説明

音叉型圧電振動デバイス

【課題】脚部における振動が基部に伝わり基部からベースへ漏れるのを抑制する。
【解決手段】水晶振動子1では、ベース3と蓋4とから内部空間12を有する本体筐体11が形成され、内部空間12内のベース3上に水晶振動片2が2つの導電性バンプ52により接合されている。水晶振動片2には、基部23と、この基部23の一端面231から突出した脚部22a,22bとが設けられている。基部23には、基部23の側面232から脚部22a,22bの突出方向に対して垂直方向に延出する延出部7が設けられている。水晶振動片2における導電性バンプ52によるベース3への接合領域A1は、基部23の幅方向中央領域A2であって、脚部22a,22bを突出した基部23の一端面231から離間した基部23の他端面233の近傍領域である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音叉型圧電振動デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
圧電振動デバイスの一つとして、基部とこの基部から突出された2つの脚部を有する振動部とからなる音叉型水晶振動片を用いた音叉型水晶振動子がある(例えば、特許文献1参照。)。この音叉型水晶振動子は、例えば、正確なクロック周波数を得るためのものとして電子機器や携帯端末などに利用されている。
【0003】
上記したような音叉型水晶振動子は、その筐体がベースと蓋とから構成され、この筐体内部には、ベース上に導電性接合部材により接合して保持された音叉型水晶振動片が気密封止される。なお、導電性接合部材として、例えば、導電性接着剤が用いられる。この導電性接着剤を用いて音叉型水晶振動片の基部とベースとが接合されることにより、音叉型水晶振動片に設けられた励振電極とベースに設けられた電極パッドとが導通状態とされる。
【特許文献1】特開2006−086702号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、電子機器の小型化に伴って当該電子機器に備えられる音叉型圧電振動デバイス(上記した特許文献1に記載の音叉型圧電振動子)も同様に小型化がすすめられている。
【0005】
そこで、音叉型圧電振動デバイスに用いられている音叉型圧電振動片の小型化を図ることになる。この時、音叉型圧電振動片の寸法を小さくした場合であっても周波数を可変させずにその寸法を小さくする場合、発振部である脚部の寸法を変えることはできず、小型化の対象となる部材が基部に限定される。
【0006】
ところで、上記した従来の音叉型圧電振動デバイスでは、発振部(脚部)の振動が基部に伝わり基部からベースへ漏れる。このことは、音叉型圧電振動片の基部の小型化に伴って顕著となる。
【0007】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、脚部における振動が基部に伝わり基部からベースへ漏れるのを抑制する音叉型圧電振動デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる音叉型圧電振動デバイスは、ベースと蓋とから内部空間を有する本体筐体が形成され、前記内部空間内の前記ベース上に音叉型圧電振動片が複数の導電性バンプにより接合され、前記音叉型圧電振動片には、基部と、この基部の一端面から突出した複数本の脚部とが設けられ、前記基部には、当該基部の側面から前記脚部の突出方向に対して垂直方向に延出する延出部が設けられ、前記音叉型圧電振動片における前記導電性バンプによる前記ベースへの接合領域は、前記基部の幅方向中央領域であって、前記脚部を突出した前記基部の一端面から離間した前記基部の他端面近傍領域であることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、前記ベースと前記蓋とから前記内部空間を有する前記本体筐体が形成され、前記内部空間内の前記ベース上に前記音叉型圧電振動片が前記複数の導電性バンプにより接合され、前記音叉型圧電振動片には前記基部と前記複数本の脚部とが設けられ、前記基部には前記延出部が設けられ、前記音叉型圧電振動片における前記導電性バンプによる前記ベースへの接合領域は、前記基部の幅方向中央領域であって、前記脚部を突出した前記基部の一端面から離間した前記基部の他端面近傍領域であるので、前記脚部における振動(振動部の振動)が前記基部に伝わり前記基部から前記ベースへ漏れるのを抑制することが可能となり、その結果、振動バラツキによる発振周波数偏差を抑制してこのことが原因となる直列共振抵抗値の増加を抑制することが可能となる。