3〜7%の腐食防止剤、約10〜30%の水、そして場合によっては約0.05〜1%の界面活性剤であり、これらはすべて組成物全体の重量に基づく。
【0030】
ストリッピングおよびクリーニング組成物には、当業者にとって既知の他の様々な成分、例えば染料、着色剤、湿潤剤、発泡防止剤などが場合によっては含められてよい。場合によるこれらの他の成分の各量は一般に、組成物全体に基づいて約0.01〜0.5重量%である。
【0031】
本発明のストリッピングおよびクリーニング組成物は、1つまたはそれ以上の選択された溶媒および1つまたはそれ以上の選択されたアルカノール化合物によって、1つまたはそれ以上の選択された腐食防止剤を室温で溶解することにより製造される。上記に示したように、場合による成分もまた添加されてよい。
【0032】
上記したストリッピングおよびクリーニング組成物の1つの機能は、基板から有機ポリマー物質を除去するかまたはストリッピングすることである。本発明のこの態様は、フォトレジストフィルムのような有機ポリマー物質を上記したストリッピングおよびクリーニング組成物と接触することにより実施される。上記した組成物は金属化されたウェファーのプラズマエッチングの後にプラズマ−エッチ後の副生物の除去に使用されてもよい。このプラズマ−エッチ副生物は、例えば、AlCl3、AlF3、Al23、SiF4、Si
2などのようなアルミニウム、チタン、銅または関連する金属の酸化物またはハロゲン化物である。本発明のこの態様は、プラズマエッチ残留物を上記したクリーナー溶液と接触することにより実施される。実際の条件つまり温度、時間などは広範な範囲で変化してよく、除去されるべき有機ポリマー物質またはプラズマ−エッチ残留物の性質および厚さ並びに当業者にとってなじみある要因に一般に依存する。しかしながら一般に、約5〜40分にわたる約45〜90℃の温度が典型的である。
【0033】
本発明を実施する際に、有機ポリマー物質および/またはプラズマ−エッチ残留物をストリッピングおよびクリーニング組成物と接触するにはいろいろな方法が用いられてよい。例えば、当業者にとって明らかなように、有機ポリマー物質および/またはプラズマ−エッチ残留物を含む基板がストリッピングおよびクリーニングの浴中に浸漬されてよく、あるいはストリッピングおよびクリーニング組成物が有機ポリマー物質、並びにプラズマ−エッチ残留物の表面上に噴霧されてよい。
【0034】
本発明のストリッピングおよびクリーニング組成物は広範な種類の有機ポリマー物質およびプラズマ−エッチ残留物を基板から除去するのに有効である。有機ポリマー物質の例には、ポジ型およびネガ型のg−ライン、i−ラインおよび深UVレジスト、電子線レジスト、X線レジスト、イオンビームレジスト並びにポリイミド樹脂などのような有機誘電性物質がある。本発明を実施する際に除去されることができる有機ポリマー物質の特定的な例には、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂またはポリ(p−ビニルフェノール)を含有するポジレジスト、環化されたポリイソプレンまたは(p−ビニルフェノール)を含有するネガレジスト;およびポリメチルメタクリレートを含有するレジストがある。特に、ストリッピングおよびクリーニング組成物は、ノボラック樹脂とジアゾナフトキノン型の増感剤例えばオルトナフトキノンジアジドスルホン酸エステルとを含有するポジレジストを除去するのに著しく有効であることが分かっている。この種のレジストには、コネチカット州、NorwalkのOlin Microelectronic Materialsによって販売されているHPR 204系列のPOSITIVE RESIST、HPR 504系列のPOSITIVE RESIST、OiR 32系列のPOSITIVE RESISTおよびHPR 6500系列のPOSITIVE RESISTが含まれる。有機ポリマー物質の残留物は、珪素、二酸化珪素、窒化珪素、ポリシリコン、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ポリイミドなどのような当業者にとって既知の慣用の任意の物質から除去されることができる。
本発明はさらに以下の実施例によって詳細に説明される。すべての部および百分率は重量基準でありまたすべての温度は明確に別記しない限り摂氏表示である。
【実施例】
【0035】
実施例1
30.0gのN−メチル−2−ピロリジノン(NM)、55.0gのモノエタノールアミン(MEA)、5.68gの88重量%乳酸(LA)水溶液、および9.32gの脱イオン水を撹拌しつつ混合して透明な溶液を生成してストリッピング/クリーニング溶液を製造した。得られる溶液中の成分の重量比はNMP/MEA/H2O/LA=30.0/55.