具体的に、前記基部に設けられた前記延出部に前記脚部における振動を逃がして前記接合領域に振動が伝わるのを抑制することが可能となる。また、本発明によれば、前記基部における前記延出部と前記接合領域とを離す構成となるので、前記延出部に伝わる振動が前記接合領域に伝わるのを抑制することが可能となる。また、本発明によれば、当該音叉型圧電振動デバイスの小型化を図るために前記音叉型圧電振動片の基部の小型化を図る場合であっても延出部を設けて小型化を容易にしながら振動漏れを抑制することが可能となる。
【0010】
前記構成において、前記接合領域と、前記脚部を突出した前記基部の一端面との間に、前記基部の両主面を貫通する貫通部が設けられてもよい。
【0011】
この場合、前記接合領域と前記一端面との間に前記貫通部が設けられるので、前記貫通部により前記脚部における振動(振動部の振動)が前記基部に伝わり前記基部から前記ベースへ漏れるのを抑制することが可能となり、その結果、振動バラツキによる発振周波数偏差を抑制してこのことが原因となる直列共振抵抗値の増加を抑制することが可能となる。
【0012】
前記構成において、前記延出部と前記脚部とが連続して成形されてもよい。
【0013】
この場合、前記延出部と前記脚部とが連続して成形されるので、前記脚部における振動(振動部の振動)が前記延出部へ伝わり易くすることが可能となる。
【0014】
前記構成において、前記複数の導電性バンプの前記基部への接合中心位置間の距離は、300μm以下に設定されてもよい。
【0015】
この場合、前記接合中心位置間の距離は300μm以下に設定されるので、下記する実施形態に示すように振動バラツキによる発振周波数偏差を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる音叉型圧電振動デバイスによれば、脚部における振動が基部に伝わり基部からベースへ漏れるのを抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施例では、音叉型圧電振動デバイスとして音叉型水晶振動子に本発明を適用した場合を示す。
【0018】
本実施例にかかる音叉型水晶振動子1(以下、水晶振動子という)では、図1,2に示すように、フォトリソグラフィ法で成形された音叉型水晶振動片2(本発明でいう音叉型圧電振動片であり、以下、水晶振動片という)と、この水晶振動片2を保持するベース3と、ベース3に保持した水晶振動片2を気密封止するための蓋4と、が設けられている。
【0019】
この水晶振動子1では、ベース3と蓋4とが接合されて本体筐体11が構成されている。これらベース3と蓋4とが金属材料やガラス材などのろう材51を介して接合され、この接合により本体筐体11の内部空間12が形成されている。そして、この本体筐体11の内部空間12内のベース3上に導電性バンプ52を介して水晶振動片2が保持接合されているとともに、本体筐体11の内部空間12が気密封止されている。この際、図1,2に示すように、ベース3と水晶振動片2とは導電性バンプ52を用いてFCB(Flip Chip BonDing)法により超音波接合されるとともに電気的に接続されている。なお、本実施例では、導電性バンプ52の径は80〜90μmとなり、水晶振動片2をベース3に接合した状態の導電性バンプ52の径は約140μmとなる。また、内部空間12内のベース3の短手方向の寸法は150〜200μmに設定され、水晶振動片2の短手方向の寸法(下記する基部23の最大幅寸法)は150μm以下に設定されている。ここでの水晶振動片2の寸法設定は、内部空間12内のベース3の短手方向の寸法に関係する。
【0020】
次に、この水晶振動子1の各構成について説明する。
【0021】
ベース3は、図1,2に示すように、底部31と、この底部31から上方に延出した堤部32とから構成される箱状体に形成されている。このベース3は、セラミック材料からなる平面視矩形状の一枚板上に、セラミック材料の直方体が積層して凹状に一体的に焼成されている。また、堤部32は、図1に示す底部31の表面外周に沿って成形されている。この堤部32の上面は蓋4との接合部33であり、この接合部33には、蓋4と接合するためのメタライズ層(図示省略)が設けられている。なお、メタライズ層は、例えば、タングステンメタライズ層、あるいはモリブデンメタライズ層上にニッケル,金の順でメッキした構成とからなる。また、セラミック材料が積層して凹状に一体的に焼成されたベース3の内部空間12における側壁には、図1,2に示すように、段部35が形成され、この段部35上に電極パッド34が形成され、これら電極パッド34上に水晶振動片2が片保持して設けられる。これら電極パッド4は、それぞれに対応した引回電極36を介して、ベース11の裏面などの外周面に形成される端子電極(図示省略)に電気的に接続され、これら端子電極が外部部品や外部機器の外部電極に接続される。なお、これら電極パッド34、引回電極36、端子電極は、タングステン、モリブデン等のメタライズ材料を印刷した後にベース11と一体的に焼成して形成される。そして、これら電極パッド34、引回電極36、端子電極のうち一部のものについては、メタライズ上部にニッケルメッキが形成され、その上部に金メッキが形成されて構成される。
【0022】
蓋4は、金属材料からなり、図2に示すように、平面視矩形状の一枚板に成形されている。この蓋4の下面には、ろう材51が形成されている。この蓋4は、シーム溶接やビーム溶接、加熱溶融接合等の手法によりろう材51を介してベース3に電気機械的に接合されて、蓋4とベース3とによる水晶振動子1の本体筐体11が構成される。なお、蓋4は、例えば、4層の熱膨張係数の異なる金属材料から形成されている。具体的に、ベース3との接合面となる蓋4の下面から、ろう材51の構成となる例えば錫と金(錫と金の割合を約2対8とする)、あるいは錫と銀の層、ニッケル層、コバール層及びニッケル層が順に積層されている。なお、本実施例では、ろう材51が、蓋4の下面外周縁に沿った環状層に成形されている。
【0023】
次に、内部空間12に配された水晶振動片2の各構成について説明する。
【0024】
水晶振動片2は、図1〜3に示すように、異方性材料の水晶片である水晶素板(図示省略)から、ウェットエッチング形成された水晶Z板である。そのため、この水晶振動片2は量産に好適である。この水晶振動片2の基板21は、振動部である2本の脚部22a,22b(第1脚部22a,第2脚部22bともいう)と基部23とから構成された外形からなり、2本の脚部22が基部23の一端部(具体的に一端面231)から突出して形成されている。また、この水晶振動片2には、図1に示すように、基部23の一端面の隣接する2本の脚部22a,22bの間に叉部29が設けられている。この叉部6は、2本の隣接する脚部22a,22bから連続して成形された曲面を有する。
【0025】
基部23は一組の脚部22a,22bと略同様の幅寸法から設定されている。また、この基部23には、図1に示すように、当該基部23の側面232から脚部22の突出方向に対して垂直方向に延出する延出部7が設けられている。これら延出部7と脚部22a,22bとは連続して成形され、脚部22a,22bから延出部7にかけて前記基板21の側面28が曲面(R面)形成されている。ここでいう側面28の曲面形成の曲率は上記した叉部29の曲面の曲率と同じである。また、延出部7の延出端面は平坦面であり、延出側面のうち脚部22a,22bと連続して成形された面は曲面(R面)であり、その対向面は平坦面である。これら延出側面のうち曲面と延出端面とは折曲成形され、延出側面のうち平坦面と延出端面とは平面視直角方向に折曲成形されている。このような曲面(R面)を形成することで、脚部22a,22bの付け根(基部23の一端部から脚部22a,22bに連続する脚部22a,22bの突出部位)の強度を高めることができる。また、脚部22a,22bの付け根に成形された曲面(側面28と叉部29の曲面)を同一の曲率とすることで、脚部22a,22bの形成を安定して行うことができ脚部22a,22bのバランスをとるのに好適であり、結果として水晶振動片2の振動特性を低下させるのを抑制することができる。なお、延出部7の延出寸法は40μmに設定されている。
【0026】
また、図2に示すように、水晶振動片2の外形のうち側面28は両主面24に対して傾斜して成形されている。これは、水晶振動片2を湿式でエッチング成形する際に基板21材料の結晶方向(X,Y方向)へのエッチングスピードが異なることに起因している。
【0027】
また、2つの脚部22a,22bの両主面24(表側主面241,裏側主面242)には、水晶振動片2の小型化により劣化する直列共振抵抗値(本実施例ではCI値、以下同様)を改善させるために、凹部25a,25bが形成されている。