0/10.0/5.0であった。溶液のpHは11.8であった。
【0036】
プラズマ付着法によってAl−Cu−Si/SiO2/Siの複数の層を有する珪素ウ
ェファーを作成し、さらにスピンコーティング法によって1.0ミクロンのフィルム厚さでポジフォトレジスト(PR)によってトップコートを施した。フォトリトグラフ法によってPR層のマイクロパターン化を行い、続いて予めパターン化されているPRマスクでのプラズマエッチングによって金属層にパターンを転写した。従って、得られたウェファーはPRの残留物そして、珪素とアルミニウムの酸化物およびハロゲン化物との混合物であるプラズマエッチングの副生物の双方を含有した。得られるプラズマエッチ残留物(PER)の組成はX線分光法によって特性付けられた。
【0037】
得られたウェファーを1cm×1cmの小片に切り出し、温度制御された70℃の浴中にある、上記したストリッピング/クリーニング溶液が100ml入っている200mlのビーカー内に入れた。ウェファーの小片をゆっくり撹拌しつつ30分間溶液中に浸漬した。室温の脱イオン水が入った別なビーカー中にウェファーの小片を移し入れそして5分間ゆっくり撹拌した。次いでウェファーの小片を水から取り出し、ウェファーの小片の表面上に窒素ガスを吹き付けることにより乾燥させた。
【0038】
金をスパッタリングした後、ウェファーの小片を走査電子顕微鏡(SEM)下で検査した。ウェファー上のPRおよびPERの残留物を可視化するためにウェファーの上から見たまた断面から見たSEM画像を得た。さらに、金属表面の腐食をすべて評価するために露光された金属層の表面をSEM下で検査した。
SEM検査の結果、イソプロピルアルコール(IPA)のような有機溶媒でのストリッピング後の中間的なすすぎをたとえ行わないにせよ、NMP/MEA/H2O/LA=3
0/55/10/5である本処方物によって、金属を腐食することなくPRおよびPERの残留物がともに除去されることが示された。
【0039】
実施例2〜3
実施例2〜3は、同じ溶媒、アルカノールアミン、水および乳酸の異なる濃度の混合物によって試験した追加的な組成物を例示する。各々の結果のSEM検査とともに詳細な処方を表1に要約する。
【0040】
対照例1
実施例1〜3に加えて、腐食防止剤を含有しない対照処方物を以下のように製造した:NMP/MEA/H2O=35/55/10。小片の試験条件は実施例1に記載のものと同じであった。
SEM検査の結果によって、PRおよびPERの残留物は実施例1に示すようにともに完全に除去されることが示された。しかしながら、金属層は実施例1〜3の処方物に比べて酷く腐食された。
【0041】
対照例2
対照例1に加えて、水を含有しない別な対照処方物を以下のように製造した:NMP/MEA/LA=35/60/5。小片の試験条件は実施例1に記載のものと同じであった。
SEM検査によって、PRの残留物は完全に除去されるが、水を含まない処方物ではプラズマ−エッチ残留物が除去されないことが示された。また、表1に示すように、この処方物では金属腐食は認められなかった。
以下の表1はいろいろな処方物に関する結果、およびフォトレジスト(PR)のストリッピング、プラズマエッチ残留物のクリーニング(PER)および腐食防止(CIN)に対する処方物の効果を示す。
【0042】
【表1】

【0043】
表1に示す結果から以下の結論が引き出される。
(1) フォトレジストストリッピングおよびプラズマ−エッチの残留物のクリーニングの性能についてなんら欠陥を伴うことなく金属腐食を防止するためには、溶媒、アルカノールアミンおよび水の混合物に乳酸を加えることが必須である。
(2) 腐食防止に対して乳酸の濃度が関係する。換言すると、腐食防止と残留物の除去とのバランスを最適にするために乳酸に最適な濃度があるべきである。
(3) 溶媒、アルカノールアミンおよび乳酸の混合物に水が存在しないと、プラズマ−エッチ残留物の除去は不完全となる。
【0044】
本発明をその特定的な態様に関して上記に記載してきたが、本記載に開示した発明概念から逸脱することなく多くの変更、改良および改変を行い得ることは明らかである。従って本発明は、添付の特許請求の範囲の趣意および広範な範囲に入るこのような変更、改良および改変をすべて包含することが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、スルホラン、ジアセトンアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびこれらの混合物からなる群から選択される5〜50重量%の溶媒、
(b) ジエチレングリコールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、およびこれらの混合物からなる群から選択される10〜90重量%のアルカノールアミン、
(c) 0.1〜10重量%のカルボン酸タイプの腐食防止剤、および
(d) 1〜40重量%の水
を含有し、ヒドロキシルアミンおよびその誘導体を含まない非腐食性のフォトレジスト用ストリッピングおよびクリーニング組成物。
【請求項2】
カルボン酸腐食防止剤が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、吉草酸、イソ吉草酸、蓚酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、1,2,3−ベンゼン−トリカルボン酸、グリコール酸、乳酸、クエン酸、サリチル酸、酒石酸、グルコン酸、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される請求項1に記載の非腐食性のフォトレジスト用ストリッピングおよびクリーニング組成物。
【請求項3】
溶媒が8〜40%の範囲で存在し、アルカノールアミンが20〜80%の範囲で存在し、腐食防止剤が1〜10%の範囲で存在し、また水が5〜35%の範囲で存在する請求項1に記載の非腐食性のフォトレジスト用ストリッピングおよびクリーニング組成物。
【請求項4】
溶媒が10〜35%の範囲で存在し、アルカノールアミンが30〜70%の範囲で存在し、腐食防止剤が3〜7%の範囲で存在し、また水が10〜30%の範囲で存在する請求項1に記載の非腐食性のフォトレジスト用ストリッピングおよびクリーニング組成物。
【請求項5】
0.01〜2重量%の界面活性化合物をさらに含有する請求項1に記載の非腐食性のフ
ォトレジスト用ストリッピングおよびクリーニング組成物。

【公開番号】特開2006−146272(P2006−146272A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−21917(P2006−21917)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【分割の表示】特願2000−566353(P2000−566353)の分割
【原出願日】平成11年8月5日(1999.8.5)
【出願人】(592188748)アーチ・スペシャルティ・ケミカルズ・インコーポレイテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】OLIN MICROELECTRONIC CHEMICALS,INC.
【Fターム(参考)】