【0028】
この水晶振動片2の表面(両主面24および側面28)には、異電位で構成された2つの励振電極26a,26b(第1励振電極26a,第2励振電極26bともいう)と、これらの励振電極26a,26bを電極パッド34に電気的に接続させるために励振電極26a,26bから引き出された引出電極27a,27bとが設けられている。なお、本実施例でいう引出電極27a,27bは、2つの励振電極26a,26bから引き出された電極パターンのことをいう。
【0029】
また、2つの励振電極26a,26bの一部は、凹部25a,25bの内部に形成されている。このため、水晶振動片2を小型化しても脚部22a,22bの振動損失が抑制され、CI値を低く抑えることができる。第1の励振電極26aは、第1脚部22aの両主面24と凹部25aに形成された第1主面電極と、第2脚部22bの両側面28に形成された第2側面電極とにより構成される。そして、これら第1主面電極と第2側面電極とが引き回されて接続され、励振電極26aは引出電極27aに引き出されている。同様に、第2の励振電極26bは、第2脚部22bの両主面24と凹部63bに形成された第2主面電極と、第1脚部22aの両側面28に形成された第1側面電極とにより構成される。そして、これら第2主面電極と第1側面電極とが引き回されて接続され、励振電極26bは引出電極27bに引き出されている。
【0030】
上記した水晶振動片2の励振電極26a,26b、及び引出電極27a,27bは、例えば、クロムの下地電極層と、金の上部電極層とから構成された積層薄膜である。これらの薄膜は、真空蒸着法等の手法により全面に形成された後、フォトリソグラフィ法によりメタルエッチングして所望の形状に形成される。なお、上記した引出電極27a,27bのみを、例えば、クロムの下地電極層と、金の中間電極層と、クロムの上部電極層と、から構成された積層薄膜としてもよい。この薄膜は、真空蒸着法等の手法により全面に形成された後、フォトリソグラフィ法によりメタルエッチングして所望の形状に形成され、クロムの上部電極層のみが部分的にマスクして真空蒸着法等の手法により形成される。また、励振電極26a,26b、及び引出電極27a,27bがクロム,金の順に形成されているが、例えば、クロム,銀の順や,クロム,金,クロムの順や,クロム,銀,クロムの順等であってもよい。なお、本実施例では励振電極26a,26bの膜厚は0.2〜0.4μmに設定されている。ここでの設定は、0.2μm未満では励振電極26a,26bが断線する場合があり、0.4μmを超えるとCI値が高くなることに起因する。また、上記した下地電極層をニッケルに変えてもよく、例えば、ニッケル,金の順や、ニッケル,銀の順、ニッケル,金,クロムの順、ニッケル,銀,クロムの順であってもよい。
【0031】
上記した水晶振動片2の基部23では、図1に示すように、導電性バンプ52を介した引出電極27a,27bとベース3の電極パッド34との電気機械的な接合が行われる。具体的に、水晶振動片2の引出電極27a,27bと、ベース3の電極パッド34とが、導電性バンプ52を介して接合されて、これら引出電極27a,27bと電極パッド34とが電気機械的に接続される。なお、本実施例で用いる導電性バンプ52は、金などの金属材料からなる接続バンプである。また、本実施例ではろう材51に金(もしくは銀)と錫とからなる低融点材料が用いられている。なお、水晶振動片2の延出分7を除く基部23の幅方向の寸法が、振動部(脚部22a,22b)と幅方向の寸法と同じ寸法に成形され、この基部23における導電性バンプ52によるベース3への水晶振動片2の接合領域A1は、基部23の幅方向中央領域A2であって、脚部22を突出した基部23の一端面231から離間した基部23の他端面233の近傍領域に設定される。そして、図1,2に示すように、この水晶振動片2の接合領域A1における2つの導電性バンプ52の基部23への接合中心位置間(図1,2に示す範囲R1)の距離は、300μm以下に設定される。なお、本実施例では具体的に接合中心位置間R1の距離を250μmに設定している。ここでの設定は、接合中心位置間R1の距離が300μmを超えると、振動バラツキによる発振周波数偏差を抑制する効果が低減する。すなわち、図3に示すように、接合中心位置間R1の距離の変更による発振周波数偏差の相違を示す。図3は、接合中心位置間R1を、200μm,250μm,300μm,350μmに設定した際の励振電力を0.2〜5.0μWに変動させた時の発振周波数偏差を示したグラフ図である。図3に示すように、接合中心位置間R1を、200μm,250μm,300μmに設定した場合、すべての励振電力において発振周波数偏差を−2ppm以下に抑えることができるが、接合中心位置間R1を350μmに設定した場合、すべての励振電力において発振周波数偏差を−2ppm以下に抑えることができない(具体的には励振電力が約3.2μW以上のとき)。また、図3に示すように、接合中心位置間R1を、200μm,250μmに設定した場合、すべての励振電力において発振周波数偏差を−1ppm以下に抑えることができる。このように、図3から接合中心位置間R1を縮めることで発振周波数偏差を抑えることができることがわかる。なお、接合中心位置間R1の設定は、接合に使用する導電性バンプ52の直径(80〜90μm)以上の距離を離すことで、ショートなどの発生を抑制することができ、結果として水晶振動子1の特性上の信頼性が高められる点で望ましい。
【0032】
上記した構成からなる水晶振動子1によれば、ベース3と蓋4とから内部空間12を有する本体筐体11が形成され、内部空間12内のベース3上に水晶振動片2が2つの導電性バンプ52により接合され、水晶振動片2には基部23と2本の脚部22a,22bとが設けられ、基部23には延出部7が設けられ、水晶振動片2における導電性バンプ52によるベース3への接合領域A1は、基部23の幅方向中央領域A2であって、脚部22a,22bを突出した基部23の一端面231から離間した基部23の他端面233の近傍領域であるので、脚部22a,22bにおける振動(振動部の振動)が基部23に伝わり基部23からベース3へ漏れるのを抑制することができ、その結果、振動バラツキによる発振周波数偏差を抑制してこのことが原因となるCI値の増加を抑制することができる。具体的に、基部23に設けられた延出部7に脚部22a,22bにおける振動を逃がして接合領域A1に振動が伝わるのを抑制することができる。また、本実施例では、基部23における延出部7と接合領域A1とを離す構成となるので、延出部7に伝わる振動が接合領域に伝わるのを抑制することができる。また、本実施例では、水晶振動子1の小型化を図るために水晶振動片2の基部23の小型化を図る場合であっても延出部7を設けて小型化を容易にしながら振動漏れを抑制することができる。
【0033】
また、延出部7と脚部22a,22bとが連続して成形されるので、脚部22a,22bにおける振動(振動部の振動)が延出部7へ伝わり易くすることができる。また、この連続して成形される形状が曲面形状(R形状)である場合、振動方向を延出部7に向けることが可能となり、より好適に脚部22a,22bにおける振動(振動部の振動)を延出部7に伝えることができる。さらに、図1に示すように、延出部7の延出側面のうち曲面(R面)と延出端面とは折曲成形され、延出側面のうち平坦面と延出端面とは平面視直角に折曲成形されているので、延出側面のうち平坦面から振動もれを基部23の他端面233側に伝えるのを抑制するのに好適である。
【0034】
また、導電性バンプ52の接合中心位置間の距離は300μm以下に設定されるので、図3に示すように振動バラツキによる発振周波数偏差を抑制することができる。
【0035】
なお、本実施例では、脚部を2つとしているが、これに限定されるものではなく、3つ以上であってもよい。
【0036】
また、本実施例では、導電性バンプを2つとしているが、これに限定されるものではなく、3つ以上であってもよい。
【0037】
また、本実施例では、図1に示すような形状の基部23を採用しているが、これに限定されるものではなく、例えば、図4に示すように、基部23にその両主面241,242を貫通する貫通部6が設けられてもよい。なお、図4に示す水晶振動子1では、他の構成を図1に示す実施例1に示す水晶振動子1と同様の形態とする。そのため、以下では異なる構成について説明し、他の共通の構成については同様の符号を付しここでの説明を省略する。
【0038】
この図4に示す水晶振動子1では、水晶振動片2における導電性バンプ52によるベース3への接合領域A1は、基部23の幅方向中央領域A2であって、脚部22を突出した基部23の一端面231から離間した基部23の他端面233の近傍領域に設定され、接合領域A1と、脚部22を突出した基部23の一端面231との間に、基部231の両主面24(表側主面241,裏側主面242)を貫通する貫通部6が設けられている。この場合、接合領域A1と一端面231(脚部22a,22b)との間に貫通部6が設けられるので、貫通部6により脚部22a,22bにおける振動(振動部の振動)が基部23に伝わり基部23からベース3へ漏れるのを抑制することができ、その結果、振動バラツキによる発振周波数偏差を抑制してこのことが原因となるCI値の増加を抑制することができる。具体的に、図4に示すように脚部22a,22bと接合領域A1との直線上(平面視)に貫通部6が設けられることが好適である。
【0039】
また、本実施例でいう凹部25a,25bは、図1に示すような断面凹形状としているが、これに限定されるものではなく、貫通部であってもよく、窪み部であってもよい。
【0040】
また、本実施例では、脚部22a,22bに凹部25a,25bを形成しているが、これは好適な例でありこれに限定されるものではなく、例えば、図5に示すように脚部22a,22bに凹部が形成されていない水晶振動片1にも本発明を適用することができる。なお、図5に示す水晶振動片2では、水晶振動片2の接合領域A1と、脚部22a,22bを突出した基部23の一端面231との間に、基部231の両主面24(表側主面241,裏側主面242)を貫通する貫通部6が設けられている。すなわち、図5に示す水晶振動片2では、図4に示す水晶振動片2の貫通部6を設けることによる作用効果を有する。
【0041】
また、脚部22a,22bは、図1に示す形状に限定されるものではなく、例えば、図6に示す形状であっても本発明を適用することができる。具体的に、図6に示す水晶振動片2の脚部22a,22bの突出先端部221は、脚部22a,22bの他の部位と比べて突出方向に対して直交する方向に幅広に成形されている。この場合、幅広に成形された脚部22a,22bの突出先端部221(先端領域)を有効に利用することができ、水晶振動片2の小型化に有用であり、低周波化にも有用である。また、1枚の水晶素板から複数の当該水晶振動片2を成形する場合、1枚の水晶素板において廃棄する領域(水晶振動片2として用いない部位)を減らして1枚の水晶素板全てを有効に用いることができるので、当該水晶振動片2の量産にも適している。
【0042】
また、本実施例では、延出部7の延出寸法が40μmに設定されているが、これは好適な例であり、これに限定されるものではなく、延出部7の延出寸法が20〜60μmに設定されていればよい。このように、延出部7の延出寸法を20〜60μmに設定することで、水晶振動片2の小型化を阻害することなく、より一層振動漏れを抑制することができ、水晶振動片2の特性の安定化を図ることができる。そして、特に延出部7の延出寸法を40μmに設定することで、上記した図3に示すように振動バラツキによる発振周波数偏差を抑制すること(発振周波数偏差を−2ppm以下に抑えること)ができる。
【0043】
また、本実施例では、ストレートタイプの水晶振動片2に延出部7を設けた構成としているが、これは好適な例でありこれに限定されるものではない。そのため、図7に示す形態であってもよい。この図7に示す形態とは、図1に示す水晶振動片2と同様に、基部23に、当該基部23の側面232から脚部22の突出方向に対して垂直方向に延出する延出部7が設けられるが、この延出部7は脚部22a,22bと連続して成形されずに単独で設けられている。また、この延出部7の延出形状は平面視矩形状に成形されている。
【0044】
なお、上記した図5〜7に示す水晶振動片2では、導電性バンプ52によるベース3への水晶振動片2の接合領域A1と、脚部22を突出した基部23の一端面231との間に、貫通部6が設けられている。すなわち、図5〜7に示す水晶振動片2は、図4に示す水晶振動片2の貫通部6を設けることによる作用効果を有する。また、貫通部6は、上記した図4〜7に示すように平面視矩形状に形成された貫通孔に限定されるものではなく、図8〜10に示すような貫通孔の形状であってもよい。具体的に、図8に示す貫通部6では、その貫通孔の形状が平面視三角形状となり、各導電性バンプ52に対応させて形成されている。また、この図8に示す三角形状の貫通部6の場合、脚部22a,22bと接合領域A1との直線上(平面視)にそれぞれ対応させた貫通部6を設けているので、振動漏れを導電性バンプ52に伝わるのを抑制することができるとともに貫通部6を小さくして基部23の表面積を有効に用いることが可能となり小型化に適している。また、図9に示す貫通部6では、その貫通孔の形状が突起を脚部22a,22b方向に向けたT形状からなる。また、図10に示す貫通部6では、その貫通孔の形状が平面視矩形状からなり、その両端が脚部22a,22b方向に折曲成形されている。これら図9,10に示す貫通部6は、図5〜7に示す貫通部6と比較して振動漏れが導電性バンプ52に伝わるのを抑制するのに好ましい形態である。
【0045】
なお、本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、音叉型圧電振動デバイスに適用でき、特に音叉型水晶振動子に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、本実施例にかかる水晶振動子の内部を公開した概略平面図である。
【図2】図2は、本実施例にかかる水晶振動子の図1に示すA−A線断面図である。
【図3】図3は、接合中心位置間R1を、200μm,250μm,300μm,350μmに設定した際の励振電力を0.2〜5.2μWに変動させた時の発振周波数偏差を示したグラフ図である。
【図4】図4は、本実施の他の例にかかる、貫通部を設けた水晶振動片を設けた水晶振動子の内部を公開した概略平面図である。
【図5】図5は、本実施の他の例にかかる、凹部を設けていない水晶振動片を設けた水晶振動子の内部を公開した概略平面図である。
【図6】図6は、本実施の他の例にかかる、脚部の突出先端部を幅広にした水晶振動片を設けた水晶振動子の内部を公開した概略平面図である。
【図7】図7は、本実施の他の例にかかる、延出部を変形した水晶振動片を設けた水晶振動子の内部を公開した概略平面図である。
【図8】図8は、本実施の他の例にかかる、貫通部を変形した水晶振動片の概略平面図である。
【図9】図9は、本実施の他の例にかかる、貫通部を変形した水晶振動片の概略平面図である。
【図10】図10は、本実施の他の例にかかる、貫通部を変形した水晶振動片の概略平面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 音叉型水晶振動子(圧電振動デバイス)
11 本体筐体
12 内部空間
2 音叉型水晶振動片(音叉型圧電振動片)
22a,22b 脚部
23 基部
231 一端面
232 側面
233 他端面
24(241,242) 両主面
28 側面
3 ベース
4 蓋
52 導電性バンプ
6 貫通部
7 延出部
A1 接合領域
A2 幅方向中央領域
R1 接合中心位置間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音叉型圧電振動デバイスにおいて、
ベースと蓋とから内部空間を有する本体筐体が形成され、
前記内部空間内の前記ベース上に音叉型圧電振動片が複数の導電性バンプにより接合され、
前記音叉型圧電振動片には、基部と、この基部の一端面から突出した複数本の脚部とが設けられ、
前記基部には、当該基部の側面から前記脚部の突出方向に対して垂直方向に延出する延出部が設けられ、
前記音叉型圧電振動片における前記導電性バンプによる前記ベースへの接合領域は、前記基部の幅方向中央領域であって、前記脚部を突出した前記基部の一端面から離間した前記基部の他端面の近傍領域であることを特徴とする音叉型圧電振動デバイス。
【請求項2】
前記接合領域と、前記脚部を突出した前記基部の一端面との間に、前記基部の両主面を貫通する貫通部が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の音叉型圧電振動デバイス。
【請求項3】
前記延出部と前記脚部とが連続して成形されたことを特徴とする請求項1または2に記載の音叉型圧電振動デバイス。
【請求項4】
前記複数の導電性バンプの前記基部への接合中心位置間の距離は、300μm以下に設定されたことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1つに記載の音叉型圧電振動デバイス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2008−79014(P2008−79014A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−255983(P2006−255983)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】